遠藤 功 早稲田大学BS教授 講演会



             講演会 「日本企業が生き残る道・・・日本品質の創造」
                                                   河野 善福 記載
       主催 日本政策金融公庫   新宿支店
       日時 平成23年1月26日(水)
       場所 ハイアットリージェンシー東京 地下1階                    (講演の概要を筆記したもので、お話のすべてではありません)
       講師 遠藤 功氏
       経歴 早稲田大学商学部卒業。  米国ボストンカレッジ経営学修士。
           欧州系最大のコンサルティング・ファームである潟香[ランド・ベルガーの日本法人会長。
           早稲田大学ビジネススクール教授。   中国・長江商学院客員教授。

   「 講演要旨 」
 昨年の今頃、トヨタ自動車は品質問題で追い詰められていました。理由は色々あったが、あそこまで大騒ぎする必要があったのだろうかとおもいま
す?。パナソニック、ソニー。花王なども品質の問題でパッシングを受けました。
 日本がおかれている現況は元気が無いのです。業績は決して悪くは無い会社が多いのですが、先行きが不透明で元気が出ないと言っていいでしょう。
日本は高度成長期から駆け上がってきたのですが、永遠に続く成長と言う物は無いのです。企業の成長は30年とよく言われます。失われた15年間とい
われるが、この間矢印はずっと下向いてきたのです。今を過去の50年の終わりと思うのでなく、次の50年の成長曲線のスタートだと思わなければならな
いのです。過去を引きずっていてはいけません。次の成長曲線と過去の成長曲線は背景が違うのです。これからは環境問題を無視できないのです。
鳥の目で見てみると、今カタールでアジアカップを遣っています。気温50度の砂漠の国に数十兆円の富があるのです。GDPを国全体で見ている国は日
本だけです。日本のGDPは一人当たりでは世界で23位であり、カタールは一人当たり第1位で8万ドルあまりあります。4人家族で有れば3200万円ある
事になります。
 中国・インドは魅力のある国です。市場の魅力も有るのですが、これからは鳥の目で見た競走相手として魅力があります。
 虫の目で見ると、日本は現場力が落ちています。現場が自信を喪失し思考を停止しているのです。鉄鋼は世界のベスト10の内の5社が中国です。新
日鉄がかっては世界1だったのですけれど、今は8位で来年はベスト10外になるでしょう。中国には鉄鋼会社が500社くらいあります。今は国内に需要
があるから良いのですが、需要が減り供給過剰になったらダンピングが始まります。
 日本の企業は戦略転換をしなければなりません。価格競争から脱出し、体格でなく体質で競うのでなければなりません。プレミアム市場は世界中に存
在します。現場力をもう一度取り戻す必要があります。日本は現場をコストセンターではなくバリューセンターと見てきました。「安くしなければ売れない」と
いう意識が蔓延しローコスト経営を遣ってきたのです。しかし、これからは日本企業が低価格で生き残ることは困難です。エアコン市場を見ても中国の8
000万台に対し、日本は700万台です。中国のトップメーカー格力の2000万台に対し、日本のダイキンはたった500万台の生産力なのです。しかし、
ダイキンはエアコンのベンツと言われています。日本企業の生きる道は、脱低価格で進化させた品質です。過去と同じ品質で良いわけではないのです。
 トヨタのプリウスは0.0秒の遅れで違和感があるとされました。プリウスがハイブリッドをここまで広めた技術力は素晴らしいものです。見える不良を絶
対に外に出さないという品質を守るリスク管理が必要です。製品の複雑化と技術進歩が不良を見えなくしています。
 車のリコールを原因別に見ますと、2004年には設計上の問題が3倍に増えています。大半はソフトウエアの問題で、この年から自動車そのものが変っ
てきたのです。現在は開発費の大半がソフトウエア費なのです。
 主要製造業の海外生産比率は、車が52%、精密機器33%、電気・電子41%、繊維38%となっています。従前の日本製品の品質は、「満足」ではな
くて、他が悪かったから「不満でなかった」だけです。製品の機能面「壊れない」、「長持ちする」だけではなくて、情緒面「わくわくする」「ときめく」を高める
など差別化が必要なのです。機能だけなれば、すでに中国、韓国、台湾が日本に追いついているのですから。
 顧客が物を買う前には、「ストーリー・物語性」を求めています。物を買うときには「どこでも、いつでも」買える物はだめなのです。「私しか」「ここでしか」
「今日しか」買えないものがよい物なのです。接客(サービス)も大切です。使用したときの「アフターサービス」も大切です。情緒的品質を高めるのです。
希少性(供給が需要を上回らない)を高めることも必要です。何時でも。何処でも、誰でも買えるということはプラスにはなりません。きめ細かいサービス
で、客はストーリーを買ってくれるのです。ストーリーに基づいた商品を開発しましょう。今までのマーケティングとは大きく違わなければなりません。
「マザーハウス」は山口絵里子社長が2006年に創業した会社で、「途上国から世界に通用するブランドを作る」を理念とし、バングラデシュのジュートを使
用したバッグをバングラデシュで生産し、日本で販売して成功しています。山口社長は商品のデザイン、品質にこだわる一方で自分たちの取り組みを「ス
トーリー」として発信し、世代を超えて共感を得ています。
 すべての品質問題をつぶすことは出来ません。現場力の強化が必要で、一体感・チームワーク・結束力を高めねばなりません。戦略をつなぐためには
道具が要ります。「つなぐ化」は人間力で戦略をたて、横をつなぎ、縦の人間関係をつなぐのです。顧客を味方につけて、顧客と共に「日本品質」を創造
するのでス。トヨタはフラット化をはかり、課長の下のあった係長をなくして担当者だけにしました。
 多くの日本企業には今「ノリ」がありません。「ノリ」は会社全体の雰囲気、気分、ムードです。「ノリ」が悪い会社では逆転も挑戦も起こりません。一人1
台パソコンは「ノリ」を悪くしています。サントリーは今ビールが売れ出し、セサミンもウイスキーも売れ出しました。サントリーの「やってみなはれ」精神が
「ノリ」を良くしているのです。「大丈夫か?」は「ノリ」を悪くします。「ノリ」は自然に生まれるのではなく意識的に造るものです。「ホラ」は「ノリ」とひとつで
す。「ノリ」を創造するためには「ホラ」が必要です。「神輿」がなくては誰も担げないのです。「ノリ」が日本品質を創造するのです。「ノリ」を良くするために
は「仕事が面白い」ことが第一条件です。仕事を与えたら「認める・誉める」のです。人間同士の「きずな・仲間意識」を高めるのです。ムードメーカーを職
場に配置すれば、職場の雰囲気「ノリ」は伝染します。
    「一丁やったるか!」という空気を社内に作るのです。
 今日本は、「過去の50年の終焉」に居るのではなく、「次の50年の入り口」に居るのです。
                                                                        以 上

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