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セブン
監督  デヴィッド・フィンチャー
出演  ブラッド・ピット  モーガン・フリーマン  グウィネス・パルトロウ  ケヴィン・スペイシー 
 キリスト教の「七つの大罪」になぞらえた猟奇連続殺人事件を追う二人の刑事を描いたサスペンスです。
 7つの大罪とは、大食、強欲、怠慢、高慢、好色、嫉妬、そして憤怒のこと。こうしてみると、大食のほかは自分にも当てはまってしまいます(まずい!)。
 全体のトーンは暗く、雨が降っているという、いかにもサイコっぽい雰囲気です。というより、そもそも殺人現場のシーンは本当に“猟奇的”で、見るに堪えない映像です。
 ブラッド・ピットも窓から飛び降りるシーンで手を骨折してしまったようですが、それにもめげず、手をつりながら頑張っています。ブラッド・ピットの映画の中では、この若手刑事役が一番はまっていると思うのですが(ただ、ほかの作品と比較するほど、ブラビの映画は見ていませんが)。
 今では正統派の役柄しかしていない、ケヴィン・スペイシーがサイコな犯人役を演じていますが、これが似合っているんですよね。「ユージュアル・サスペクツ」の詐欺師役も素晴らしかったですが、いったい、いつからケヴィン・スペイシーはまともな役ばかりを演じるようになってしまったのでしょうか。
 グウィネス・パルトロウの出世作でもあります。美人というわけでもないし、特徴的な顔であるわけでもないのに、こんな女優になるとは思いもしませんでした。
 最後は後味のあまりよくない終わり方でしたが、楽しめました。ブラビファンにはお勧めです。
ユージュアル・サスペクツ
監督  ブライアン・シンガー
出演  ガブリエル・バーン  ケヴィン・スペイシー  ベニチオ・デル・トロ
     スティーヴン・ボールドウィン  
 カリフォルニア、サン・ペドロ港でアルゼンチン・マフィアの所有する船舶の炎上事故が発生します。一人生き残ったケヴィン・スペイシー演じるヴァーバルは、取調官に対し、6週間前、銃器強奪事件の容疑者として集められた5人の男たちの身にふりかかった奇妙な話を始めます。
 銃器強奪事件の面通しで集められた五人の前科者を主人公にしたサスペンス・ミステリーです。題名となっている“ユージュアル・サスペクツ”とは常連の容疑者という意味で、この5人を指しています。彼らは元汚職警官のキートン(ガブリエル・バーンが演じています)を中心に、釈放後、協力して宝石強奪を決行。盗品をさばくために故買屋と接触しますが、トラブルから相手を射殺してしまいます。そこに、伝説のギャング“カイザー・ソゼ”の使いと名乗る弁護士が現れます。
 ミステリーファンにはたまらない作品です。ネタばれになるので詳しいことは書けませんが、これってミステリーのある形式を映像で行ってみたといえるのではないでしょうか。とにかく、おもしろいです。映画のミステリー作品で、これほどなるほどそうだったのかと納得できる作品は、そうそう思い浮かべることはできません。
 ガブリエル・バーンの押さえた渋い演技も素晴らしいですが、この作品で、アカデミー助演男優賞を受賞したケヴィン・スペイシーの足の悪い詐欺師の演技も見事です。初めてこの作品でケヴィン・スペイシーを知りましたが、強く印象に残りました。オススメです。
オーロラの彼方へ
監督  グレゴリー・ホブリット
出演  デニス・クエイド  ジム・カヴィーゼル  エリザベス・ミッチェル
 ニューヨークの空にオーロラが出現した日、無線機から流れてきた声は、30年前に火災現場で殉死した父親の声だった。
 僕の好きなファンタジー作品です。ただ、単なるファンタジーではなく、30年前の殺人事件が絡んでサスペンスの要素もいっぱいです。
 無線機から流れてきた声が死んだ父の声だったら、そしてその父が翌日には殉職する運命にあるのだったら、子供としては、運命を変えたいと思うのは人情でしょう。しかし、そのことが歴史を変えることになってしまうのです。
 タイム・トラベルをする人は、歴史を改変してはならないというのはSFの鉄則です。しかし、それを守っていたのでは映画になりません。過去に関わって、過去の事実を変えてしまったら、果たして、その後の歴史、というと大げさですが、人の運命はどうなってしまうのかというのが、タイム・トラベルもののメイン・ストーリーとなります。この手の話としては、「バック・トゥ・ザ・フーチャー」が有名ですよね。
 こうしたタイム・トラベルものは、なかなか矛盾なく話を進めるというのは難しいところがあります。歴史が変わることについては、パラレル・ワールドとかの説明がなされますが、まあ、こうした映画は、あまり細かいことはこだわらずに楽しんだ方がいいのでしょう。
 この作品で描かれているのは父と子の絆です。父親役のデニス・クエイドが頑固一徹、仕事に命をかける消防士役を熱演しています。
ジョーブラックをよろしく
監督  マーティン・ブレスト
出演  ブラッド・ピット  アンソニー・ホブキンス  クレア・ファーラニ  
     マーシャ・ゲイ・ハーデン  
 人間界の見学に現れたブラッド・ピット扮する死神が、人間の女性との恋に落ちるロマンティックファンタジーです。こういうファンタジー系の作品は好きなんですよねえ。
 富豪のビル・パリッシュの元に死神が現れ、死を宣告するとともに、しばらくの間人間界の見学をするので、案内役をしろと命令します。彼の前に人間の姿をして現れたのは、パリッシュの次女スーザンが喫茶店で出会って惹かれた男性その人でした。死神はスーザンと別れた後に事故死した青年の身体を借りて、人間界にと現れたのでした。
 僕の好きなファンタジー系の作品です。何といっても、ブラッド・ピットの他の作品には見られないおさえた演技がいいです。いつものように、タフで不良っぽい感じがありません。こういう落ち着いた役柄の方がかっこいいと思ってしまうのは僕だけでしょうか。ただ、役柄的には、ブラビのせいではありませんが、おかしすぎないでしょうか。この死に神、ただ我が儘なだけでしょう。人間の世界を見たいから、それまで休暇とか、人間世界で暮らすために身体が必要だから、死体を作ってしまう(つまりは死に追いやってしまう)とか。それに、声だけの時は重厚な感じだったのに、人間として登場したら、なんか間抜けな感じで、落差が激しいです。
 この映画、巷では評価が低いようです。ブラビが役柄に合っていないとか(初体験の男性をブラビが演じるなんて、笑ってしまいました。)、これだけの内容に3時間は長すぎるというのがその原因ですが、僕としては、役柄的にも上に述べたようにおもしろいと思ったし、時間の長さを感じずに見ることができました。
 最後はどうなるんだろうと思ったら、お決まりどおりの終わり方でしたが、ほのぼのと終わるこういう終わり方は好きです。
 アンソニー・ホプキンスの存在感は、いつものとおりですが、他の役者では、スーザン役のクレア・フォーラニが、素敵でしたね。初めて見たのですが、上品そうな雰囲気を持った女優さんでした。
JSA
監督  パク・チャヌク
出演  イ・ビョンホン  ソン・ガンホ  イ・ヨンエ  キム・テウ
 南北分断の象徴である38度線上の共同警備区域(JSA)で起こった射殺事件。現場にいた南北の兵士二人は、何故か互いに全く異なる陳述を繰り返します。捜査のため中立国監督委員会から派遣された韓国系スイス人である女性将校・ソフィーは、事件の当事者たちと面会を重ねながら徐々に事件の真相に迫っていきます。
 同じ民族が38度線を境に二つに分断されている悲劇を描いた作品です。簡単にそう一言で言えてしまえるのですが、その現実は僕ら日本人には到底理解できないものでしょうね。
 韓国四天王の一人、イ・ビョンホンが生き残った韓国軍兵士イ・スヒョク兵長を演じています。また、「シュリ」のソン・ガンホが北朝鮮兵士を演じていますが、この人は韓国映画には欠かせません。存在感抜群です。女性将校ソフィーを演じたイ・ヨンエは、過去に父が背負った民族の歴史に苦しみながらも、真実を明らかにしようとする理知的な将校を演じています。この作品で初めて見ましたが、本当にきれいな女優さんです。
 話は、藪の中であった事件の真相が、ソフィーの調査によりしだいに明らかとされていく過程がサスペンスフルに描かれ、見応えがあります。最後はあまりに辛い真相が見る人に衝撃を与えます。
