▲2019映画鑑賞の部屋

蜘蛛の巣を払う女(31.1.11) 
監督  フェデ・アルバレス  
出演  クレア・フォイ  スヴェリル・グドナソン  シルヴィア・フークス  レイキース・スタンフィールド  スティーヴン・マーチャント  クリストファー・コンヴェリー  クレス・バング  シヌーヴ・マコディ・ルンド  キャメロン・ブリットン  ヴィッキー・クリープス  
 「ミレニアム」シリーズ第2弾。原作は亡くなった原作者スティーグ・ラーソンから執筆を引き継いだダヴィド・ラーゲンクランツが書いたシリーズ第4作の映画化です。並外れたIT技術を持ったリスベットの活躍を描きます。
 前作のリスベット役のルーニー・マーラとミカエル役のダニエル・クレイグのコンビから主役を演じるのはクレア・フォイとスヴェリル・グドナソンに変更になっています。
 アメリカに依頼され、各国の核ミサイル発射コードにアクセス可能なプログラムを作成したフランス・バルデルから、リスベットはアメリカから完成したプログラムを奪うよう依頼される。アメリカ国家安全保障局のシステムに侵入しプログラムを奪ったリスベットだったが、何者かにより襲われ、プログラムを奪われてしまう。更に、バルデルが殺され、プログラム解読のキーとなるバルデルの息子が誘拐される。リスベットは犯人たちを追うが・・・。
 このシリーズの魅力はリスベットに尽きますが、今作ではリスベットの生い立ち、更に彼女に双子の妹があったことが冒頭語られます。今回リスベット役を演じるクレア・フォイですが、前作のルーニー・マーラに負けず劣らず、短髪が似合ってかっこいいですねえ。ルーニー・マーラはこの役でブレイクしましたが、クレア・フォイも近々公開される「ファースト・マン」にも出演しているようですし、これから期待の女優さんです。ミカエル役のスヴェリル・グドナソンは前作のダニエル・クレイグに比べると、ちょっと役不足の感があります。 
クリード 炎の宿敵(31.1.13) 
監督  スティーブン・ケイブル・Jr. 
出演  マイケル・B・ジョーダン  シルベスター・スタローン  テッサ・トンプソン  ドルフ・ラングレン  フロリアン“ビッグ・ナスティ”ムンテアヌ  フィリシア・ラシャド  ラッセル・ホーンズビー  ブリジット・ニールセン 
(ネタバレあり)
 ロッキーシリーズの後継ともいうべきクリードシリーズ第2弾です。今回は「ロッキー4」でアポロが試合で死亡した際の対戦相手、ドラコの息子とアドニスが闘うこととなります。相手はドラコが幼い頃からボクシングを教え込んだアドニスより一回り大きいファイター。ロッキーの反対を押し切って行った対戦でアドニスは肋骨を折られ、腎臓に損傷を負うなど完膚なきまでに叩きのめされます。相手の反則で形は勝利しましたが、相手は再戦を要求してきます。
 アポロとドラコの息子同士の対戦なんて、ロッキーシリーズのファンにとってはワクワクしてしまいます。父親同士の対戦同様、アドニスより一回り大きいドラコの息子との対戦は、ヘビー級といってもあまりに体格が違いすぎます。ボクシングの場合、ランクが一つ違うだけで、繰り出されるパンチの力はかなり違うと言いますから、アドニスとドラコの息子の場合も見ただけでアドニスの不利がわかります。とはいっても、ロッキーシリーズの系譜を継ぐ作品ですから、結果は予想どおり。ロッキーのテーマが流れると、観ていても奮い立ってしまいます。
 最終的に敗れるドラコの息子ですが、最後はあまりにかわいそう。母親への愛をボクシングをする力に変えていたのでしょうが、母親の対応は実の母親とは思えません。まあ、ドラコが最後には息子を理解するようになったところは良かったです。
マスカレー・ホテル(31.1.19) 
監督  鈴木雅之 
出演  木村拓哉  長澤まさみ  小日向文世  松たか子  生瀬勝久  渡部篤郎  篠井英介  梶原善  泉澤祐希  石橋凌  鶴見辰吾  石川恋  東根作寿英  濱田岳  笹野高史  高嶋政宏  菜々緒  宇梶剛士  橋本マナミ  田口浩正  勝地涼  前田敦子   
 東野圭吾さん原作の同名小説の映画化です。人気作家の東野さんの作品ですし、主演がキムタクとなれば、いくらスマップ解散のときの経緯でキムタク人気に陰りが見えたとしても、まだまだお客は呼べるようで、会場内はかなりの入りでした。
 3件の殺人事件が起き、手口が異なるものの現場に残された暗号らしきものが同じだったため、連続殺人事件と考えられ、3件目の現場に残された暗号を解読すると、次の犯行現場が「ホテル・コルテシア東京」を示していることがわかる。警察は刑事たちをホテルの従業員として配置し、犯人が犯行を行うところを逮捕しようと考える。フロント係として配置されたのはエリート刑事の新田。彼の教育係としてフロント係の山岸尚美が任命されるが、様々な宿泊客が訪れる中、新田にフロントマンとしてのあるべき態度を求める尚美と新田は常にぶつかる・・・。
 連続殺人の犯人は誰で、被害者は誰なのか、その犯行理由は何なのかというのがメインストーリーですが、それだけでなく、禁煙部屋を希望したのに煙草の匂いがすると部屋替えを要求する男性客、フロントに男の写真を出して、この男を絶対近づけないで欲しいという女性客、目が見えているのに、見えないふりをする老婆の客、ことさらに新田に強く当たる男性客等々ホテルにやってくる客たちの様々なエピソードを描く群像劇でもあります。映画ではそんな客たちを豪華な役者陣が演じるので、そのエピソードを観るだけでも楽しい作品となっています。キムタクと「HERO」で共演した松たか子さんも見ることができます。先日結婚した勝地涼さんと前田敦子さんも同じエピソードに登場していました。なお、エンドロールで明石家さんまさんが特別出演と出てきましたが、うっかり見逃しました。どこに出てきていたのでしょう。
 原作は読んでいたのですが、なにせ8年も前なので、犯人は誰なのかもすっかり忘れており、まっさらな状態で観ることができました。尚美がホテルのマークの入ったペーパーウェイトが曲がっていると常に気を付けて直すシーンが何度も出てきます。これがあることの伏線になっているのですが、これって映像ならではの伏線ではなかったでしょうか。原作にありましたっけ。
 ラスト、尚美を演じた長澤まさみさんがドレス姿で登場しますが、やっぱり、スタイル素晴らしいですよねえ。背がスラっと高いので赤のドレスがよく似合います。 
ミスター・ガラス(31.1.19) 
監督  M・ナイト・シャマラン 
出演  ブルース・ウィリス  サミュエル・L・ジャクソン  ジェームズ・マカボイ  アニヤ・テイラー=ジョーンズ  サラ・ポールソン  スペンサー・トリート・クラーク  シャーレイン・ウッダード 
 デイビット・ダンは息子と警報装置の販売店を営みながら、犯罪者を見つけ出し、自ら罰していた。女子大生4人が誘拐される事件が起き、その犯人を捜していたデイビットはすれ違ったケビンと接触して彼が犯人だと気づき、女子大生を助けるために監禁場所に乗り込む。そこでケビンの別人格であるビーストと闘ったデイビットだったが、彼とともに警察に捕まり、エリー・ステイプル博士の精神病院に収容される。そこには、デイビットの仇敵、イライジャ・プライスも収容されていた。イライジャはケビンに接触しビーストの人格を表出させ、デイビットと闘わせることによって、ヒーローがこの世に存在することを世間に知らしめようとする・・・。
 シャマラン監督の前作「スプリット」のラストで、「アンブレイカブル」に登場していたブルース・ウィルス演じるデイビット・ダンが登場していたので、この二つの作品の世界が一緒になった作品ができるのではと期待していましたが、ついに公開されました。24の人格を持つ多重人格者のケビン、驚異的な肉体と危険人物を察知する能力を持つデイビット・ダンだけではなく、サミュエル・L・ジャクソン演じるミスター・ガラスことイライジャ・プライスも登場します。「アンブレイカブル」のときは54回骨折したと言っていたのが、今回は94回ですからあれから何年たったか知りませんが、増えましたねえ。今回の映画の題名が「ミスター・ガラス」と彼の名前となっているのには、シャマラン監督が仕掛けたラストのどんでん返しが大きな理由となっています。
 自己の作品に顔を出すことが恒例となっているシャマラン監督ですが、今回もデイビットが経営する警報装置販売店の客として出演しています。また、「スプリット」で唯一生き残ったアニヤ・テイラー=ジョイが演じるケイシー・クックも登場します。 
十二人の死にたい子どもたち(31.1.25) 
監督  堤幸彦 
出演  杉咲花  橋本環奈  新田真剣佑  北村匠海  高杉真宙  黒島結菜  吉川愛  萩原利久  淵野右登  坂東龍汰  古川琴音  竹内愛紗   
 冲方丁さんが初めて手掛けた同名のミステリ小説の映画化です。
 自殺サイトで繋がった12人の少年少女が安楽死をするために廃病院の地下のホールに集まってくる。最初にホールに来たケンイチは並べられた12のベッドの一つに横たわる少年に気づく。やがて集まった少年少女は12人。果たしてベッドに横たわる少年は誰なのか。自殺サイトの管理人のサトシは全員合意のもとで自殺を実行すると宣言する。最初に決を採ると〇〇がベッドに横たわる少年のことがわからないのに自殺はできないと反対をする。それぞれの事情を持ってこの場所に集まった彼らは全員一致のルールの中で少年をベッドに横たえた犯人を推理していく。
 原作は未読でしたが、残念ながらストーリーの最終的な落としどころは、ある人物の配役やその演技で想像できてしまいました。これが小説だったらこの早い段階で想像することはできなかっただろうなと思います。映像ゆえですね。
 とにかく早く自殺をしたい者、謎が明らかにならないと自殺は決行できないと考える者等が議論を重ねる中で、それぞれがここにいる理由が明らかにされていきます。最後に時系列どおりに起きたことが描かれ、なるほどそういうことだったのかあということで終了となります。でも、やっぱり13番目のベッドに横たわった少年の種明かしは(ネタバレになるので書けませんが)拍子抜けですよねえ。ミステリとしてあれはないでしょう。
 12人の若手俳優が出演しています。やはり何といっても一番目立つのはアンリを演じた杉咲花さんです。若手俳優の中でも演技派と評されるだけあって、強烈な印象を残します。ノブオを演じた北村匠海さんは、「君の膵臓を食べたい」の主人公役とあまり変わっていない印象です。宣伝戦力で最後まで演じるのが誰かが隠された4番のリョウコを演じた橋本環奈さんですが、まあ美少女の芸能人役ですからそのままでこれという印象は受けませんでした。そのほか印象に残ったのはマイを演じた吉川愛さん。子役で活躍し、一度芸能界引退してから芸名を変えて再度芸能界に戻ってきましたが、当たり前のことながら成長しましたねえ。金髪なのでなおさら大人っぽく見えます。 
七つの会議(31.2.3) 
監督  福澤克雄 
出演  野村萬斎  香川照之  及川光博  片岡愛之助  世良公則  鹿賀丈史  橋爪功  北大路欣也  音尾琢真  藤森慎吾  朝倉あき  岡田浩暉  木下ほうか  吉田羊  土屋太鳳  小泉孝太郎  溝端淳平  春風亭昇太  立川談春  勝村政信  役所広司     
 池井戸潤さん原作の同名小説の映画化です。原作は連作短編という形をとって、8人の別々の主人公によるエピソードが語られていましたが、映画では会議の時には居眠りをしてばかりで周りから“居眠り八角”と呼ばれる営業一課の万年係長、八角の姿を、営業二課長から営業一課長となる原島とその部下の女性・浜本の目を通して描いていきます。
 中堅メーカー・東京建電の営業一課の係長八角は“居眠り八角”と周囲から陰口を叩かれる万年係長。ある日、彼を敵対視していた営業一課長の坂戸は八角によりパワハラ被害を訴えられ、人事部付きに左遷となる。更に八角を調べていた経理部の新田、カスタマー室長の佐野が次々と左遷される。坂戸の後に営業一課長となった原島と部下の浜本は何かあると考え、事情を探ろうとするが、そこには会社の存続がかかったある大きな問題が関わっていた・・・。
 八角の、立身出世には興味がなく、勤務時間が終了すれば帰宅し、上司からの叱責も全然気にしないという図太さには羨ましい限りです。かといって、仕事をやらせればきちんと処理してしまうのですから、毎日の仕事のプレッシャーに押しつぶされそうになる普通のサラリーマンとしては、爽快さを感じながらも、「この野郎!」と思ってしまいますよね。
 八角を演じるのは、来年の東京オリンピック・パラリンピックの式典で総合総括に任じられた低音が印象的な野村萬斎さん。パワハラ上司の典型の営業部長・北川を演じるのは香川照之さん。さすが、芸達者の香川さん。何を演じさせてもうまいですねえ。八角を探る原島にはミッチーこと及川光博さん。普段の王子様とは全然違って、プレッシャーに弱い中間管理職を演じます。彼は「相棒」に出演することで演技の幅を広げたような気がします。社内不倫をしたあげく、つい寿退社をすると口走ってしまった浜本優衣を演じるのは朝倉あきさん。彼女の役柄がいいんですよねえ。決断力のない原島を叱咤して二人で真実を探ろうと奔走します。社内不倫でずるずると男に引っ張られた愚かな女性には見えません。そのほか北大路欣也さんや鹿賀丈史さん、橋爪功さんなど大物俳優が出演、中にはいつもと異なる悪役を演ずる人もいます。また、若手俳優の土屋太鳳さん、溝端淳平さん、小泉孝太郎さんもちょい役で出演しています。ラストにはある大物俳優も顔を出しています。 
アクアマン(31.2.8) 
監督  ジェームズ・ワン 
出演  ジェイソン・モモア  アンバー・ハード  ウィレム・デフォー  パトリック・ウィルソン  ドルフ・ラングレン  ニコール・キッドマン  ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世  ルディ・リン  テムエラ・モリソン  マイケル・ビーチ  ランドール・パーク  リー・ワネル  グレアム・マクタビッシュ 
 DCコミックスのヒーローで、2017年年公開の「ジャスティス・リーグ」にも登場していたアクアマンを主役にした作品です。
 灯台守のトムは、ある夜、浜辺に傷ついて打ち上げられていたアトランナを助ける。彼女はアトランティスの王女で、政略結婚を嫌って逃れてきたのだった。やがて、二人は愛し合うようになり、二人の間に息子が生まれ、アーサーと名付けられる。しかし、アトランナは彼女を連れ戻すために襲ってくる海底人から愛する夫と息子を守るために必ず帰ると言い残して海へと戻っていく。時が過ぎ、トムは毎日海辺に立ってアトランナが戻るのを待つ日々を過ごしていた。一方息子のアーサーは海底人のパルコによって鍛えられ、アクアマンとして海の平和を守る男となっていた。そんなとき、アーサーの異父弟であるオームが地上を支配しようと攻撃を仕掛けてくる・・・。
 とにかく内容が盛りだくさん。アクアマンの誕生秘話から、海底に沈んだアトランティス王国の末裔の海底人の王国間の争い、アトランティスの王が持つと言われる三叉槍・トライデントを探す旅、アクアマンを父の敵と付け狙う海賊のブラックマンタとの戦いなど、見どころいっぱいで観客を飽きさせません。最初はどうしてアーサーはアクアマンとなったのかが、わからないなあと思っていたのですが、現在の話と平行しながら過去の出来事を描き、その辺りのことを少しずつ説明していきます。ただ、最後までアーサーとパルコとの最初の出会いが描かれないので、どうしてアーサーは幼い頃からパルコによって戦い方を学んでいたのかがわかりませんでした。たぶん、上映時間の関係で編集されたのでしょうが、中途半端という嫌いがあります。
 アーサーことアクアマンを演じたのはジェイソン・モモア、アーサーと行動を共にする海底人の王女・メラはアンバー・ハードが演じましたが、何といっても印象に残るのは、アーサーの母、アトランナを演じたニコール・キッドマンです。さすがにあの歳で、若き頃の王女様は無理があるでしょうと思いましたが、元々背が高くてすらっとした体型なので、赤ちゃん抱いていても違和感なかったですねえ。そういう点で、一番目立つキャラでした。
 アーサーとメラのコンビがアトランティス王のトライデントを探す旅は、「インディ・ジョーンズシリーズ」か「ロマンシングストーンシリーズ」のような冒険活劇です。そんな宝探しやっているうちにオームが地上を攻撃してきたらどうするんだと思ったら、オームも律義にアーサーたちを探します。そして、そこにブラックマンタを投入です。
 ラストは海底人の種族が入り交じり、更には怪獣も登場して大バトル。その中で抱き合ってキスしている暇があるのか!と唖然とするシーンもあります。これだけ娯楽に徹した作品作りをしたのは「ワイルド・スピード」のジェームズ・ワン監督です。ストレス発散にはもってこいの映画です。 
ファースト・マン(31.2.8) 
監督  デイミアン・チャゼル        
出演  ライアン・ゴズリング  クレア・フォイ  ジェイソン・クラーク  カイル・チャンドラー  コリー・ストール  キアラン・ハインズ  パトリック・フュジット  ルーカス・ハース  イーサン・エンブリー  シェー・ウィガム  パブロ・シュレイバー  クリストファー・アボット  コリー・マイケル・スミス  オリビア・ハミルトン  クリス・スワンバーグ 
 「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督と主演のライアン・ゴズリングが再びタッグを組んで、人類初めての月着陸を成功させたアポロ11号の船長、ニール・アームストロングの人生を描いた作品です。
 月に初めて降り立った人類という称号を得ることはできましたが、幼い娘を脳腫瘍で亡くし、一緒に月着陸を目指した同僚を試験中の墜落事故や、船内の火事で失う中で、アームストロングはどんな思いを抱えて、月着陸への訓練に臨んでいたのでしょうか。また、彼を見守る家族の不安はどれほどのものがあったのでしょうか。子どもたちに月面着陸の危険を言うことができず、出発しようとするアームストロングに妻のジャネットがきちんと説明するよう迫るところは、アームストロング以上に毅然としていましたね。
 その妻・ジャネットを演じるのはクレア・フォイ。先月、彼女が主役のリスベット・サランデルを演じた「蜘蛛の巣を払う女」を見たばかりなので、今回の主婦役との落差に驚きます(気の強いところは同じですが)。
 アポロ11号が月着陸に成功したのは日本時間で1969年7月21日、まだ僕が小学生の頃でした。確か、担任の先生が気を利かしたのか、授業時間中に教室にある白黒テレビでアームストロング船長らが着陸船から降りて月面を歩く姿を見ていた記憶があります。アームストロングは地上との交信の中で、「これは1人の人間にとっては小さな1歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である。」という有名な言葉を生み出しました。しかし、1972年12月にアポロ計画が終了するまで12人の宇宙飛行士が月面に降り立ちましたが、それから46年間月に降り立った人はいません。さて、次はいつになることでしょう。 
半世紀(31.2.17) 
監督  阪本順治 
出演  稲垣吾郎  長谷川博己  池脇千鶴  渋川清彦  竹内郁子  石橋蓮司  小野武彦  堀部圭亮  杉田雷麟  菅原あき  牧口元美  信太昌之 
 生まれ育った町で父の跡を継いで備長炭作りをする紘は、いじめにあっている息子に興味を持たないと妻から非難され、息子との間もうまくいっていなかった。そんなある日、幼馴染の瑛介が自衛官を辞め家族とも別れて町に帰ってきて、母親が死んで以来廃屋になっていた家で生活を始める。紘と同じ幼馴染である中古車販売業を営む光彦は何くれとなく瑛介にお節介を焼くが、彼の心は開かれない・・・。
 公務員になってもらいたいという父親に反発して家業の製炭業を継いだが、経営がうまくいっていない紘。海外の紛争地帯に派遣されたことにより、心に傷を負った瑛介。そんな悩みを抱えた男たちの関わりが紘を中心にして描かれていきます。しかし、ラストは予想外。瑛介にいじめっ子との対応を習った紘の息子が、いじめっ子に立ち向かっていくところでは、これでうまくストーリーは収束するのかと思ったのですが、あんな終わり方とは想像もできませんでした。
 紘を演じたのは元スマップの稲垣吾郎さん。これまでの役柄といえば、ひょうひょうとしたどこか捉えどころのない男とか、気弱な男が多かったのですが、今回はちょっと違います。父親に反発して製炭業の後を継いだが、経営が上手くいかず、家庭内でも息子との会話もなく、もがく男を演じます。
 元自衛官の瑛介を演じるのは朝ドラで活躍中の長谷川博己さん。中古車屋の光彦を営むのは渋川清彦さん。彼のキャラがとっても素敵です。チャラチャラした男ですが、実は紘と瑛介のことを一番理解している同級生です。「ルーム・ロンダリング」でも同じようなキャラでしたが、こういうキャラが渋川さんには一番似合っている気がします。 
女王陛下のお気に入り(31.2.17) 
監督  ヨルゴス・ランティモス 
出演  オリビア・コールマン  エマ・ストーン  レイチェル・ワイズ  ニコラス・ホルト  ジョー・アルウィン  ジェームズ・スミス  マーク・ゲイティス  ジェニー・レインスフォード   
日本時間で2月25日に発表となるアカデミー賞作品賞ほか最多9部門(助演女優賞は二人)にノミネートされている作品です。
 舞台となるのは、アン女王の治世、フランスと戦っている18世紀のイングランドです。幼い頃からの友人であるサラに絶大な信頼を置いているアン女王は、女王となった今も身近にサラを置き、彼女の意見を聞いて政治を司っていた。ある日、絶大な権力を持っていたサラの元に、没落した貴族の娘である従姉妹のアビゲイルが仕事を得るためにやってくる。下働きとして王宮に雇われたアビゲイルだったが、持ち前の頭の良さで、侍女となり、女王にも気に入られていく。やがて、アビゲイルはサラを追い落とし、自らがサラの後釜に座ろうと画策を始める・・・。
 歴史的事実を描いているのですが、サラとアビゲイルの女の闘い、そして二人に振り回されるアン女王という三角関係が非常に興味深いです。権謀術数が渦巻く宮殿で、男たちはサラやアビゲイルという女性に操られるままというのも愉快です。男としてはもっとしっかりしろ!と、言いたくなります。いやぁ~、女の闘いは怖いです。第三者としてみれば、アン女王のことを思い、国のためを思って女王を操るサラの方が、自らの欲望のために女王を利用するアビゲイルよりましだと思うのですが、なかなか世の中うまくいかないようです。
 サラを演じるのがレイチェル・ワイズ、アビゲイルを演じるのがエマ・ストーンですが、アカデミー賞主演女優賞を受賞したことのある二人がこの作品では助演女優賞にノミネートされており、二人の受賞争いにも興味があるところです。アン女王を演じたオリヴィア・コールマンは主演女優賞にノミネートされていますが、思うにこちらが助演で、レイチェル・ワイズとエマ・ストーンの方が主演ではなかったのでしょうか。
 サラの夫・マールバラ伯の顔をどこかで見たことあるなあと思ったら、テレビ映画の「シャーロック」でホームズの兄を演じていた俳優さんですね。 
サムライマラソン(31.2.22) 
監督  バーナード・ローズ 
出演  佐藤健  小松菜奈  森山未來  染谷将太  青木崇高  竹中直人  豊川悦司  長谷川博己  門脇麦  筒井真理子  深水元基  カトウシンスケ  岩永ジョーイ  木幡竜  中川大志 
 江戸時代が終わる10数年前に現在の群馬県にあった安中藩で行われた“遠足(とおあし)”の裏で行われていた安中藩の存亡をかけた戦いを描きます。
 安中藩に藩士として仕える幕府の隠密である“草(くさ)”の家系である唐沢甚内は、ある日、藩主・板倉勝明の突然の藩士全員の呼び出しに、謀反の恐れがあると幕府に文を出してしまう。しかし、板倉が藩士を集めたのは藩士の肉体を鍛えるための“遠足”を行うため。唐沢は勘違いに気づき、急いで飛脚を追うが、間に合わず、文は幕府の家老・五百鬼のもとに届いてしまう。五百鬼は板倉を密かに殺害するため、刺客の“はやぶさ”を安中藩に送る。“遠足”が行われる中、安中藩は刺客の手から藩主・板倉を守ることができるのか・・・。
 物語は、勝者には何でも望みをかなえるという藩主のことばで、藩主の娘の雪姫と結婚したいと望む側用人の辻村平九郎、優勝候補で勝って侍になりたかったが、賭けの元締めから負けるよう言われ金を受け取ってしまった足軽の上杉広之進、藩主に引退を進められたがまだやれるということを示したい栗田又衛門、亡くなった父の跡を継いで立派な藩士になることを誓う少年の福本伊助、好きな娘から一番になってと言われて頑張る柿崎数馬、江戸に行くために関所を抜ける口実として男に扮して参加する雪姫、そして江戸から来る刺客を身をもって止めようとする唐沢甚内など、それぞれの思惑を抱えて“遠足”は始まります。
 藩主の意向をはっきり確かめもせずに、謀反ありとして幕府に連絡してしまうという、はっきり言えば粗忽者の“草”のせいで、起こった騒ぎを描いたものです。“草”の唐沢甚内を演じたのは佐藤健くんですが、あんな思い込みをするなんて、隠密としては失格です。彼のせいで命を落とした藩士たちはあまりにかわいそうです。彼より、側用人としての面目と姫と結婚したいという欲でなりふり構わずズルをして一番になろうとする辻村が人間らしいです。前半は大いに笑わせてくれますが、後半、刺客との戦いでは様相が一変するのもかっこいいですね。笑わせてくれるといえば、栗田又衛門を演じた竹中直人さん。そこに存在すること自体で笑ってしまいます。
 よくわからなかったのは刺客の頭領である“はやぶさ”のことです。安中藩出身ということですが、その出自がはっきり描かれていません。藩主の板倉とも旧知の仲のようですが、いったいどういう関係だったのでしょうか。何も描かれないので(それとも、その部分を眠っていて見逃したか?)消化不良です。
 あれ、ところで優勝は誰だったのでしょう? 
