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今年読んだ本は113冊。昨年と比べて20冊増えて例年どおりとなりました。
今年の第1位は森絵都さんの「デモクラシーのいろは」(KADOKAWA)です。600ページを超える大部でしたが、読んでいて飽きません。戦後、なかなか民主主義が浸透せず焦りを覚えたGHQによる民主主義教育の実験の被験者となる4人の女性(その後交代した女性を含めて5人の女性)とGHQを手玉に取るしたたかな男爵夫人、そして、通訳であり彼女らの教師を務める日系米兵の〇など登場人物それぞれのキャラが鮮やかに描かれ、ストーリーもミステリ的な要素もあり大いに楽しむことができました。
第2位は逢坂冬馬さんの「ブレイクショットの軌跡」(早川書房)です。第173回直木賞ノミネート作品です。ブレイクショットという1台の車を介してそれに関わる様々な人物たちの運命が描かれていきます。車のひとつの小さなネジから始まるストーリー展開が見事です。
第3位は奥田英朗さんの「普天を我が手に」3部作です。たった7日しかなかった昭和元年に生まれた4人の男女とその親の激動の時代を生きる姿が描かれていきます。歴史に翻弄されながらも力強く生きていく様子が読み応え十分です。現時点では最後の第3部を読んでいませんが、第2部までで十分面白い作品です。
第4位は朝井リョウさんの「イン・ザ・メガチャーチ」(日本経済新聞出版)です。これは現在社会を見事に描いている作品です。最近増えたオーディション番組(特にグループのメンバーを選ぶもの)に携わる者たちの戦略といわゆるオタクや陰謀論に乗っかる者たちを描いていきます。ラスト、娘の姿を知った父はどうするのでしょうか、気になります。
第5位は今年の第71回江戸川乱歩賞受賞作品である野宮有さんの「殺し屋の営業術」(講談社)です。凄腕営業マンが殺し屋に殺害されるところを営業マンらしい営業トークで殺害を免れ、殺し屋の営業マンとなって殺しの契約を取ることに奔走します。ライバルとの戦いの結末に驚きです。続編を期待したい1作です。
第6位は伊坂幸太郎さんの「さよならジャバウォック」(双葉社)です。やはり伊坂ファンとしては伊坂作品を外すわけにはいきません。相変わらず、読みやすくあっという間に物語の中に引き込まれます。これはミステリにありがちなあのトリックだろうと思ったら、結局、伊坂さんにうまく騙されました。
第7位は今村翔吾さんの「イクサガミ 神」(講談社文庫)です。シリーズ三部作の完結編です。京都の天龍寺で始まった蠱毒もいよいよ舞台を東京に移して最後の戦いとなります。
第8位は青柳碧人さんの「乱歩と千畝」(新潮社)です。江戸川乱歩と日本のシンドラーと言われた杉原千畝が実は知人だったという前提で激動の昭和初期を描いていく作品です。
第9位は伊吹亜門さんの「路地裏の二・二六」(PSP研究所)です。昭和11年2月26日に起こった二・二六事件に向かう時代を背景に、皇道派と統制派との対立の中、その裏で起こっていた軍部の暴走を止めようとする者の戦いを描いていきます。
第10位は塩田武士さんの「踊りつかれて」(文芸春秋)です。これも直木賞にノミネートされた作品であり、「イン・ザ・メガチャーチ」同様、あまりに現代的な作品です。SNSでいわれもなく他人を誹謗中傷し、その者を追い込んでいった者たちが今度は逆にネットにさらされるというストーリーです。
番外は町田そのこさんの「蛍たちの祈り」(東京創元社)です。町田作品は昨年末に刊行された「ドヴォルザークに染まるころ」(光文社)や町田さん初めてのミステリである「月とアマリリス」(小学館)、そしてホラーである「彼女たちは楽園で遊ぶ」と、様々なジャンルの作品を著わしましたが、個人的にはどの作品も好きです。その中でこの作品を選びました。連作短編集という形を取りながら、親のいない中、懸命に生きていく者たちを描きます。
今年は「デモクラシーのいろは」「普天を我が手に」「乱歩と千畝」「路地裏の二・二六」といった大正から昭和の時代を舞台にした作品と、「イン・ザ・メガチャーチ」や「踊りつかれて」のような今の日本を描く作品に素敵な作品が多かった気がします。
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