第30回 新政研21フォーラム

                                             (このページの写真はすべて私が撮影した写真です)    河野 善福 記

          日  時  平成21年5月20日
          場  所  グランドプリンスホテル赤坂  「五色の間」

        福田 康夫 先生  挨拶

最近は国の施策の中継ぎ役として、中東、インドネシア、アフリカなどに月の内半分は出かけており、
これらの国と日本の関係がいかに緊密であるかを確認する旅を行っておりとても忙しい。 中東の
サウジアラビアやバーレーンは原油産出国であり、米国第5艦隊が駐留する国である。 アブダビは
親日の国で、国王の依頼により国内に日本語学校を作り、現地人の子供も入学しているくらい日本
に親しみを持っているし、日本は人材育成に協力している。 この国は原子力発電を検討中で、これ
を日本が受注できれば大きい仕事になる。 
 昨年は環境危機に関するフォーラムが多く、今年は経済中心の旅が多い。 先の国際会議の中心
議題は中国の経済であった。 近年の中国の経済は無視できない。 今年のGDPは日本と同じくら
いになる。 中国の成長は米欧でも話題になっている。 途上国は遅れて居るがお金も貸し、技術援
助もして、育てなければならない。 日本がそれを前向きに実行しているを世界が認識し、認めてくれ
るようになった。 その方向性つくりの旅を末吉さんの協力を得てやってきている。
 政治は日替わりメニューであり、明日がどうなるか判らない。 新型インフルエンザももう少し落ち着かないと判らない。 暑い時に選挙をすることになる
が、これも相手がいっぱいあってきりがない。 皆さんには正確な情報を得て、正しい判断をしてもらいたいと思っている。