母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。(31.2.22) 
監督  大森立嗣 
出演  安田顕  倍賞美津子  松下奈緒  村上淳  石橋蓮司 
 宮川サトシさんによる自伝漫画が原作です。ショッキングな題名ですが、内容は母と息子の物語です。
 友人の経営する塾で講師をしながら漫画家になることを夢見るサトシ。母が大好きな甘えん坊で、中学生の頃、白血病となって兄からの骨髄移植で命を長らえたという過去を持ちます。物語はサトシの幼い頃から、母が癌となって入院生活を送る中での母子の関係、そして母が亡くなったその後のサトシの姿を描いていきます。
 主人公・サトシのマザコンぶりには、ちょっとついていけないなぁという気はしますが、30代の息子の帰りを寝ずに待っているという母親の気持ちは、同じ子を持つ親としてよくわかります。親にとっては子どもはいつまでも幼いままなんですよねえ。子離れしないといけないのは重々承知していますが、なかなかその気にはなれないものです。この映画は、どうしても母の側から見てしまいます。
 サトシを演じるのは安田顕さん。あの濃いいかつい顔とマザコンぶりのギャップが笑わせます。母親役は倍賞美津子さん。もう年齢は70歳を超えているのに、全力で走る姿を見せてくれます。母が亡くなった後に登場してくるサトシの兄の個性が強烈です。母が死んで打ちひしがれる父とサトシを叱咤する様子がある意味感動です。演じるのは村上淳さん。あの村上虹郎さんのお父さんですね。 
アリータ バトル・エンジェル(31.2.23) 
監督  ロバート・ロドリゲス   
出演  ローサ・サラザール  クリフトフ・ヴァルツ  ジェニファー・コネリー  マハーシャラ・アリ  キーアン・ジョンソン  エド・スクレイン  ジャッキー・アール・ヘイリー  エイサ・ゴンザレス  エドワード・ノートン 
 日本の漫画家・木城ゆきとさんの「銃夢」の映画化です。元々はジェームズ・キャメロンが映画化権を取得したようですが、なにせ「アバター」の続編製作で忙しいですから、自らはメガフォンを取らずにロバート・ロドリゲスに監督を任せています。
 地球と火星連邦共和国(URM)の間で繰り広げられた戦争が終わって300年が経ち、地球は空に浮かぶ支配層が住む空中都市“ザレム”とザレムから排出された廃棄物が積み上がる地上の町"アイアンシティ"とに二分されており、地上の人がザレムに行く方法は、“モーター・ボール”というゲームでチャンピオンになることだけと言われていた。ある日、廃棄物の鉄くずの山の中に300年前のサイボーグの頭部を見つけたサイバー医師のイドは、脳が生きていることに気づき、持ち帰って昔身体が不自由だった娘のために作ったボディを頭部にセットする。アリータと名付けられた少女は、町に出て、ヒューゴという少年と出会い様々な経験をしていく。
 登場人物のうち、アリータはCGの造型であり、その動きはローサ・サラザール(「メイズ・ランナー」にでていた人ですね。)という女優さんの動きをモーション・キャプチャーによるCGで描いています。目だけは少女漫画のように大きな目をしているのが、他の人間たちと比べて違和感がありますが、皮膚の感じなどは見た感じでは人間そのものの質感です。いやぁ~技術って凄いですねえ。
 やがて、アリータが火星連邦共和国のサイボーグで、その戦闘能力がものすごいことがモーター・ボールの中で明らかになっていき、蘇る記憶の中でアリータは敵はザレムの指導者・ノヴァであることを知ります。このノヴァを演じているのはエドワード・ノートン。ラストでサングラスをとってようやくその正体が明らかとなりましたが、タイトル・ロールにも名前が載っていないカメオ出演です。とはいえ、今回のラストではストーリーは尻切れトンボですから、続編を製作して欲しいですよねえ。そのときには、ノヴァがアリータの真の敵として改めて登場してくるのでしょう。
 ノヴァの部下であり、モーター・ボールの支配者であるベクターを演じるのはマハーシャラ・アリ。今回のアカデミー賞で「グリーンブック」で見事に助演男優賞に輝きました。

 ※劇中で描かれるモーター・ボールというゲームは僕らの年代の人は昔人気のあったローラー・ゲームを思い起こすのではないでしょうか。 
フォルトナの瞳(31.2.15)  
監督  三木孝浩 
出演  神木隆之介  有村架純  志尊淳  DAIGO  松井愛莉  北村有起哉  斉藤由貴  時任三郎   
 百田尚樹さん原作の同名小説の映画化です。死ぬ直前の人がわかる能力を持った主人公が自分の恋人が死ぬ運命にあることを知り、どうにか運命を変えようともがく姿を描くラブ・ストーリーです。失礼ながら、あの百田さんが書いたものとは思えません。
 木山慎一郎は幼い頃、飛行機の墜落事故で両親を失って天涯孤独の身となり、今は自動車修理工場で働いていた。ある日、すれ違った男の姿が透き通っていることに不審を抱いた慎一郎が男の後を追うと、その男は自動車にはねられて死んでしまう。自分に死ぬ直前の人がわかる能力があると知った慎一郎は、携帯電話の修理に出かけたショップの女性店員・桐生葵の姿が透けていることに気づき、彼女の仕事が終わったあとに、彼女を呼び出す。しかし、彼女が来た時には彼女の姿は元に戻っていた。翌日、昨夜慎一郎が葵を呼びださなければ、彼女は通勤途上で起こった爆発事故に巻き込まれていたことがわかる。やがて、二人は交際を始め、慎一郎は葵との結婚を考えるようになるが、そんなとき、慎一郎は葵の姿が透けていることに気づく・・・。
 死ぬ運命にある人の運命を変えようとすると、自分の命を縮めるという副作用(?)があることを知ってもなお、他人の命を救おうとする慎一郎の姿を描いていきます。ラストであんなどんでん返しがあるとは予想できませんでした。子どもの頃の飛行機事故での少女を救えなかったというトラウマが、実は大きな伏線になっているとは。
 木山慎一郎を演じるのは神木隆之介くん。ちょっと気弱だけど、自分より他人のことを思う慎一郎の役がピッタリです。 
グリーンブック(31.3.1) 
監督  ピーター・ファレリー 
出演  ヴィゴ・モーテンセン  アハーシャラ・アリ  リンダ・カーデリーニ 
 先日発表された第91回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚本賞の3部門を受賞した作品です。1960年代、まだまだ人種差別が厳しかった時代に、アメリカ南部を演奏旅行で回る黒人ピアニスト、ドン・シャーリーと、彼の運転手役に雇われた白人、トニー・“リップ”・バレロンガとの間にやがて生まれてくる友情を描きます。実話が基になった作品です。
 作品賞という栄誉に輝いた半面、一部にはこの作品に対する批判的な批評もあるようです。それは、トニー・リップの役柄が「黒人を差別から救う救済者」として誇張された伝統的すぎるキャラクターだったことがその理由の一つとして挙げられます。確かに、トニー・リップは当初は黒人作業員が水を飲んだコップをごみ箱に捨てるという典型的な差別主義者でしたが、やがてシャーリーを理解し、彼を差別する者から彼を守っていくようになります。いわゆる“かっこいい”役柄ですが、これも白人目線から描いていると言われてしまうのでしょうか。僕などは、見終わった後に本当にいい映画だったなぁとしみじみ思ってしまったのですが・・・。人種差別の問題って奥深いものがあって難しいですよね。
 題名になっている“グリーンブック”というのは、黒人が旅行する時に利用できる宿や店、黒人の日没後の外出を禁止する、いわゆる「サンダウン・タウン」などの情報がまとめてあり、彼らが差別、暴力を避け、車で移動するために欠かせない黒人専用のガイドブックだそうです。 
九月の恋と出会うまで(31.3.1) 
監督  山本透   
出演  川口春奈  高橋一生  ミッキー・カーチス  川栄李奈  浜野謙太  中村優子  古舘佑太郞 
 松尾由美さん原作の同名小説の映画化です。原作は発売直後に読んでいましたが、内容はすっかり忘れていたため、まっさらな状態で観ることができました。
 旅行会社のOLである北村志織は、チェロ奏者や女優などの芸術家と言われる人たちが住むアパートへ引っ越してくる。ある夜、部屋でくつろいでいると、エアコンを設置するための管の孔から彼女を呼ぶ声を聞く。その声は同じアパートに住む平野と名乗り、1年後の未来から話しかけていると言い、今の自分を尾行してもらいたいと唐突に依頼する。最初は信じない志織だったが、彼が未来の出来事をピタリと当てたことから、彼の依頼を受けて尾行を開始する。何日かして、今日が最後で終わったら事情を説明すると言われた志織は風邪で具合が悪いのを我慢して尾行をしたが、帰宅した志織が目にしたのは空き巣によって荒らされた部屋だった。その後、犯人が逮捕されたが、犯人は空き巣に入った部屋で殺人を犯しており、部屋にいたら命が危なかったと考えられた。事情の説明があるはずだったのに、事件があった日以降、未来からの声は途絶えてしまう。思い切って平野に事情を話すと、SF好きだという平野は、声の主は志織が殺害されるのを防ぐために自分を尾行させて強盗が入る時間に部屋にいないようにしていたのではないかと言う。更に、過去が変わったことにより、このままだとタイムパラドックが起き、志織の存在が消えてしまう可能性があると言い、1年後にどうにかして声の主に同じことをしてもらうようアドバイスする・・・。
 エアコンの管の穴を通して過去と未来が繋がるという変則的なタイムトラベルものです。平野により、タイムトラベルの時に問題となるタイムパラドックスのパターンが説明されますが、説明を聞いてもやはりややこしいです。それにしても、いつの間に、未来からの声が平野ではないと二人とも思いこむようになったのでしょう。声が違うみたいと言いますが、どう聞いても平野の声でしょう。そこで変な思い込みをするから、話がややこしくなってしまうのですね。
 志織を演じるのは川口春奈さん。最近トーク番組でいわゆる“困ったちゃん”ぽい発言をして驚かれていますが、目が印象的な綺麗な女優さんです。彼女の綺麗さが前面に出た映画ですね。平野を演じるのは高橋一生さん。人付き合いが苦手でちょっとオタクっぽい今回の役には個人的にはいま一つという感じがします。 
移動都市(31.3.2)
監督  クリスチャン・リヴァーズ 
出演  ヘラ・ヒルマー  ロバート・シーアン  ヒューゴ・ウィーヴィング  ジヘ  ローナン・ラフテリー  レイラ・ジョージ  パトリック・マラハイド  ッスティーヴン・ラング 
 60分戦争により地球の文明が滅亡してから1000年が過ぎ、人々は移動する都市に住み、大きな都市は小さな都市を襲いその資源を奪い、住民を奴隷化する弱肉強食の世界に生きていた。移動都市の中で最強の都市が市長・マグナスの元、考古学者のサディアス・ヴァレンタインに率いられたロンドンであり、今日も小さな都市を捕獲して、その資源を奪い取っていた。捕獲された都市の住民の中に潜んでいた少女はヴァレンタインに襲い掛かるが、彼の娘に恋する歴史家見習いのトム・ナッツワーシーに襲撃を邪魔される。逃げる少女の後を追うトムに少女は、ヘスター・ショーに何をしたかヴァレンタインに聞いてみろと言い残してダストシュートから外へ脱出する。トムはあとからやってきたヴァレンタインに少女の言葉を伝えるが、その途端、彼はヴァレンタインによってダストシュートに突き落とされる・・・。
 物語は移動都市ロンドンと、巨大な壁を築いて移動都市の侵入を防いでいる反移動都市同盟との戦いが描かれていきます。雰囲気的には宮崎駿監督の作品に似ています、移動都市は「ハウルの動く城」で、反移動都市同盟のアナ・ファンの乗る赤い飛行船は「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」の世界を思い浮かべさせてくれます。
 一番印象的なキャラが、ヘスター・ショーを殺害するためにヴァレンタインによって監獄から出されたストーカーです。鋼鉄の身体を持ち、自分が育て、自分と同じように鋼鉄の身体になる約束だったのに、その直前に自分の元から逃げ出した(これは母親を殺したヴァレンタインに復讐するためという理由があったのですが)ショーを憎むのですが、未だに人間だった頃の息子との写真を持っているところが泣かせます。雰囲気的にはターミネーターですが、彼の最後は「天空の城ラピュタ」のロボット兵のようです。
 美術館の中に保管される昔のアメリカの神の像だというのが、なんと、“ミニオン”だったのには思わず笑ってしまいます。 
ギルティ(31.3.9) 
監督  グスタフ・モーラー 
出演  ヤコブ・セーダーグレン  イェシカ・ディナウエ  ヨハン・オルセン  オマール・シャガウィー  
 デンマーク映画です。普通だったらデンマーク映画というだけで観ることはないと思うのですが、ネットで“「カメラを止めるな!」以上のおもしろさ”等々の感想を読んで、これは観てみたいと、東京に行ったついでに観てきました。上映の館内は若者(意外に女性が多かったです。)から僕のような年配者まで種々雑多な客で満席。僕同様にネットでの評判や口コミで観に来た人が多いのでしょうか。
 アスガー・ホルムは外勤の警察官だったが、ある事件により今は謹慎中。明日の裁判を控え、今夜は緊急通報指令室で緊急電話のオペレーターをしていた。そんな彼の元に、イーベンという女性から誘拐されたとの電話が入る。アスガーは電話から聞こえる声や物音だけをヒントに誘拐事件を解決しようとするが・・・。
 作品の舞台は緊急通報指令室の中だけ。登場人物もアスガー以外はそこに勤務する数人が姿を見せるだけです。映画はアスガーと電話の相手(イーベンやその夫、幼い子供、アスガーの相棒等)との会話で進んでいきます。その会話の内容により、観客はそれぞれの頭の中でスクリーンの向こうにある指令室の外で起こっている場面を思い描くこととなります。
 アスガーが何らかの事件に関わり、そのことで外勤の警察官の業務を外されているところがミソ。明日が裁判の予定で、相棒の証言で無罪になるらしいというところが、次第にわかってきます。イーベンを助けようとアスガーが一人で突っ走るところに、裁判になっている事件が彼のキャラから起きたものだということが想像できてきます。
 そしてラストでの見事などんでん返し。電話のシーンだけで、観客にどんでん返しを仕掛けるとは。いやぁ~やられました。ハリウッドでのリメイクが決まったようですが、さて、どんでん返しがわかっているオリジナルを観た観客にハリウッドはどう罠を仕掛けるのかも興味あります。
 最後のシーンで、アスガーは誰かに電話をかけますが、それは彼の事件を取材する新聞記者だったのか、それとも妻だったのか・・・。 
キャプテン・マーベル(31.3.15) 
監督  アンナ・ボーデン 
出演  ブリー・ラーソン  サミュエル・L・ジャクソン  ジュード・ロウ  ベン・メンゼルスゾーン  ジャイモン・フンスー  リー・ペイス  ラシャナ・リンチ  ジェンマ・チャン  アネット・ベニング  クラーク・グレッグ   
 アベンジャーズ結成前の時代を舞台にした物語です。マーベルコミックのヒーロー(ヒロインか)の中でも一番強大な力を持つと思われる“キャプテン・マーベル”の登場です。
 クリー人のエリート特殊部隊"スターフォース"に所属するヴァースは宿敵スクラル人に捕らえられた仲間を救出するため赴いたトルファでの戦いで捕らえられ、記憶を探られる。それにより、記憶の奥底から彼女に身に覚えのない惑星C-53(地球)にいる幼い頃の記憶と女性の姿が蘇る。スクラル人から逃れたヴァースは地球へとたどり着き、そこで出会った若きニック・フューリーとともに、記憶の中の女性を探してアメリカ空軍基地へ向かう。やがて、ヴァースは自分が地球人のキャロル・ダンヴァースという空軍パイロットで、記憶の中の女性は事故で死んだ研究者のローソン博士であったことを知る・・・。
 キャプテン・マーベルを演じるのは「ルーム」でアカデミー賞主演女優賞を受賞したブリー・ラーソンです。女性のヒーローとしては、肉体的にかなり逞しいアンジェリーナ・ジョリーや対照的にあまりにスレンダーなミラ・ジョコヴィッチが思い浮かびますが、彼女らとはちょっとまた印象が異なります。
 「アベンジャーズ」生みの親、ニック・フューリーが登場します。25年前のニック・フューリーにはまだ両目が健在です。現在のアイ・パッチになった原因が本作で描かれますが、まさかあんなことだったとは・・・。今回、演じるサミュエル・L・ジャクソンはデジタル処理によって25歳分若返った姿を見せてくれます。後にシールドのエージェントとして活躍するフィル・コールソンも若手として登場します。彼を演じるクラーク・グレッグも同様にデジタル処理で若返っています。メーキャップせずに若返るんですから、凄い時代ですよねえ。
 「アベンジャーズ インフィニティウォー」のエンドクレジットでニック・フューリーが残したものがこの作品で「そういうことだったのかぁ!」とわかり、更に4月に公開されるアベンジャーズシリーズ最終作「アベンジャーズ エンドゲーム」へと繋がっていきます。そういう点では、「アベンジャーズ エンドゲーム」公開前にこの作品を観ている必要があります。 
運び屋(31.3.16) 
監督  クリント・イーストウッド 
出演  クリント・イーストウッド  ブラッドリー・クーパー  ローレンス・フィッシュバーン  マイケル・ペーニャ  ダイアン・ウィースト  アンディ・ガルシア  イグナシオ・セリッチオ  アリソン・イーストウッド  タイッサ・ファーミガ 
 アール・ストーンはデイリリーを栽培する園芸家。品評会で賞を取ることが生きがいで、娘の結婚式もすっぽかして品評会に参加し、受賞パーティーで酒をみんなに振る舞ってごきげんという家庭のことはまったく顧みない男。しかし、彼のやり方は時代に乗り遅れ、事業は破産し、屋敷も売りに出されてしまう。彼に残ったのは古いピックアップトラックのみ。そんな彼に荷物を町から町に運ぶだけという仕事が舞い込んでくる。約束通り運ぶと大金が支払われ、アールは何度か荷物を運ぶが、ある日、荷物のバックの中身を見たアールは、自分が運んでいた物が麻薬であることを知る。しかし、アールは運び屋を止めることなく、礼金目当てに麻薬を運び続ける。麻薬取締局も運び屋の存在を知るが、老齢故、アールは疑われることなく、運び屋を続け、ついには麻薬カルテルのボスから自宅に招かれる・・・。
 実話をベースにした作品です。撮影当時87歳になるクリント・イーストウッドの最後の監督・主演作と言われる作品です。80歳代で麻薬の運び屋になった男の話ですから、年齢的にイーストウッドにピッタリです。さすがに、かつての「ダーティー・ハリー」の時のような長身でスラっとした立ち姿とは言えず、背中も幾分丸みを帯びた、すっかり歳を感じさせる風貌となりました。きびきびとした動きはもうできませんが、年齢を刻んだ味わいのある演技を見せてくれます。
 運び屋を逮捕しようとする麻薬取締局のコリン・ベイツ捜査官を演じたのは、イーストウッド監督作品の「アメリカン・スナイパー」で主人公を演じたブラッドリー・クーパーです。先の「アリー」では監督やったり、歌を歌ったりとこのところ大活躍です(近々公開の「アベンジャーズ エンドゲーム」では、ロケットの声をやっていますしね。)。
 アールの妻を演じたのはダイアン・ウィースト。ウディ・アレン監督作品には欠かせない女優さんでしたが、久しぶりに観ると、やっぱり歳を取りましたねえ。 
シンプル・フェイバー(31.3.20) 
監督  ポール・フェイグ 
出演  アナ・ケンドリック  ブレイク・ライブリー  ヘンリー・ゴールディング  リンダ・カーデリニ  ジーン・スマート  ルパート・フレンド  アンドリュー・ラネルズ 
 ステファニー・スマザースは夫を交通事故で亡くし、その保険金で一人息子のマイルズを育てる傍ら、家事や育児の問題を扱ったブログを運営していた。ある日、ステファニーは息子の友達であるニッキーの母、エミリー・ネルソンと知り合う。アパレル会社で広告部長を務め、洗練されたファッションに身を包み、豪勢な家に住んでいるエミリーとは生活レベルをまったく異にしていたが、二人は気が合い、酒を交わしながらお互いの秘密を告白するようになる。そんなある日、エミリーはステファニーから、出張先にいて息子を迎えに行けないので迎えに行ってほしいと頼まれ、自分の家に連れてきたが、その日以来エミリーと連絡がつかなくなってしまう。ブログでエミリーの行方探しを呼び掛けたステファニーの元へ 「エミリーをミシガン州で目撃した」との連絡が入り、やがてエミリーが借りたレンタカーが発見され、現地の警察が付近を捜索したところ、湖でエミリーの溺死体が発見される・・・。
