最高の人生の見つけ方
The Bucket List

  夢をあきらめ続けてきた貧乏人の男と、望むことは何でも出来た大金持ちの男。 末期癌! 余命6ヶ月の宣告!。 
  本当にやりたかった人生は何だったのか?・・。 残された時間は短くても 悔いなく楽しく生きようよ そのために
  遅すぎる事なんて何も無い!。            ロブ・ライナー監督のハートフル・ストーリー。


【キャスト】                          〔文中に挿入している花はすべて私が撮影した写真です〕          河野 善福
エドワード・コール(ジャック・ニコルソン)  大金持ちでコール社の経営者。癌病棟でカーターと知り合う。 娘の名はエミリー。 
カーター・チェンバーズ(モーガン・フリーマン)自動車整備士として、生活のために働きつめた黒人の男。
                           癌病棟でエドワードと知り合う。
トーマス  (ショーン・へイズ)         エドワードの秘書。 本名はマシュー。
ホリンズ医師  (ロブ・モロー)        エドワードとカーターが入院した癌病院の医師。
バージニア・チェンバーズ (ビバリー・トッド)カーターの妻。 元、看護師。 下の娘はレイチェル 、孫はカイ。

【プロローグ】
    ”エドワード・ぺリモント・コールは5月に死んだ。 それは日曜の午後のことで雪一つ無い日だった。
    人の生涯は誰にもわからない。 人生の長さも運命も決まっているんだと言う人も居る。 
    愛で決まるとか、人生には何の意味も無いとかと言ってる連中も居る。
    はっきり言える事は、誰が見ても明らかにエドワード・コールは生涯で得ることの出来る最高に
    輝ける晩年を生きた。  彼の死で見た光景は目は閉じていたが心は開いていた。”

【ストーリー】
 カーターが45年勤めている自動車修理工場。 作業中の同僚がクイズの本を片手に「苗字がHで始まる5人の大統領は?」と
聞く。 聞かれたカーターが作業の手を止めて「ウォーレン・G・ハーディング、ロバート・B・ヘイズ、ハーバート・フーバー、それに
ハリソンの二人、ベンジャミンにウィリアム・ヘンリー」と答える。 同僚が「ハリソンで外れると思ったのに・・」と言いながら「病気
なんだって?・・」と問う。 カーターは「違うさ、・・・と軽く受け流す。 カーターが逆に「大統領の妻の名は?・・」と聞く。 「知らん
よ・・」 「俺も知らないんだ」 また同僚が本を見ながら「もう一つ・・ラジオを発明したのは誰だ?・・」と質問する。 「難問だな・・」
 「ついに降参かい?」 カーターが答える「質問の意図がわからないんだよ・・登録上のラジオ発明者か、事実上のラジオ発明
者かだ?・・」 「この本には・・・」 「マルコーニと書いているだろ」 「そうだ・・」 「彼もラジオ発明者の一人だ・・・1909年にノー
ベル賞を取ってる。・・ニコラス・テスラは1896年にラジオの基本原理で特許を取得している。・・マルコーニは同じ理論で数年後
に特許を取った。・・・テスラは1943年に死ぬまでマルコーニと裁判で争った。 その年に最高裁で結審すると、マルコーニの特
許は無効となった。・・・だからテスラがラジオの発明者といえる。」 その時工場の電話のベルが鳴る。 カーターが電話に出る。
「カーターだ・・・やァ、ジェニーか・・・・で、何だって?・・・どういうことだ?・・」 放心状態になったカーターの手から吸いかけのタ
バコが落ちる。

 コールがウェインウッド病院の経営審議会の席に居る。 コールは審議会の最中にコーヒーを飲みながら、「コピ・ルアックだ
ぞ・・最も貴重なコーヒーだ・・・嗅いで見ろ」と言って隣の席に居るコール社のジムに匂いを嗅がす。 審議が止まり審議会の議
長から「コールさん・・審議会が提言を待っています。・・」と言われるが、「ちょっと待て・・・」と言ってジムに飲むように言う。 「う
まいか?・・」 「美味しいです」 ジムが審議会議員の前に出て経営状況を説明する。 「チェアマンと管理者の方に進言をしま
す。・・・我がコール社によると、ウェインウッド病院の経営悪化は、経営方針の甘さが要因です。・・・近年の支出は適正でなく、
予想負債額に対し小児科・腫瘍治療・MRIの分野で寄付金が減少しています。 コール社では過去7年間に15の公立病院を民
営化し、構造改革を進め、最高の医療を提供しています。」 審議委員から「極端な人手不足なのにか?」 「許容の病床数以上
に患者を増やしている?」 「緊急救命室での患者は・・」と不満の声が出る。 コールが立ち上がり、「うちは病院を経営してい
る。 温泉をやってるんじゃない、1室に2床にせよ、例外は認めない。・・・あんたらには辞めて貰ってもいいんだ、大口小切手が
入った封筒がここにある、換金したいなら決めろ」と、話している途中でコールは突然咳き込み血を吐いた。

 ウェインウッド病院の病室。 コール社の秘書のトーマスが病室に花束やコーヒーのサイフォンを持ち込み入院の準備を始め
る。 部屋を仕切っているカーテンを引いてそこのベットに入院患者がいることに気付く。 「そこで何を?・・」 「さあな・・・戦って
る最中だ」とカーターが答える。 そこに大騒ぎをしながらエドワードが院内寝台車で運ばれる。 「あの医者に言え!・・ブレオマ
イシン投与のときは教えろ!・・肺をどうするんだ・・来月には会議がある・・気管切開はするな」 ベットに移されて一息ついて、
隣のベットから知らない男が見ていることに気が付く。 「なんだ、ありゃ」 カーターが「あんたこそ、何だ」と聞く。 「まいった
な・・一人死んでるぞ」とコールは言った。  これが二人の初対面で、まさに葛藤の始まりだった。
 
