きみに読む物語 THE NOTEBOOK




 全米で450万部売れたニコラス・スパークスのデビュー小説の映画化されたもの。 ”・・・だから、君が思い出すまで
僕は読む” 記憶障害の老婦人に読んで聞かせる純愛物語。 監督 ニック・カサヴェラスは老婦人役のジーナ・ローラ
ンズの実子。   H17.02.05 鑑賞記載 



                                                                      〔文中に挿入している花はすべて私が撮影した写真です〕          河野 善福
【キャスト】                
アリー・ハミルトン (レイチェル・マクアダムス) 南部の大都市チャールストンの裕福な家庭に育った子女。 
               17歳の夏休み避暑地で青年ノアと知り合う主人公。
ノア         (ライアン・ゴズリング) 製材所に勤める村の青年。 アリーに一目ぼれする男。
アリー・カルフール (ジーナ・ローランズ) アルツハイマー病で記憶障害のため入院生活中。 病院でデユーク
               から物語を読んで聞かされる老婦人
デユーク・カルフール(ジェームズ・ガーナー) 老婦人に物語を読んで聞かせる老人。
ロン・ハモンド・ジュニア(ジェームズ・マーズデン) 戦傷者病院で入院中にアリーと出会い、結婚する男。
アン・ハミルトン (ジョアン・アレン) アリーの母親。 アリーとノアの結婚に反対する女性。
ファイン       (        )   ノアの親友の男。 サリーと恋仲。
          
【ストーリー】
  アメリカ南部ノースカロライナ州の小さな町シーブルック。 1940年の日暮れ時、沈みかけた太陽を遠く正面に見
て、一人乗りのボートがゆっくりと自然豊かな静かな川面にオールの波跡を残して進んで居る。 やがて夕日も沈み老
人の漕ぐボートの上をねぐらに急ぐ渡り鳥が飛来する。 美しいが荒涼とした川をボートが静かに進み療養所の下まで
来る。 部屋の窓辺に老婦人がたたずみその様子を見ている。

  療養所の一室。 「入るわよ!・・」女性の介護士がドアをノックして入ってくる。 介護士が「いいお天気よ。・・お散
歩しましょ」と言うが、アリー・カルフーンは「悪いけど今日は気分が乗らないの。・・・物語を聞くのも止めとくわ」と元気な
く答える。 老婦人アリーのところに今日もデユークが来る。 デユークはアリーにある物語を読んで聞かせている。 介
護士が「今日アリーは疲れているから、物語を聞くのをやめるそうですよ」と伝える。

        ”私にはただひとつだけ誰にも負けなかったことがある。・・・ただ一人の人を愛したことだ”  

 今日もデユーク老人が療養所に来て、アリー・カルフーンと二人で休憩室に行く。 デユークが本を広げて「さてと・・・
どこからだったかな?」とアリーに聞く。 「祭りの夜のところだったな・・・1940年6月・・アリーは17歳。・・そこまでだっ
たな」

 シーブルックの祭りの夜。 遊園地は若い男女が笑い騒ぎ遊んでいる。 町の青年ノアが一緒に居る親友のファイン
に聞く「サリーと一緒にいる子誰だ?・・」 「サリーのところに夏休みだけ遊びに来ている子だよ」  ノアがサリー達のと
ころに近づいて少女に「綿飴食べる?」と声をかけるが無視される。 みんなが踊っているところに行く。 ここでもノア
は少女に「踊らない?・・」と話し掛けるが「いやよ!・・」とあっさり断られる。 サリー達が二人づつに分かれて観覧車
に乗る。 少女は仲間の男性と並んですわり高く上がり始める。 その時、ノアが走ってきて観覧車に飛び乗り二人の
間に座る。 観覧車の運転係が「観覧車は二人乗りだ!」と叫んで回転を停止する。  ノアはいきなり少女に「デートを
してくれ?」と言う。 少女が「いやだ!・・あんたなんかきらいだ!」と言うが、しつこく「デートの約束をしてくれ」と迫る。
 少女が拒否すると、「じゃーしょうがない」と言って座席の前に見える鉄棒に飛びつきぶら下がる。 「馬鹿なまねはす
るな」と隣に座っている男が言う。  ノアは「デートするのかしないのか?」と問う。 返事が無かったので今度は片手を
離して脅かす。 少女がたまらず「デートをして・・・」と言うと、「本当だなデートしたい。・・・と言え」と迫る。 「デートし
て・・」 「もう一度言え!」 「デートして・・」と答えてから、気を取り直した少女は目の前にぶら下がるノアのズボンのベ
ルトを外して、ズボンを引き降ろした。 ノアはパンツひとつで鉄棒にぶら下がっていた。