 ファム・ファタールの女に翻弄される世間知らずの女の話かと思いましたが、アナ・ケンドリック演じるこの世間知らずの女性が愚かな女かと思えばそんなことはなく、お節介で行動的という位置づけで、それが読者の予想をいろいろと覆してくれます。ステファニーはかつて夫と義兄を交通事故で亡くして高額の保険金を得ており、また、エミリーが湖で死体となって見つかってからは、彼女の夫・ショーンと同棲を始めるなど、ちょっと怪しい部分も見せます。ショーンもエミリーに高額の保険金を掛けるし、勤務する大学の職員とはいい仲の様子が描かれるしで、こちらも何か怪しげです。更には、死んだはずのエミリーの影がステファニーの周囲にちらほらするなど、いったい誰がワルなのか、観客を翻弄します。
 観客をミスリードする伏線もあちこちに仕掛けられていて、意外におもしろく観ることができました。拾いものの佳作。 
ビリーブ 未来への大逆転(31.3.22) 
監督  ミミ・レダー 
出演  フェリシティ・ジョーンズ  アーミー・ハマー  ジャスティン・セロー  キャシー・ベイツ  サム・ウォーターストン  スティーヴン・ルート  ジャック・レイナー  ケイリー・スピーニー 
 ハーバード大学法科大学院に入学したルースは同じ法学部で学ぶ夫・マーティンとともに弁護士を目指していたが、マーティンが精巣ガンになってからは子育てをしながら療養中の彼のために彼の授業も受けて、その内容を教授するなどハードな生活を送っていた。マーティンが奇跡的に回復してニューヨークで弁護士事務所に勤めたため、彼女もコロンビア大学へ移り、首席で卒業したが、女性である彼女を受け入れてくれる弁護士事務所はなく、仕方なく大学の教授となる。そんな生活の中で、ルースはマーティンから親を介護する男性が介護にかかる税控除を女性のようには受けられないことを聞き、その男性の弁護士に就任して法律に存在する男女差別の撤廃を訴えて国を相手取って訴訟を提起する・・・。
 この作品は、1970年代、女性が自分ではカードを作ることもできなかった時代に、法律が男女差別で憲法違反だとして裁判に訴えて勝利した女性弁護士を描きます。アメリカは自由と平等の国と言われますが、未だに人種差別があるように、当時は男女の差別もそこかしこにあったようです。実話に基づいた話で、主人公の女性、ルース・ベイダー・ギンズバーグは今では最高裁判所の判事を務めているそうですから凄い人ですよねえ。
 女性は家庭で良き妻であれなんて、いつの時代の話だと思ったのですが、これがまだ1970年代のアメリカのことだというのですから、驚きです。そんな時代の仕組みに反発して立ち上がったルースも立派ですが、ルースが思うように行動できたのはマーティンという当時の男性らしくない柔軟な頭脳の持ち主だった夫がいたからというのも大きいでしょう。彼のアドバイスや心の支えがなければ、訴訟は継続できなかったでしょうね。 
ハロウィン(31.4.12) 
監督  デヴィッド・ゴードン・グリーン 
出演  ジェイミー・リー・カーチス  ジュディ・グリア  アンディ・マティチャック  ウィル・パットン  ヴァージニア・ガードナー  ニック・キャッスル 
 若き頃、“ブギーマン”と戦ったローリーも、すっかり、老年期に達していたが、今でも人里離れた家で“ブギーマン”が再び彼女を襲いに来るのを待ち受けていた。一方、精神病院に収容されていた“ブギーマン”ことマイケル・マイヤーズは、転院の途中脱走して姿を消す。それを知ったローリーは娘と孫に警告を与え、彼を待ち受ける。奇しくも町はハロウィンの夜。殺人を犯しながら、“ブギーマン”はローリーの元へとやってくる・・・。
 1978年に第1作目が公開され、その後8作が製作されたシリーズの最新作です。
 とはいっても、僕自身は1作目はおろか今までシリーズのどの作品も観たことはありませんでした。この映画を知っているのは、テレビや雑誌のホラー映画特集で必ず名前が出てくる殺人鬼の“ブギーマン”ことマイケル・マイヤーズの、ツナギを着て、顔にはハロウィンのおどろおどろしいマスクをかぶったその姿の強烈さからです。“ブギーマン”と呼ばれるそのキャラは、「13日の金曜日」の“ジェイソン”と並んで有名ですよね。
 今回は第1作から40年後が描かれますが、シリーズ第1、2、7、8でブギーマンに狙われるローリー役で出演していた“絶叫クイーン”のジェイミー・リー・カーチスが再び出演しています。僕としては「大逆転」に出演していた女優さんということで印象に残っているのですが。さすがに老けましたねえ。お互い様で仕方ありませんが。
 これまでの“ブギーマン”はもちろん、“ジェイソン”にしても、こうしたホラー映画の怪物は死んだようで死んでいないのがいつものこと。果たして“ブギーマン”はどうなったのか・・・。 
マローボーン家の掟(31.4.13) 
監督  セルヒオ・G・サンチェス 
出演  ジョージ・マッケイ  アニャ・テイラー=ジョイ  チャーリー・ヒートン  ミア・ゴス  マシュー・スタッグ  カイル・ソラー  ニコラ・ハリソン  トム・フィッシャー 
(ホラーですが、いろいろな仕掛けもあるので、観ていない人は何も知らずに観た方がいいです。)
 逮捕された殺人鬼の父から逃れてイギリスからアメリカにやってきたマローボーン家の母と4人の子ども。彼らは人里離れた家でひっそりと隠れ住んでいたが、心労から母が亡くなってしまう。母の死を隠して子ども4人で暮らしていたところに、一発の銃声が鳴る。窓の外を見ると、そこには脱獄した父の姿が・・・。
 父に彼らの居場所が見つかった後に場面転換があるので、観客としては「えっ?どうなったの?」と思うのですが、その後に描写される様々なシーンによってその結果を想像することになります。しかし、うまく騙されましたねえ。終わってみれば、同じトリックの作品はほかにもあることがわかりますが、二重、三重に観客をミスリードしていくので、伏線も張られていたのに、謎が明らかになるまで、そのトリックに気づくことができませんでした。
 マローボーン家の長男が恋する図書館で働く女性・アリーを演じるのは、「スプリット」に出演していたアニャ・テイラー=ジョイです。「スプリット」でもジェームズ・マカボイ演じる多重人格の男相手に果敢に戦いましたが、今回も頑張ります。
 東京に行ったついでに時間調整で観た作品でしたが、なかなか拾い物の佳作といっていい作品でした。 
ハンターキラー(31.4.13) 
監督  ドノヴァン・マーシュ 
出演  ジェラルド・バトラー  ゲイリー・オールドマン  コモン  リンダ・カーデリーニ  トビー・スティーヴンス  ミカエル・ニクヴィスト 
 ロシアの原潜を追尾していたアメリカの原潜がロシア沖で消息を絶つ。捜索に向かった新任のジョー・グラスを艦長とする原潜アーカンソーは海底で撃沈されたアメリカ原潜とともに沈没しているロシアの原潜を発見し、生存していた艦長ら乗組員を救助する。そのとき、ロシアでは国防大臣が大統領を幽閉し、クーデターを起こしていた。国防大臣は大統領の名の下、アメリカに対して戦争を仕掛けようとする。異変を知ったアメリカ政府は特殊部隊によって大統領を奪還するとともに、アーカンソーにより救助する作戦を実行する・・・。
 ソ連が崩壊してからはアメリカの敵となるのはイスラム過激派など種々雑多になりましたが、今回は久しぶりにソ連崩壊後のロシアです。クーデターで幽閉されたロシア大統領をアメリカの特殊部隊、それもわずか4人で救出に向かうなんて、荒唐無稽の話ではありますが、ストーリー展開がテンポが良く、スクリーンから目が離せません。意外に面白いです。特殊部隊が簡単にロシア領にパラシュートで降下できたり、領海内のことを知るロシアの艦長が乗っていたにしろ軍港の中まで潜水艦が入っていくことができるなんて、もし本当にできたらロシアの防衛力はないにも等しいですけど、その点はあまり深く考えずに観た方が楽しむことができます。
 とにかく、二人の人物、アーカンソーの艦長のジョー・グラスと特殊部隊隊長のビル・ビーマンがかっこよすぎです。ジョー・グラスがロシア軍のミサイルの攻撃に対し、あること(ネタバレになるので伏せます。)が起きることを信じて迎撃しなかったり、ビル・ビーマンが取り残された部下を助けに一人でロシア領内にもどったりと、あり得ないだろうと思いながらも、手に汗握ってしまいました。そうして、もう一人。開戦を主張する参謀本部議長に対し、戦争回避の可能性を少しでも探ろうとする海軍少尉のジョン・フィスクも、なかなかいいです(ちなみに演じた人は、ラッパーのコモン。歌手ですが「グローリー」など映画出演も多いですね。)。実際に世界大戦の危機になったら、参謀本部議長のような判断の方が正しいのかもしれませんけど。
 とにかく、上映時間122分があっという間です。 
クロノス・ジョウンターの伝説(31.4.26) 
監督  蜂須賀健太郎 
出演  下野紘  井桁弘恵  赤山健太  尾崎右宗  寺浦麻貴  五十嵐健人  岩戸秀年  五頭岳夫  野間清史 
 梶尾真治さん原作の同名小説の中の「吹原和彦の軌跡」の映画化です。
 住島重工の開発部門Pフレックスに勤める研究員である吹原和彦は、会社へ行く途中にある花屋で働く・蕗来美子に密かに惹かれていた。ある日、入院している同僚へのお見舞いに来美子の店で花を購入してから、次第に二人は関係を深めていく。二人で食事に行くことを約束した日、彼女の店の前でタンクローリー同士が衝突して大火災となり、彼女は巻き込まれて焼死してしまう。吹原は会社で実験しているタイムマシン、「クロノス・ジョウンター」を使って、事故の起きる時間より前に過去を遡って来美子を助けようとする。しかし、時の力は吹原が来美子を助けることを容易に許さなかった・・・。
 この作品は、個人的には梶尾さんの原作を読む前にキャラメルボックスの舞台「クロノス」で知りました。舞台を観た時には、好きな女性を助けるために何度も過去に飛び、そして過去に飛ぶことの反動で、好きな女性を助けることができても彼女と二度と会うことができないことを知りながら、クロノス・ジョウンターで過去に戻る吹原の行動に涙を禁じ得ませんでした。
 そんな感動作が今回映画化されると知って観に行ったのですが、正直なところ舞台のような感動は得られませんでした。今回、吹原を演じた下野紘さんは僕個人は知らなかったのですが、有名な声優さんだそうです。確かに声は声優さんらしいなと思うのですが、どうも演技がギクシャクとしてスムーズに普通の動きができていません。来美子の無事を祈って走るシーンなど、特に、あんな走り方するのかなあと違和感を覚えてしまいました。そんなわけで、映画の中にのめり込むことができませんでした。残念・・・。 
アベンジャーズ エンドゲーム(31.4.30)
監督  アンソニー・ルッソ ジョー・ルッソ
出演  ロバート・ダウニー・Jr  クリス・エバンス  マーク・ラファロ  クリス・ヘムズワース  スカーレット・ヨハンソン  ジェレミー・レナー  ドン・チードル  ポール・ラッド  ブリー・ラーソン  カレン・ギラン  ダナイ・グリラ  ベネディクト・カンバーバッチ  ベネディクト・ウォン  ジョン・ファブロー  グウィネス・パルトロウ  ジョシュ・ブローリン  
 “アベンジャーズ”としてヒーローたちが集まる最後の作品になります。
 前作でサノスにより人口の半分が消滅してしまった地球で、残ったキャプテン・アメリカらはサノスの行方を捜し出し、彼を倒すが、すでに6つのストーンは消え去っていた。一方、宇宙空間を漂っていたトニー・スタークはキャプテン・マーベルによって助けられ、地球へと帰ってくる。スタークはタイムトラベルの理論を完成させ、過去に行って6つのストーンを手に入れ、サノスとは逆に消滅した人々をもとに戻そうと考え、過去に飛ぶ。大きな犠牲を払って6つのストーンを手に入れたスタークらだったが、過去の時点のサノスはこれを知り、スタークらのタイムトラベルの機械を利用して現在へとやってきて、アベンジャーズに襲い掛かる・・・。
 キャプテン・マーベルが途中理由をつけて戦線を離脱していますが、彼女が最初からいれば、サノスだって簡単に倒せそうです。それだと面白くないので、途中いなくなったのでしょうかねえ。今回はシリーズ最後ということで、ヒーローたちが総出演。前作のラストで消滅してしまったヒーローたちも再登場、更には前作には登場しなかったホークアイとアントマンが重要な役どころで登場しています。ラストを飾る賑やかさですね。
 アイアンマン役のロバート・ダウニー・Jrがこれ以上アイアンマン役のイメージが固定することを嫌ったためか、アベンジャーズの解散が決まったようですが、すでに公開が決まっているスパイダーマンを始め、それぞれ単独で映画化が続くヒーローはいるようです。しかし、今回のこの結末では、“アイアンマン”“キャプテン・アメリカ”はもう退場です。同様に退場かなと思うスカーレット・ヨハンソンが演じる“ブラック・ウィドー”ですが、流れてくる噂では流動的です。一方“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー”や“ソー”はまだ続編が製作されそうな雰囲気だと思ったら、“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー”は新作が2020年に製作が決まったようです。
キングダム(1.5.1) 
監督  佐藤信介 
出演  山﨑賢人  吉沢亮  長澤まさみ  橋本環奈  本郷奏多  満島真之介  高嶋政宏  大沢たかお  要潤  石橋蓮司  加藤雅也  宇梶剛士  橋本じゅん  阿部進之介  坂口拓  深水元基  六平直政  一ノ瀬ワタル    
 原泰久さんの同名漫画を原作にした作品です。
 舞台は紀元前245年の中国の春秋戦国時代。戦争孤児で人買いによって農家に売られた信と標は二人で剣術の練習をしながら、この騒乱の世でいつかは剣で身をたてたいと夢見ていた。そんなある日、標は二人の剣術練習をたまたま見た王の臣下である昌文君に取り立てられ王宮へと向かう。しかし、暫くした頃、虫の息で信の元に戻った標は信にあるところに行けと言って息絶える。信が向かった先には弟のクーデターで王座を追われた標と瓜二つの秦王・嬴(エイ)政がいた。嬴(エイ)政は王座を奪還するために、山の民の王である楊端和に助力を求めようと楊のもとに赴く・・・。
 嬴(エイ)政は後の秦の始皇帝です。高貴な家の出身である母を持ち、庶民出身の母を持つ兄が王の座に座ることに我慢ならない弟の起こしたクーデターに対し、少ない人数で戦いを挑む嬴(エイ)政と信の姿を描いていきます。
 原作の漫画のことは僕自身はまったく知らなかったのですが、人気のある漫画のようで、更に主役を演じるのが山崎賢人くんと吉沢亮くんというイケメン二人ということもあり、劇場内は男女年齢問わず様々な人で満席という状態でした。
 個人的には、山の民の王・楊端和を演じた長澤まさみさんが一番印象に残りました。昨年観た「メタルマクベス」でもそうでしたが、スタイルがいいので見栄えはするし、何はともかく、アクションシーンがカッコいいですよねえ。最高です。
 「メタルマクベス」ということでは、マクベス(ランダムスター)の親友エクスプローラーを演じた橋本じゅんさんが吹き矢を扱う暗殺者役で出演していました。あと印象的だったのは、将軍・王騎を演じた大沢たかおさん。将軍のひとりなのに、豪傑な見た目と違って話し方が女性っぽい。落差あり過ぎです。 
オーヴァーロード(1.5.10) 
監督  ジュリアス・エイヴァリー 
出演  ジョヴァン・アテボ  ワイアット・ラッセル  ヒルー・アスベック  マティルド・オリヴィエ  ジョン・マガロ  イアン・デ・カーステッカー  ドミニク・アップルホワイト  ボキーム・ウッドバイン 
 ノルマンディー上陸作戦前夜、アメリカ陸軍第101空挺師団のボイスらはシエルブラン村の教会にドイツ軍が設置している妨害電波塔を破壊する命令を受け、フランスの地にパラシュートで降下する。ドイツ軍の攻撃で無事に降り立つことができたのはボイス、フォード伍長、ティベット、チェイスの4人だけ。彼らは途中で出会ったフランス人の娘・クロエの案内で村の中に入る。クロエの家には、ドイツ軍に教会に連れていかれ、戻ってきてから病気だと言って姿を見せない伯母と幼い甥が住んでいた。仲間を探しに行ったチェイスらを連れ戻すために外に出たボイスは、ドイツ軍に発見され、逃げる途中で教会の中に入り込んでしまい、そこでドイツ軍が人体実験を行っていることを知る・・・。
 冒頭ではアメリカの兵士たちの乗る飛行機がドイツ軍の高射砲の砲撃で撃墜されたり、周囲が砲弾の雨の中パラシュートで降下したり、更には地上に降下してみれば地雷原があったりと戦争映画らしい緊迫感溢れるシーンが続きます。ところが、ボイスが教会内でドイツ軍の人体実験の様子を見てから、ジャンルが一気に戦争映画からゾンビ映画へと方向転換。製作がJ・J・エイブラハムなので、戦争映画ではないだろうなあと思いましたが、ゾンビ映画とはねえ。有名俳優も出演していず(ちなみにフォード伍長役のワイアット・ラッセルは、カート・ラッセルの息子だそうです。)、B級感たっぷりです。 
轢き逃げ(1.5.11) 
監督  水谷豊 
出演  水谷豊  中山麻聖  石田法嗣  小林涼子  檀ふみ  岸部一徳  毎熊克哉  さな  黄川田将也  堀田眞三  原康義  山中崇史  HIDEBOH   
 水谷豊さんが監督・脚本・出演の三役を兼ねた作品です。
 有名建設会社の社員である宗方秀一は、副社長の娘・白河早苗との結婚式を控え、その打合せで司会をする同僚の森田輝と車で式場に向かっていた。輝が遅刻をしたため、待ち合わせ時間に遅れると思った秀一は先を急いで抜け道を走ったが、カーブを曲がったとたん、道にたたずんでいた女性を轢いてしまう。誰も見ていないという輝の言葉に、秀一は倒れている女性をそのままに走り去る・・・。
 結婚式を目前に控えた青年と同乗していた友人、被害者の女性の両親、事件を追う二人の刑事、そして運転していた青年の結婚相手の女性を描きながら轢き逃げ事件の顛末が語られていきます。
 このところ、幼い命が失われる交通事故が立て続けに起きており、交通事故の悲惨さを目の当たりにする日が続きます。ただ、この作品で描かれるのはただの過失による事故ではなく、“轢き逃げ”という犯罪です。事故による破談を恐れて逃げたことにより、破談よりもっと悲惨な未来がもたらされることを想像できなかったのかと言いたくなりますが、副社長の娘との結婚で前途洋々の未来を失うことで冷静な判断ができなくなっていただろうし、女手一つで育ててくれた母が喜んでいる結婚ということが頭をよぎり、更には親友の「誰も見ていない」という言葉が背中を押してしまったのでしょう。その後の秀一の様子を見れば決して悪い人間には思えませんでした。
 とはいっても、亡くなった娘の両親からすれば、娘を見捨てて逃げ去った秀一と輝は憎んでも憎み切れない男でしょう。映画の中では釈放された輝に対して、水谷豊さん演じる父親は冷静に話をしていますが、僕がその立場に置かれたら罵倒し、殴りかねません。
 映画は単純な轢き逃げだと思われていた事件に隠されていた、ねじ曲がった人間の心をあぶり出していきます。このあたり、ミステリーとしての要素があるのですが、残念ながら多くの人は途中で、いや最初から事件の真相に気づいてしまうかもしれません。
 印象的なキャラだったのは二人の刑事を演じた岸部一徳さんと毎熊克哉さん。岸部一徳さんは相変わらずとぼけた味わいのある刑事役を演じますが、それ以上に若手刑事の前田を演じた毎熊さんは熱血漢でもあり、やはりちょっととぼけた刑事役が抜群にうまく、観る人にインパクトを与えます。岸部さんともなかなか名コンビでした。
 ラスト、被害者の母役である檀ふみさんが加害者の新妻役の小林涼子さんの手に手を重ねるシーンは涙を誘います。 
コンフィデンスマンJP(1.5.17) 
監督  田中亮 
出演  長澤まさみ  東出昌大  小日向文世  小手伸也  織田梨沙  竹内結子  三浦春馬  江口洋介  前田敦子  生瀬勝久  佐津川愛美  小池徹平  佐藤隆太  石黒賢  岡田義徳  桜井ユキ  山口紗弥加  瀧川英次
 昨年フジテレビで放映していたドラマの映画化です。「スティング」と同様、敵も味方も欺くコンゲームを描きます。
 何といっても、この作品の見ものはダー子演じる長澤まさみさんの弾けぶりです。先頃観た「キングダム」では、そのスタイルの良さ、立ち回りのかっこよさが評判を呼びましたが、素晴らしいスタイルは今までどおり、それに加えて、美人な長澤さんが端正な顔立ちが崩れるほどのコミカルな表情や動きを見せてくれます。ダー子役を演じた「コンフィデンスマンJP」は長澤さんの代表作の一つになるのではないでしょうか。