 カーターの頭がバリカンで丸坊主にされた。 カーターは「アンナ奴と3週間も一緒だなんてヘドが出る。・・・半分死んでやがる」
と言うが、秘書は「個室は用意できません。 ほかに悪い影響が出ます」と答える。 カーターは「自分の病院で個室にも入れん
のか・・共犯者などは要らん」と言う。 秘書のトーマスは「この方針はあなたが何度も主張したことです。・・あなたが病院経営
だ、温泉じゃない、1室に2床、例外無しって決めたでしょ・・」と答える。
 カーターは手鏡で自分の丸坊主の頭を見ながら「トーマス・・麻酔をかけて眠らせてくれ」と頼む。 カーターが「あんたの病院
か?・・」と聞く。
「ああ、そうだ」 「ここは豆のスープが不味い」

 エドワードが頭の手術をして居る。 「癌は体中に転移しており、生存確率は5%だそうだ。・・だが、手術が無駄だとは彼には
伝えなかった」

 病室にカーターの妻のバージニアが来ている。 バージニアがカーターに聞く「彼に面会者はいないの?・・」 「術後は誰にも
会っていない」 「見舞いが無いのは他の理由よ・・孤独な患者ってのは見ていて辛いわね」 「一人で居たいんだろ」 バージニ
アが言う「今朝、レイチェルから電話があった」 「どうだって?・・」 「来期のバイオリニストのオーデションを受けてるって」 「そり
ゃいい」 バージニアは「枕はどう?」とか「薬は飲んだ?」 「本はどう?・」とかと気遣うが、カーターは「大丈夫だ・・バージニア、
ありがとう・・」と答える。 そばに居るというバージニアに「朝までいても意味無いだろ」と言って帰す。 

 テレビのクイズ番組を見ながらカーターがベットで答えている。 「では、ベリーの600でどうぞ。・・スウェーデンベリーのカウベ
リー以外の呼び名は?・・」 「リンカーンベリー」。 「1956年のトップ40内の曲でベートーベンを降参させたベリーは?・・」 「チ
ャック・ベリー」 エドワードが「おい、・・・お前・・音を・・」と手で押さえるしぐさをする。 「すまんな」 そこへホリンズ医師がやって
来る。 「おはよう・・エドワード・・気分は?」 「愚問はよせ」 「包帯はどうだ?・・」 「うるせえよ」 「悪態はつくし、術後経過は良
好だ。・・脳のCTも異常ないが、腫瘍を取った後は休養が必要だ。・・腫瘍マーカーが異常に高い。・・だから1回目の化学療法を
午前にやる。・・」 帰りかけたホリンズ医師をカーターが呼び止める。 「見てもらえませんか?・・」 「私は行かなきゃ・・・主治医
は誰かね?」 「ギブン先生だ」 「伝えとく」と言って医者のホリンズは出て行った。

 病室で二人はベッドに横になっている。 エドワードがカーターに聞く。「いつから居る?」 「そう、・・2・3ヶ月かね・・・実験療法
の餌食さ」 「苦しいんだろ?」 「化学療法がか?・・そうでもないさ・・・四六時中吐き続けて静脈が黒くなるくらいだ。 骨が焼け
る感じもする」 「安心した」 「人にもよるが反応はさまざまだ。・・・・・ちょっと聞いてもいいか?。・・・怪しげな機械は何だ?」と
窓際に指を差す。 「サイフォンだ・・コーヒーを入れる」 「で、ほかには?・・」 「それだけの道具だ」 それを聞いたカーターは
「コーヒーの起源がエチオピアの山羊飼いからと知ってるか?・・・」と聞いた。 「そうなのか」 「ヤギが見慣れない潅木からベリ
ーを食べてた。・・・しばらくしてヤギがあちこちで暴れていた。 羊飼いは修道院に実を持って行き、修道長が炙ってみた。・・す
るとベリーは焦げて中の豆が芳香を醸した。・・それでシチューに放った・・・それから数百年を経てアラビアに渡り、ヨーロッパ
に・・スマトラにも・・・袋の中身のものはなんだ?」 「コピ・ルアックって奴だ」 「その由来は知ってる」 「そうか」 「そんなの飲ま
せるなよ」 「飲んだことがあるのか?・・」 「ないよ。・・・もっぱらインスタント派だからな」と言いながら、カーターは起き上がって
エドワードのベッドのコードのもつれを直してやった。
                      
 秘書のトーマスが、病室に食事を持ちこんで皿に盛っている。 「プロシュートにメロンにモッツアレラに子牛の肉です」と言って
ベッドに運ぶ。 カーターが「全部食う気か?」と驚く。 エドワードは「トーマスがもう一つ作るとさ・・・あれにやってくれ」とカーター
に気を廻す。 カーターは「おれはカーターだ」と言う。 「名前か・・苗字か?」 「名前だ」 「そうかい・・いいね・・・あんたも白い
チーズでもどうかね?」 「いや結構」 「うまいよ・・ロスで最高のだ」 うまそうに食べたすぐ後にエドワードはトイレに行って吐い
た。 カーターは「ロスで最低になったな」と独り言を言う。
 トイレで便器を抱えていたエドワードは力なく立ち上がり、鏡に映った自分の顔を見た。 疲れ果てた自分がそこにいた。 「ひ
どい・・・心臓発作のほうがまだ楽だ」