 町でノアが少女と出会う。 「僕を覚えてる?・・」 「パンツの子でしょ」 「人目ぼれだよ・・」 「よく言うわ・・・誰にでも
言うのね」 「デートの約束しただろう・・・?」 「いいえ」  「おれは好きな物はものにしないで居れないんだ。・・・君が
望めば道化でも何でもする」 「馬鹿ね・・」 「一度位いいだろ・・」 黙って少女は待たせておいた運転手付きの車に乗
り込んで帰って行った。

 ファインとノアが映画を観に行く。 映画館の前にサリーと少女が居る。 サリーがノアに「アリーよ・・ 覚えてる?」と
少女を紹介する。 映画館の中でファインとサリーは映画を見ないで二人抱き合ってキスをして居る。 アリーが一人ぽ
つんといる隣にノアが移動して二人は並んで映画を観る。 映画館を出てファインはサリーの車に乗る。 「乗れ
よ!・・」とファインに誘われるが「僕たち歩くよ・・」と言ってノアとアリーは夜の街を歩く。 アリーが「ああ面白かった。・・
映画館って何年振りよ」と言うと、ノアが「忙しいの・・・」と聞く。  アリーは「朝からスケジュールがいっぱいでピアノにフ
ランス語にテニスに・・・大学もサラローレンス大を目指しているの。・・・だから暇が無いの・・・自分ではどうでもいいこと
だけど、やれって親に言われてるから」と言う。 ノアは「君には驚くよ。・・やりたいことは何なの?・・何をやりたい
の・・」と聞く。
 信号機のある十字路まで来た時、ノアが「こっちにおいで・・」と言ってアリーを車道に連れ出す。 アリーは「何する
の?」と言っていぶかしがる。 ノアは十字路の車道に大の字になって寝て、「よく親父とこうして信号が変わるのを見て
いた。・・・やってみろよ」と言う。 躊躇するアリーにノアは「それが君の悪いところだ」と言う。 「いいわ・・」と言ってアリ
ーも車道に並んで大の字に寝る。 「もし車が来たら?・・・」アリーが問う。  「死ぬ・・」ノアが答える。 アリーが「私の
好きなことは絵を描くこと」と言う。 車が警笛を鳴らしてやってくる。 二人は飛び起きて歩道に走る。 アリーがゲラゲ
ラ大笑いしている。 「何がおかしい?・・」 アリーは「面白かった」と言ってまだ笑っている。 ノアが「踊らないか?」と
アリーに問う。 「今、ここで?・・・歌が無いわ・・」 「唄うよ」 ノアが歌い、二人は道路で二人だけのダンスをする。

 デユーク老人が「南部の夏は若い二人に火をつけた」と言うと、聞いていた老婦人アリー・カルフーンが「恋をしたの
ね・・・」と聞き返す。

       ”それ以来、アリーとノアはいつも一緒だった。”

 アリーとノアが町を歩いている。 歩きながらアリーが食べかけのアイスクリームをノアの口に押し付ける。 ノアの口
の周りの顔にアイスクリームがいっぱいついたのを観て、アリーは笑いながら自分の舌で顔のアイスクリームを舐めて
取って、そのまま二人は抱き合って夢中でキスをする。

 夜、ノアの家の外でノアと父親がテーブルを挟んで詩を読んでいるところに、アリーが自転車に乗ってやってくる。 父
が挨拶してアリーを家の中に案内する。 アリーが「あなたにあげたくて・・」と言って絵を持って来てくれた。 ノアがお礼
の詩を朗読する。 アリーが「さっきの詩素敵だったわ」と言う。 父親が「詩の朗読をさせたら、どもっていたのが治っ
たんだ」と教える。 父親はアリーに「朝食を食べていかないか?」と聞く。 ノアが「パパ・・まだ夜の10時だよ」と言う
と、父親が「夜だって朝食は食べれるさ」と言って、三人はテーブルを囲んでパンを食べる。