 韓国旅行に行ったことのある友人によると、板門店には観光客が行くことができるそうですね。行く前には、なにがあっても責任を問わない旨のペーパーにサインをさせられたそうですが。一方で未だ戦争状態、ただ一方ではそれを観光の目玉にしているという何ともおかしな状況です。
グレン・ミラー物語
監督  アンソニーマン
出演  ジェームズ・スチュアート  ジーン・アリソン  ヘンリー・モーガン
     チャールズ・ドレイク
 スウィング・ジャズの創始者のグレン・ミラーの伝記的映画です。強引なまでのヘレンとの結婚から次第に作曲家として認められ、最後は飛行機事故で亡くなるまでを描きます。
 グレン・ミラーの生涯を描いた映画ですが、これは、ミラーとヘレンとの愛情物語といえます。とにかく、ヘレンという女性が素晴らしいです。ミラーが自分の楽団を持とうとした際、その費用をさっと出すなど、いわゆる内助の功でミラーを助けます。それに子供を産むことができなくなっても、前向きに考えて、明るさを失いません。こんなヘレンがいなくては、グレン・ミラーという名前は世間に知れ渡ってはいなかったと言えます。ヘレンを演じるジューン・アリソンが好演しています。
 主人公グレン・ミラーを演じるのはジェームズ・スチュアートです。この人が演じると、見ただけで好人物という印象を持ってしまいますね。
 ムーンライト・セレナードや真珠の首飾りなど、どこかで聞いたことのある曲が全編をとおして流れます。オススメの映画です。
ぼくは怖くない
監督  ガブリエレ・サルヴァトロス
出演  ジョゼッペ・クリスティアーノ  マッティーア・ディ・ピエッロ
 ミニシアター系で上映したので、地元では見ることができず、レンタルDVDで見た作品です。
 2004年アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品です。
 イタリアの小さな村に住む少年が、ある事件をとおして成長していく様子を描いた作品です。
 最初は単なる子供の成長物語の映画かと思って見ていましたが、ミケーレが偶然穴の中にフィリッポを見つけたときから、一転ミステリっぽい雰囲気になって、ひきこまれてしまいました。一見何も起こりそうにないのどかな田園風景と、そこに現れる非日常は対照的です。
 彼はどうして穴の中に入れられているのだろうか、自分の親たちが何らかの犯罪に関わっているのではないかという不安をミケーレ役のジョゼッペ・クリスティアーノが見事に演じています。
 遊びの罰ゲームで、女の子が「あそこを見せろ」と言われたときに、本当は罰ゲームを受けるはずだったミケーレは、自分が罰ゲームを受けると申し出ます。まっすぐな心の少年であることの一端を覗かせ、このことが、それ以降の彼の勇気ある行動を予想させます。
 あのラストシーンのその後はどうなってしまうのだろう。主人公のミケーレ少年の運命は。最後にミケーレが伸ばした手は、フィリッポと繋ぐことができたのでしょうか。オススメです。
 それにしても見事なまでの一面の麦畑の風景でした。あの黄金色はすごいです。
殺人の追憶
監督  ボン・ジュノ
出演  ソン・ガンホ  キム・サンギョン  パク・ヘイル
 韓国で80年代後半から6年間に10人の犠牲者を出し、空前の捜査態勢にもかかわらず迷宮入りしてしまった実在の未解決連続殺人事件を基に映画化した作品です。
 事件を追う二人の刑事が対照的です。昔ながらの暴力をふるって自白を引き出すことを正当と考える地元の刑事パクとソウル市警から派遣されてきた都会の洗練された若手の刑事ソ・テユン。この性格も捜査方法も異なる二人の刑事の対立を描きながら、事件の真相へと迫っていきます。
この映画でも、ソン・ガンホがパクを演じて見事な演技を見せています。「シュリ」や「JSA」では脇役でしたが、今回は主役で、いっそうその存在感が際立ちます。一方ソウルから派遣された刑事を演じるのはキム・サンギョンです。ソン・ガンホの強烈な個性に押され気味ですが、対照的なスマートな刑事を頑張って演じています。
 時がたってから、パクが事件の現場を訪れたときのラストシーンは強い印象を残します。
天使のくれた時間
監督  ブレット・ラトナー
出演  ニコラス・ケイジ  ティア・レオーニ  ドン・チードル
(ネタバレあり)

 もし、あのときああしていたら、と誰しも思うことがあるでしょう。
 僕なんか、いつも思っています。後悔しっぱなしです。
 この映画は、自分にはないものはないと豪語していた男が、天使によって(果たしてあの男は天使だったのでしょうか?)、辿るはずだったかもしれない人生を経験させられ、何が大事なのかに気づくファンタジーです。

 主人公のジャックは、ウォール街で成功し、今は高級マンションで優雅な独身生活を満喫しています。ところが、コンビニでの争いに口を出した日の翌朝、目を覚ますとそこは高級マンションではなく郊外の一軒家、そのうえ独身のはずが妻と二人の子供までいます。妻は、10年以上前ロンドンに成功を夢見て旅立った際に別れたはずの恋人でした。

 超高級な服を隙なく着こなしていたジャックが、一夜明けるとジャージ姿というのは落差が激しくて笑ってしまいます。急に二人の子供の父親となり、あたふたするところがまた愉快です(娘との会話は最高です)。情けなさそうな表情がニコラス・ケイジには似合いますね。
 妻のケイト役を演じたティア・レオーニがまた素敵です。今の幸せに十分満足している妻の役をかわいくコケティッシュに演じています。
 再びもとの世界へと戻ったジャックがケイトを訪ねますが、この世界ではケイトは弁護士としてパリへ旅発つ直前。弁護士としてぱりっとした服装のケイトとあか抜けない服を着たジャックが空港の喫茶室で向き合います。さて、このラストシーン以後、二人がどうなるのかは大いに興味があります。この世界には、彼に家族の大切さを思い起こさせてくれた、かわいい娘たちはいませんしね。
コラテラル
監督  マイケル・マン
出演  トム・クルーズ  ジェイミー・フォックス  ジェイダ・ビンケット=スミス
     マーク・ラファロ
 ロサンゼルスでタクシーの運転手を12年間勤めているマックス。ある晩、アニーという名の女性検事を乗せたあと、ヴィンセントと名乗るビジネスマンらしき男を乗せます。その男は、多額のチップと引き換えに一晩の専属ドライバーとなり、今夜中に5箇所を回るようマックスに依頼します。それを引き受けたことから、マックスにとって恐怖の一夜が始まります。
 ヴィンセントを演じるのは、トム・クルーズです。いつもの二枚目の役柄とは異なり、髪を銀髪に染め、非情な殺し屋を演じています。これがまた、きまっています。情け容赦なくとどめを刺すところなど、そのクールさはトム・クルーズファンにはたまらないでしょうねえ。ただ、プロの殺し屋でありながら、クラブでは派手に撃ち合うなど、ちょっとプロとは思えないシーンもありますが、これはトム・クルーズが悪いのではなく、監督のマイケル・マンの責任でしょう。
 一方、マックスを演じるのは、「レイ」でアカデミー主演男優賞を受賞したジェイミー・フォックスです。彼は、この作品でも助演男優賞にノミネートされていましたから、この年は大活躍の年でした。「レイ」ではレイ・チャールズのそっくりさんだったので、今回初めてその素顔を見ました。どこといって特徴のない顔ですね。助演男優賞にノミネートされただけに、殺し屋を客として乗せてしまったために、とんでもない一夜を過ごすことになるタクシー・ドライバーを、特に最初、ヴィンセントに脅されびくついていた彼が、しだいに彼に反抗していく姿を見事に演じています。
 映画の最初で、マックスと客としてタクシーに乗った女性検事との会話が描かれますが、しゃれていますね。こんな会話をしてみたいものです。
 この映画、以外と批判的な意見が多いようです。確かに突っ込みを入れようと思えばいろいろあります。そもそも殺し屋であることをマックスに教えたあとに、マックスのタクシーでターゲットのところを回らなくてもと思うのですが、それを言ったら、映画が成り立ちませんしね。そうは思いながらも、2時間飽きずに見ることができました。やっぱり、見る限りは楽しまなくては。