 カーターのところに息子が来ている。 「カイからだ・・・お爺ちゃんみたいな修理工になりたいってさ」と言ってミニカーを差し出
す。 「なって欲しくないな・・・シェルビーの350か」と言って手に取り、「ずっと憧れてた・・カイが覚えてくれてたんだ」と喜ぶ。 
息子が「休養が足りてるかって、ママが心配してたよ・・・愛してるってさ・・・それと、検査結果が出たら教えて」と言う。 「ギブン
先生が来ればな」 息子は親父の頭にキスをして帰っていった。
 エドワードが「長男か?」と聞いた。 「そうだ」 「仕事は?」 「税理士だ・・・弟のリーはエンジニアだ」と言って、カーターは写
真を見せる。 「この可愛い女性は?」 「レイチェルだ・・・3人の下の妹だ」 「年が離れてるな・・」 「あの子は賜物さ・・・妹が生
まれると兄らは付きっ切りで・・・才能あるバイオニストさ・・・あんた子供は?」 「娘だが・・・さっさと行っちまった」 「ウチも長いこ
と二人で過ごした」 「で、どうなった?」 「続いているさ」 エドワードが言う「いいことだ、・・・夜の営みのおかげだ・・・俺だって
結婚は好きだ。・・4回した。・・問題だったのは、一人でいるのも好きだってこと、二人で過ごすのがつらいよ」 「完璧なんてない
さ」 「唯一成功した結婚といえば仕事との相性だ、金を稼ぎ始めたのは16歳の時だ。・・・はまって波に乗った」 「私は失敗し
たよ・・・歴史学者になりたかった・・・私立大に2ヶ月通えたのは、バージニアの妊娠前だった。 ・・それからというもの、若くて・・
黒人で・・貧乏で、それに赤ん坊と来た。・・やれる仕事は限られる。・・・昔に戻って修正したい。・・だが45年は瞬く間に過ぎた」
 「年月の過ぎ行くのは早いな」

 二人はお互いに急に襲う病の苦しみを助け合った。 気分の良いときにはポーカーに興じた。 エドワードはつぶやいた「思考
も消えたらどうしよう。・・主よ頼む・・・やめてくれ・・・考えちゃいかん。・・他の事を考えよう」 
二人で廊下を散歩中にエドワードが聞いてきた「自殺のことは考えたことは無いか?・・」 カーターは「私がか?・・しないよ。・・」
と答えた。 「それが第1の段階。・・」 「何が?・・」 エドワードが言う「5段階あるんだ・・」 カーターが答える「拒絶、怒り、歩み
寄り、絶望、受け入れ」 エドワードは「そりゃあ、自殺なんて考えんさ・・・あんたはまだ第1段階だ・・拒絶だ」と言う。 カーター
が「あんたの段階は?」と聞く。 「拒絶だ」 「なのに自殺のことを?」 「まあいいさ・・」

 カーターの点滴を終えると看護師が「もうこれで終わりみたいね」と言う。 カーターが聞く。「それだけ?」 「4回で終わりみた
い」 「次は?・・」 「結果を精査して投与を・・」 「どのくらい?」 「しばらくかかる。・・・ギブン先生に早目にやってもらうわ」

 エドワードはテレビで野球を見ている。 カーターに「”君が人生の時”を読んだか?」と聞く。 カーターが「ウイリアム・サローヤ
ンのか?」と聞く。 「そう」 カーターは聞きながらペンを走らせている。 
 [ 棺おけ・リスト ]  ”全てにおいて基礎はなし、大人になって・・”  エドワードが「何をしている?」と聞いてくる。 「ちょっと
書き物」 「書き物って何?」 「ただ書いてるだけだ」 「そうか、好きにすりゃいい」 
 医者のホリンズがやって来る。 エドワードに「検査結果だ。・・・正直に言うよ。・・・余命半年だ。もって1年・・・実験療法もある
がヘタな希望を与えたくない。・・・立派な被験者とは思うが・・・」 黙って聞いていたエドワードがごくりと生唾を飲んで言った「先
生・・テレビが見えない」 「すみません・・質問があればいつでも・・」 「一つある・・・カーターがホリンズ先生に質問を・・」 ホリン
ズは「チェンバースさんはよく知らないので・・・」と言う。 エドワードは「知り合えよ」と言う。 カーターが「どれだけもつか知りた
い」とホリンズ先生に聞く。 「検査表を見てきます。」 医者が出て行った後でカーターが「エドワード・・」と声をかけるが、エドワ
ードは黙って背中を向ける。 
 カーターは考えた「ある調査結果があって、事前に余命を告知して欲しいかを1000人に聞いたところ、96%がいいえと答え
た。 自分は残りの4%に入るのかも。・・・その方が開放される気がする。 残された活動の時間を知って、それでお仕舞いとな
るのか・・・そうじゃない」
 ホリンズ医師が来てカルテを見ながら、カーターも余命いく月も無いことを告げる。 カーターは書きかけていた [ 棺おけ・リス
ト ] の紙片を丸めて床に投げ捨てる。 しばらく無言で見詰め合って悲しみに沈む二人。 カーターが「カードでもやるか・・」と声
をかける。 エドワードが「良くぞ尋ねたな」と言って慰める。
                                     
 朝、秘書のトーマスが病室にやって来てカーテンを開く。 トーマスが床に落ちていた雑誌とクズ紙を拾い片付けようとする。 
雑誌のことが気になってエドワードが雑誌を取り上げたとき、丸めて捨てられていた紙片も一緒に渡される。 トーマスが「失礼か
も分かりませんが、私が・・あなたの・・・」と言いかけると、エドワードは「死後のことか?」と聞き、「自分のことのようにやれ」と言
う。 「では、費用は補佐役に預けて・・」と、トーマスは答えた。 

