▲2017映画鑑賞の部屋

アズミ・ハルコは行方不明(27.1.7) 
監督  松居大悟 
出演  蒼井優  高畑充希  太賀  石崎ひゅーい  葉山将之  加瀬亮  菊池亜希子  落合モトキ  芹那     山田真歩  花影香音  国広富之  柳憂怜 
  これは難しい映画でした。監督が描こうとしていたテーマは何だったのか。
 題名にある“アズミ・ハルコ(安曇春子)”は社長を含め社員4人の会社で働く27歳の事務員。認知症の祖母を介護する母親のイライラが続く家に住み、会社では社長と専務の言葉のセクハラを受ける毎日を過ごしている。そんな春子が偶然幼馴染みの曽我に出会
い、男女の仲になる。一方、成人式で再会した愛菜とユキオ、そして2人が行ったレンタルビデオ店でアルバイトをしていた同級生の学の3人は、交番の掲示板に貼られた行方不明者である安曇春子のポスターを元にスプレー缶で春子の顔を町中に描いてネットで評判を呼んでいた・・・。
 映画は彼らの様子を交互に描いていくのですが、春子のパートと愛菜らのパートでは時間がズレている上に、時系列も順番どおりに描いているわけではないので、ちょっと頭の整理が必要です。更に、ストーリーを複雑にしていたのは、男たちを暴行する女子高校生
の存在です。いったい、彼女たちはなぜ男を襲うのか、また、彼女たちの行動はこの映画の中で何を象徴しているのか。ラストの方では逮捕に来た警官隊からの逃走などという、ちょっとファンタジックなシーンもあって、これがまた、よくわかりません。
 春子が車を運転していることから、彼女が住むのは地方都市だということがわかります(地方都市には車は欠かせません。)。失踪というのは、毎日が同じように過ぎる地方都市での暮らしの中から、春子が抜け出したということでしょうか。
 安曇春子を演じるのは蒼井優さん。彼女、美人ではないですが演技力のある存在感のある女優さんです。愛菜役は昨年のNHKの朝ドラで“ととねえちゃん”を演じていた高畑充希さん。今回はまったく印象が異なる弾けた若い娘を演じます。“ととねえちゃん”の印象が強いためもあってか、こちらの役は似合わないですねえ。
湯を沸かすほどの熱い愛(27.1.8) 
監督  中野量太 
出演  宮沢りえ  杉咲花  オダギリジョー  松坂桃李  伊東蒼  篠原ゆき子  駿河太郎  リリィ 
 銭湯を経営していた夫が突然蒸発したため、銭湯を休業しパン屋でパートで働く双葉。ある日、突然パート先で倒れた双葉に医者から癌で余命2、3ケ月だと宣告が下される。残された期間で彼女はやらなければならないことを実行していくが・・・。
 ネットでの評価が高かったので観に行ってきましたが、いやぁ~期待どおり泣かせてもらいました。主人公が余命幾ばくもないという設定なので“泣かせる映画”ではあると思うのですが、ただ単に主人公の“死”への悲しみだけでなく、死までの日々を家族のため
に使おうとする双葉の家族への愛の強さに対し涙が零れます。
 双葉を演じる宮沢りえさんの熱演が見ものですが、若い頃のふっくらとしていた頃の宮沢りえさんを知っている者からすれば、いくら余命幾ばくもない設定とは言っても、りえさんの痩せた姿にはびっくりです。特に、亡くなる直前の表情はメーキャップをしているとはいえ、怖いくらいでした。
 熱演といえば、娘の安澄を演じた杉咲花さんも相変わらず上手ですね。以前から若手女優の中でも地味ながら演技力抜群でしたが、今作でもそれは変わりません。いい役者さんになりそうです。
 蒸発した夫を演じたのは、オダギリジョーさん。彼のヌーボーとした感じが、銭湯の経営もあるのに妻子を置いて出て行ってしまう無責任男にぴったりです。
 学校でいじめに遭って制服を隠されたため、休もうとする娘の安澄に、「逃げちゃ駄目!立ち向かわないと!」と言いますが、これは賛否両論あるかもしれません。でも、これは娘のことをよく知っている母親だからこその考えだったのでしょう。娘の帰りを待つ双葉の前に制服を着た安澄が「お母ちゃんの遺伝子ちょっとだけあった」というセリフには涙が零れてしまいました。このセリフがまた別の出来事の伏線となっているのですから、脚本としても見事ですね。
 ラストシーンは法的にダメでしょうというより、ちょっと引いてしまいました。題名はこのシーンに繋がってくるのかなあ。 
本能寺ホテル(28.1.14) 
監督  鈴木雅之 
出演  綾瀬はるか  堤真一  濱田岳  風間杜夫  近藤正臣  平山浩行  田口浩正  高嶋政宏 
(ネタバレあり)
 恋人から父母の金婚式に招待され、京都へとやってきた倉本繭子。ホテルの予約日を間違えて途方に暮れる繭子が京都の町を彷徨ったすえようやく空き部屋を見つけたのが「本能寺ホテル」。部屋へ行くためにエレベーターに乗り込んだが、止まったエレベーターを出ると、そこは1582年の本能寺の廊下。それも“本能寺の変”の前日だった・・・。
 “本能寺の変”前日という大きな歴史の転換点にタイムトラベルした繭子によって、歴史は変わるのかを描くとともに、会社が倒産し、やりたいこともなく、恋人のプロポーズに何となくOKしてしまった繭子が、織田信長と出会うことによって、生きる目的を見出
し、成長していく姿を描いていきます。
 とにかく繭子を演じる綾瀬はるかさんがかわいいです。いつもながらのコメディエンヌぶりを発揮してくれますが、彼女が演じると嫌みがないですよね。この映画、綾瀬さんを主役に据えたことだけでほとんど成功が約束されたといっていいでしょう。
 森蘭丸を演じるのは濱田岳さん。繭子が「イメージが違う!」と言ったように、美少年のイメージの強い蘭丸を濱田さんが演じるという、このギャップに笑わせられます。
 そのほか、織田信長を演じる堤真一さん、本能寺ホテルの支配人を演じる風間杜夫さん、恋人の父親役を演じる近藤正臣さんと芸達者な役者さんたちが綾瀬さんのまわりを固めます。
 繭子から明智光秀が謀反を起こすことを聞きながら、なぜ織田信長は逃げなかったのか。思うに、自分が光秀に殺されるという歴史の未来が繭子が待ってきたパンフレットに描かれた明るい未来だということで、信長は敢えて歴史を変えようとしなかったのではないでしょうか。
 肩が凝らずに、笑って楽しく観ることができるエンターテイメント作品です。ストレス発散にどうぞ。 
ザ・コンサルタント(29.1.21) 
監督  ギャビン・オコナー   
出演  ベン・アフレック  アナ・ケンドリック  J・K・シモンズ  ジョン・バーンサル  ジョン・リスゴー  ジェフリー・タンバー
     ジーン・スマート  シンシア・アダイ=ロビンソン 
 邦題は「ザ・コンサルタント」ですが、直訳すれば「会計士」です。
 主人公、クリスチャン・ウルフはシカゴ近郊の片田舎で会計事務所を開く会計士。きちんとスーツを着て銀縁めがねに愛想笑いも見せないクリスチャンの裏の顔は裏世界に生きる者たちの金をマネーロンダリングする会計士であり、かつ、凄腕のスナイパー。財務省犯罪操作部の局長・レイモンド・キングは裏社会の大物と写真に写る男の正体を暴こうと、部下のメリーベスにその役目を与える。ある日、ロボット企業、リビング・ロボ社の経理の不正の内部告発を受けて、クリスチャンがその検証に当たることとなり、一晩でその不正のからくりを見破るが、不正をした役員の自殺により調査は中止とされ、時を同じくしてクリスチャンは命を狙われることとなる。
 とにかく、伏線が至るところに張られており、時間の経過とともにその伏線が回収されていくたびに、「そうだったんだぁ」と驚きの連続で、飽きることがありません。冒頭の銃撃のシーンから、もう大きな伏線が張られていましたからねえ。
 物語は事件の間にクリスチャンの幼少時のことが描かれており、彼が高機能自閉症スペクトラムであることが明らかにされます。自閉症は障害の反面、天才的な能力を発揮することかあるとされますが(「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じたレイモンドがそうでしょう)、この作品では数字の天才であるとともに、彼の将来を心配した軍人の父親によってあらゆる特殊技能を身に付けているというとんでもない設定になっています。
 彼を唯一手助けする女性が誰なのかは想像はついたのですが、ああいう形で伏線を回収するとは。見事でした。とにかく、ここはあとでこういうことになるための伏線なんだよと誰かに話したくなるほど伏線がいっぱいです。
 このラストですから、興行収入さえ良かったら、ベン・アフレックの新たなシリーズになりそうです。 
スノーデン(29.1.27) 
監督  オリバー・ストーン 
出演  ジョセフ・ゴードン=レヴィッド  シャイリーン・ウッドリー  メリッサ・レオ  ザカリー・クイント  トム・ウィルキンソン ニコラス・ケイジ
     スコット・イーストウッド  リス・エヴァンズ 
 物語は、2013年に、NSA(アメリカ国家安全保障局)の職員であったエドワード・スノーデンがアメリカが秘密裏に国際的監視プログラムを構築していることをマスコミに公表した実話に基づく作品です。
 国民の知らぬ間に国家によって自分たちの生活が監視されているなんて、恐ろしいことです。そのうえ、そのことにネット大手のケーブルやヤフーが協力していたというのですから、これまた恐ろしい現実です。映画で描かれているようにパソコンのカメラで自分の生活が覗かれているなんて、帰宅してから「まさか、うちのパソコンも?」と気になってカメラ部分にシールを貼ってしまいました(笑)。自分のパソコンが遠隔操作されて犯罪に使用されていたという事件があるくらいですから、絵空事ではありません。
 物語は、国家のためにNSAやCIAの情報機関で働いていたスノーデンが、やがて国家に反逆することを決意し、事実を公表するまでを描いていきます。ただ、国民を監視することに疑問を感じたスノーデンが、国家安全保障局やCIAを辞めながら、再度復帰したりしているところが理解できませんでした。スノーデンヘの取材によるものですから、もちろん彼を美化しているところもあることを考えて、この映画を観ることが肝要です。
 スノーデンは情報漏洩の罪に問われ、現在はアメリカの地を逃れロシアのモスクワに住んでいるそうです。映画にはラストで実際に本人も顔を出しています。  
ドクター・ストレンジ(29.1.27) 
監督  スコット・デリクソン 
出演  ベネディクト・カンバーバッチ  キウェテル・イジョフォー  レイチェル・マクアダムス  ティルダ・スウィントン  ベネディクト・ウィン
     マイケル・スタール・バーグ  ベンジャミン・ブラット  スコット・アドキンス  マッツ・ミケルセン 
 天才的な技能を誇る神経外科医のスティーブン・ストレンジは、ある日、自動車事故により両手に外科医として致命的な怪我を負ってしまう。失意の中、ストレンジは事故で車椅子生活をしていた男が奇跡的に歩くことができるようになったという噂を聞き、その男を訪ね、彼から謎の指導者エンシェント・ワンの存在を聞いてカトマンズに向かう。そこでエンシェント・ワンの力を知ったストレンジは修行に励むが・・・。
 これまた、マーベル・コミックのヒーローを描いた作品です。シリーズ化を前提に今回はストレンジが魔術の能力を得て、最初の敵を倒すまでが描かれます。作品中で登場人物の一人がアベンジャーズは物理的な力に対抗するものだと述べますが、ストレンジは魔術
的な力を持った敵に対抗する存在ということでしょうか。
 あちらこちらで評されているようにこの映画の見どころは映像です。そのCGで表現される映像の凄さは言葉では言い表すことができません。「インセプション」をもっと進化させたものと言ったらいいでしょうか。
 ストレンジを演じるのはベネディクト・カンバーバッチ。ちょっと傲慢なストレンジにホームズ役のときもそうでしたが、ぴったりです。ただ、個人的にはイギリス人であるカンバーバッチの見た目とアジア的な衣服に魔術がミスマッチという印象ですが・・・。
 それにしても、この作品のシリーズ化でテレビドラマの“ホームズ”を観ることができるのはまた遠くなってしまいました。
 エンシェント・ワンを演じるのはティルダ・スウィントン。女性にしては大柄ですから見栄えが良いです。スキン・ヘッドが似合っています。ストレンジの同僚医師、クリスティーン・パーマー役はレイチェル・マクアダムス。こういうコケティッシュな役を演じさせると彼女はうまいですねえ。
 ラストは二つのおまけが。一つ目は、マーベル・コミックのあるヒーローが登場すること。二つ目は次作を予想させるシーンがあることです。エンドロールが始まっても席を立つことなかれです。 
マグニフィセント・セブン(29.1.28) 
監督  アントワーン・フークワ 
出演  デンゼル・ワシントン  クリス・プラット  イーサン・ホーク  ヴィンセント・ドノフリオ  イ・ビョンホン  マヌエル・ガルシア・ルルフォ
     マーティン・センズメアー  ヘイリー・ベネット  ピーター・サースガード  ルーク・グリメス  マット・ボマー 
  黒澤明監督の「七人の侍」と、それをリメイクした「荒野の七人」を原案とする作品です。
 「荒野の七人」ではメキシコの農村を舞台に、山賊との戦いが描かれましたが、今回は南北戦争後の西部の町を舞台に、金鉱を掘るために住民からわずかな金で土地を奪おうとする鉱山主が相手です。
 「七人の侍」にしても「荒野の七人」にしても、七人は大義のために戦うのですが(「荒野の七人」では中に一人、わずかな金で村を守るには裏の理由があるだろうと疑っていた者がいましたが)、今回はリーダーであるチザムにある理由があったことがラストで明かされます。そこはちょっと2作とは違って安っぽくなってしまった感が強いです。