 海、アリーとノアが海に来ている。 水着になったアリーが波と戯れている。 海鳥が頭上で群れ飛ぶ。 アリーが両手
を広げて鳥のように飛ぶまねをする。 「あなた・・・鳥よ」 「君が鳥だろ」 二人は抱き合って波と戯れる。

 夜、町の広場でダンスパーテーが開かれている。 みんなが音楽に合わせて踊っている。 アリーとノアも楽しそうに
ダンスに興じている。 アリーの父親が来て「踊ろう・・」と言ってアリーと踊る。

 アリーが家に帰る。 父親が「ずいぶん仲良くしていたね。・・・彼を日曜日に連れていらっしゃい」と言う。

 アリーの家の庭で知人を招待しての食事会が開かれている。 みんな上流家庭の人らしくドレスで着飾っている。 父
親が酒に酔って猥談を始める。 母親がそれを制し話題をそらす。 母親がノアに「仕事は何をやっているの?」と聞
く。 ノアは「製材所で働いています」と答える。 「給与はどのくらい?」 「時給で40セント」 一同が驚きの声を上げ
る。

 アリーの家の部屋の中。 父親と母親がアリーにノアのことは忘れろと意見している。 母は「好きになったのね・・・彼
を。・・でも夏は終わりよ」と言い、父は「ひと夏だけの思いでだ」と言っているのがノアのいる部屋まで聞こえてくる。 た
まらずノアは挨拶もせずアリーの家を出る。 アリーが後を追って出てくる。 ノアが「アリー・・・どこかに行くか?」と聞
く。 アリーがうなずいて、二人は車で夜の道を走り、川辺の古く荒れた二階家に来る。 明かりも無く朽ちかけた家に
二人は入っていく。 「足元が悪いよ・・気をつけて・・」 古ぼけた階段の前でノアが言う。「フランシス・マリオンがこの階
段で求愛をしたそうだ」 ノアは「この家を改造したい」と話す。 アリーは「家は白・・窓は青がいいわ」と言う。 アリーが
埃を冠ったピアノのカバーを取って暗闇の中でピアノを弾く。 ノアがそばに行ってキスをする。 アリーが「邪魔をしたら
いけないわ」と言いながらノアに抱きついてキスをする。 アリーが「抱いて!・・」と言って立ち上がる。 ノアが床の上に
広い布を広げる。 二人が離れたところで向き合って立つ。 アリーが上着を脱ぐ。 ノアも上着のボタンを外す。 二人
が見つめ合う。 アリーがイヤリングを外す。 ズボンを脱いで最後に二人とも下着を取る。 二人が歩み寄り布の上に
抱き合って倒れる。 アリーが言う「ノア・・私、”抱いて”って言ったけどこの先を教えて・・・」 さらにアリーが言う「何を
考えてるの?・・・こうなるつもりで来たの?・・しゃべりすぎたわ、ホントよ。・・・大丈夫?・・なぜ黙っているの?・・・私、
パニックなのよ」 しゃべり続けるアリーに気を削がれたノアが起き上がり、アリーも起き上がる。 ノアが「完璧にしたか
ったのに」と一言だけ言う。
 
 
 激しく家のドアが叩かれてノアが出てみると、親友のファインが「アリーの両親が心配して警察に捜させている」と言
う。 やがてパトカーや両親が来る。 父親が「午前2時だ・・娘が帰らなくて探さない親がどこに居る。 娘に話があるか
ら奥に行け」とノアに言う。 ノアが奥の部屋に行く。 アリーが「パパ・・許して・・」と謝り、母が「今度こそ規則を守らす
からね。・・・ノアと別れて・・」と哀願する。 母親はノアに聞こえるように「失恋か妊娠するのがオチよ・・・あの子はクズ
よ」と言う。 父親も諭すように「彼はお前にふさわしくない」と言う。 アリーは「彼は貧乏だし、洗練されてないけど私は
彼を愛してるの」と答える。 ノアは居たたまれず家の外に出る。 アリーが後を追って外に出る。 「ごめんなさい。・・・
恥ずかしくて・・・」とアリーが声をかける。 ノアは「いいえ・・」と答えるが振り向こうとしない。 「行かないで・・・」引き止
めようとするアリーに、ノアは「考えさせてくれ・・・俺は金のある暮らしとは無縁だ」と答える。 「私と一緒に来て・・・」 
「ニューヨークにか?・」 「そう」 「今決めなくてもいいだろ・・・夏の終わりまでに決めよう」 「私と別れるのね・・行かな
いで・・・夏の終わりまで待たなくても、今ここで決めればいいでしょ」 「・・・」 アリーが言う「終わりよ!」 ノアが叫ぶ
「早く帰れ!・・」 

