▲2020映画鑑賞の部屋

パラサイト(2020.1.10) 
監督  ポン・ジュノ 
出演  ソン・ガンホ  チャン・ヘジン  チェ・ウシク  パク・ソダム  イ・ソンギュン  チョ・ヨジョン  パク・ソジュン  チョン・ジソ  チョン・ヒョンジュン  イ・ジョンウン 
 キム一家は半地下の家で暮らす貧しい家族。父親のギテクは失業中、元ハンマー投げ選手のチュンスクは専業主婦、長男のギウは大学入試に落ち続けるフリーター、長女のギジョンは美術大学の入試に落ち浪人中という4人家族。ある日、ギウの高校時代の友人が、留学する間、自分の代わりに女子高校生の家庭教師をやらないかと持ち掛けてくる。女子高校生ダヘはIT企業の社長パク・ドンイクの娘で、母のヨンギョ、弟のダソンの4人で高台の大豪邸の家に住んでいた。ギウはさっそく、大学生のふりをして家庭教師に潜り込む。やがて、息子の絵の家庭教師にギジョンを言葉巧みに採用させ、更には権謀術数を駆使して、今いる運転手と家政婦を首にさせ、運転手に父親を、家政婦に母親を雇わせることに成功する・・・。
 まさしく、題名どおりにキム一家は金持ちのパク一家にパラサイト(寄生)していくこととなります。ここまでだったら、貧しさの中で逞しく生きて、這い上がってくるキム一家の勝利の物語が面白くおかしく描かれて終わるところですが、監督はそんな安易なストーリーで終わらせません。ネタバレになるので、詳細は述べられませんが、キム一家には恐ろしい運命が待ち受けていました。
 カンヌ映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞し、先頃のアカデミー賞でもアジア作品初の作品賞を受賞したばかりか、監督賞、脚本賞、国際映画賞の4部門を受賞しました。単に韓国社会の貧富の差を描くだけだと思っていると、思わぬ衝撃を受けることとなります。ポン・ジュノ監督らしい目をそむけたくなる暴力的シーンもあります。更にはラストの衝撃にはものの見事にやられました。
 ストーリー以前に強い印象を受けたのは、ギジョンとヨンギョの違いです。韓国では瞼を二重にする美容整形は当たり前だと聞いていますが、綺麗な二重のヨンギョと一重のギジョンというところにも、貧富の差が現れています。 
ジョジョ・ラビット(2020.1.17) 
監督  タイカ・ワイティティ 
出演  ローマン・グリフィン・デイビス  スカーレット・ヨハンソン  サム・ロックウェル  トーマシン・マッケンジー  レベル・ウィルソン  スティーブン・マーチャント  アルフィー・アレン     
 トロント映画祭で観客賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネートされた作品です。
 舞台は第二次世界大戦中のドイツ。父親は出征し、母のロージーと暮らしているジョジョは自室の壁にヒトラーのポスターを飾るほど、ヒトラーを崇敬していた。ある日、ジョジョはヒトラー・ユーゲントのキャンプに参加したが、ウサギを殺せという命令を実行することができず、仲間から臆病者と罵られ、ジョジョ“ラビット”と呼ばれて嘲られる。そんなジョジョの話し相手は、ジョジョにしか見えない空想上の友達のアドルフ。ヒトラーに鼓舞されたジョジョは手榴弾を投げるのに失敗して、ケガを負い、事務作業へと追いやられる。そんなある日、階上からの物音に気が付いたジョジョは、隠し扉の中にユダヤ人の女の子エルサが隠れていたことを知る。エルサはジョジョの母によって匿われたと言い、密告するならそのことを当局に言うとジョジョを脅す。その日から、二人の奇妙な同居生活が始まる。
 隠し部屋の少女といえば、「アリスの日記」のアリスを思い起こさせます。先日のアカデミー賞では個人的にイチオシだったのですが、残念ながら作品賞の受賞は逃し、脚色賞の受賞にとどまりました。
 ジョジョを演じた子役のローマン・グリフィン・デイビスの演技が素晴らしいです。個人的には彼に主演男優賞を上げたいくらいです。また、ジョジョを優しく見守りながら、ドイツのユダヤ人迫害を批判するスカーレット・ヨハンソンが演じたジョジョの母親ロージーがカッコイイです。戦時下にもかかわらずおしゃれをして、ジョジョに多くのことを教えます。彼女のしゃれた靴を見上げるジョジョの姿があまりに哀しい。
 空想上の友達アドルフを演じたのは、タイカ・ワイティティ監督自身です。 
記憶屋(2020.1.17) 
監督  平川雄一朗 
出演  山田涼介  芳根京子  蓮佛美沙子  佐々木蔵之介  杉本哲太  櫻井淳子  戸田菜穂  田中泯  佐々木すみ江  佐生雪  ブラザートム  泉里香  濱田龍臣  須藤理彩 
 織守きょうやさん原作の同名小説の映画化です。