※ラスト近くでターゲットを追うトム・クルーズが、ぶざまに椅子にけつまずくシーンがありましたが、あれって演出なんでしょうか。
友へ チング
監督  クァク・キョンテク
出演  ユ・オゾン  チャン・ドンゴン  ソ・テファ  チョ・ウンテク
 ヤクザの息子ジュンソク、葬儀屋の息子ドンス、優等生のサンテクとお調子者のジュンホの4人の幼なじみ。小学校を卒業し、それぞれ異なる人生を歩むようになりますが、その中でチャン・ドンゴン演じるドンスとユ・オソン演じるジュンソクは、やくざとなり対立する組織に属するようになります。
 やがて、二人の意志に関係なく、二人の周りは次第に対立を深めていきます。

 仲の良かった幼なじみも、成長して大人になったときには、決して幼かった時の関係には戻れないという、話としてはよくあるパターンといえます。
 最初は4人の幼なじみの話、韓国版「スタンド・バイ・ミー」かと思いましたが、結局はやくざになったジュンソクとドンスの話でしたね。
 ラストシーンで、小学生の四人が陸を目指して泳いでいくシーンが印象的です。

 それにしても、チャン・ドンゴンにしてもユ・オソンにしても、学生服姿は無理がありましたねえ。どう見ても高校生には見えないでしょう。
ウォルター少年と、夏の休日
監督  ティム・マッキャンリーズ
出演  マイケル・ケイン  ロバート・デュヴァル  ハーレイ・ジョエル・オスメント  キラ・セジウィック
 昨年、映画館に見に行く予定が、たまたま忙しくて行くことができなかったので、DVDをレンタルしてきました。

 母子二人暮らしの少年ウォルターは、母親の都合(というか母親が遊ぶには少年が邪魔だったのでしょう)で、テキサスの片田舎に住む母親の二人のおじのところに預けられます。母からは、その間に老人たちが隠し持っているお金の在処を探すように命じられます。
 二人の老人はハブとマッキャンという頑固でその前歴が謎の兄弟。3人はお互いに戸惑いながらも共同生活を始めます。
 そんなある日、ウォルターは屋根裏部屋で一枚の女性の写真を見つけます。

 ウォルター少年を演じるのは「シックス・センス」のハーレイ・ジョエル・オスメント、老人二人をアカデミー賞俳優であるマイケル・ケインとロバート・デュバルが演じています。
 邦題からはウォルター少年の話のように思えますが、これは、ウォルター少年よりも二人の老人を描いた作品です。
 原題は「Secondhand LIONS」、つまり「中古のライオン」であり、直接には物語の中で歳をとって動物園から売られてきたライオンのことですが、これが二人の老人たちのことを指しているのは明らかです。話に登場するライオンは1匹ですが、「LIONS」と複数になっていることからもわかります。
 最初は、ウォルター少年も老人たちも、お互いに相手とどう付き合えばよいのか戸惑いを覚えながらも、しだいに心の中に相手の存在が大きくなっていきます。
 老人が語る若き頃の愛と冒険の物語、それに胸をときめかせる少年。最後にその話がおとぎ話であったのか、事実であったのかがわかるのですが、果たしてそれは必要だったでしょうか。
メメント
監督  クリストファー・ノーラン
出演  ガイ・ピアース  キャリー=アン・モス  ジョー・パントリアーノ
 クリストファー・ノーラン監督の出世作です。

 主人公のレニーは、ある日家に押し入った強盗によって妻を殺されたショックで、記憶が10分以上続かないという「前向性健忘症」という記憶障害に陥っています。彼は、記憶をとどめるため、ポラロイド写真を撮り、メモを書き、さらには自分の身体に刺青で文字を刻みつけながら、妻を殺害した犯人を捜します。

 一度見ただけではなかなか細部が理解できない作品です。
 映画の始まりは、なんとラストシーンからです。そこから映画は過去へと少しずつ時間軸を遡っていきます。変わった構成です。
 ある場面がその部分を見ているだけでは何のことがわからないのですが、場面が変わって過去に遡ることによって、それは実はこういうことだったということが理解できる仕掛けとなっています。
 ただ、なかなか複雑で頭の中で時間軸を再構成するのですが、理解が追いついていきません。リピーターが多かったということもわかります。
 僕自身は、映画館ではなく、DVDで見たのですが、幸いにもDVDには時間軸に沿って再生するバージョンがありますので、今度はそれで再確認してみるつもりです(本当は邪道なのでしょうが)。
 主人公レニーを演じるのは「L.A.コンフィデンシャル」のガイ・ピアースです。レニーの探索に協力する女性として、あの「マトリックス」のキャリー=アン・モスが出演しています。でも、今回のバーで働く、どこか気だるそうな女性より、「マトリックス」での毅然とした女性役の方が似合っています。
 「前向性健忘症」という病気は、最近小川洋子さんの「博士の愛した数式」のヒットにより、多くの人が知ったと思いますが、人間の記憶というものの不思議さを考えさせる病気ですよね。
第十七捕虜収容所
監督  ビリー・ワイルダー
出演  ウィリアム・ホールデン  ドン・テイラー  ピーター・グレイヴス  ロバート・スタラウス
     オットー・プレミンジャー
 第2次世界大戦末期、ドイツの第17捕虜収容所の第4キャンプにはアメリカ空軍の軍曹ばかりが収容されていた。ある日脱走計画が失敗したことで、仲間内にスパイがいるのではないかという疑いが持ち上がる。真っ先に疑われたのは、仲間内で商売をして手広く儲けていることで嫌われていたセフトン。仲間からリンチを受けた彼は、真犯人を見つけようとするが・・・

 「アパートの鍵貸します」や「情婦」のビリー・ワイルダー監督作品です。1954年公開の僕が生まれる前の映画で、カラーではなく白黒映画です。
 捕虜収容所を舞台とする映画といえば、忘れてならないのは「大脱走」です。この作品も最初、地下トンネルを掘って脱走を図るシーンから始まったので、「大脱走」と同じ集団脱走劇かと思いましたが、全編捕虜収容所内が舞台の人間ドラマでした。
 捕虜収容所という暗く、閉鎖された空間の中にも、ワイルダー監督らしいユーモアが随所にちりばめられた作品です。特に“アニマル”がユーモアを一手に引き受けていたという感じでしたね(幻覚で男を美貌の女性と勘違いしてダンスを踊るところには笑ってしまいました)。
 前半のユーモア溢れた収容所生活を描いたのと一転して、後半は、一気にスパイは誰なのか、どうやってドイツ兵と連絡を取っているのかに焦点が移ってきます。アクションシーンがあるわけでなし、今の映画のようにCGで見せるわけではありません。脚本とウィリアム・ホールデンらの演技で見せる映画でした。
 セフトンを演じたウィリアム・ホールデンがこの作品でアカデミー主演男優賞を受賞しています。
 あの音楽もどこかで聞いたことがあると思ったら、この映画のテーマ曲だったのですね。
ブリジット・ジョーンズの日記
監督  シャロン・マグアイア
出演  レニー・ゼルウィガー  コリン・ファース  ヒュー・グラント  ジム・ブロードベント
     ジェマ・ジョーンズ  サリー・フィリップス  シャーリー・ヘンダーソン
  「ブリジット・ジョーンズの日記2」もすでに公開が終了しているのにもかかわらず、今更ながらの第1作のDVD鑑賞です。
   いや〜おもしろかったです。笑わせてもらいました。
  男性ですので、女性が見たときのように共感するということはありませんでしたが、ホント楽しませてもらいました。
   主人公ブリジット・ジョーンズは出版社勤務の32歳、独身女性。となれば典型的な負け犬ですね(映画公開当時にはこんなことばはありませんでしたが)。
 映画は、ブリジットが恋に仕事に、そしてダイエットに悪戦苦闘しながら頑張る姿を描いているのですが、やることなすことどこか少しずつずれていて笑ってしまいます。でも、いつもポジティブなところが、ブリジットをかわいく見せています。こんなところが女性の共感を呼んだのでしょうか。
 ブリジット役を演じた、レニー・ゼルウィガーですが、この役のために体重を増やしたということですが、その成果(たわわな胸元、大きなお尻)を惜しげもなく観客の前に見せてくれます。立派!女優魂爆発です。 
 そんなブリジットを巡る二人の男、ダニー役のヒュー・グラントとマーク役のコリン・ファースが対照的な性格で実にいい味出しています。この映画のヒットは、レニー・ゼルウィガーによるところはもちろんですが、この二人の演技によるところも大きかったのではないでしょうか。
