平成24年 「税を考える週間」
日 時 平成24年11月12日(月)
会 場 駒沢大学深沢キャンパス アカデミーホール
主 催 公益社団法人 玉川法人会
【 あいさつ 】 玉川税務署 署長 金三津小志郎 様
昭和24年にシャープ勧告があり、勧告に基づいて税金は各自が申告する制度に変りました。それ以前は税務署が納税額を決めていました。それでも
利益や財産を隠す人が多かったので、昭和22年に「第三者通報制度」が出来ました。当初は密告によって徴収された額の10%が報奨金とされていま したが、昭和25年にはその最高額が10万円となりました。29年には最高額は50万円に改定されていますがその後廃止されました。昭和25年頃の大 卒初任給は3,000円です。
昭和22年から25年までは手数料を払えば他人の納税額を見ることが出来たので、一般の人が脱税を知ることが出来たのです。
高額納税者の告知制度があって、名前と納税額を発表していましたが、平成18年に個人情報保護法が出来て、告知制度は廃止されました。
昭和31年に、「納税者の声を聞く旬間」が設けられ、毎年10月に10日間これを開催していましたが、昭和49年に「税を知る週間」に改められ、平成16
年に現行の「税を考える週間」になって、その行事として、本日の講演会となっております。
岸 博幸氏 講演会 「日本は本当に大丈夫なのか」 ( 政治・経済・税制の問題点を斬る )
略 歴 1986年 3月 一橋大学経済学部卒業
同 年 4月 通商産業省入省
1990年 7月 コロンビア大学ビジネススクール留学
2006年 9月 経済産業省退官
慶応義塾大学 教授に就任
兼 任 エイベックス・マーケテイング取締役
放送問題 タスクフォース委員
【 講演要旨 】 公開画像を利用
実は二つの理由で、私は今日の講演には出たくなかったのです。 理由の一つは、本日の講演会が法人会の主催ということでした。法人会の役目は
正しい納税ということですが、私は日頃から税務署の上部団体であるところの財務省を批判し悪口を言っている一人です。税務署の人が来ているでしょ うからきっと気を悪くすると思います。
もう一つの理由は、私がやしきたかじんの番組に出ているからです。この番組に出ている下品な私に関西の人は期待しているのです。したがって、西
日本や北海道から呼ばれたら喜んでいきますが、関東エリアでの「東京タックル」では私は上品にしているので、関東の一都六県では講演はしないこと にしているのです。来る途中でもどうしようかなと、悩みましたが、私を呼んだことを後悔してくれるほうが良いので,出ることにしました。
6時からの講演会と言うと夕食時間で、皆さんも腹が減ってイラつくでしょうし、私も8時半まで食事が出来ないので腹が減って気分が悪くなると思いま
す。人間の集中力は90分もは続きません。大学の授業と同じです。じっと座って90分は退屈するから持たないのです。
私は民主党が大嫌いです。民主党支持の方は早く帰ったほうが良いです。竹中平蔵が小泉内閣の下で郵政民営化担当大臣になった時に私は秘書官
でした。民主党が政権をとってもうまくいくはずが無いと思っていました。この2〜3年の民主党のていたらくはどうしようもありません。
「近いうちに解散」と野田首相が言っています。次の政権を決める選挙が近いうちにあります。おそらく自民党が勝って自民党政権になるでしょう。民主
党政権を振り返るのに良いタイミングだと思います。民主党の経済政策では、日本の経済が悪くなります。7〜9月期の成長率はマイナス0.9%、年率 換算ではマイナス3.5%でした。どこに行っても景気が悪いという声ばかりで、地方にいくほどよくないのです。
この秋には中国問題(尖閣問題)がおきて、さらに悪くなっています。では、日本経済は何時から悪いのでしょう?。東日本大震災からですか?。リーマ
ン・ショックからでしょうか?。いろんな説がありますが、デフレーションが諸悪の根源です。日本はデフレがもう20年間続いています。デフレが20年も続 いたという国は世界で始めてです。銀行の貸付は絞られる、その中でリーマンショック、円高、地震による電力料金の値上げ、今の日本経済の実情では 民主党政権に合格点はあげられません。
消費税の増税は必要です。国の借金は1,000兆円に迫りGDPの2倍になっています。これの解消には50年は掛かります。今の税制は直接税に偏
りすぎておりこれの修正が必要ですが、タイミングを考える必要があります。
経済政策を達成させるためには、税率を上げるか政府の歳出を減らすかしかありません。デフレの中で増税すれば景気が悪化するだけです。デフレ
の中で増税するのは経済政策から考えると間違いです。デフレは金融の問題ですから、日銀の供給を増やすことと、需要を増やすこの両方をやらない とだめなのです。リーマンショックのとき米国はドルの供給を4年間で3.2倍にしました。EUもその4年間で2.4倍に増やしました。日銀はその4年間で 総資産の1.3倍に供給を増やしただけでした。米国やEUはデフレではないのです。デフレの日本が1.3倍ではデフレからの脱却は出来ません。
為替は円とドルの交換比率を決めているだけです。ドルの希少価値は高くなって当然です。日銀はなんで金融緩和をしないのでしょう。日銀はやりたい
政策を羅列しているだけです。デフレ脱却の責任を負わされることを恐れて、日本の経済より自分の庭先のことを考えているからです。
財務省は日本の財政を考えねばならないのです。増税が最も手軽ですが、根本の政策が間違っていれば財政は良くなりません。消費税を3%から