 それから、残念なことに、この作品では2作で描かれていた住民との心の交流もありません。チャールズ・ブロンソンが子どもたちに慕われたり、ホルスト・ブッフホルツが村の女に恋したりということが今回の作品にはありません。そういう点では、ラストの戦いのシーンの感動が薄れてしまったかなという気がします。とはいっても、住民のために次々と死んでいくシーンには泣けましたけど。
 「荒野の七人」が製作された1960年頃とは時代背景が異なることを反映してか、7人は前回は白人ばかりだったのに、今回は黒人のほか、メキシコ人、ネイティブ・アメリカン、アジア人など多彩です。
 リーダーのサム・チザムを演じたのは、デンゼル・ワシントンです。彼も名優ですが、やっぱり、リーダーとしての風格ではユル・ブリンナーにはかないません。クリス・プラットが演じたチザムの片腕であるジョシュ・ファラデーが「荒野の七人」でスティーブ・マックイーンが演じたヴィンですね。元南軍の伝説の狙撃手であったイーサン・ホーク演じるグッドナイトがロバート・ホーンが演じたリー、イ・ビョンホンが演じたビリー・ロックスがジェームズ・コバーンが演じたナイフ使いのブリットでしょうか。今回は「七人の侍」で三船敏郎が演じた竹千代や「荒野の七人」でホルスト・ブッフホルツが演じたチコのような、尻の青い若者がいなかったですね。敢えていえば年齢的にはネイティブ・アメリカンのレッドハーベストでしょうけど、彼はもう一人前の男でしたからちょっと違います。
 ラストにエルマー・バーンスタインが作曲した「荒野の七人」のテーマ曲が流れます。中学時代にリバイバル上映の「荒野の七人」を一緒に観に行った今は亡き友人を思い出して、ジ~ンときてしまいました。
ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち(29.2.3) 
監督  ティム・バートン 
出演  エヴァ・グリーン  エイサ・バターフィールド  サミュエル・L・ジャクソン  ルパート・エヴェレット アリソン・ジャニー クリス・オダウド
     テレンス・スタンプ  エラ・パーネル  フィンレー・マクミラン ローレン・マクロスティ ヘイデン・キーラー=ストーン マイロ・パーカー
     ジョージア・ペンバートン  ラフィエラ・チャップマン  ピクシー・デイヴィス 
  ティム・バートン監督らしいちょっとダークなファンタジー作品です。
 亡くなった祖父から幼い頃聞かされていた児童養護施設を訪ねたジェイク。そこは廃墟となっており、近くの人の話では1943年のドイツ軍の空爆で教師も子どもたちも亡くなったという。しかし、ジェイクの目の前に突然子どもたちが現れる。
 鉛の靴を履いていないと宙に浮かんでしまうエマ、幼い女の子なのに力持ちのブロンウィン、触ったものを燃やしてしまうオリーヴ、予知したことを映像化することができるホレース、口の中から蜂の大群出てくるヒュー、透明人間のミラード、植物を成長させることができるフィオナ、後頭部にもう一つの口を持つクレアなど異能力を持った子どもたちは、彼らを狙うバロンとホローガストたちから逃れるために、ミス・ペレグリンがループをさせている1943年9月3日の中で生きています。そのループの中に入ったジェイクは子どもたちとともにバロンたちと戦うこととなるが・・・。
 ミス・ペレグリンの個性が強烈。というか、化粧が凄いのかなあ。演じているのはエヴァ・グリーンですが、彼女ってあんな気の強そうな顔をしていましたっけ。肝心のメインの戦いのシーンの登場がなかったのは残念です。バロンを演じたサミュエル・L・ジャクソンですが、怪演と言っていいでしょうね。
 布で顔を隠していた双子の能力が最後まで明らかにされなかったのですが、凄いですねえ。最初からあれを使えばことは簡単だったのではと思ってしまいました。
 ティム・バートンらしく、殺した子どもから取り出した目玉を食べるちょっとグロいシーンもあります。この辺がファンタジーといっても幼い子どもが観るのは刺激が強すぎます。
恋妻家宮本(29.2.4) 
監督  遊川和彦 
出演  阿部寛  天海祐希  菅野美穂  相武紗季  富司純子  奥貫薫  早見あかり 工藤阿須加 佐藤二朗 柳ゆり菜 浦上晟周
     紺野彩夏  佐津川愛美  入江甚儀  渡辺真起子  関戸将志  豊嶋花 
 50歳になり、一人息子が結婚して家を出て行き、二人暮らしとなった陽平と美代子。ある日、陽平が本棚にあった志賀直哉の「暗夜行路」の中から美代子の署名が書かれた離婚届を見つけたことから、さあ、大変。陽平は美代子がいつ離婚を切り出すのかと疑心暗鬼の毎日を送ることになってしまう・・・。
 大学生時代に出来ちゃった結婚をしたため、一人息子の結婚で50歳にして初めて夫婦二人きりの生活になった陽平と美代子が、どう二人だけの生活に向き合っていくのかをコミカルに描いていきます。
 映画館はそのテーマ故か、夫婦それも熟年夫婦の姿が多く見られました。子どもが家から出て行って夫婦二人になってしまう状況は、まだ子どもが同居しているので実感がないのですが、どうなんでしょう。若き頃の恋人時代のような甘い気分にはなれそうもないし・・・。夫婦二人になったとたんに、離婚届を目の前に差し出されるのも恐ろしいですしねぇ。でも、この映画を一緒に見に来ている夫婦は、きっとうまくやっているのでしょう。
 監督がこの作品が初監督となる「家政婦のミタ」や「女王の教室」の脚本家である遊川和彦さんですから、かなりアクの強い作品になるのかと思ったら、予想を裏切り、ユーモアのある楽しい作品となっています。
 ファミレスでなかなか注文が決められない優柔不断で決断力のない陽平に笑わせてもらいましたが、演じる阿部寛さん、うまいですねえ。役にぴったりです。一方、はきはさして、しっかり者の美代子を演じたのは天海祐希さんですが、こちらも見た感じぴったりの役どころです。
 陽平が通う料理教室での菅野美穂さん演じる主婦の五十嵐と相武紗季さん演じる結婚間近な門倉との3人の掛け合いも笑わせてもらいました。
 予告編で向かい側のホームにいる美代子に陽平が何かを言おうとしたとたん電車が通過してしまい、何を言ったかわからないシーンがありましたが、当然ここではああ言ったのだろうなあと想像したのですが、ふたを開けてみれば予想外のことばでした。そのホームの駅の名前は「こいづま」。シーンが駅の名前にぴったりだなと思ったら、残念ながら架空の駅だそうです。
 エンドロールで登場人物たちが吉田拓郎さんの「今日までそして明日から」を歌います。ぼくらの世代だと、つい一緒に歌いたくなります。 
相棒 劇場版Ⅳ(29.2.11) 
監督  橋本一 
出演  水谷豊  反町隆史  北村一輝  鹿賀丈史  仲間由紀恵  及川光博  石坂浩二  六角精児  鈴木杏樹  川原和久
     山中崇史  山西惇  神保悟志  片桐竜次  小野了  益岡徹  江守徹  山口まゆ
 相棒シリーズ第4弾です。今回は話がちょっと複雑。冒頭、杉下右京と冠城亘は国際的犯罪組織バーズのリーダー、レイブンの行方を追う国連犯罪情報事務局の元理事のマーク・リュウの依頼でレイブンの情報を掴んだ国連犯罪情報事務局のロイ・モリスから情報を得ようとしたが、モリスは接触直前に「天谷克則」という人名を言い残してレイブンらしき男によって射殺されてしまう。更にレイブンは外務省ののHPを乗っ取り、7年前に起こった駐英大使館参事官邸毒殺事件で唯一生き残り、直後に行方不明になっていた参事官の娘・鷺沢瑛理佳の映像を見せ政府に身代金を要求する・・・。
 劇場内は公開初日もあって、テレビの「相棒」ファンでかなりの入りでした。ファン層も小学生からかなり年配のおばあちゃんまでという広さ。「相棒」人気は凄いです。
 ストーリーとしては、前作よりもおもしろかったと言えるでしょう。ただ、おかしな点もあって、突っ込みどころは満載です。中でも未だに理解できないのは、瑛理佳がマーク・リュウの部屋に行ったのはどういう理由だったのか、そもそもホテルの部屋をなぜ知ることができたのかという点です。また、トラック島に入植した人がその後生死不明により特措法により死亡が擬制されたとはいえ、生存が確認されれば、当然戸籍も復活できるのに、なぜそれをしなかったのか、そもそも死亡が擬制されている人が日本にどうやって入国できたのかというところも気になります。そのほか、ネタバレになるので書くことができませんが、細部にわたっていろいろなおかしな部分が目立ちます。
 様々な事実が明らかになっていく中で素直に驚いたのは、参事官毒殺事件の真相です。これだけは予想もできませんでした。ただ、ここでも、使用人まで含めて全員が同じように死んでしまうのかという点は疑問です。一斉に毒を飲むなんてことは考えられず、先に飲んだ人が具合が悪くなれば、他の人は食べ物等を摂取するのを躊躇すると思うのですが・・・。
 それに、レイブンは目的は何にせよ、最終的には毒によって大勢の人を病院送りにし、なんにせよモリスを殺しているのですから、極悪人です。モリスが一番かわいそう。
 そんなことで、あれやこれやと気になる点が目についたのですが、あまり細かいことを考えると、楽しむことはできませんね。
 先に前後半に渡って放映されたテレビで今回警備局長として登場している山崎との確執が描かれたので、今回の作品ではその点が中心となって描かれるものと思いましたが、そこはホンの少しだったというのも期待外れです。
 演じている役者さんの配役の関係で、本当はあっと驚く事実も、何となくわかってしまったのは残念なところです。ただ、篠井英介さんが演じた官房副長官はこれはいつもの篠井さんらしくない意外な(癖のない真っ当な)役柄でした。また、江守徹さんが出演していましたが、老けましたね。もともと恰幅のいい人ですが、何だか大って滑舌もいまひとつでした。
 神戸尊や今は警察学校の教官になっている米沢守も登場するので、「相棒」ファンは楽しむことができたかも。 
マリアンヌ(29.2.12) 
監督  ロバート・ゼメキス 
出演  ブラッド・ピット  マリオン・コティヤール  ジャレット・ハリス  サイモン・マクバーニー  リジー・キャプラン  ダニエル・ベッツ
     マッシュー・グード  カミーユ・コタン  アウグスト・ディール  ティエリー・フレモン 
 イギリスの特殊作戦執行部に所属するマックス・ヴァタンはドイツ大使の暗殺指令を受けてモロッコヘとやってくる。そこでフランスのレジスタンス、マリアンヌ・ボーセジュールと夫婦を装って、大使館のパーティーに出席し、大使を暗殺することに成功する。暗殺計画という苦難の中で愛し合うようになった二人は、イギリスに戻り結婚をし、娘も生まれる。そんなとき、マリアンヌにドイツの
二重スパイの疑いがかかる。特殊作戦執行部は、偽の情報をメモしてマリアンヌの目につくところに置き、もし、その情報がドイツ軍に無線で送られることがなければ疑いが晴れるが、送られた場合は、二重スパイとしてマックス自らの手でマリアンヌを殺すよう命令する。果たしてマリアンヌは二重スパイなのか、マックスは苦悩し、真相を探るために動き出す・・・。
 映画前半のドイツ大使暗殺の舞台となるのはカサブランカです。ハンフリー・ボガードとイングリット・バーグマンの「カサブランカ」の舞台と同じで、ちょうど同じ頃を描きます。ああした危機的状況にある男女が愛し合うようになるのは“吊り橋効果”と呼ばれ、冷静になると冷めるのも早いようですが、マックスとマリアンヌは子どもをもうけ幸せに暮らし始めます。
 もうコテコテのラブ・ストーリーです。ドイツ大使の暗殺を二人で行い、子までなした妻が二重スパイのはずはないと思いなIがらも、妻の不審な行動に目が行ってしまうマックス。愛した妻がスパイであることが立証されれば、自らの手で殺さなくてはならないのですから、いやぁ~男として辛いですよねぇ。
 ブラッド・ピットとマリオン・コティヤールという美男美女にぴったりの作品です。カップルで観に行くには最適の映画です。見終わったあとでいろいろ話ができそうです。真実が明らかになったとき、二人はどうするのか。ラストは泣かされます。 
サバイバルファミリー(29.2.14) 
監督  矢口史靖 
出演  小日向文世  深津絵里  泉澤祐希  葵わかな  柄本明  太地康雄  宅麻伸  渡辺えり  時任三郎  藤原紀香 志尊淳
     大野拓朗 
 突然、停電となり、電池やバッテリーなど電気を起こすものも使用できなくなった世界で生き抜く家族を描く作品です。
 鈴木家は父・義之と専業主婦の母・光恵、大学生の息子・賢司と高校生の結衣の4人家族。ある朝、目覚めると、停電で電気が使えず、電車も動いていない状態となっていた。翌日も電気は回復せず、会社も学校も復旧するまで休みとなる。義之は大阪以西は停電していないという噂を聞いて、結局家族4人で自転車で大阪を目指すこととなる・・・。
 小日向文世さん演じる義之が、俺の言うことが正しいという典型的なワンマン親父ですが、結果がともなわず、子どもたちに非難されます。止めに入った光恵からまで「そんなこと、とっくにわかっているでしょ!?お父さんはそういう人なんだから」と言われるなんて、同じ父親として同情を禁じ得ません。とはいえ、同じ環境に陥ったら、僕も義之と同様、家族からは頼りなく思われるんだろうなあ。彼らが途中で出会った斎藤家族の父親のように危機的状況の中でも様々な知恵を持って事態に対処していけるというわけにはいきません。でも、世間のお母さんや子どもたちにわかってほしいのは、そんな格好悪くて威張っている父親だって、家族のことを一番思っているんですよね。炊き出しに並んだ鈴木一家が自分たちの前でなくなってしまった場面で、義之が子どもたちの分だけでもと土下座をするシーンには涙が浮かんでしまいました。
 監督が「ウォーターボーイズ」や「スイングガールズ」の矢口史靖さんですから、笑いも満載です。劇場内は笑いに包まれていました。どうぞ、家族で鑑賞を!