 大学生の吉森遼一は、連絡の取れなくなっていた恋人の杏子を駅で見かけ、声をかけたが、彼女はなぜか遼一のことを知らず、遼一はストーカーと間違われてしまう。その後、彼女のアルバイト先に会いに行ったが、やはり遼一のことは知らないと言われてしまう。遼一は、これはネットで話題になっている人の記憶を消す“記憶屋”のせいではないかと考え、“記憶屋”を探そうとする・・・。
 主役の遼一を演じたのがジャニーズの山田涼介くんだったせいか、劇場内は若い女性がいっぱい。おじさん一人ではちょっと居場所がない感じでした。でも、彼のファンには悪いけど、演技がオーバー過ぎるように個人的には感じました。演出のせいかもしれませんが、普通そんなに感情を露にしないだろうと思うシーンもいくつかありました。でも、ファンの皆さんにとってみれば、その熱演がいいのでしょうね。山田ファンにはどうぞという映画でした。 
ナイブズアウト(2020.1.31) 
監督  ライアン・ジョンソン   
出演  ダニエル・クレイグ  クリス・エヴァンス  アナ・デ・アルマス  ジェイミー・リー・カーティス  マイケル・シャノン  ドン・ジョンソン  トニ・コレット  キース・スタンフィールド  キャサリン・ラングフォード  ジェイデン・マーテル  クリストファー・プラマー 
 世界的に有名なミステリー作家ハーラン・スロンビーが家族が集まって祝った85歳の誕生日の翌朝に自室で死体となって発見される。自殺かと思われたが、殺人を疑う警察と何者かから事件の捜査を依頼された著名な探偵のブノワ・ブランが捜査に乗り出す。そんな中、残された遺書の内容が発表されると、一家は大騒ぎとなる。遺産は家族ではなく、ハーランの世話をしていた看護師のマルタに残されたことが明らかとなったのだ。やがて期待を裏切られた家族たちの本性が次第に明かされていく。果たして犯人は誰なのか・・・。
 名探偵ブノワ・ブランを演じたのは、007のダニエル・クレイグ。殺害されたミステリー作家ハーラン・スロンビーを演じたのはクリストファー・プラマー。そのほか、キャプテン・アメリカのクリス・エヴァンスや若き頃絶叫女優と言われたジェイミー・リー・カーチスなど豪華出演陣です。
 名探偵が登場し、皆を集めて犯人を指摘するという正統派の本格ミステリー映画です。遺産がすべて移民の看護師に渡され、彼女は大金持ちになり、反対にそれまで贅沢な暮らしをしていた家族たちには無一文となるという蓋を開けたらびっくりの展開は痛快ですが、そんな展開を想像していなかった犯人は誰なのか。意外に世間では評判が良かったようですが、ここは割と想像がついてしまったのですけどね。 
AI崩壊(2020.2.7) 
監督  入江悠 
出演  大沢たかお  松嶋菜々子  賀来賢人  広瀬アリス  三浦友和  岩田剛典  高嶋政宏  芦名星  玉城ティナ  余貴美子 
 舞台は現在から10年後の2030年。国民は人工知能のぞみによって、健康状態ばかりか個人情報まで管理されていた。のぞみの開発者の桐生浩介が表彰を受けるため日本に戻ってきたその日に、突然のぞみは暴走しはじめ、サーバー室を閉鎖し、桐生の娘が閉じ込められてしまう。桐生は娘を助けようとするが、のぞみへの侵入が桐生が乗っていた車の中にあったパソコンからだったことから、桐生は事件の犯人として警察に追われることとなる。一方、のぞみは自分で学習を始め、生きる価値のある人間とそうではない人間を選別し始める・・・。
 人工知能が人間を凌駕することは、現在でもチェスや囲碁などではすでに人間を負かすソフトができていることを見れば、当然あることです。その人工知能が自分で考え、自分で学び始めたら、それを人間は制御することができるのでしょうか。今回は人工知能の暴走に人間の手が加えられていたわけですが、人工知能自身が映画のようなことを行うことも絵空事とは思えません。
 また、ネットに繋がっている監視カメラをハッキングした画像がYoutubeに流されているということが現実にありましたが、この映画でも桐生の行方を追うために日本全国の監視カメラをハッキングしているシーンが出てきます。個人情報の保護、プライバシーの保護なんてどこに行ってしまったのかという感じです。いや、恐ろしい。 
キャッツ(2020.2.8) 
監督  トム・フーパー 
出演  ジェームズ・コーデン  ジュディ・デンチ  ジェイソン・デルーロ  イドリス・エルバ  ジェニファー・ハドソン  イアン・マッケラン  テイラースウィフト  レベル・ウィルソン  フランチェスカ・ヘイワード 
 「キャッツ」といえば、アンドリュー・ロイド=ウェーバーの作曲によるブロードウェーの舞台が有名ですが、日本人としては最初に頭に思い浮かぶのは劇団四季の「キャッツ」。今作は、舞台「キャッツ」の映画化です。劇団四季の「キャッツ」でさえ観たことのない僕にとっては、初「キャッツ」だったわけですが、十分堪能しました。