  翌日、アリーが眼を覚ますと窓の下に荷物を満載した自動車が見える。 父、母、使用人たちがニューヨークに帰る
準備をしている。 アリーが母親に「家へ帰るの?・・私は帰らない」と言う。 母は「早く着替えなさい。・・たとえ嫌でも帰
るの。・・必要なら引きずってでも帰るから」と言う。 

 二台の自動車が出発する。 アリーはノアの仕事場である製材所に立ち寄る。 ファインを見つけて「フイニー!」と彼
を呼ぶ。 車を降りてファインのところに行き「ノアを知らない?・・急に帰ることになったの・・」 「ノアは仕事でちょっと
出かけてるよ」 「どうしても会って伝えたいことがあるんだけど」 車の中から「早くしなさい」と母の呼ぶ声がする。  
アリーはファインに「今も愛していると、どうぞ伝えて・・」とだけ言う。 ファインが「愛しているなら手紙を書けよ」と言う。
 アリーが急いで車に乗り二台の車が遠ざかる。 町の中を車で走る間もアリーはノアを探して必死だった。
 
ノアが製材所に帰ってくる。 ファインから話を聞いてノアは車に飛び乗り、アリーたちが過ごした家に駆けつける。 だ
が門が固く閉ざされて人の気配がしない。 

 デユーク老人が本を読む「そして彼は”今も愛している”・・・手紙を呉れと1年間、毎日、365日手紙を出した。しか
し、返事は1通も来なかった。 彼はファインとフインランドへ行った」 老婦人アリー・カルフーンが身動きもしないで聴
いている。
   ラジオが ”アメリカ合衆国はドイツと戦争状態に入った” と声高く放送している。

 ノアと親友ファインが身体検査を受けている。 フインランドで二人は軍隊に入隊する。 砲撃の続く前線に出て戦う。
 至近弾が爆裂しファインが倒れる。 ファインはそのまま動かぬ人となった。

 アリーは大学の教科として病院でボランテア活動をしている。 戦争で負傷した兵士のベットを見回っているとき、顔を
包帯で巻かれて眼だけ出ている男から声をかけられる。 「ねえ・・聴いてもいいか?。・・よかったら何処か行かない
か?」   「何言ってるのよ・・・デートなら傷が治ってから」アリーは殆ど聞き流しにした。

 アリーが数人の女友達と大学からの帰り道、校門の前で高級車の脇に立ち、立派な服装をした男がアリーたちを見
ている。 「すごいハンサムよ」 「あんたを見ているわ」と友達がアリーに言う。 男が近づいてにこやかに「直ちにデー
トしたい」言う。 アリーがよく観ると男性は病院で治療を受けていた男、あの男ロンであった。 

 ロンは南部の大富豪の息子であった。 ロンとアリーはデートを重ねた。 ある日レストランで食事中にロンが「ねえア
リー・・僕と結婚する気ない」と聴く。 アリーが「急に結婚だなんて・・・。両親の許しも得なきゃならないし、簡単じゃない
のよ」と答える。 ロンが「お許しはもう貰った・・」と言う。 「もう・・・」 「愛してる。・・・君に夢中だ」といって指輪を取り出
す。  アリーの薬指に指輪を入れる。 アリーが喜んで「ママに報告するわ」といって立ち上がるが、遠くの席で母はに
っこりとうなずく。 プロポーズを受けたアリーの頭の中に一瞬ノアの笑顔が浮かんだ。
 
 ノアと父親が川添いの古くなった家の前に要る。 父がノアの肩を抱き言う「この家を売る。・・これと復員手当で買え
る。・・・夢のウインザー農園だ」  ノアが言う「でもここを売ったらどこに住むの?・・」
  