 トーマスが出て行った後で、エドワードは丸まった紙片を広げた。 カーターが気がついて「なにしてる?」と聞く。 「何だこれ」 
「返してくれ・・」 「何だ?」 「返すんだ」 「落ちてたものだが重要機密かね?」 カーターが説明を始める「哲学の教授がこの課
題を出した。・・・生涯計画と言う意味で”棺おけ・リスト”だ。・・・自分たちが棺おけに入る前に、やりたいこと、観たいこと、体験し
たいことを全て書き連ねようと・・」 「死ぬ前に・・・いいね」 「いろいろ書いたさ、100万ドル稼ぐとか、黒人で最初の大統領と
か、若い頃の夢だ。・・・それも今では叶わぬ」 エドワードが紙片を読む「赤の他人を支える。・・・大いに笑う。・・精神鑑定じゃな
いが相当こたえてるな。・・」 「意味なんか無い」 エドワードは「おれは正反対の意見だ」と言ってペンを持って書き足す「外に出
て野球だの銃をぶっぱなすとかな・・・楽しむことさ。」 「銃をぶっ放して気が晴れるか?・・・履き違えだろ」 エドワードが聞く「荘
厳な光景を目にするってなんだ?」 「ヒマラヤに登った事はあるか?・・」 「いや、・・ムスタングのシェルビーに乗るってのは賛
成だな。・・・思いついた。・・・スカイダイビングとか俺たちはいい線行くぞ」 「俺たちだって?・・・見せてくれよ・・・」と言ってカー
ターが皺だらけの紙を受け取る。

 読みながらカーターが笑い出す「絶世の美女にキスだって?・・どこからの発想だ」 「本だ」 「刺青を入れる。・・・あんたの野
望か?・・・」 「ホリンズ先生が言ったな、残りは数ヶ月と・・・」 「1年かもよ」 「45年が瞬く間に去ったと?・・・これはやれる
ぞ・・やったほうがいい。金の心配は要らぬ、俺に任せろ」エドワードはカーターの手から紙片を取った。 「だが、分からんな・・」
 「何が分からん?・・」 「たとえ話なんだよ・・・そう出来たらいいと・・」 「たとえ話か?・・やろうともしないで、ただ嘆くだけか、
これはチャンスだよ」 「何のチャンスだよ。・・・バカにでもなれと言うのか?」 エドワードが言う「まだ間に合うぞ・・・この現状をど
う思う?・・・ジットして過ごしてヤツ等の言うことを聞く。・・・遺産がどうの、援助がどうのと、死んだ後の金を気にしろと。・・・死ん
だら葬式やって帰宅だ。 自分が皆を慰めてるのに虚ろに見守られて死ぬ。 それでいいのか?・・・哀れみと悲しみで苦しむ
ぞ。・・・俺は違う。・・・お前の本心も違う。 お前も違うと信じる。・・・乗り合わせた船だ。・・・いいたとえだろ?・・俺たちはまさに
機会を手に入れた」 「機会を?・・まさに霹靂だよ。・・・あんたには普通のことかもね」 「少しは元気が戻っただろ?・・・はかな
い希望を胸に化学療法の餌食となるか、行動を起すかどっちだ」 しばらく考え込んでいたカーターが「スカイダイビングね」とやる
気になった。

 そこに、カーターの妻バージニアがやって来た。 「この病院は何よ、医者が一人もいないわ」と愚痴をこぼしながら。 カーター
は「バージニア・・・話しがあるんだ」と言う。 「チェンバーズ夫人・・お二人だけでどうぞ」エドワードは廊下に出ていった。 カータ
ーが「検査の結果は良くないとさ」と言った。 妻は「UCLAに行けばよかった。・・外科医は良いし、待遇も良いし、・・」と言い、カ
ーターは「症状は変わらんよ」と言う。 「知らないからよ。・・私はあきらめないから」と言って、かって自分が勤務した病院に電話
をかける。 「腫瘍科のペトリ先生を・・」 「バージニア・・よせ!」 「ペトリ先生?・・バージニア・チェンバーズです・・・」カーターは
電話機を取り上げて電話を切った。 そして、妻に告げた「しばらく出かける」 「何いってるの?」 「エドワードと出かける」 「エド
ワードとあなたが・・どこへ?」 「分かって呉とは言わん」 「分かるわけないわ・・・あきらめるわけ?・・闘いを投げるの?・・・子
供にもそう言ったら?・・・あなたが子供を捨てたらどうなると思ってるの?・・・」 「子供を捨てるだと?・・油まみれで45年を生き
抜いた・・・・やっと自分の時間を持てたんだ」 「赤の他人と逃げる時間なの?・・何のためよ?」 カーターはきっぱりと言った
「他人じゃない!」 「私は妻よ!」 「私は夫だ!・・・父であり、祖父でもあり、ひどい修理工だ!」 「それにわからずやよ。・・・
ガンを治せると分かってるくせに」 「すまない」カーターは妻に謝った。 廊下に出たバージニアは「夫は渡さないわよ」とエドワー
ドに言った。

 こうして二人の旅が始まった。 スカイダイビング。 飛行機の中でカーターは「本当は飛行機は恐かったんだ。・・奴の戯言で
飛び降りる始末になった。」と騒いだ。 エドワードが「奴は女房が心配なんだ。・・俺の後妻はそんな感じだった。私を二度と省
みなかった」と言った。 「後妻だと?」 「ウチの二番目の女房だ・・女に嫌われている」 カイルが「15秒前だ」と言った。 「行っ
て良いぞ」 飛び出す準備が出来た。 カーターが「ちょっと待て!・・まだダメだ」と言う。 エドワードが言う「お前が恐いのはジ
ャンプじゃなくて、・・」 「そうじゃない」 「パラシュートの心配だろ。・・自分の葬式にグロい死体で参上だ」 カーターは悲鳴を上
げながら、背中に結ばれているカイルに押されて飛行機を飛び出した。 エドワードが「生きてる証だ」と言い、カーターは「ひねく
れ根性だ」と空中で言い合った。 エドワードは「感じてるよ・・落ちているんだ」と陽気に騒いだ。 カイルが「限界点だヒモを引
け」と叫んだ。 エドワードは降下後、[棺おけ・リスト] を広げて[スカイダイビング]の文字の上にペンで二本線を引いて消した。