 作品の舞台は香港。ダー子、ボクちゃん、リチャードが狙うのは香港マフィアの女帝、ラン・リウが持つと言われる伝説のパープル・ダイヤ。3人がラン・リウに近づこうとする中、過去にダー子と因縁のあった天才詐欺師ジェシーもパープル・ダイヤを狙っていることが判明する。更には、かつてダー子たちに騙された日本のやくざ、赤星がダー子たちに復讐しようとするが・・・。
 というのが、表向きのストーリーですが、もちろん、そのままであるわけがありません。いったい、どこに嘘が混じっているのか、どこからが観客を騙しているのか、それを見抜くのも観ている方としては楽しいところです。
 いつもの東出昌大さん演じるボクちゃん、小日向文世さん演じるリチャード、そしてお笑い担当の小手伸也さん演じる五十嵐など、いつもの個性的なメンバーに加え、ダー子の弟子という役柄でモナコを織田梨沙さんが演じます。
 ジェシーを演じるのは三浦春馬さん。ジェシーとダー子が二人でろくろを回すシーンはパトリック・スウェイジとデミ・ヌーアによる大ヒット映画「ゴースト ニューヨークの幻」へのオマージュですね。
 ドラマ版の第1作にも登場した赤星を演じるのは江口洋介さん。ドラマ版ではドジな役どころを演じましたが、今回はダー子らに復讐を誓って再登場です。そのほか、テレビ版で騙される側だった佐藤隆太さん、小池徹平さん、石黒賢さんらもちょい役で登場し、テレビでファンになった人を楽しませてくれます。香港だからという訳で、ジャッキー・チェンが登場かと思ったら、“ジャッキーちゃん”でしたね。
 今回も敵・味方はもちろん、観客も騙します。どんでん返しで最高に面白かったです。さすが古沢良太さんの脚本です。
※エンドローグでの長澤さんらの歌とダンスも見ものです。 
居眠り磐音(1.5.18)
監督  本木克英
出演  松坂桃李  木村文乃  芳根京子  柄本佑  杉野遥亮  佐々木蔵之介  谷原章介  中村梅雀  柄本明  奥田瑛二  陣内孝則  橋本じゅん  早乙女太一  中村ゆり  ベンガル  浪岡一喜  石丸謙二郎  財前直見  西村まさ彦  高橋努
 佐伯泰英さん原作の同名小説の映画化です。この作品には先頃覚醒剤所持・使用で逮捕されたピエール瀧が出演していたので、公開がどうなるのかと思いましたが、奥田瑛二さんが代役を務めて予定どおりの公開となりました(パンフレットからはピエール瀧の名前は消えていますが、奥田瑛二さんの名前も出ていません。)。
 豊後関前藩の若手藩士、坂崎磐音、小林琴平、河出慎之輔の3人は3年の江戸詰を終え、国許へと戻ることとなる。河出慎之輔は小林琴平の妹・舞を妻に娶っており、磐音も国許へ戻った翌日にはやはり琴平のもう一人の妹・奈緒と結婚をし、それぞれ藩政に携わることとなっていた。しかし、国許についたその日に河出慎之輔が叔父・蔵持十三からの舞が不義を働いているとの諫言で舞を斬ってしまい、更には亡きがらを受け取りに行った琴平が慎之輔を斬るという事件が起きる。真相は不義相手とされた男が奈緒に懸想をし、それを蹴った姉の舞に対し、蔵持らが舞が不義をしているとの嘘の噂を城下に流したものだった。磐音は琴平を止めに行くが、結局、勝負の上、琴平を斬ってしまうこととなり、暇を願い出て城下を去り、江戸へと戻ってくる・・・。
 江戸で長屋の大家の紹介で両替屋の今津屋の用心棒となった磐音は、金銀交換のルールを定めた老中・田沼意次の施政下、ルールを守ろうとする両替屋・今津屋と金銀交換の差益により儲けを得ていたため田沼のルールに反対する両替屋・阿波屋との争いの渦中に巻き込まれていきます。
 剣の達人であったが、その剣術は縁側で日向ぼっこをしながら居眠りをする猫のようで眠っているのか起きているのかわからないことから「居眠り剣法」と呼ばれる磐音を演じるのは松坂桃李さん。剣の遣い手でありながら、心優しい男という役柄にピッタリです。そのほかの出演陣も豪華です。両替屋を演じる柄本明さんに、親子共演となる小林琴平を演じる柄本佑さん、そのほか中村梅雀さん、佐々木蔵之介さん、谷原章介さん、女優陣では木村文乃さん、芳根京子さん、財前直見さんら。ほんのちょい役で陣内孝則さん、早乙女太一さん、橋本じゅんさん、中村ゆりさん等出演していますので、ピエール瀧事件でお蔵入りという訳にはいかなかったでしょうね。
 途中、今津屋吉右衛門の口から、磐音が暇をもらうこととなった国許の事件には裏があるという話がされますが、この作品中ではその後が描かれていません。奥田瑛二さんが代役で演じた嫌な国家老もそのままですし、何だか中途半端だと思ったのですが、原作ではこの後が顛末が描かれているようですね。映画では続編が製作されるのか、気になるところですが、この作品の興行収入次第でしょうね。
空母いぶき(1.5.24) 
監督  若松節朗 
出演  西島秀俊  佐々木蔵之介  佐藤浩市  中井貴一  本田翼  小倉久寛  高嶋政宏  玉木宏  戸次重幸  市原隼人  斉藤由貴  深川麻衣  藤竜也  山内圭哉  吉田栄作  村上淳  堂珍嘉邦  片桐仁  和田正人  石田法嗣  平埜生成  土村芳  工藤俊作  金井勇太  中村育二  益岡徹  
 公開前に総理大臣役を演じた佐藤浩市さんが雑誌のインタビューの中で、胃腸の弱い総理大臣に変更してもらったということが、安倍総理を揶揄しているとして、作家の百田尚樹さんらの怒りを買い、その騒動に佐藤さんを擁護する芸能人たちも加わり、ネットを賑わせた作品です。原作は「沈黙の艦隊」のかわぐちかいじさんの同名漫画です。
 20XX年、沖ノ鳥島の西方450キロ、波留間群島初島に国籍不明の武装集団が上陸し、海上保安庁の隊員を拘束する事態が発生する。海上自衛隊は直ちに小笠原諸島沖で訓練航海中の自衛隊初の航空機搭載型護衛艦“いぶき”を旗艦とする第5護衛隊群を現場に向かわせる。そんな“いぶき”に対し、潜水艦からの突然のミサイル攻撃が行われ、更に針路上には敵空母艦隊が出現する。自衛隊の哨戒機が撃墜され、政府は戦後初めての「防衛出動」を発令し、戦争状態へと突き進んでいく・・・。
 昨年、海上自衛隊の空母保有計画がニュースになりました。ネットで調べると、『ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」型をほぼ原型のまま活用し、垂直離着陸戦闘機「F35B」を搭載する。任務に応じて、F35Bと対潜水艦(対潜)ヘリコプター「SH60」を積み替える。・・・ただ、政府はこれまで「攻撃型空母は保有できない」との見解を示しており、論議を呼ぶのは必至だ。』とのことのようです。こうした、今なぜ空母なのかという議論が出てきたのは、もちろん、中国との関係にあることは否定できないでしょう。この映画では、領土を侵した敵については、東亜連邦という架空の国になっていますが、原作では「中国」になっているようです。憲法上「専守防衛」をルールとする自衛隊が、果たして領土を侵されたときに、どう対処するのか。安倍政権下での憲法改正論議がなされるなか、この作品は賛成派に対しても反対派に対しても大きな問題を提示していきます。
 映画では航空自衛隊の航空機パイロットから艦長に抜擢された秋津竜太と海上自衛隊の生え抜きの副長の新波歳也という防衛大学校で同期であった二人の考え方の違いが描かれます。「我々は戦争する力を持っている。しかし絶対にやらない。」を主張する新波と「戦わなければ守れないものがある。」という秋津。ただ、“戦闘”から“戦争”に進まないように自衛隊側が色々難しい判断をするのですが、果たして実際の場面で、相手側は日本の思うところを理解してくれるのだろうかと思ってしまいます。そんなに甘いものではないだろうと思うのですが。
 また、トランプ大統領になってアメリカはアメリカ・ファーストを打ち出し、ヨーロッパでもイギリスがEUから離脱し、他の国でも自国第一主義の主張が強くなってきている今、事態の収拾が図られたラストのシーンが実現するのは難しいと考えざるを得ません。
 問題になった胃腸の弱い総理大臣のシーンですが、佐藤さんがトイレから出てくるだけで、それについて、胃腸が弱いとか、腹下しというセリフがある訳でもなく、全体として苦悩しながらも平和を守ろうとする立派な総理大臣として描かれていたと思います。決して頼りない総理大臣として演じてはいませんでしたね。 
貞子(1.5.24) 
監督  中田秀夫 
出演  池田エライザ  塚本高史  清水尋也  佐藤仁美  ともさかりえ  桐山漣  姫嶋ひめか 
 心理カウンセラーとして働いている秋川茉優の病院に、自分の名前も言えない少女が入院してくる。やがて、その少女は1週間前に団地で起きた放火事件の犯人の女性の戸籍を持たない娘であることがわかる。一方、茉優の弟の和真はネットに投稿する自分の動画のアクセスを伸ばそうと、ネットで評判になっている心霊スポットに行く。そこは放火のあった団地の部屋だった。そこでのビデオを撮った後、和真は行方不明となる。茉優は和真の知り合いの石田の力を借り、和真の行方を捜すが・・・。
 “貞子”といえば、今では洋画の「13日の金曜日」シリーズの“ジェイソン”、「ハロウィン」シリーズの“ブギーマン”、「エルム街の悪夢」シリーズの“フレディ”等と並ぶといっていい邦画ホラーの著名なキャラクターです。呪いのビデオを見るとテレビの中から出てくる白装束(白いワンピース?)の長い髪の女というキャラはもうすっかり定着しています。
 1991年に刊行された鈴木光司さんの「リング」を原作として1998年に松嶋菜々子さん主演で映画化されたことから始まり、この「リング」のシリーズには中谷美紀さん、仲間由紀恵さん、石原さとみさん、山本美月さんら豪華な女優陣が主演しています。更に、「リング」はハリウッドでも製作され、ハリウッドリメイク版「ザ・リング」、「ザ・リング2」ではナオミ・ワッツがヒロインを務めているという日本にとどまらない人気を博しています。
 そんな女優の登竜門とも言える作品になっているこのシリーズですが、今回の主演女優には、このところ大人気の池田エライザさんが登場。のほほんとした感じがホラー映画の主人公に似合うかなあと思ったのですが、熱演です。
 この作品では、第1作の「リング」のメガホンを取った中田秀夫監督がハリウッドリメイクの第2弾「ザ・リング2」以来14年ぶりにシリーズに復帰しています。さすがに今ではビデオというわけにもいかないので、本作では動画投稿サイトという新しいメディアを絡めさせながら、その一方で久しぶりに貞子の出生と呪いの力の根源に迫る物語になっています。
 また「リング」、「リング2」に出演した佐藤仁美さんが同じ倉橋雅美役として出演しています。失礼ですが、ちょっと太っていますので、ライザップのCMより前に撮影したのでしょうか。ベッドの下から発見されるシーンの表情は怖かったですねえ。貞子よりずっと恐ろしいです。 
長いお別れ(1.6.1) 
監督  中野量太 
出演  蒼井優  竹内結子  松原智恵子  山﨑努  北村有起哉  中村倫也  杉田雷麟  蒲田優惟人  不破万作  小市慢太郎  松澤匠  おかやまはじめ  清水くるみ  池谷のぶえ  倉野章子  藤原季節 
 中島京子さん原作の同名小説の映画化です。認知症が進んでいく父親と妻と二人の娘との7年間の生活を描いていきます。
 東昇平は元国語の教師で中学校の校長を務めた人物だったが、今では認知症の症状が出てきている。長女の麻里は夫の仕事の関係でアメリカで暮らし、未婚の二女の芙美はいつか自分の店を出したいとスーパーの総菜コーナーでパートをしており、昇平の介護は妻の曜子と、ときに芙美が担っていた。しだいに認知症が進む中、帰ると言って家を出ていこうとする昇平を、てっきり実家に帰りたいのだと考えて連れていくが、そこでも帰ると言う。果たして、昇平はどこに行こうとしているのか・・・。
 物語は、認知症になった父親の介護問題とともに、それぞれの娘が抱える家族や男女の問題を描いていきます。認知症の老人の介護は、実際には非常に大変なんでしょうが、この映画ではその点は割とユーモアも交えながら描いています。一点、その介護の大変さを垣間見させてくれたのは、大便を漏らしてしまった昇平の後始末を芙美がするところでしょうか。また逆に介護の大変さを和らげてくれるエピソードとして、自分の年齢も結婚していることも忘れた昇平が曜子に「自分の両親に会って欲しい」とプロポーズするところは、ちょっとグッときますね。
 原作では子どもは三人姉妹ですが、映画では時間の制約ということもあってか、二人姉妹に変更されており、また、孫も長女・麻里の子どもが一人だけ(原作での長女の二人の子どものエピソードをひとりで担っています。)と、原作とは異なる部分がいくつかあります。
 昇平を演じたのは山崎努さん。名優ですから何やらせても安心感があります。妻の曜子を演じたのは松原智恵子さん。ちょっとかわいい妻を演じてくれます。長女は竹内結子さんが、二女の芙美は先頃結婚を発表した蒼井優さんが演じますが、蒼井さんはこういう普通の家の娘を演じさせるとうまいですよねえ。“魔性の女”というイメージとは程遠いですね。 
ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(1.6.1) 
監督  マイケル・ドハティ 
出演  渡辺謙  ヴェラ・ファーミガ  カイル・チャンドラー  ミリー・ボビー・ブラウン  サリー・ホーキンス  チャールズ・ダンス  ブラッドリー・ウィットフォード  チャン・ツィイー  トーマス・ミドルディッチ  アイシャ・ハインズ  オシェア・ジャクソン・jr  デヴィッド・ストラザーン 
 レジェンダリー・ピクチャーズのモンスターバースシリーズ第3弾。「ゴジラ」映画としては2014年公開の「ゴジラ」の続編になります。「キングコング: 髑髏島の巨神」のエンドロールで仄めかされていたキングギドラやモスラも登場する、東宝怪獣映画ファンにとっては嬉しくなる1作です
 5年前のゴジラとムートーの戦いによって、息子を亡くしたエマ・ラッセル博士は、中国・雲南省のモナークの基地で怪獣と交信する装置"オルカ"を開発していたが、基地が環境テロリストであるアラン・ジョナによって襲撃され、彼女とその娘・マディソンが連れ去られてしまう。モナークの科学者・芹沢猪四郎博士は、攫われた二人を救出するため、元モナークのメンバーでエマの夫マークに協力を求める。その後、モナークの南極基地を襲撃したアランとエマによって、そこに眠る“モンスター・ゼロ”ことキングギドラが目覚めてしまう。キングギドラの復活を察知したゴジラは南極へと向かい、キングギドラの前に姿を現す・・・。
 日本映画のゴジラと比較して、体型的にハリウッドのゴジラはふくよかな感じです。悪役のキングギドラの造型は迫力ありましたねえ。さすがハリウッドという感じです。ゴジラと並んで人気のモスラは日本映画では基本的に人間の味方なので、優しい感じの怪獣ですが、こちらのモスラは幼虫も成虫も怖いです。特に成虫の前足が鎌状になっており、ちょっとカマキリみたいです。
 あちこちに日本のゴジラ映画へのオマージュが散りばめられており、ストーリーとは別に色々なところに顔を覗かせるオマージュを探すのもファンとして楽しいところでした。一番忘れてならないのは、前作から登場している渡辺謙さん演じる芹沢博士。彼はもちろん「ゴジラ」に登場する芹沢博士へのオマージュです。「ゴジラ」では命を懸けてゴジラを倒そうと“オキシジェン・デストロイヤー”を持って海に潜りますが、今回は命を懸けてゴジラを甦らそうとします。この“オキシジェン・デストロイヤー”は、この作品でも怪物を倒すためのアメリカ軍の武器として登場しました。更に、キングギドラの"モンスター・ゼロ"というコードネームは「怪獣大戦争」でX星人がキングギドラに対してつけた呼び名だったり、双子の小美人は登場しませんでしたが、チャン・ツィーが演じたチェン博士は代々双子で祖母の代からモスラに関わっていたという設定になっています。ゴジラのテーマも使用されていましたし、インファント島の双子の小美人役のピーナッツが歌ったモスラの歌のメロディーも一部使用されていた気がしたのですがどうでしょうか。
 製作会社のレジェンダリー・ピクチャーズは中国企業に買収されており、だから、中国が舞台になったり、中国の俳優さんが起用されていたりするのですね。 
パラレルワールド・ラブストーリー(1.6.2) 
監督  森義隆 
出演  玉森裕太  吉岡里帆  染谷将太  筒井道隆  美村里江  清水尋也  水間ロン  石田ニコル  田口トモロヲ 
 東野圭吾さん原作の同名小説の映画化です。原作は刊行当時に読んだのですが、もうすっかり内容は忘れていたので、白紙の状態での鑑賞でした。
 物語は、大学生の頃、毎朝乗る山手線と並んで走る京浜東北線の車内に毎週火曜日に見かける女性に恋した敦賀崇史が主人公。崇史は卒業を迎え、その電車に乗る最後の日、思い切って京浜東北線に乗るが、彼が見たのは山手線に乗る女性の姿だった。結局、その女性に会うことができず、崇史の恋も終わったかと思われたが、ある日、同じ会社に勤める親友の三輪智彦から交際している女性を紹介すると言われ、待ち合せた喫茶店に入ってきた女性を見て、崇史は驚く。津野麻由子と名乗った女性は、京浜東北線の車内にいた女性だった。ところが、場面が一転すると、そこは崇史と麻由子が同棲している部屋。観客は果たしてどちらが本当の世界なのか、どうして二つの世界が存在するのか戸惑いながら観ることになります。
 原作小説では、麻由子が友人の恋人である章が「SCENE○」と題され、一方、麻由子が恋人である章が「第○章」と題されるので、読んでいてもわかりやすいのですが、映画では場面が転換されたとたんに友人の恋人が同棲相手になったり、逆に同棲相手が友人の恋人になったりするので、「今はどっちの世界なの?」と戸惑うかもしれません。
 麻由子が智彦の恋人の世界では、崇史は本当に嫌な奴です。親友の恋人であることを知っていながら言い寄り、力づくで自分のものにするなんて、最低な男なのに、どうして女性はこんな男に惹かれるのでしょうか。崇史の気持ちを思いやる智彦があまりにかわいそうだと考えるのは僕だけではないでしょう。
 理科系の東野さんらしいストーリーですが、原作を読んでいない人にはちょっとわかりにくいかもしれませんね。 
さよならくちびる(1.6.7) 
監督  塩田明彦 
出演  門脇麦  小松菜奈  成田凌  篠山輝信  松本まりか  新谷ゆづみ  日高麻鈴  マキタスポーツ  篠原ゆき子  松浦祐也  青柳尊哉 
 “ハルレオ”はハルとレオによる音楽ユニット。クリーニング店でバイトをしていたハルが上司に怒られてむくれていた同僚のレオを誘って始めた“ハルレオ”だったが、二人の仲がこじれて解散することとなり、元ホストのローディ兼マネージャーのシマとともに全国7都市を巡る最後のツアーへと出かけていく・・・。
 物語は、最後のツアーに臨むハルとレオを描きながら、ローディ兼マネージャーのシマも含めた、ここに至るまでの三人の関係が語られていきます。歌を作るハルに注目が集まり、自分が音楽をする意味があるのかと、嫉妬の感情が押さえられないレオ。レオはシマを好きになるが、シマはハルに惹かれ、一方ハルはレズで本当はハルのことが好きであり、シマの気持ちに応えることはできないという複雑な関係からハルとレオの間がうまくいかなくなっていきます。
 題名でもある“さよならくちびる”を秦基博が、挿入歌である“たちまち嵐”と“だれにだって訳がある”を今人気のあいみょんが提供し、“ハルレオ”を演じる門脇麦さんと小松菜奈さんが歌います。門脇麦さんはこれまでも“ナミヤ雑貨店の奇蹟”で歌唱を披露していましたが、小松菜奈さんは歌は初めて(もちろんギターも)ということで、練習をかなりしたようです。なかなか素敵な歌声で、失礼ながら意外に上手。個人的には門脇麦さんより小松菜奈さんの歌声の方に惹かれました。今まで観た小松菜奈さんが出演した作品の中で、ただかわいいだけではなく、彼女の魅力が一番出ている作品ではなかったでしょうか。おすすめです。 
エリカ38(1.6.8) 
監督  日比遊一 
出演  浅田美代子  樹木希林  平岳大  木内みどり  小松政夫  古谷一行  岡本富士太  窪塚俊介  山﨑一  山崎静代  小籔千豊  菜葉菜  佐伯日菜子 
 ドラマ「時間ですよ」で共演して以来旧知の仲である女優、浅田美代子の代表作にしたいと、亡き樹木希林さんが自ら企画した作品だそうです。ストーリーとしては現実に起きた事件を下敷きにしています。
 ホステスをしながら外国から輸入したサプリメントを売るサイドビジネスを手がける渡部聡子は、ある日喫茶店で声をかけてきた女性・伊藤から国境を超えてビジネスを展開しているという平澤を紹介される。聡子は平澤が手がける途上国支援のための資金集めを任され、言葉巧みに人々とから金を集めていく・・・。