 デユーク老人が老婦人アリー・カルフーンに読んで聞かす。 「その家は前にアリーが思い描いた家だった」 

 ノアが街でバスに乗っているとき、何気なく窓の外を見ていて歩いているアリーを見つける。 ノアは運転手に「止めて
くれ!。・・止めてくれ」と車内を走る。 運転手が「次の停留所まで無理だ」というと、 ノアは走っているバスのドアを開
けて、無理やり車道に飛び降りる。 走りながら探していて、アリーがレストランの中に入ったばかりで、店内を歩いてい
るのをウインドウの外から見つける。 ノアが店内に飛び込み入り口からアリーを見ると、ちょうど男が立ち上がりアリ
ーを出迎えているところで、二人は笑顔で抱き合ってキスをし、テーブル席に座った。 
 
 デユーク老人が老婦人アリー・カルフーンに続きを読んで聞かす「あの夜、一人で居たときのノアは正気を無くしかけ
ていた。 そして二人は再会した。 ノアは11月に父を亡くし、家だけが残った」

 ノアは古くなった家の改築をした。 新聞社が来て新しい家をバックにノアの写真を撮った。 家を買いたいと言う人が
次々と訪れた。 金額が折り合っても彼にもう家を売る気は無かった。 中には高額の申し出もあった。 ノアは客に
「5000ドルも多く払おうなんて正気か!」と言って追い返したり、銃を持ち出して追い返したりした。 ノアは近くに住む戦
争未亡人のマーサーとベットを共にするようになった。  ベットの中でマーサーが言う「何がほしいの?・・・時々あんた
は遠くに居る。・・私の瞳の中に他の誰かを見ている」 「俺は俺を見たいんだ。・・解ったか?」

 アリーの結婚式の日。 ウエディングドレスを着たアリーの周りで女友達が騒いでいる。 「きれいよ・・」 「ロンが観た
ら眼に入れたくなるわ」 口々にアリーが美しいと誉めている。 そんな時友達が「この町始まって以来の知事が来る
わ」と言って新聞の記事を見せる。 アリーはその新聞の下の方の写真に目が留まる。 新築した家の前に立つノアの
姿があった。 アリーとロンは盛大な結婚式を挙げた。

 アリーが夫ロンの事務所に行く。 「やあ君か・・よく来てくれた。・・どうした?」 アリーが言う「昔は絵が好きで描いて
いたのに最近描いてないの」 「出かけたいのか?・・一緒に行こうか?」 「遣り残したことを片付けたいの・・・一人で
大丈夫よ」 「本当に大丈夫か?・・・シーブルックか?」 「ええ」
    
 ノアの川辺の家にアリーが車で来る。 「家を観に来たの・・・新聞で写真を見たの」 アリーが言う「そしたら逢いたくな
ってわざわざ来たのか?」 ノアが「元気だった?」と聞くが、ノアは馬鹿にしたようにあざ笑うだけで返事をしない。 ア
リーはそんなノアの態度に腹を立てて「馬鹿ね・・・来るんじゃなかった」と言って車に乗り込み、急発進をして引き返そう
としたが、ハンドルが切れなくて車が切り株に引っかかり、車のエンジンが止まる。 あわててエンジンをかけようとする
がかからない。 「入らないか?」とノアが言う。

 老婦人アリー・カルフーンが「いいお話ですね」と言いながら涙を流す。 デユーク老人が「続きを話すよ」と言う。

 デユーク老人が病院の診察室に居る。 新任のバーンウエル医師がカルテを見ながら「この1年半に心臓発作が2度
ですね?」と聴く。 「・・1度は狭心症だ」とデユーク老人が答える。 「アリーさんは老人性痴呆症です」と医者が言う。

