南会長は、カルテ改ざんが行われた東京女子医大の事件で、看護師がこうした犯罪へ関与したことは、弁解の余地がないと遺憾の意を表明。今後の対応策として、「NOといえる看護師」キャンペーンを7月中旬から展開すると発表した。
楠本万里子常任理事によると、東京女子医大の看護記録改ざんに見られるような事故隠ぺい体質は、「根強いパターナリズムがはぐくんできた」ものだ。医師・看護師間、雇用主・被雇用者間の力関係のもとで、看護職が異議を唱えることは、失業のリスクを冒すことを意味する。楠本常任理事は、こうした隠ぺい体質をなくし、医療の透明性を確保するには、「個々の倫理性にゆだねたり、部門の壁を超えたコミュニケーション促進だけでは限界がある」としたうえで、日看協として、あらゆる状況下で看護職が倫理的行動をとれるように支援していく方針を明らかにした。
保助看法で法的整備も 具体的な方策としては、
(1)看護師が疑問を提起できる「臨床倫理検討委員会」のような組織を病院内に設置する
(2)看護師が医師の指示に異議がある場合、看護師は医師に対し疑義を呈することを保助看法で義務づける を示した。
「臨床倫理検討委員会」は、高度医療や治験などにおける生命倫理上の是非を問う、いわゆる「倫理委員会」とは異なり、現場の医療ミスに関する倫理問題を取り扱う。病院の規模や機能により、医療安全対策委員会のなかに位置づけることも考えられるという。法的整備は、コメディカルで疑義照会が義務づけられているのは薬剤師だけなので、薬剤師法が規定するような疑義照会の義務を看護職にも適用させたい考えだ。
同日の懇談会では、東京女子医大の事件について、たとえパターナリズムが背景にあるとしても、診療録の改ざんへの加担は職業倫理にもとり、議論のすり替えではないかとする指摘もあった。
これに対し南会長は、「改ざんはあってはならないことで、弁解の余地はない。こうした事件を2度と起こさないために、『NOといえる看護師』キャンペーンをやる。そうした看護師を受け止められる環境を、法的、職場環境的にも整えていきたい」と話した。また、法的整備については、「疑義申し立てをしなかった者の責任も考えていく必要がある」として、その内容を慎重に検討する意向を示した。
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