▲2025映画鑑賞の部屋

キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド(2025.2.14) 
監督  ジュリアス・オナー 
出演  アンソニー・マッキー  ダニー・ラミレス  カール・ランブリー  ティム・ブレイク・ネルソン  ジャンカルロ・エスポジート  シラ・ハース  ゾジャ・ロークモア  ハリソン・フォード 
 キャプテン・アメリカを主人公にしたマーベル・シネマテイック・ユニバースの1作です。「アベンジャーズ/エンドゲーム」で初代キヤプテン・アメリカのステイーブ・ロジャーズからキャプテン・アメリカの盾を託されたファルコンのサム・ウイルソン。かつて、アベンジャーズの面々と因縁があり、今ではアメリカ大統領となったサディアス・ロスが開催した各国首脳が集まった国際会議の席上、突然サムと一緒に出席していたイザイア・ブラッドリーや護衛官らが突然拳銃を大統領に向け撃つというテロが発生する。イザイアは自分が行ったことを覚えていなかったが、テロ犯として逮捕されてしまう。サムは2代目ファルコンとなったホアキン・トレスとともに真実を突き止めようとして奔走する・・・。
 この作品以前にデイズニープラスで「ファルコン&ウィンターソルジヤー」というドラマ作品があり、それを観ていないとよくわからない部分もあるようです。イザイア・ブラッドリーの人物像とか。そこは映画だけでストーリーが繋がるようにしてもらいたいですよね。
 予告編で大統領のサディアス・ロスがレッド・ハルクに変身することまで見せてしまっていましたけど、これは大きなネタバレですよねえ。よく見れば、顔はサディアス・ロスを演じたハリソン・フォードですからねえ。予告編で見せすぎですよねえ。
 日本人として痛快なのは、現実と異なって、平岳大さん演じる日本の首相がアメリカの大統領に決して卑屈になっていないこと。トランプにへいこらする安部さんや石破さんとは大違いです。その上、なんと日米で戦いが始まってしまうのですから、現実だったら大変ですけどね。ヴィブラニウムより堅いとされるアダマンチウムが発見された海域の様子は映画「エターナルズ」で描かれて風景と同じに見えましたがどうでしょうか。マーベル・シネマテイック・ユニバースに「エターナルズ」に加わってくるのでしようか。 
セプテンバー5 (2025.2.14)
監督  ティム・フェールバウム 
出演  ピーター・サースガード  ジョン・マガロ  ベン・チャップリン  レオニー・ベネシュ  ジネディー・ヌ・スアレム  ジョージナ・リッチ  コーリイ・ジョンソン  マーカス・ラザフォード  ダニエル・アデオスン  ベンジャミン・ウォーカー 
 1972年に西ドイツのミュンヘンで開催されたオリンピックでイスラエル選手団の宿舎がパレステナ武装組織により襲撃され、人質となった選手らが銃撃戦により全員死亡した事件を、生中継をしていたアメリカCBCのテレビクルーたちの視点で描きます。テロの生中継という、恐らく放送スタッフにとってはスクープとなる中継に臨む様子を緊迫感浴れる映像で描きます。まるでドキュメンタリーのようです。
 自分たちの映像を犯人も見ることによって、警察の邪魔をしているのではないかという危惧、スクープを狙うために不確かな情報を流してしまうのではないかという怖れを抱く中で中継を続けるスタッフの苦悩を描いていきます。
 題名の「セプテンバー5」は、この事件が起こった9月5日を表しています。私たち歴史を知る者は、この事件が悲劇で終わることを知っています。その後、オリンピックはソ連のアフガン侵攻によるモスクワオリンピックヘのアメリカをはじめとする西側諸国のボイコツト、そしてそれに報復するソ連をはじめとする東側諸国のロサンゼルスオリンピックヘのボイコットという平和の祭典から非常に政治的な道具として使われるようになってしまっています。 
ショウタイム7(2025.2.16) 
監督  渡辺一貴 
出演  阿部寛  竜星涼  錦戸亮  吉田鋼太郎  平田満  生見愛瑠  井川遥  前原瑞樹  平原テツ  安藤玉恵  内山昂輝 