 大勢の人たちから金を集め、返すことなく自分はぜいたくな暮らしをし、東南アジアで年齢を20歳以上も偽って若い愛人を囲っていたという事件がありましたよね。浅田さんが演じたのは、その女性。「時間ですよ」のあの美代ちゃん、天然キャラがすっかり有名になってしまった美代ちゃんが、60歳過ぎにしてセックスシーンも大胆にこなし、今までのイメージとは大きく違う役柄を演じています。亡き樹木希林さんが、美代ちゃんにはこういう役が似合うとして企画したようです。とにかく、愛らしい、あるいは天然ボケというイメージが壊れるほどの女性役に唖然です。投資詐欺に引っ掛かった人たちが詰めかける中で、相手の怒号にもひるむことなく、自分の勝手な考えを主張していくシーンは凄かったですね。樹木希林さんが企図した浅田さんのイメージを壊すという目的は十分達したのではないでしょうか。 
メン・イン・ブラック インターナショナル(1.6.18) 
監督  F・ゲイリー・グレイ 
出演  クリス・ヘムズワース  テッサ・トンプソン  リーアム・ニーソン  エマ・トンプソン  レベッカ・ファーガソン  レイフ・スポール  ロラン・ブルジョワ  ラリー・ブルジョワ 
 シリーズ第4弾です。今回、前作までのウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズのコンビに代わって、「マイティ・ソー」のクリス・ヘムズワースと「クリード」で主人公・グリードの妻役を演じたテッサ・トンプソンの男女のコンビになりました。
 クリス・ヘムズワース演じるエージェントHはかつて凶悪なエイリアン・ハイヴから地球を救ったヒーローであるロンドン支局の腕利きのエージェント。一方、テッサ・トンプソン演じるモリーは幼い頃、MIBの存在を目撃してから、自分もその組織の一員になりたいと願っていた女性。念願かなってようやくMIBに採用されたモリーは新人エージェントMとして、Hとコンビを組んで宇宙のVIPであるジャバビア星の王族ヴァンガスの警護に当たることに。しかし、ヴァンガスはナイトクラブで双子のエイリアンに殺害されてしまう・・・。
 ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズのコンビが強烈な個性の持ち主だったので、彼らと比較すると今回のクリス・ヘムズワースとテッサ・トンプソンのコンビはいまひとつ影が薄いです。彼ら以上に印象に残るのは、Mを女王様と崇める小さなエイリアンのポーニー。とにかく、仕草が可愛いし、肝心な時に思わぬ力を発揮してMを助けるなど、大活躍です。パグ犬のフランクが登場するのは、シリーズファンにとっては嬉しいところです。
 ※トランスフォームして空を飛ぶ車はレクサスのマークがついていました。 
町田くんの世界(1.6.18) 
監督  石井裕也 
出演  細田佳央太  関水渚  前田敦子  大賀  岩田剛典  高畑充希  池松壮亮  戸田恵梨香  佐藤浩市  松嶋菜々子  北村有起哉 
 第20回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した安藤ゆきさんの同名コミックが原作です。“超絶いい人”の高校生・町田くんを主人公にした青春映画です。
 町田くんは4人兄弟の長男で、父はアマゾンに出張中、母は妊娠中のため、町田くんが食事の準備をする毎日。見た目は優等生、でも勉強も運動も苦手という高校生ですが、人間が大好きで、困った人がいれば自分のことは後回しにして手助けしなくてはすまない性格。そんな町田くんが同級生の猪原さんと保健室で偶然出会ったことから起こる騒動が描かれていきます。
 「こんな気の付く高校生いないだろう!」「いくら運動音痴でもあんな走り方はしないだろう!」と突っ込みながら、どこかでこんな男の子がいればいいなあという思いも持ちながら観ていました。有名人のスキャンダルを暴く記事ばかり書いている池松壮亮さん演じる雑誌記者の吉高が、町田くんに、どうしてそんないい人でいられるんだと聞く気持ちもわかります。普通は、岩田剛典さん演じる氷室のように、自分勝手で他人の気持ちなんかなかなか思いやらないですよね。
 町田くんの背中を押すために、町田くんに今まで助けられていた級友たちが集まるシーンにはなぜだかグッときてしまいます。ラストは、ちょっとファンタジックな終わり方になってしまいましたが、見終わった後、なんだか素敵な映画観たなあという気持ちにさせてくれます。さて、これから町田くんと猪原さんの関係はどう進んでいくのでしょう。気になります。
 猪原さんを演じた関水渚さん、絶世の美少女というわけではありませんが、誰にでも優しい町田くんの気持ちがわからなくてイライラするところなんてかわいいですねえ。今後に期待です。
 佐藤浩市さん、戸田恵梨香さん、松嶋菜々子さん、北村有起哉さんらが脇を固め、新人の主役二人を盛り立てています。心が温かくなる、たまにはこんな映画もいいじゃないかという作品でした。おすすめ。 
X-MEN ダークフェニックス(1.6.22) 
監督  サイモン・キンバーグ 
出演  ジェームズ・マカヴォイ  マイケル・ファスベンダー  ジェニファー・ローレンス  ジェシカ・チャスティン  ニコラス・ホルト  ソフィー・ターナー  タイ・シェリダン  アレクサンドラ・シップ  エヴァン・ピーターズ コディ・スミット=マクフィー 
 X-MEN結成以前から始まった若い頃のプロフェッサーXやマグニートーを主軸に据えたシリーズ、「X-MEN: ファースト・ジェネレーション」、「X-MEN: フューチャー&パスト」、「X-MEN: アポカリプス」に続く4作目です。
 スペースシャトルの事故により、宇宙に取り残された宇宙飛行士を救出するため、宇宙に向かったX-MENたちだったが、太陽のフレアの爆発によりジーンは強大な力を得ることになってしまう。強大な力を持ったジーンは、彼女が学園に来た時に隠されていた事実を知って、プロフェッサーXを信じられなくなり、学園を飛び出してしまう。ジーンを追って、彼女の向かった先に赴いたミスティークらX-MENだったが、ジーンの制御できない力は大きな悲劇を引き起こしてしまい、そのことを知ったマグニートーは、ジーンを殺そうとする。一方、ジーンに宿った力を奪おうとする異星人ヴークは、言葉巧みにジーンに近づく・・・。
 雰囲気的にこのストーリー展開では、X-MENシリーズはこれでラストでしょうか。ラストシーンも、これでめでたしめでたしという感じのプロフェッサーXとマグニートーのチェスをするシーン。ジェニファー・ローレンスもアカデミー賞受賞後もミスティーク役でよくここまで出演してくれたものです。普通、アカデミー賞女優となれば、キワモノ的なメイクをする役はしないですよね。まあ、「ゼロ・ダーク・サーティ」でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたジェシカ・チャスティンも今作品では異星人ヴーク役を演じますが・・・。 
ファブル(1.6.23) 
監督  江口カン 
出演  岡田准一  木村文乃  佐藤浩市  安田顕  向井理  福士蒼汰  柳楽優弥  山本美月  佐藤二朗  光石研  木村了  宮川大輔  藤森慎吾  井之脇海  好井まさお 
 週刊ヤングマガジン連載の南勝久さんの漫画が原作です。
 ファブルとは「寓話」のこと。あまりの凄腕のため、伝説の殺し屋と言われるファブルを主人公にした作品です。どんな相手でも6秒以内に殺すという技術を持つファブルですが、「ジャッカル富岡」というお笑い芸人のファンで、彼の笑えない芸を見ては大笑いをする男。彼の常識も一般人とかなりかけ離れているし、殺し屋としての顔とそうでないときの顔の落差が大き過ぎます。その上、極端な猫舌。映画ではこの点は笑いを取る要素になっていましたが、漫画では猫舌の理由は、サバイバル技術として、食べられるものか毒を含むものかを舌で判断できるようになった影響で舌の感覚が鋭敏になってしまったためだそうですね。
 物語は、大きな仕事をした後のほとぼりを覚ますために、1年間殺し屋としての仕事をせずに一般人として生活することをボスから命じられたファブルと彼の相棒である洋子が大阪で暮らす様子を描いていきます。ところが、大阪で住むところを世話してくれたのが暴力団ですから、平穏な生活を送るのは難しく、ファブルは暴力団の内紛の中に巻き込まれていくという話になっています。殺しをすればボスに殺されることになる中で、果たしてファブルと洋子はトラブルにどう対処していくのかが見どころとなっています。
 ファブルを演じるのは岡田准一くん。もともと岡田くんはブルース・リーが始めた「ジークンドー」やフィリピンの武術である「カリ」を修得しているということで、小柄ながら体つきもそこらへんのひょろっとしたアイドルとは大違いで、筋肉ムキムキ。アクションもスタントマンなしに自ら行っているそうです。ビルとビルの間を手と足で登っていくシーンは凄いですよね。相棒の洋子を演じるのは木村文乃さん。蹴りを入れるところは、見事に足がきれいに高く上がっていましたね。
 原作の漫画はまだ連載中ですし、岡田くんのファブル役もお似合いなので、続編を期待したい1作です。 
スパイダーマン ファー・フロム・ホーム(1.6.30) 
監督  ジョン・ワッツ 
出演  トム・ホランド  ジェイク・ギレンホール  サミュエル・L・ジャクソン  コビー・スマルダーズ  ゼンデイヤ  ジョン・ファブロー  マリサ・トメイ  ジェイコブ・バタロン  アンガーリー・ライス  レミー・ハイ  トニー・レヴォロリ  ザッカリー・リン  ヌーマン・アチャル 
 「アベンジャーズ エンドゲーム」のその後を描く作品です。
 冒頭、ホイットニー・ヒューストンが歌う「ボディガード」の主題歌が流れたのにはびっくり。アイアンマンらの追悼の映像がなされたのですが、種明かしをすれば、これはピーター・パーカーの高校の校内放送の映像というからくりでした。
 アイアンマンことトニー・スタークが亡くなり、世間はスパイダーマンにアイアンマンの代わりを期待していた。しかし、ピーターはまだ高校生ということもあって責任の大きさに重圧を感じており、更に好きな女の子・MJに研修旅行先で告白することに気持ちはいっぱいで、ニック・フューリーからの電話も無視していた。ところが最初に向かった先のヴェネチアで水の怪物が出現。ヴェネチアの街が破壊される中、現れた謎の男、クエンティン・ベックによって怪物は倒される。ベックは自らを、「アース833」という平行世界から訪れた存在であると語り、その世界での地球を滅ぼしたエレメンタルズと呼ばれる存在がピーターたちの住む世界「アース616」の侵略を開始したことを告げる。しかしピーターは、ニックの要請も断り、旅行に戻ってしまう・・・。
 ネタバレになるので詳細は語ることができませんが、予告編に騙されたなぁというのが第一印象です。
 本編よりは衝撃度が大きかったのはエンドロール途中と終わった後に流された映像です。途中の映像からは今後のシリーズでのピーター・パーカーの前途の困難さが予想できます。トビー・マグワイヤがスパイダーマンを演じたサム・ライミ監督版やアンドリュー・ガーフィールドがスパイダーマンを演じたマーク・ウェブ監督版では伯父さんの死やグリーン・ゴブリンとなった親友の父との戦いがあり、全体的にダークな雰囲気の作品だったのと比較し、今回のシリーズは割と明るい感じだったのですが、今後はちょっと深刻な雰囲気になりそうですね。
 後者のびっくりを味わうためには「キャプテン・マーベル」を見ておかないとわからないかもしれません。それにしても、ニックは、なぜあの場にいたのでしょうか。今後のシリーズの展開にどう繋がっていくのか気になります。
 また、ある人物の登場にも驚きました。サム・ライミ版の「スパイダーマン」と関係が出てくるのでしょうか。 
いちごの唄(1.7.17) 
監督  菅原伸太郎 
出演  古舘佑太郞  石橋静河  和久井映見  光石研  宮本信子  岸井ゆきの  清原果耶  大西利空  小林喜日  蒔田彩珠  泉澤祐希  恒松祐里  しゅはまはるみ  吉村界人  渡辺道子  山﨑光   
 田舎から上京し、東京の冷凍食品会社で働く笹沢コウタは7月7日の七夕の日、帰宅途中に中学時代の同級生の天野千日に偶然出会う。中学生の頃、コウタの親友だった伸二は、二人が“天の川の女神”と崇拝し、“あーちゃん”と二人だけで呼んでいた千日を歩道に飛び込んできた車から守って亡くなってしまっていた。7月7日はその伸二の命日だった。二人はラーメン屋で話をし、別れ際、一年に一度、7月7日に会うことを約束する・・・。
 コウタがテンション高すぎです。崇拝していたあーちゃんと東京で出会ったということで、舞い上がる気持ちはわかるのですが、僕が女性だったらちょっと引いてしまうかも。だいたい、「なぜラーメン屋なんだよ。もう少し雰囲気あるところで話をしろよ。」と言いたくなってしまいます。しかし、それがコウタなんでしょうね。コウタの「来年の7月7日にまた会おう」という提案に“あーちゃん”がOKしたのは、人間関係に疲れていた“あーちゃん”にとっては逆に自分の気持ちを隠さないコウタに安心できたのではないでしょうか。あ~それにしても、毎日でも会いたいのに1年後に会おうなんて、なんてことだ!と思ってしまうのですが、それでもコウタにとっては清水の舞台から飛び降りる思いだったのでしょうね。
 ある年、“あーちゃん”は心の中に抱えていた秘密をコウタに告白し、別れを告げます。そうして、一度は会うことをやめた二人が地元で再会します。果たして、これから二人は交際していくのか、それとも友人としての関係が続くだけなのか。どうもこの二人の雰囲気を考えると、コウタには悪いけど、二人の恋人関係を想像するのは難しいです。友人としての関係で終わるのではと思います。
 銀杏BOYSの峯田和伸さんとNHK朝ドラ「ひよっこ」などを手がけた脚本家の岡田惠和さんによる小説から生まれた作品です。歌手である峯田さんはNHKの朝ドラ「ひよっこ」の出演で評判になりましたが、その後俳優としても活躍の場を広げ、今回は二人が一年に一度出会うラーメン屋の店主として登場しています。また、峯田さんの関係でしょうか。有名人が多数カメオ出演しています。ラーメン屋の客は田口トモロヲさんとみうらじゅんさんですし、コンビニの店員は麻生久美子さん、更にコウタの上司に宮藤官九郎さんという豪華さです。
 成長したコウタを演じたのは古舘佑太郞さん。バンドをやっている人だそうですが、初見です。成長したあーちゃんを演じたのは石橋静河さん。落ち着いた雰囲気で、あーちゃん役にピッタリでした。 
新聞記者(1.7.17) 
監督  藤井道人 
出演  シム・ウンギョン  松坂桃李  北村有起哉  岡山天音  本田翼  田中哲司  高橋和也  西田尚美  高橋努  郭智博  宮野陽名  長田成哉 
 東都新聞の記者・吉岡エリカは日本人の父と韓国人の母を持ちアメリカで育った女性。ジャーナリストだった彼女の父は政府を批判する記事を書いて、誤報だと批判され、自殺をしていた。ある日、東都新聞に何者かから内閣府主導による医療系大学の創設計画に関する政府極秘文書がFaxで送られてくる。担当を任された吉岡が取材を進めるうち、Faxを送ったらしい内閣府の官僚・神崎は飛び降り自殺をしてしまう。一方、外務省から内閣情報調査室に出向していた杉原は、現政権に反対する者のスキャンダルを暴きたてて情報を操作する内閣情報調査室の仕事に疑問を感じていた。そんな時、同僚から外務省時代の上司であった神崎が内閣情報調査室の調査対象になっていることを聞き、彼の自殺に仕事へのいっそうの不信感を抱く。神崎の葬儀で出会った二人が、やがて協力して彼の自殺の謎を追っていくうちに、計画の裏に隠された政府の驚くべき思惑を知ることとなるが・・・。
 この作品は、「権力とメディア」、「組織と個人」という非常に難しいテーマを描いていますが、その内容である内閣府主導による医療系大学の創設に関する政府極秘文書が新聞社にファクスで送られてくることから始まる事件が現政権下での安倍総理の友人が理事長を務める加計学園の獣医学部創設問題に類似していたり、官邸べったりの記者によるレイプ問題のもみ消し事件が、現在裁判で争われている実際の事件と類似していることもあって、しだいにネットで評判を呼んだようで、観に行った日は平日というのにほぼ満席状態。観客も若者から私の隣に座った老女まで幅広い客層でした。こんな硬派な映画にも関わらず、これだけの観客が入るというのは、まだ日本も捨てたもんではないなと思わせてくれました。
 新聞記者として記者会見で政府に対して鋭い質問をして、現政権から嫌われている東京新聞の記者・望月衣塑子さんの「新聞記者」(角川新書)を元にした作品だそうです。映画では内閣情報調査室が現政権を守るために、ネットやマスコミを使って情報を操作する様子が描かれますが、内閣情報調査室と言えば日本のCIAですし、映画の話だけでなく本当にやっていてもおかしくありません。また、行政の行うことを批判的に検証すべきマスコミが、行政の配る資料をそのまま記事にするシーンも冒頭出てきますが、取材をしないで記事を書くだけの記者が増えれば(それを記者と言えるのかは別として)、情報操作は難なくでき、政府は自分の思ったとおりの方向に国民を向かわせることができてしまいます。この映画でシム・ウンギョンさんが演じる吉岡のような気概のある記者がいることを祈るばかりです。政府の提灯持ちのような記事しか書けない記者たちには、ぜひこの映画を観てもらいたいですね。
 ラスト松坂桃李さん演じる杉原は、道を挟んだ向こうにいるシム・ウンギョンさん演じる吉岡に何を言ったのでしょうか。口元を見ると「〇〇〇(ネタバレになるので伏せます。)」の三語だったと思うのですが・・・。もし、僕自身が思ったとおりなら、悲しすぎますね。観客に考えさせるラストでした。
 吉岡を演じるのは韓国の女優であるシム・ウンギョンさん。彼女は「サニー」「怪しい彼女」ではコメディエンヌとしての演技を見せてくれましたが、この作品では笑いはまったくなく、日本語のセリフを見事に駆使して難しい役を演じています。「サニー」等の時とは全く印象が違います。一方、外務省から内閣情報調査室に出向している官僚の杉原拓海を演じるのは松坂桃李さん。生まれてきた娘のために政府が隠す真実を明らかにしようと決意する中、上司から脅迫めいた話をされて悩む杉原を演じます。強烈なキャラを演じたのは、内閣情報調査室長の多田を演じた田中哲司さんです。怖いですよねえ。現政権を守るためには、言葉には出しませんでしたが、殺人も厭わない雰囲気です。本当にこんな人物が室長を務めているとしたら、表現の自由など問題外、現政権に反対する者には何らかの罪をでっちあげて刑務所行きという感じですねえ。昨日も安倍総理の街頭演説の最中にヤジを飛ばしていた男の人が警察官に排除されたという事件がありましたが、何だかこの映画を地で行くようで、恐ろしいですね。 
アルキメデスの大戦(1.7.26) 
監督  山崎貴 
出演  菅田将暉  舘ひろし  柄本佑  浜辺美波  國村隼  笑福亭鶴瓶  橋爪功  小日向文世  田中泯  小林克也  矢島健一  山崎一  木南晴夏  飯田基祐  奥野瑛太  浪岡一喜  角替和枝  池谷のぶえ  天野ひろゆき 
 物語は、戦艦大和が米軍の戦闘機の攻撃を受け、魚雷や爆弾により轟沈するシーンから始まります。その後、時代は遡って、昭和8年、新造艦建設に当たって、巨大戦艦を製造しようとする嶋田繁太郎少将派と、これからは戦闘機の時代だとして航空母艦の建造を推し進める山本五十六少将と永野修身中将派のせめぎあいが描かれます。嶋田派の提出した戦艦の見積りが故意に低くしてあると考えた山本はそれを暴こうと、偶然料亭で出会った東大で数学の天才と呼ばれた櫂直にその証明を依頼します。最初は断った櫂でしたが、山本の大型戦艦が建造されれば日本は米国との戦争に突入すると説得され、少佐に任官して調査を進めることになります。軍機として設計図はおろか単価表も公表されない中、櫂は戦艦長門から戦艦の設計を予想しますが、決定の日は近づき、櫂は苦境に立たされます。
 昭和の初めの、太平洋戦争へと日本が進んでいく時代背景が描かれますが、この作品の主人公、櫂は実在の人物ではありません。三田紀房さんのヤングマガジンKC連載の同名漫画を原作としており、そこで描かれた架空の人物です。実際、新造艦建設に当たっての戦艦派と航空母艦派との争いはあったようですが、実際には巨大戦艦大和が建造されたのは歴史上の事実であり、映画でどういうストーリー展開になるのかが気になるところでしたが・・・。ネタバレになるのを恐れずに言うと、櫂は嶋田派の設計の大きな欠点を指摘し、航空母艦派が勝利します。それなのに、なぜ大和は建造されたのか。嶋田派の平山造船中将の深謀遠慮には驚かされます。そして、それは山本五十六にしても同じ。戦争を引き起こさないために大型戦艦の建造を阻止することを理由に櫂を説得したのに、実はその裏には、軍人としての深謀遠慮があったんですねえ。
