6.シフト勤務における覚醒の維持と休息の知識 | |||||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||||
  |
最近まで経営者や、工場の責任者は、従業員がその能力を最大限発揮できるように、 主に心理学と人間工学に基礎をおいた方法をとることが正しいと教えられてきました。
その方法は 以下のようなものです。
| ||||||||||||||||||||||||||||
  |
| ||||||||||||||||||||||||||||
7.覚醒を維持できるか? | |||||||||||||||||||||||||||||
つまり、極めて重要な要因、24時間操業で重要な「覚醒」という要因が抜け落ちていたのです。 | |||||||||||||||||||||||||||||
8.「覚醒度」を高める 〜人間の覚醒度を高める9つのスイッチ〜 | |||||||||||||||||||||||||||||
この分野で最近注目されているのが「照明」のいろいろな病態?への利用です。 「朝、すっきり覚醒させるためのライト」は 既に10年位前からパナソニック電工で一般にも販売されています。 起床後に数分から十数分光を浴び脳を覚まさせるのです。 上で述べた睡眠の90分サイクルのリズムを応用した「目覚まし」とか、 睡眠障害にも光治療が試みられています。最近ではi-phoneやalarm clockなどとして 「良い睡眠」も売り物になっているようです。 | |||||||||||||||||||||||||||||
9.「快適さ」の罠 | |||||||||||||||||||||||||||||
ハイテク工場のコントロールルームは「快適」なことが追求されています。
航空機の操縦席もトラックの運転席も同様なことが
それを設計するエンジニアに求められています。しかし上の9つのスイッチは"その時" ON-OFFどちらに倒れているでしょうか。 「快適」な労働環境は必要ですが、 そこにどんなことが「“必要な”快適」なのかも考える必要があります。 人間工学的にも仕事が(モニターの監視のような)あまりに暇な場合は眠ってしまうか、 あまりに暇で、よけいなことをして事故をおこす傾向があるそうです。 運転士もパイロットも「モニターがしたくて」その職業を選んだわけではありません。 「運転したい」「操縦したい」からこそ一番前に座っているわけです。 必要以上に自動化したりせずに人間の仕事を残したり、人間の特性を考えながら 仕事の割り振りをする必要があります。 例えば、新幹線の運転は全自動が十分可能だそうです。しかしそうなった場合運転士は何をしていればいいのでしょうか? 多分、運転士は一生に一度もおこらない「非常時」に備えて警報をながめているのでしょうか? そして、非常時には突然、極端なワークロードが要求されるのです。 その技術を「警報をながめているだけ」の日常業務の連続で維持していくことができるのでしょうか? 新幹線は鉄道総研の心理学者の意見を取り入れ、あえて「運転士が運転する」という手動の業務を残しました。 東北新幹線の場合はあえてマニュアルでなければ止まらない駅まで残したということです。 またいつも言いますが 「自動化・機械化」が 「(設計者・管理者の)できるところからの自動化」で 「(現場の)必要なところからの自動化ではない」ことに人間工学的な大きな問題があります。 「機械の都合に人間が合わさせられる」ことになってしまいがちです。 そして「設計者は満足」し、現場は余計なワークロードが増える、ということはないでしょうか? これは機械の設計・自動化に限りません。どんな職場・現場でも同じ事が起きえます。 システムを作るとき・変えるときの設計思想の問題です。 | |||||||||||||||||||||||||||||
10.休息の知識 | |||||||||||||||||||||||||||||
サーカデイアンリズムが実際に問題となるのが、交代制勤務と旅行時の時差です。 「夜勤時の疲労蓄積を防ぐために」として以下のようなことが勧められています。 必ずしもそのまま取り入れることは出来ませんが考える必要はあります。
| |||||||||||||||||||||||||||||
11.生体リズムと仮眠 | |||||||||||||||||||||||||||||
図は脳波をもとに睡眠の深さの変化を継時的にグラフにしたものです。縦軸は睡眠のステージで眠りの深さを示しています。 ステージ3,4はいわゆる熟睡です(脳が休息している状態)。緑がレム睡眠期で眼球が動き、身体は休んでいるのですが脳は活動していて記憶を書き換えているような状態です。 【このグラフのポイント】 @睡眠には90分サイクルの深くなったり浅くなったりする波がある A深い眠りは睡眠の最初におこり、波全体はだんだん浅くなり目が覚める 眼が覚めるのはレム睡眠時か、波が上に来た時(上向き)でなければ頭がぼーっとした不快な状態になります[1] 。 昼休みの「ちょっとした仮眠・居眠り」も15分程度にして深睡眠レベル (図の睡眠ステージ3,4)に達する前に起きなければ「覚醒」に時間がかかります。またサーカデイアンリズムを考えた時に10-12時や夕方から 19時ころはあたまが冴え眠りにつきにくい時間帯だそうです。 この時期に仮眠を予定するのも効果的とはいえません。 身体の休息は単純に「安静時間」と「栄養」なのですが、脳の休息では「眠りを効果的に取る」という知識と工夫も必要なのです[2]。 | |||||||||||||||||||||||||||||
12.起きてから何時間目?(TSA:time since awakening) | |||||||||||||||||||||||||||||
しかし自分自身もシフト(あるいは当直)を意識して前日を過ごすことがプロの心がけとして必要です。 私たちの職場は他産業に比較して若い人が多く、体力に自信があり(多分、疲労=あるべきパフォーマンスの低下 を自覚していない)、休息を取らずに出勤してくることがあります。 しかしTSAを考えるとどんな時間帯に仕事をすることになるのかを意識することも仕事です。 またシフトが続く場合や勤務時間が長時間化する場合に疲労シミュレーションFAST/SAFTEが研究されているようです(これについては別の章で解説します)。 「この24時間以内に8時間以上の睡眠をとれたか?」ということも簡単にできるチェックリスト(心がけ)です。 自分でできる生体リズムを考えた生活も必要です(上記10項「休息の知識」を参考にして下さい。)。 | |||||||||||||||||||||||||||||
13.「I'm safe?」(私は安全?) | |||||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||||
けれども人間の点検、すなわち自分自身の点検をする人は何人いるでしょうか。これは、 FAAロータークラフトハンドブック には必ずやりなさいと書いてあるそうです。 昨年 のCRM seminar[4]で紹介しましたがヘリコプターのパイロットに限らず、私達にとっても仕事の前に「覚醒度」や「疲労」を少しは自己チェックできそうです。
このチェックリストに引っかかったら飛んではいけない、というわけではありませんが、自分の状態を自覚しないままでいるよりは、 ずっと安全だ、ということです。我々も同じです。 またこれに続いて「精神状態」「心理状態」のチェックもありますがそれに関しては、 昨年のCRM seminarで 「hazardous attitude」(危険な態度)として学びましたので その資料を参考にしてください。 [1] 睡眠についての基礎知識がこちらにのっています。 [2] 眠りの浅いREM睡眠時に起こしてくれるiPhone アプリがあります。腕時計型の加速度センサーで睡眠の深さやリズムを測定したり(東芝)、マットのセンサーで計測するもの(タニタ)などもあります。残念ながら管理人はDocomoなのでまだ試していません。 [3] 睡眠、疲労、活動、サーカデイアンリズムと認知パフォーマンスの関係を分析するプログラムが考えられ、それを利用して“疲労の少ない”認知リスクの少ないシフト勤務の作り方が研究されています。http://faculty.nps.edu/nlmiller/Fatigue/HurshSAFTEFAST.pdf [4] セミナーは2003年と2007年(一部)です。 |
|||||||||||||||||||||||||||||
[メインページへ] |