2004年ハロウィンパーティ(O-bakeさん宅の企画)〜いただきました
  今回も嘘のHNでお話を書いて、後日本当のHNを当てるO-bakeさん宅恒例の企画です。
  今回のお題は、「ないしょの話」。

●最終的に今回私は、大勢の方々を騙し抜いた?とかで「嘘つき大王」なる名誉な称号を頂戴しました、ぐふっ。

さらに副賞として、きさださんの句も頂戴しました。
覆面を三重にかぶってあらびっくり(心の一句)   きさださんのサイト

もう1つの副賞は、主催者さんのお話です。ちなみに今回の罰ゲームは、激甘ポエムでした(O-bakeさんのサイト)。
彼には絶対言えない話  投稿者:O−bake@主催者

「これなあに」
 仕事から帰ってきたばかりのダンナに私が突き出したのは、一本の長い黒髪。
「これ、寝室のカーペットに落ちてたんだけど、留守の間に、何かあったのかしら」
 上辺だけのほほえみでにこやかに問いかける。とたんに固まる彼。
「これ、どう見ても私のじゃないわよね。色も長さも」
 結婚する前からずっと髪型はショートにしてきた。ヘアマニキュアだってしている。
 彼はしどろもどろになって、何事かつぶやいている。会社の同僚と飲みに行ったとき、同席した女性に相談を持ちかけられて、その挙げ句……。
「でも、彼女とは何もなかったぞ」
 首まで真っ赤にしながらも、彼ははっきり言った。
「ふーん。でも、妙に優しいのね。長くてきれいな黒髪を持っていたから?」
「べ、べつにそんなんじゃない」
「本当に何もなかったというなら、わたしは気にしないんだけどね」
 そうして彼を部屋の中に通してあげた。
 安心しきった後ろ姿を見ながら、心の中でひっそりつぶやく。
 古いアルバムの最初のページに何があるか知ってるんですからねー。愛車といっしょに写っている写真の下に、バイクにまたがったロングヘアの女の子の写真を重ねて隠してあること。同じように隠してある写真が他にもあって、みんな顔は違っても見事なロングヘアだけは共通していること。
 だからわたしは、何があっても髪を伸ばさないことにした。
 それもこれも、みんなないしょの話。

くるりんコメント:前回のスプリングパーティのお話「春の嵐」の後日談だそうです。一部分は実話とか?? う〜ん、女の人って髪を切るにも深い訳があったりして難しいですねぇ。このお話の他にも、作者当てに参加されたお話、オマケに罰ゲームの詩まで!次々お書きになる上、我々に毎度楽しい企画を提供して下さり、感謝です。

そして、見事?当てることが出来て持ち帰らせていただいた作品が3つ、ブーハさん、螢石さん、O-keiさん…順に紹介します。


彼には内緒  投稿者:とおりゃんせ(ブーハさん→ブーハの館

 山肌に下ろされた1本の鎖をつかんだ僕はもううんざりしていた。単なるスケッチ旅行だっていうから参加したのに,何が悲しくて鎖登らなきゃいけないんだ。もう30分は経ったのに,いつまでこんなところにいれば・・・。わっ危ない! 上からバラバラと石が落ちてきた。「気をつけろ。」と上に叫ぶ。僕が最後尾だから,下には誰もいない。

 ○×高等学校美術部員30名は,2泊3日の予定で,△山を訪れていた。平坦な山道もあるのだが,「近道しよう」という部長の提案により,昔の修験者が使っていたという鎖を登ることになってしまった。30人が数珠繋ぎになって鎖を登っているのだが,さっきから動きが止まったままだ。なぜ鎖が必要なのかわからないぐらいなだらかな斜面ではあったが,鎖にすがっているにはあまりに長い時間だった。

 あっ,やっと動いた。上では一体何やってんだ? 部長め憶えてろ・・・・・。
 おっ,これは頂上? じゃねえなぁ。

 鎖は3箇所にあり,彼らが登っているのは最初の一本のはずであった。ところが,鎖の途切れた場所に,次の鎖はなかった。いや,正確にいうと鎖はあった。ただし・・・。

 げぇーっ! せっかく登ったのに下りるのか? 