 櫂を演じたのは菅田将暉くん。黒板に書く数式はすべて覚えて臨んだそうですが、さすが俳優ですね。最初は櫂を嫌いながらしだいに彼の行動に惹かれていく櫂の世話係を命じられた田中正二郎を演じた柄本佑さんがいい味出しています。櫂を慕う財閥の令嬢・尾崎鏡子を演じたのは浜辺美波さん。「君の膵臓を食べたい」のときより、だいぶ痩せましたね。 
東京喰種S(1.7.26)
監督  川崎拓也  平牧和彦
出演  窪田正孝  松田翔太  山本舞香  白石隼也  村井國夫  知英  坂東巳之助  新田真剣佑  小笠原海  鈴木伸之  森七菜  桜田ひより  栁俊太郎  マギー  ダンカン  木竜麻生
 人間社会に紛れ込み、人間を喰らう種族、グール。事故で重傷を負い、グールの臓器を移植されたことにより、半グールとなってしまったカネキを描く2017年公開の「東京喰種」の続編です。
グルメと呼ばれるグールの月山がカネキが働く喫茶店アンテイクにやってくる。半グールのカネキの特殊な匂いに目を付けた月山はカネキを“グール・レストラン”に誘う。イトリから“グール・レストラン”のことを調べてもらえば、カネキがグールになった事件の真相を教えると言われていたカネキは月山と“グール・レストラン”を訪れる・・・。
通常はグールがグールの肉を食べるということは、肉がまずくてありえないことになっているのですが、半グールであるカネキの特殊な匂いにグルメの月山は食欲をそそられます。ということで、食べられたくないカネキと月山との戦いが始まります。
グルメのグール・月山役を演じる松田翔太さんのキザな物腰が、役にピッタリです。完全に主役の窪田正孝くんより目立っています。
 トウカ役が今は千眼美子となってしまった清水富美加さんから山本舞香さんへ変更になりましたが、山本さん、空手をやっていたということで、アクションシーンはなかなかのものです。二段蹴りなんて見事です。
 ラストである人物の正体が明かされましたが、そうなると、まだ続編が製作されるということですね。
ダンスウィズミー(1.8.16) 
監督  矢口史靖 
出演  三吉彩花  やしろ優  chay  三浦貴大  ムロツヨシ  宝田明  浜野謙太  深水元基  大谷亮介  中村久美  菅原大吉  森下能幸  田中要次 
 鈴木静香は大手企業に勤めるOL。同窓会に行く姉から姪を預かった静香は、彼女を連れて遊園地に遊びに行く。そこで、ミュージカルスターになる催眠術にかかってしまった静香は、音楽が聞こえるたびに我を忘れて、歌い、踊らざるを得なくなってしまう。ある日、デートの最中にレストランで踊り出してしまい、多額の賠償請求に、このままでは日常生活に支障を来すと、催眠をかけたマーチン上田に催眠を解いてもらいに行く。しかし、彼はサラ金からの借金を抱え、夜逃げしていた。静香はマーチン上田のサクラ役をしていた千絵とともに、彼の行方を追う・・・。
 「スウィングガールズ」や「ウォーターボーイズ」の矢口史靖監督によるミュージカル・コメディです。静香が出勤する際や会議中、更にはレストランで踊り歌うシーンは圧巻です。矢口監督らしい笑いのシーンも多く、中でも診察中に着信のメロディーで突然踊り出すシーンは最高です。ただ、マーチン上田を探して旅に出てからは、歌はともかく、ダンスの部分が少なく、ちょっと残念だったかなというのが正直な感想です。それにしても僕らの年代の歌が多かったのはなぜでしょう?   
 主演の三吉彩花さんはオーディションで選ばれたそうですが、セブンティーンなどのモデルだっただけあって、綺麗でスタイルはいいのですが、これといって強いインパクトを受けません。綺麗でスタイルがいいという女性は芸能人には多いでしょうから、果たして彼女がこれから大成するのかは難しいところですね。今回のような三枚目キャラで脇役の方が売れるかも。
 それより、斎藤千絵を演じたやしろ優さんの方がキャラが強烈だったこともあって、印象に残ります。特に印象的だったのは、路上に落ちたカップ焼きそばの麺にソースをかけて食べるシーン。悲哀が溢れています。それと、彼女らと旅を共にした山本洋子を演じたchayさんも結婚式のシーンでは歌手とは思えない派手な表情を見せてくれましたね。
 とにかく、単純に笑って、楽しめる映画でした。 
イソップの思うツボ(1.8.17) 
監督  上田慎一郎  浅沼直也  中泉裕矢       
出演  石川瑠華  井桁弘恵  紅甘  斉藤陽一郎  高橋雄祐  佐伯日菜子  渡辺真起子  川瀬陽太  藤田健彦  桐生コウジ 
 「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督を始めとする3人の監督による共同製作作品です。あの「カメ止め」の後ですから上田監督に大きな期待が寄せられるのはやむを得ないところです。かなりハードルが上がってしまったので、正直なところ、「カメ止め」ほどの驚きはありませんでした。
 カメだけが友達の内気な女子大生・亀田美羽、美羽のクラスメートで人気タレント家族の一員である恋愛体質の兎草早織、父と2人で復讐代行業を営む戌井小柚の3人の女性と彼女たちの家族の物語です。ウサギとカメ、イヌの名前を持つ3つの家族がどんなストーリーを紡ぐのかと思ったら・・・。ネタバレになるので詳細は書きませんが、今回はすべてが明らかになってからが「カメ止め」のようなスッキリ感はなく、ブラックな雰囲気のままです。ひとつだけネタバレすると、今回の作品では本当に死体が出ますからね。
 ツッコミどころもいろいろとありました。ネタバレにならない程度に言うと、臨時教員としてやってきた八木に恋愛体質の兎草が熱を上げるのはともかく、なぜ、美羽まで気のあるような態度を示すのか。これはすべてが明らかになったあとで振り返ると、おかしいだろうと言わざるを得ません。
 それと、早織の父親の不倫相手である金髪の娘も、正体がすぐわかってしまいますからねえ。彼女が佐織の父親と不倫関係になることをある人物は許すのですかねえ。いくら目的があるからといっても。これは納得できません。
 「カメ止め」では、まったく無名の役者さんたちを使いましたが、今作では見たことがある役者さんもいます。早織を演じていたのは「クロノス・ジョウンターの伝説」に出演していた井桁弘恵さんですし、早織の母役は佐伯日菜子さん。小袖の父を演じた斉藤陽一郎さんも、名前は知りませんでしたが、どこかで見たことのある役者さんでした。 
ロケットマン(1.8.23) 
監督  デクスター・フレッチャー 
出演  タロン・エガートン  ジェイミー・ベル  リチャード・マッテン  ブライス・ダラス・ハワード  ジェマ・ジョーンズ  ステファン・グラハム  スティーブ・マッキントッシュ  テイト・ドノヴァン  チャーリー・ロウ 
 昨年、クイーンのフレディ・マーキュリーの生涯を描いた作品「ボヘミアン・ラプソディー」が公開され、大ヒットしましたが、二匹目のドジョウを狙ったのでしょうか、この作品はイギリスの歌手エルトン・ジョンの生涯を描いたものです(彼はまだ生きていますが。)。
 作品全体を通してエルトン・ジョンの曲が流れます。「ユア・ソング」くらいしか知らない僕はともかく、ファンにとってはたまらないでしょうね。
 両親からの愛情に飢え、ハグされることを望み続けたエルトン・ジョン。母に自分がホモセクシュアルだと告白したときの電話で、母から「知っていた。一生、誰からも愛されない。」と言われるのはショックだったでしょうねえ。また、母と別れて再婚した父親にスターとなった自分の姿を見せて誉めてもらいたかったのに、通り一遍の対応で、何より自分と違って異母弟たちには愛情を注いでいる姿を見るのは辛かったことでしょう。どうして、自分では駄目だったのかと思ってしまいますよね。更には、自分を愛してくれていると思ったマネージャーのジョン・リードにも裏切られ、信じる者がいなくなった彼がアルコールや薬に逃げるのもよくあるパターンに陥ってしまったと言わざるを得ません。
 エルトン・ジョンを演じたのはタロン・エガートン。「キングスマン」の主演で名前が知られた俳優さんですが、ちょっとエルトン・ジョンの面長の容貌と異なる四角い顔はともかく、歌はなかなかのもの。彼自身、演劇学校に入学するオーディション時に歌った曲がエルトン・ジョンの「ユア・ソング」だったそうなので、元々歌は上手だったのでしょう。エンドロールで奇抜な衣装を着たエルトン・ジョン本人の実際の姿が映し出されるのも楽しいところです。
 公開初日の地元の映画館は、3分の1も席が埋まっていませんでしたが、個人的には「ボヘミアン・ラプソディー」にも負けないくらいの作品だと思います。 
引っ越し大名(1.8.30) 
監督  犬童一心 
出演  星野源  高橋一生  高畑充希  濱田岳  松重豊  西村まさ彦  富田靖子  小澤征悦  正名僕蔵  及川光博  向井理  和田聰宏  山内圭哉  岡山天音  丘みどり 
 姫路城を居城とする松平藩に、幕府から九州の豊後日田藩への国替えが命ぜられる。更には減封が伴うという厳しいもの。原因は男色の柳澤吉保の誘いを殿様の松平直矩が素気無くしたことによる仕返しらしい。前回の国替えを取り仕切った引っ越し奉行は既に亡くなっており、面倒で大きな責任のある国替えの業務を誰も率先して引き受ける者がいない。国家老からお前はどうだと指名された鷹村源右衛門は、自分の代わりに幼馴染で引き籠りの書庫番・片桐春之介を推薦する。突如、引越し奉行を命ぜられた春之介だったが、どうやって取り掛かっていいかわからず、仕方なく亡くなった前任の引っ越し奉行の家に行き、前回の国替えの時の書付等を見せてくれと娘の於蘭に頼むが・・・。
 幼馴染の源右衛門としかまともに話すことができなかった引き籠りの男が、引越し奉行として苦労しながら国替えを無事成し遂げるまでを描いていきます。
 春之介を演じたのは星野源さん。この役のような生真面目な若者役は「逃げるは恥だが役に立つ」の津崎平匡のようで、お似合いです。対して、いつもと違う印象を与えてくれるのは高橋一生さん。現代劇でのハンサムで知的な青年役とは異なり、大雑把で細かいことは苦手な、頭より剣の方が得意という源右衛門を演じます。春之介を助ける於蘭を演じるのは高畑充希さん。テレビの「過保護のカホコ」の根本加穂子のようなちょっと世間知らずで能天気の役柄もいいですが、この作品のような気の強いしっかりとした女性役もお似合いです。国替えの原因を作ったお殿様・松平直矩を演じたのは、“王子様”こと及川光博さん。吉保の誘いをはねつけたものの、実は男色のお殿様を演じるのはこの人しかいないというはまり役ですね。そのほか、松重豊さん、西村まさ彦さん、小澤征悦さんら芸達者な俳優陣が勢揃いです。中に、覚せい剤で逮捕されたピエール瀧さんが出番は少ないものの重要な役どころで出演していましたが、上演中止にならなくてよかったです。
 とにかく、難しいことは考えずに笑って楽しむことができる作品です。 
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(1.8.30) 
監督  クエンティン・タランティーノ   
出演  レオナルド・ディカプリオ  ブラッド・ピット  マーゴット・ロビー  アル・パチーノ  ダコタ・ファニング  マイク・モー  マーガレット・クアリー  ティモシー・オリファント  ルーク・ペリー  エミール・ハーシュ  ブルース・ダーン     
 1969年にハリウッドの高級住宅街で起こったシャロン・テート事件を題材に、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットという大物俳優の共演に加え、監督がクエンティン・タランティーノということで、公開前から大きな期待が寄せられていた作品です。
 シャロン・テート事件は「ローズマリーの赤ちゃん」などで当時人気だったロマン・ポランスキー監督宅にチャールズ・マンソンを信奉するカルト集団の3人が押し入り、妊娠中だった妻で女優のシャロン・テートとその友人たちを惨殺した事件です。作品は、ラストでこの事件を描いていきますので、事件のことを知って観た方が楽しむことができます。
 リック・ダルトンは落ち目のテレビ俳優。かつてはシリーズ作品に主演もしていたが、今では単発作品に出るくらいで、映画界への転身を考えていたがなかなかうまくいっていない。クリフ・ブースはそんなリックが雇うスタントマン。クリフには妻殺しの噂があり、彼自身もリックのスタントマン以外の仕事がなかなか見つからなかった。ある日、リックの家の隣に映画監督のロマン・ポランスキーと妻であり女優のシャロン・テートの夫妻が引っ越してくる・・・。
 物語は自分の今後に悩むディカプリオ演じるリック・ダルトンを中心にして、彼の車の運転手役や家の修理まで頼まれるブラッド・ピット演じるクリフ・ブースとの関係を描きながら、マーゴット・ロビー演じるシャロン・テートの日常を描いていきます。
 「大脱走」のスティーブ・マックィーンの演じた役がマックィーンが降りればリックではなかったのかと共演者に尋ねられたリックが、「自分がその代わりの候補に入っていた」と何気なく自慢し、それを夢想するシーン(実際の大脱走の映像でマックィーンの姿がディカプリオにCGで変わっています。)はちょっと哀れです。そんなリックが、セリフに詰まってしまったことを悔やみ、自分を罵倒するシーンは見ものです。ディカプリオは熱演でしたねえ。一方のブラッド・ピット演じるクリフは、通常は冷静なのに、スイッチが入るととんでもなく暴力的になる男です。妻を殺害したという噂が出るのも当然という雰囲気で、ラストでその性格が遺憾なく発揮されます。
 大物俳優二人以外に強い印象を残したのは、映画の子役として出演し、ディカプリオと掛け合いを演じたジュリア・バターズという10歳の女の子。この女の子、将来大物になりそうな予感です。
 当時、ハリウッドで「グリーン・ホーネット」に出演していたブルース・リーも登場します。ただ、ブラッド・ピット演じるクリフに殴られ、投げ飛ばされるなど、かなりブルース・リーのイメージを損なうシーンが登場するので、ブルース・リーのファンには納得できないでしょうねえ。
 ラストはクエンティン・タランティーノらしい残酷描写が続きます。「ディカプリオくん、そこまでやっちゃうの!」と、びっくりです。題名が「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」なのは、ラストを観ると「なるほどなぁ~」と思います。この結末だからこそのあの題名です。めでたし、めでたしなんでしょうね。 
アス(1.9.13) 
監督  ジョーダン・ビール 
出演  ルピタ・ニョンゴ  ウィンストン・デューク  エリザベス・モス  ティム・ハイデッカー  シャハディ・ライト・ジョセフ  エバン・アレックス  カリ・シェルドン  ノエル・シェルドン  アナ・ディオブ  ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世 
 1986年、アデレード・ウィルソンは両親とともにサンタクルーズにある行楽地を訪れる。ビーチに建てられたミラーハウスに迷い込んだアデレードは、そこである恐怖体験をし、トラウマにより失語症となる。 成長したアデレードは失語症を克服し、夫・ゲイブと二人の子を持つ母になり、一家はサンタクルーズにあるビーチハウスを遊びで訪れる。その夜、ハウスに4人の赤い服を着た不審者が押し入ってくる。侵入者たちと対面したアデレードたちは、4人が自分たちとそっくりな顔をしていることに気づく。アデレードたちを襲う4人からどうにか逃げ出し、一家は友人の家へと向かうが・・・。
 アメリカ全土にドッペルゲンガーが出現し、殺戮が行われ、実際の人間と取って代わろうとするホラー作品です。自分と同じ顔の人間が自分に成り代わるために襲ってくるなんて、怖いです。みんながハサミを持っているのは何か理由があるのでしょうか。そもそもドッペルゲンガーはアメリカ軍の実験によって作られたということですが、それがなぜなのかは語られません。彼らの地下の居住区にウサギがいるのも、何かの象徴でしょうが、わかりません。なぜ、彼らが延々と手をつなぎ合うのかも。ここは、昔のテレビのCMのシーンにヒントがあったと思うのですが、理解できませんでした。
 主人公のアデレードを演じたのがアカデミー賞女優のルピタ・ニョンゴです。アカデミー賞女優でもこんなスプラッター系のホラーに出演するんですね。アデレードのドッペルゲンガーであるレッドのときのしゃがれ声は怖かったですね。最後は「ゲット・アウト」の監督らしいどんでん返しで終わります。 
記憶にございません(1.9.13) 
監督  三谷幸喜 
出演  中井貴一  ディーン・フジオカ  石田ゆり子  草刈正雄  佐藤浩市  小池栄子  斉藤由貴  木村佳乃  吉田羊  山口崇  田名圭  梶原善  寺島進  藤本隆宏  迫田孝也  ROLLY  宮﨑エマ  後藤淳平  濱田龍臣  有働由美子  飯尾和樹  小林隆  近藤芳正  市川男女蔵  小澤雄太  阿南健治  川平慈英 
 この夏の参議院選も24年ぶりに投票率50%を割る48.8%という低投票率が表しているように政治への関心がない人が増えている中、三谷幸喜監督が史上最低の支持率の総理大臣を主人公に政治の世界を描いた皮肉の効いた作品を製作してくれました。
 傲慢な性格で憲政史上最低の支持率2%台という黒田内閣総理大臣。ある日の演説中に聴衆の投げた石が頭に当たり、大人になってから以降の記憶を失ってしまう。秘書の井坂はこの事実が知られたら大変なことになると、記憶喪失の事実を隠すが、総理としての記憶がなくなり、何をしていいのか全く分からない黒田は右往左往する。記憶を失う前と違って、人に優しさを見せる黒田に周囲の人々は戸惑うが、小学校時代の恩師から政治のことを学び直した黒田は、しがらみも全て忘れたことをいいことに、もう一度正しい政治家としてやりなおそうとする・・・。
 難しいことを考えずに笑ってくださいという映画です。でも、どこかで、この映画と違って今の政治はなぁと考えてしまう映画でもあります。アメリカとの貿易もアメリカの言うなりになるどこかの総理と違って、自分の意見をはっきり言う黒田がアメリカ大統領に嫌われるのではなく逆に認められてしまうシーンは、笑いを通して、三谷さん、完全に今の政治を皮肉っていますね。
 黒田を演じるのは中井貴一さん。もうベテラン俳優ですから観ていても安心です。傲慢な黒田から、記憶をなくしてオドオドする黒田まで、ものの見事に演じ切ります。吉田羊さん演じる野党の党首に迫られて逃げ回るシーンには大笑いです。
 権力を握り、歴代の総理を意のままに操り、影の総理と言われる官房長官の鶴丸を草刈正雄さんが演じます。NHK朝ドラで演じている一本筋の通った男と違って、一癖も二癖もある男をユーモアを交えて演じます。
 黒田の妻を演じるのが石田ゆり子さん。このところ、50歳には見えない美しさで評判ですが、清楚な役より、今回の世間知らずの我が儘な女性役の方がお似合いです。黒田家のお手伝いを演じるのが、斉藤由貴さん。ようやく一時の不倫騒動が鎮静化してきましたかねえ。そのほか、秘書役にディーン・フジオカさん、小池栄子さん、政治ゴロのフリーライターに佐藤浩市さん、また、冒頭で病院から抜け出した黒田を保護した警官役を田中圭さんが演じます。やっぱり、彼はイケメンよりちょっと笑える役がピッタリです。
 様々な大物俳優がカメオ出演を果たしています。黒田に投石した人物に寺島進さん、病院から抜け出した黒田に絡む酔っ払いに近藤芳正さん。大物俳優ではありませんが、アナウンサーの有働由美子さんがテレビのキャスターとして登場するのにはびっくり。あのメイク、さすが有働さんらしいと言わざるを得ません。パンフレットに天海祐希さんの名前がありましたが、どこに出演していたのかわからなかったですねえ(調べたところ、黒田が病院を抜け出して食事に入った店のテレビで放映していた番組の中に顔を見せていたようです。これでは、わかりませんよねえ。)。
 黒田の小学校時代の恩師として山口崇さんが出演しています。お年を召しましたねえ。「天下御免」の平賀源内役が懐かしいです。 
見えない目撃者(1.9.20) 
監督  森淳一   
出演  吉岡里帆  高杉真宙  大倉孝二  浅香航大  酒向芳  松大航也  國村隼  渡辺大和  柳俊太郎  松田美由紀  田口トモロヲ 
