▲2016映画鑑賞の部屋

ブリッジ・オブ・スパイ(28.1.10) 
監督  スティーヴン・スピルバーグ 
出演  トム・ハンクス  マーク・ライアンス  スコット・シェパード  エイミー・ライアン  オースティン・ストウェル
     アラン・アルダ  セバスチャン・コッホ  ミハイル・ゴアヴォイ  ウィル・ロジャース   
 スピルバーグとトム・ハンクスがコンビを組んだ第4弾です。実話に基づく物語だそうです。
 舞台は米ソ冷戦時代の1957年。画家のルドルフ・アベルがソ連のスパイとして逮捕される。政府はスパイであってもアメリカは適正に取り扱う姿を見せるため、ニュルンベルグ裁判で検事を務めたこともある弁護士のジェームズ・ドノヴァンにアベルの弁護を依頼する。現在は保険業務が主体のドノヴァンは世間の反発が家族に向けられる恐れもあると当初は固辞するが、結局は誰でも等しく公正な裁判を受ける権利があるとして弁護士に就任する。ドノヴァンの弁護活動により、アベルは死刑を免れ、30年の禁固刑となるが、連邦最高裁に上告しようとするドノヴァンに冷たい視線が向けられたり、死刑を望む者からは銃弾を家に撃ち込まれたりする。
 それから5年後、ソ連上空でスパイ活動をしていたU-2機が撃墜され、パイロットがソ連に逮捕される。更には留学生が東ドイツ政府によって逮捕される。アメリカ政府はアベルとバイロットとの交換の交渉役をドノヴァンに密かに依頼するが、ドノヴァンはパイロットだけでなく留学生を含めた1対2の交換を画策する。
 それにしても、国というのは非情です。最初は世界にいい顔見せようとアベルの弁護をドノヴァンにさせたのに、アベルが死刑ではなく禁固刑を勝ち取ったら、余計なことをしたという態度ですから、正義に則って頑張ったドノヴァンとしてはたまったものではありません。そんな扱いを受けたというのに、単身ベルリンに乗り込んでいくなんて、このドノヴァンという人物、たいした男です。当時は米ソ冷戦の時代ですから、無事に東ドイツから帰ってこられる保証もなかったのですから。普通、引き受けますかねえ。でも、CIA長官の直接の依頼ですから、断ればただではすまないでしょうけど。
 ドノヴァンは、この後ケネディ大統領の依頼でキューバ危機の際、キューバに捕らえられた捕虜1000人をカストロと交渉して解放させたそうです。とにかく凄い人ですね。
 ラストの交換シーンは実話ですから迫力があります。交換は成功するとわかっていながらも、その緊迫感に観ていて手に汗握るという感じでした。 
クリード チャンプを継ぐ男(28.1.16) 
監督  ライアン・クーグラー 
出演  マイケル・B・ジョーダン  シルベスター・スタローン  テッサ・トンプソン  フィリシア・ラシャド  アンソニー・ベリュー  
 観に行く予定はなかったのですが、先日発表されたアカデミー賞の助演男優賞にシルベスター・スタローンがノミネートされたと聞いて、ではちょっと観ておこうかと出掛けてきました。
 アドニス・ジョンソンは母親の死後施設に入っていたが、アドニスがアポロの息子だと知ったアポロの未亡人は彼を家に引き取り育てる。アドニスは成長して大手企業に勤めるエリートサラリーマンとなるが、父親の戦う姿を撮った映像を見て、自分もボクサーになることを決心し、仕事を辞めてフィラデルフィアにやってくる・。そこでアドニスは今では酒場の主人となっているロッキーにコーチを依頼
する。プロでわずか1戦しか経験のないアドニスだったが、アポロの息子という事実が新聞に載り、対戦相手のアゴを試合前の記者会見の際に砕いてしまい、新たな対戦相手を探していたチャンピオン、リッキー・コンランの対戦相手として指名される・・・。
 観る前にはロッキーシリーズは2007年に公開された「ロッキー・ザ・ファイナル」で終わりだと思ったのに、シルベスター・スタローンは、また新作を作ったのかと思ったのですが違いました。もちろん、シルベスター・スタローン演じるロッキーは登場しますが、主人公はアドニス・ジョンソンです。ロッキーの好敵手で「ロッキー4」で亡くなったアポロと愛人との間に生まれた子どもです。題名の「クリード」はアポロの姓です。この映画ぱロッキー”の映画ではなくアドニス・ジョンソンころ“クリード”を描く映画です。
 「ロッキー」といえば、あのトランペットから始まる“ロッキーのテーマ”が思い起こされます。この作品でも主役はロッキーではありませんが、控えめに“ロッキーのテーマ”が流れます。ロッキーファンには胸にジ~ンときますね。
 フィラデルフィア美術館の階段をロッキーが駆け上がって両手を挙げるシーンは有名ですが(今ではその像まであるようです。)、さすがにロッキーもお年寄りです。病気でもあるし、駆け上がるのはさすがに無理ですが、階段は上ります。
 試合の結果は、ネタバレになるので伏せますが、やはり「ロッキーシリーズ」の流れをくむ映画です。さて、この「クリード」が「ロッキー」のようなシリーズになるでしょうか。 
オデッセイ(28.1.26) 
監督  リドリー・スコット 
出演  マット・デイモン  ジェシカ・チャステイン  ジェフ・ダニエルズ  マイケル・ペーニャ  ショーン・ビーン  キウェテル・イジョフォー
     ケイト・マーラ  クリステン・ウィグ  セバスチャン・スタン  アクセル・ヘニー  ドナルド・グローバー  マッケンジー・デイビス   