 登りきったところは,大きな岩の上だった。この鎖は,3箇所の鎖との手前にある「ためし鎖」。つまり,練習用の鎖。もちろん上へ行く道などなく,登ってきた反対側に下りの鎖がかかっていた。2,3人程が疲れた様子で座り込んでいる。先の20人余りはもう下りにかかっているらしく,その場に姿はなかった。

 ためし鎖って何だよ! 部長わかってたのか?

 下りの鎖は,まず2メートル下の半畳程の岩だなに垂直に垂れ下がっていた。岩棚から右に降りるとまたなだらかな斜面が続いているらしいが,霧が出始めたのでよく見えない。岩だなのところに部長がいた。

 部長が何か言ってる。(「気をつけろ。鎖は絶対離すなよ。」) はいはい,ゆっくり降りますよ。大したことないじゃないか。ほら,もう着いた。部長,これじゃ近道どころか,回り道じゃないですか。 えっ,知らなかった? 本当ですか? 怪しいなぁ。(「ぐだぐだ言ってないで,さっさと降りろ。」) じゃあ,後でゆっくり弁解をお聞かせいただきましょうか。

 彼が降りていってから5分後,部長は上に残っていた者に声をかけた。
「じゃあ降りようか。霧が出る前のことは考えるなよ。」

 30人全員が下に着いた頃,霧が晴れ,岩だなの左側に底知れぬ断崖絶壁が姿を現した。知らなかったのは,高所恐怖症の彼だけ。

くるりんコメント:とても詳しい描写なので、登山の経験者かしら?と思ったのですが、さりとてどなたが経験者か判らず…。そうだ、四国には山が多いから、一度ぐらいは登った事がおありだろう…と曖昧な勘でブーハさんに決めました。たとえ現場に居なくても、臨場感溢れる文章を書かれるので、まるで現場に居合わせたような気分になります。それにしても上手いHNを考えましたね、行きはスイスイ、後で知ったらどんなに怯えることか…。企画の作者当ても、書くのはスイスイ?当てるのは難解でした。


セイレーン  投稿者:そりゃないっしょ(螢石さん→O-bakeさんのお知り合いで、創作もされています)

 「・・ったく、これじゃ不審者だよな」
そう思いながらオレはスポーツクラブの駐輪場から自転車を取り出した。日曜の午後、バスケ部主将であるオレは皆に内緒で(って訳でもないけど)、ジムで筋力トレーニングをしたのはいいが、その後ロッカールームで知り合ったT体育大の人と話がはずみ、その人の乗るべく送迎バスに乗って駅まで行ってしまった。まあ自転車は後でということでもよかったが、今は夜の十一時。遅いよな。スポーツクラブの職員の姿ももう見られない。
 オレは自転車のハンドルを掴み帰ろうとした、が、右手あたりに光と影が揺れるのを感じた。この駐輪場の壁の向こうは室内プールだ。こんな時間に誰か秘密トレーニングでもやっているのだろうか。
 「不審者の気持ちがわかるなぁ」
オレはちょっとのぞいてみることにした。見つかったときは自転車の鍵が無くなって探していただの言い訳を用意して、そっとプールサイドの明かりがもれてるガラス窓の底辺の方から中をのぞいた。
 そこにはひとり女が泳いでいた。まるで人魚のようだった。長い髪を漂わせながら、しぶきをたてず、ただゆらゆらと水の中に体をくねらせていた。そのうち人魚はそっと仰向けになりプールに浮かび上がった。
 「あ、あれは副会長?」
オレは見覚えのある人魚に驚いた。オレの高校で副生徒会長をやっている佐藤すみれだ。美人で秀才で優しくて・・でも我がバスケ部は今この生徒会相手に予算折衝をやってる最中だというのに。そのうち人魚はかなりオレの近くまで泳いできた。顔がものすごく近くなる・・確かに副会長の佐藤すみれだ。その佐藤すみれは水面からゆっくり大きく顔をあげた。そしてこちらを見て静かに微笑んだ。ゲッ!マジバレかよ。
 佐藤すみれはプールサイドのオレのすぐ脇に見える非常口を指さし、次にこっちへこいと手招きをした。ここで逃げるわけにはいかねえよなァ。
 オレは外から非常口に手を掛けドアノブに手を掛けた。中から鍵を開ける音がした。静かにドアノブを回し押すとドアは開いた。中を見ると佐藤すみれはプールサイドに腰掛け、塗れた長い髪をかき上げていた。白い両足からはしずくが垂れている。
 (あと数分後にオレはモノホンの犯罪者になっちまうよ)
そんなオレの気も知らず、佐藤すみれは柔らかにオレに微笑みかけた。オレは苦笑いしながら黙ってアタマを下げた。
「見たわね・・」
急に佐藤すみれは副会長の顔になり、凛とした態度でオレに臨んだ。
「イヤ、自転車忘れてェ、取りに来てェ明日月曜でェプール明かりが点いてて何かなっなんてちょっと見たら佐藤さんで、あれ〜なんでぇって・・」
オレは笑みを満面に浮かべて言い張った。
「・・・内緒にしててくれるわよね」
「内緒?は、はい、もちろん内緒です」
「本当に内緒よ。こんな時間にプールで泳いでいたなんて」
「はい、もちろん。でも不用心だね」
「大丈夫よ、非常口の鍵さえ管理しておけば。私の家、近いし、ここのオーナーはよく知っているから時間外の許可は得ているの。監視カメラもあるし」
彼女は足を組み直した。オレは速くこの場を立ち去りたかった。もう犯罪者秒読みモードだ。
「あなたなら大丈夫そうね。安心したわ。それじゃまた明日」
「ハイ!それではまた明日。おやすみなさい!」
そういうとオレは非常口から外へ出て、自転車置き場に向かった。そして一目散に自転車をこいで家に向かった。佐藤すみれの人魚姿を目の前から振り払いながら。