 それにしても、車の通らない高速道路を自転車で走るのは爽快でしょうねぇ。 
愚行録(29.2.18) 
監督  石川慶 
出演  妻夫木聡  満島ひかり  小出恵介  臼田あさ美  市川由衣  松本若葉  中村倫也  眞島秀和  濱田マリ  平田満 
 貫井徳郎さん原作の同名ミステリーの映画化です。10年以上前に発売になった原作は、発売当時に読んでいたものの、すっかり内容は忘れていたので、まっさらな状態で観に行きました。
 物語は、週刊誌の記者である田中武志が、1年前に起き未解決となっている一家3人惨殺事件のその後を記事にするため、夫の会社の同期、妻の大学の同級生、同級生の恋人だった男、夫の大学時代の恋人に会って話を聞きながら事件の経過を辿っていきます。その過程で露わになってくるのは、近所で評判の良かった夫婦が、両方とも実は嫌な人物だったこと。二人とも誰かに恨まれていても仕方ないことが明らかになります。
 並行して描かれるのが、育児放棄で罪に問われ逮捕されている田中の妹・光子のこと。留置場の面会室での田中と光子の話、そして光子と医師との話の中で、二人が幼い頃から父親による虐待を受けていたことが語られていきます。
 原作では田中の取材対象となった者たちの語りだけで物語が進んでいくので、聞き手である田中の人となりはわからないのですが、映画では、冒頭のバスの中でのエピソードで、田中がいわゆる好青年ではなく、心に何か鬱屈したものを抱えている男だということが観客に示されます。嫌なやつだなぁと、これだけで印象づけます。このところ、「怒り」や「ミュージアム」での役柄のように、単なる好青年だけではない役柄が多くなった妻夫木聡くんが演じます。
 光子を演じるのはこのところ様々な作品に引っ張りだこの満島ひかりさん。最初はあの目鼻立ちの整った顔に、単にアイドルからの転身かぁと思っていましたが、誤解でした。だんだん演技が上手になってきましたよねぇ。
 とにかく、登場人物たちがみんな嫌な感じの人物ばかり。殺された夫・田向の会社の同僚であり、田向と計って関係を結んだ女性を捨てた渡辺が「あんないいやつがどうして殺されるのかなあ」と涙をこぼすシーンには唖然としてしまいました。

(ここからネタバレ)
 見終わってもわからなかったのは、田中は光子が犯人であることを知っていたのか否か。知らずにたまたま事件の取材をしている中で、同じ大学に通っていた光子が関係していることを知ったのか。偶然にしてはできすぎですよね。やっぱり、知った上で妹が犯した事件を辿ってみようとしたのかな。 
素晴らしきかな、人生(29.2.25)
監督  デヴィッド・フランケル
出演  ウィル・スミス  エドワード・ノートン  ケイト・ウィンスレット  マイケル・ペーニャ  ヘレン・ミレン キーラ・ナイトレイ ナオミ・ハリス     ジェイコブ・ラティモア
 ハワードは広告代理店で成功した男。しかし2年前に愛する娘を失って以来、妻とも離婚し、仕事にも熱が入らない毎日を過ごしている。共同経営者のホイットや幹部のクレア、サイモンはそんなハワードを心配して様々な手段を講じたが、彼を立ち直らせることはできないでいた。このままでは会社は倒産してしまうと考えたホイットらは、会社買収にサインしないハワードを経営者の座から降ろそうと画策する。ハワードが“死”、“時間”、“愛”あてに返事の来ない手紙を書いていることを知ったホイットは、劇団員3人を雇い、それぞれ“死”“時間”“愛”を名乗らせてハワードに近づかせ、彼の異常な行動をビデオに撮って役員会にかけようとする・・・。
 アメリカのクリスマスシーズンはこの映画といわれるほど有名なフランク・キャプラ監督の同名作品がありますが、同じクリスマスシーズンが舞台となっているだけで、リメイクではありません。原題は日本語でぱ幸せのオマケ”といった意味のようですが、わざわざ邦題を名作と同じクイトルにしなくても、こちらでよかったのでは。
 心を病んでいるのはハワードだけではなく、ホイットらもそれぞれ悩みを抱えています。ホイットは浮気で妻と離婚したことで嫌われている娘とどうにか心を交わしたいと考えており、クレアは仕事に人生を捧げ、結婚もしなかったが今は子どもがほしいと精子バンクのHPを見る毎日であり、サイモンは不治の病を家族にも友人にも隠している。3人が“死”“時間”“愛”に扮する劇団員と関わることによって、その悩みを解決していくストーリーが観ていて温かな気持ちにさせてくれます。
 出演陣がとにかく豪華。ハワードにウィル・スミス、ホイットにエドフード・ノートン、クレアにケイト・ウィンストレット、サイモンにマイケル・ペーニャのほか、“死”を演じるのはヘレン・ミレン、“愛”を演じるのはキーラ・ナイトレイといった主演級が何人も出演しています。
 ラストには「え~!そうだったの」というちょっとした驚きもあります。また、セントラル・パークを歩くシーンで、ハワードには見えて、一緒に歩いていたカウンセラーのマデリンには何も見えないということは、実はそれまで観客も騙されていたのでは・・・。それもファンタジーらしくて素敵ですが。
ラ・ラ・ランド(29.2.25) 
監督  デイミアン・チャゼル 
出演  エマ・ストーン  ライアン・ゴズリング  ジョン・レジェンド  J・K・シモンズ  ローズマリー・デヴィッド  カリー・ヘルナンデス
     ジェシカ・ローテ  ソノヤ・ミズノ  フィン・ウィットロック 
  前哨戦であるゴールデングローブ賞を受賞し、アカデミー賞作品賞の本命とも言われていましたが、残念ながら作品賞は受賞ならず。一度は作品賞受賞と発表されながら、間違っていたという前代未聞の事態となりました。それでもデイミアン・チャゼルが監督賞を、エマ・ストーンが主演女優賞を獲得するなど6部門で受賞しています。
 女優を目指し何度もオーディションに臨むミアとジャズの店を持ちたいと望むジャズピアニストのセブことセバスチャンの恋物語が描かれます。ストーリーとしては、よくある、どこか古くささを感じさせる作品です。
 冒頭の渋滞した高速道路での歌って踊るシーンの中で遥か先の映像はCGかと思ったのですが、実際に歌って踊っているそうです。ミアの着る青や黄色のドレスなど衣装に使用された原色が印象的です。ミュージカル映画としては、歌のシーンが少なかったように感
じられます。セブがジャズピアニストということもあってジャズの演奏シーンが多かったですね。
 ミア役のエマ・ストーンは囁くような、かすれた声で歌うシーンが多かったので、上手なのかどうなのかと思ったのですが、意外に評判はよかったようです。一方のセブ役のライアン・ゴズリングですが、歌と踊りはこれというべきところはありませんが、ピアノを
弾くシーンはなかなかのもの。たった3ケ月のレッスンの割には、本当に弾いているかはともかく、弾く姿は格好いいです。
 ミアとセブが結ばれたのか否かはネタバレになるので伏せますが、ラスト10分間は魅入ってしまいました。このシーンで涙を浮かべる人も多いのでは。
 「セッション」のJ・K・シモンズも出演しているのですが、ほんのわずかなシーンでした。
 ちなみに題名の「ラ・ラ・ランド」はロサンゼルスを表しているそうです。
パッセンジャー(29.3.25) 
監督  モルテン・ティルドゥム 
出演  クリス・プラット  ジェニファー・ローレンス  マイケル・シーン  ローレンス・フィッシュバーン  アンディ・ガルシア  
(ネタバレです)
 地球から120年かかる遥か彼方の宇宙にある移住地を目指し5000人の乗客を乗せて宇宙を旅する宇宙船アヴァロン号。乗客は120年間冬眠をして目的地直前で目覚めるはずだったが、あと目的地まで90年を残し、一人の男・ジムが目覚めてしまう。慌てて冬眠ポッドに戻ろうとするが、再び冬眠に入ることはできず、広い宇宙船の中でたったひとりで生きていくこととなる。話し相手はロボットのバーテンダーのアーサーだけ。1年以上が過ぎ、冬眠ポッドで眠る女性・オーロラを見たジムは彼女に恋をしてしまう。彼女と話したいが、無理矢理彼女を起こせば、彼女の人生を奪ってしまうとジムは苦悩する。ある日、ジムはある決断をするが・・・。
 映画を観る前は、ジムは彼に何かをさせようとする大きな力によって、目覚めさせられたものとばかり思っていました。予告編で、ジムが船外にいる場面もあったので、そう思ってしまったのか、それとも、そう誤解させる紹介文を見たことがあったのか、定かでは
ないのですが、まったくの誤解でしたねぇ。でも、あんなことで、システムが異常となってしまうのでは、この広い宇宙の中、120年間の平穏な宇宙旅行はできないのではと思ってしまいます。
 オーロラからすれば、全くのいい迷惑です。ジムはエコノミーの乗客で、オーロラはゴールドクラスの乗客ですから、本当だったら会うことがない世界の男女。まだ、ジムが若くてイケメンだったからいいようなものの、これが年寄りの不細工男だったらどうなるのでしょう。それでは映画になりませんが・・・。美男美女だからこそ成り立つストーリーですが、よくよく考えれば、オーロラは身勝手な男に人生を弄ばれたかわいそうな女性です。最後、ジムの提案に従って、彼などほおっておいて医療ポッドに入れば良かったのに。
 アンディ・ガルシアが出演しているのには気がつきませんでした。ラストで目覚めてくる乗務員の中にいる船長役だったようです。 
キングコング 髑髏島の巨神(29.3.25) 
監督  ジョーダン・ボート=ロバーツ 
出演  トム・ヒドルストン  ブリー・ラーソン  サミュエル・L・ジャクソン  ジョン・グッドマン  ジン・ティエン  トビー・ケベル  MIYAVI
     ジョン・C・ライリー  ジョン・オーティス  コーリー・ホーキンス  ジェイソン・ミッチェル  シェー・ウィガム  トーマス・マン 
(ネタバレです)
 もう何度目かの製作となるキングコング映画です。
 冒頭、第二次世界大戦中の墜落した零戦とP51ムスタングとの操縦士の戦いが描かれますが、物語の舞台となるのはそれから28
年後のベトナム戦争終了直後の頃です。政府機関のモナークに所属するビル・ランダは南太平洋に浮かぶ暴風雨により近づけない髑髏島の調査を上院議員に進言し、認められる。ベトナムから帰国直前のプレストン・パッカード率いるヘリコプター部隊と金で雇った元イギリスSASのジェームズ・コンラッドに守られ、ランダらは嵐の中、髑髏島に向かうが・・・。
 出し惜しみしないで最初からキングコングが大暴れです。島に着いた10機以上のヘリコプターがすべてコングによって墜落させられてしまいます。1機や2機ならともかく、全機とは。やられるのを見たらコングの手の届かない高度まで上昇すればいいのにねえ。命が助かったコンラッドらは、救援部隊との合流地点に向かうが、この島がコングだけではない危険な生物の生きる島だったので、もう大変です。せっかく、ベトナム戦争を生き抜いたのに、こんな島で命を落とすとは、兵士たちがかわいそうです。
 そのうえ、サミュエル・L・ジヤクソン演じる隊長のパッカードが、部下を殺されたために、復讐に燃えてしまって、脱出よりはコングを倒そうとするのですから、こんな上司を持った部下は本当に大変です。パッカードの表情が、完全にいってしまっています。上司としての責任は部下の復讐より部下を無事に帰国させることでしょうに。
 巨大生物の中でもコングに対峙するのがトカゲのバケモノのスカル・クローラーです。監督が言うには、その造型はジブリ映画の「千と千尋の神隠し」に登場する“カオナシ”がモデルだそうです。そう言われれば、確かにどことなく似ていますね。
 今回のコング、今までのコングと異なって、人間の女性にそれほど固執しません。確かに、ヘリの下敷きになったスケル・バッファローを助けようとしたメイソン・ウィーバーの危機を救いますが、女性に恋するというファンタジックな感情は描かれません。
 エンドロールになっても席を立ってはいけません。エンドロール後にあるシーンが出てきますが、そこに出てきたものは日本人なら「え!」と思うもの。この後の続編を予感させるものです。いやぁ~嬉しいですね。 
ゴースト・イン・ザ・シェル(29.4.7) 
監督  ルパート・サンダース 
出演  スカーレット・ヨハンソン  ビルー・アスベック  ビートたけし  ジュリエット・ビノシュ  マイケル・ビット  泉原豊  桃井かおり
     ダヌシア・サマル  チン・ハン  ラザルス・ラトゥーエル  ダワンダ・マニモ  福島リラ     
 士郎正宗さんのコミックを押井守監督が映画化した「攻殻機動隊」のハリウッドによる実写映画化です。ハリウッド映画の原作になってしまうのですから、日本のアニメって凄いですねえ。あの「マトリックス」も「攻殻機動隊」の影響を受けているそうですから。
 脳以外全身が機械化された公安9課の捜査官・少佐は、脳をハッキングして情報を奪い取るサイバーテロリストとの戦いに身を投じるが、その渦中で自分の記憶が操作されていたことに気づく・・・。
 息子にいわせると、アニメは哲学的なところがあって、理解が難しい部分もあるとのことだったので、身構えて観に行ったのですが、予想に反してわかりにくいことはありませんでした。
 少佐を演じたスカーレット・ヨハンソンがスタイルの良さを強調するような身体にぴったりフィットしたスーツを着てアクションを見せますが、あまりに女性らしい体つきで、アンジェリーナ・ジョリーのような力強さは感じられませんでした。
 ビートたけしさんが少佐の上司・荒巻で登場していますが、荒巻は日本語で話し、他の人は英語というのは違和感がありました。設定的には頭の中で言語が変換されて理解できるのでしょうけど。                     
 日本のマンガが原作ということもあって、ビートたけしさんのほかに、公安9課の捜査官の一人として泉原豊さんが、そしてパンフレットにも載っていませんでしたが、重要な役ところで桃井かおりさんが、芸者のロボット役として福島リラさんが出演していました。
 僕は字幕版を観ましたが、吹替版ではアニメ版の声優が起用されているそうですから、アニメファンにとってはたまらないでしょうね。 
ムーンライト(29.4.15) 
監督  バリー・ジェンキンス 
出演  トレヴァンテ・ローズ  アンドレ・ホーランド  ジャネール・モネイ  アシュトン・サンダース  ナオミ・ハリス  アレックス・ヒバート
     ジャハール・ジェローム  マハーシャラ・アリ 