 あるスキャンダルが原因で国民的ニュース番組「ショウタイム7」のキャスターを外され、ラジオ局へと左遷させられた折本。ある日、彼のラジオ番組に父親の事故死を隠蔽した企業の発電所を爆破するという電話がかかってくる。いたずらだと取り合わなかった折本だったが、実際に発電所が爆破されたことで、これをキャスターに返り咲くチャンスと考え、自分と犯人との交渉の状況を「ショウタイム7」の番組上で放送するようプロデューサーの東海林に迫る。キャスター席に座った折本だったが、犯人は総理を呼べと要求するなど次第にその要求はエスカレートしていく。更にスタジオにも爆弾を仕掛けてあると言い、スタジオの封鎖を命じる。果たして犯人の目的は何なのか・・・。
 雫井秀介さんの作品に警察官がテレビに出演して犯人と交渉する「犯人に告ぐ」という小説がありましたが、これはテレビキャスターと犯人とがテレビを通して交渉する様子をサスペンス・タッチで描いていきます。ただ、よく見ていると、局内を掃除していた人物とぶつかるシーンがあって、これは怪しげだということがすぐわかってしまいます。それに、、犯人の高校時代の教師が登場してきて、犯人と対峙させますが、普通は出演させないでしょう、それを出演させるとなると・・・等々考えると、事件の全体像が浮かんできます。それに、あの先生の退場は無理があります。最初は緊迫感ある雰囲気がこれで何だかなあという感じになってしまいました。残念です。
 折本を演じた阿部寛さん。この春からはテレビドラマでキャスターを演じるようです。映画の折本の雰囲気とはどう変わるのでしょう。さすがに違うでしょうね。 
ファーストキス 1ST KISS(2025.2.16) 
監督  塚原あゆ子  
出演  松たか子  松村北斗  吉岡里帆  森七菜  YOU  リリー・フランキー  竹原ピストル  松田大輔  和田雅成  鈴木慶一  神野三鈴 
 硯カンナと駈は結婚して15年が過ぎ、諍いも増え、夫婦関係は壊れていた。二人は離婚を決意し、駈が離婚届けを出しに行くと言った日、彼は線路に落ちた乳母車の赤ちゃんを助けようとして、電車に轢かれ命を落としてしまう。離婚するはずだったのに夫を亡くした妻という立場になったカンナ。そんなある日、仕事帰りに首都高速道路を走っていたカンナは天丼落盤事故に巻き込まれ、気づくと駈と出会う時代にタイムスリップしていた。若い頃の駈に再会したカンナは、自分がやはり駈を愛していることに気づき、駈が死なない未来に変えようと奮闘するが・・・。
 タイムスリップものは私が大好きなジャンル。ただ、タイムスリップものですが、タイムスリップのことは正直言っていい加減です。あまり深く考えない方が映画を楽しむことができます。事故に巻き込まれてタイムスリップするのはともかく、なぜ今の時代に戻って来られるのか、それも何回も行ったり来たり、どうしてできるのかの説明はまったくありません。過去に行くときは事故が起こって工事中の場所に行くことが必要ですが、戻るときはトンネルに入ればいいのですかねえ。まあ、そんなことはどうでもいいのでしょう。とにかくカンナが何度も現在と過去を行ったり来たりして夫の死を防ごうと奮闘することに主眼があるのでしょうから。過去に戻ってもカンナは40代のままですが、駈は20代。駈が一回りも年齢が上の女性を好きになりますかねえ。そばには若くて奇麗で、上司の教授の娘が自分に好意を持ってくれているのに。わからないのは、新しい未来では二人の仲はいいようですが、同じ結果になってしまうのもよくわかりません。駈は未来を知っているのですからね。
 結局、最初に戻りますが、タイムスリップのことは深く考えずに、カンナを演じる松たか子さんがコメディエンヌぶりを楽しめばいいのでしょう。 
僕らは人生で1回だけ魔法が使える(2025.2.24) 
監督  木村真人 
出演  八木勇征  井上裕貴  櫻井海音  椿泰我  田辺誠一  笹野高史  カンニング竹山  阿部亮平  馬渕恵里何 
 美しい景色が広がるのどかな田舎の村。その村で今年18歳を迎える4人の男子高校生が、村の年寄りのテツ爺に呼び出され、村の秘密を知らされる。その村の男は18歳になると人生で1度だけ魔法が使えるという。ただ、使えるのは20歳になるまでの2年間で、命に関わる魔法は禁じられ、もし、禁を破ると村に不幸が訪れるという。プロのビアニストになるため国立の音大合格を目指すアキト、プロのサッカー選手を目指したが、父親の病気で断念せぎるを得なくなったナツキ、父親がダム建設に積極的に関わることにより村の自然を破壊したと言われるユキオ、生まれたときから心臓に欠陥があり病気がちなハルヒ。彼らの父親たちも魔法を使ったと聞き、真剣に何に使うかと考えるようになるが、ある日、ナツキが突然村から姿を消してしまう・・・0