 翌朝、オレは自転車をこぎ登校した。高校へ着いてオレのクラスに足を踏み入れると、同じクラスのユリが駆け寄ってきて 開口一番、オレに言った。
「おはよう、ドラゴンくん!」
占い好きのユリが、また何か新しい占いの本を見つけてきたらしい。オレはこの間までこいつに「オオカミくん」と呼ばれていた。その前は「中トロ」である。動物占いとスシ占いだたこうなるのだと。
「ねえ、また新しい占いの本、見つけたの。今度は「ケルト妖精占い」って いうんだけれどヤバ当たるのよ。んでバスケ部長の君はドラゴン君。副部長の原くんはノームで、筒井先生はユニコーン。私はエルフなの。んで生徒会長はオベロン。オベロンは褒め言葉に弱いのよ。んで副会長の佐藤すみれチャンはセイレーン。あ、セイレーンってね上半身は人間で下半身は魚なの。夜になると水面から顔を出して男を誘惑する・・」
オレはそう聞いて即座に昨夜のことが頭に浮かんだ。
「ゲッ!まんまじゃねえか」
「何?ドラゴンくん、この本、知ってるの?」
ヤバイ。人魚の姿を見たことは内緒の話なのに。オレはユリの疑惑をそらすため言った。
「イヤ佐藤副会長も美人ですから、ぴったりだなって」
「そうでしょう。でも、セイレーンですからね、彼女。放課後のバスケ部の予算折衝、頑張ってよ、ドラゴンくん」
「わかってるよ。ユリ、ちょっとその占いの本貸せよ」
オレはユリから占いの本を受け取り、自分の席に着いた。セイレーンのページを開き、人魚のような挿絵を見ながら昨晩の、水面に揺らめく現実の人魚を思い出していた。

 放課後、さてこれから生徒会室へ行って予算折衝というときに、またユリが駆け寄ってきた。
「ドラゴンくん、頑張ってよ。会長はオベロンだから褒め言葉でヨイショしながらなら頼みを聞いてくれるわよ。でも副会長はセイレーンよ。美しい人魚の姿をしているけれど・・」
「わあってるよ!」
オレはユリを振り切り、生徒会室へと向かった。何だよ、人魚、人魚って。昨日の記憶がポロッとでちまうじゃねぇか。
あれこれ思ううち、生徒会室の前までたどり着いた。オレはいざ生徒会室へ入った。