 ロンドンの片隅のゴミ捨て場に一匹の白猫が捨てられる。白猫が迷い込んだそこには“ジュリクルキャッツ”と呼ばれる人間に飼い慣らされることを拒み、したたかに生きる個性豊かな猫たちが住んでいた。満月が輝く夜、その日は、年に一回、新しい人生を生きることを許される猫が選ばれる舞踏会が開かれる・・・。
 主人公である白猫のヴィクトリアを演じたフランチェスカ・ヘイワードが元々エイコクロイヤル・バレエ団のプリンシパル・ダンサーだけあって踊りが素晴らしい。歌はちょっと線が細くて決して上手とは言えませんが。有名歌手のテイラー・スイフトがボンバルリーナという妖艶な雌猫を演じていますが、こちらはもちろん歌は文句ありません。
 圧巻なのはやはり「キャッツ」の曲の中でも一番有名なグリザベラが歌う「メモリー」。この作品でこの曲を歌うのは「ドリームガール」のジェニファー・ハドソンだけあって、圧倒的な歌唱力で「メモリー」を歌いきります。ただ、非常にどすが効いたという感じなので、僕自身としては何といってもバーブラ・ストライサンドの歌う透明感のある歌声の方が好きなのですけどね。
 そのほか、ジュディ・ディンチ、イアン・マッケランという大御所も出演しています。
 とにかく、歌とダンスとその映像美に楽しむことができる一作です。 
9人の翻訳家(2020.2.11) 
監督  レジス・ロワンサル 
出演  ランベール・ウィルソン  オルガ・キュリレンコ  リッカルド・スカマルチョ  シセ・バベット・クスッセン  エドゥアルド・ノリエガ  アンナ・マリア・シュトルム  フレデリック・チョー  マリア・レイテ  マノリス・マヴロマタキス  サラ・ジロドー 
 世界的ベストセラーである「デダリュス」の第3巻「死にたくなかった男」の出版権を獲得した出版社の社長、エリック・アングストロームは、内容の流出を防ぐため、9カ国から集めた翻訳者をフランスのとある豪邸の地下室に集め、外部との連絡手段を一切絶ち実質的な監禁下で翻訳作業を行わせる。しかし、それにも関わらず、ネットに冒頭の10ページが流出し、犯人からアングストロームに対し、24時間以内に500万ユーロを支払わないと次の100ページを流出させるという要求が出される。原稿を目にしたのはアングストローム自身と9人の翻訳者だけ。アングストロームは9人の中に犯人がいると確信するが・・・。
 冒頭の刑務所でのある人物と犯人らしき人物との面会のシーンが、のちのち思わぬ展開を見せるのですが、ここにはミステリーらしいどんでん返しのエッセンスが入っており、えっ?とびっくりさせられます。ミステリなのであまり詳細にここで書けないのですが、地下鉄車内でのこともものの見事に観客を欺しましたね。
 この作品で描かれる、国際的にベストセラーとなった本の続編を刊行するに当たって、情報漏洩を防ぐため、翻訳者を一か所に缶詰めにして翻訳作業をさせることは、ダン・ブラウンの「インフェルノ」の刊行の際に実際に行われたことだそうです。今のネット社会の中では、どんな情報もあっという間に全世界に拡散されますから、情報漏洩には気を遣うのでしょうね。
 集められた翻訳者は9人。残念ながら日本語の翻訳者は含まれていません。日本より人口の少ないイタリア語やギリシャ語の翻訳者はいるのに。日本も外国文学にとっては大きな市場だと思うのですが・・・。 
1917(2020.2.14) 
監督  サム・メンデス 
出演  ジョージ・マッケイ  ディーン=チャールズ・チャップマン  マーク・ストロング  アンドリュー・スコット  リチャード・マッデン  コリン・ファース  ベネディクト・カンバーバッチ 
 第一次世界大戦の中、第8連隊に所属するウィリアム・スコフィールドとトム・ブレイクはエリンモア将軍から、前線のマッケンジー大佐率いるデヴォンシャー連隊第2大隊の元へドイツ軍の罠が待ち受けているから攻撃を中止せよとの命令を届けるよう伝令役を命じられる。二人はドイツ軍の占領地を抜け、目的地を目指すが・・・。
 冒頭、二人が陣地を出て撤退していったと言われるドイツ軍の陣地を横切って行くシーンは緊迫感がありました。どんよりとした空模様の中、馬や人間の死体が転がるぬかるみの戦場を、いつ、どこからか狙撃があるのではないか、爆弾が仕掛けられているのではないかとドキドキしながら観ていて、どっと疲れました。
 エリンモア将軍がブレイクに伝令役を言い渡すのも上官としてうまいですよねえ。命令が届かないと部隊にいるブレイクの兄も死ぬことになるとさりげなく付け加えます。上官の命令だから当然否応なく聞かなければならないのですが、そう言われると更に頑張らざるを得ないですよねえ。
 途中でスコフィールドが遭遇した部隊の上官がカッコイイです。スコフィールドに「中止命令があっても戦おうとする軍人がいるから、命令を伝える際には第三者を立ち会わせた方がいい」と適切なアドバイスをしてくれます。