 いつも苦虫を噛みつぶしたような表情の真面目なマーク、それに対して口がうまい女たらしのダニー。ダニーを演じるヒュー・グラントは、僕の印象では、いつも真面目な二枚目役でしたが、この作品ではまったく違いました。イメージが大逆転です。でも、これがまた似合っているんですよね。女の人にとっては、自分に声を掛けながらも他の女性とも平気で遊んでしまう男なんて、嫌なやつなんでしょうが、ブリジットのようにどこか惹かれてしまうようですね。
 せりふがおもしろいです。下ネタも満載です。どうして年齢制限があるのかと思ったのですが、あれだけ露骨に下ネタが出てくると無理ないですねえ(特に調理器具を実演するシーンでは大笑いです。) 
 この点、僕はDVDで、日本語吹き替えバージョンで鑑賞したのですが、字幕スーパーだとうまくユーモアも伝わらないかもしれないですね。
 最後は、やっぱり、お決まりのハッピーエンドで、めでたしめでたしです。
 エンドロールも愉快。ここでも最高はヒュー・グラントです。
僕の彼女を紹介します
監督  クァク・ジョエン
出演  チョン・ジヒョン  チョン・ヒャク  
 「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョン主演のラヴ・ストーリーです。日本でも昨年「世界の中心で愛を叫ぶ」や「いま、会いに行きます」のようなラヴ・ストーリーがヒットしましたが、この映画は、韓国版泣かせるラヴ・ストーリーです。
 テレビで放映された映画公開前の予告編を観ると、コテコテのラヴ・ストーリーと思ったのですが、いざ始まりは、コメディのようです。誤認逮捕をした女性警官と、された高校教師。どこか頼りない善良な高校教師と、きまじめで無鉄砲で思いこみが激しい女性警官との出会いをおかしく描いていきます。
 そんな最悪の出会いでありながら、しだいに惹かれあい、恋に落ちる二人。ラヴ・ストーリーの決定版とチラシにもありましたので、この後の展開はどうなるのだろうと思ったら、なんと、彼等の行く先には過酷な運命が待っていました・・・。
 女性警官を演じたチョン・ジヒョンは、「猟奇的な彼女」のヒットで韓国では絶大な人気を誇るようですが、私としては今回が初見です。なかなか、可愛い女優さんですねえ。最初のコミカルな感じよりも、後半の死も恐れずに犯人に向かっていくときの表情の方が好きです。
 相手役の高校教師を演じたのは「火山高」のチョン・ヒョクです。不良高校生とは一転、人の良い好青年を演じています。
 最初のコメディタッチが最後にはファンタジックな泣かせるラブ・ストーリーとなっていきます(というか、とんでもない展開になるのですが)。ネタばれになるので詳しいことは言えないのですが、こうした設定の映画は大好きです。なんてクサイ映画だと思いながらも感動してしまいました。      
情婦
監督  ビリー・ワイルダー
出演  タイロン・パワー  マレーネ・ディートリッヒ  チャールズ・ロートン  エルザ・ランチェスター
 金持ちの未亡人を殺した容疑をかけられたレナードは、老齢ながらロンドンきっての敏腕弁護士ウィルフレッドに弁護を依頼。だが検察側は、レナードの妻クリスティーヌを証人台に立たせる。原題の由来である。彼女からは思いもかけない証言が発せられる。
 アガサ・クリスティの短編「検察側の証人」をクリスティ自身が舞台劇化したものの映画化です。
 監督・脚本は「お熱いのがお好き」「アパートの鍵貸します」等の名監督ビリー・ワイルダーです。ミステリ、法廷映画として最高傑作という評価をそこかしこで聞きますが、確かに納得いきます。ラストの二転、三転のどんでん返しは見事の一言に尽きますが、そればかりでなく、全編に伏線が張り巡らせていて、映画が終わるとワイルダーの映画作りのうまさがわかって思わずうなってしまいます。
 被告レナードを演じるのはタイロン・パワー。私自身はこの映画でしか見たことはないのですが、アクション俳優で売り出したのが、この映画では演技派として評価される演技を見せています。残念ながら、これが遺作となってしまいました。
 レナードの妻を演じるのはマレーネ・ディートリッヒです。ディートリッヒといえば「リリー・マルレーン」という歌を歌う人という印象しかありませんでしたが、役者もやるのですね。骨張っていて、決して美人とは言えませんし、声もハスキーですが、強い印象を残します。
 弁護士役のチャールズ・ロートンの演技もこの映画の成功に一役買っています。看護婦役のエルザ・ランチェスター(実生活ではチャールズ・ロートン夫人だそうです)との息のあった掛け合いもおもしろいです。
 それにしても、どうして「検察側の証人」が「情婦」などという陳腐な邦題になってしまったのでしょうか(たぶん、○○だからでしょうが)。原題は「WITNESS FOR THE PROSECUTION」ですので、きちんと「検察側の証人」になっています。「検察側の証人」では題名が堅すぎて、配給会社がお客が入りそうもないと考えたからでしょうか。
 所有する価値のある映画だと思って、かつてレーザー・ディスクを購入したのですが、今ではそれより安価で保管する場所も取らないDVDが出ています。あのレーザー・ディスクはどうしよう・・・。
シカゴ
監督  ロブ・マーシャル
出演  レニー・ゼルウィガー  キャサリン・ゼタ=ジョーンズ  リチャード・ギア
 トニー賞受賞作で振付・演出家のボブ・フォッシーの名作の映画化です。第75回のアカデミー作品賞をはじめ6部門を受賞しています。
 題名にもあるように1920年代のシカゴのショービジネス界での話です。
 こうしたミュージカル映画は大好きです。監督のロブ・マーシャルは、ブロードウェイで活躍する振付兼演出家だそうですので、映像化に当たっても、たぶん舞台の楽しさは十分出してくれているのでしょうね。
 メインキャストは、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、レニー・ゼルウィガー、リチャード・ギアの三人です。その中ではキャサリン・ゼタ=ジョーンズの存在感が一番です。とにかく、逞しいですね。あの太もも(!!)圧倒されます。元々舞台女優だそうですので、踊りはお手のもののようで、迫力ある(?)踊りを見せてくれています。ああいう気の強い女性の役柄は彼女にぴったりですね。アカデミー助演女優賞を受賞するのもうなずけます。
 一方、レニー・ゼルウィガーですが、「ブリジット・ジョーンズの日記」のときのお尻がボン、胸がボンという体型を一転減量してスリムになって登場しています。女優魂というのはすごいですねえ。見習いたいと思うのだけど、全然減らない我が体重です(笑)
 キャサリン・ゼタ=ジョーンズの力強い踊りには及びませんが、頑張っています。
 リチャード・ギアもミュージカルなんて似合わなそうな印象の役者さんでしたが、見事な踊りを披露しています。タップダンスが圧巻。リチャード・ギアが吹き替えなしに踊っているのだから驚きです。  ただ、一点だけ言わせてもらえば、下着姿で踊るシーンは、当初この役を予定されていたジョン・トラボルタの方がリチャード・ギアより似合う気がします。
 アカデミー賞受賞作品だからというわけではありませんが、ミュージカル好きでなくてもオススメです。
K−PAX 光の旅人
監督  イアン・ソフトリー
出演  ケヴィン・スペイシー  ジェフ・ブリッジス  メアリー・マコマック  アルフレ・ウッダード
 自分は1000年光年彼方のK−PAX星からやってきた異星人だと名乗り、精神病院に送られてきた男プロート。果たして彼は単なる妄想狂なのか、それとも本当にKーPAX星人なのか。治療に当たったパウエル医師は、妄想だと思いながらも、その理路整然とした話にしだいに彼に惹かれていく。
 こうしたファンタジックな映画は、大好きなんですよね。東京と違いこちらではわずか2週間の上映でしたが、仕事の合間を縫って見に行ってしまいました。
 プロートを演じるのは、演技派ケヴィン・スペイシーです。あの落ち着いた、人をホッとさせるような表情がいいですね。原作の翻訳者はブラッド・ピットを想像して翻訳したようですが、ブラピには、荷が重すぎるでしょう?