 火星探査中に砂嵐に追って死亡したと思われたワトニーは、奇跡的に助かったものの、ひとり火星に取り残される。食糧も31日分しかない中で、ワトニーは次に探査船が来る4年後まで生き残ろうと知恵を絞る。ワトニーが生きていることを知ったNASAは、ワトニーを牧出しようとするが・・・。
 ワトニーは食糧を確保するために食糧のジャガイモを自分たちの排泄物を肥料にして火星に植えて育てようとします。これはワトニーが植物学者だったことがミソ。説得力があります。普通はジャガイモを見てそこまで考えられません(僕自身は便所が汲み取り式だった
幼い頃、祖父が同じように人糞でジャガイモを育てていたことを見ていたので、知っていますけど!)。とにかく、普通であればひとり取り残されて体力以前に精神的に参ってしまうと思うのですが、ワトニーはポジティブ・シンキングの男です。でも、ひとりでサバイバルするのですから、知恵がなくてはダメですね。
 映画の中では中国が自分たちの技術が明らかになってもNASAに協力する場面が出てきますが、これってこの映画に中国資本が入っているのか、はたまた公開後の中国での興業面の成功を期待しているせいでしょうか。なんだかあまりに中国が“善”で、唐突な感じでこの映画の中で異質です。
 映画自体はベタなハッピーエンドの作品でしたが、上映時間2時間22分を飽きずに観ることができました。ワトニーの救助の場面では思わず力が入ってしまいました。先頃発表されたゴールデン・グローブ賞では作品賞とワトニーを演じたマット・デイモンが主演男優賞を獲得し、アカデミー賞でも作品賞など7部門にノミネー
トされています。ドラマ部門ではなく、ミュージカル・コメディー部門でのゴールデン・グローブ賞でしたが(コメディーなんてすかねえ?)、アカデミー作品賞は部門ごとに分かれていないので、強敵の中、作品賞は厳しいかな。 
残穢(28.1.30)
監督  中村義洋 
出演  竹内結子  橋本愛  滝藤賢一  坂口健太郎  佐々木蔵之介  山下容利枝  成田凌  上田耕一  不破万作  吉澤健 
  「私」は怪談雑誌に連載を持つ作家。そんな「私」に久保さんという女子大生から、今住んでいる部屋で畳をするような奇妙な音がするという手紙を受け収る。興味を持った「私」は久保さんと連絡を取り始め、出会って二人でその原因を探ると、同じマンションの別の部屋でも奇妙な出来事が起きていることを知る。
 小野不由美さんの同名ホラー小説の映画化です。映画の予告編以上の内容はほとんど忘れていたので、新鮮な気持ちで映画に臨んだのですが、登場人物の関係性がややこしくて頭の中で整理できず、時々「あれ?この人とあの人はどういう関係だったかな?」と思いながら観ることになってしまいました。鑑賞後購入したパンフレットには登場人物の関係図が掲載されているので、これは便利です。
 ホラーですが「わっ!」と驚くような恐怖はありません。音でビックリさせることもないし、振り向いたらそこに恐ろしいものがいるというパターンの恐怖もありません。どちらかといえば、じんわりと忍び寄る恐怖といえばいいでしょうか。ラストはちょっと怖いですよ。
 「私」の夫も作家という設定なので、これは原作者の小野不由美さんと綾辻行人さん夫婦をモデルにしているみたいです。佐々木蔵之介さんが演じた作家仲間の平岡芳明は平山夢明さんがモデルだそうです。
ブラック・スキャンダル(28.1.30) 
監督  スコット・クーパー 
出演  ジョニー・デップ  ジョエル・エドガートン  ベネディクト・カンバーバッチ  ロリー・コクレイン  ケビン・ベーコン  ダコタ・ジョンソン
     ジェシー・プレモンス  デイビット・ハーパー  ジュリアンヌ・ニコルソン  コリー・ストール  アダム・スコット  ジュノー・テンプル
     ピーター・サースガード 
 物語はビン・ラディンに次ぐFBIの重要指名手配犯と言われていたジェームズ・バルジャーと、その幼馴染であるFBI捜査官のジョン・コノリー、そしてバルジャーの兄であり、上院議員のビリー・バルジャーの関わりを描いていく実話です。
 バルジャーからの情報でFBIでのし上がっていくコノリーが、バルジャーの殺しを見逃すようになり、次第にバルジャーに頭を押さえられていくところが怖いです。
 演じるのはジョニー・デップ。もともと変わった役が多いジョニー・デップですが、今回はギャング役。その容貌はといえば、前頭部が禿げ上がっていて、かっこよさは微塵もありません。ジョニー・デップファンにとっては、びっくりです。情け容赦なく人を殺す表情もいつものコミカルなジョニー・デップとは違います。正直のところ、ジョニー・デップの容貌と怪演だけが目立つ映画です。このところ人気のカンバーバッチもあまり存在感が感じられません。
 幼馴染みだったバルジャーとコノリーがどうして立場を異にする中で結びついていったのか、単に持ちつ持たれつの関係だったからなのか、もう少し幼い時代のことを描いてもよかったのではと思えた作品でした。 
マギー(28.2.6) 
監督  ヘンリー・ホブソン 
出演  アーノルド・シュワルツェネッガー  アビゲイル・ブレスリン  ジュエリー・リチャードソン   
 舞台は感染するとゾンビ化する菌が蔓延したアメリカ。ある日、ウェイドの娘、マギーがゾンビ化した人間に噛まれてウィルスに感染してしまう。特効薬はなく、しだいにゾンビ化していくマギーをウェイドは家に連れて帰るが・・・。