5%にして以来、一度も景気は良くなっていません。政府の無駄をカットした上で増税した国が成功しているのです。日本の場合政府は無駄な歳出を切 ったとは言えません。2〜3兆円は切りましたが、公務員の給料、政治家の給料、民主党のバラマキがダメなのです。民主党が作る政府予算は95兆円 です。自民党時代には、小泉政権の2006年が81兆円ですから14兆円も増えています。日本は高齢化が進んでいるといいますが、高齢化予算は5兆 円です。民主党は自分たちの政権維持のためにバラマキをしているのです。
選挙が近くなり、各党の経済政策をみてみましと、自民党の安倍さんは総裁選挙のときにデフレに関して良いことを言っていました、しかし、自民党政
権になっても無駄を切れるものは無いでしょう。
東日本大震災があって、大震災に強い国造りをしようということで、公共事業に10年間で200兆円出そうとしています。今の一般財政では5〜6兆円が
公共投資です。これを年20兆円にしようとしているのです。
自民党はTPPには反対の立場です。しかし、貿易の自由化は進めなければなりません。交渉には参加すべきです。自民党は原発にも後ろ向きになっ
ています。エネルギー政策の達成すべき問題は、短期的には原発は絶対必要ということです。エネルギーの安定供給は必要です。逆に20年あれば他 のエネルギーへの技術進歩が可能です。正しい経済政策のためにも原発は続けたいと思います。
民主党の3年間のバラマキの結果、政府に甘えるようになった民間の責任も大きいものがあります。政府はトヨタ、パナソニックに特注品を作らせて、
これを買い叩いています。自民党の幹部がシャープに金を突っ込めといっています。自民党も民主党も大して違いません。そこで国民は第三極に頼るよ うになりましたが、これがまた頼りないのです。郵政民営化に反対した立ち枯れ日本(たちあがれ日本)や、石原、維新の会はこのままでは勝てません。
中国では日本の大企業の収益が尖閣問題の前から落ちていました。日本全国の再生は難しくありません。日本の最大の強みは民間の地方の現場の
人たちの力です。震災後殆どの工場は1ヵ月後には再開していました。政府は何もやっていません。現場の人たちが自分たちで復旧したのです。地方の 現場力は強いです。震災直後に避難所はたくさん出来ました、NPOの人たちが避難所ごとに食事時間、風呂の順番、など規律を決めたのです。岩手県 の宮古では震災の6日後にバスは動いたのです。自分たちの力を合わせたからです。アメリカにハリケーン(サンデー)が来ましたが現場が弱いので、マ ンハッタンは通過した4日後でも電気は停電、バス待ちの列が2kmにもなりました。いつ電気も携帯の電波も復旧するか見通しが立たなかったのです。 米国はエリート層は対応したのですが、現場が全然弱くてダメなのです。日本の政府が復興庁を作ったのは11ヶ月も後だったのです。日本は現場が強 いからここまで復興成長できたのです。
高度成長の初期に自動車産業を強化しようとして、通産省は四輪車を作るな二輪車を作れといったのです。席を蹴ってバカヤローと言って四輪車を作
ったのがホンダなのです。民間の力を発揮させるにはデフレからの脱却が必要です。地方分権が必要です。政府の縦割りの中では地方は何も出来ま せん。円高を是正してもらうだけでも効果があります。今は民主党のていたらくだけでなく、民間でも力が落ちています。改革が無いのです。
先進国の経済はグローバル化しています。デジタル化がすすみ携帯もスマートホンに変りつつあります。あらゆる産業もデジタル化しています。企業の
収益の増加と雇用の増加が比例しなくなっています。米国の経済は危機まえの状態に戻ったが雇用が回復せず、失業率はサブプライム前で4%だった ものが今は7.8%です。企業はグローバル化の中で勝っていただかなければならないのです。政治のリーダーシップが無いのです。
民間でも同じです、私の関わっている音楽関係でも、CDの売り上げは10年間で6,000億円から2,400億円になりました。違法コピーが増えた、違
法コピーが悪いと言っていますが、昨年AKBはCDを100億円売っています。AKBはCDに投票権や握手権を付けて売っているのです。AKBのジャン ケン大会は日本武道館を3時間借り切ってやりました。普通は小娘とのジャンケンに3,000円は払いませんよ。ネット、携帯、アプリが増えたにも関わ らず違法コピーが悪いと言い、20年前と同じ売り方をしています。人口が減れば国の力は減ります。自治体の中で地方民権をやりたいと思っている人 は少ないのです。地方には予算がいっぱい来て余っています。地方の経済が良くなるには、国の経済が良くなる。イノベーションを高める。ことが必要で す。
アイホンは世界経済が悪かった2007年に売り出されましたがここまで普及しました。何でもいいのです、新しいものを作る、新しい売り方をするので
す。ガリガリ君はコーンポタージュスープ味を発売してヒットしています。アイスがコーンポタージュですよ、つぶつぶ感を出したのも成功の秘密ですが、こ んなものは現場しか造れません。
宮城県の女川は人口1万人の町で1,000人が震災で亡くなりました。人口減、高齢化のすすむ町で、震災前の水産加工業は規制に守られていまし
たが、新しいことをやって立ち直りに成功しています。東京も含めて日本の民間の力は強いものを感じます。イノベーションの要素はどこにでもあります。 これを取り上げることが出来れば日本の再生は必ず出来ます。逆にこれをやらなければ日本は衰退します。環境の変化に乗り遅れると必ず衰退しま す。政治がアホだからというのは、違法コピーが多いからと言うのと同じです。 自治体の力ではダメです、民間の力、民間のリーダーシップを高めて欲 しいと思います。
企業はグローバル化して稼ぎ、国内にその富を分配して欲しいと思います。
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