 ファンタジーです。4人の男の子がいったい何に魔法を使うのかが描かれていきます。もし、私が彼らだったら魔法を使ってプロのピアニストやサツカー選手になることを考えるし、私は欲深いですからねえ、もっと単純に大金持ちになることを望むかもしれません。サッカー選手になる夢を断たれたナツキが言うことが真っ当ですよね。
 4人を演じる若手俳優はみんなそれなりに活躍している人のようですが、私が知っているのはナツキを演じる櫻井海音さん。「推しの子」でも主役を務めていましたね。
 原作・脚本は、昨年、放送作家・脚本家を引退した鈴木おさむさん。映画の中にも1シーン、猟友会のおじさんとして出演していました。 
名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN(2025.2.28) 
監督  ジェームズ・マンゴールド 
出演  ティモシー・シャラメ  エドワード・ノートン  エル・ファニング  モニカ・バルバロ  ボイド・ホルブルック  ダン・フォグラー  ノーバート・レオ・バッツ  スクート・マクネイリー 
 2016年に歌手として初めてノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの若き頃を描いた作品です。先日発表された第97回アカデミー賞に作品賞ほか7部門でノミネートされましたが、受賞は逃しています。
 1961年の冬、フォークシンガーのウディ・ガスリーに会いにギターを抱えてニューヨークにやってきたボブ・ディラン。ガスリーが入院していることを知り、病院にやってきたディランはそこでガスリーの見舞いに来ていたピート・シーガーと出会い、彼の後押しで、やがてフォークシンガーとして世間の注目を浴びるようになっていく。既に売れっ子だったジョーン・バエズとも出会い、彼はフォーク界のプリンスとして持ち上げられるようになるが、彼はそれを嫌い、1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルである決断をする。
 ボブ・ディランが注目を浴びたのは、私たちより上の世代の人の時代です。私自身は、高校時代に流行ったガロの「学生街の喫茶店」という曲の中にボブ・ディランの名前が出てきましたから、名前だけは知っていましたが、曲自体は聞いたこともありませんでした。きちんと聞いたのは伊坂幸太郎さんの「アヒルと鴨のコインロッカー」の映画で主人公が「風に吹かれて」を歌っているのを見て、改めて聞いたのが初めてでした。
 歌はともかく、女性から見て人間的にはどうなんでしょう。恋人のシルヴィにコンサートに一緒についていってもらいながら、現地ではジョーン・バエズといい感じにデュエットしたりして、シルヴィのことを考えもしないのだから、どういう男だろうと思ってしまいます。
 ボブ・ディランを演じているのが「砂の惑星 デューン」のティモシー・シャラメです。新型コロナの影響で撮影が遅れたこともあって、その間ギターとハーモニカを一生懸命習得し、実際に映画の中で弾いているそうですが、なかなか見事なものです。歌も彼自身が歌っているそうです。役者さんて凄いですよね。風貌も、ボブ・ディランの若き頃と雰囲気が似ています。主演男優賞の最年少受賞がならなかったのは残念。 
ANORA アノーラ(2025.3.8) 
監督  ショーン・ベイカー 
出演  マイキー・マディソン  マーク・エイデルシュタイン  ユーリー・ボリソフ  カレン・カラグリアン  ヴァチェ・トヴマシアン 
 先日発表された第97回アカデミー賞で作品賞を始め、監督賞、主演女優賞など5部門を獲得した作品です。
 アノーラはニューヨークでストリップダンサーとして働くロシア系アメリカ人。ある日来店したロシアの新興財閥の息子・イヴァンに気に入られ、彼がロシアに帰るまでの7日間を契約彼女としてパーティーやショッピングと贅沢三昧に遊んで暮らす。旅行に行ったラスベガスの教会で勢いで結婚をした二人だったが、彼の両親は激怒し、彼を連れ戻しにアメリカにやってくる。それを聞いたイヴァンはアノーラを見捨てて一人で逃げ出してしまう。アノーラはイヴァンの両親に雇われた3人の男たちとイヴァンの行方を捜すが・・・。