 今回のアカデミー賞作品賞は「ラ・ラ・ランド」という大方の予想を裏切って(そのためか、授賞式では一度は「ラ・ラ・ランド」が受賞という誤った発表がされるなどドタバタがありましたが。)、作品賞を受賞した作品です。
 物語は、一人の黒人少年シャロンの人生を小学生時代、高校生時代、そして成人してからの3章に分けながら、いじめられっ子だった主人公・シャロンと彼を温かく見守る麻薬の売人のファンとの交流や唯一心を許していた同級生のケヴィンとの友情、そしてあることがきっかけで疎遠になった二人が成長してから再会するまでを描いていきます。非常に地味な作品ですが、アカデミー会員が好きそうな作品ですね。僕個人としては取り上げられた題材のせいもあって、それほどストーリーの中に没入することはできませんでした。
 ストーリー展開としては、よくありそうな話ですし、採り上げられた問題もアメリカ社会に限ったものではありません。ラストにそうなるのかぁという点が今の社会を描いていると言えます。
 出番は途中まででしたが、シャロンに人生を教えるファン役のシャネール・モネイは印象に残りました。ファンがシャロンに言う、「自分の道は自分で決めろ。周りに決めさせるな。」という台詞がかっこよすぎです。この演技でアカデミー賞助演男優賞受賞です。 
美女と野獣(29.4.22) 
監督  ビル・コンドン 
出演  エマ・ワトソン  ダン・スティーブンス  ケビン・クライン  ルーク・エバンス ジョシュ・ギャッド ユアン・マクレガー エマ・トンプスン
     イアン・マッケラン  ネイサン・マック  オードラ・マクドナルド  ググ・パサ=ロー  スタンリー・トゥッチ  ハティ・モラハン 
 ディズ二ー映画の「美女と野獣」の実写版です。
 公開二日目に観に行ったレイトショーは、地方の映画館にしては珍しくほぼ満席という状態でしたが、ニュースによると公開3日目までの興行収入は「アナと雪」を超えているそうです。ディズニー凄いですねえ。
 魔女に野獣の姿に変えられてしまった王子と村娘ベルとの恋物語を描き、ミュージカルとなっているので、ストーリーはお馴染みです。今回、ベルを演じたのはハリーポッターシリーズでハーマイオニー役を演じたエマ・ワトソン。いつの間にか、かわいい小生意気な女の子がすっかり綺麗な女性になっていました。彼女は、「ラ・ラ・ランド」のオファーを蹴ってこの映画に出演したそうですが、なかなか歌も美声でうまかったですね。彼女のこちらに出演するという判断が、吉と出るのか凶と出るのか。今のところ吉でしょうか。
 脇役陣が豪華です。呪いが解けて家具等から人間に戻っても、メイクしているので、なかなかわかりにくかったのですが、燭台のルミエールがユアン・マクレガー、時計のコグスワースがイアン・マッケラン、ポット婦人はエマ・ワトソン、そしてベルの父親はケビン・クラインが演じています。ケビン・クラインを除けば登場が冒頭とラストだけというのはもったいないですねえ。 
追憶(29.5.6) 
監督  降旗康男 
出演  岡田准一  小栗旬  柄本佑  長澤まさみ  木村文乃  安藤サクラ  吉岡秀隆  りりィ  西田尚美  安田顕  三浦貴大
     矢島健一  北見敏之  高橋努  渋川清彦  太賀  中本賢  萩尾みどり  遠藤要  田中要次  モロ師岡 
  親の愛に恵まれない篤、啓太、悟の3人の少年は、軽食喫茶を営む年上の女性・仁科涼子との関わりに唯一心の平穏を感じていた。しかし彼女の前にやくざな男が現れてから彼らの平穏な生活は終わりを告げる。涼子の幸せのため、篤らは男の殺害を計画するが・・・。それから25年がたち、刑事となった篤は、啓太に借金をするために富山を訪れた悟と偶然再会をする。しかし、篤と別れた後、悟は死体となって発見される。捜査に加わった篤は悟が借金を申込みに行った啓太が犯人ではないかと疑い、彼の元を訪ねる。
 冒頭の25年前のストーリーは、少年たちが恋する年上の女性のために、彼女の幸せを奪おうとするやくざな男を殺そうとする、小説としてはありそうな話です。結局、少年たちをかばって彼女が罪をかぶることになるのですが、篤が母親から疎まれていたこと以外、啓太や悟の生い立ちなど事件の前後の状況が詳細には語られていないため、観客の想像で補完しなければならない部分が多かったですね。
 事件の真相はちょっとあっけなかったです。ラスト、バタバタと犯人が捕まってしまいました。しかし、啓太が容疑者として疑われながらも隠さなければならなかった真実には、予想もつかない重いものがありました。
 岡田准一くん、小栗旬くん、柄本佑くんに長澤まさみさん、木村文乃さんと、期待の若手俳優が出演していましたが、彼ら以上にこの作品で光っていたのは涼子を演じた安藤サクラさんでしょう。降旗監督は、安藤さんに“日本のマリア様”のイメージを重ね合わせたそうですが、ほんとにそんな慈母みたいな感じが漂っていました。今年の賞レースで、安藤サクラさんの名前は間違いなく挙がるのではと思います。その安藤さんと柄本佑さんはご夫婦ですが、表情のない涼子役の奥さんの前で、はしゃいだ様子を見せる柄本佑さんは、どんな気待ちだったでしょう。俳優とはいえ、照れくさくないのかなあ。
 エンドロールの撮影者の名前の中に岡田准一くんの名前がありましたが、ラスト近くの犯人が連行されるシーンは岡田くんが撮影したそうです。
スプリット(29.5.12) 
監督  M・ナイト・シャマラン 
出演  ジェームズ・マカヴォイ  アニヤ・テイラー=ジョイ  ベティ・バックリー  ヘイリー・ルー・リチャードソン  ジェシカ・スーラ 
 観客を引きつけておいて、最後に「え~」とがっかりの声を上げさせるというシャマラン監督らしいといえばらしい作品です。「シックス・センス」の衝撃が大きすぎて、その後の作品にも毎回大いに期待してしまうのですが、「シックス・センス」を超える作品は個人的にはいまだになく、今回もラストは期待外れでした。
 ケイシーら3人の女子高校生が見知らぬ男に拉致され、部屋に閉じ込められる。なんとこの男、23もの人格を待つ解離性多重人格の男・ケビン。彼からは神経質で潔癖症の男・デニス、エレガントな女性・パトリシア、9歳の少年・ヘドウィックの人格が入れ替わり立ち替わり彼女らの前に現れる。彼女らは脱出を図ろうとするが、やがて24番目の人格が現れ・・・。
 3人の女子高校生と多重人格の男との闘いを描いていくサスペンスかと思いましたが、やっぱりシャマラン監督らしく、思わぬ方向へ転がりましたねえ。ダニエル・キイスの「24人のビリー・ミリガン」を念頭に置いているのは開違いないですが、この作品の24番目の人格がとんでもない人格でした。
 3人の女子高校生がデニスの命令でひとりは上着を脱いでブラ1枚になり、ひとりはパンツ1枚になりますが、なぜかケイシーだけは肌を見せません。理由があったのですね。
 ケビンを演じたのはジェームズ・マカボイです。スキンヘッドで様々な人格を演じましたが、そこは演技力の見せ所でした。相変わらず出たがりのシャマラン監督もワンシーンですが姿を見せています。
 ラストである大物俳優が登場し、この作品の続編であり、シャマラン監督のある作品とのコラボが告知されます。 
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス(29.5.13) 
監督  ジェームズ・ガン 
出演  クリスプラット  ゾーイ・サルダナ  デイヴ・バウディスタ  マイケル・ルーカー  カート・ラッセル  エリザベス・デビッキ  カレン・ギラン  ポム・クレメンティエフ  クリス・サラヴァン  ショーン・ガン  シルベスター・スタローン 
 惑星ソヴリンの女帝・アイーシャに依頼された仕事を片付けたガ一ディアンズだったが、帰る際にロケットがソヴリンの貴重な電池を盗んだことから、追われる身になる。あわやというときに、ピーターの父親だと名乗るエゴが現れ、彼らを肋けるが・・・。
 シリーズ第2弾です。これは掛け値なしにかもしろいです。前作を超えるおもしろさと言っても過言ではありません。ストレス発散にはもってこいですし、ちょっと胸を熱くさせるシーンもあり、2時間16分があっという間です。
 スター・ロードを称するピーター・クイル、美しき暗殺者のガモーラ、マッチョな破壊王ドラックスを押しのけて、ガ一ディアンズのメンバーといえば、アライグマのロケットと樹木型宇宙人のグルートのキャラが抜群の存在感です。冒頭、ビーターたちが戦うシーンを背景にグルートが踊る姿のかわいいのなんのって。もう最初からグルートに心掴まれてしまいました。このグルートの声がヴィン・ディーゼルですから、そのギャップの大きさも愉快です。毒舌で手癖が悪く戦闘能力抜群のロケットも相変わらずです。
 今作でのキーワードは“家族”です。ピーターと実の父親のエゴ、ピーターと育ての親というべきヨンドゥという父と子の関係、そしてガモーラとその妹のネビュラとの姉妹関係が描かれていきますが、何といってもガ-ディアンズのメンバーは家族だということにはジーンときます。
 シルベスター・スタローンもちょい役で登場します。 
メッセージ(29.5.19) 
監督  ドゥニ・ヴィルヌーヴ 
出演  エイミー・アダムス  ジェレミー・レナー  フォレスト・ウィテカー  マイケル・スタールバーグ  マーク・オブライエン   
(ちよっとネタバレ)
 今年秋に公開される「ブレードランナー2049」のドゥニ・ビルヌーブ監督作品です。今年のアカデミー作品賞、監督賞など8部門にノミネートされましたが、残念ながら受賞は音響編集賞だけでした。
 世界の12箇所に宇宙船が飛来する。言語学者のルイーズ・バンクスは、物理学者のイアンとともに宇宙人とのコミュニケーションを図ることを依頼される。いったい彼らが飛来した目的は何なのか。宇宙人とのコミュニケーションを図る中で「武器」という言葉が出てきたため各国は疑心暗鬼となり、協力を止め、挙げ句の果て中国は宇宙船に対する攻撃を開始しようとする・・・。
 宇宙人とのコミュニケーションを図るルイーズの脳裏に浮かぶ彼女の私生活の映像が所々で差し込まれていきます。それによると、彼女は夫と別れ、一人娘を自分で育てていたが、その娘も不治の病で死んだということが示唆されます。でも、ここに監督が観客に仕掛けた大きな罠が潜んでいるんですよねぇ。見事に騙されました。あまり、動きのない映画なので、正直のところ前半はあやうく眠りそうになってしまいますが、よく観ていないと「え?どういうこと」と、後悔します。観る人によって評価が分かれるかもしれません。
 宇宙人の姿は、ジュール・ベルヌの「宇宙戦争」のたこ型宇宙人と似たり寄ったり。何とも言えない造型です。しかし、「武器」という言葉が示すものがあれだったとは。予想もつきませんでした。 
家族はつらいよ2(29.5.27) 
監督  山田洋次 
出演  橋爪功  吉行和子  西村雅彦  夏川結衣  中嶋朋子  林家正蔵  妻夫木聡  蒼井優  小林稔侍  風吹ジュン  劇団ひとり  笑福亭鶴瓶  中村鷹之資  丸山歩夢  徳永ゆうき  藤山扇治郎  有園芳記 
 シリーズ第2弾。前作は熟年離婚がテーマでしたが、今回は無縁社会がテーマです。
 始まりは、最近事故が増加し問題となっている高齢者の運転から。周造の車にどこかにぶつかった傷跡がこのところ増えていることを心配した家族は、周造に運転免許を返納させようとするが、周造は新しい車を買うと宣言し、家族の心配に逆に怒り出す。そんな周造がたまたま工事現場で交通整理をしていた高校時代の同級生・丸田と40年ぶりに出会い、酒を飲んで家に連れてきて泊めるが、翌朝、丸田はベッドの上で息を引き取っていた。警察が来て、事件か病死かで大騒ぎとなるが・・・。
 3世代で同居し、家を出た子どもたちも何かというと夫婦でやってくる周造に対し、丸田は妻と離婚し、一人娘とも幼い頃に別れたまま、親戚とも破産騒ぎで縁を切られ孤独な生活を送っているという、あまりに対照的な二人の様子が描かれます。
 現在、結婚をしない男女が増え、また離婚率も高まっている状況の中で、丸田のような人は今後増えてくるのではないでしょうか。ただ、家族があっても、中には他人以上に憎み合い、殺人事件も起こるのですから、いちがいに“家族”という存在が素晴らしいものともいえません。でも、自分の身に置き換えてみると、やはり、孤独で死ぬというのは悲しい気がします。家族に見守られて死にたいなあというのが本音です・・・。
 テーマは深刻ですが、相変わらずの平田家のドタバタに劇場内は笑いでいっぱいです。周造のような頑固な年寄りにならぬよう自分に言い聞かせ、息子には蒼井優さん演じる次男・庄太の妻・憲子のようなお嫁さんが来ることを願いながら、楽しい2時間を過ごすことができました。更なる続編を山田洋次監督に要望です。ストレス発散と家族の良さを実感したい人にお勧めです。 
ちょっと今から仕事やめてくる(29.5.27) 
監督  成島出 
出演  福士蒼汰  工藤阿須加  吉田鋼太郎  黒木華  森口瑤子  池田成志  小池栄子 
 北川恵海さんによる同名小説の映画化です。
 最近ブラック企業のことが世間の話題となっていますが、この作品はブラック企業に勤めてしまった主人公が自殺を考えながらも友人との関わりの中で、やがて前向きに生きていくまでを描いていきます。
 印刷会社に勤める青山隆は、ノルマをこなすことができず、毎日部長からのバワハラで精神的に追い詰められていた。ある日、残業を終えて帰る駅で、駅に入ってくる電車にふらふらと引き寄せられていった隆をある青年が助ける。彼はヤマモトと名乗り、小学校のときの同級生だという。記憶のない隆だったが、他の同級生に確認するとヤマモトという人物はいたと聞き、その夜から飲みに行ったりするようになる。ヤマモトと関わることによって次第に明るくなった隆は、新規大口契約を受注したが、納品の際にミスが発見される・・・。
 吉田鋼太郎さん演じる部長のパワハラが凄すぎます。口でののしるだけではなく、机やロッカーを蹴飛ばすし、皆の前で土下座を強要するなど暴力と同じです。あんなに朝から社員の前で怒鳴り散らせば、他の社員だって萎縮してしまって逆にいい仕事ができないのではと思うのですが。こういう人って、弱いものをいたぶることによって自分の憂さを晴らしているんですよね。ブラック企業らしい朝礼で全員で大声で言う社訓も労働基準法などまったく関係ないというものです(この社訓のところは、問題となった電通の「鬼十則」のことを意識しているのでは。)。あんな会社ではとてもじゃないけど、勤め上げる自信は僕にもありません。