 精神病院の患者がみんな素直にプロートの言うことを信じてしまい、挙げ句の果てはプロートが帰るときに一緒にKーPAX星に連れて行って欲しいと言います。そうしてプロートと触れ合っていくうちに病気を克服していくというファンタジックなストーリー展開です。
 パンフレットによると、この映画には原作があり、その上続編も書かれていて、そこではプロートの正体が明かされるストーリーになっているそうです。残念ながら、この映画はそれほどのヒットでもなかったようですから、続編は期待できないですね。
 この映画、エンドロールが終わるまで席を立たないでください。エンドロールが始まるとほとんどの人が席を立ってしまいますが、この映画にはそのあとにまだあります。見ないと損しますよ。
 
※プロートが犬と犬語で話すのには笑ってしまいました。いくら何でも、あれは、やりすぎでしょう(笑)
PLANET OF THE APES 猿の惑星
監督  ティム・バートン
出演  マーク・ウォルバーグ  ティム・ロス  ヘレナ・ボナム・カーター  マイケル・クラーク・ダンカン
     エステラ・ウォーレン
 西暦2029年、惑星間の偵察を行っていたスペースステーション、オベロン号は、宇宙空間の異常を認め、チンパンジーのパイロットが偵察に向かうが、そのまま消息を絶っていまう。宇宙飛行士レオは後を追って偵察ポッドに乗り込むが、謎の惑星に墜落してしまう。なんとかポットから脱出したレオだったが、そこで見たのは猿に人間が支配されている光景だった。

 1968年公開の「猿の惑星」を「シザーハンズ」「バットマン」のティム・バートン監督がリメイクした作品です。
 「猿の惑星」といえば、僕にとっては、その衝撃的なラストから好きな映画のベストテンに入る作品です。そのリメイクということで、期待をして見に行ったのですが、やはり設定がわかっているため、1968年版のような驚きを得ることはできませんでした。あれほどの有名なラストの衝撃度を持った映画をリメイクするのは、さすがのティム・バートン監督も難しかったのではないでしょうか。
 「猿が世界を支配し、人間たちが支配される側であるというアイディア、逆転のアイディアはそのまま使用した。基本的にはそれが唯一の共通点だろうね」とティム・バートンが言っていたので、オリジナルとはかなり違った形になるのではとも思ったのですが、意外にも忠実にリメイクしていましたね。 最後の人間と猿との戦いが、目新しいところでしょうか。ただ、オリジナルと異なって、猿は猿なりの動きを見せたりと、細かいところにこだわっていました。
 また、この作品でもラストにひとひねりありますが、ラストの衝撃度では1968年版には残念ながら遙かに及んでいません。
 ティム・ロス扮する猿の指導者セードの父親役で、1968年版で宇宙飛行士テイラーを演じていたチャールトン・ヘストンがカメオ出演しています。猿のイメークをしていますので、まったく顔はわかりませんが、アメリカ映画らしいお遊びですね。
 1968年版ではノヴァ役のリンダ・ハリソンの太もも丸出しの衣装にドキドキしたものですが、今回デイナ役のエステラ・ウォーレンは一段と素晴らしいプロポーションで観る人を魅了してくれます。
ファイナル・ディスティネーション
監督  ジェームズ・ウォン
出演  デヴォン・サワ  アリ・ラーター
 この映画、いわゆるジェットコースター・ムービーというより、ジェットコースター・ホラーです。
 クラスメートや教師たちとフランスへの旅行に出かける空港で、アレックスは、自分たちが乗った飛行機が離陸直後に大爆発を起こす夢を見る。あまりの恐怖に動揺したアレックスはパニックになり、混乱に巻き込まれたクラスメート6人は飛行機から降ろされてしまう。 ところが、彼らが乗るはずだった飛行機は、夢で見たとおりに爆発を起こして墜落してしまう。
 運良く生き残った7人だったが、その後次々と不可解な事件に遭い死亡していく。
 死から逃れた高校生たちに、一度は逃れても決して逃げることはできないぞとばかりに、死が襲いかかってきます。
 思わぬときに死んだり、くるぞくるぞと思わせておいて、何もなかったりと、こういう映画にはよくある手を使って、見る人を怖がらせてくれます。理屈抜きにドキドキしたい人はどうぞ。
 後日、続編として「デッド・コースター」が制作されています。
ショーシャンクの空に
監督  フランク・ダラボン
出演  ティム・ロビンス  モーガン・フリーマン  ウィリアム・サドラー  ジェームズ・ホイットモア
 スティーブン・キングの非ホラー小説「刑務所のリタ・ヘイワース」を原作に、監督のフランク・ダラボン自身が脚本を書いた作品です。
 若くして銀行の副頭取を勤め、順風満帆な人生を送っていたティム・ロビンス演じるアンディ。彼は、ある日、妻とその愛人を殺した罪を着せられ、終身刑となって、ショーシャンク刑務所に送られます。アンディが刑務所にやってきて、初めて口をきいたのが、仮釈放を申請しても常に却下されてしまうモーガン・フリーマン演じる調達屋レッド。アンディは、レッドにロック・ハンマーの調達を依頼します。
 物語は、レッドの語りによって進んでいきます。アンディは刑務所内で性的暴力を受けながらも、決して屈することなく、刑務所生活を送ります。そのうちに自分の銀行家としての知識を生かして、看守たちの税金申告相談や、所長の脱税のための書類作成まで請け負うようになります。
 オペラの「フィガロの結婚」のレコードを放送して全囚人に聞かせるくだりは原作にはないそうですが、これは刑務所の中でもアンディが心の中は荒んでいないということを示す一場面です。
 また、毎日州議会に刑務所の図書館の予算を要求する文書を送り続けて、それをついに実現してしまいます。アンディが希望をかなえるまでやり抜く男だということを示しています。さらに、これで手紙はご容赦願いたいとあったのに、「今度からは二通送る」というユーモアも忘れないところが、日本人とは違いますね。
 人生には希望を持ち続けるべきことを教えてくれる映画です。ラストは爽快です。なぜ原作が「刑務所のリタ・ヘイワース」という題名だったのかが、ラストでわかります。本当にいい映画を見ました。
 ただ、単純に感動した私と違い、現実家の妻は、希望を持っていたって、それだけでは刑務所では本当は生きていけない、アンディには銀行家としての知識があったから、希望も持てたのだ、あなたのように何の取り柄もなければ刑務所で希望なんて持ち続けられないよと冷たく言い放ちましたが。まあ、そのとおりかもしれません。
エイリアン2
監督  ジャームズ・キャメロン
出演  シガニー・ウィーバー  マイケル・ビーン  ランス・ヘンリクセン  ポール・ライザー  ビル・パクストン
 エイリアンシリーズ第2作です。
 リプリーが目を覚ましたとき、地球はリプリーが脱出してから60年近い年月が過ぎていた。そして、エイリアンの卵があった惑星は、今では地球の植民地として数十家族が住む星と変わっていた。その星からの連絡が途絶え、要請を受けたリプリーは宇宙海兵隊とともに、悪夢の星へと旅立つことになる。そこで、リプリーたちを待ち受けていたものは・・・。
 前作はスペース・ホラーと言われたように、宇宙船という閉ざされた空間の中で、1匹のエイリアンにどこから襲われるのかという恐怖を描いていましたが、今回はエイリアンも集団です。
 ホラーから戦争アクションへと様変わりを見せました。
 しかしながら、いったいどこからおそってくるのかという恐怖はそのままです。探知機は反応しているのに姿が見えないとか、あるシーンで、壁だと思っていたのが実はエイリアンというのは怖かったですね。
 相変わらずギーガーのデザインによるエイリアンは不気味です。この映画の成功の大きな要素はこのギーガーデザインによるエイリアンでしょうね。今回はエイリアン・クイーンまで登場しますが、これはちょっと不細工でした。
 戦う女の代表格リプリーが今回も大活躍です。シガニー・ウィーバーが熱演しています。こうしたSF映画には珍しくアカデミー主演女優賞にノミネートされたことからも、その評価の高さがうかがわれます。