 18歳未満鑑賞禁止という作品らしく、冒頭からかなりエロティックなシーンが続きます。アカデミー賞受賞作ということだけで、その内容を知らずに観に来たのでしょうか、上映後10分もたたないうちに老夫婦が観るのをやめて出ていきました。さすがに夫婦や恋人同士で観るのは気恥ずかしいですね。
 そんなエロティックなシーンも多い主人公のアノーラを演じたのがマイキー・マディソンです。惜しげもなく綺麗な体を晒し、セックスシーンも体当たりの演技です。彼女はこれでアカデミー賞主演女優賞を獲得しました。下馬評では「サブスタンス」のデミ・ムーアと言われていたのに大逆転です。キャラとして非常に目立ったのは、イヴァンを探す3人の男の中のひとり、イゴールです。どこか不器用で自分の意見を主張するアノーラに手を焼きながら、しだいに心を寄せていく様子が何ともいい感じです。演じたのは、ユーリー・ボリソフ。私にはまったく知らない役者さんでしたが、次作に期待できます。 
知らないカノジョ(2025.3.9) 
監督  三木孝浩 
出演  中島健人 milet   桐谷健太  風吹ジュン  眞島秀和  中村ゆりか  八嶋智人  円井わん  野間口徹  小手伸也  
(ネタバレあり)
 リクは小説家を夢見る大学生。ある日、大学内の無人のホールで一人歌うミナミと出会ったリクは、ミナミに恋をし、やがて二人は結婚する。歌手の夢を諦めたミナミに支えられ、リクはベストセラー作家となるが、リクが売れるにつれ、二人の間には溝が広がっていく。そんなある朝、目覚めたリクは、サイン会の会場に向かうが、自分がベストセラー作家ではなく、出版社の編集者であることに愕然とする。一方、ミナミは人気歌手となっており、リクとは出会いさえしていなかった。こちらの世界でリクの言うことを信じて元の世界に戻ることを手助けするのが、大学の先輩であり、同じ編集者となっていた梶原。彼の解説ではリクがパラレルワールドに落ち込んだのは、誰かが願ったからということを聞き、前夜ミナミとすれ違いがあったことから、ミナミとやり直せれば元の世界に戻れるのではと考え、どうにかミナミと会おうと奔走するが・・・。
 「ラブ・セカンド・サイト」というフランス映画の日本版リメイクです。私の好きなパラレルワールドものです。目が覚めたら違う世界にいたというのは、ありきたりのパターンですが、さて、主人公は元の世界にどうやって戻るのか、興味津々で観に行きました。場内にはリクを演じる中島健人さんのファンらしき女性たちと、ミナミを演じるmiletさんのファンの若い人たちで意外にもかなりの入りでした。
 風吹ジュンさん演じるミナミの祖母が時折話す言葉の端々に、彼女自身も別の世界から来たのではないかと思わせるところがあります。それゆえ、リクに理解があり、リクが元の世界に戻る鍵になるのではないかと思ったのですが、そこはちょっと私の考えすぎでしたね。ラストは、私が思うには、また別のパラレルワールドに行ってしまったのではないかと思うのですが。ここは、フランス版にラストとは異なるようですね。あちらの作品も観たいです。
 ミナミを演じるのはシンガーソングライターのmiletさん。初めての映画出演だそうですが、逆に一生懸命演技をしているという感じが素敵です。 
教皇選挙(2025.3.20) 
監督  エドワード・ベルガー 
出演  レイフ・ファインズ  スタンリー・トゥッチ  ジョン・リスゴー  イザベラ・ロッセリーニ  カルロス・ディエス  ルシアン・ムサマティ  ブライアン・F・オバーン  メラーブ・ニニッゼ  セルジオ・カステリット 
 ローマ教皇といえば、全世界14億人以上の信徒を誇るキリスト教カトリック教会の最高指導者であり、世界最小の国、バチカン市国の元首でもあります。物語はその教皇の死から始まります。
 カトリック教会の最高指導者であるローマ教皇が心臓発作で死去する。次の教皇を選ぶため、世界各地から枢機卿がバチカンに集まってくる。選挙(コンクラーベ)は108人の枢機卿による無記名投票で行われ、三分の二の72票を誰かが獲得するまで行われる。首席枢機卿のトマス・ローレンスはコンクラーベを滞りなく行う重要な責務を負っていた。有力候補はリベラル派でローレンスも推すアメリカ人のベリーニ、選出されれば初のアフリカ系教皇となるナイジェリア人のアデイエミ、強硬な伝統主義者であるイタリア人のテデスコ、穏健な保守派のカナダ人のトランブレの4人。