 息子が会社を辞めたいと言ったらどうすると聞いたときに「別にいいじゃない」とあっけらかんといえる母親は偉大です。僕ならど、「今よりいいところに勤めることができる保証なんてないのだから、もう一度考えたら」と言ってしまいそうです。それが子どもを追い詰めるとも知らずに・・・。肝に銘じておかなくては。
 物語は、“ヤマモト”の正体は何者なのかというミステリー的なおもしろさもありますが、やはり何といっても中心となるのは、隆がどう生きていくかです。バヌアツのことは映画のオリジナル。ラストは原作とは違いましたが、原作の方が僕としては好きです。 
ローガン(29.6.3) 
監督  ジェームズ・マンゴールド 
出演  ヒュー・ジャックマン  パトリック・スチュアート  ボイド・ホルブルック  スティヴン・マーチャント  ダフネ・キーン  エリク・ラ・サル
     リチャード・E・グラント  イリース・ニール  エリザベス・ロドリゲス  クインシー・フォース 
 ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンの最終作となる作品です。
 物語の舞台は国の政策により新しいミュータントは生まれなくなり、ミュータントの大半が死滅した2029年。不死であったはずのローガンも身体の中に埋め込まれたアダマンチウムの毒により治癒能力が衰え、すっかり老いて、今ではリムジンの雇われ運転手として糊口をしのぎながら、アメリカとメキシコの国境付近に、やはり年老いたプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアと隠れ澄んでいた。そんなある日、メキシコ人女性からローラという少女を託されたローガンはトランシジェン社から追われることになってしまう・・・。
 R15+の指定がされていることもあって、今までの「X-MEN」シリーズとは雰囲気が違います。首を切り取って相手の足下に投げるとか、腕を切り落とす、アダマンチウムの爪で頭を突き刺す等々殺戮の仕方が凄いです。そして、それを行うのがウルヴァリンだけではなく、ローラという少女もですから、これはショッキングです。ローラを演じるダフネ・キーンの気の強さを感じさせる目、アクションシーンの見事さ、とにかく、この映画でローガン以上に強烈な印象を与えるのは、この少女です。プロフィールを見ると、彼女はまだ12歳のようですが、この歳でこんなインパクトの強い役を演じて大丈夫かと思うほどの、見事な演技です。この作品の評価が高いのも、ひとつは彼女の演技によるところが大でしょう。
 もちろん、ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンも今回はひと味違います。すっかり老け込んでしまい、遠視のめがねをかけ新聞を読むところには悲哀さえ感じます。チャールズ・エグゼビアも90歳となり、認知症のためなのか、自分の力をコントロールできなくなっています。いつも紳土然としていたチャールズの老いた姿も痛々しいですね。
 物語はローラとチャールズを連れての逃走劇という、いわゆるロード・ムービーの趣があります。しかし、追われているにも拘わらず、ベッドで休みたいとローガンたちを招待してくれた家族の家に泊まるなんて、親切な人たちに迷惑がかかることが分からないんですかねえ。反対しながらも結局同意してしまうローガンもどうかしていますけど。結果は案の定です。
 上記のような、どうなのかなあという部分はありますが、それを補って余りあるローラという存在の強烈さとローガンの老いというストーリーに飽きることはまったくありません。ラストに、あるものを“X”の形にするところが余韻を残します。 
22年目の告白-私が殺人犯ですー(29.6.14) 
監督  入江悠 
出演  藤原竜也  伊藤英明  仲村トオル  夏帆  野村周平  石橋杏奈  竜星涼  早乙女太一  平田満  岩松了  岩城滉一 
 2013年に公開された韓国映画「殺人の告白」のリメイクです。
 22年前に起きた、今では時効となった連続絞殺事件の犯人がマスコミの前に名乗り出る。曾根崎と名乗る男は、事件の内容を綴った本を出版し、一躍時の人となるが、本を売るために被害者家族の前に現れたりして世間を煽る。刑事の牧村は、かつて犯人を取り逃がした上に、犯人の逆恨みによって自宅のアパートに仕掛けられた爆弾によって先輩刑事を失い、更に自宅にいた妹が行方不明のままとなっていた。曾根崎の目的はいったい何なのか・・・。     。
 殺人を告白した曾根崎がいくら時効で罪に問えないにしても、非難はされるべきてあって、映画のようにヒーロー扱いになるのはおかしいでしょうと思うのですが、ネットの進歩により、誰でも匿名で気軽に、ある意味無責任に言いたい放題のことを言うことができるようになった世の中では現実でもヒーロー扱いする馬鹿者も出てくるのでしょうね。
 「殺人の告白」そのままのリメイクでけなく、ラストはひとひねりしています。また、日本で2010年4月に殺人罪に相当する罪に時効がなくなったという事実もうまくストーリーに取り入れて、最後の展開が考えられています。「殺人の告白」はDVDレンタルで観ているのですが、落としどころはどうだったかは、すっかり忘れてしました。少しコミカルな部分もあったし、韓国映画らしいカーアクションが派手だったという印象は残っていますが。
 血しぶきは飛ばないものの、絞殺のシーンはかなりショッキングです。よく年齢制限がかからなかったなあと思うほどです。残酷なシーンが嫌いな人は注意が必要です。
 曾根崎が22年前の事件の犯人とすると、藤原竜也くんではちょっと若すぎる気がします。それは牧村刑事を演じた伊藤英明くんも同じ。22年前に既に刑事として一線で働いていたのだから、当時いくら若くても20代半ばでしょう。そうなると今は50歳近い年齢ですが、残念ながらその歳には見えません。年齢的な点からは人選誤りでは。せめて髪を短くするだけでけなく、もう少しメイクで老けさせればよかったのに。ただ、嫌なやつを演じさせたら藤原くんはピッタリですねえ。
ハクソー・リッジ(29.6.24) 
監督  メル・ギブソン 
出演  アンドリュー・ガーフィールド  サム・ワーシントン  ルーク・プレイシー  テリーサ・パーマー  ヒューゴ・ウィーヴィング  レイチェル・グリフィス  ヴィンス・ヴォーン 
 「マッド・マックス」の主演俳優であるメル・ギブソンが久しぶりにメガフォンをとり、今年のアカデミー賞作品賞・監督賞など6部門にノミネートされた話題作です。
 良心的兵役拒否者でありながら戦場に行き、銃を持つことを拒否しながらも多くの兵士を救ったアメリカ兵の実話です。良心的兵役拒否者でありながら、なぜ自ら志願して戦場に行くのかという点が理解できなかったのですが、周囲の者が兵隊として次々と出兵する中で、衛生兵としてでも国のためになりたいという愛国心を煽る何かがあったのでしょうか。
 本当は感動作であるはずなんですが、ちょっと複雑。というのも、映画を観るまでは知らなかったのですが、戦いの舞台は沖縄で、相手はもちろん日本兵。“ハクソー・リッジ”というのは、沖縄の“前田高地”のことだったんですねえ。予告編でも沖縄戦だとはまったく言っていなかったし、てっきり欧州戦線だとばかり思っていたので、ハクソー・リッジを登ったアメリカ兵の前に現れた兵士を見て「あれ?日本兵じゃないの?」と、びっくり。首や手足が吹き飛んだり、内臓が飛び出たり、更には火炎放射器で焼かれるという凄惨な戦いのシーンに目を背けたくなりましたが、それが日本人では尚更・・・。
 バンザイ突撃のシーンや切腹のシーン(もちろん介助で首を切ります)、更には白旗を掲げて降伏したと思わせて米兵が安心したところで手榴弾を爆発させるという卑劣なシーンもあって、主人公の自分の身を捨てても他人の命を救うという行動にひたすら感動するだけというわけにもいきませんでした。でも、戦争というのは、ああいう残酷なものなのですよね。 
キング・アーサー(29.6.30) 
監督  ガイ・リッチー 
出演  チャーリー・ハナム  ジュード・ロウ  アストリッド・ベルジュ=フリスベ  ジャイモン・フンスー  エイダン・ギレル  エリック・バナ 
 「シャーロック・ホームズ」のガイ・リッチー監督による「アーサー王伝説」を素材にした作品です。ここで描かれるのはよくある王位を簒奪した叔父への復讐物語なので、「アーサー王伝説」を知らなくても、十分楽しむことができます。
 幼い頃、叔父の謀反によってイングランド王である父と母を殺害されたアーサーは、叔父の手から逃れ、スラム街の娼館の娼婦たちによって育てられる。スラムの中で喧嘩や格闘に明け暮れ、逞しく育っていったアーサーは、王位継者しか引き抜くことができないとされていた岩に刺さった聖剣エクスカリバーを引き抜いたことから、大きく運命が変わっていく・・・。
 スラム街で育っていくアーサーを描くカット割りが凄いです。どんどんシーンが変わっていくので、ついていくのが大変でしたが、いつの間にか見事に映画の中に引き寄せられていました。そのほか「シャーロック・ホームズ」にもあったスローモーションを多用した映像づくりなど、ガイ・リッチ一監督らしい映像作品となっています。
 アーサーを演じたのは「パシフィック・リム」のチャーリー・ハナム。あまり印象に残る顔ではないですねぇ。存在感では叔父のヴォーディガンを演じたジュード・ロウに軍配があがります。
 期待しないで観に行きましたが、意外なおもしろさでした。海外ではいまひとつ興行成績もよくないそうなので、最後に円卓の騎士のエピソードもあったけど、これを活かした続編製作は無理かな。 
パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊(29.7.1) 
監督  ヨアヒム・ローニング and エスペン・サンドベリ 
出演  ジョニー・デップ  ジェフリー・ラッシュ  ハビエル・バルデム  ブレントン・スウェイツ  カヤ・スコデラリオ  ケヴィン・R・マクナリー
     オーランド・ブルーム  キーラ・ナイトレイ    
(ネタバレあり)
 シリーズ第5作です。今回はシリーズ第3作で、10年に1度、1日だけしか陸地に戻れなくなったウィル・ターナーの呪いを解こうと、ウィルの息子・ヘンリーが呪いを解くためのアイテムであるポセイドンの槍を探すところから始まります。
 今回、ジャックの敵役となるのは、“海の死神”サラザール。ジャックが羅針盤を酒の代金として手放してしまったことから、“魔の三角海域”に閉じ込められていたサラザールが解放され、かつて自分を“魔の三角海域”に閉じ込めたジャックの命を狙います。前作の敵役の黒ひげがいまひとつキャラが立っていませんでしたが、サラザールは、さすがアカデミー賞俳優であるハビエル・バルデムが演じているだけあって、強烈な印象を与えてくれます。ヒロイン役は「メイズ・ランナー」に出演しているカヤ・スコラデラリオ。女性天文家・カリーナとして、ヘンリーとともにポセイドンの槍を探します。
 ジャックがブラック・パール号の船長になったエピソードが描かれ(これがサラザールとの戦いです。)、若い頃のジャックが登場します。メイクによってジョニー・デップが若作りしたのだろうと思うのですが、一緒に観に行った子どもたちは「あれはCGだ!」と言います。果たして真実はどちらなんでしょうか。
 シリーズファンにとって一番嬉しかったのは、前作では出演しなかったウィル・ターナー役のオーランド・ブルームと、エリザベス・スワン役のキーラ・ナイトレイがシーンは僅かですが10年ぶりに出演しているということ。贅沢を言えば、できればエリザベスには息子のヘンリーとともに剣を取った活躍を見せて欲しかったですね。
 今回の見所のひとつは意外な人物の感動シーンが描かれるところです。「こんなに格好良くシリーズから退場してしまうの?」と思うのですが、でも、この人、きっと次作にも登場してくるんだろうなあ。
 シリーズ3作、4作ではジャックの父親役でキース・リチャーズが出演していましたが、今回もある大物歌手がカメオ出演を果たしています。エンドロールで名前が出るまでわかりませんでした。
 エンドロール前に席を立つことなかれです。エンドロール後に次回のストーリーを示唆するシーンがあります。あの影はやっぱり、あれですよねえ。 
ジョン・ウィック チャプター2(29.7.7) 
監督  チャド・スタエルスキ 
出演  キアヌ・リーブス  リッカルド・スカマルチョ  ルビー・ローズ  ジョン・レグイザモ  コモン  ローレンス・フィッシュバーン  イアン・カクシェーン  フランコ・ネロ 
 シリーズ1作目を観ていないのに、2作目を観に行ってしまいました。
 ジョン・ウィックは伝説の殺し屋。しかし、平穏な暮らしを送りたいジョンは殺し屋稼業から足を洗いたいと、イタリアン・マフィアのサンティーノからの依頼を断るが、怒ったサンティーノにより自宅を破壊されてしまう。仕方なく組織の掟を守ってサンティーノの依頼を受けて彼の姉を殺害するが、サンティーノは今度はジョンに7億円の懸賞金をかけ、世界中の殺し星にジョンを狙わせる。殺し屋の襲撃を受けながら果たしてジョンはサンティーノを殺すことができるのか・・・。
 ジョンが繰り出す銃とカンフーを融合させた技は「ガンフー」と呼ばれるようですが、見た感じはそれはどの切れは見られません。格闘も何となくスローモーです。一時の太ったときほどではありませんが、それでもやはり、若い頃に比べて身体が重たそうな感じがするせいでしょうか。
 とにかく、殺す人の数が半端じゃありません。次々と現れる敵を端から殺していきます。ジョンは撃たれても銃弾を防ぐスーツで死にません。ジョンの方は相手の顔をどんどん撃ち抜いていくのに、相手はジョンの顔は狙わないのはご愛敬か。
 殺し屋の中で印象的だったのは、コモンが演じたカシアン。ジョンに護衛していたサンティーノの姉を殺害されたことから、復讐を誓います。ラッパーがすっかり俳優が板についてしまいましたね。なかなか格好いいです。駅でジョンとカシアンが撃ち合っているのに、消音器をつけているので誰も気が付かないというシーンは愉快でした。