                             平成21年5月20日



                                国連環境計画 金融イニシアチブ 特別顧問
                                 末吉 竹二郎 氏     



                    「わが国の進む新たな道」   



     【講演要旨】

 私は「わが国の進む新たな道」は大きく見て楽観している。
 今の世界の現状を見ると、地球は限界を越えている。 まず3つのFの危機がある。 燃料(Fuel) 食料(Food) 金融(Finace) である。 さらに地
球の温暖化と言う問題がある。 もともと北極は海だった。9月に小さくなり、秋口から翌年3月にかけて大きくなる。これを繰り返してきた。 それが年を
追うごとに小さくなっている。 北極は地球の冷蔵庫の役割を持っているが、2100年には氷が無くなる。 早ければあと5年で氷が消える。九州では高温
障害が発生している。田植えの時期に25度を超えると米は実をつけないし、現状でも1等米が35%しか作れていない。 ジュンソン氏の試算によると、
ロンドンではこのまま温暖化が進めば、近々大洪水が発生し、125万人が水没により家を失い、地下鉄の駅も72が水の下になると言う。
 地球の自然の恵みである空気、木、森、海などから1年に再生されるもの1986年を100とした時、2008年は9月23日で使い切って、年末までに使
った数値は140であった。 これが何時までも続けられるわけが無い。
 2009年の世界の人口は67億人である。 そのうち10億人が飢餓に苦しみ、同じく10億人が肥満症で困っている。 100年前の人口は16億人で2
050年には91億人になると予測されている。
 温暖化対策に各国の取り組みが始まった。 オバマ大統領は「Yes、We Can.」を合言葉に変革を掲げており、地球温暖化問題にも本格的に取り組
む姿勢を見せている。 英国は「気候変動法」を制定し、政権与党がどう変わろうとも、”環境”に関しては実施する方向を、法律により定めた。 中国も
今年「循環型経済法」という新しい法律を作って、環境の目標を定め、これをクリアできない企業は排除することとした。 EUも2050年に向かってCO2
を減していこうと言う取り組みが始まった。 訴訟の国、米国では車からの排気ガス(CO2)は大気汚染物質である、という訴えを連邦最高裁が認めた。
 温暖化問題はコストがかかるので、「産業界ではコスト負担をすべきでない」と最近まで言っていたが、今日では「自ら負担すべきもの」と変わり、さらに
「消費者も一緒になってやるべきこと」と変わってきた。 米国のUSCAPは「環境の問題は遅れれば遅れるほど被害が大きくなり、早ければ早いほどコ
  ストが小さくて済む」と発表した。
 日本の年金資金の運用額は公的、私的なものを合わせて276兆円あると言われ、世界の金融資金の4分の1は年金資金だと言われている。 この
金が誰の判断で、何処に投資されているか、何に投資するかで世界は大きく変わる。 「温暖化に取り組まない企業からは資金を引き上げろ」という声
が近年高まっている。 「儲かるから投資する」という姿勢から「温暖化防止に積極的であるから投資する」という姿勢に変化している。 「石炭を使って安
い電気を提供する」から「石炭はCO2が多いから見直そう」という動きに変わってきた。
 「消費者を変えないと経済は変わらない」と考える人達が出てきた。 「すべての消費者に環境配慮の商品(高い)を買ってもらおう」という運動も始まっ
た。 ”カーボン・フットプリント”と言って、「その商品が出来るまでにどれだけのCO2を使ったか」を商品に表示することが始まった。 ”秋田こまち”は7
700g、”ワイシャツ1枚”は9000gと言った表示をする。 また”フード・マイレッジ”と言って畑から台所・食堂までどれだけの距離を経て届いたかを表示
するもので、遠い国からの輸入品が多い日本は9000億d、米国は3000億d、フランスは1000億d、運んで食べていることになる。 
 ヨーロッパではペットボトルをやめて、ガラス瓶に戻している。 またパリでは貸し自転車が2万台あり、車に乗るのをやめて、好きな時に好きなところか
ら乗って自由に使う商売が繁盛している。 新しい価値観は”CO2を出すことは悪いことだ。減らすことは良いことだ”だから減らそうとなった。 日本もエ
コカーへの支援は25万円となった。太陽光発電には国・都・区から3重に補助金が出る。エコポイントの配布も決まった。自動車税も大きさで決まってい
たものが、CO2の排出量に課税の基準が変わる。 ドイツは9年以上乗ったガソリン車をエコカーに乗り換えれば32万円支給される。 2年前には温暖
化防止の話をすることさえ憚られた。 洞爺湖サミットで福田氏は議長として、排出量取引制度の導入や、2050年にはCO2を半減しようと呼びかけ
た。
 民主党は、CO2の排出を2020年には25%削減、C&Tの導入。 自民党は低炭素社会形成促進法を提案し、各党とも温暖化に関するマニフェストを
出す。
 21世紀を動かす要因は、地球温暖化の防止とエネルギー資源の枯渇にどう対処していくかであり、貧困・格差・飢餓など負の遺産の是正である。 安
全な水、人権、教育など皆で助け合う世界を作ることである。 お金で計れる価値も重要であるが、お金では計れない環境・文化・社会・倫理なども重要
である。
 会社は誰でも作れる。 だが企業に求められているのは、誰が究極の責任を持つのかと言うことである。 個人の借金は最後まで個人の責任で付いて
くる。 しかし、会社の借金は倒産すると誰も責任を負わない。 社会は会社には特典を与えている。 経済の回復、雇用の回復も重要である。しかし、
今までどうりのことをやって経済が回復しても短期で終わる。 世界ではCO2を出さない分野にベンチャーキャピタルが集まっている。
 自然エネルギー分野での新興企業は驚くべき成長を遂げている。 スペインのIberdrola Renovablesは、設立後まだ10年たっていないが、時価総
額1兆7000億円である。 これ以上の会社は日本には20社も無い。 中国のSun Techはやはり10年たっていない会社であるが、創業者は中国で
第12位の資産家で1,300億円持っている。
 麻生首相は新たな成長を目指して、20年には50兆円の市場と140万人の雇用を提唱した。 日本は環境技術を世界と共有して、世界でなくてはなら
ない国になる。 世界の人に「自分の国以外で消えては困る国は?」と聞いたとき、「日本」と言われる国になりたい。 
 農業、水産業など第1次産業を復活させる、またとないチャンスである。 シャープは大阪の堺市に、太陽光発電のパネル製造工場を作る。
19世紀の米国先住民の言葉に「最後の木が死に、最後の河が毒され、最後の魚を取った時、人はお金は食べられないと気づく」と言うのがある。 日
本の子供は、世界最高の携帯電話を持っている。 だけど、家に帰って冷蔵庫を開けて、中に何にも無かった時、電話は食べられない。

 (挨拶および講演の概要を筆記したもので、発言のすべてではありません) 
                                                        記  河野 善福