 宗教を描いた作品では、つい先日読んだ月村了衛さんの「虚の伽藍」でも仏教徒の権力欲が描かれましたが、キリスト教でもそれは同じ。教皇に次ぐ地位にある枢機卿でも権力欲はあるようです。聖職者といえど、やはり人間には変わりがないわけで、相手を蹴落とそうと汚い手を使ったりもするし、そもそも自分の地位を利用して私腹を肥やしたりするのですから、何をかいわんやです。そんな人たちが全世界14億人以上の信徒を持つカトリックの頂点に立つかもしれないのですからねえ。
 いったい、誰が教皇になるのかがミステリタッチで描かれていきます。ラスト、ローレンスが知ることになる驚愕な事実は、あまりにも”今”らしいですね。あの事実は、カトリック教という性格からして、決して明らかにはされないのでしょうね。
 ローレンスを演じたレイフ・ファインズ、ベリーニを演じたスタンリー・トゥッチ、トランブレを演じたジョン・リスゴーらの重厚な演技が光ります。そんな男たちの中で、男たちより一段低い立場にあるシスターでありながら毅然とした態度を貫いたシスター・アグネス役のイザベラ・ロッセリーニも素晴らしいです。イングリッド・バーグマンの娘さんですね。 
ミッキー17(2025.3.27) 
監督  ボン・ジュノ 
出演  ロバート・ディキンソン  ナオミ・アッキー  スティーブン・ユアン  アナマリア・バルトロメイ  トニー・コレット  マーク・ラファロ  バッティ・フェラン  キャメロン・ブリットン 
 「パラサイト 半地下の家族」で第92回アカデミー作品賞を受賞レたボン・ジュノ監督の新作です。今回は「スノーピアサー」のような未来を舞台にした作品です。 
 ミッキーは友人のティモとマカロンの店を開店したが、 うまくいかず、莫大な借金を抱えてしまう。借金取りから逃れようと惑星への移住を目指す宇宙船に乗るため、契約書をよく読まずにエクスペンダブル(使い捨て労働者)の契約にサインしてしまう。その内容は、治験や宇宙船外での活動等危険な任務に就き、死んだらフルスキャンしたバイオデータに基づき人体プリンタでオリジナルの人間と同じ肉体を再現し、前もって保存していた意識データを組み込んで彼のコビーが生産され、生き返ってまた任務に就くというもの。既に16回死んで17回目に再生したミッキーだったが、あるとき手違いから死んだと思われ、18番目のミッキーが再生されてしまう・・・。
 前半は、ひたすら危険な任務、死を前提の任務を行い、何度も生まれ変わる様子、後半はミッキーが二人になることにより、それまでの使い捨ての運命が変わっていく様子が描かれます。
 ラストは先住生物・クリーパーを絶滅しようとする惑星移住計画の指導者・ケネス・マーシャルに対し、自分を助けたクリーパーを助けようとするミッキー17とミッキー18がどう対峙していくかがメインです。
 ミッキーを演じたのは「テネット」「ザ・バットマン」のロバート・パティンソン。いつもは冷静な二枚目を演じるパティンソンですが、今回は情けないダメ男と傲岸不遜な嫌な男の二役を演じます。これまでとイメージがだいぶ異なります。
 先住生物のクリーパーはこれはもう「風の谷のナウシカ」のオームそのものですね。
 要領のいいティモを演じたのが、「ミナリ」でアカデミー主演男優賞にノミネートされたスティーブン・ユアン。借金取りが送り込んだ殺し屋に躊躇なく友人だったはずのミッキーを差し出したり、要領のいい強烈な印象を残します。この人、ドラマの「ウォーキングデッド」にも出ていましたね。 
おいしくて泣くとき(2025.4.4) 
監督  横尾初喜 
出演  長尾謙杜  當真あみ  ディーン・フジオカ  安田顕  尾野真千子  美村里江  篠原ゆき子  安藤玉恵  水沢林太郎  芋生悠  池田良  田村健太郎 
 森沢明夫さん原作の同名小説の映画化です(原作は未読です。)。