 浜中なつめは警察官だったが、新人研修を終えていよいよ派出所勤務となる直前、弟を乗せた車で不注意から事故を起こし、弟は死亡、自らは失明してしまう。警察を辞め、事故から3年がたち、今は母と二人で生活していたが未だに弟を亡くしたことから立ち直れないでいた。ある日、弟の墓参りに行った帰りに、彼女の横を通り過ぎたスケボーと車が接触した音を聞き、なつめは車に近づくが、その車の中から助けを呼ぶ女性の声を聞く。警察に通報するが、なつめが聞いた名前の女性の行方不明者はいず、また、車と接触した男子高校生・国崎春馬も女性は乗っていなかったと証言したため、なつめの言い分は警察で信じてもらえなかった。なつめは一人で女性の行方を探そうとするが・・・
 視力を失った元警察官の女性と猟奇殺人犯との戦いを描く作品です。韓国映画「ブラインド」のリメイクになりますが、そちらは未見。冒頭で新人警察官としての訓練の様子を描き、なつめが拳銃を撃つことにも格闘技にも長けていることを読者の頭の片隅に記憶させますが、このことにより、ラストでの犯人と彼女との闘いに違和感を覚えさせません。ただ、警察学校の卒業式で代表を務めていたからには、成績は一番だったということですが、あの細身の吉岡里帆さんではあまり強そうに見えませんね。
 キャスティングの関係で途中で犯人が分かってしまうのは残念。まあ、さすがにこの猟奇殺人犯を無名の役者さんという訳にはいかないのでやむを得ないところでしょうけど。
 最初のヤル気のない高校生から次第になつめとともに犯人を捜すようになる春馬を演じるのは高杉真宙くん。彼は、このところ、映画の「賭ケグルイ」、テレビの「サギデカ」など、売れっ子ですねえ。 
アド・アストラ(1.9.20) 
監督  ジェームズ・グレイ 
出演  ブラッド・ピット  トミー・リー・ジョーンズ  ドナルド・サザーランド  リヴ・タイラー  ルース・ネッカ  ジョン・オーティス 
(ちょっとネタバレ)
 ブラッド・ピット主演のスペース・アドベンチャー作品です。題名の「アド・アストラ」とは、ラテン語で「星の彼方へ」という意味だそうです。
 ロイ・マクブライドは有名な宇宙飛行士を父親を持つ宇宙軍の宇宙飛行士。彼の父は、「リマ計画」という太陽系外有人探査計画のため宇宙に出たまま行方不明となっていた。このところ、頻繁に起きるサージ=電気嵐によって地球の危機が叫ばれる中、ロイは宇宙軍の上官に呼び出され、実は父が生きており、サージ電流の原因は父が海王星付近で行っている実験にあると説明される。このままでは地球は滅亡する、息子の言葉なら父も耳を貸すだろうということで、ロイは火星から父にメッセージを送ったが返事はなく、核攻撃のため、父がいるとされる太陽系の果て、海王星へ向かうロケットに強引に乗り込む・・・。
 宇宙を舞台にしたSF作品ですが、「スターウォーズ」や「スタートレック」のようなスペースオペラ物ではなく、予告編を見た限りでは、「インタステラ―」や「2001年宇宙の旅」のような雰囲気だったので期待して観に行ったのですが、正直のところ、途中で寝落ちしそうになってしまったくらいで、期待を裏切られる作品でした。月で強盗団に襲われたり、漂流している宇宙船の中であるもの(ネタバレになるので伏せます。)に襲われたりといったサスペクタルなシーンもあるのですが、ほとんどが静かなシーンが続きます。宇宙を舞台にした父と子の感動の物語だと思ったのに、父親は地球外生物が発見できず、地球に戻ろうとした部下を皆殺しにする単なる狂人としか言いようがない人物でした。
 とにかく、理解できないことばかり。冒頭、宇宙ステーション(パンフレットによると宇宙アンテナ)で作業をしていたロイがサージのため、宇宙ステーションから落下するのですが、なぜか地上へとパラシュートで無事に降ります。宇宙ステーションのあった場所は大気圏外ではなかったのでしょうか。また、父親が関わったリマ計画がなぜサージを起こし、それが地球の滅亡に繋がるのかの説明もなされません(それとも寝落ちした時に説明がなされたのか。)。火星の基地の責任者は、自分の両親がロイの父親に殺されたのに、なぜロイを助けるのか。ロケットが噴射している中、ロケットの入口が外から開けることができるのか。宇宙船の部品を盾にして惑星の岩石の塵の中を通り抜けるというのも凄いし、あの広い宇宙空間で、そんなに都合よく自分の宇宙船に辿り着けるのかとも思ってしまいます。その上、核爆発のエネルギーの反動によってロケットを動かし、宇宙から地球まで戻ってくるという考えも凄い。
 何だか、頭の上にはてなマークがつくことばかりで、映画の中にのめり込むことができず、楽しむことができませんでした。 
アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク(1.9.21) 
監督  今泉力哉 
出演  三浦春馬  多部未華子  矢本悠馬  森絵梨佳  恒松祐里  萩原利久  貫地谷しほり  原田泰造  成田瑛基  MEGUMI  八木優希  濱田マリ  こだまたいち  柳憂怜  藤原季節  中川翼  祷キララ  伊達みきお・富澤たけし 
(伊坂さんの原作を読んでいない人にはネタバレあります)
 伊坂幸太郎さん原作の同名小説の映画化です。もともとは歌手の斉藤和義さんが斉藤さんのファンだった伊坂さんに作詞を依頼したところ、小説だったらということで執筆したのが斉藤さんの「ベリー ベリー ストロング ~アイネクライネ~」の初回限定盤に封入された「アイネクライネ」と「ライトヘビー」の2作。その後、4作が書き加えられて原作は6編からなる連作短編集となっていますが、テーマは出会いです。映画はそれらをうまく組み合わせた作品になっています(「メイクアップ」だけはこの映画には取り入れられていないようです。)。
 原作がある作品だと、ついつい原作と比べてしまうのですが、原作と大きく異なるのは、原作にはない「アイネクライネ」で描かれた佐藤と紗季の出会いのその後が描かれているところ。原作では街頭アンケートに立つ佐藤に紗季が「立ってる仕事って大変ですよね」と言うのに対し、佐藤が「座りっぱなしもきっと大変だと思うけど」と返すのが個人的にはすごく好きでした。そして、その後に工事現場で誘導員をしている紗季と車で通りかかった佐藤との間で逆の会話がなされるのも。原作は工事現場での出会いで終わっているので、読者にその後二人はどうなるのだろうと考える楽しみを与えてくれました。映画では佐藤は、工事現場を通り過ぎた後に紗季にビンゴ大会の景品として持っていたシャンプーを渡すために戻りますが(アンケートを受けてくれた時に手に書いてあった「シャンプー」のシーンが遠因となっています)、そんな積極的な行動をとった佐藤がプロポーズに躊躇しますかねえ。そういえば、バズ・ライトイヤーのエピソードもなかったですねえ。
 それと原作の「ルックスライク」で描かれた久留米和人の父と和人の担任の女性との関係が映画では残念ながら描かれませんでした。映画の中でも父親が使った「こちらがどなたのお嬢さんか、ご存じで喋っていらっしゃるんですか」は、原作の方が上手く使われていた気がします。
 映画の主題歌も斉藤和義さんが提供していますが、ファンとしてはやっぱり「ベリー ベリー ストロング ~アイネクライネ~」を使って欲しかったところ。とあるシーンで、メロディーが流れていた気がしますけど。
 出演していた多部未華子さんと森絵梨佳さんの二人の女優さんがとっても素敵でした。特に佐藤の友人・織田一真の妻・由美を演じた森絵梨佳さんの好き勝手な言動をする夫を嫌な顔をせずに支える妻の優しい表情に惹かれます。
 作品の舞台が仙台ということもあって、ウィンストン小野のセコンド役として仙台出身のサンドウィッチマンの二人も出演しています。 
jジョーカー(1.10.4) 
監督  トッド・フィリップス 
出演  ホアキン・フェニックス  ロバート・デ・ニーロ  ザジー・ビーツ  フランセス・コンロイ  ビル・キャンプ  シェー・ウィガム  ブレット・カレン  グレン・フレシュラー  リー・ギル  ダグラス・ホッジ  ダンテ・ペレイラ=オルソン  マーク・マロン  ジョシュ・パイス  シャロン・ワシントン  ブライダン・タイリー・ヘンリー 
 来年2月に発表されるアカデミー賞候補として有力な作品です。DCコミックスのヒーロー、バットマンの宿敵であるジョーカーを描いたものですが、この作品にバットマンは登場しません。物語はスタンダップコメディアンを目指していたアーサー・フレックが、どうしてジョーカーになったのかを描いていきます。
 アーサー・フレックは大道芸人をしながら病気の母ペニーの介護をし、脳に障害を持つ自身も福祉センターでカウンセリングを受けながら毎日を過ごしていた。ある日、閉店セールの仕事に出たアーサーは、ストリートギャングにセールの看板を奪われ、追いかけたあげくに殴る蹴るの暴力を振るわれる。そんなアーサーに同僚のランドルは拳銃を与えるが、アーサーはその拳銃を小児病棟での仕事中に子どもたちの目の前で落とし、それを理由に首になってしまう。その日、ピエロの格好のまま地下鉄で帰る途中、女性に絡んでいた男たちと口論になったアーサーは彼らを拳銃で撃ち殺してしまう。おりしもゴッサムシティでは貧しい者の持てる者への憎悪が高まっている中、殺された男たちがウェイン産業のエリート会社員だったことから、犯人のピエロは一躍ヒーロー扱いされ、ピエロの格好をしたデモが起きるようになる・・・。
 ジョーカー役を演じたホアキン・フェニックスの演技が強烈な印象を与えます。体重をかなり絞ったようで、「マシニスト」のクリスチャン・ベイルほどではありませんが、骨が浮いて見える背中は痛々しいほどです。義父から受けた暴行による脳への障害のため、おかしくなくても発作的に笑ってしまうというアーサーの演技はアカデミー男優賞でもノミネートされるのではと思うほどです。バックに流れる「スマイル」という歌があまりに皮肉に感じてしまいます。
 ブルース・ウェインは登場しますが、まだ子どもで、バットマンが生まれる以前の、そしてそのきっかけになる事件が起きます。ジョーカーとバットマンの思わぬ関わりも描かれ、「え~!そうなの!」という驚きの事実が語られたりします。ちょっと、うっちゃられますが。
 人気トーク番組「マレー・フランクリン・ショー」の司会者で、アーサーが憧れる相手としてロバート・デ・ニーロがマレーを演じます。この作品の脚本はマーチン・スコセッシの「タクシー・ドライバー」に影響を受けて書かれたそうですが、その主演がロバート・デ・ニーロでしたね。
 ワーナー・ブラザース映画の今年一番のオープニング記録を達成し、世界中で記録を塗り替える大ヒットとなっているようですが、アメリカではこの映画を観て銃乱射事件が起きるのではないかという危惧もあり問題化していたそうですから、そこは賞レースには不利なところです。 
ジョン・ウィック:パラベラム(1.10.4) 
監督  チャド・スタエルスキ 
出演  キアヌ・リーブス  ハル・ベリー  イアン・マクシェーン  ローレンス・フィッシュバーン  マーク・ダカスコス  アンジェリカ・ヒューストン  エイジア・ケイト・デュロン  ランス・レディック 
 シリーズ第3弾です。前作で聖地である「コンティネンタルホテル」で殺人を犯したジョン・ウィックは追放処分となり、その首には賞金がかけられ、1時間の猶予を与えられる。今回はその逃亡から始まります。
 ジョン・ウィックが追手を倒しながら逃げる中、主席連合の裁定人がコンティネンタルホテルにやってくる。彼女は1時間の猶予を与えたウィンストンに7日の間にホテルを明け渡すよう求め、また、バワリー・キングにも7日の間に地下組織の王を降りるよう求める。ジョン・ウィックはルスカ・ローマの首領・ディレクターに助けを求め、カサブランカへの船を手配してもらい、かつて血の聖印を結んだソフィアの元へ向かう・・・。
 冒頭から最後まで、ジョン・ウィックはいったい何人殺すのだろうというほどの数の人が殺されます。ジョン・ウィックの方はなかなかやられませんが、個人的には近距離での拳銃やナイフ、果ては格闘技でジョン・ウィックに対するよりは、遠く離れたところから、ライフルで狙撃すれば簡単に倒せるだろうにと思ってしまいます。
 ジョン・ウィックを演じるキアヌ・リーヴスですが、年齢の割には格闘技やオートバイでのアクションシーンを頑張っていますが、ちょっと太り気味な感じもあって、どうも身体が重そうです。特に、走るときは、内股でドタドタとした様子で、余計それを感じてしまいます。「マトリックス」の時のようなキレは見られません。
 それに対して、ソフィアを演じたハル・ベリーは歳は取りましたが、相変わらずスタイルが良くて綺麗で、キレのあるアクションを見せてくれます。
 裁定人がジョン・ウィック殺害を命じたのは表の顔が寿司職人の日本人・ゼロですが、これがあまりに日本語が片言で、さすがに日本人が見ると違和感があります。きゃりーぱみゅぱみゅの歌が流れていたりして、日本へのサービス満点ですがねえ。
 愛犬のために組織の掟を破った割には、ジョン・ウィックは主席の上にいる首長に許しを請いて組織に戻ったり、また、裏切ったりと、いろいろと忙しいです。ラストからすると、次はいよいよ主席連合との本格的な戦いになりそうです。 
蜜蜂と遠雷(1.10.5)
監督  石川慶
出演  松岡茉優  松坂桃李  森崎ウィン  鈴鹿央士  臼田あさ美  ブルゾンちえみ  福島リラ  眞島秀和  片桐はいり  光石研  平田満  斉藤由貴  鹿賀丈史
 直木賞を受賞した恩田陸さん原作の同名小説の映画化です。映画は2時間強の中で完結するので、小説に書かれたすべてを描くには無理があり、この作品も、原作では3次予選があって本選のところを2次予選があって本選という形に縮減されています。また、原作どおり4人のコンクール出場者を描いていきますが、映画では栄伝亜夜を中心として描き、他の3人は亜夜との関わりの中で主に描かれているので、原作のように4人の人生に深くは踏み込めなかった感があります。。
 幼い、頃母が死んだショックから演奏会をドタキャンし、一線から姿を消していた天才少女・栄伝亜夜を演じたのは松岡茉優さん。仕事をしながらピアニストを目指す高島に栄冠を!と原作を読んだ時にも思った高島明石を演じたのは松坂桃李さん。亜夜の幼馴染である日系人でジュリアード音楽院に在籍するマサル・カルロス・レヴィ・アナトールを演じたのは、「レディ・プレイヤー1」でスティーブン・スピルバーグに見いだされた森崎ウィンさん。天才ピアニストに推薦されてコンテストに出場した風間塵を演じたのは新人の鈴鹿央士さん。4人とも、実際にピアノを弾くシーンは、他の本物のピアニストが弾いていますが、彼ら4人もいかにもピアノを弾いているように見せるのはやはり俳優さんですねえ。それなりに練習はするのでしょうけど、本当にピアノを弾いているみたいです。
楽園(1.10.18) 
監督  瀬々敬久 
出演  綾野剛  杉咲花  佐藤浩市  柄本明  片岡礼子  村上虹郎  黒沢あすか  根岸希衣  石橋静河 
 紬が一緒に下校した愛華が行方不明となる事件が起きてから10年が過ぎたが、愛華の家族はもちろん、紬自身も心の中に事件のことを引きずったままでいた。そんなとき、再び少女失踪事件が起き、以前の事件当時から疑いを持たれていたリサイクル業を営む豪士が疑わしいという声があがり、人々は豪士の家に向かう。人々に追われ、逃げる豪士はラーメン屋に飛び込み、灯油を頭からかぶる・・・。一方、限界集落の山の中で妻を亡くしてから養蜂業をひとりで営む善次郎は、周囲の老人たちから養蜂で村おこしを考えたらどうかと言われるなど、村の中で良好な関係を築いていたが、村おこし事業の補助金申請を善次郎が単独で行ったことから、集落のまとめ役である老人との間に亀裂が生じる。やがて、村八分状態となった善次郎に嫌がらせが続く中で、事件が起きる・・・。
 吉田修一さんの短編小説集「犯罪小説集」の中の「青田Y字路」と「万屋善次郎」を組み合わせ脚色した内容となっています。原作では別のストーリーですが、映画の中でも豪士と善次郎との間に直接の関係はありません。善次郎が他の地元の人々と同様に豪士のラーメン屋への立て籠もり事件の目撃者になったり、紬が同級生に言い寄られる場面で善治郎が声をかけたりするだけです。
 豪士のストーリーの方は、ミステリっぽい作りになっています。愛華失踪事件の犯人は誰なのか。豪士が本当に犯人なのかが紡と豪士との関わりの中で語られていきます。ネタバレになるので詳細は言えませんが、ある意味どんでん返しになるのでしょうか。善次郎のストーリーの方は限界集落にやってきて自分の居る場所を築いたと思っていた善次郎が、旧弊な限界集落の中で孤立していく中で起こる事件が描かれます。どちらも犯罪とは縁がなかった人物が犯罪に手を染めてしまう過程が描かれていきます。
 豪士を演じた綾野剛さんが、日本にやってきた難民の子どもで、幼い頃からいじめられ、優しい言葉など掛けられたことのない孤独な人物という、いつものカッコよさはまったく見られない役どころを見事に演じています。紬を演じるのは杉咲花さん。若手俳優の中では演技力ダントツですね。 
スペシャルアクターズ(1.10.18) 
監督  上田慎一郎 
出演  大澤数人  河野宏紀  富士たくや  南久松真奈  北浦愛  上田耀介  清瀬やえこ  仁後亜由美  淡梨  三月達也  川口貴弘  櫻井麻七  津上理奈  小川未祐  原野拓巳     
 昨年「カメラを止めるな!」が大ヒットした上田慎一郎監督作品です。
 俳優になりたいと思う和人だったが、極度の緊張状態になると気絶するという持病を持つため、オーディションを受け続けるが、なかなか合格しない。ある日、オーディションに落ち、落ち込んで座っていた和人の前で酔った男がカップルに絡み、逆に殴り倒されるという場面に出くわす。よく見ると殴り倒された男は音信不通だった弟の宏樹。そこに殴った男が戻ってきて宏樹に金を渡す。宏樹は俳優プロダクションの仕事で、カップルの男性が女性にいいところを見せるための演技に一役を買っていたのだった。宏樹は自分が所属する俳優プロダクション「スペシャルアクターズ」に和人を連れていく。たまたまそこに来た姉が女将を務めるホテルを乗っ取ろうとする似非新興宗教「ムスビル」から姉の目を目覚めさせて欲しいという妹の依頼に和人も参加することとなるが・・・。
 あの「カメ止め」の上田監督の作品ですから、素直に物語が進むはずがないと思って観ていましたが、意外と普通の展開。「スペシャルアクターズ」の面々が似非新興宗教「ムスビル」に潜入して罠を仕掛けていく様子が描かれていきます。有名俳優も出演していないし、素人たちがバタバタと演技をしているという、素人っぽさ満載の感じで、そこは「カメ止め!」の雰囲気と同じです。ただ「カメ止め」には素人感満載の中でも、監督役をやった濱津隆之さんやプロデューサー役をやったどんぐりさんのような強烈な個性の持ち主がいましたが、こちらにはあれほどの強烈なキャラは見当たりませんでした。
 とはいえ、最後はどんでん返しを見せた上で、更なるどんでん返しで観客を驚かせます。まあまあ楽しく観ましたが、さすがにこの路線を続けていくのは、観客もわかってきましたし、今後苦しくなってくるのでは。 
イエスタデイ(1.10.26) 
監督  ダニー・ボイル 
出演  ヒメーシュ・パテル  リリー・ジェームス  エド・シーラン  ジョエル・フライ  ケイト・マッキノン  ジェームズ・コーデン  アレクサンダー・アーノルド  ミーラ・サイアル  サンジーブ・バスカー 
(ネタバレあり)
 ジャックは元教師で今は売れないシンガーソングライター。全世界が12秒間だけ謎の停電になったときに交通事故に遭い、気を失って病院に運ばれる。退院し、幼なじみでマネージャー役のエリーから贈られたギターでビートルズの「イエスタデイ」を奏でると、聞いていた友人たちは感動はしたが、ジャックがビートルズの歌と言っても、誰もビートルズというグループを知らないことに驚く。不審に思ってパソコンでビートルズを検索したところ、検索結果に出てきたのはカブトムシ。ジャックは、ビートルズの存在しない世界に来てしまったことに気づく。やがてジャックはビートルズの曲を自分の曲として歌い、CD化し、それを人気歌手のエド・シーランが聞いたことから、運命が回り始める・・・。
 あのビートルズの存在しない世界という想像だにしないアイデアを映画化したのは「スラムドッグ・ミリオネア」の監督、ダニー・ボイルと「ラブ・アクチュアリー」の脚本家、リチャード・カーティスのコンビです。