 エドワードは「トミー」と秘書を呼んだ。 「死ぬのは後回しだ。・・・意志を継げもうすぐだ」 カーターが「トミーなのかトーマスかど
っちだ?」と聞いた。 彼は「本当はマシューなんです。 でも呼びにくい名だと言われて・・」と答えた。 エドワードは腕に刺青を
彫らせて大満足だった。 カーターに「絵柄は決まったか」と問うが、彼は「身体に傷をつけるのは嫌だ」と言った。 エドワードは
「たかが刺青だ、不倫しろって訳じゃない、もうすぐ死ぬのにか?」と言って笑った。 カーターが「不倫なんかしたこと無い」という
と、エドワードは「リストに載っていることだ。・・・66歳だぜ、無礼講も許されるだろ」と言う。 「いやだ!」

 二人は自動車レース場に現れた。 無人のレース場でムスタングを並べ競争をした。 カーターが「これでどうだ」と言ってハンド
ルを切り、わざと車をぶつけていった。 エドワードが「二人で死んじまうぞ」と言うと、カーターは「何かしたか?・・・これでも食ら
え」と言って進路を妨害してはしゃぐ。 そのまま一般道に飛び出し、工事中の停止板を突き破って突っ走る。 エドワードの車が
エンストを起すまで、二人はむちゃくちゃの運転で遊んだ。 「次は何だ?・・」

 自家用飛行機に乗って世界中を飛び歩く二人の生活が始まった。 「どれだけ金はあるんだ」とカーターが聞く。 「金の話しは
下世話だと教えられなかったのか?・・」とエドワードは答える。 「そんなの聞いたこと無いねえ」 
 飛行機の中でエドワードが、隣の部屋に女性を連れ込み楽しんでくる。 席に戻ってカーターと顔が合うと「特効薬だ」と答え
る。 カーターは黙って首を振る。 北極の上空を飛んでいる時、窓の外の星を見てカーターが「神の御業の一つだ、なんとも言え
ん美しさだ」と言う。 エドワードは「神が生きとし生けるものを創り出したというのか?」と聞く。 「違うと思うのか?」 「おれが空
を見上げて、あれやこれやと誓うと余計悪くなるだろう?・・違うか?」 「それじゃ、世界の95%の人は間違ってるな」 「人生か
ら学ぶのは、世の中の殆どの人は間違ってるってこと」 「それも信仰だ」 「信仰のある奴がうらやましい。・・俺にはそれが無
い」 「その考えが邪魔してる」 「この手の話しは何度もするが皆同じ疑問にぶつかる。・・妖精が居るとか居ないとか、・・・・誰も
疑問は解決できん」 「じゃあ何を信じろと・・・」 「あらゆる宗教を拒絶する。」 「ビッグバンも宇宙のこともないというのか・・・・」
 「人は生きて・・・死ぬ、そして時代は廻っていく。」 「それが誤りだったら・・・」 「誤って結構・・誤っても俺の勝ちさ」 「それで
は納得いかん」 「知ったような口ぶりだ」 「俺には信仰があるのさ」

 地中海の美しい景色を楽しみ、美味しい料理に舌鼓する。 レストランでエドワードが「キャビアの取り方を知ってるか?」とカー
ターに問う。 カーターは「メスのチョウザメを捕ったら、サメを静かに死なせる。 少しでも恐怖を与えると卵に毒素を出してしま
う。」と答える。 エドワードが「三番目の女房みたいだ。・・女なんて過敏なもんだ。」と言う。 外の景色を見ながら「ここは30年
ぶりだ・・・男と来たのは初めてだ」と言うと、カーターは「誉め言葉かね」とおどける。 エドワードが「エミリーの10歳の誕生日は
最高で・・」と話すと、カーターが「エミリーってのは?」と聞く。 「子供の・・・もう子供じゃないか?・・」 「娘か?・・」 「教える
よ・・話せば長くなるから、手短にな・・娘とは会わん。・・」 カーターはくしゃくしゃになった”棺おけ・リスト”をポケットから出して”
もう一度やり直す” と書き加えた。 エドワードが「おい、消してくれ」と言う。 「どうして?・・」 「止めろって言うんだ・・」 「なん
で?・・」 「理由なんかいい・・」エドワードは”棺おけ・リスト”を取ってその部分を消した。 カーターが急に席を立った。 「失
礼・・」「どうした?・・どこに行く?・・すまなかった。 横柄だった・・」 カーターはトイレに行った。 心配したエドワードが様子を見
に行った。 カーターは食べたものを吐いて、汚したシャツの胸を拭いていた。 「病院にいったほうが・・」 「大丈夫だもう収まっ
た。」

 ホテルに帰ると、エドワードに秘書のトミーが言う。「予定の計画に少々変更を・・明日カイロで、タンザニアに2日、ヨハネスブル
グに火曜です。 闘牛も虎狩も無しです。」 「トーマス・・正直な気持ちだ。・・お前の代わりは居ない」 「あなたは心優しく、この
仕事も好きです。」 そこに、電話が架かってくる。 「コールさん・・バージニアです。・・」 「どうも、・・カーターに代わります・・」 
「あなたと話たいの・・・夫は・・元気ですか?」 「ええ、元気です」 「今、どこに?・・」 「フランスだが、明日は・・」 「夫を返し
て・・・」 「バージニア、いいかな・・彼が帰るとは・・・」 「夫の望みが重要じゃないの・・・私は看護婦をしてきた、悲劇と直面すれ
ばどんな女でも必死になる。・・夫が死ぬ覚悟はしているけれど、生きてるうちに諦める覚悟じゃない」