 部活をしていないという理由から学級新聞の作成委員に指名された風間心也と新井夕花。新聞を作成する中で二人だけの「ひま部」を結成し、やがてお互いに惹かれあっていく。幼い頃母を亡くした心也は食堂をしている父・耕平との二人暮らし。耕平は食堂をする傍ら貧しい家庭の子どもたちに無料で食事を提供していたが、心也は耕平が子ども食堂を行うことで、学校で不良たちから偽善者の息子といじめを受けていた。また、夕花は働かずにギャンブルと酒に明け暮れる義父から暴力を受けており、家には居場所がなくなっていた。ある日、夕花が義父から暴力を受けている場面に遭遇した心也は同級生・蓮二の力を借りて夕花を助け出し、どこか遠くに行きたいと言う夕花の希望で幼い頃家族で行った海に連れていく。翌朝、警察に自ら連絡して保護された夕花は、義父の元を離れ、一人働きながら暮らしていたが、心也への手紙を出しに行く途中、義父に見つかってしまい、以後連絡がなくなる。30年が過ぎ、父に代わって同じ場所で子ども食堂を営んでいる心也だったが、暴走した車が店に突っ込んで休業を余儀なくされる。事故のニュースを見てやってきた工務店の高梨はある条件と引き換えに無償で修繕をすると申し出る・・・。
 レビューの評価が4以上と他の作品に比べると非常に高いです。確かに泣かせる映画ではあるのですが、ちょっとご都合主義が目につきますし、こんな状況は起こりうるはずはないと思ってしまうのは私だけでしょうか。夕花の行方が分からなくなる状況は、いくら30年前とはいえ、警察が調べれば簡単にわかるはずだと思うのですが。その前提があったので、どうしても物語の中に没入することができませんでした。これだけ評価が高いのは、主人公の心也を演じた「なにわ男子」の長尾謙杜さんのファンの方の後押しもあるのでしよう。
 夕花の行方が分からなくなってから30年が過ぎ、心也も結婚して妻がいるのですが、いまだに夕花のことを気にかけています。それを許す篠原ゆき子さん演じる心也の妻があまりにも理解ある良い人なんでしょうね。普通、30年も前に恋していた人のことを結婚してまでも思い続けるのは妻としたら嫌でしょうに。
 心也の父・耕平を演じた安田顕さんがいい味出していましたねえ。
 ラスト、思わぬ女優さんが登場し、泣き所を見事に演じます。
 主題歌のURUさんの「フィラメント」が、ストーリーにあっていて素敵です。 
片思い世界(2025.4.8) 
監督  土井裕泰 
出演  広瀬すず  杉咲花  清原果那  横浜流星  小野花梨  伊島空  田口トモロヲ  西田尚美  松田龍平  尾上寛之  赤堀雅秋  河井青葉  味方良介  土井志央里 
 相良美咲、片石優花、阿澄さくらの3人は、古い一軒家で一緒に暮らし、それぞれ毎日、会社でパソコンの入力をしたり、大学で素粒子を勉強したり、水族館のアルバイトをしたりしている。美咲は毎朝バスの中で出会う青年が気になり、それを知った優花とさくらは告白するよう美咲をけしかけるが・・・。
 主演がNHK朝ドラで主役を務めた広瀬すずさん、杉咲花さん、清原果那さんという豪華な出演陣。題名から三人の恋模様を描く作品かなと何の知識も持たずに観に行ったら、これはもうびっくりです。まったく想像とは違った作品でした。冒頭、清原果那さん演じる阿澄さくらが、ぬいぐるみが落ちているのに気づいていながら無視して歩いていくシーンに、「この子、性格良くないなあ」と思ったり、朝のバスに彼女たちが乗り遅れ、ドアが閉められたのに他の人が来たら開けられるシーンに「この運転手、この子たちに何か思うところあるの?」と思ったり、何か違和感を持ったのですが、まさか、そういう設定だったとは。この設定はラストに「実は・・・」ではなく、始まってからしばらくして明らかにされます。私は、ピアノ演奏会のシーンまで違和感の正体はわかりませんでした。
 この違和感を生じさせた原因が、冒頭、合唱コンクールの練習をしている子どもたちのシーンに繋がっていくんですね。
 哀しい作品ではありますが、二人がにこやかに雑踏の中を歩いていくラストシーンにホッとします。
 杉咲花さんの演技は相変わらず素晴らしいですね。ネタバレになるので詳細は語れませんが、西田尚美さん演じる母親への思いを演じる杉咲さんの演技には泣かせられます。広瀬すずさんは本当に奇麗になられましたねえ。清原果那さんはおとなしい役よりもこの作品のような元気な役がお似合いです。
 3人は今の生活を変えようとあることを試みますが、彼女たちにそう決心させたのが、彼女たちが聞くラジオのパーソナリテイ。この声だけの出演は松田龍平さんでした。エンドロールに名前があつたのに、どこに出演していたのかなと思ったら声だけの出演だったのですね。それ以外にも、「え?どこに出ていたの」という出演者がいました。味方良介さんと土居志央里さん。この二人、幼子を連れた夫婦役だったんですね。気づかなかったなあ。
 この作品、途中で監督が自動車事故で長期入院となったので、監督が戻ってくるまで撮影に数か月の間が開いてしまったようです。役者さんにしても役柄の雰囲気を保つのは難しかったでしょうね。