 ノアの家の中。 アリーがピアノを弾く。 ノアがアリーの薬指に光る指輪を見て「結婚したんだね・・・」と聞く。 「ロン・
ハモンド・ジュニア・・・いい人よ」 「ご両親はお喜こびだ」 「愛してるわ」 「そうかロンと結婚して、僕とは友達だ・・そう
だろ。・・・食事して行くか?」 二人は小さなテーブルを挟んで食事をする。 ノアが「酔っ払いと飲んだ気分はどう?」と
聴く。 アリーが「冗談はよして・・・なぜそんな眼で私を見るの?」と聴く。 ノアが「思い出した。・・・この部屋で二人
が・・・」と言う。 「ここだった」 「あの部屋だ」 二人は若かった昔の話に興じる。 アリーが「もう行くわ・・」と言って立ち
上がる。 外まで送りながらノアが言う「明日の朝、早くもう一度来てくれないか?。・・連れて行きたいところがある」 
「いいわ」 アリーが車に乗って帰る。

 療養所の庭でデユーク老人が老婦人アリー・カルフーンに本を読んで聞かせている。 そこにお見舞いの花束を持っ
て子供を連れた家族連れが二組やってくる。 「マギーです」 「デーバニーです」子供たちが名前を名乗る。 老婦人が
「いい名前ね」と言い、「彼は?・・」と子供の方に指を差す。 「エドモンドです」とその子が言う。 母親が「今日は何か
が違うわ。・・ママは一日経ったらみんな忘れるから」と言う。 父親が「ママは老人性痴呆症だから」と言う。 見舞いに
来たのはアリー・カルフーンの子や孫たちであった。 


 アリーがホテルの部屋に帰ると電話が鳴る。 受話器を取ると夫ロンの声がする。 「なぜここが?」 「その町にホテ
ルはここだけしか無いよ。・・連絡が無いから心配して100回も電話したよ」 「ごめんなさい心配しないで・・・明日は電
話するわ」

 アリーは朝早くノアの家に車で来る。 ノアが「急ごう・・嵐が来る」と言う。 二人は川に行ってボートに乗る。 朝明け
前の薄暗い、冬枯れの木々に囲まれた水面に、白鳥が隙間の無いほど羽根を休めている。 二人は静かには白鳥の
群れの中にボートを漕ぎ込む。 「どお?」ノアが聞く。 「夢みたい・・・」 「エサをやる?」 アリーがエサを撒く。 「鳥た
ちは何しているの?。・・本当に南に渡るの?」 「彼らは自分が住んでいたところに帰るんだ」 アリーが聞く「変わっ
た?・・」 「何が?・・君はいいほうに変わった」 「でもやっぱり同じよ」 またアリーが言う「あの家見事な仕上がりよ」 
ノアが「君に約束しただろ」と言う。
           

ゴロゴロと雷の落ちる音がする。 「来た!・・・帰らなきゃ」 すぐに雨が降り出し、大粒に変わる。 ノアがボートを必死
で漕ぐ。 アリーが頭の上にバスタオルを広げるが、すぐにあきらめて濡れるがままになる。 ずぶぬれの二人が桟橋
に帰り、アリーは家に走る。 ノアがボートを引きずりあげて家に駆け込む。 


ノアの家の中でアリーが言う「私は忘れてなかった。・・つらかった」 ノアが「僕は365日手紙を書いて、本当に出して
いた」と言う。 初めて手紙のことを知ったアリーはノアの胸に飛び込みキスをする。 二人が上着を脱いで下着だけに
なる。 アリーがノアに飛びついて、首に腕を廻し、足を腰に絡ませる。 ノアはそのままアリーを抱き上げて二階のベッ
トまで運ぶ。 ノアが靴下を取る。 アリーも靴下を脱ぐ。 二人はそのまま抱き合いキスをし結ばれる。  
 「信じてもいい?。・・・今日まで待ってたなんて・・・」アリーが聞く。 「もう一度抱いて・・・」とアリーが言う。 ノアが床に
布を広げて二人が横になる。 アリーが「ノア・・・」と言ってノアの顔を撫でる。 裸のままで二人が抱き合う。


「起きて!・・起きてよ」アリーがノアに言う。 「俺を殺す気か?」 「何か食べないと力が湧かないわ」 「パンケーキそ
れからベーコンも・・」 その時ドアがノックされる。 未亡人のマーサーが朝の食事を持ってきてくれたのだった。 パジ
ャマ姿でノアがドアを少し開けて顔を出す。 ノアはマーサーに挨拶のキスをして食事を受け取る。 マーサーが外の車
を見ながら「本命の女?」と聞く。 ノアがうなずくとマーサーが「会いたい」と言う。 アリーがパジャマ姿でドアのところに
来る。 「マーサーよ」と言って未亡人が手を差し出す。 アリーも「アリーよ。・・よろしく」といって握手する。 「入ってく
れる?」とアリーが言う。 「私?」とマーサーが確認する。 「どうぞ!・・入れよ」とノアが言う。