 世界中の殺し屋から狙われたジョンが助けを求めたのが、キング。演じているのはローレンス・フィッシュバーンです。キアヌ・リーブスとローレンス・フィッシュバーンといえば、「マトリックス」を思い出します。 
ザ・マミー 呪われた砂漠の王女(29.8.1) 
監督  アレックス・カーツマン 
出演  トム・クルーズ  ラッセル・クロウ  アナベル・ウォーリス  ソフィア・ブテラ  ジェイク・ジョンソン  コートニー・B・ヴァンス 
 古代エジプトの王女アマネットは、次期女王になるはずだったが、王に男の子が生まれたため約束を反故にされる。怒ったアマネットは死の神と契約を結び王一家を殺すが、アマネットに反感を覚える者たちによって生きたまま石棺に封印され埋められてしまう。それから2000年後、中東の戦闘地帯で戦争そっちのけで宝物を探していたニックたちは石棺を発見し、飛行機でイギリスに運ぼうとするが途中で飛行機が墜落しアマネットはイギリスの地で蘇ってしまう。
 往年のモンスター映画を現代に蘇らせる「ダーク・ユニバース」の第1弾です。モンスター映画となるとB級映画と思ってしまうのですが、主演がトム・クルーズにジョニー・デップなどの大物俳優だそうなので、B級映画と侮ることはできません。
 今回、登場するモンスターはミイラ男ならぬミイラ女です。幼い頃、テレビで放映されたミイラ男の印象が強烈で、夢に見るほど怖かったものでしたが、この映画に限ってはミイラ女にホラ一感はありません。美しいし、スタイル抜群のせいでしょうか。演じていたのは「キングスマン」で義足の殺し屋を演じたソフィア・ブテラです。
 ニックを演じるのはトム・クルーズ。相変わらず若々しい姿でアクションに頑張っていました(でも、先頃ついに怪我してしまいましたね。)。ラストシーンからすると、今後のシリーズに再登場もあるかも。
 この「ダーク・ユニバース」シリーズの鍵を握る人物として登場するのがラッセル・クロウ演じるジキル博士。あの“ジキルとハイド”のジキル博士です。プロディジウムという組織を仕切る人物で、たぶん今後のシリーズにも登場するのでしょうが、当然ですが、ハイドに変身(?)すると強大な暴力性を持った怪物となります。 
トランスフォーマー  最後の騎士王(29.8.4)
監督  マイケル・ベイ
出演  マーク・ウォールヴァーグ  アンソニー・ホプキンス  ジョシュ・デュアメル  ローラ・ハドック  スタンリー・トゥッチ  サンティアゴ・カブレーラ  ジェロード・カーマイケル  イザベラ・モナー  ジョン・タトゥーロ  
 シリーズ第5弾です。オプティマス・プライムが“創造主”と戦うために宇宙に旅立って後の地球ではバンブルビーがオートボットのリーダーとなって復活したメガトロンに対抗していた。バンブルビーと行動を共にするケイド・イェーガーは謎の英国紳士バートンの招きで英国に向かう。そこでイェーガーはバートンから驚くべき歴史の真実を教えられる・・・。
 当初のような車からトランスフォームするロボット生命体が悪のロボット生命体と戦うという単純なストーリーが次第に複雑になってきました。今回はなんとアーサ一王伝説の時代にオートボットがいたということが明かされます。アーサー王伝説を少しは知らないとなんのことやらですよねえ。そのうえ、オプティマス・プライムが何だかおかしくなって地球に戻ってきてバンブルビーと戦うのですから、なかなか頭が追いついていきません。
 そんな中印象的だったのは、英国紳士バートンとその執事ロボット。バートンを演じているのはアンソニー・ホプキンスですから存在感抜群なのは言うまでもありません。そして執事ロボットのコグマンも人間と同じ大きさでありながら、巨大なロボットを投げてしまうというとんでもない力を秘めています。
 戦いのシーンのCGは相変わらず迫力がありましたが、それだけで、個人的にはシリーズにちょっと飽きてきた感じです。
 ちなみに“最後の騎士王”というのは、オプティマス・プラウムかと思ったのですが、違いました。
君の膵臓を食べたい(29.8.7) 
監督  月川翔 
出演  浜辺美波  北村匠海  小栗旬  北川景子  大友花恋  矢本悠馬  桜田通  森下大地  上地雄輔   
 その内容と題名とのギャップが評判を呼んだ往野よるさんの同名小説の映画化です。
 膵臓の病気で長くは生きることができない桜良とクラスの中に友人がいない“僕”とのふとしたきっかけから始まった交流を描いていきます。
 映画は原作と異なり、桜良の死から12年が過ぎ、今では母校で教師となっている“僕”が、古くなって壊されることとなった図書館の蔵書整理をする中で、自分の高校生の頃と雰囲気が似ている図書委員の栗山に高校時代の桜良とのことを話していくという形を取っています。
 本を読んだときにはそれほど感動を得ることができなかったのに、映画ではなぜかジ~ンときてしまい、不覚にも涙がこぼれそうになってしまいました。やっぱり、電子書籍で読んだのも感動できなかった一因なのかなあとは思うのですが(やっぱり、一枚一枚ページを繰るということが必要です。)、それ以上に桜良役の浜辺美波さんと、“僕”役の北村匠海くんの演技に心揺さぶられたのが感動の大きな理由だったと思います。本当は辛いのに“僕”に向ける桜良(というか浜辺美波さん)の笑顔は本当に素敵でしたし、焼香に桜良の自宅に赴いた“僕”が、“共病文庫”を読んで「お門違いだとわかっているんだけど、泣いていいですか。」と桜良の母に聞いて大声で泣き出すシーンにはあやうく一緒に泣きそうになりました。
 原作にはない、桜良の親友の恭子の結婚の話は、相手があの“僕”の唯一の理解者だったガム君というのはできすぎですね。わずかな登場シーンですが、演じた大河ドラマでも活躍の矢本悠馬くんの存在感が抜群です。
 もう一度、本を読み返したくなりました。今度は感動できるかな。 
スパイダーマン ホームカミング(29.8.18) 
監督  ジョン・ワッツ   
出演  トム・ホランド  ロバート・ダウニー・Jr.  マイケル・キートン  マリサ・トメイ  ジョン・ファブロー  グウィネス・パルトロウ  ゼンデイヤ  ドナルド・グローヴァー  ジェイコブ・バタロン  ローラ・ハリアー  トリー・レヴォロリ  ボキーム・ウッドバイン  タイン・デイリー 
 トビー・マグワイヤやアンドリュー・ガーフィールドがスパイダーマンを演じた従前のシリーズとはまったく雰囲気が異なるスパイダーマン映画です。
 従前のスパイダーマン映画は、おじさんが殺されるとか、失踪した父親に隠された秘密があるとか、どこか暗い雰囲気が漂う映画だったのですが、この作品には暗いというイメージはまったくありません。スパイダーマンの映画化権を持っていたソニーピクチャーズとマーベルが協力することにより、ついにスパイダーマンが「マーベル・シネマティック・ユニバース」に参戦することになったことも影響があるのでしょうか。
 この作品でトム・ホランド演じるスパイダーマンは「アベンジャーズ」に加入したくてたまらない高校生。どうしてスパイダーマンになったのかはまったく触れられません。トニー・スタークから貰った特製のスパイダーマンスーツで街へ繰り出し、アベンジャーズの仲間入りをしたいと街の悪人征伐にいそしんています。そんなとき、トニー・スタークに恨みを特つバルチャーが出現し、スパイダーマンはトニーに認めて貰いたいと一人でバルチャーに挑んでいきますが・・・。
 はっきり言って、「マーベル・シネマティック・ユニバース」の世界を楽しむだけの映画ですが、僕としてはバルチャーを演じた俳優に注目。何とDCコミックスのバットマンを演じていたマイケル・キートンですよ。彼がマーベルの映画で、それも敵役で登場とはおもしろい配役です。
 ラストにグウィネス・パルトロウ演じるペッパー・ポッツがわずかながらも出演というのもアイアンマンのシリーズファンには嬉しいところです。 
ワンダーウーマン(29.8.25)
監督  パティ・ジェンキンス
出演  ガル・ガドット  クリス・パイン  ロビン・ライト  ダニー・ヒューストン  デイビット・シューリス  コニー・ニールセン  エレナ・アヤナ  ユエン・ブレムナー  ルーシー・デイビス  サイード・ダグマウイ  ユージーン・ブレイブ・ロック
 マーベル・コミックの「アベンジャーズ」に対抗してDCコミックスが仕掛けるのはバットマンほかDCコミックスのヒーローが集まる「ジャスティス・リーグ」ですが、今作品ではリーグの一員であり、すでに「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」でスクリーンに初登場した“ワンダーウーマン”の活躍を描きます。
 外界から存在を隠された女性しかいない島の王女であるダイアナは、ある日、海に不時着したパイロットのスティーブを助ける。時は第一次世界大戦下、イギリスのスパイであったスティーブはドイツ軍から毒ガスの設計図を盗んで追われていた。ダイアナはドイツ軍の背後にいるのが、かつて大神ゼウスから追われた戦いの神・アレスではないかと考え、スティーブとともに島を出て、アレスと戦うことを決意する。
 ワンダーウーマンといえば僕らの世代の記憶に残っているのはリンダ・カーター。テレビで放映されていたワンダーウーマンを演じた女優さんですが、今回のワンダーウーマンみたいなコスチュームは着ていたかなあ。まったく記憶にありません。
 とにかく、ワンダーウーマンを演じるガル・ガドットが格好いいのなんのって。第一次世界大戦時代の淑女の格好も素敵ですし、ミニ(?)の姿で戦う姿もほれぼれします。
 ラストでは泣かせる場面もあって、単なるヒーロー(ヒロイン?)ものには止まりません。
関ヶ原(29.8.26) 
監督  原田眞人 
出演  岡田准一  役所広司  有村架純  平岳大  東出昌大  北村有起哉  伊藤歩  中嶋しゅう  音尾琢真  滝藤賢一
     和田正人  松角洋平  松山ケンイチ  西岡徳馬  壇蜜  中越典子  大場泰正 
 近代以前の目本の歴史の中で最も有名な戦いといっても過言ではない「関ケ原の戦い」を題材に司馬遼太郎さんが描いた同名小説の映画化です。日本を二分する戦いでありながら1日もかからずに勝敗が決したのはなぜなのか・・・。
 人心掌握術に長けた家康に対し、頑なに正義を貫いたがために豊臣譜代の武将たちから反感を買うようになった三成を、それぞれ役所広司さんと岡田准一くんが演じます。役所さん演じる徳川家康は、これまでの「鳴くまで待とうホトトギス」と評される姿とは異なり、感情を露わにぎらぎらした家康となっています。嫌われ役をやっても、役所さんはうまいですねえ。それにしても、あの見事な太鼓腹は役所さんのお腹そのものではなかったでしょうね。それに対して岡田くん演じる石田三成は正義を貫くといっても、あまりに頑な過ぎます。あれでは豊臣譜代の武将も離れていくのも無理ないかもしれません。岡田くんは名優・役所さんとがっぷり四つに組んで演じる凄い役者になりましたね。
 この作品では家康と三成を描くほか、彼らに仕える忍びの者たちにも焦点を当てています。現在NHKの朝ドラで活躍中の有村架純さんが三成に仕える初芽を演じますが、三成に仕えるきっかけを考えると、関ヶ原の合戦後に捕縛されて市中引き回しになっている三成に対し、絶対初芽は行動を起こすと思ったのですが、そこは肩すかしでしたね。伊藤歩さん演じる蛇白や先頃舞台で亡くなった中嶋しゅうさん演じる赤耳など、時代の中で翻弄され、やがて切り捨てられていく忍びが哀れです。
 周囲から嫌われる三成の参謀役として最後まで奮闘する平岳大さんが演じた島左近が観客の共感を一番呼びます。それに対して音尾琢真さん演じる、名将福島正則は嫌われる役どころです。 
新感染(29.9.2) 
監督  ヨン・サンホ   
出演  コン・ユ  キム・スアン  チョン・ユミ  マ・ドンソク  チェ・ウシク  アン・ソヒ  キム・ウィソン  チェ・グィファ  パク・ミョンシン
     シム・ウンギョン  イェ・スジョン 
 妻と別居し、一人娘のスアンを育てているファンドマネージャーのソグ。誕生日に釜山にいる母に会いに行きたいと望んだスアンを連れてソグは釜山行きの高速鉄道KTXに乗車する。発車直前に一人の女性が駆け込むが、彼女はやがて苦しみだし、介抱をしようとした乗務員に突然襲いかかる。噛みつかれた乗務員はすぐにゾンビ化して次々と乗客を襲っていく・・・。             題名が「新感染」なので、以前に「感染」という映画があったのかと思いましたが、これは舞台となる日本の新幹線に当たる韓国の高速鉄道とゾンビウィルスによる“感染”を引っかけた題名のようです。ちょっとセンスを疑いますね。
 最近主流となった走るゾンビの映画ですが、単なるホラー映画に止まりません。列車の車内という閉鎖空間でゾンビが襲いかかってくるという恐ろしい状況の中、主人公であるソグとスアンの父と娘、サンファと身重であるソンギョンの夫婦、高校の野球部のヨングクと応援団長のジニの若き恋人たちが果たしてどうなるのか、同じゾンビ作品である「ウォーキング・デッド」のような人間ドラマともなっています。
 無事に安全地帯に逃れることができるのか、ハラハラドキドキの展開が続きます。ネタバレになるので詳細は伏せますが、とにかく泣かせます。主人公のソグより、観客の心を掴むのは身重の妻を守るうと奮闘するサンファでしょう。他人のことはどうでもと考えるソグと違って、妻だけではなく他人のためにも戦う姿は感動ものです。
 それにしても、だいたい、こういう映画では、自分が助かりたいために他人を平気で犠牲にする人物が、簡単に死んでしまうものですが、この映画の憎まれ役のバス会社の重役はしぶとかったですねえ。
 列車の中で最初にゾンビ化する女性を演じていたのは、シム・ウンギョン。この人、パンフレットにも紹介はありませんでしたが、実は韓国でヒットし、日本でもリメイクされた「怪しい彼女」の主役を演じた女優さんです。まったくわかりませんでした。主役まで演じた人がこんな端役をするとはびっくり。 
散歩する侵略者(29.9.9) 
監督  黒沢清 
出演  長澤まさみ  松田龍平  高杉真宙  恒松祐里  長谷川博己  前田敦子  満島真之介 児嶋一哉  光石研  東出昌大
     小泉今日子  笹野高史 
(ちょっとネタバレ)
 劇作家・前川知大さん率いる劇団イキウメの舞台劇の映画化です。