 エドワードは浴槽に浸かってご満悦のカーターのところに行く。 「カーター・・・考えたが、しばらく休止にしようか・・・・気になっ
ているんだが、バージニアと話したんだろ。・・なぜ、こうしたか・・俺が誘ったからなのだろ。・・・・君もそれほど強くない」 「レイチ
ェルが家を出て、大学に行って空虚になった。・・宿題がどうとか・・野球がどうの、音楽会だ、演劇だとか、喧嘩したとか、怪我し
たとか、・・結婚40年で初めて妻と向き合った・・うるさいものも無い。 だから妻の手を携えず一人で歩く気持ちなど分からん。・・
妻は昔のままだ。 こんなに変わって・・・どうしたもんか、途中で何かを見失った。 

 アフリカの大草原。 野生動物の群れ動く中をジープで走る。 ライオンが、シマウマが、野牛が、いる。 "第9の項目を削除し
たエドワードに感謝した。” エジプトのピラミットのそばに来た。 エドワードが「死ぬ前に会えてよかった・・・リストに関して言え
ば、2項目は消せる。・・ピラミットを眺めることと、荘厳な光景を眺めること。」 「山を見るまでは取っておこう」 「そうか、君の山
か・・」 「ここも悪くない、古代のエジプト人は壮麗な信仰を持っていた。・・・魂が天の門を通ると、神が二つ質問をする。 答えに
よって入れるか決まる」 「質問とは?・・」 「人生で喜びを得たか?・・・答えろ」 「得たさ・・・」 「自分の人生は他人に喜びを与
えたか?・・」 「これは・・どうかな、人それぞれだしな・・・他人に聞けば」 「あんたに聞いてる」 「おれの立場になってみろ・・死
とその精算の後には、エミリーは母と暮らす。そばに居たいと思うが、やれ電話だ誕生日だと休日は気が滅入って、とにかくエミ
リーは大学で慈善活動や動物愛護をやって男と恋に落ちた。 ハンサムで切れる奴だ、だがいかんのは結婚に反対しちまっ
た。・・・娘だから当然のことだ。・・娘は絶対結婚すると言って、式には招待されなかった。」 「痛い話だ」 「彼氏にぶたれて、俺
のところに来た。・・奴を引っぱ叩きたかった、娘は止めた。・・奴のせいじゃない・・酔って喧嘩になったんだと。・・次にぶたれた
時は来なかった。・・前妻から何とかしてくれと聞いた。」 「どうなった?」 「親父のすることさ・・奴に電話をした。・・・何があった
か知らんが生かしておいてやるって、娘はぶたれなくなった」 「娘さんは?・・」 「ひどく罵倒された。・・・俺は父で無いと・・・俺
の行動は自慢できん。 だが、またやるだろう。・・・娘に嫌われているからエジプトの天国には行けん。 だがそうするしかなかっ
た」

 タージマハルに来た。 第5代皇帝 シャー・ジャハーンの王妃の墓。 「見合い結婚だが愛し合った。 王妃が死ぬまでに14
人の子供をもうけた。・・2万人の労働者が22年かけて作った。 全てをシャーが設計した。」とカーターが言った。 エドワードは
「真の愛だ・・・いいもんだ。・・・俺は2万人も雇えるかどうか分からないけど、葬式の準備に悩む。 土葬か、火葬か?・・土葬だ
と閉所恐怖症だからな、」と言った。  「だったら火葬か?・・」 「灰になって、埋められ、撒かれて、置かれて、花の肥やしにで
もなるか。・・・炎の中ってどんなだ?」 「私なら火葬がいいね」 「ウォルト・ディズニーみたいに凍結がいいかも」 「火葬でい
い。・・・缶にでもつめて景色のいいところに」 「缶にか?」 「骨壷ってのは語感が悪い」 「地下聖堂の霊廟の感じか?」 「チャ
ック・フロのナッツ缶でいい・・・帰る頃にはあんたも火葬派になるよ。」 「なるわけない」 「コピ・ルアックな、俺にはハイカラすぎ
る」

 飛行機の中で二人はポーカーなどをやって時間をつぶす。 中国・万里の長城。 レンガで築かれた砦の上を二人はバイクで
突っ走った。 ヒマラヤ・雪のベースキャンプでエベレストを望む。 エドワードがカーターに「見れば荘厳を感じるだろ」と言う。 部
屋の中にいる老婆を見て、「輪廻転生によって生まれ変わるんだろ?」と聞く。 カーターは「仏教徒は魂が帰ると信じている、今
の段階より、上か下の生物に宿る」と答える。 トーマスが「2段階の悪い知らせがある」と言ってくる。 カーターが「1段目はなん
だ?」と聞く。 「吹雪が来ています。 晴れるまで行けません」 「いつ晴れる?」 「来年の春とか・・・それが2段目の知らせで
す」 「次回だな」とカーターが言った。 エドワードも「そうだな・・・来春か・・山のお告げがありそうだ」と言った。 「と、言う
と?・・・」 「もう行ってもいいぞって」 「誰のために行けって・・・」 「分かった。」 「山のお告げなど無い。・・帰れということ
だ。・・山はあんたを通して帰れと告げた。・・自分の心配だけしてろ・・・こっちの判断はするな」カーターが言った。 「次は香港
だ。」