 第一次世界大戦のヨーロッパ戦線が舞台となれば、思い浮かぶのはレマルクの「西部戦線異状なし」で、飛んできた蝶に塹壕から手を伸ばして狙撃されるシーン。この作品でも長々と続く塹壕の中を歩くシーンがありましたが、あれだけのものをセットにしろ作ってしまうのだから凄いです。
 この映画の見所は、それぞれのシーンがワンカットで撮影されているところ。撮影シーンが公開されていますが、カメラマンも大変ですよねえ。今年のアカデミー賞最有力でしたが、残念ながら「パラサイト」に受賞をさらわれました。しかし、これはこれで観る価値のある作品です。 
青くて痛くて脆い(2020.9.2) 
監督  狩山俊輔 
出演  吉沢亮  杉咲花  岡山天音  松本穂香  清水尋也  森七菜  茅島みずき  光石研  柄本佑 
 住野よるさん原作の同名小説の映画化です。原作は読んでいなかったので、まっさらな気持ちで観に行ったのですが、これはあまりに主人公が“痛すぎる”映画でした。
 コミュニケーションが苦手で人との関係に距離を置いていた主人公の大学生・田瑞楓は、理想を掲げた発言で周囲から浮いている同級生の秋吉久乃から声をかけられる。彼女に押し切られるように「世界を変える」「なりたい自分になる」を目標に掲げるサークル「モアイ」を立ち上げたが、それから3年、「モアイ」は当初の理想からはかけ離れた就活のためのサークルへと変わっていた。今では「モアイ」を離れている楓は友人の前川董介に「モアイは自分ともう一人で作ったが、彼女は死んでしまった。自分は今のモアイをぶっ壊す」と話す。楓と董介は「モアイ」が炎上するネタを探すために、「モアイ」の活動に参加する・・・。
 観客に仕掛けられたあるトリックゆえに、この作品を“青春サスペンス”と呼ぶのでしょうけど、そのトリックはすぐにわかってしまう人が多いかもしれません。わかってしまえば、あとは観ていてイライラが募る作品となります。

(ここからネタバレ)

 観ていて、主人公の楓のひとりよがりの、今でいう“痛い男”の姿に閉口しました。勝手に想いを募らせていた女性に恋人ができたことで、すべてを憎しみに変えてしまった馬鹿な男の話です。「君の膵臓が食べたい」の住野よるさんの作品だったので期待をして観に行ったのですが、正直のところ新型コロナの感染拡大後初めて観た映画としては大いに期待外れでした。 
コンフィデスマンJP(20.9.7) 
監督  田中亮 
出演  長澤まさみ  東出昌大  小日向文世  小手伸也  関水渚  北大路欣也  柴田恭兵  ビビアン・スー  白濱亜嵐  古川雄大  江口洋介  竹内結子  三浦春馬  広末涼子  織田梨沙  前田敦子  滝藤賢一  濱田岳  濱田マリ  デヴィ・スカルノ  石黒賢  生瀬勝久  瀧川英次   
 「コンフィデンスマンJP」映画化第2弾です。今回の舞台となるのはマレーシア、クアラルンプール。
 台湾の大金持ちフウ一族の総帥レイモンド・フウが亡くなり、遺書が読み上げられると、当主の座に指名されたのは3人の子どもではなく、レイモンドが外で産ませたというミシェルという名の子どもだった。ダー子は亡き詐欺師の娘コックリをミシェルにでっちあげ、相続放棄を申し出てお金をいただこうと企むが・・・。
 絶対騙されないぞと思って観ていたのですが、結局騙されましたねえ。まさか、あそこまで嘘だったとは・・・。最初の長澤まさみさん演じるダー子と竹内結子さん演じるスタアの仲違いのシーンがこんなところに活かされていたとはね。
 コックリを演じた関水渚さんが広瀬すずさんに似ているなあと思ったら、ネットでもその話題で持ち切り。確かに似ていますよねえ。フウ家の長女・ブリジット役を演じていたのは、僕らには懐かしのブラック・ビスケットのビビアン・スーさんです。中年になっても綺麗ですが、声はかなり低音になりましたね。そのほか、ガクトさんがカメオ出演しています。クアラルンプールに住んでいるそうですよ。
 テレビシリーズや前回の映画の登場人物も多く顔を見せています。上で名前を挙げた竹内結子さん、広末涼子さん、江口洋介さん、そして、在りし日の三浦春馬さんも出演しており、長澤まさみさんとダンスシーンを見せてくれます。
 ラストにレイモンド・フウを演じた北大路欣也さんの登場シーンがありますが、このシーンによって今回の話の始まりがダー子の話から始まっていたことが明らかにされます。ここまで綿密にストーリーが組み立てられているとは、やっぱり脚本家の古沢良太さん、凄いです。
 公開前にはボクちゃん役の東出昌大さんの不倫騒動あり、コロナの感染で公開延期ありと順調な始まりではありませんでしたが、やっぱりおもしろい。次作にも期待です。 

※エンドロールに「つかこうへい事務所」の名前が出てきたので、いったいどこでこの映画に協力しているのだろうと思ったら、エンドロールのあとの映像でわかりました。「階段落ち」でしたね。
ミッドウェイ(20.9.11) 
監督  ローランド・エメリッヒ 
