毎度おなじみ、O-bakeさん宅の「ハロウィン・パーティ」(偽のHNでお話を書いて本当のHNを当てるという企画)ですが、何と今回がラスト(T_T) お名残り惜しゅうございますが、最後にゲットした作品を掲載いたします。今回のお題は「化ける」でした。
1つは、現役高校3年生の雨宮朔也さんが授業中にコッソリ?書いた作品(+_+)
もう1つは、当てたのではなく、O-bakeさんのご好意で戴いた作品。


独白

投稿者:鮭(本当のHN:雨宮朔也さん)




何てことをしてくれたのだ、あの男は。

彼は平素では考えられぬような憤怒の形相で襖を閉じた。
そのまま、机の前に腰を下ろして、髪を掻き毟りながら頭を抱える。

あの男は、あの人と結婚の約束をしたのだ。私を差し置いて。私があの人のことを想っていたのを知っていて。
あの男、今まで友人と信じてきたあの男。友人と思っていたから、自らの、あの人への胸のうちを晒したというのに。
なんという裏切り、なんという卑劣な。
もはや私の想いはあの人へは伝えられまい。伝えようとも、今更決められた未来までは変えられぬ。
なんとしても、なんとしてでもあの男に復讐を。制裁を。過去現在未来全てを通して続いていくような刑罰を与えぬことには。

彼は虚空の闇に目を移した。洋燈(ランプ)の明かりも勝つことの出来ない、その虚空をただ見つめる。

そうだ。この手があったか。
私が自殺すれば良い。
そして遺書を残すのだ。奥さんやあの人や、国元への連絡を友人のあの男に託して、そしてこの件に関しては何も触れずにおけば良い。
あの男は頭が良い。頭が良いのはこういうときに厄介だ。いろいろなことを想像して、自分自身で己を追い込むのだ。
そうだ、それが良い。
私など、もはや生きていても仕様がない。今までの生活に戻ろうと、あの人があの男と一緒に歩いていると思うと、ますます死にたくなる。かといって故郷に戻ろうと、恐らく自分の居場所すらないだろう。
死んで、化けて、あの男に呪いをかけるのだ。死ぬまでとけることのない呪詛を。
そうとなれば準備をしなくては。手紙と、ナイフを。畳を汚してしまうことになるな、申し訳ない。
――私は、地獄というものがあるとすれば、きっと地獄に落ちるだろう。
今から私が行うことは罪だ。宗教的にも、私自身の倫理的にも。
だがどんな地獄に落ちようとも、貴女が私のために祈ってくださるのなら、私にとっては天国も同じ。
たった一度で構わない。もし祈ってくれるなら。


彼は洋燈の火を消した。


管理人コメント:
どうです?この書きっぷり! とても高3とは、愚娘と1学年違いとは思えない…。それもそのはず、将来有望な優秀な学生さんなのです。
この作品を読ませていただいて、多くの方が漱石の「こころ」を思い浮かべたことと思います。そうか・・・、国語の教科書に載っていましたね!


洋燈(ランプ)とか、渋いでしょ? それに、暗くて重いテーマ…から雨宮さん説が浮上してきたわけですが、と同時に、受験生がこのようなものをお書きになっている場合か!?と余計な心配もしてしまいました。(何と彼女は今回、もう1つ出品されているのです!私は当てられませんでしたが…。)


更に、覆面はがしチャットでお聞きしたことですが、偽のHN「鮭」は「圭」から「K」へと変化し、「K」といえば言わずもがな…の「こころ」であります。鮭とは何だ??と最初は思った管理人ですが、この顛末を聞けば聞くほど、憎いですね〜チャンチャン♪(鮭のちゃんちゃん焼きでした^^;)


最強最悪の化かし屋


投稿者:ホワイトハート(本当のHN:O-bakeさん)