 カーターがホテルのバーで女性従業員を相手に話をしている。 カーターが言う。「絹の服に黒くるみのアイス。 チベット人は香
りの女神をチョ・ムルンと呼ぶ」 「適切な訳は全能の女神よ」と言いながら女性がカーターの隣りに座る。 カーターは「山に登ろ
うとしたが天候が悪く失敗した。・・」と言い、女性は「アンジェリカ」だと名乗り、「あの山に登るには精進が足りないのでは」と言っ
た。 「確かに足りないな」 アンジェリカは「限界点の近く、2万6000フイートまで行った」と話した。 「どうだった?」 「あたり一
面は晴れ渡って、空は青より黒っぽい。・・空気が薄く、日光が反射し、夜には星の数に目を見張った。 手が届きそうで、まばゆ
かった。・・天国からの漏れ日のようだった」 聞きながらカーターは目を輝かせていた。 「聴いたかい?・・」 「何を?・・」 「頂
上に上った男の本を読んだ。 世界の頂に立ち、息をのむ静寂を体験したら・・・この世の音が聞こえたそうだ。」 「何が?・・」 
「山の音だ・・・神の声のようだと」 「聞こえなかったわ・・雑音は聞こえたけど・・・上の部屋なの」と彼女はカーターを誘った。 カ
ーターは「あの・・その・・嬉しいよ。・・・だが私は・・」 「奥さんは幸運ね」 「私のほうが幸運だった」 「良かったわ」彼女は静か
に席を立った。

 ホテルでエドワードとトーマスが居るところにカーターが、「帰ろう・・家に帰りたい」と言ってやってくる。 「俺は・・」と戸惑うエド
ワードであったが、帰国に同意する。  アメリカに向かう飛行機の中で二人は無口だった。 飛行場からの車の中でエドワード
が自宅への道と違うことに気づく。「クレンショーの道じゃないな」 運転しているトーマスが「10号線の事故で脇道を・・」と言う。 
やがて車は一軒の民家の前で止まる。 エドワードが「なんでここが・・・」と言う。 居間で女性が電話をかけているのが見える。
 「なんてこった・・」 カーターが「もしもと思って聞いておいた」と告げる。 エドワードは「お前の案か・・トム」と怒る。 カーターが
「私の案を彼に言った。」と話すが、エドワードは怒って車を降り、今来たほうに歩き始める。 「エドワード!・・何をビビッて
る?・・・」と、カーターが後を追う。 「俺の話しは聞いただろ。・・お前の邪魔もしなかった。」 「バーの女のようにか?・・」 「そ
れとこれとは・・」 「何が違う?・・」 「これはこれだ」 「どう違う?・・」 「俺が誰かも知らんくせに・・無一文から億万長者になっ
た男だ・・大統領も意見を求め、王族とも食事をする。・・・どうすりゃいいか・・・、この旅が意味を成し・・俺を替えたとでも思ってる
のか?・・・残り少ない命で、孤独死が嫌で、お前と一緒にと考えたと思ったのか?・」 「皆、孤独死は嫌だ」 「俺は例外だ!・・
これも喜びだろうよ」と言ってポケットから”棺おけ・リスト”を取り出して破いて捨てた。 車に引き返したエドワードは、トーマスに
「降りろ!・・タクシーでも呼べ」と言って乗り込み、自分で運転して帰って行った。

 タクシーで家に帰ってきたカーターは、取り出したドアの鍵を使うのをやめて呼び鈴を押した。 妻のバージニアが無言で迎えて
くれた。
 エドワードは誰も居ない静かな自宅の居間に入っていった。 
 カーターを迎えたチェンバーズ家の食卓には、夕げを囲み、家族が神に祈りを捧げていた。 「天にまします父よ、この日に感謝
します。・・家族が再び集い、わが夫、家族の長が帰ったことを感謝します。」 
 エドワードはコーヒーを入れようとしたが豆の袋が空だった。
 チェンバーズ家の食卓は笑い声が絶えなく、料理の皿が行き交った。
 エドワードは新しい豆の袋を取り出して破こうとしたが、イラついて破けず、袋をこぶしで何度もたたきつけた。
                  
 夕食後の片付けをしているバージニアの後ろに近づいたカーターは、両手を伸ばしてバージニアの腰を抱いた。 振り向いたバ
ージニアをカーターは、静かに抱いてそのままダンスをした。 二人は手を取り合って寝室に入った。 ベットに誘おうとするカータ
ーにバージニアは「待って・・・いいものがある。・・必要かも」と言って踊りながら化粧室に取りに行った。 カーターはベットに腰を
下ろし、枕もとに時計を外して置いた。 「相当ごぶさたね」とバージニアの声がした。 「覚えてないぞ」とカーターが答えた。 
「相当昔ね」 「十代の初体験の時の気分だ」 「最初は覚えているわ・・つま先立ちできなくて、あなたはこんな風に・・・」と言い
ながら着替えたバージニアが化粧室から出てきた。 カーターの姿が見えないので「かくれんぼ?・・」と言いながらあたりを見回
す。 ベットの影で小刻みに震えているカーターの足が見えた。 「カーター!・・」 

 コール社の経営者会議。 ジムが「コール医療の経常利益増により、15%の資産増になりました。」と説明する。 エドワードが
沈黙の末「神曲を読んだか?」と皆に問う。 ジムが「何でしょうか?」と聞く。 エドワードは「神曲だ・・・ダンテ・アリギエーリの地
獄への旅だ」と答える。 「休憩しましょう」と発言があるが「休憩など要らん・・・鎮痛剤が効いているうちに、・・神曲を読んだかと
聞いているんだ」と言う。 そこに秘書が「お電話です」と入ってくる。 「トミー後だ」と言うが、トーマスは「出てください」と言う。