 アーノルド・シュワルツェネッガー、アビゲイル・ブレスリン主演のゾンビ映画です。とはいえ、この映画、通常のゾンビ映画と違って、ゾンビからの襲撃を逃れて生きていくという話ではありません。主演がアーノルド・シュワルツェネッガーなので、シュワちゃんが端からゾンビを殺しまくる映画と想像してしまいますが、それも違います。もちろん、急に現れたゾンビを殺すシーンもありますが(ゾンビを殺すというのはおかしな表現ですが)、それ以外ではゾンビ化した知り合いの父娘を殺さなくてはならないという悲しいシーンだけです。
 果たして、ウェイドは娘をどうするのか。それがこの映画の見所となっています。娘を持つ父親としては自分自身をウェイドの身に置き換えて観てしまいました。ゾンビ化が進むと、人間の匂いを食糧として意識してしまうのですから、親子の愛情も何もあったものではありませんが、ウェイドが娘のゾンビ化を悩み、苦しむ姿を大声で叫ぶことなく、それをじっと心の中に留めておくところがグッときます。
 ラストは評価の分かれるところでしょうが、僕としてはもう一つの選択の方が、より親子愛を描くことができたのではないかと思うのですが。それにしても、アビゲイル・ブレスリンもすっかり少女から女性になりましたねえ。 
キャロル(28.2.12) 
監督  トッド・ヘインズ   
出演  ケイト・ブランシェット  ルーニー・マーラ  サラ・ポールソン  カイル・チャンドラー  ジェイク・レイシー 
 今月末に発表となるアカデミー賞において、主演女優賞にケイト・ブランシェットが、助演女優賞にルーニー・マーラがノミネートされている作品です。ストーリーは夫と離婚係争中の裕福な女性、ケイト・ブランシェット演じるキャロルとデパートのおもちゃ売り場で働くルーニー・マーラ演じるテレーズとの愛の行方を描いていきます。
 ネットの映画評論で「男性の映画ファンが「女性向けの映画」として見逃してしまうのは大きな損失だ」とあったので、では観てこようかと映画館に足を運んだのですが、場内はほとんどが女性客。男性はといえばカップルの片割れで、彼女に連れてこられたと思われる人ばかりでした。
 やっぱり、女性の映画なんでしょうね。ついつい観ていて意識が飛ぶときがあって、あっ!と思ったら「あれ!いつの間に二人で旅行を始めることになったの?」と思うところも・・・。作品賞にノミネートされなかったのは、男性陣が惹かれることがないせいでは。
 ケイト・ブランシェットは、僕としては日本でいうと“極道の妻”のような見た目の印象が強いのですが、ルーニー・マーラーはかわいいですね。「ドラゴン・タトゥーの女」のときのメイクには引いてしまったのですが、今回の50年代のファッションに身を包んだ姿と端整な顔立ちには惹かれます。特に口元はかわいいですよねえ。
 ラストは、ネタバレになるので、詳細は語りませんが、いわゆる“リドル・ストーリー”でしょうか。王女が愛する若者に指さして教えた扉は“女か虎か”というやつですね。キャロルの顔のアップから暗転したところで、このあとどうなるのかは観客にそれぞれ考えさせています。僕自身の考えはたぶん、少数派の結論の方です。
 ゴールデングローブ賞は女優賞にダブルノミネートされていながら両者とも受賞できませんでしたが、アカデミー賞は主演と助演に分かれているので、どちらかは受賞するのでは。個人的にはルーニー・マーラの受賞に期待です。 
シャーロック 忌まわしき花嫁(28.2.20) 
監督  ダグラス・マッキノン 
出演  ベネディクト・カンバーバッチ  マーティン・フリーマン  アマンダ・アビントン  ユーナ・スタッブス  ユーナ・スタッブス
     アンドリュー・スコット  マーク・ゲイティス  アマンダ・アビントン  ルイーズ・ブレーリー 
 本国イギリスで今年の正月にテレビ放映されたものを日本では映画館で上映です。
 う~ん・・・わざわざ映画館に足を運んでまでして観るほどのことはなかったかなあというのが正直な感想です。
 内容は本編90分に、出演者へのインタビュー15分とテレビシリーズと異なって舞台が原作同様にヴィクトリア朝時代となるので、それによるホームズの部屋の違いを脚本家が説明した「脚本家スティーブン・モフアットと巡るベーカー街221Bの旅」(5分)を加えて全編110分という構成です。このおまけは完全にDVD化したときの特典映像のためのものですね。
 物語は、公衆の目の前で自殺したはずの妻により、夫が銃殺されるという事件の謎をホームズが解くのですが、舞台が現代であるテレビシリーズと異なり、原作どおりのヴィクトリア朝時代となっています。ホームズが、かぶる帽子が小学生時代に読んだホームズ全集の中の挿絵にあったようで、懐かしいです。パイプをくゆらせるのも、やっぱりこれがホームズという感じです。
 ところが、なぜかその話がホームズの夢の中の出来事であるかのように、現代と過去を行ったり来たりするので、事件の謎解きはともかく、映画全体の構成にちょっと戸惑います。モリアティーも登場するので、シリーズファンにとっては嬉しい作品かも知れません。モリアティー役のアンドリュー・スコットは、今回も強い印象を残します。
 テレビシリーズがヒットし、ベネディクト・カンバーバッチもマーティン・フリーマンも映画出演が忙しくなったため、なかなかテレ
ビシリーズが製作されませんが、早くシリーズの再開を期待したいですね。 
ヘイトフル・エイト(28.2.27) 
監督  クエンティン・タランティーノ 
