今年読んだ本は「リボルバー・リリー」から昨日読み終えた「か「」く「」し「」ご「」と」まで、全部で144冊です。昨年が177冊でしたから、33冊の減となりました。今年は仕事が忙しく、心の余裕が昨年よりなかったせいか、昨年に比較して大幅な減少です。ベスト10の上位の月村了衛さんの「機龍警察 狼眼殺手」や有栖川有栖さんの「狩人の悪夢」、佐藤正午さんの「月の満ち欠け」、そして海外編でいえばR・D・ウィングフィールドの「フロスト始末」が積ん読状態のままです。
その中で、あえてベスト10を選ぶとすると、第1位は辻村深月さんの「かがみの孤城」です。引き籠もり、不登校の少年・少女が主人公のファンタジー作品かと思って読み始めましたが、大人の読者にも十分堪えうる作品です。ストーリーにある仕掛けが施されており、ラストは感動です。辻村作品の中で、個人的にbPを争う作品であり、今年の中でダントツに面白かった作品でした。
大好きな伊坂作品は今年は「AX」と「ホワイトラビット」の2作品。「AX」は、「グラスホッパー」「マリアビートル」に続く殺し屋シリーズ第3弾です。この作品では、“兜”という殺し屋が主人公ですが、妻も子もいる恐妻家の殺し屋という設定が笑えます。ラストがジーンとくる家族愛の作品に仕上がっています。一方「ホワイトラビット」は、あの泥棒の黒澤が久しぶりに登場する作品です。そのうえ、「ポテチ」の中村親分と今村も登場するのですから伊坂ファンとしてはそれだけで嬉しい作品です。ストーリーは、仙台市の住宅街で起こった人質立て籠もり事件を描きますが、様々に張られた伏線を最後に次々と回収するのはいつもどおり。騙されまいと思って気をつけて読み進めたのですが、ものの見事に騙されました。
「屍人荘の殺人」は、「週刊文春」「本格ミステリ」「このミス」の国内部門3冠に輝いた作品です。クローズド・サークルになる理由が孤島や嵐、雪ではないところにびっくりです。探偵役がすぐ退場となってしまうのにも驚かされます。
「この世の春」は、宮部みゆきさんの時代ミステリーです(というよりホラーといった方が相応しいかもしれません。)。ある大名家で起こる怪異を描いていきますが、さすが宮部さん、上下2巻、800ページという大部ですが、飽きさせません。
「R帝国」は、近未来の架空の島国「R帝国」を舞台にしていますが、随所に現在の日本で起こっていることが出てきます。作者の中村さんが日本の状況を憂えて書かれたことが想像できる作品です。
「ブルーローズは眠らない」は、「ジェリーフィッシュは凍らない」に続く、パラレルワールドの警察官、まりあと九条漣の活躍を描くシリーズ第2弾です。「ジェリーフィッシュ〜」は本格ファンからかなりの高評価を受けましたが、こちらも密室殺人事件を扱った本格ものです。個人的には、こちらの方が読みやすくて好きです。
「パーマネント神喜劇」は、このベスト10の中で唯一笑いの部分が多い作品です。サラリーマンと同じようにノルマを課された縁結びの神様が愚痴をこぼしながら悪戦苦闘する様子が描かれていきます。息抜きには最適です。
「カンパニー」は、リストラでバレエ団に出向させられたサラリーマンが、まったく畑違いの場所でも頑張っていく様子を描きます。僕らサラリーマンに元気を与えてくれる1作です。
「盤上の向日葵」は、松本清張の「砂の器」へのオマージュ作品です。山中で発見された白骨死体とともに埋められていた名人駒師により作られた将棋の駒。物語は、将棋の駒の持ち主を探すふたりの刑事の捜査とともにひとりの男の半生が語られて行きます。さすがに「砂の器」を凌ぐとまでは言えませんが、ドラマ化にぴったりな重厚な作品です。
「13・67」は、初めて読んだ香港の作家の作品です。冒頭、病気で意識のない元名刑事が事件の謎を解くという設定に驚きますが、ストーリーが時を遡っていきながら香港社会を描いていくという手法が新鮮です。ラストの話が冒頭の話に繋がるという構成も見事です。
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