 加瀬鳴海はイラストレーター。夫の浮気が原因で夫婦関係はうまくいっていない。ある日、数日間行方不明だった夫の真治が街中をふらついていて保護されるが、記憶を失い以前と性格が変わっていることに戸惑う。その日以来どこか様子のおかしい真治は、毎日散歩に出かけていく。その頃、町では一家惨殺事件が発生し、取材をしていたジャーナリストの桜井は、天野という高校生に出会い、彼と一緒に事件の鍵を握る女子高校生の立花あきらを探すこととなる・・・。
 ストーリーを簡単に言ってしまうと、宇宙人による地球侵略の話です。とはいえ、アメリカ映画のようなCGによる壮大なスペククルではありません。ラスト、宇宙人の攻撃シーンがありますが、あまりに貧弱です。
 冒頭、立花あきらによる虐殺が起こるので、ホラーかと思ったらその後はゆる~い展開になりました。真治、天野、立花は地球侵略の先兵としてやってきた宇宙人が乗り移っているのですが、彼らは地球人から「家族]、「所有」、「仕事」など様々な概念を奪います。概念を奪うなんて、このあたり舞台劇らしいところです。映画としてはスケールの小さなものになってしまいますが・・・。概念を奪われたらどうなるのか、その表現の仕方は微妙でした。例えば、「仕事」という概念を奪われた会社の社長があんなふうに子どものようになってしまうものでしょうか。
 真治のとぼけた感じが松田龍平さんにぴったりです。こういう力の入らない役をやらせると松田さんはうまいですよねえ。一方、鳴海役を演じたのは長澤まさみさんですが、久し振りに長澤さんをスクリーンで見ましたが、今回のようなツンツンした役柄はお似合いですね。
 最終的にどうして宇宙人は侵略を止めたのかが、わかりません。愛は地球を救うというわけでもないでしょうに。また、「愛」の概念を失うことは、他の概念を失うことと違うのでしょうか。
 小泉今日子さんや東出昌大くんまでちょい役で登場するなど、出演陣は意外に豪華。 
三度目の殺人(29.9.9) 
監督  是枝裕和   
出演  福山雅治  役所広司  広瀬すず  吉田鋼太郎  斉藤由貴  満島真之介  市川実日子  橋爪功  松岡依都美 
(ちよっとネタバレ)
 解雇された食品会社の社長を殺害し、財布を奪った上、死体を焼いた容疑で逮捕された三隅。犯行を認め、30年前にも強盗殺人の前科がある三隅は、死刑が確実と思われた。三隅の供述がコロコロ変わることに音を上げた担当弁護士の摂津から協力を求められた重盛は何とか無期懲役にもっていこうと考え調査を始める・・・。
 法廷サスペンスと期待して観に行ったのですが、残念ながら法廷シーンはわずか。期待したような弁護士と検事の丁々発止のやり取りから真実が明らかになっていくというような劇的なシーンはありません。それより、拘置所での接見シーンの方が緊迫感があります。
 果たして真実はどうなのか、三隅は犯人なのか、動機は何なのか、結局最後まで真実は明らかにされません。観客それぞれの捉え方にお任せという感じです。僕自身はまったくわかりませんでした。コロコロ変わる三隅の供述は、芥川龍之介の「藪の中」のようです。
 題名の「三度目の殺人」の意味するところは、一度目は30年前の三隅の犯した殺人、二度目が今回の会社社長の殺人、そして三度目は死刑となる三隅の死ということでしょうけど、それは三隅自身による死刑を利用した自殺なのか、それとも死刑という国家による殺人と捉えたらいいのか、このあたりもわかりません。       ダ
 主演の福山雅治さんのファンにとっては、福山さんを見るだけでも満足かもしれませんが、そうでない僕にとっては、ちょっと退屈で、あやうく寝落ちしそうになってしまいました。
 公判の途中で無実を主張した三隅の主張の取扱いをどうするかということで、裁判官、弁護士、検事があうんの呼吸で一つの方向性を出していきますが、作品中でも述べられる“訴訟経済”のために、真実の追究が疎かになってしまうのではないか、特に裁判員裁判が行われるようになって、短い日程で判決が出される状況では、その点が特に気になります。 
ダンケルク(29.9.9) 
監督  クリストファー・ノーラン 
出演  フィン・ホワイトヘッド  トム・グリン=カーニー  ジャック・ロウデン  ハリー・スタイルズ  バリー・コーガン  ケネス・ブラガー
     アナイリン・バーナード  ジェイムズ・ダーシー  キリアン・マーフィー 
 IMAXカメラで撮影されているので、IMAXで観るのが最適と言われていましたが、残念ながら地元にはIMAXがないので通常のスクリーンで鑑賞しました。
 第二次世界大戦中のヨーロッパ戦線で、ドイツ軍によってフランス北部のダンケルクに追い詰められたイギリス軍の脱出劇を描く作品です。物語はダンケルクの海岸、ダンケルクに向かうイギリス空軍のスピットファイヤの機上、救出に向かう民間船上の3つのシーンを交互に描いていきます。
 「プライベート・ライアン」のような手足は吹き飛ぶ、内臓はお腹から出るというような激しい戦闘シーンを期待していくと失望します。ドイツ軍の爆撃機の攻撃により海岸で待機している兵士が吹き飛んだり、Uボートの魚雷により救出船が転覆したりするシーン、あるいは戦闘機が空中戦により打ち落とされるというシーンはありますが、「プライベート・ライアン」のような残酷描写はありません。それより、全体を通して重低音で流れる音楽が緊迫感を高めている気がします。
 早く救助船に乗りたいがために、負傷者とともに船に乗り込もうとしたり、他の部隊の中に潜り込んだりと、生きるためになるふり構わないトミーの姿が戦場の恐ろしさを間接的に観客に感じさせます。誰かに必要とされたくて救助に向かう民間船に乗り込んだジョージの運命があまりにかわいそうです。
 海岸と海と空の時間軸がちょっとズレており、時間の経過通りに描かれているわけではないので、よく観ていないと「あれっ?」と思うこともあるかも。
 前評判が凄くて、かなり期待して観に行ったのですが、期待が大きかっただけに予想とは違う戦争映画にちょっと拍子抜け。一番印象的だったのはやっぱりハンス・ジマーの音楽です。 
エイリアン コヴェナント(29.9.15) 
監督  リドリー・スコット 
出演  マイケル・ファスベンダー  キャサリン・ウォーターストン  ビリー・クラダップ  ダニー・マクブライド  デミアン・ビチル  カルメン・イジョゴ  ジャシー・スモレット  キャリー・ヘルナンデス  エイミー・サイメッツ  ナサニエル・ディーン  アレクサンダー・イングランド  ベンジャミン・リグビー  ウーリ・ラトゥケフ  テス・ハウブリック 
  エイリアンシリーズ第6弾です。「エイリアン」の前日譚を描いた「プロメテウス」の続編になります。前作「プロメテウス」でエリザベス・ショウ博士とアンドロイドのデヴィッドがエンジニア(人類の創造主)の母星目指して飛び立ってから10年後が舞台です。
 宇宙船コヴェナント号は、15名の乗組員と2000名の入植者、1140体の胚芽を乗せ、入植地である惑星オリガエ6を目指していた。その途上、予期せぬエネルギー・バーストにより多大な損害を受け、コールドスリープ中の船長が死亡する。破損箇所の修理中に謎の電波を受信し、発信源の調査により、オリガエ6より近い惑星が居住可能領域にあることが判明する。亡くなった船長に代わって船長に就いたオラムは、惑星の調査に向かうことを決断する・・・。
 「プロメテウス」の続編なので、「プロメテウス」を観ていないとストーリーの展開でわからない部分があるので、観ていない人は前もって観ることをおすすめします。。
 ストーリーをおもしろくするためなので仕方ありませんが、乗組員たちの危機管理がまったくなっていません。居住可能といっても未知の惑星なんだから宇宙服をきちんと着るのは当然なのに脱いでしまうし、あんなに宇宙人の死体があるところに行ったのに、その現状を誰も不思議に思って質問しようとしません。その上、エイリアンがいるのに皆、個人行動を取ってしまいます。などと数え上げたら突っ込みどころ満載なので、あまり深く考えずに観た方が楽しめます。
 エイリアンシリーズのヒロインといえば、戦う女性の代表、リプリーですが、今作での戦う女性はキャサリン・ウォーターストン演じるダニエルズですが、残念ながらリプリーのような強烈な印象を与えるまでに至っていません。
 「プロメテウス」よりはエイリアンが多く登場するので、「プロメテウス」よりはおもしろかったといえます。やっぱり。「エイリアン」は、どこから襲われるのかわからない恐怖がなければいけません。今作でエイリアンの創造主も判明したし、この20年後にはノストロモ号がエイリアンと遭遇しますので、この後のシリーズの展開はどうなるのでしょうか。ここで打ち止めが綺麗だと思いますが。
 ところで、アンドロイドの髪が伸びるとは知らなかった。それ必要ですか?
僕のワンダフル・ライフ(29.9.21) 
監督  ラッセ・ハルストラム
出演  デニス・クエイド  ペギー・リプトン  ブライス・ゲイザー  K・J・アパ  ジュリエット・ライランス  ルーク・カービー  ガブリエル・ローズ  マイケル・ボフシェヴァー  ブリット・ロバートソン  ローガン・ミラー  カービー・ハウエル=バプティスト  ジョン・オーティス 
 心を通わせた飼い主の少年と再び巡り会うために生まれ変わりを繰り返す犬の物語です。
 犬の寿命は長くて15年ほど。飼い主とずっと一緒にいることはできません。この映画の主人公であるゴールデン・レトリバーのベイリーも自分の命を救ってくれた少年・イーサンに別れを告げ死にますが、何度も生まれ変わりを繰り返します。
 犬の目線で描かれたストレートな感動映画です。別に犬好きでない僕でも感動したのですから、これは犬好きの皆さんにはたまらない映画でしょうね。生まれ変わるたびにシェパードやコーギーなど違う犬種になっていくのが楽しいです。
 原題は「A dog's purpose」。生まれ変わりを繰り返し、やがて大人になったイーサンに会ったとき、ベイリーは自分に与えられた使命に気づきます。
猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォ-)(29.9.14)  
監督  マット・リーヴス  
出演  アンディ・サーキス  ウディ・ハレルソン  スティーヴ・ザーン  カリン・コノヴァル  アミア・ミラー  テリー・ノタリー  タイ・オルソン  マイケル・アダムスウェイト  トビー・ケベル  ジュディ・グリア  ガビリエル・チャバリア 
 「猿の惑星」をリブ一トした「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」、「猿の惑星:新世紀(ライジング)」に続くシリーズ第3弾です。
 猿と人間との戦いが始まってから2年、ある日、シーザーたちの砦が人間の奇襲を受け、妻と息子が殺されてしまう。シーザーは人間のリーダーである大佐に復讐すべく、仲間たちを新しい隠れ場所に向かわせ、自分は3匹の仲間を連れて大佐のいる基地へと向かう。途中で出会った口のきけない人間の少女・ノヴァと動物園のチンパンジー、バッド・エイブも加わり、シーザー一行はようやく大佐の基地にたどり着く・・・。
 このシリーズは、猿側から描かれているので、人間は完璧に悪役です。ただ、悪の権化のような大佐にあのラストシーンを与えたのは、監督の人間に対するお情けでしょうか。
 口をきくことができない少女の名前、ノヴァというのは、「猿の惑星」に登場したやはり口をきくことのできない人間の女性、ノヴァヘのオマージュでしょう。
 ラストシーンからすると、一応このシリーズも終了という感じですが、果たして新たなストーリーが展開していくのか。気になります。
 今回もシーザーはアンディ・サーキスがモーション・キャプチャーで演じていますが、それをCGであんな風に見せるとは、オリジナルの「猿の惑星」からは格段の進歩ですね。オリジナルは当時、猿のメイクが凄いと評判でしたが。 
ブレードランナー 2049(29.10.28) 
監督  ドゥニ・ヴィルヌーヴ 
出演  ライアン・ゴズリング  ハリソン・フォード  アナ・デ・アルマス  シルヴィア・フークス  ロビン・ライト  マッケンジー・デイヴィス  カーラ・ジュリ  レニー・ジェームズ  デイヴ・バウティスタ  ジャレッド・レト 
 35年ぶりの続編です。前作の監督のリドリー・スコットは製作に回り、監督は「メッセージ」のドゥニ・ヴィルヌーヴが務めます。舞台は前作から30年後。前作を観た時は、リドリー・スコットが作り上げた舞台となる2019年の世界の様子(日本テイスト溢れるロサンゼルスの夜景と、しとしとと降り続く雨)に圧倒されたのですが、なぜか今回は砂漠と雪。今作はその点では前作を凌ぐインパクトはありません。改めてリドリー・スコットの凄さを認識させられました。
 今回、ブレードランナーとして登場するのはライアン・ゴズリング演じる“K”と呼ばれる男ですが、彼は最初からレプリカントだということが明らかにされています。彼がデッカードとレイチェルとの間に生まれた子どもを探していくのがこの作品のストーリーの中心となります。Kがレプリカントだとすると、前作ではっきりとしなかったデッカードもレプリカントなのかと思うのですが、そこははっきりしません(それとも見逃したのか。)。
 前作でレプリカントを追うガフが今では引退して施設で過ごす老人として登場し、折り紙を見せてくれるのは前作ファンとして嬉しいところです。レイチェルは既に亡くなっている設定ですが、前作の映像で登場するのもファンサービスですね。 
IT(29.11.5) 
監督  アンディ・ムスキエティ 
出演  ジェイデン・リーバハー  ビル・スカルスガルド  フィン・ウォルフハード  ジャック・ディラン・グレイザー  ソフィア・リリス  ジェレミー・レイ・テイラー  ワイアット・オレフ  チョーズン・ジェイコブズ  ニコラス・ハミルトン 
 スティーブン・キング原作の同名小説の映画化です。
 ある田舎町で子どもたらが消える事件が連続して起こる。ビルの弟も雨の日に遊びに出かけたまま行方不明になってしまう。弟の失踪で自分を責めるビルの前に“それ”は現れるようになり、ビルは恐怖に取り憑かれてしまう。しかし、“それ”に遭遇していたのは、ビルだけでなく、不良の虐めの標的にされている様々なコンプレックスを抱える少年たちもそうだった。彼らは勇気を振り絞って“それ”に立ち向かおうとする・・・。、