出演  サミュエル・L・ジャクソン  カート・ラッセル  ジェニファー・ジェイソン・リー  ウォルトン・ゴギンズ  ティム・ロス  デミアン・ビチル     マイケル・マドセン  ブルース・ダーン  ジェームズ・バークス  デイナ・グーリエ  リー・ホースリー  ジーン・ジョーンズ
     ゾーイ・ベル  キース・ジェファーソン  クレイグ・スターク  ベリンダ・オウィーノ  (ある有名俳優) 
(ちょっとネタバレあり)

 嵐を逃れて御者O.Bの駅馬車で“ミ二ーの紳士服飾店”にやってきた4人の男女。賞金稼ぎのジョン・ルースと彼が捕まえて連行途中の女、デイジー・ドメルグ、元北軍の軍人で黒人の賞金稼ぎのマーキス・ウォーレンとレッドロックの新しい保安官だというクリス・マニックス。店には山向こうの母親の家に出掛けたミニーに店番を頼まれたというメキシコ人のボブと3人の先客、母親の誕生日に家に帰る途中だというカウボーイのジョー・ゲージ、絞首刑執行人の英国人のオズワルド・モブレー、南北戦争で南軍の将軍だったサンディー・スミザーズがいた。この中にドメルグの仲間がいるのではないかとルースが疑う中で、やがて殺人事件が起きる。果たして犯人は・・・。
 嵐の山荘といえば本格ミステリファンにはお馴染みのクローズド・サークルでの連続殺人事件を名探偵が解くストーリーを期待したのですが、残念ながら本格ミステリではありません(パンフレットでは本格密室ミステリーと謳ってありましたが)。やっぱり、クエンティン・タランティーノの映画だなという派手な西部劇に仕上がっています。毒殺されて血反吐を吐くシーンのグロさは目を背けたくなるほど。血反吐を顔に浴びるドメルグ役のジェニファー・ジェイソン・リーも大変です。顔中血反吐だらけのドメルグに「エクソシスト2」のリーガンのテーマ曲が流れるところは、これまたタランティーノ監督らしいお遊びですね。そのほか、頭が吹き飛ばされるシーンも1度のみならず2度もあり、脳漿が飛び散るところはちょっと目を背けたくなります。男性器がそのまま映り、それに関する下ネタシーンもあり、眉を顰める人もいるかもしれません。いや、いるでしょうね、きっと。
 タランティーノ作品にはかかせないサミュエル・L・ジャクソンやティム・ロス、マイケル・マドセンらが出演し、芸達者な演技を見せます。ある俳優が重要な役どころで登場しますが、ネタバレにならないようパンフレットにも掲載されていません(これを書くところがもうネタバレかな)。
 舞台が南北戦争の終了間もない頃ということもあって、元北軍の軍人だったウォーレンと元南軍の将軍だったスミザーズとの確執やウォーレンが持つリンカーンの手紙のエピソードなど本筋とは離れた話が長々と語られることもあって、上映時間168分と、最近観た映画の中でも長尺ですが、これはこれでなかなか楽しむことができました。特にリンカーンの手紙のエピソードは、あの時代だからこそのエピソードですよね。
 僕自身は168分の長尺でも楽しみましたが、上述のエログロシーンもあり、かなり観る人を選ぶ映画かもしれません。 
マネー・ショート 華麗なる大逆転(28.3.4)
監督  アダム・マッケイ 
出演  クリスチャン・ベール  スティーブ・カレル  ライアン・ゴズリング  ブラッド・ピット マリサ・トメイ フィン・ウィットロック ジョン・マガロ 
 2008年に起こったリーマンショックは世界経済に大きな影響を及ぼしましたが、この作品は、リーマンショック前に将来の経済破綻を予想して行動した男たちを描いた作品です。
 リーマンショックの詳細は知らないし、そもそも経済には疎いので、前もってリーマンショックとは何かとか、サブプライムローンとは何か等々予習をして観に行ったのですが、字幕では細かい点まで説明できませんし、CDSやCDOなどの経済用語がやっぱり理解できませんでした。ライアン・ゴズリングが“案内役”を務めてカメラ目線で観客に説明したり、俳優だけではなく著名人を使って、経済用語の説明をさせたりしていますが、なかなか理解は難しかったです。
 それはともかく、出演者が凄い。クリスチャン・ベール、ライアン・ゴズリング、スティーブ・カレル、そしてブラッド・ピットが主要な役柄で出演しています。ただ、ブラッド・ピットは製作を兼ねていることもあって、一歩引いた感じの役どころです。
 クリスチャン・ベールは僕としてはバットマンや「マシニスト」のストイックな役どころの印象が強いのですが、今回も医者の資格を持った投資家という、やっぱり変わった役どころ。Tシャツにハーフパンツ、そして本人が言うところの“激安理容室スーパーカット系”の髪型というラフなスタイルで、かなり印象が違いました。
 コメディ俳優のスティーブ・カレラが笑顔を見せず吠えまくる男を演じるのも意外な役どころです。
 ラストで、こんな大恐慌になったのにも関わらず、金融界はまったく変わらず、昨年には形を変えた危険な金融商品が発売されたとのコメントが出てきます。公的資金を投入された銀行等、そして政府も結局何も変わっていないことへの批判的なメッセージが込められた映画です。
 ラスベガスのお店のシーンでなんと徳永英明さんのたぶん「最後の言い訳」だったと思うのですが、バックに流れているのにはびっくりしました。また、村上春樹さんの「1Q84」の1節も出てくるのは日本人としては嬉しいところです。 
家族はつらいよ(27.3.12) 
監督  山田洋次 
出演  橋爪功  吉行和子  西村雅彦  夏川結衣  中嶋朋子  林家正蔵  妻夫木聡  蒼井優  小林稔侍  風吹ジュン
     笑福亭鶴瓶  木場勝己  笹野高史  中村鷹之資  丸山歩夢   
