◆2005年スプリングパーティ(O-bakeさん宅の企画)〜いただきました◆(背景画像:ごまふ氏)
毎度お馴染み、これが無くては新年度が始まらぬ?!素晴らしい企画に、いつも感謝いたします。
この企画は、偽のHNでお話を書いて、後日いったい本当は誰が書いたのか?を当てるものです。
当てることが出来たら、その作品を持ち帰って展示できる…という副産物付きです。
今回のお題は、「ぼける」でした。
管理人は3つ当てましたが、その内2つはくりるん♂作なので、後日「創作館」に展示します。
1つ目は、ブーハさんの作品です。
※もう1つは、別館のブーハさんが「春祭り残念賞」としてO-bakeさんから頂いた作品です。
これは、展示場所が無い…という理由で、当分こちらに展示させていただきます。
●冬の怪談 投稿者:化け猫(本当のHN:ブーハ)
私が五つくらいの時である。冬の寒い夜に、ふと目が覚めたことがあった。当時私は、父と母との間に川の字になって寝ていた。しかし、その川の字はえらく悪筆だった。私は多くの子どもの例に漏れず、ずいぶんと寝相の悪いほうだったし、そんな私を母はよく抱えこむようにして眠っていた。
その日も私は母と向き合うように眠っていた。目が覚めた後、なぜか目が冴えて、なかなかもう一度寝付くことができなかった。頭の後ろから、父の大きないびきが聞こえていたせいもあったかもしれない。
ふと、父のいびきが止んだ。そっと振り返って父を見た。
しかし、父のいるはずの場所にいたのは、父ではなかった。こちらに背を向けて寝ていたのは、巨大な猫だった。
私は、すぐさま布団の中に首をすくめて潜り込んだ。目をぎゅっとつぶって。そのうちまた寝てしまったらしく、次に目が覚めたときには朝だった。すぐに見た父の布団は空っぽだった。もう仕事に出た後らしかった。
ネクタイを締めた猫が鞄を持って電車に乗っているところ。今から思えば滑稽なこの光景を、当時の私は笑えなかった。父が猫になってしまったと思い込んでいた。
夜になった。帰ってきた父は、いつもどおりだった。どこも変わったところはない。
幼い私はいつも早く寝かしつけてしまわれて、父が布団へ入るのは見たことがなかった。その夜布団に入ってから、一生懸命目を開けていたが、気がつくとやっぱり朝だった。そういうことが何日か続くうちに、大きな猫のことは忘れてしまっていた。
小学校に入学したときから子ども部屋を与えられた。その頃には妹も生まれていたので、父母と川の字になって寝ることもなくなった。そして、中学、高校と進学し、大学に入ったのを機に、一人暮らしを始めた。
大学に入って初めての正月に、久しぶりに家へ帰ってきた。私の部屋は妹に明け渡されていたので、私は表の客間で寝ることになった。
ストーブの消えた客間は次第に冷え込んできて、夜中にトイレへ行きたくなって目が覚めた。暗い廊下を歩いて行くと、トイレに先客がいた。
虎だ!
でも、よく見ると違っていた。トラ柄のつなぎのパジャマを着た父が、ばつが悪そうに立っていた。
後で母に聞いたのだが、父は若い頃から寒がりで、冬は普通のパジャマでは寒くて寝られないとぶつぶつ文句を言っていたそうである。それが、どこで見つけてきたのか、厚手のつなぎパジャマを買ってきて愛用しているとのことである。ところが、いつも動物柄ばかりで、以前はフードに耳まで付いたのを着ていたこともあると、笑いながら答えてくれた。
洗濯することもあったろうに、家の手伝いをろくすっぽしなかった私には、知られることがなかったのだ。
幼い日に見た巨大な猫は、耳の付いたフードを深々と被った父だった。とんだ化け猫騒動だ。
さて、こんな作品が送られてきました。
えっ、ばける? 違うでしょう?
「ば」と「ぼ」を間違えるとは、あなた、ぼけてますよ。
くるりんコメント:ブーハさんはウチの別館(ブーハ館)にお住まいなので、彼女の作品は何としてもゲットしたかったのですが、惜しくももう1つは見事に騙されて(螢石さんの作品「大歩危小歩危」というタイトルが敗因です/笑)ゲットできませんでした。
さてこの作品、どうしてブーハさんの作品と判ったかは企業秘密ですが、何と後で聞いてビックリ!つなぎのパジャマは実話だそうです。それも猫ではなく狸?!(阿波踊りの他に狸も有名な所です)それを誰が着ていると思いますか?お子さん?ブーッ! ご主人ですってよ、しかもブーハさんの手作り・・・(^^;
●本日も晴天なり 投稿者:O-bake@主催者
今年いきなり花粉症になったという彼を乗せ、私は耳鼻科へと車へ走らせた。
今日も穏やかでいい天気だ。花粉が飛ぶにはもってこいだ。
彼は三日ぐらい前からひどいくしゃみと鼻水はもちろん、目のかゆみにも悩まされていた。
いくらティッシュを買っても足りないし、いっしょに暮らす身としては、連続くしゃみ15回は勘弁してほしい。
というわけで、今日は会社の休みをとってもらい、運転さえあやしい彼のためにドライバー役を引き受けた。
診察の帰り、薬のおかげでずい分症状の落ち着いた彼は、機嫌良く助手席から外を見ている。
「世の中がこんなにきれいだったとは知らなかったな」
「そう?」
「君も天使みたいに見える。白衣こそ着てないけど」
私は心配になった。間違った薬を処方されてぼけたんじゃないだろうか。
信号待ちの時に彼の様子をうかがう。そしてはっと気づいた。
「そういえばさ、今日はコンタクトレンズ外してる?」
「もちろん。目がかゆくてやってられないだろ」
「で、眼鏡は忘れた?」
「探しても出てこなかったんだ」
そうして彼は私をまじまじと見る。しばらくの沈黙。
「……見えすぎない方がいいこともあるのか」
その後、彼がどうなったかは内緒。
くるりんコメント:スプリングならではの「花粉症」のお話、彼女が運転するのが憎いですねぇ(我が家もそうですが/笑)。コンタクトや眼鏡が無いと、世の中がどう見えるか知っているだけに笑ってしまいました。前回のお題が「ないしょの話」というのも、笑えます。最後の1行は考えさせられますね、想像力の逞しい?管理人は、次々と良からぬことを想像してまた笑うのであります。
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