 中にはオベロンじゃなく生徒会長、そして副会長、会計がいた。オレは椅子に腰を下ろした。会計は話し始めた。
「それではバスケ部の予算についてですが、提出された内容はすべてそのままでは認めたくありません」
「はぁ〜?」
オレは中腰になった。これは反論しなければ。更に会計は続けた。
「まず、ユニホーム。これは個人所有のものです。ウチの学校はせめて地区大会の三位以内に入ってからでないと申請が許可されないのです。次にボール。うーんこれは昨年度五個新調してますよ。だから今年度、十個新しくというのはまず無理です。そしてここからが問題です。コールドスプレー十本やらテーピング十個。これは医薬品です。申告外です。ケガしたら保健室にいってください」
オレは生徒会長に掛け合った。
「会長、ボールは消耗品なんです。見識が深い会長さんならわかりますよね。おれたちそのぐらい練習してるんです」
「そうですか・・。それでは去年と同じ五個ぐらいでは」
会長は話を聞いてくれた。よし、ここでもう一頑張り。
「それと、オレ達がずっと個人で負担してきたコールドスプレーとテーピング。これはバスケ部として必要なんだ」
「でも、これは医薬品では」
「医薬部外品くらいのもんじゃねえか。そんなら演劇部の化粧品とおなじくらいだ。確かに保健室はあるけど試合中にちょっと足をひねったとかその場をしのぐ程度の治療が必要なときがあるんだ。選手交代したら試合の流れまで変わっちまうし」
それを聞いて佐藤すみれは少し和らいだ表情になった。それを見てオレは水を得た魚のごとくしゃべり始めた。
「練習中なんかでもヤバイコトあると、テーピングなんかも俺たちが巻いてやったりしてるんすよ。これが結構コツがいるもんでして、このまえも練習中捻挫した後輩をオレがテーピングしてやろうと思ったら、誰も持って無くて困っちまって。こんなとき部備品箱にあったらなーなんて」
それを聞いて、佐藤すみれ、いやセイレーンの顔がキッときつくなった。
「練習中の生徒のケガを生徒が自己処理?顧問の先生は!」
しまった。痛いところを突かれた。あの時はちょっとメンバーがそろっちゃったから、先生に内緒でパスやりしてたんだっけ。
「と、トイレだったかな。とにかく急を要するたいしたこと無いケガで」
「ケガをそのままにしたのですか。これは違反ですよ」
セイレーンは痛いところを突っ込む。顧問の先生不在中のケガ。やばいよな。やっぱ。
「まあでは、今回、コールドスプレーとテーピングの件はまたということにしましょう。ボールはお約束しますから」
オベロンは言った。
「今回は諦めてくださいね」
セイレーンは言った。美しい人魚の顔で微笑みながら。

 オレは部室を出た。そこへ待ちかまえていたようにユリが駆け寄ってきた。
「ねえ、どうだった?」
「ダメ。ボール五個のみ」
「やっぱりね。佐藤すみれに落とされたんでしょ。だから言ったでしょ。副会長はセイレーンだって。優しい顔に似合わずに次々に予算を落としていくんだって。まるでセイレーンが夜ごと船を沈ませるように。彼女が生徒会入ってから申請を全部認められた部は無いって」

 オレとユリが話していると、生徒会室の戸が開いて、セイレーンが出てきた。副会長はオレたちに会釈し、予算折衝内容をまとめたレポートを抱えて職員室へ向かうところだった。
「あら、バスケ部の部長さん」
佐藤すみれはオレに話しかけた。
「・・ないしょの話なんてしょいこまないことね。あ、でも私が昨夜ひとりで泳いでいたことは内緒よ」
ユリのいる前でおおっぴらに話すなんて内緒もクソもあるかよ。
「何だよ、内緒って。こんな女子生徒もいる前で」
「あら、あのプールは水泳帽着用でないと遊泳できないの知ってるでしょう。だから内緒にしておいてね。特に父には」
「はぁ?父?」
「佐藤副会長はスポーツクラブオーナーの娘さんなんですよね。お嬢でいいですねぇ」
ユリがすかさずそう言った。なるほどな。
「それじゃ、また」
佐藤すみれはふっと笑い、踵を返して職員室へ向かったようだ。背中の長い髪が揺れていた。

 「ほら言ったでしょ、セイレーンだって」
(・・フン、二重人格の半魚人め)
オレは心の中で呟いた。側にいるユリに内緒にするように。
                            了