出演  エド・スクライン  パトリック・ウィルソン  ルーク・エヴァンス  アーロン・エッカート  豊川悦司  浅野忠信  國村隼  ニック・ジョナス  ルーク・クラインタンク  ダレン・クリス  キーアン・ジョンソン  マンディ・ムーア  デニス・クエイド  ウディ・ハレルソン 
 太平洋戦争中の1942年6月、ミッドウェイ島沖で行われたミッドウェイ海戦を描いた作品です。ミッドウェイ海戦といえば、史実で明らかなとおり、真珠湾攻撃によって有利に戦いを進めていた日本が一気に敗戦へと向かう大きなターニングポイントとなった戦いです。
 映画はアメリカ海軍のパイロット、ディック・ベストを中心に、情報将校のエドウィン・レイトンらを描いていきます。情報将校であるレイトンを描くことによって、この戦いにおける、そしてその後の戦いにおける情報戦の重要さが描かれるということですね。
 連合艦隊司令長官山本五十六を演じたのは豊川悦司さん。なかなか堂々とした演技でしたが、それにしても豊川さんが山本五十六を演じるとはそれなりの歳になったのですねえ。あと日本人の有名俳優としては山口少将役で浅野忠信さん、南雲中将役で國村隼さんが出演しています。
 監督がドイツ人であるローランド・エメリッヒだったからというわけではないでしょうが、アメリカ映画にしては日本をまったくの悪として描いてはいません。ただ、海に墜落し日本軍に救助されて捕虜となったが情報を吐かないアメリカ兵に錨をつけて海に投げ入れるという、戦争とはいえ日本軍の残酷さを強調したシーンもありましたが。
 日本本土への初の空爆を敢行したドーリットル中佐率いるB-25によるいわゆる“ドーリットル空襲”も描かれましたが、ドーリットルが空爆後、燃料切れの飛行機から落下傘降下し中国人に助けられるシーンが描かれるのは、やっぱり中国資本が投入されていることと関係がありますよね。
 外国映画にありがちな、ちょっと変なイントネーションの日本語がこの作品でも見受けられました。ある映画批評の中には「日本人役のほぼ全員が違和感のない日本語をしゃべっており・・・」とありましたが、日本人を演じた役者の中には日系や中国系の日頃日本語を話していない人もいたのではないでしょうかねえ。個人的にはかなり気になりました。
 作品の見どころは言うまでもなくやはり戦闘シーンです。冒頭の真珠湾攻撃や日米の戦闘機による空中戦も手に汗握る臨場感ですし、何といっても空母の真上から急降下爆撃をするシーンは大迫力です。やはりこういう映画は家のテレビで観るより大きなスクリーンで観る方がいいですね。 
海辺の映画館~キネマの玉手箱(20.9.11) 
監督  大林宣彦 
出演  吉田玲  厚木拓郎  細山田隆人  細田善彦  成海璃子  山崎紘菜  常盤貴子  浅野忠信  伊藤歩  犬塚弘  犬童一心  稲垣吾郎  入江若葉  内田周作  柄本時生  尾美としのり  大場泰正  片岡鶴太郎  蛭子能収  大森嘉之  金井浩人  窪塚俊介  品川徹  小林稔侍  川上麻衣子  笹野高史  白石加代子  高橋幸宏  寺島咲  武田鉄矢  中江有里  手塚眞  長束圭史  中野章三  根岸季衣  星豪毅  南原清隆  マフィア梶田  満島真之介  山下康介  村田雄浩  渡辺えり  渡辺裕之   
 今年4月に亡くなられた大林監督の遺作となった作品です。
 尾道の映画館が閉館を決め、最後に戦争映画特集を上映します。そこに観に来た3人の青年がスクリーンの中に入って、映画の登場人物になってしまうというファンタジックなストーリーです。ただ、尾道三部作のような作品を期待していると裏切られます。
 3人が入っていったスクリーンの中で描かれるのは、江戸末期の戊辰戦争から第二次世界大戦の広島への原爆投下までの様々な戦争に関わるエピソードですが、まとまった話として観ることができるのは、最後に描かれる移動劇団「桜隊」の人々を広島の原爆投下から避難させようと3人が尽力するエピソードの部分で、それ以外は細切れのエピソードが続きます。
 それら様々なエピソードを通して大林監督が訴えたかったのは、“反戦”ということは間違いのないことでしょう。パンフレットの表紙をめくったページに大林監督の「ねえ映画で僕らの未来を変えてみようよ」と手書きの文字が書かれています。大林監督は映画にそんな大きな力があることを信じていたんでしょうね。
 ただ、この映画自体はところどころで宇宙船に乗った高橋幸宏さんが登場したり、エピソードの切替が早かったりで、テーマはわかってもストーリーを楽しむという映画ではなかった気がします。残念ながら地元の映画館では人の入りが悪かったのか、当初の1日2回の上映があっという間に1回となり、結局2週間で公開終了になってしまいました。
 主人公の3人の青年を、かつて大林作品に出演していた厚木拓郎さんと細山田隆人さん、そして細田善彦さんが演じ、そのほか尾美としのりさんら大林作品の常連が出演、更に成海璃子さんが重要な役どころで大林作品に初出演しているほか、多くの有名俳優が出演しています。