 日が暮れて未亡人のマーサーが帰るために立ち上がる。 マーサーが「楽しかったわ・・」と言う。 「私もよ・・」とアリ
ーが言う。 マーサーはノアに「すばらしい人ね・・・・来て本当に良かった」と言う。 「私、忘れないわ」とアリーが言う。 
ノアが「君にはお世話になった。・・お元気で・・」と礼を言う。 マーサーは「有難う・・」と言って車に乗って帰って行った。


アリーが朝ベットで眼を覚ます。 隣に寝ていたノアが居ない。 枕元に張り紙がある。 ”ぐっすり眠っててくれ、朝食を
買ってくる。・・ノア” アリーが起き上がって窓の方に行くと、そこにアリーがノアに始めて逢った夏に、ノアにプレゼント
した家の絵がある。ノアがこの絵の通りに改修したのでこの家の絵になっている。

 誰かがドアをノックしている。 アリーがドアを開けるとそこにアリーの母が居る。 「ロンが来るわ・・・」母があわてて
言う。 「面白くなりそうね」とアリーが言う。 アリーはさらに「手紙のこと話して呉れる。・・・私が何ケ月も泣き暮らすの
を無視したわね。・・話さなければいつかこうなるのは判っていたはずだわ。・・私はどこにも行かないわ」と言う。 母は
「目を覚まして・・・後悔するわよ」とアリーに言う。 

 アリーは車で母とアノの勤める製材所に行く。 ノアが働いているのが見える。 母が「あそこに居る男の人が・・・」と
聞く。 「今は面影が無いけど素敵な人よ」とアリーが言う。
 アリーが聞く「ママはパパを愛しているの?・・」  「パパは優しくてママには素敵な人よ。・・パパとは駆け落ちしたの
よ」と母が言う

 母とアリーは車でノアの家に行く。 ノアがポーチのイスに座って二人の車をみている。 アリーが車を降りて家の方に
歩いて行く。 「アリーッ・・」母が呼び止める。 アリーが振り返ると母が車のトランクを開けている。 母は手紙の束を
取り出し「これ・・」と言ってアリーに渡す。 母は「正しい選択をしてね」と言って車に乗って帰って行く。

 アリーが手紙の束を両手で持ってノアのところに行く。  アリーが「いつか来る?」と聞く。 「町に?・・」とノアが聞く。
 「ホテルに車が止まっているわ」アリーが答える。 ノアが「ついに手紙が来たね。・・・どうするの?」とアリーに聞く。 
「さあね・・」 「振り出しか?・・」とノア。 「まさか」とアリーが言う。 さらにアリーが「でも私にはホテルに亭主が待って
いるの」と言う。 「これは約束とか愛しているの問題じゃないよ、 この2日間はなんだったのだ」 「うまくやるのは難し
いわ」 「ずっと一緒に家に君が居てほしい。・・今帰ったら20年後も30年後も君は彼と一緒だ」 「どうやっても誰かが
傷つくわ」 「君はどうしたいのかね?」 「行くわ・・」 アリーは車に乗って帰って行った。
        
 アリーはむちゃくちゃに車のスピードを上げる。 頭が混乱してくる。 気がつくと前から大型トラックが迫ってくる。 急
ブレーキを踏み、ハンドルを右にいっぱい切って道路わきに乗り上げる。 止まった車の中でアリーは手紙の束の中か
ら古い手紙一通を引き抜く。 
   "アリー  僕たちは本当に終わったんだね。・・・でもあの愛は本物だった。・・・・二人の愛を育てた夏を思い出す
よ。 本当の愛は君が呉れた。僕もやりたかった・・・・”