 2013年に公開された「東京家族]では、小津安二郎監督の傑作「東京物語」をモチーフに、現代の東京に生きるある家族の姿を厳しくも温かな眼差しで見つめた感動ドラマでしたが、今度は同じ出演者によって喜劇が作られました。「男はつらいよ」ならぬ「家族はつらいよ]です。
 平田周造は仕事もリタイヤし、今では悠々自適の生活を送っている。そんな周造に、ある日妻の富子が「離婚届」を突きつけて別れて欲しいと宣言する。物語は妻からの熟年離婚の要求に戸惑う周造と、慌てる子どもたちのドタバタを描いていきます。
 久しぶりこ映画館で声を出して笑ってしまいました。やっぱり、山田洋次監督、笑わせどころがわかっています。
 周造は「俺は家族のために一所懸命働いてきたんだ」という典型的なワンマンな夫。服を脱いでも脱ぎっぱなしで、片付けるのは妻という、女性の観客なら「うちの夫もそう」と相槌を打つ人も多かったのでは。だいたい、そんな夫は妻の気持ちを考えていないので、突然熟年離婚を切り出されると、青天の霹靂と戸惑ってしまいます。この物語でもそんな男性の代表者である周造の気持ちが見事に描かれています。
 次男の結婚相手である間宮憲子が相手への気持ちは口で伝えなくてはダメだと周造に言いますが、見ているお父さん方にはグサッとくる言葉だったでしょうね。僕ら以上の年代からすれば、妻に感謝していてもなかなか口に出しては感謝の言葉を言えません。こんな歯の浮くようなことを言えるかと思う言葉も口に出せる若い年代の人が羨ましいです。
 観客の中には年配の夫婦がかなりいましたが、さて、この映画を見て皆さん、特に男性の人はどう思ったでしょうか。ただ、大笑いしているだけでは奥さんから熟年離婚を切り出されて周造のようにあたふたしますよ。 
僕だけがいない街(28.3.19) 
監督  平川雄一朗 
出演  藤原竜也  有村架純  石田ゆり子  及川光博  杉本哲太  安藤玉恵  林遣都  鈴木理央  中川翼 福士誠治 高橋努 
 三部けいさん原作の同名漫画の映画化です。
 主人公はビザ屋でアルバイトをしながら漫画家になることを目指している藤沼悟。彼は事件に遭遇するとその事件を解決するため時間が巻き戻ってしまう「リバイバル」という自分ではコントロールできない現象に何度も陥っていた。リバイバルによって怪我をした悟を看病するため上京してきた母は、公園で幼い少女の手を引く男の姿を見て、18年前に悟の同級生の雛月加代らが犠牲になった誘拐殺人事件を思い出し、事件を追い続けているかつての同僚、澤田に連絡を取る。その数日後、帰宅した悟は母が刺殺されているのを発見し、部屋の外に見た犯人らしき者を追いかけるが逃げられてしまう。このままでは自分が犯人に間違われてしまうと、警官から逃れる悟だったが、リバイバルが起こり、気づくと小学生の頃に戻っていた・・・。
 おもしろいと評判を聞いて、唯一購入しているマンガです。原作は今月で最終回を迎えたようですが(5月にコミックが発売されるまで結末は我慢です。)、結末が明らかになっていない段階で製作された映画がどんな結末となっているのか期待して観に行きました。原
作では5月発売の最終巻を含め、全8巻を2時間の上映時間に凝縮して描いているので、かなり端折った部分があり、原作ファンは物足りないと思ってしまうかもしれませんし、また、原作を読んでいない人にとってはわかりにくい部分もあるかもしれません。
 ストーリーはともかく、子役たちの演技が素晴らしいです。悟の小学生時代を演じた中川翼くんはもちろんですが、それ以上にNHKの朝の連続ドラマで波留さん演じる主人公の子ども時代を演じて評判になった鈴木理央さんがうまいのなんのって。「バカじゃないの?」と言うときの表情なんて大人顔負けです。この映画が評価が上がる何パーセントかは子役たちの演技力によるところが大といっても過言ではありません。
 ラストは、「え~」という驚きです。“僕だけがいない街”の意味って、こういうことだったのかあ~。マンガのラストも同じになるとしたら、ちょっと残念・・・。 
バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生(28.3.25) 
監督  ザック・スナイダー 
出演  ベン・アフレック  ヘンリー・カビル  エイミー・アダムス  ジェシー・アイゼンバーグ  ダイアン・レイン  ジェレミー・アイアンズ 
     ローレンス・フィッシュバーン  ホリー・ハンター  ガル・ガドット
 スーパーマンとクリプトン星人との戦いの余波で、多くの親しい人々を失ったバットマンことブルース・ウェインは、超人的な力を持つスーパーマンを憎むようになる。また、スーパーマンのあまりに巨大な力に、危惧を覚える人間たちが出てきて、スーパーマンに公聴会への出席を求めるが・・・。
 アメリカの二大コミックスといえば、マーベル・コミックスとDCコミックス。マーベル・コミックスでは、すでに「アベンジャーズ」などで、ヒーローたちが力を合わせて戦う(あるいは二手に分かれて戦う)設定で同じ作品に登場していますが、今回遅ればせながらDCコミックスでも二大ヒーローのバットマンとスーパーマンが共演します。共演にとどまらず両者が戦うというのですから、ファンにはたまらない作品です。普通考えれば、人間に過ぎないバットマンが超人的な力を持つスーパーマンにかなうわけがないと思うのですが、バットマンがどう戦うかは観てのお楽しみです。