 それに比べて男はだらしないですね。「ターミネーター」に出演していたマイケル・ビーンもシガニー・ウィーバーの陰に隠れてしまった感がします。
 唯一印象に残ったのは、アンドロイドのビショップを演じたランス・ヘンリクセンです。感情を露わにしないアンドロイド役でありながらも、存在感があります。
 前作と雰囲気は違いますが、おもしろかったです。エイリアンシリーズでは、ここまでがオススメです。
シャイニング
監督  スタンリー・キューブリック
出演  ジャック・ニコルソン  シェリー・デュヴァル  ダニー・ロイド  スキャットマン・クローザース
 鬼才スタンリー・キューブリック監督作品です。
 冬期閉鎖されるホテルに、作家志望のジャック一家が管理人としてやってきた。そのホテルでは過去に、管理人が家族を惨殺するという事件が起こっていた。
 スティーブン・キング原作の同名作品の映画化です。原作とはかなり異なるようで、後日怒ったキング自身が再度映画化しています。私としては原作を読んでいないので、その点での評価は下せませんが、キューブリックの作った新たな作品と考えて見た方がいいのでしょうね。
 この映画の見所は、主演のジャック・ニコルソンの怪演(?)です。しだいに精神に異常をきたしていく主人公をジャック・ニコルソンが演じているのですが、演技とは思えないのが怖いです。
 こうしたエキセントリックな役をやらせたらジャック・ニコルソンは最高ですね。ドアに斧で開けた穴から顔を覗かせるシーンは怖かったですからねえ。ただ、ジャック・ニコルソンが演じると、初めから、「この主人公、きっとおかしくなるぞ」と予想がついてしまうところがなんですけど。
 そしてもう一つは、監督であるキューブリックの映像美でしょうか。ホテルに向かう車を俯瞰で撮るシーン、廊下を子供が三輪車で走り回るシーン(カメラがその子供の視線の高さなんですよね)、廊下を血が水のように流れるシーン、ホテルの外の迷路のシーン、そして双子の女の子が佇むシーンなど印象的な映像が多かったですね。
羊たちの沈黙
監督  ジョナサン・デミ
出演  ジョディ・フォスター  アンソニー・ホプキンス  スコット・グレン
 第64回アカデミー賞作品賞・監督賞・主演女優賞・主演男優賞を受賞した作品です。
 トマス・ハリスの同名小説の映画化です。ベストセラー映画の映画化となると、原作を超えることができないのが普通ですが、この作品は原作に勝るとも劣らないおもしろさでした。この作品以降、プロファイリングという言葉が流行りましたね。
 物語は、女性を殺害して、その皮を剥ぐという事件が連続して発生するところから始まります。事件解決への手がかりを得ようと、FBIは訓練生のクラリスを収監中の殺人鬼レクター博士のもとへと派遣します・・・。
 この作品の成功は、レクター博士を演じたアンソニー・ホプキンスの圧倒的な存在感によるところが大です。画面いっぱいにズームされたアンソニー・ホプキンスの顔は怖かったですねえ。
 AFIが選ぶ悪役ベスト50の第1位になっていますが、異論のないところです。
 そのレクターの相手役にアメリカ人としては小柄なジョディー・フォスターを持ってきたところに配役のうまさがあります。後日、その続編「ハンニバル」が制作されることになりますが、クラリス役がジュリアン・ムーアに変更になったことが、前作を上回ることができなかった大きな要因でしょう。もちろん、ジュリアン・ムーアも決して演技が下手という女優さんではありませんが、やはりクラリス役は小柄で勝ち気なジョディー・フォスターの印象が強すぎました。
 見所はレクターが収監されている刑務所にクラリスが会いに行った際の二人の会話のシーンです。その緊張感は見ている観客にも伝わってくるほどでした。
 ちなみに、レクター博士が檻の中で聞いていた曲は、夭折のピアニスト、グレン・グールドが弾くバッハの「ゴールドベルク変奏曲」です。前から好きな曲だったので、意味もなく「やった!」と思ってしまいました。
笑の大学
監督  星護
出演  役所広司  稲垣吾郎
 三谷幸喜の舞台劇を三谷幸喜自らの脚本で映画化した作品です。
 ときは、太平洋戦争へ突入する直前の昭和の時代。世の中は、国の戦争遂行という大義のために、厳しい言論統制が行われるようになっていました。映画は、そんな時代に笑いに命をかける劇団「笑の大学」の座付作家、スマップの稲垣吾郎演じる椿一と、役所広司演じる厳格な検閲官の「笑い」を巡る攻防を描いていきます。
 映画のほとんどが警察署の一室での二人の会話で進んでいきます。
 したがって、この映画は役所広司と稲垣吾郎の演技のでき如何にかかっているのですが、聞こえてくる感想は、役所広司はともかく稲垣吾郎の演技はいまひとつという評判ですね。
 舞台は見ていないのですが、舞台で椿役をやった近藤芳正と比較されたら稲垣くんもかわいそうですね。確かに演技が鼻につくところもあったのですが、よく頑張っていたといえるでしょう。
 国家存亡のときに笑いなど必要ないと考える検閲官に対し、笑いを売り物にする劇団にとって台本から笑いの要素を削られることは致命的と、どうにか検閲を免れようとする作家とのやり取りが、とにかく愉快です。脚本家の三谷さんとしては、当然検閲ということをからかっているのでしょう。
 しだいに検閲官自身が検閲を免れるために台本を考えてしまうところが、一段とおもしろいです。検閲官を演じる役所広司が、こうしたらどうだと演技するのですが、これがまたへたっくそ。演技力ある人が下手を演じるのですから大変ですが、これがまたおもしろい。やっぱり役所広司ですかね。
 舞台で評判を取ったものを映画化しても評価が厳しいのはしょうがないでしょう。ただ、映画は、舞台ではできない、部屋に差し込む光の加減とか、役所広司が部屋の中を駆け回るシーンなど、また違った楽しみ方があります。
ターミネーター2
監督  ジェムズ・キャメロン
出演  アーノルド・シュワルツェネガー  リンダハミルトン  ロバート・パトリック  エドワード・ファーロング
(ネタバレあり)
 前作のヒットで、大幅に制作費がアップして作られたシリーズ第2作です。
 前作でサラ・コナーを殺すために送られたアーノルド・シュワルツェネガー演じたターミネーターが、今回は逆にサラとその息子ジョンを守るために送り込まれたというアイディアがおもしろいですね。送り込んだのが、未来のジョンということで、いったいタイムパラドックス的にはどうなんだろうとは思いますが、それはそれとして深く考えずに鑑賞です。
 前作でか弱き女性だったサラが、身重になったラストの場面で心に決意を秘めた表情へと変化していましたが、今回はさらに肉体的にも筋肉もりもりという感じの戦う女性になっています。
 制作費用が膨大に増えたためか、アクションシーンも派手で、まあ壊すわ壊すわで、すごいです。そのうえ、今回の新たなターミネーターは接触したものには何でも変化するという新型ターミネーターT1000です。膨大な制作費がつぎ込まれただけあって、見事なCGの技術です。相変わらず、やられてもやられても追いかけてくるのは前作と同じです。やっつけたと思ってホッとしたところに現れるのだからたまりません。
 最後は、ターミネーターが、自分がいてはチップは残ったままだと自ら溶解炉の中に入っていく感動の展開です。公開時に映画館で見たときは涙が浮かんできてしまいました。でも、よく考えると、別にターミネーターに自己犠牲の気持ちがあったわけではないんですよね。コンピューターが計算して、自分が残っていては問題だと合理的な結論を出したにすぎないのでは、と思ってしまうのですが・・・。穿った考えでしょうか。
 とはいえ、とかく続編は前作を上回れないといわれます。確かにストーリー的には第1作の方がおもしろかったですが、パワーアップした分前作に肩を並べました。
ブレードランナー
監督  リドリー・スコット
出演  ハリソン・フォード  ショーン・ヤング  ルトガー・ハウアー  ダリル・ハンナ
 残念ながら映画館の大スクリーンで見た作品ではありません。ビデオ化された際に、SF映画の金字塔という評判を聞いて見たのが最初です。その後、レーザー・ディスクを購入して(当時はやっとレーザーディスクが出てきたばかりの頃でした)、その後何回か見ていまが、やっぱりこうしたSF映画は大スクリーンで見るべきですね。