くるりんコメント:セイレーンって人魚のことだったのですね、ではオベロンは?オベロンはシェークスピアの 「真夏の夜の夢」 に出てくる妖精の王で、妖精の女王ティタニアの夫です。「真夏の夜の夢」と言えばメンデルスゾーンの劇音楽、ウェーバーには「オベロン序曲」もあります。それで最初は、これが音楽に精通しているブーハさんの作品か?と惑わされたのですが、どうも違うらしい…と思った後、こういったお話を書かれるのは螢石さんに違いない!に達したわけです。水面から男を誘惑する…で思い出したのがドイツの名曲「ローレライ」、あれはハイネの詩でした。更にドビュッシーの夜想曲の第三曲も「セイレーン(海の精)」で、これはピアノではなく管弦楽と女性合唱だそうです。螢石さんのお蔭で、ちょっと物知りになりましたわ。


それは、ひ・み・つ  投稿者:秘め子(O-keiさん→O-bakeさんの創作のお仲間)

その1 道端で
主婦A「ねえ、ねえ、ここだけの話だけどさ。2丁目の鈴木さんの奥さんと、お隣の白川さんのご主人が、この間親しそうに話しているところ、見ちゃったのよね。なんか深刻そうで普通じゃない感じだったわよ。でも誰にも言わないでね。ひ・み・つよ」

主婦B「え、ほんと? あのご主人ってば、ちょっといい男だものね。もしかしたら、あやしいわね」


その2 スーパーマーケットにて
主婦B「ちょっと、ちょっと、奥さん。内緒の話だけどね。2丁目の鈴木さんの奥さんと、隣の白川さんのご主人、できてるらしいわよ。深刻な話をこっそりしていたんですって。でも、ひみつよ」

主婦C「うっそ〜。あの奥さん、最近、化粧が濃くなって、ちょっと派手な服着てみえるなあって思ってたのよ。やっぱり、恋をすると女は変わるっていうものねえ。でもご主人は知ってるのかしら」


その3 喫茶店で
主婦C「ねえねえ、知ってる? 2丁目の鈴木さんの奥さんと、隣の白川さんのご主人が付き合ってるんですってよ。よくやるわよねえ。子供もいるのに。でも、ここだけの話よ。ひみつにしてね」

主婦D「えーっ。知らなかったわ。でも、ちょっと羨ましいわ。白川さんのご主人、結構カッコイイもの。私も、子供がいなかったら、もう一度、恋がしてみたいわ」


   その4 鈴木宅の玄関で
主婦D「ごめんください。回覧板です」

鈴木「あ、ご苦労様です」

主婦D「ちょっと、ちょっと、聞いたわよ。奥さん、お隣の白川さんのご主人と付き合っているんですって。なかなか、やるわねえ。羨ましいわ。私も、そろそろ主人に飽きてきたから、もう一度恋がしてみたいわ。今度、教えて下さらない。恋の手・ほ・ど・き。あら、大丈夫よ。私、誰にも言わないから。口は堅いのよ、これでも」

鈴木「いえ、そんな。私、付き合ってなんかいないわ」

主婦D「あら、別に隠さなくてもいいじゃない。誰にも言わないわよ。ひみつにしといてあげるから。あ、もうこんな時間。ご飯の支度しなくちゃ。じゃあね」

鈴木「あの、ちょっと・・・」


   その5 鈴木家のリビング
バタン。ドアが閉まり、一人で頭を抱える鈴木ひめこ。

困ったわ。白川さんとは付き合ってなんかいないのに。本当は向かいの本木さんと付き合ってるんだけど。でも、そんなこと言えないし・・・。この間、本木さんと居る所を白川さんに見られてしまって、言い訳している時に、誰かに勘違いされたのかしら。

内緒話というのは、「ひみつにしてね」と言うほど噂になり、「嘘の話」に変わっていくものである。あらら、「嘘」は、前回のお題でした。ごめんあそばせ。

                              おしまい

くるりんコメント:これ、好きです!テンポの良さと言い、オチの上手さと言い、脱帽です。最初に読ませていただいた時から、O−keiさんでは?と思っておりました。 主催者さんによると、「派手な服着てみえるなあ」の「みえる」は尾張地方特有の敬語だそうです、全然気付かなかったなぁ。テイスト的に私に近いですって?無理無理、こんなに見事には書けません。