 この二人以外にも“ワンダー・ウーマン”やバットマンの敵役であるレックス・ルーサーが登場しますので、それも楽しみです。「マン・オブ・スティール」の続編という形になっているので、そちらを先に観ておく必要があります。
 そもそもバットマンがスーパーマンを憎む理由が、もしスーパーマンの戦いの中で多くの人間が巻き込まれて死んだことにあるとしたら、あまりに短絡的で理解ができません。だって、スーパーマンが戦わなければ、もっと多くの人が命を落としたのでしょうから。それにバットマンだって、その戦いに巻き込まれて死ぬ人もいたでしょうに。ただ、字幕だとかなりセリフが端折られているので、バットマンの微妙な気持ちが観客に伝えきれなかったことが理解ができなかった原因かもしれませんね。
 ラストで、バットマンとワンダー・ウーマンが、仲間を集めると話していたように、次作は「アベンジャーズ」のようなDCコミックスのヒーローたちが共演する作品になるようです。
 スーパーマンは「マン・オブ・スティール」に引き続きヘンリー・カビルが演じますが、バットマンはクリスチャン・ベイルに代わってベン・アフレック。個人的には、クリスチャン・ベイルが好きなんですが。 
砂上の法廷(28・3・26) 
監督  コートニー・ハント 
出演  キアヌ・リーヴス  レニー・ゼルウィガー  ググ・バサ=ロー  ガブリエル・バッソ  ジム・ベルーシ 
 大物弁護士の父親を刺殺した容疑で息子が逮捕される。母親から弁護を依頼された弁護士のラムゼイは、黙秘を続ける息子に手を焼きながら、弁護を続けるが・・・。
 キアヌ・リーブス主演の“法廷もの”です。上映時間94分という最近の映画としては短い上映時間ですが、法廷とそこで証人の口から語られる事実を描くだけの凝縮したストーリー展開になっています。ただ、“法廷もの”といっても、陪審員を前にして検事と弁護士が丁々発止のやりとりを繰り広げるというものではありません。キアヌ・リーブス演じるラムゼイ弁護士が感動的な弁論で傍聴人の気持ちを無罪へと導いていくというわけでもありません。観客は証人の証言を聞き、そこで語られる事件前後の出来事の場面を観ながら、真実は何かをじっくり考えていく必要があります。
 予告で語られる“誰もが嘘を言っている”というところがミソです。真実を語るという宣誓をする証人だけでなく、登場する誰もがどこかで嘘を言っています。それに対し、嘘を見抜くのが得意というジャネルがラムゼイの補助につくところがストーリー展開上もなかなかうまい設定になっています。
 息子の希望する進学先を否定したり、母親を大勢の人の前で無能呼ばわりしたり、あげくに暴力を振るうという父親像が証人の証言で浮かび上がってくる中で、当然真実はきっとこうなんだろうなあと予想したのですが、見事に裏切られました。地味ですがオススメです。 
あやしい彼女(28.4.1) 
監督  水田伸生
出演  多部未華子  倍賞美津子  志賀廣太郎  要潤  小林聡美  金井克子  北村匠海  温水洋一  越野アンナ 三鴨絵里子 
 2014年に公開された韓国映画「怪しい彼女」のリメイクです。
 オリジナル作品は地元では公開されなかったので、わざわざ東京まで観に行って個人的には楽しんだのですが、日本では韓国での大ヒットほど、お客は呼べなかったようです。さて、リメイク作品はというと・・・。
 瀬山カツは戦災孤児で一人で娘を育て上げた73歳の頑固で口が悪く周囲から煙たがられる存在。同じ戦災孤児だった次郎が経営する公衆浴場でアルバイトをしながら娘と孫と暮らしている。ある日、娘と喧嘩をして家を飛び出したカツは、町中で見かけた写真館の店頭に飾ってあったオードリー・ヘップバーンの写真に魅せられて中に入り、写真を撮ってもらうこととする。シャッターが切られた後、そこには73歳の老婆ではなく、20歳の娘が立っていた・・・。
 リメイク版と異なる点、息子が娘に変わっただけで、ストーリーはほとんど同じです。この映画の見所は、外見は20歳の娘、心は73歳の老婆というギャップのおもしろさにあるのですが、果たしてカツを演じる多部未華子さんがそのあたりをどう演じるかと興味津々で観に行きました。いやぁ~笑わせてもらいました。20歳の外見で73歳の老婆の仕草に大いに笑いました。多部さんのコメディエンヌぶりが見事です。
 また、歌手としてデビューする役柄なので、歌声はどうかというところも大事でしたが、これも問題なし。「真っ赤な太陽」や「悲しくてやりきれない」、そして坂本九の「見上げてごらん夜の星を」という懐かしい昭和歌謡をこれまた見事に歌いこなしていました。この映画の主題歌「帰り道」もラストのコンサートシーンで歌いますが、かなり音程をとるのが難しそうな歌にもかかわらず熱唱でした。実際に歌う越野アンナにもそれほどひけをとらないのではと思ってしまうほどです。多部未華子さんを主役に据えたことでこの映画の
成功は7、8割は決まったといっていいでしょう。
 もう一度若い頃に戻れたらとは、僕らの年代になると誰もが思うことではないでしょうか。僕もあの写真館に行ってみたいです。 
ルーム(28.4.8) 
監督  レニー・アブラハムソン 
出演  ブリー・ラーソン  ジェイコブ・トレンブレイ  ジョーン・アレン  ウィリアム・H・メイシー  ショーン・ブリジャース  トム・マッカムス 
 主演のブリー・ラーソンが今年のアカデミー賞主演女優賞を獲得した作品です。