 ストーリーは植民地惑星から逃げ出し地球へと潜入した人造人間レプリカントとそれを追うハリソン・フォード演じるブレード・ランナーとの戦いを描いたものです。
 この映画を見て目を見張ったのは、その近未来の描き方です。環境が破壊され、地上には常に酸性雨が降っています。高層ビル群が建ち並ぶ中、地上の街は退廃的な雰囲気で、ごった煮のようです。レプリカントの製造元のタイレル社のビルときたら、古代の遺跡のようです。
 高層ビルの壁面の巨大なスクリーンに映し出された日本人らしい女性(強力わかもとのCMらしいです)、そのうえ、日本語を話す日本人らしい設定の屋台の親父まで登場します。イントネーションがおかしくて日本人が演じているとは到底思えないですねえ。それにしても、こうして日本が意識的に登場しているのは、監督のリドリー・スコットは、日本が好きなんでしょうか。
 この作品で強烈な個性を発揮したのが、レプリカントのリーダー役のルトガー・ハウアーです。生きることが許されないレプリカントの悲しみを絞り出したような独白は胸に突き刺さります。完全にハリソン・フォードを喰ってしまいましたね。先日、久しぶりに「バットマン ビギンズ」のなかでルトガー・ハウアーが出演しているのを見ましたが、年をとりました。
 ハリソン・フォードはスター・ウォーズのハン・ソロ船長とは異なって、どこか疲れた中年男で今ひとつでした。
 もう一人目立っていたのは、女性のレプリカント役のダリル・ハンナです。冷たい機械的な雰囲気(当たり前ですが)を感じさせて見事なレプリカント役を演じています。スタイルは抜群です。
通常版とディレクターズ・カット版ではラストが違い、賛否両論あるようですが、私としてはディレクターズ・カット版の方がすっきりしていて、好きなのですが。
リプレイスメント
監督  ハワード・ドイッチ
出演  キアヌ・リーブス  ジーン・ハックマン  ブルック・ラングトン
 アメフトチームの選手が年俸アップを求めてストライキに突入し、困ったオーナーは代理の選手で試合を行うことにします。こうして、元大学フットボールの有名選手や俊足だけが取り柄の短距離ランナー、フットボールなど経験のない日系の相撲取り、さらには監獄から保釈されてきた牧師などが集められ、俄かチームが結成されます。題名のリプレイスメントとは、この代理の選手たちのことを言うそうです。
 ストーリーとしては、もう本当に典型的なパターンです。つまり、集められた選手が最初は対立しながらも、次第に心を通じ合わせるようになり、代理の選手でありながら勝ち進んでいってしまうのです。そしてラストも当然ながら、感動の結末が待っています。
 しかしながら、こうして頑張ってもストライキが終われば彼らはまた元の場所へと戻らなければならないというのが一抹の寂しさを感じさせます。
 酔って喧嘩して留置場に入れられた選手たちが音楽に合わせて踊るシーンがあります。この映画の中で最高に好きなシーンですが、これを見るとホントにアメリカ人ってリズム感があるなあと思ってしまいます。
 主人公を演じるのは、キアヌ・リーブスです。大学アメフト界の花形スターであったにもかかわらず、自信をなくして、今ではアメフトから離れている男を演じています。彼がクォーターバック役では、軽く倒されてしまう感じがしますが、主役だからしょうがないか。
 一方監督を演じるのはジーン・ハックマンです。この人オスカー俳優でありながらシリアスドラマからコメディまで、大作から小品まで作品を選ばずに出演して、善人から悪人まで見事な演技を見せてくれています。確か他の映画でもバスケットのコーチ役をしたと思いますが、監督やコーチ役がよく似合います。
ドリーム・キャッチャー
監督  ローレンス・カスダン  
出演  モーガン・フリーマン  トム・サイズモア  ドニー・ウォールバーグ  トーマス・ジェーン
     ダミアン・ルイス
  スティーブン・キング原作の映画化です。映画館で見た予告編では、ホラー作品に見えたのですが、まさかあんな風になっていくとは予想を裏切られました。残念ながら悪い方向にですけど。この映画、職場の女の子が先に見に行ったので、感想を聞いたら言葉を濁していましたが、濁さざるを得なかったのでしょうね。
 最初に登場するのは幼なじみの四人の男性です。彼等は幼いときにダディッツという子をいじめっ子から救ったことにより、ある秘密を共有することになります。キングの作品で男の子四人組となると、どうしても「スタンド・バイ・ミー」を思い出してしまうのですが、今回は「スタンド・バイ・ミー」とは異なって彼らの成長物語ではありません。
 途中までは、ホラーかなと思ってドキドキしながら見ていたのですが、軍隊が出てきて、これはサスペンスになるのかと思ったら、○○(ネタばれになるので書きません)が姿を現したところから様相が一変してしまいました。いったい、何なんだこの映画は。
 DVDには、映画のラストとは異なる別バージョンのラストが収録されています。どちらかというと、そちらの方が余韻が残るラストですが、ちょっとあっけないかなという気がします。映画版の方がすっきりはしますが、まあびっくりしてしまいますね。
 中心となる4人の俳優は、あまり有名な俳優ではありません(私が知らないだけかもしれませんが)。それよりは、軍隊の司令官役でモーガン・フリーマンが出演しています。いつもの落ち着いた脇役と異なって、今回は狂信的な軍人役を演じます。その部下としてトム・サイズモアが出演していますが、ラストはあれはないだろうと思ってしまいます。
異人たちとの夏
監督  大林宣彦
出演  風間杜夫  片岡鶴太郎  秋吉久美子  名取裕子
(ネタバレありです)

 夏となれば幽霊、怪談話です。この物語は幼い頃両親を亡くした中年男が、あるとき浅草で両親の幽霊と出会うことから始まります。両親は若い頃のまま、そして自分は中年男となっていますが、両親は主人公に対し子供のときのまま接します。
 キャッチボールを父親とする主人公の気持ちがわかりますねえ(そういえば最近は、キャッチボールをやっている親子の姿を見かけなくなりました)。
 自分たちがいては、息子がやつれるばかりだと、別れを決心して最後に三人ですき焼きを食べる場面では泣いてしまいました。子を思う父母、父母を思う子が描かれた名シーンです。
 秋吉久美子と鶴太郎のやりとりからは親が子を思う気持ちがひしひしと伝わってきます。それが押しつけでない感じがまたいいですね。
 いかにも昔の下町の親父というイメージの片岡鶴太郎の父親役は最高です。
 最後の名取裕子とのシーンは、それまでの話の流れからはちょっと違和感がありました。なくてもかまわなかった(ない方が良かった)と思うのですが。
TUBE(チューブ)
監督  ベク・ウナク
出演  キム・ソックン  パク・サンミン  ペ・ドゥナ  ソン・ビョンホ
 今まで見た韓国映画の中では、いまひとつかなあと思ってしまった作品です。
 国家機密諜報員でありながら、政治ゲームの中で追放され、妻を殺されたことから、テロリストとして国家への復讐に燃えるギテク。一方、ギテクに恋人を殺され、自らも小指を切断された刑事チャン。愛する者を失った二人が、ソウルの地下鉄の中で対峙する・・・。
 監督は「シュリ」の脚本を担当した人であり、その他「シュリ」を作った人たちが集まったとありましたが、「シュリ」とは大違いで、いろいろつっこみたくなる場面が多すぎです。
 映画が始まると、突然の撃ち合い。まるで「西部警察」みたいな派手な撃ち合いです。ところが、武装した警察があんなに銃を撃っているのに、全然犯人に当たらない。犯人側は姿を銃口の前に晒しているのにもかかわらずです。逆に犯人側が撃つと警官にはどんどん当たってしまうという、現実にはとてもありえない銃撃戦です。
 市長が視察に乗る電車のホームで騒ぎが起こっているのに誰も何もしないことはないでしょう。もっと警備はするはずですから、インギョンがあんなに簡単に拉致されるわけありません。
 ジテクもチャンが拳銃を失い警棒で向かってくるからといって、拳銃を捨てて、剣で立ち向かう必要はないでしょう。ジテクというのは非情な男ではなかったの?
