今年読んだ本は合計93冊。昨年(114冊)と比べて21冊減です。今年は母親の介護に時間を取られたからなあ。
今年の第1位は、京極夏彦さんの「了巻説百物語」(KADOKAWA)です。1999年の第1作から25年に亘って書かれたシリーズ第7弾にして最終作となります。これまでのシリーズの登場人物たちが総登場で又市たちと水野忠邦とその裏にいる人物との最後の戦いが描かれます。最終作では命を落とす仲間もあって感涙ものです。京極堂シリーズの中禅寺秋彦の曽祖父である州齋も登場します。
第2位は金子玲介さんの「死んだ山田と教電」(東京創元社)です。今年のエンタメ作品には金子さんの作品は話題に出さないわけにはいかないでしょう。今年、いっきに3作品を刊行した金子玲介さんですが、その中でもデビュー作の「死んだ山田と教室」は、交通事故で死んだ高校生の山田の意識が教室のスピーカーに乗り移ってしまうという奇想天外なストーリー。最初は彼との会話を楽しんでいたクラスメートだったが、彼らが高校を卒業していく中で、皆は彼のことを忘れていくという、これは悲しかったですねえ。
第3位は永嶋恵美さんの「檜垣澤家の炎上」(新潮文庫)です。「このミス」で第3位を獲得しているのを見てこの年末に読みました。800ページ近い大部でしたが、主人公。かな子の生きざまに惹かれてページを繰る手が止まりませんでした。大河小説でもあリミステリ要素もある面白さです。続編に期待です。
第4位は青崎有吾さんの「地雷グリコ」(KADOKAWA)です。直木賞はノミネートに留まりましたが、山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞を受賞しています。刊行は昨年ですが時期の関係で「このミス」も「本格ミステリベスト10」も今年の対象作となり、圧倒的な票を集めての第1位でした。いろいろなゲームに新たな条件を加えて高校生が対戦をしますが、よくもまあ青崎さん、こんなゲームを思いついたものです。青春小説としても読ませます。これまた続編に期待です。
第5位は池井戸潤さんの「俺たちの箱根駅伝」(文藝春秋)です。正月恒例の箱根駅伝を舞台に箱根駅伝に出場する関東学生連合チームに選ばれた学生たちの闘いを描きます。参考記録しか残らないチームが、どうやってモチベーションを保ってレースに臨むのか。やはり池井戸さんのリーダヴィリティは凄い。正月の箱根駅伝が一層楽しみになりました。
第6位は宮島未奈さんの「成瀬は信じた道をいく」(新潮社)です。昨年評判を呼んだ「成瀬は天下を取りに行く」の続編です。私自身は今年になって第1作の「成瀬は天下を取りに行く」を読んだのですが、とにかく成瀬のキャラが素敵です。
第7位は今村翔吾さんの「イクサガミ 人」(講談社文庫)です。シリーズ第3弾で今回は島田宿から横浜までの攻防が描かれます。ここまで生き残ってきた者それぞれの蠱毒への参加の背景が描かれ、個性豊かな彼らの戦いにページを繰る手が止まりません。
第8位は森見登美彦さんの「シャーロック・ホームズの凱旋」(中央公論新社)です。森見版シヤーロック・ホームズです。シャーロック・ホームズがヴィクトリア朝京都に住むという異世界の設定の物語です。宿敵のモリアーティ教授とホームズがお互いのスランプの傷をなめ合うというのも笑えますが、ホームズとワトソンが京都の街を闊歩するのが愉快。
第9位は呉勝浩さんの「法廷占拠 爆弾2」(講談社)です。2023年版の「このミス」で第1位となった「爆弾」の続編です。前作で逮捕された爆弾魔・スズキタゴサクの裁判が行われる法廷が占拠され、犯人は爆弾を起動させたくなければ確定死刑囚の死刑を執行しろと要求する。「あれっ?スズキタゴサクの釈放を要求するのではないのか?」という疑間を抱きながら物語は進みます。
第10位は東野圭吾さんの「架空犯」(幻冬舎)です。「白鳥とコウモリ」に登場する警視庁捜査1課の五代を再び主人公にした作品です。都議とその妻との殺害事件が被害者と彼らに関わる人々の隠しておきたかった過去を浮かび上がらせます。やっぱり、一番悪いのはあの人物ですね。
番外として3冊。まずは京極夏彦さんの「狐花 葉不見冥府路行」(KADOKAWA)です。「了巷説百物語」に登場した中禅寺秋彦の曽祖父・洲齋を主人公にした作品です。歌舞伎の原作として書かれたものだそうですが、洲齋の出自が明らかになるなど興味深い作品です。
次に久しぶりに読んだ荻原浩さんの作品から、「笑う森」(新潮社)です。森の中で行方不明になった発達障害の子どもがどうやって1週間を過ごしていたのかが描かれますが、最後がびっくりです。
最後に阿津川辰海さんの「バーニングダンサー」(KADOKAWA)です。阿津川辰海さんの作品からはシリーズ第3弾の「黄土館の殺人」か「バーニングダンサー」か悩みましたが今回は本格ミステリではない「バーニングダンサー」を選択。謎の隕石により100人の人間が超能力を持ってしまうという突拍子もない設定ですが、読ませます。続編がありそうで期待したいです。
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