 パンフレットが豪華です。 
アマチュア(2025.4.13) 
監督  ジェームズ・ホーズ 
出演  ラミ・マレック  ローレンス・フィッシュバーン  レイチェル・ブロズナハン  カトリーナ・バルフ  ジョン・バーンサル  マイケル・スタールバーグ  ホルト・マッキャラニー  ジュリアンヌ・ニコルソン  エイドリアン・マルティネス  ダニー・サバーニ 
 チャーリー・ヘラーはCIAで情報解析を担当する捜査官として働いていた。ある日、ロンドンに出かけた妻がテロリストにより殺害されてしまう。チャーリーは、上司に逃走したテロリストの逮捕を求めるが、上司がテロリストと関係があることを知り、自身での復讐を誓い、上司を脅して特殊任務の訓練を受けるが、教官のヘンダーソンからは「お前には人は殺せない」と落第の烙印を押されてしまう。上司が自分を殺そうとすることに、いち早く気づいたチャーリーは、訓練基地を逃げ出し、妻の殺害に関与した4人のテロリストヘの復讐のためにヨーロッパに向かう。
 題名の「アマチュア」というのは、IQ170の頭脳を持ち、暗号分析官としては優秀だが、武器の取扱いや格闘技などの戦闘能力はアマチュア並みのチャーリーを例えているものです。ところが、唯一あるものの取扱いだけが優秀で、これが後々彼の命を救うことになります。
 ヘンダーソンを演じたのは、ローレンス・フィッシュバーン。上司の命令でチャーリーを殺害しに行ったと思ったのですが、守る側に回ったのでしょうか。それと、“ザ・ベア"ですが、彼の役回りはいったい何だったのかがわかりません。冒頭とラストに登場してきますが、てっきリチャーリーを殺害しに来たと思ったのですが・・・。
 分からない点を確認しようとパンフレットを買おうと思ったら、発売していませんでした。映画を観た後、パンフレットを買って帰るのが楽しみなのに。残念。 
異端者の家(2025.4.26) 
監督  スコット・ベック 
出演  ヒュー・グラント  ソフィー・サッチャー  クロエ・イースト 
 末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)の若いシスター、パクストンとバーンズは布教のため、森の中の一軒家を訪れる。出てきた男、リードは、雨に濡れる二人を家の中に招き入れようとするが、男性だけの家には入れないと二人は断る。リードは妻はパイを焼いている最中だと話したことから二人は安心して家の中に入る。布教をしようとする二人に、リードは読み込まれたモルモン教の聖典を出し、持論を展開する。不穏な空気を察した二人は、リードが席を外した隙に帰ろうとするが、玄関のドアは施錠されており、携帯の電波も入らない。戻ってきたリードに教会から呼び戻されたので帰ると告げるが、リードは玄関のドアはタイマー式で明朝にならないと開かない、家の奥にある二つのドアのどちらから出るしかないと言うが・・・。
 モルモン教の布教といえば、二人連れの若い男性が自転車に乗ってという印象しかないのですが、若い女性のシスターもいるのですね。モルモン教ということをはっきり謳っており、批判的なことも言っているのにモルモン教から抗議がこなかったのでしょうかねえ。この映画の見どころといえば、「フォー・ウェディング」、「ノッティングヒルの恋人」、「アバウト・ア・ボーイ」などラブコメの帝王といえばこの人と頭に思い浮かぶヒュー・グラントが、今作では不気味なサイコ野郎を演じていること。ただ、シスターたちを招き入れる際の笑顔は往年のラブコメの帝王らしさを出していましたねえ。
 「ミッドサマー」や「関心領域」等々このところ勢力を伸ばしている製作会社「A24」らしい映画でした。 
#真相をお話しします(2025.4.27) 
監督  豊島圭介 
出演  大森元貴  菊池風磨  桜井ユキ  綱啓永  秋元才加  山中崇  伊藤英明  福本莉子  田中美久  原嘉孝  伊藤健太郎  栁俊太郎  齊藤京子  中条あやみ  岡山天音  大水洋介 