 17歳の時に誘拐され、7年の間納屋に閉じ込められているジョイ。その間、誘拐犯の男との間に息子・ジャックも生まれるが、彼がが5歳になったとき、ジョイは息子のために脱出を決意する・・・。
 映画を観るまでは、ジョイと息子のジャックが閉じ込められていた納屋から脱出するまでを描く作品かと思っていましたが、脱出までを描くのは最初の1時間だけ。後半は家に戻ってからの母子の生活が描かれます。実は、この後半の部分かメインだと思っても過言ではありません。
 家に戻れば父と母は7年の間に離婚をし、母は別の男と暮らしているという浦島太郎状態の中で、当然マスコミは彼女たちをほおっておかないし、母子にとっては厳しい社会復帰となります。
 自分の孫だが、同時に誘拐犯の子どもでもあるジャックを直視できないジョイの父親が周囲の者たちの気持ちを代表しているといってもいいでしょう。僕自身がその立場に置かれた場合にどうだろうと考えてしまったのですが、娘や孫に責任はまったくないにせよ、なかなか割り切って考えることは難しいです。心情的には父親の態度も理解できなくはないです。
 でも、それ以上に、生まれて以来外に世界があるなんて考えたこともなく、納屋の一部屋が世界のすべてだったジャックにとっては、外の生活に慣れていくのが大変だったでしょう。なにせ、それまではジャックにとっての世界は部屋の中だけ。彼にとっての空は天窓に切り取られた四角いもので、部屋の外にあんな青い空が広がっているとは思わなかったでしょうから。最初部屋に戻りたいと言った気持ちもわかります。
 ラストに自分たちが閉じ込められていた納屋を見に来て、「部屋が縮んだの?」と聞いたジャックの言葉に、彼が広い世界の生活に慣れてきたために発せられた言葉なのかなと、ジ~ンときてしまいました。
 母親と一緒に暮らすレオが母子に無理矢理関わろうとせずに静かに応対する様子がレオが強面ゆえに逆になかなかいい感じです。 
スポットライト 世紀のスクープ(28.4.15) 
監督  トム・マッカーシー 
出演  マーク・ラファロ  マイケル・キートン  レイチェル・マクアダムス  リーヴ・シュレイバー ジェイミー・シェリダン ジョン・スラッテリー
     ブライアン・ダーシー・ジェームズ  ビリー・クラダップ  スタンリー・トゥッチ  ニール・ハフ  ポール・ギルフォイル 
 キリスト教会の神父たちによる子どもたちへの性的虐待を糾弾したボストン・グローブ社の記者たちの姿を描いた実話に基づく作品です。今年のアカデミー賞作品賞、脚本賞をダブル受賞しています。
 父親が亡くなるまで、自分の家が仏教の何宗なのかも知らなかった僕にとっては、宗教というものの存在があまり理解できないのですが、キリスト教といえば、アメリカ社会の中では絶大な権力を持っていると言っても過言ではないでしょう。「大統領の陰謀]という映画もありましたが、その巨大な権力に立ち向かうことこそマスコミの真骨頂ですね。
 チームを束ねるリーダーのロビーを演じるのはマイケル・キートン。昨年の「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」で復活したと言われていますが、今回はものに動じない落ち着いたリーダーを演じます。チームの紅一点、サーシャを演じるのはレイチェル・マクアダムス。僕としてはコメディエンヌという印象が強かったのですが、今回は知的な雰囲気で、これがまたぴったり。ファンになってしまいそうです。
 それにしても、神父の6%が性的虐待をしているとは、これを明らかにしたボストン・グローブの記事はまさしくスクープです。一般の人にとっては、人々の心を癒やすものであるべき宗教が、人を苦しめるとは思いもしません。性的に厳格な立場を求められるゆえ、逆に自分で欲求を抑えきれないと、立場の弱い信者の、それも子どもに性のはけ目を求めることになったのでしょうが、許されることではありません。それを組織的に隠蔽し、加害者である神父を庇っているのですから、キリスト教とはいったい何だと問いかけたくなります。結局、最高責任者であった大司教は事件発覚後、責任を取らされることなく逆に昇進して異動したことを告げるテロップには呆れるばかりです。 
殺されたミンジュ(28.4.17) 
監督  キム・ギドク 
出演  マ・ドンソク  キム・ヨンミン  イ・イギョン  チョ・ドンイン  テオ  アン・ジヘ  チョ・ジェリョン  キム・ジュンギ 
 いやぁ~これは難しい映画でした。冒頭、女子高校生が男たちに追われ、捕らえられて殺される凄惨な場面から始まります。彼女がいったいなぜ殺されたのかの説明もありません。
 事件から1年がたった頃、犯人たちのひとりは軍服姿の男たちに拉致され、拷問された上で、1年前の事件のことを自白するよう迫られる。その後も何者かによって犯人たちが次々と拉致され、拷問を受け自白させられる。
 拉致する男たちが何者なのか。その姿は軍人であったり、情報機関の者であったり、ヤクザであったり等々、正体がわかりません。そのうえ、監督の演出のせいでしょうか、最初に拉致された犯人たちのひとりを演じたキム・ヨンミンがひとりで8役も演じているので、ややこしくて余計にストーリーがわかりにくくなっています。
 拉致犯たちのリーダーはともかく、他の者たちがなぜ犯人たちを拉致し、拷問を加えて自白をさせるのかの理由も詳細には語られません。また、女子高校生を殺した者たちが何者かであるのかもはっきりしません。肝心の女子高校生ミンジュがなぜ殺されたのかの真相も結局最後まで明らかにされませんし、観客からすれば消化不良です。