 冷たい雨のふる日だったけど、ハロウィンパーティが開かれている英会話教室は熱いぐらいで、窓はうっすらと曇っていた。
 僕はその窓の下にすわり、魔女になりきった妹たちが夢中でゲームの続きをしているところをぼんやりながめていた。もともとやる気の無い僕はとっくにドロップアウトしている。
 ほんの一時間前まではここに来るつもりなんて、さらさらなかった。今年は高校受験だから、仮装パーティは去年で終わりにするつもりだった。
これで最後だからと、去年は恥をしのんで女装にトライして、結果、見事に仮装大賞をもらい、「今年でパーティからは引退する」と宣言までしてきたのだ。
 それなのに今日になって妹が「お兄ちゃんが行かないならあたしも止める」と言い出し、彼女の強情さを知っている母は渋い顔をしながらも「あんた、行ってあげたら」と来た。
 で、僕は引退しそこねてここにいる。しかも某魔法学校の悪名高き教師の格好をさせられて。窓に映る不機嫌きわまりない顔は本物そっくりだ。今年も別の意味で仮装大賞がもらえるかもしれない。
 僕は、ここに来てから何回目になるかわからないため息をついて、部屋を見渡した。すると、黒い仮装の中で、たった一人、白い魔女に扮した女の子に気がついた。初めて見る顔だ。最近教室に入った子だろうか。ついじっと見る。彼女が振り向いた。
 可愛い。
 ひざ上10センチの白いワンピースに、白いボアのついたマントをはおり、白いブーツという格好。頭にはお決まりの三角帽子をのせて、これは銀色。抜けるように白い肌にくりっとした目。肩にかかるまっすぐな黒髪。むしろ妖精だ。
 ぼうっと見つめていると、彼女が微笑みかけてきた。僕の頭が一気に熱くなって、もう少しで倒れるところだった。
 そうならなかったのは妹のおかげだ。彼女は投票用の紙を持って「お兄ちゃん!」と来た。仮装大賞を決める時間が来たらしい。
 投票するのに鉛筆はいらない。チップのような青い紙切れを、自分が一番気に入った人のところへ持っていけばいい。青い紙を一番多くもらった人が賞をもらえる。
 僕は迷わず白い彼女に手渡すことにした。そうしたらきっと話もできる。
 ところが、彼女がいない。さっきはひと目でわかったのに、今はいくら探し回っても見つからない。僕は教室の先生に聞いてみた。すると、アメリカから日本に来て3年になるというその先生は言った。
「今日はハロウィーン、日本のお盆と同じ。死んだ人も集まってくる。だから、そういうこともアリマス」
 先生は意味ありげにウィンクをすると向こうに行ってしまった。残された僕は思う。
 「そういうこと」ていうのは、つまりアレか? 「化」のつくものなのか?
 ぞわりと鳥肌がたちかけた僕の背中を誰かがトントンと叩いた。さっきの白い女の子だ! 僕の頭から思考力が弾け飛んだ。まるで消え入りそうな白さもコスチュームも可愛らしさも仮装なんかじゃない。この子がモノホンの幽霊だとしても、それがどうしたっていうんだろう。
 僕は青い紙を女の子に渡そうとした。でも彼女は首を横に振り、にっこりと僕の胸元を指した。
「あなたの体をちょうだい」
 そういい終わるか終わらないかのうちに、ぐわんと目まいがして、僕と彼女は入れ替わっていた。僕は気づいたら浮遊霊となって、自分の体を見下ろしている。
 この世とあの世を通じて最強最悪の化かし屋だよ、女って。



管理人コメント:
O-bakeさんのお情けで頂戴した作品です。これが無ければ、今回はたった1つしか作品を掲載できなかった管理人…。これで、お蔭さまで格好がつきました、ほっ。

さてこのお話、某魔法学校が出てきたりして、後で考えるとO-bakeさんっぽい所が随所に見られるのに、見破れなかっただなんて…(というか、騙すのがお上手=化かし屋=物書きなんですね〜流石!)。英語とくりゃ、O-bakeさん!を忘れてはなりません。

ところが、この素晴らしい企画も、今回で最後だそうで…。初回から、随分と楽しませていただきました。ウチのくりるん♂やブーハさんもお仲間に入れていただきました。また、多くの方とネット上でお知り合いになることも出来ました。ウチの創作館もO-bakeさんのお蔭で出来ました。主催者のO-bakeさんには、本当に感謝いたします♪



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