 ビル・スカルスガルドの演じるピエロが怖いですねえ。暗い水路の奥に真っ白な顔が突然出てきたら、子どもでなくても悲鳴を上げてしまいます。ピエロといえば笑いなのに、それを恐怖の対象にするのはさすがキングという感じです。冒頭、子どもの片腕がもぎ取られてしまうなんて、あまりにグロすぎて、そこはやっぱり15禁のホラーかなあと思うのですが、弱々しかった少年たちが怪物にも立ち向かっていくようになるところはちょっと爽やかで、少年たちの成長物語でもあります。
 原作では、成長したビルたちが街に戻ってきて、再び“それ”と戦うまでが描かれているようですが、そうなると、この作品は前編で、続編があるということでしょうか。 
マイティ・ソー バトルロイヤル(29.11.6) 
監督  タイカ・ワイティティ 
出演  クリス・ヘムズワース  マーク・ラファロ  トム・ヒドルストン  ケイト・ブランシェット  イドルス・エルバ  ジェフ・ゴールドブラム  テッサ・トンプソン  カール・アーバン  アンソニー・ホプキンス 
(ネタバレあり)
 雷神ソーの活躍を描くシリーズ第3弾です。
 ロキによってアスガルドを追放された父を探しにニューヨークにやってきたソーだったが、突然現れたヘラによって宇宙の果ての惑星に飛ばされてしまう。ヘラはかつて自分を封印したそーの父を恨みアスガルドの崩壊を企んでいたのだった。その星で盟友ハルクと再会したソーは、2人のほか、義弟のロキ、更に女戦士のヴァルキリーの4人でヘラに戦いを挑むが・・・。
 アカデミー賞女優のケイト・ブランシェットが演じるヘラが強いのなんのって。ソーといえば、無敵のハンマー“ムジョルニア”ですが、そのムジョルニアがヘラにはまったく歯が立たず破壊されてしまいます。それもあってか今回、ソーは長い髪を短くし、イメージチェンジを図ります。髪が短くなっただけで、神話のイメージがなくなくなった感があります。
 邪悪な悪役だったはずのロキも今回は三枚目ぽい部分もあって、キャラの印象が変わりました。アイアンマンに登場したときとは全然違います。
 日本人にとって残念なのは、シリーズ第1作、第2作にソーの忠臣・ホーガン役で出演していた浅野忠信さんがこの作品で、あっという間に退場となってしまったこと。残念ですねえ。 
ザ・サークル(29.11.10)
監督  ジェームズ・ポンソルト 
出演  エマ・ワトソン  トム・ハンクス  ジョン・ボイエガ  カレン・ギラン  エラー・コルトレーン  パットン・オズワルド  グレン・ヘドリー  ビル・パクストン 
 派遣社員のメイは世界的なSNS企業“サークル”で働く友人の紹介で入社試験を受け、合格して“サークル”に入社する。ある事件がきっかけで経営者のベイリーの目に止まったメイは、新たなサービス“シーチェンジ”のモデルケースに抜擢される。超小型カメラにより、24時間の私生活をネット上に公開することになったメイは、アイドル的な人気を得るが・・・。
 SNSが盛んな現代社会に警鐘を鴫らすようなストーリーです。そこら中に監視カメラが設置され、SNSには個人の情報が蓄積され、誰がどこにいるのかも瞬時でわかってしまうという仕組みが作られていきます。挙げ句の果ては、選挙もそのSNSに加入している個人情報を元に行われるなんて、これはもうその個人の情報を握ったSNS企業が個人の生殺与奪権を握っているとしか考えられません。あまりに傲慢なSNS企業の言い分に反論もできない恐ろしい世界になるのだけは御免被りたいと思う人は少なくないでしょう。
 物語は、ベイリーの目指すものに不信感を抱いたメイらによって、ベイリーの野望は砕かれることになるのですが、SNSが急速に展開されている現在、こうしたことが絵空事だとは思えません。どこかのSNS企業がすでに秘密裏に行っているのでは‥・。 
氷菓(29.11.11)  
監督  安理麻里 
出演  山崎賢人  広瀬アリス  小島藤子  岡山天音  本多奏多  斉藤由貴 
 米澤穂信さん原作の同名小説の映画化です。現在第6弾まで続く古典部シリーズの第1作目になります。「やらないでいいことはやらない。やらなければいけないことは手短に」をモットーにする省エネ高校生折木奉太郎が日常の謎を解くミステリー作品です。
 神山高校に入学した奉太郎は頭が上がらない姉からの命令で廃部寸前の古典部に入部する。自分1人だと思っていた古典部には地元の名家の娘、千反田えるが入部していた。「私、気になります。」と言いだしたら止まらないえるに、奉太郎の友人である福部里志、更には伊原摩耶花を加え、4人の古典部がスタートする・・・。
 描かれる謎は、千反田が古典部の部室に知らぬ間になぜ閉じ込められたのか、「神山高校50年の歩み」という本が毎週金曜日に違う女子生徒に借りられ、必ず当日返却されるのはなぜか、10年前、当時5歳だった千反田えるが失踪したままの叔父から何を聞かされたのか、33年前に神山高校に在籍した千反田の叔父の関谷純に何かあったのかの4つです。
 特に最後の謎がメインです。この本の表題であり、古典部の文集の題でもある「氷菓」が謎解きに大きく関わってきます。
 折木奉太郎を山崎賢人くん、千反田えるを広瀬アリスさんが演じます。広瀬アリスさん、綺麗ですが女子高校生の役は厳しい感じがします。もう少し線が細い女の子をイメージしていたのですが。ちょっと原作シリーズを辿っての続編は難しいかな。 
ジグソウ ソウ・レガシー(29.11.11) 
監督  スピリエッグ兄弟
出演  マット・バスモア  カラム・キース・レニー  クレ・ベネット  ハンナ・エミリー・アンダーソン  ローラ・ヴァンダーヴォート 
 7年ぶりとなるシリーズ第8弾です。
 鎖に繋がれ、目の部分をくりぬいたバケツをかぶせられた5人の男女。繋がられた鎖の先には回転するノコギリが・・・。一方、公園で顔が切断された死体が発見され、その無残な殺害方法から死んだはずのジグソウの手口が浮かび上がってくる。死体に埋め込まれていたUSBメモリには「ゲームは始まった。4人の罪人が犯した罪が償われるまで終わらない」というジグソウの声が残されていた。
 相変わらず、人を殺すための凝った装置が登場。その装置によりしだいに死に向かっていく人の恐怖が見せ所ですが、作り物だとわかっていながらも、切断された顔や殺害方法を見せられると、そのグロテスクさに目を背けたくなります。
 死んだはずのジョンも登場。ジョンは癌で死んだはずではなかったのか。もしかしたら双子の弟か。などと考えながら観ていましたが、ものの見事に騙されました。ミステリにはよくあるパターンだったのに、見抜けなかったなあ。
 ラストからすると、まだまだこのシリーズは続きそうです。今回はストーリーの構成がうまくて、まだ観ることができましたが、ただ人の殺し方だけを誇示するだけの映画になるのは勘弁願いたいですね。 
ジャスティス・リーグ(29.12.1)
監督  ザック・スナイダー 
出演  ベン・アフレック  ヘンリー・カビル  エイミー・アダムス  ガル・ガドット  エズラ・ミラー  ジェイソン・モモア  レイ・フィッシャー  ジェレミー・アイアンズ  ダイアン・レイン  コニー・ニールセン  J・K・シモンズ 
(ネタバレあり)
 迫り来る強大な敵に立ち向かうため、バットマンは新たな仲間を探して歩く。一度は断りながら、地球の危機のためヒーローたちはバットマンのもとへと集まってくる。更にバットマンは亡くなったスーパーマンを蘇らせようとするが・・・。
 海の向こうではヒーローたちが一致団結して悪に立ち向かう話が盛んです。今回はDCコミックのヒーローたちが団結して戦います。登場するのはバットマン、ワンダーウーマン、アクアマン、サイボーグ、フラッシュ、そして忘れてはいけないのが、前作で死んだスーパーマンです。DCコミックといえば、やはり、スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマンといったところで、アクアマンらちょっと印象が薄いのは仕方ありません。
 今年公開された「ワンダーウーマン」は、ヒーローものの中でも屈指のできだったと思いますが、この作品でもワンダーウーマンは強い印象を残します。ガル・ガドットのちょっとした表情が何とも言えません。綺麗ですよね。
 バットマンといえば孤高のイメージが強かったのですが、それが率先して仲間捜しをするとは、ちょっとイメージが狂います。テレビCMでも流されましたが、フラッシュに「あなたの能力は何?」と聞かれたブルース・ウェインが「金持ちだ」と答えるシーンは笑えます。確かに、ブルース・ウェインは普通の人間で、莫大な財力の元に様々な科学の力を使っているだけですものね。他のスーパー・ヒーローたちと違って、少なくともバットマン・スーツを着ないとどうにもなりません。
 マーベル・コミックに対抗してDCコミックもシリーズを続けるようですが、ただ大勢のヒーローが登場するだけでは飽きがきてしまいます。どう発展させていくのでしょうか。 
探偵はBARにいる3(29.12.2)  
監督  吉田照幸 
出演  大泉洋  松田龍平  北川景子  前田敦子  鈴木砂羽  リリー・フランキー  田口トモロヲ  志尊淳  マギー  安藤玉恵
篠井英介  正名僕蔵  松重豊  野間口徹  片桐竜次  斉藤歩  
 大泉洋さんが札幌のススキノで探偵業を営む“俺”を演じる、ススキノ探偵シリーズ第3弾です。今回、“俺”は高田の後輩から行方不明になった彼女を探して欲しいとの依頼を受け、彼女が働いていたモデル事務所に探りを入れるが・・・。
 相変わらずとぼけた味の大泉洋さん演じる“俺”と無口だが戦うと強い松田龍平さん演じる高田のコンビが絶妙です。ただ、今回は前2作とは異なった部分もみられます。まずは、あの無敵の高田がかなわない相手が登場すること。志尊淳さん演じる波留にあっけなくやられてしまいます。もちろん、リターンマッチがあり、そこでは、思わぬ技(?)を駆使して高田が勝つのですが(ちょっと笑えます。)。そして、もう一つは、“俺”がヒロインの女性と男女の仲になってしまうこと。今までも、小雪さんや尾野真千子さんが演じたヒロインに心惹かれながらも、男女の関係を匂わすシーンはなかったのですが、今回はモデル事務所の社長を演じる北川景子さん演じるマリと一夜を過ごすシーンがあります。大泉さん嬉しかったでしょうねえ。北海道の海の上でパンツ1枚になった甲斐がありました。
 ラストは、これまた相変わらずジーンとさせるシーンです。北川さんが泣かせます。
 高田がニュージーランドの酪農を学びに行くことになり、いよいよシリーズも打ち切りかと思いましたが・・・。最後まで席を立たずに観る必要があります。 
オリエント急行殺人事件(29.12.9)
監督  ケネス・ブラナー 
出演  ケネス・ブラナー  ジョニー・デップ  ペネロペ・クルス  ウィレム・デフォー  ジュディ・ディンチ  ジョシュ・ギャッド  デレク・ジャコビ  トム・ベイトマン  レスリー・オドム・ジュニア  ミシェル・ファイファー  デイジー・リドリー  オリヴィア・コールマン 
 アガサ・クリスティ原作の名探偵ポワロが活躍する同名小説の映画化です。
 トルコ発フランス行きのオリエント急行の寝台車で富豪ラチェットが殺害される。寝台車に乗っていたのは、公爵夫人、未亡人、医師、宣教師、教授、家庭教師らの乗客と車掌。たまたま列車に乗り合わせていた名探偵ポワロが事件の謎に挑みます。
 原作は中学生の頃に読んでいるので、犯人は知っています。ただ、映画では原作とは異なるひねりがあるのかと少しは期待したのですが、それはなし。ストーリーは原作どおりでした。というわけで、原作を読んだことのある人にとっては、豪華な俳優陣を楽しむだけの映画です。ジョニー・デップが被害者ラチェットを演じるだけでも凄いのですが、そのほか、ミシェル・ファイファー、ウィレム・デフォー、ジュディ・ディンチ、ペネロペ・クロスといった1人で主役を演じる役者が揃っています。若手では、「スター・ウオーズ」のデイジー・リドリーが出演しています。
 ラストからすると、続編は舞台がエジプトのようです。「ナイル殺人事件」かな。
 冒頭、最近話題となっているエルサレムの嘆きの壁が出てきます。タイミング良すぎです。 
スター・ウォーズ 最後のジェダイ(29.12.16) 
監督  ライアン・ジョンソン 
出演  デイジー・リドリー  マーク・ハミル  キャリー・フィッシャー  アダム・ドライバー  ジョン・ボイエガ  オスカー・アイザック  ベネチオ・デル・トロ  ローラ・ダーン  アンディ・サーキス  ルピタ・ニョンゴ  ドーナル・グリーソン  アンソニー・ダニエルズ  グウェドリン・クリスティ  ケリー・マリー・トラン 
(ちょっとネタバレ)
 シリーズ全9作の8話目に当たる作品です。前作「フォースの覚醒」では、ルークを探してある惑星の孤島に来たレイがルークにライトセーバーを渡そうとするところで終わりましたが、果たしてルークはライトセ-バーを受け取るのかというドキドキのシーンから始まります。なぜ、ジェダイであるルークは戦いに加わらず、独り隠れ住んでいるのか。弟子であったカイロ・レンとの間の出来事が語られ、その謎が明らかになっていきます。
 「フォースの覚醒」では、ハリソン・フォード演じるハン・ソロの登場にシリーズファンとしては拍手喝采でしたが(あんな形で退場するのは残念でした。)、今作の目玉はルークの登場です。演じるマーク・ハミルは、「スター・ウォーズ」シリーズ後、ほとんど映画で顔を見ませんでしたが、さすがに老けましたねえ。40年以上過ぎているのですから無理ありませんけど。ラストのアクションシーンはCGか、アクション俳優の代役でしょうね。
 公開前の予告編から、レイがカイロ・レンによって暗黒面に引き込まれるのではないかということが取りざたされていましたが、そこは観てのお楽しみ。前作では小者感の強かったカイロ・レンが、ちょっとは存在感が増してきたかなという感じです。
 シリーズファンにとってョーダの登場は嬉しい限りです。それにしても、同じジェダイでありながら、ヨーダに比べてルークは精神的に線が細すぎます。
 この映画も中国資本の影響でしょうか。中国系の俳優さんが登場してフィンとともに活躍しますが、う~ん、フィンヘの恋愛感情は必要あったのかなあ。
 撮影後、レイア姫を演じていたキャリー・フィッシャーが亡くなりました。ラストとなる第9作ではレイア姫の存在はどうするのでしょう。