 最後も列車を爆発させないために、一人が残らなければならないという泣かせるラストにしたかったようですが、連結器を切り離した後も、チャンとインギョンがずっと見つめ合っている時間があるのなら、残らずに飛び移れよと思ってしまいました。
 いちいち細かいところにまでケチをつけたくなってしまいますが、結局一番の問題は人間関係がきちんと描かれていないことです。インギョンはどうして刑事のチャンを好きになったのか。このあたりの描き方がさらっとしていてよくわかりませんでした。
 インギョンを演じたベ・ドゥナは、初めて見たのですが、遠藤久美子と菅野美穂を足して割ったような顔立ちの人ですね。
 ちなみに、「TUBE]とは、イギリス英語で地下鉄のことだそうです。 
アザーズ
監督  アレハンドロ・アメナーバル
出演  ニコール・キッドマン  フィオネラ・フラナガン  クリストファー・エクルストン  エレーン・キャシディ
 この映画、制作総指揮にトム・クルーズ、主演がニコール・キッドマンという、夫婦が名前を連ねていて評判でしたが、すでにこの映画のときは夫婦仲は破綻していたようで、その後離婚してしまいましたね。
 監督はスペインのアレハンドロ・アメナバールで、私としてはこの監督の作品を見たのは初めてでした。今年のアカデミー賞では「海を飛ぶ夢」で見事外国語映画賞を受賞しましたね。 
 トム・クルーズは、この監督が気に入っているらしく、アメナバール監督作品「オープン・ユア・アイズ」をリメイクした「バニラ・スカイ」を制作しています。
 舞台は第二次世界大戦末期のイギリスのチャネル諸島です(といってもどこかは知りませんが(^^;)にある古い屋敷。ニコール・キッドマン演じる主人公グレースは光アレルギーの二人の子供とともに、広大な屋敷に住んでいます。夫は戦地に行ったまま行方不明、使用人も突然いなくなった屋敷に使用人になりたいと3人の男女がやってくるところから物語は始まります。それ以降誰もいないはずの部屋から物音が聞こえてくるようになります・・・
 舞台となる屋敷が、いまにも幽霊でも出そうという古い屋敷です。全体的に暗いトーンの映画ですが、その中でニコール・キッドマンの色の白さが目立ちます。あの毅然とした顔立ちは、夫の帰りを待ちながら一人で子供たちを守る妻という役柄がお似合いです。
 この映画、えっ!と、どっきりさせる映画なので、細かいストーリーの話はネタばれになるのでできません。こういうのが天地がひっくり返るというのでしょうか。怪奇映画ではないので、きゃーと叫ぶことはありませんが、えっ!えっ!とびっくりします。とにかく、見て楽しんでください。ちなみに私は、ラストになる前に○○であることに気づきましたけど(自慢しています(^^;)
マイ・ボディガード
監督  トニー・スコット
出演  デンゼル・ワシントン  ダコタ・ファニング  クリストファー・ウォーケン  ラダ・ミッチェル
     ミッキー・ローク
 A・J・クィネル原作の「燃える男」の映画化です。かつて新潮文庫で出ていた際に読んだはずですが、内容は全然覚えていませんでした(今現在入手可能は集英社文庫版のようです)。
 元対テロ部隊の精鋭スナイパーだったクリーシーは、長年の戦場経験で心を病んでいます。そんなとき、先輩からボディガードの職を斡旋され、誘拐事件が多発するメキシコ・シティで実業家の9歳になる娘ピタのボディガードとなります。ピタの笑顔や素直なやさしさに、しだいに心を開いていくクリーシーでしたが、ある日ピタが誘拐組織によって拉致され、クリーシーも撃たれて重傷を負います。
 軍隊時代の行いに罪悪感を抱き、聖書を心の拠り所としているスナイパー、クリーシーを演じているのはデンゼル・ワシントンです。ダコタ・ファニング演じるピタによって心が癒され、笑顔を取り戻していったクリーシーが、再び非情な男として復讐の鬼と化していくところを見事に演じています。
 こうしたハードな役というのは、アカデミー賞を受賞した「トレーニング・デイ」以来のことでしょうか。デンゼル・ワシントンといえば、いつも正義感溢れた主人公という印象しか持っていなかったのですが、意外にこうした情け容赦のない男も似合います。
 天才子役ダコタ・ファニングが今回はアカデミー賞俳優デンゼル・ワシントンと共演です。このあとの「宇宙戦争」と比べると、ずっとこちらの方が愛くるしいですね。あの笑顔では、人嫌いでも本当に心を開いてしまいます。驚きの演技力です。
 実業家の顧問弁護士ですが、どこかで見た顔だ、誰だったかなあと思ったら、なんとミッキー・ロークでしたね。久しぶりに見ましたが、すっかり太ってしまいました。「ナイン・ハーフ」の頃のミッキー・ロークはどこにいってしまったのでしょうか。
 中南米では誘拐が政治テロとしてではなく商売として行われている状況にあるようです。この作品でも誘拐を実行するのは腐敗した警官のグループです。これでは怖くて日本人は住めないですよねえ。 
スウィングガールズ
監督  矢口史靖
出演  上野樹里  貫地谷しほり  本仮屋ユイカ  豊島由佳梨  平岡祐太  竹中直人  白石美帆
     小日向文世  渡辺えり子  谷啓
 「ウォーターボーイズ」の矢口史靖監督作品です。「ウォーターボーイズ」では、当時男性がやるなんて誰も思っていなかったシンクロナイズドスイミングに打ち込む男子高校生を描きましたが、今回は、ビッグバンド・ジャズに挑戦する女子高校生の話です。
 課外をさぼるために、食中毒で倒れた吹奏楽部の代役で始めたビッグバンド・ジャズ。最初はやる気のなかった主人公たちでしたが、しだいにのめり込んでしまうことに・・・
 中心となる女子高校生4人が個性的に描かれます。主人公を演じる上野樹里は、のびのびと演じていて好感が持てましたが、こうした映画には必ずいるキャラクターの真面目な女生徒役の本仮屋ユカリも、なかなかかわいい女の子で、いい味出していました(いけない!ちょっとおじさんぽい感想ですね(^^;)。
 脇役である数学教師の竹中直人は相変わらず個性が強い役を演じています。「ウォーターボーイズ」にも出演していましたが、こういう映画には欠かせない役者さんです。
 とにかく、若い頃に何かに打ち込むことができるというのは素晴らしいことであり、「ウォーターボーイズ」もそうですが、一生懸命に打ち込む人たちを見ていると気分がいいですね。
 ラストの演奏会での演奏は、実際に彼女たちが演奏しているものだそうですが、見事です。やればできるものですね。ピアノが弾けるようになりたくて、「お父さんのためのピアノ」みたいな本ばかり買ってきて、すぐ断念してしまう僕とは大違いです。
マシニスト
監督  ブラッド・アンダーソン  
出演  クリスチャン・ベール  ジェニファー・ジェイソン・リー  ジョン・シャリアン
     アイタナ・サンチェス=ギヨン  マイケル・アイアンサイド
 1年間眠りを忘れ骸骨のように痩せた男の話です。主演は、「バットマン ビギンズ」でバットマンを演じたクリスチャン・ベール。しかし、最初見たときは、骸骨のように痩せ細っていたので、まさかバットマンを演じたクリスチャン・ベールとは思えませんでした。なんと30キロも減量して撮影に臨んだそうですから、その役者魂はすさまじいものがありますね。その激痩せぶりには、見ていて辛いものがあります。映画の中でクリスチャン・ベールが人を背負ってフラフラと歩くシーンがありますが、あれは演技ではなく本当にああだったのでしょう。30キロも痩せれば、足の筋肉だって落ちてしまっているでしょうから。
 トレバーは、痩せ衰えた体を誰もが心配する中、それでも毎日仕事に向かい、黙々と働いています。そんなある日、彼は自宅の冷蔵庫のドアに不気味な張り紙を見つけ奇妙な不安に襲われます。また、それと前後して彼の周囲では不可解な出来事が次々と起こり始めます。その影には新入りの同僚アイバンの姿が。ところが、トレバー以外の誰もそのアイバンという男は知らないというのです。果たして、周りのみんながトレバーを騙しているのか、それともトレバーの妄想なのか・・・
 クリスチャン・ベールが演じる主人公トレバーがなぜ、1年間も眠れなくなってしまったかの理由は何ら語られていきません。しかし、ラストでトレバーは恐ろしいその理由を知ることになります。
 主人公が謎解きをした結果、自分に関する重大な事実を知ることになるということでは「メメント」を思い浮かべてしまいます。映画の雰囲気としても似ています。しかし、謎解きよりはクリスチャン・ベールの激痩せぶりの方に目がいってしまいますね。あまりにすごすぎて、多くの人に見てもらえる映画ではないですねえ。地方の映画館では公開されなかった理由がよくわかりました。

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