 エドワードが病院に駆けつける。 医師のホリンズと出会う「検診結果は?」とエドワードが聞く。 「脳に移転しています」 「脳
に移転?・・手術は?」 「やりますが、改善しませんよ」とホリンズは言った。 エドワードはカーターの病室を訪ねる。 カーター
が鼻にエアーチューブを入れてベットに横になっている。 バージニアに「容態は?」と聞く。 「安定してる」と答えて、「あなたへ
と・・・亡くなるまではと思ったけど、今渡そうと・・」と言って手紙を差し出す。 カーターが「私の言うことを聞かないのか、・・・定石
を変えるのか?」と妻に言う。 エドワードは「待遇はどうだ」とカーターに聞く。 「豆のスープは不味いままだ」と答える。 バージ
ニアがジュースを取りに行った後で、カーターがエドワードに聞く。「ハイカラなコーヒーはまだ飲んでいるのか?」 「急になん
だ?」 「読め」と言ってカーターがレポートを差し出す。 エドワードが声を出して読む。 「コピ・ルアックは最も高価なコーヒーで
最上級品に位置づけられる。 スマトラの村で豆が栽培され、ジャコウネコが豆を食べて消化し排泄したもので・・・村人が糞を集
めて精製する。 豆と猫の消化酵素の働きでコピ・ルアックとなり芳醇な味と香りになる。・・・ウソこけよ」 カーターは「猫の糞だ
とよ」と言って笑い出す。 エドワードもつられて二人で大笑いする。 カーターが「ペンはあるか?」と聞く。 エドワードが差し出
すと、”棺おけ・リスト”の [ 大いに笑う ] の文字を線を引いて消した。 カーターは"リスト”をエドワードに渡して「まだ死なん」
と言った。 「お前だけの問題じゃない」とエドワードがいい、「一人になるのが恐い」とカーターが言った。

 カーターが手術室に向かい、バージニアは「戻るまで待っているから」と言って手に軽くキスをした。 「安心した。」と言うカータ
ーにバージニアは自分の口の前に両手を当てて、大きく広げて投げキスを贈った。
 エドワードは車の中でカーターからの手紙を広げた。 「エドワードへ  これを書くべきかしばらく迷った。 書かないと後悔する
と思った。 だから書く。 別れ際にあのリストのことで喧嘩をした。 旅の終わりに相応しくない。・・自分に責がある。 それは謝
る。 機会があれば心底行きたい。・・私が他人のように去り、夫として帰ったとあなたに借りができた。 あなたのようにしてやれ
ない、そうするより、あなたに求めることを書く、人生で喜びを得て、あなたは例外だといったが、そうだろう、だが例外も例の内
だ。・・・牧師が言ってた。 人生とは流れだ、同じ川に流れ入る、どんな天国へでも向かって流れる。 喜びを得てくれ、エドワー
ド」

 カーターの頭の手術が始まった。 チェンバーズ家の子供たち、孫たち皆が無言で手術の無事終了を廊下で待った。
 エドワードは娘のエミリーの家を訪ねた。 花を差し出すエドワードをエミリーは驚きと感動で迎えてくれた。 エドワードはこれま
での行動を謝った。
 手術室から執刀医が出てきて手術の失敗を告げた。 泣き崩れるバージニアの肩を息子が抱き支えた。
 エドワードのところに孫娘が来て笑顔を振り撒いた。 エドワードは床に膝を着いて孫娘を抱き、顔にキスをした。 エドワードは
"棺おけ・リスト”の[ 絶世の美女にキス ]の文字をペンで線を引いて消した。
 
 教会での葬儀にエドワードが壇上に立って挨拶をした、 「我が友よ、目を閉じて、流れに身を任せて。・・・・・こんにちはみなさ
ん、 エドワード・コールです。 こんな場では決まり文句があるが、本心に従って、あえてそうしません。・・・ただ純粋に彼が好き
だ。 だからつらい。・・・カーターと一緒に世界を旅しました。 素晴らしかった。 ほんの3ヶ月前までは赤の他人だった。」 エド
ワードはポケットから"棺おけ・リスト”を取り出して、 [ 赤の他人を支える ] の文字を消した。
 「これは勝手な解釈かも知れないが、彼の最後のひと月は、私の最良の時間だった。 私を救ったのは彼だ・・・彼もそう思って
いる。 誇りに思う。・・彼こそが、私との時間を崇高にした。 それが、互いの人生に喜びをもたらした。 そして、いつか、かの
地で安らかに眠り、天の入り口でふと目覚めるなら、カーターにそばに居て欲しい。 支えて欲しい。 私を導いて欲しい。」

 雪山を登山の重装備をした男が一人でリュックをしょって登ってくる。 男は頂上に作られた小さな祠の前に立ち、積もった雪を
掻き取り、祠の前の石を外した。 男はコール社秘書のトーマスだった。 祠の中にはナッツの缶が一つ入っている。 トーマスは
持ってきたコールの骨の入ったナッツ缶をリュックサックから取り出して、カーターのナッツ缶の横に並べておいた。 石の蓋を置
き、雪を集めて祠を埋めた。

 ”それは日曜の午後・・・雪一つ無い日だった。 81歳だった。 トーマスは"棺おけ・リスト”を広げて [ 荘厳な光景を目にする
 ] という文字を消した。  
今なお、人の生涯をはかり知るのは難しいが、このことは言える。 彼の死で見た光景・・・目は閉じていたが心は開いていた。 
ここで眠れて満足だと思う。 彼は山に眠った。 どんな地も敵わぬ最高の地だ。”

                  = 終わり =
         
         平成20年4月25日 試写会を鑑賞
         平成20年5月10日 全国ロードショウ公開


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