 癌で闘病中、世の中が平和であることを祈り反戦の願いを込めてこの作品を完成させた大林監督の冥福をお祈りします。 
TENET(20.9.18 20.9.25) 
監督  クリストファー・ノーラン 
出演  ジョン・デイビッド・ワシントン  ロバート・パティンソン  エリザベス・デビッキ  ケネス・ブラナー  アーロン・テイラー=ジョンソン  ヒメーシュ・パテル  デョンプル・カバディア  クレマンス・ポエジー  マイケル・ケイン 
 1度観ただけでは理解ができず、先日2度目を観に行ってきましたが、やっぱりよくわかりません。物語は簡単に言えば現代人と未来人の戦いです。未来の世界が環境破壊で人間の生存に適さなくなってきたため、未来の科学者が発明したが、「祖先殺し」をすることを恐れて過去に隠した「時の流れを逆行させる装置・アルゴリズム」を起動させ、逆行を順行に変えようとします。もうこの辺り頭の中で整理がつきません。ただし、未来人が今の時代に逆行はできても、一気に昔の時代にタイムトラベルすることはできないので、未来人の手先としてアルゴリズムを起動させようとするのが武器商人のセイタ―ということですね。
映画でも描かれましたが、逆行の世界では普通に呼吸ができないので、もし今の時の流れが反対になると、私たちの時の流れ、順行が逆行になるので、現代人は死んでしまうということでしょうか。
 タイムトラベルものではよく話題になる「祖先殺し」の問題ですが、未来人はまったくこれについては考慮しない、祖先を殺しても大丈夫と考えているようですね。
 とにかく、ストーリーが難解だけでなく、同じ画面で時の流れの順行と逆行が描かれるので、頭がついていきません。オスロ空港のシーンで時を順行している人と逆行している人があんなふうに格闘することができるのでしょうか。また、クラッシュしていた車が元に戻って走り出したり、ラストの戦闘シーンでビルが崩れたり元に戻ったりするシーン等々考えてもよくわかりません。
 そもそも冒頭のウクライナのオペラハウスでのテロ事件の真相からもうわかりません。なぜ、特殊部隊は爆弾を仕掛けたのか。“名もなき男”を試すためだったというが、どこからが試すために行われたことなのか。“名もなき男”を助けた逆行弾は、なぜ予めそこにあったのか等々疑問点を上げ出したらきりがありません。
 わずかながら理解できるストーリーの中で、感動するのはロバート・パティンソン演じるニールの行為です。ネタバレになるので詳細は語れませんが、結果がわかっていても行動するというニールに泣かせられます。スタルスク21での戦闘が終わったときにニールが“名もなき男”に言う「これが美しい友情の終わりだな」は「カサブランカ」のラストシーンでハンフリー・ボガード演じるニックが言う「これが美しい友情の始まりだな」へのオマージュですね。 
望み(20.10.9)
監督  堤幸彦 
出演  堤真一  石田ゆり子  岡田健史  清原果那  加藤雅也  市毛良枝  松田翔太  竜雷太  三浦貴大  早織  西尾まり  渡辺哲 
 雫井脩介さん原作の同名小説の映画化です。
 石川家は、設計士の父、一登、校正の仕事をする母、貴代美、高校生の長男、規士、中学3年生の長女、雅の4人家族。規士はサッカー選手を目指していたが、試合中に故意に怪我をさせられ、サッカーを断念することとなり、夜遊びをするなど鬱屈した日を過ごしていた。ある日、翌日になっても規士は帰宅せず、ニュースでは近所で事故を起こした車から高校生らしき死体が見つかり、2人が逃げて行ったと報道される。被害者は規士のサッカー仲間であり、マスコミが行方の分からない規士が犯人ではないかと取材に殺到する。ネットではもう一人が殺害されているのではという噂が広がる中で、規士は加害者なのか、それともまだ見つかっていないもう一人の被害者なのか、一登と貴代美は心乱れる・・・。
 この映画は、子どもを持つ親に、厳しい選択を突き付けます。被害者であれば殺害されており、一方、加害者であれば生きているが殺人犯としてこれから世間の非難を受けなくてはならず、親として二人の立場に置かれたら、いったいどちらを望むのでしょうか。
 映画では、一登は自分が育てた息子が人を殺めるわけがないと息子のことを信じようとしますが、貴代美は犯人でもいいから生きていて欲しいと考えます。やっぱり残される家族のことを考えると、加害者より被害者であって欲しいと思う親の方が多い気がしますが、母親としては自分のお腹を痛めた子どもということで、貴代美のように考える人もいるのではないかと思います。
 一登を演じるのは堤真一さん、貴代美を演じるのは石田ゆり子さん。いつもは天然という感じの石田さんが、眉間に皺を寄せた難しい顔をして、犯罪者でも生きていて欲しいと望む母親役を熱演です。 
罪の声(20.10.30) 