 療養所の庭で老人デユークが、老婦人に話しかける。 「不安はわかるが心配は無い。・・・部屋の中に入ろう。・・・寒
くなって来たよ」  二人は部屋の中に入る。 


川沿いのホテル。 窓から暮れ行く大自然の荒涼としたたたずまいが見える。  ロンとアリーがテーブルを挟んで夕食
を摂っている。 「君に!・・・乾杯!」 ロンが言う「僕の選択伎は三つだ。・・ひとつは彼を殺す。 二つ目は彼を殴る。
 三つ目は君と分かれる。・・・どれを選んでも君を失ってしまう。・・なのに君を愛している。 僕だけの妻であってほし
い」

 老人デユークが、老婦人に言う「めでたし。めでたし・・・」 「誰が?・・そうよ。 そうだわ」と老婦人がつぶやく。 

 ノアの家にアリーが荷物を持って車でやってくる。 ノアが走り寄ってアリーを抱きしめる。 アリーが言う「思い出した
の・・・私たちがどんなに愛し合ったかを・・・ノア。・・ノア・・・愛してるわ。・・・私どうかしてたの。・・少し遠いところに行っ
てただけだわ」  ノアがレコードを掛ける。 「私たちの曲ね・・・」 二人は立ち上がってダンスをする。

 療養所に子供たちが来る。 老人デユークが「みんな元気か?」と尋ねる。 老婦人アリーがみんなに「帰って!・・」と
言って追い返す。   あとになってアリーが言う「私って何てことを言ったの・・・彼らに愛していると伝えて・・・」  デユ
ークが言う「謝っていたと後で伝えるよ・・・ちゃんと伝えるから・・」  アリーがデユークに問う「変ね・・・私たち知り合
い?」  遠い昔を思い出すようにアリーが言う「判ったわ・・・物語は私たちなのね」  老人デユークが言う「私はノアだ
よ・・・君はアリー・・」  近づこうとするデユークを押しのけて急に興奮したアリーが「来ないで・・助けて」と叫ぶ。 デユ
ークが「落ち着いて・・・」と言うが、「先生助けて」とアリーが叫ぶ。 医者と介護士が駆けつけるが呼吸が荒い。 病室
に運び、医者が「もう大丈夫だ」と言っている。 介護士がベットの脇で「口から吸って吐くのよ。・・もう大丈夫よ」と言っ
て居る。  

 療養所の休憩室。 車椅子に乗った老人がいっぱいいる。 デユーク老人が車椅子に乗って休憩室にやってくる。 
デユークは心臓麻痺で倒れこの病院に入院している。 看護士がデユークに言う「血圧も脈もとれず、一時は心配でし
た」  デユークが言う「大丈夫無事に治って踏ん張っているよ」
 
 夜。 デユーク老人がパジャマのままそっと自分の病室を抜け出す。 ナースセンターの前で介護士に見つかる「カル
フールさんどこへ・・・規則違反よ」 「チョっと散歩に・・・」 「散歩じゃないでしょ・・今夜は合わせられないの。・・お部屋
に戻りなさい。・・・しばらく席を外すけどバカはやらないで・・・」  引き返すように見せてデユークは忍び足でノアの部
屋に行く。 デユークは電灯の消された部屋のドアを開ける。  薄暗いの部屋のベットに老婦人ノアが寝ている。 デ
ユークが「入るよ・・・」と言ってベットに並んで毛布の中に入る。 「ノア?・・」アリーが尋ねる。
 「ダーリン」 ノアが言う「呼んでやれなくて悪かった」 アリーが言う「不安だったの・・・もう戻らないかと・・・何も思い出
せなくなっててどうするの?」 「離れられない・・」 ノアが言う「あなたの愛が奇跡を起こすと思うよ」 「思う?」 「思うと
も・・・私たちの愛に不足は無い」 ベットで二人がキスをする。 「愛してる?・・」アリーが問う。 「愛してるよ」ノアが答
える。 「お休み・・」アリーが言う。 「また逢おう・・」ノアが言う。

 朝、介護士がアリーの部屋にやってくる。 二人がベットで並んで寝ているのを観て一瞬驚くが、様子が変なので手に
触る。 あわてて病室を飛び出す。 二人は手を取り合って死んでいる。
  夜明けの川から、白鳥が一斉に飛び立つ。 

   ”私は平凡な人生を歩んで来た男だ。・・・私には只ひとつだけ人に負けないものがある。 
      ただ一人の女性を誰よりも愛してきたことだ。”
          = 終わり =




北の零年 YEAR ONE IN THENORTH(上) リンク

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