 警備員の桐山は警備室の中で、友人の鈴木とともにネットの生配信の視聴者参加型暴露チャンネル“#真相をお話しします”が始まるのを待っていた。そこでは、様々な事件の世間に明らかになっていない真相を話すことにより、視聴者の興味を引けば、話し手は視聴者からの投げ銭を獲得できることになっており、借金の返済を迫られている桐山は、話し手となるスピーカーに指名されて、自分が持っているネタで投げ銭を獲得し、借金を返済することを切望していた。チャンネルの配信者の砂鉄は本日の視聴者が150万人を超えれば、かつて砂鉄が関わっていた伝説の人気チャンネル「ふるはうす☆デイズが突然中止になった理由を語るという・・・。
 結城真一郎さん原作の同名小説の映画化です。とはいえ、原作は短編集でそれぞれの話に繋がりはありませんが、映画は原作の最終話の「#拡散希望」を、この映画全体のストーリーに関わる話とし、原作の中から3つの話(「惨者面談」「ヤリモク」「三角奸計」)を取り上げ、それをネットの生配信の暴露チャンネル“#真相をお話しします”の中で語られる話にするという入れ子構造の形を取っています。そのためか、この映画がミステリの謎解きというより、ネットで匿名で無責任に発言するネット民たちへの批判という点が前面に出てしまっている感があります。
 ラストは椅子に縛り付けられているある人物を殺すか助けるかをネットの視聴者たちに投票させますが、縛ってあるロープは簡単に外せそうですよ。
 「ヤリモク」の伊藤英明さんがいつものヒーローのカッコいい役ではない役を熱演していて、強烈な印象を残します。個人的には原作の中で伊藤さんが登場する「ヤリモク」という話が一番面白かったのですが、映画では伊藤さん演じるケントは逮捕され、この話を語っているのは別のある人物というもうひとひねりの構成となっています。でも、やはり、原作のようにケントがあることを気づくところで終わるというのが、ミステリの面白さだと思います。印象的という点では「惨者面談」の桜井ゆきさんもいつもの役柄の雰囲気とは異なる怪演でしたね。
 謎の男、鈴木を演じるのは”Mrs.GREEN APPLE”のボーカルである大森元貴さん。歌手ですから人前で演技するのも慣れているようで、初演技とは思えないなかなか堂々としていましたね。 
新幹線大爆破(2025.4.29) ※Netflix 
監督  樋口真嗣 
出演  草彅剛  細田佳央太  のん  要潤  尾野真千子  斎藤工  ピエール瀧  六平直政  田中要次  豊嶋花  松尾諭  大後寿々花  大原優乃  森達也  今野浩喜  黒田大輔  大場泰正  岩谷健司  田村健太郎  前田愛  屋敷紘子  尾上松也 
(ちょっとネタバレ)
 1975年に高倉健さん主演で公開された「新幹線大爆破」のリブート作品です。この作品の中では1975年の映画で描かれた新幹線爆破事件がかつてあったこととして描かれます。
 「シン・ゴジラ」の樋口真嗣さんが監督を務めますが、企画を映画会社に持って行ってもOKするところがなく、Netflixでの公開となったようです。前作では当時の国鉄の協力が得られませんでしたが、今回はJR東日本が全面協力をしているそうです。
 「青森から東京に向かう新幹線「はやぶさ60号」に爆弾を仕掛けた、時速100キロ以内になると爆発する、起爆装置の解除には日本国民に1000億円を要求する」という電話がJRにかかってくる。JR側は新感線総合指令所の笠置指令長を中心に事件の解決を図るが・・・。
 今回の犯人はまさかという意外な人物の設定でしたが(まあ、最初からどこか不審ではありましたが)、その人物が、あるいは共犯者が時速が落ちた時に爆発する爆弾を新幹線車両の何か所にも、いつどうやって仕掛けたのかの説明が最後までありません。だいたい、ただ車両内に置くだけでは速度が落ちたことがわからないでしょうから、何らかわかるように仕掛けたのでしょうけど、そんなに簡単に新幹線を止めておく場所に侵入して車両に工作ができますかねえ。動機にしてもある人物を殺したいと思う犯人の気持ちはまだ理解できるにしても、それがどうして新幹線爆破に繋がっていくのでしょう。犯人の意外性を強調し過ぎて、現実的ではありません。犯人の父親はどう考えても70歳すぎでしょうから、父親というよりおじいさんという設定でなければ年齢的におかしいですね。別のある人物の息子であるピエール瀧さんが演じる人物は50歳過ぎですよ。
 あまりに犯人の動機を複雑に設定しすぎです。単純にピエール瀧さんが父親の復讐のためにという動機の方が素直です。
 運転士が女性の“のん”さんが演じているのは今どきでしたが、運転手という役柄故か途中登場しなかったのは残念。彼女に犯人と対峙させてみたかったですね。