監督  土井裕泰 
出演  星野源  小栗旬  梶芽衣子  宇崎竜童  篠原ゆき子  原菜乃華  宇野祥平  阿部亮平  尾上寛之  川口覚  阿部純子  火野正平  堀内正美  木場克己  橋本じゅん  浅茅陽子  高田聖子  桜木健一  佐藤蛾次郎  宮下順子  塩見三省  佐川満男  庄司照枝  須藤理彩  
  塩田武士さん原作の同名小説の映画化です。内容は1984年、85年に起きた実際の事件、「グリコ・森永事件」をモデルにしています。実際の事件は犯人一味の中に“キツネ目の男”がいたことが今でも記憶に残る印象的な事件でしたが、結局犯人は捕まらず迷宮入りとなっています。塩田さんの作品は、この事件をモデルに事件の一つの解決を明らかにしていきます。
 紳士服のテーラーを営む曽根俊也は、ある日、押し入れの奥深くにしまわれていた父親の遺品の中に黒革の手帳とカセットテープがあるのを見つける。カセットテープを再生すると自分の幼い頃の歌声が録音されていたが、それが途切れて聞こえてきたのが「ギンガ・萬堂事件」の脅迫電話の声であり、それが自分の声だと知った曽根は、事件のことを調べ始める。一方、大日新聞大阪本社の文化部記者・阿久津英士は、昔起こった「ギンガ・萬堂事件」の特集を組むということで、その応援に駆り出され、事件を調べ始める。そんな二人が出会ったところから事件の真相が顔を覗かせてくる・・・。
 映画の中で描かれる中心は、この事件で犯人たちにより脅迫電話に自分の声を使用された子どもたちの人生です。彼らがその後どう生きていったのか、大人たちの身勝手な行動に翻弄された子どもたち、特に中学生の姉と小学生の弟の辿る人生はあまりに過酷で涙がこぼれてしまいます。姉と同級生だった高田聖子さん演じる女性が、曽根に、姉が曽根と同じように幸せに生きていますよねと号泣して聞くシーンにもグッときます。
 成長した弟を演じたのは宇野祥平さん。宇野さんは「深夜食堂」などの割ととぼけた感じの役柄を演じることが多いのですが、今回はかなり体重も落としたようで、いつもの雰囲気とはまったく違う姿を見せてくれます。見事なまでに、声を犯罪に使用され、その後過酷な運命を辿った人間を演じ切っています。出演シーンはそれほど多くありませんが、熱演です。何かの映画賞の助演男優賞にノミネートされてもおかしくありません。
 曽根を演じるのが星野源さん、阿久津を演じるのは小栗旬さんという売れっ子コンビですが、彼らだけでなく、多くの名優が共演しています。昔懐かしい桜木健一さん(曽根の父親と同じ柔道場の道場仲間というのが、僕らの年代にはたまらない役柄ですね。)、浅茅陽子さん、佐川満男さんらも出演しています。
おらおらでひとりいぐも(20.11.6) 
監督  沖田修一 
出演  田中裕子  蒼井優  東出昌大  濱田岳  青木崇高  宮藤官九郎  田畑智子  山中崇  黒田大輔  岡山天音  三浦透子  六角精児  大方斐紗子  鷲尾真知子   
  若竹千佐子さんの第158回芥川賞を受賞した同名小説の映画化です。このタイトルは宮沢賢治の詩「永訣の朝」の一節ですね(元々はローマ字で記されていますが。)。岩手の方言(南部弁だそうです。)で「私は私ひとりで行きます」という意味のようです。
 東京オリンピックの年、親に押し付けられた結婚を嫌って故郷を飛び出し、東京にやってきた桃子。なかなか「オラ」が「わたし」とすらすら言えない中、食堂で働くうちに大声で方言を話す常連客の周造と恋仲になり、やがて結婚する。二人の子どもを育て上げ、夫と二人の生活になると思ったとたんに夫が死に、桃子は一人暮らしとなる。図書館で本を借り、46億年の地球の歴史ノートを作り、時に病院に行く日常の中、桃子が話をするのは、心の声、“寂しさ1”“寂しさ2”“寂しさ3”・・・。
 将来、もし妻が先に亡くなったら自分もこうなるのかなあと女性と男性の違いはあるけど、桃子の姿を自分に重ねながら観ていました。桃子と同じように図書館に行って本を借り、趣味のサークルに誘われても自分はいいときっと桃子のように断るのが目に見えるようです。息子は家に寄り付かず、娘も孫を連れて来るけど金の無心をするのでは、ちょっと寂しいですねえ。自分の子どもはそうではないと言いたいけれど、彼らも家庭を持てばそちらが優先になるだろうしねえ。
 主人公・桃子を演じるのは久しぶりの田中裕子さん。実際の年齢より10歳上の老人を演じますが、このひょうひょうとしたというか、力が抜けたような桃子さんを演じるのがうまいです。
 桃子の心の声“寂しさ1”“寂しさ2”“寂しさ3”を演じる濱田岳さん、青木崇高さん、宮藤官九郎さんのトリオの方言での掛け合いが面白いですね。朝、目覚めようとする桃子にどうせやることないのだから寝ていろという心の声“どうせ”を演じる六角精児さんも適役です。
