序章・「知識」と「態度」と
  安全への知識と態度について

 エラーや事故についての知識をもつことが、事故防止や事故への対策の点で有効であると言われています。

 また同時に事故や安全というものについて日頃からどのように考え(認知)、感じ(感情)、振る舞っているか(行動)も事故防止にとって大事であるとも言われます。
 このようにある事柄についての固定的な認知的傾向、感情的傾向、行動的傾向を態度といい、知識と大きく関係しています。
 態度は知識の取り込みと運用の方向をコントロールする形で知識と関係しています。例えば安全態度が厳しい人は事故やエラーについての情報には感受性が高く,それに関する情報は積極的に取り込むでしょう。例えば、新聞などでも「事故・・」とあれば目に付くでしょうし、じぶんのところはだいじょうぶかな、と考えるでしょう。そして、なにかをするばあいには、事故についての知識を最大限に利用して慎重に行動する、事が推定されます。
 従って態度次第で、蓄積される知識も運用される知識も異なってくることになります。

 「態度」はどのように形成されるのでしょうか?それには2つあるそうです。
ひとつは無意識の学習です。個人の興味や関心はもちろんありますがその人の属する組織やチームの雰囲気や規範によって、知らず知らずのうちに形成される、というのです。
そしてそれを大きく包むのが「安全文化」だといいます。
もう一つはやはり個人にとってのインパクトのある経験・体験によって態度形成がなされます。たとえば悲惨な事故を目撃した、だとか、当事者になった、という場合などです。

 もちろん「態度」や「知識」があるからといってそれで事故を防げるわけではありません。行動が伴わなければ・・というわけです。そのためには継続的な技能訓練の必要性が強調されています。JASが「safety is an attitude」といってCRM訓練を「続けている」のもそのためなのです(一昨年からは義務化されました)。

 ヒューマンエラーを完全になくすことはできません。しかしその結果をコントロールすることは可能です。Human Factor(s)や「error management」というCRMコンセプトを理解し行動することがそのひとつの手がかりなのです。
 Human Factor(s)を学び組織全体にそれにもとづいた組織文化(とりあえず「雰囲気」)が形成されたときに、チームに得られるものは“事故を防止する”というある意味で消極的な価値ばかりではありません。それと共にチームとしてのパフォーマンスの向上が得られるはずです。
 私たちはそれを目指すべきなのです。
 
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