 リチャード・カーティス脚本の「ラブ・アクチュアリー」は大好きな作品ですが、その中でも一番好きなシーンは、親友と結婚した好きな女性に愛を告白するシーン。そのバックに流れていたのがビートルズの「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ」でしたが(→「ラブ・アクチュアリー」を見直したら、このシーンに流れていたのは「きよしこの夜」でした。「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ」は、結婚式で新郎新婦にサプライズを仕掛けた時に流れた曲ですね。ずっと勘違いしていました。)この作品でも主人公ジャックジャックがエリーに愛を告白するシーンに「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ」が流れました。リチャード・カーティス、好きなんですねえ。
 ビートルズというグループが存在しないまでも、では個々のメンバーは存在しないのかと思ったら、登場してくれましたよ。ビートルズが存在しなかった故に暗殺されることのなかったジョン・レノンが登場します。これはビートルズファンにはグッときますよね。演じているのはノン・クレジットですが「フル・モンティ」のロバート・カーライルだそうです。ちょっと見ると、似ていますよね。
 ジャックを演じるのはヒメーシュ・パテル。インド系の俳優さんで、イケメンではありませんが、歌はなかなかうまいです。鑑賞した映画館は爆音上映を売りにする立川シネマシティですが、やはり地元の映画館と比べると音は格段によかったです。ただ、できれば、ぶつ切りではなく、じっくりまるまる聞いてみたかったですね。 
IT イット THE END“それ”が見えたら、終わり(1.11.1) 
監督  アンディ・ムスキエティ 
出演  ジェームズ・マカボイ  ビル・スカルスガルド  ジェシカ・チャスティン  ビル・ヘイダー  イザイア・ムスタファ  ジェイ・ライアン  ジェームズ・ランソン  アンディ・ビーン  ジェイデン・マーデル  ワイアット・オレフ  ソフィア・リリス  フィン・ウルフハード  ジェレミー・レイ・テイラー  チョーズン・ジェイコブズ  ジャック・デイラン・グレイザー 
2017年9月に公開された「IT イット“それ”が見えたら、終わり。」の続編であり、完結編です。
 あれから27年が過ぎ、それぞれの人生を歩んでいた“ルーザーズ・クラブ”の面々のもとに、今もデリーに住むマイクから、ITが姿を現したので町に戻ってくるようにとの連絡が入る。それぞれ中年となり、作家をしているビル、自らのブランドを立ち上げ服飾業界で活躍するベバリー、コメディアンとなったリッチー、リスクマネジメント会社のコンサルタントをしているエディ、建築家で会社社長となったベンが27年前の約束どおり町に戻ってくるが、スタンリーだけ姿を見せなかった。電話をすると、自殺したと彼の妻から告げられる・・・。
 前作で27年後の再会を約して別れたビルたちが大人になって帰ってきます。やっぱり、見た目で一番変わったのはベンでしょうか。あのデブだったベンがすっかりイケメンとなって登場します。ビルの吃音はまだ治っていないようです。幼い頃父親から性的虐待を受けていたベバリーでしたが、今は夫からDVを受けているという金持ちになっても不幸は変わりありません。
 テレビ版のペニー・ワイズの正体にがっかりしたので、さて今回はどうなるのだろうと思ったら、基本的にはその正体は同じですが、テレビ版より怖さはアップした気がします。そしてみんなの前に現れる様々な恐怖の対象ですが、何といってもベバリーの前に現れた裸のおばあさんの怪物は怖かったですねえ。ベバリーの後ろをよちよちと横切るシーンが最高です。
 スタンリーが来なかった理由がラストで明らかとなりますが、ここはキングの原作とは違うところのようです。自分が町に戻った場合に起きることを考えてというスタンリーの言葉が、あまりに悲しいです。
 原作者のスティーブン・キングが古物商の店主として出演しています。ということは、キング自身は今回の脚本の出来具合を気に入っているのでしょうね。 
閉鎖病棟(1.11.4) 
監督  平山秀幸 
出演  笑福亭鶴瓶  綾野剛  小松菜奈  小林聡美  坂東龍汰  平岩紙  織田俊樹  森下能幸  水澤紳吾  駒木根隆介  片岡礼子  山中崇  根岸希衣  ベンガル  高橋和也  木野花  渋川清彦   
 不倫をした妻とその相手を殺害し、更に寝たきりの母を犯罪者になった自分には面倒見られないと殺害して死刑判決を受けた梶木秀丸。死刑が執行されたが、死亡に至らず、執行の際に脊髄を損傷し下半身不随となった秀丸の扱いに困った国は彼を精神病棟のたらい回しにする。そんな秀丸が暮らす精神病院にある日、義父から性的暴行を加えられている女子高校生の由紀が入院する。秀丸は幻聴で妹夫婦から疎まれ入院しているチューさんや由紀らと陶芸をしながら穏やかな毎日を過ごしていたが、あることをきっかけに病院内で殺人事件を犯してしまう・・・。
 山本周五郎賞を受賞した帚木蓬生さんの同名小説の映画化です。舞台が精神病院なので、正直のところ、全体を通して本当に暗い映画です。その上、死刑の執行に失敗して生き残った人物が主人公ですからなおさらです。ただ、ラストだけは希望が持てるシーンでした。
 笑福亭鶴瓶さんが、ほとんど笑顔を見せずに秀丸を演じています。チューさんを演じるのは綾野剛さん。先に公開された「楽園」の東南アジアからの難民の子ども役や今回の精神病者役など、イケメンだけでは済まない難しい役どころをこなしています。由紀を演じたのは小松菜奈さん。彼女も門脇麦さんと共演した「さよならくちびる」など、ただかわいいだけの役者から変わってきました。セリフはありませんでしたが、患者の中に「カメ止め!」のどんぐりさんがいましたね。
 ストーリーとは別に、死刑執行が失敗した秀丸の法的立場はどうなるのだろうと学問的な興味があります。 
ターミネーター ニューフェイト(1.11.8) 
監督  ティム・ミラー 
出演  アーノルド・シュワルツェネッガー  リンダ・ハミルトン  マッケンジー・デイビス  ナタリア・レイエス  ガブリエル・ルナ  ディエゴ・ボニータ  エドワード・ファーロング   
 ジェームズ・キャメロンが製作をし、「ターミネーター2」の“正統”な続編であると謳われて公開された本作ですが、こんな展開なら何でも続編だなあと思ったのが第一印象です。なんと、映画が始まってすぐに、「ターミネーター2」でT-800に守られて生き残ったジョン・コナーが未来から送られた別のT-800によって殺害されてしまうのです。そうなると、もうそこからは別の物語ですね。結局、ジョン・コナーが死ぬことによって未来は変わり、そこでは新たな指導者がスカイネットとはまた別のAIと戦いを繰り広げているという世界になっており、今度はその新たな指導者を過去で殺害するためにREV-9という新型ターミネーターが送り込まれてくるというストーリーです。
 新たな指導者となるメキシコ人女性のダニーを守るために、未来の彼女自身が送り込んだのが、身体を強化した女性兵士のグレース。更にはジョンを失ってターミネーターを倒すことだけが生き甲斐となっているサラが彼女たちに助太刀します。指導者が女性、守るのも女性というところに、時代の流れを感じさせます。
 ファンにとって嬉しいのは、リンダ・ハミルトンが演じるサラ・コナーが登場すること。さすがに歳は取りましたが、相変わらず戦う女性です。彼女が「アイル・ビー・バック」と言うのはシリーズファンサービスですね。
 戦う女性といえばグレースを演じたマッケンジー・デイヴィスは逞しい女優さんですねえ。「ブレードランナー2049」でアンドロイドの娼婦を演じていたそうですが、記憶にありません。アーノルド・シュワルツェネッガーが演じるT-800も登場しますが、これが何と人間の女性とその息子と家庭を築いているのですからびっくりです。その上、機械のはずなのになぜかすっかり顔は老けています。
 冒頭のカーアクションは「ターミネーター2」を彷彿とさせて、なかなかドキドキさせてくれましたが、ストーリー的には期待外れ。ラストシーンからすれば、続編は製作できそうですが、アメリカではコケたそうですから、どうなるでしょうか。 
ゾンビランド ダブルタップ(1.11.24) 
監督  ルーベン・フライシャー 
出演  ウッディ・ハレルソン  ジェシー・アイゼンバーグ  エマ・ストーン  アビゲイル・ブレスリン  ゾーイ・ドゥイッチ  アバン・ジョーギア  ロザリオ・ドーソン  ルーク・ウィルソン  トーマス・ミドルディッチ 
 2009年に公開された「ゾンビランド」の10年ぶりの続編です。
 当時はまだ有名でなかったジェシー・アイゼンバーグは「ソーシャル・ネットワーク」でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、エマ・ストーンは、「ラ・ラ・ランド」でアカデミー賞主演女優賞を受賞する超有名俳優となりました。そんな彼らが10年もたって製作された続編に同じ役で出演するとは驚きです。それもアカデミー賞を狙うような作品ではなく、いわゆるB級映画といっていい作品に出演するのですから、猶更です。
 当時、幼い少女のリトルロックを演じていたアビゲイル・ブレスリンも20代となり、すっかり大人びました。ちょっと太りましたね。タラハシーを演じるウディ・ハレルソンは相変わらずの能天気でいい味出しています。
 あれから10年がたったが、タラハシー、コロンバス、ウィチタ、リトルロックの4人はゾンビが彷徨う世界で生き延びていた。ある日、ホワイトハウスだった建物に辿り着きそこに住み始める。しかし、リトルロックは口うるさいタラハシーに嫌気がさし、また、姉のウィチタは恋人関係にあるコロンバスのプロポーズに束縛を嫌い、二人で旅に出てしまう。そんなときにコロンバスが出会ったのは金髪娘のマディソン。二人はいい仲になるが、そこに戻ってきたのがウィチタ。リトルロックが途中で出会ったヒッピー男と出て行ってしまったので、あとを追うために武器を取りに来たのだという。そこから、リトルロックを探してのゾンビが彷徨う世界を4人の不思議な関係の旅が始まる・・・。
 コロンバスらがこの世界を生き抜くために様々なルールを作りましたが、今回途中で出会った彼らにそっくりな二人組がルールならぬ戒律を定めているのには思わず笑いがこぼれてしまいました。
 登場するゾンビも愉快。間抜けゾンビのホーマー、どこからともなく現れるニンジャ、知性のある賢いホーキングに加え、今回撃たれてもなかなか死なない(?)最強のゾンビ“T-800”が登場します。これはターミネーターですねえ。
 相変わらずのゾンビ相手の大殺戮(既に死んでいるから殺戮ではないか?)。銃を撃ちまくります。爽快。細かいことは考えずに楽しむ映画です。 
ドクター・スリープ(1.12.1) 
監督  マイク・フラナガン 
出演  ユアン・マクレガー  レベッカ・ファーガソン  カイリー・カラン  カール・ランブリー  ザーン・マクラーノン  エミリー・アリン・リンド  ブルース・グリーンウッド  ジョスリン・ドナヒュー  アレックス・エッソー  クリフ・カーティス 
 スティーブン・キング原作の「シャイニング」の続編「ドクター・スリープ」の映画化です。
 1980年に公開されたスタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」については、原作とは異なるとして、原作者のスティーブン・キングはまったく認めていなかったそうです。今回、いくら「ドクター・スリープ」という続編小説があったとしても、原作者に不評の映画の続編を作るのは、難しかったでしょうね。
 僕自身「シャイニング」は、ビデオで観ただけなのですが、何といっても、ジャック・ニコルソンの狂気に満ちた怪演が強く印象に残りました。そして、ホテルの廊下を三輪車をこぐ少年、幽霊の双子の少女、廊下にあふれ出てくる赤い血の波、ホテルの前に作られた迷路等々、キューブリックの映像に強烈に記憶に残っています。その映画の続編がどうなるだろうと観に行ったのですが、物語は三輪車をこいでいた少年の40年後が舞台となります。
 狂気の父からどうにか逃れ、惨劇を母と生き残ったダニーだったが、その時の記憶がトラウマとなって残り、それから逃れるために酒浸りの毎日を送っていた。世間では子どもたちの失踪事件が頻発していたが、それは特殊能力を有する子どもたちを殺して、その生気を吸い取る者たちの仕業だった。彼ら“トゥルー・ノット”を率いるのはローズ。そんな“トゥルー・ノット”の犯行を知った、強大な特殊能力を持つ少女・アブラは、ダニーに助けを求めてくる。ダニーはアブラと共に、“トゥルー・ノット”に戦いを挑んでいく。そして、最後の戦いの舞台はあのオーバールックホテルだった・・・。
 成長したダニーを演じるのは、ユアン・マクレガー。ローズを演じるのはレベッカ・ファーガソン。妖艶な雰囲気が役にぴったりです。前作でジャック・ニコルソンが演じたダニーの父親も登場しますが、残念ながらジャック・ニコルソンは演じていません。
 ホラー感の強かった「シャイニング」に対して、超能力者同士の戦いなど今回はちょっと雰囲気が異なります。キューブリック作品よりわかりやすく、素直に楽しめます。 
カツベン!(1.12.13) 
監督  周防正行 
出演  成田凌  黒島結菜  永瀬正敏  高良健吾  音尾琢真  井上真央  竹中直人  渡辺えり  小日向文世  竹野内豊  山本耕史  池松壮亮  徳井優  田口浩正  正名僕蔵  成河  森田甘路  酒井美紀 
 まだ映画がサイレントの時代。映画は劇場にいる活動弁士がスクリーンの映像に合わせてセリフを語っていくという形式で上映され、そのため、活動弁士が映画俳優以上の人気を博していた。幼い頃から活動弁士に憧れていた染谷俊太郎だったが、成長してからは永尾虎夫の下で、村々を映画を上映して回り、村人たちが映画に夢中になっている間に空き巣に入る泥棒の一員となっていた。その生活を嫌った染谷は永尾から逃げ出し、青木館という映画館に雑用係として雇われる。そこには茂木貴之、内藤四郎、そして幼い頃憧れだった山岡秋声という3人の弁士がいたが、ある日、酒に酔って弁士を務められない山岡に代わって染谷が弁士をやったところ、これが人気を呼び、以降染谷は弁士として舞台に立つこととなる・・・。
 周防正行監督のコメディ映画です。2時間の上映時間、難しいことを考えずに笑って楽しんでくださいという映画です。映写技師がフィルムを切れ端を大事に保管しているところは、「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出させますね。
サイレント映画の中に有名俳優さんたちが出演しているのを探すのも楽しいです。城田優さんや草刈民代さんには気づかなかったなあ。まさか青木館の館主役で出ていた竹中直人さんが、サイレント映画の中にも出演しているとはねえ。 
屍人荘の殺人(1.12.13) 
監督  木村ひさし 
出演  神木隆之介  浜辺美波  中村倫也  柄本時生  池田鉄洋  古川雄輝  葉山将之  矢本悠馬  佐久間由衣  塚地武雄  ふせえり  山田杏奈  大関れいか  福本莉子   
 昨年、「このミス」や「文春ミステリベスト10」など、年末恒例の各種ミステリベスト10で第1位を総なめした今村昌弘さんの同名小説の映画化です。
 予告編を観た時に恐れていたことが現実のものとなってしまいました。中村倫也さん演じる明智恭介がひらめいた時に指をならしたり、浜辺美波さん演じる剣崎比留子が横綱の土俵入りの型である雲竜型を披露したり等々、全体を通してコメディタッチになっています。原作ファンとしては、ちょっと違うんじゃない!と言いたくなります。
 また、原作では屍人荘には管理人のほかは、今回集まった演劇部、映画研究会の面々、そして明智、葉村、剣崎だったのが、映画では大学関係以外に逃げ込んできた外部の人物3人が加わるという設定の変更が行われています。
 更に、原作を読まずに映画を観た人には、ゾンビの発生の理由がまったく説明されておらず(何者かがフェス会場にウイルスを持ち込むのを描くだけ)不親切です。いったい、あれは何?と、もやもやしたものが残ったままになるのではないでしょうか。これは完全に続編を製作するのを予定しているとしか考えられません。
 キャラ的には明智恭介を演じた中村倫也さん、葉村譲を演じた神木隆之介くん、剣崎比留子を演じた浜辺美波さんとも、役にぴったりだったと思いますが、原作の大ヒットとは異なって、映画自体はすべってしまったのでは・・・。 
スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け( 1.12.20)
監督  J・J・エイブラムス 
出演  デイジー・リドリー  アダム・ドライバー  ジョン・ボイエガ  オスカー・アイザック  マーク・ハミル  キャリー・フィッシャー  ビリー・ディーウィリアムズ  ルピタ・ニョンゴ  ドーナル・グリーソン  ケリー・マリー・トラン  ヨーナス・スオタモ  アンソニー・ダニエルズ  ビリー・ロード  ケリー・ラッセル  ナオミ・アッキー  リチャード・E・グラント  イアン・マクダーミド  ハリソン・フォード   
(ちょっとネタバレ)
 後にエピソード4となる第1作目が公開されてから42年。いよいよシリーズ最終章です。
 観たのは初日のレイトショーで終演時間は24時近くだったのですが、田舎のシネコンでも前方席を除けばほぼ満席。外国の方も多数入場していました。テーマ曲が流れ始めると、これで終わりかぁと思ってグッとくるものがありましたね。
 最後のこの作品では、今まで謎とされていたレイの出自が明らかとなってシリーズは大団円。レイの出自については想像できなかったですねえ。これって、最後の三部作が始まる段階で決めていたのですかねえ。ちょっと唐突感がありました。
 これはもう公開前に明らかにされていることなので、言ってもいいのでしょうけど、前作後亡くなったキャリー・フィッシャーが既に撮影されていたものを使って登場します。ただ、そういう登場の仕方だったので、その後の流れはかなり無理矢理という感がしました。
 クレジットされていない、ある俳優も登場。終演後に近くにいた若者たちは、「クレジットされていないのだから、あれはそっくりさんだろう!」と言っていましたが、どう見ても本物ですよねえ。死んでもいないのにCG出演でもないと思いますが。
 一つだけネタバレさせてもらえば、前作でかなりの批判があり、僕自身も疑問に感じていたフィンとローズとの関係ですが、この作品にもローズは登場するものの、フィンとの関係は忘れ去られたようにまったく描かれません。エイブラムスは前作を踏襲しませんでした。シリーズの継続ということからは話が合いませんが、これで良かったと思うファンの方が多いのでは。
 ただ、この作品の中でもこれはないだろうというシーンがありました。ネタバレになるので伏せますが、かなり違和感があるシーンです。これは観た人からきっと批判が多いだろうなあと思われます。
 などと、細かいことを言えばキリがないのですが、何といってもこれでシリーズは終了と思うと感慨深いものがあります。若い頃、デートで観に行った映画ですしねえ。その時々の記憶と共に作品もあります。
 ラストで副題の“スカイウォーカーの夜明け”という意味がわかります。 
男はつらいよ お帰り 寅さん(1.12.27) 
監督  山田洋次 
出演  渥美清  倍賞千恵子  吉岡秀隆  後藤久美子  前田吟  池脇千鶴  夏木マリ  浅丘ルリ子  美保純  佐藤蛾次郎  桜田ひより  北山雅康  カンニング竹山  濱田マリ  出川哲朗  立川志らく  小林稔侍  笹野高史  橋爪功  林家たま平   
 今年は「男はつらいよ」の第1作から50年ということで、50周年記念作品です。 
 寅さん演じる渥美清さんは1996年に既に亡くなっているので、今作の主人公は寅さんに代わって寅さんの甥っ子の満男。彼も42歳となって、妻と死に別れ、今ではサラリーマンを辞め作家となっていました。映画は満男とかつての恋人・泉との出会いの中で以前の映画のシーンが挿入され、懐かしい寅さんの姿を見ることができます。今でも寅さんの笑いは色褪せていません。寅さんのセリフに場内は笑いに包まれます。メロン騒動のシーンは最高です。
 1作目の倍賞千恵子さんの姿が出てきましたが、綺麗ですよねえ。今ではすっかりお婆さんになってしまいましたが、僕の若い頃は年上の憧れの女優さんでした。そのほか、マドンナ役の女優さんたちも短いシーンですが皆さん、顔を出しています。吉永小百合さんも大原麗子さんも綺麗でした。
 終映近くには男性の鼻をすする音も聞こえてきました。きっと、昔、寅さん映画を観た時の思い出が蘇っていたのでしょう。