 桃子の若い頃を演じたのは蒼井優さん。こういう田舎の娘を演じさせるとうまいなあと感じさせる女優さんです。夫となる周造を演じたのは東出昌大さん。これは例の騒動前に収録したものですね。
サイレント・トーキョー(20.12.4) 
監督  波多野貴文 
出演  佐藤浩市  石田ゆり子  西島秀俊  中村倫也  広瀬アリス  井之脇海  勝地涼  毎熊克哉  加弥乃  白石聖  財前直見  鶴見慎吾  金井勇太  野間口徹  大場泰正  庄野崎謙 
 恵比寿に爆弾を仕掛けたとKXテレビに電話があり、来栖と高沢は現場に出かける。指定された場所でベンチに座っていた女性・山口アイコに高沢は座らされると、立ち上がったアイコはベンチには30キロ以上の重量がかからなくなると爆発する爆弾が仕掛けられていると言われる。アイコは犯人から脅迫されていると来栖の手に爆弾がセットされた腕輪をはめ、次の場所に来栖を連れて移動する。爆弾は時間通り爆発したが音と光だけで高沢は無事であった。直後、犯人から脅迫されて犯人を名乗された来栖により、総理と直接話をさせなければ次は本当に爆発させるというビデオメッセージが届く。爆弾が仕掛けられた渋谷では警察が捜索をするが発見できず、渋谷は面白半分に見学に来た人々で大混雑となる。総理はテロリストとは交渉しないと回答したため、指定時間がきて、大爆発が起こり、渋谷は大惨事となる・・・。
 テロリストは佐藤浩市さん演じる男のようですが、上映前の舞台挨拶で、真犯人は誰かという問いかけがされたので、佐藤さんが犯人ではないということを暗に言ってしまっているようで、ちょっとこの舞台挨拶は失敗だったなあという印象を受けました。
 公式サイトにあげられたストーリーが故意に読んだ人をミスリードするように書かれています。ただ、映画を観れば一目瞭然。早い段階で、「これはおかしいだろう!」と気づき、某俳優さんの演技が下手なのか、それとも演出なのかはわかりませんが、真犯人はすぐわかってしまいます。
 観客に緊張感を持たせるためか、99分という短い上映時間の中にストーリーを凝縮したため、かなりカットされたシーンもあったようで、西島秀俊さん演じる世田刑事の首に大きな傷があった理由はひとこと語られただけですし、なぜある人物(ネタバレになるので伏せます。)は、その年の、その日に爆破事件が起きることを知っていたのかも説明がなされません。たとえ、その日がある記念の日だったにしても年はわからないでしょう。
 広瀬アリスさんが、爆発なんか起きるわけがないと渋谷を見に行く典型的な平和ボケしている野次馬娘を演じていますが、広瀬さん、こういう能天気な娘役って多いですねえ。怪しげなIT企業の経営者を演じているのは中村倫也さん。このところ、売れっ子ですよねえ。 
ワンダーウーマン 1984(20.12.18) 
監督  パティ・ジェンキンス 
出演  ガル・ガドット  クリス・パイン  クリステン・ウィグ  ペドロ・パスカル  ロビン・ライト  コニー・ニールセン    
 ワンダーウーマンが登場する作品としては4作目、彼女が主人公の作品としては2作目になります。
 前作では第一次世界大戦時を舞台にドイツ軍を操って戦争を起こさせ、人類の滅亡を企む軍神アレスとの戦いが描かれましたが、今作の舞台となるのは題名にもあるように1984年です。このあたり、アマゾン族は人間とは老いの進み方が違うので、前作から70年が経過してもダイアナは若く、綺麗なままです。
 ダイアナはスミソニアン博物館で働いていたが、そこに新任学芸員としてドジでさえないが心優しい女性、バーバラ・ミネルバがやってくる。そんなバーバラに任せられたFBIからの鑑定品の中に不思議な石があるのにダイアナは気づく。それにはラテン語で願が一つだけ叶うと書かれており、バーバラは憧れていたダイアナのようになりたいと石に願う。一方、石を探していた実業家のマックスは、バーバラの部屋から石を盗み出し、“願いを叶える石”そのものになりたいと願うと石は粉々となり、マックス自身が願を叶えることができる存在となる。石の由来を調べたダイアナは、その石が現れたときの文明は常に滅びていたことを知り、マックスから石を取り戻そうとするが、自分自身が願いを叶える存在となったマックスは次第に暴走していく・・・。
 前作で死んだはずのスティーブ・トレバーが再登場。スティーブ自身ではなく、他人の身体にスティーブの意識が入り込むという形での登場ですが、なぜかは想像がつきます。“願いを叶える石”に念じれば願いは叶うけれども、その代償として何かが失われるという点がミソ。ということで、ダイアナは大きな哀しい決断をせざるを得ないことになります。
 ワンダーウーマン演じるガル・ガドット、相変わらず美しくてカッコいいです。今回はいつものコスチュームだけでなく、黄金に輝く鎧も着ますが、これまたお似合いです。
 エンドロールの途中で、ある人物が登場します。劇中にもある役で出演していたこの女優さん、これは懐かしいですねえ。