 女子高校生の名前の“ミンジュ”が実は“民主主義”を意味していたということも、見終わったあとでサイトのレビューを見て知りました。ミンジュを殺害した犯人たちが皆理由も知らずに殺害に荷担し、上からの指示のもとに、無批判にそれを黙ってやり遂げることが出世の道筋だと思っているところに、何か監督なりの哲学があるかと思ってはいたのですが、「民主主義が殺される」ということだったのでしょうか。 
レヴェナント 蘇えりし者(28.4.22) 
監督  アレハンドロ・G・イニャリトゥ 
出演  レオナルド・ディカプリオ  トム・ハーディ  ドーナル・グリーソン  ウィル・ポールター  フォレスト・グッドラック  デュアン・ハワード     ポール・アンダーソン  クリストッフェル・ヨーネル  ジョシュア・バージ  ルーカス・ハース  ブレンダン・フレッチャー 
  今年のアカデミー賞作品賞、監督賞を受賞した作品です。
 ヒュー・グラスはポーニー族の妻との間に生まれた息子のホークとともに毛皮ハンターたちのガイドをしている。そんな彼らに白人によって族長の娘をさらわれたアリカラ族が襲撃し、多くの死者を出す。残った者たちはグラスの案内でアリカラ族から逃れ、砦を目指すが、その途上、見張りに出たグラスはグリズリーに襲われ、瀕死の重傷を負ってしまう。隊長のヘンリーはグラスが死んだら埋葬するよう告げて、ホークとグラスを慕うブリジャー、更には金に釣られて居残ったフィッツジェラルドを残して先に出発する。なかなか死なないグラスにしびれを切らして自らの手でグラスを殺そうとしたフィッツジェラルドは、彼を止めようとしたホークを殺したうえに、まだ息のあるグラスを穴に埋めて逃げてしまう。息を吹き返したグラスは息子の敵をとるため、フィッツジェラルドの後を追うが・・・。
 グラスを演じたディカブリオがついに念願のアカデミー賞を受賞した作品です。今年こそと言われ続けてきましたが、ようやくですね。確かにこの映画、ディカプリオのための映画といっても過言ではありません。復讐のために生き残ろうとするディカプリオ演じるグラスの演技はアカデミー賞主演男優賞も納得の熱演です。
 グリズリーに襲われるだけでも大変なのに、瀕死の重傷を負ったグラスに次々と死の危険が及びます。アリカラ族に追われて寒さ厳しい中激流を流されるし、馬に乗ったまま崖から落下ですからねぇ。吹雪の中を生き抜くために、死んだ馬の内臓を取り出して、その中に潜り込んで暖をとるなんて、生きるためとはいえ、ちょっとできません。復讐のためにフィッツジェラルドを追い、彼と戦うシーンよりも、そこに至るまでの生き抜くためのグラスの闘いがこの映画の見どころといえます。
 監督はアレハンドロ・G・イニャリトウ。昨年の「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」に続く監督賞受賞です。

※毛皮ハンターを演じている役者の名前の中にルーカス・ハースの名前を見つけました。あの「刑事ジョン・ブック 目撃者」でアーミッシュの子どもを演じた役者さんです。名子役は大成しないものですが、こうして映画界で生きているのを見たのは嬉しいです。パンフレットによると、「インセプション」や「トランセンデス」にも出演していたようです。
アイアムアヒーロー(28.4.23) 
監督  佐藤信介 
出演  大泉洋  有村架純  長澤まさみ  吉沢悠  岡田義徳  片瀬那奈  片桐仁  アキタスポーツ  塚地武雄  徳井優 
(ちょっとネタバレ)
 英雄はライフルだけが趣味の売れない漫画家。他の漫画家のアシスタントをしながら出版社に原稿を持ち込んでいるが採用はされず、同棲している彼女とも破局寸前の日を送っていた。そんなある日、突然、ウィルスの感染によって人間がゾンビ化し他の人間を襲い始める。英雄は、ゾキュン(ZQN)と呼ばれるようになったゾンビから逃れる途中で一緒になった女子高校生の比呂美とともに、高地ならウィルスが感染しないというネット情報を信じて富士山へと向かう。
 ストーリーの中心は、自分に自信が持てないへタレな男がゾキュンを前に、しだいに“英雄”という名前らしく“ヒーロー”として行動していく姿を描いていきます。あとはよくあるグループの対立の中での主導権争いと、果たして誰が生き残っていくのかという、こういう映画にはよくあるストーリーが進んでいきます。         , ・
 ゾキュンの特徴が、生きていた頃に固執していたことや習慣を繰り返してしまうという愉快な設定になっています。満員電車に揺られて出勤していたサラリーマンのゾキュンは、存在しないつり革につかまっていたり、走り高跳びの選手だった大学生は、ひたすら走り高跳びをしていたりといった具合です。
 作品はR15指定だけあって、スプラッターシーン満載です。ラストのアウトレットの地下駐車場でのゾキュンの皆殺し(死んでいるのに皆殺しはおかしいかな)シーンはものすごい血しぶきです。血を見るのが弱い人は注意です。
 原作は花沢健吾さんのマンガで、まだ連載中ということですが、映画もアウトレットから脱出できたということだけで、今後どうなるのかまでは描かれていません。これ以降は観客の想像に任せるのか、それとも続編が製作されるのでしょうか。でも、英雄がへタレでは
なくなってしまったので、これ以降の続編は単なるヒーローものになってしまう恐れもありますね。 
フィフス・ウェイブ(28.4.23) 
監督  J・ブレイクソン 
出演  クロエ・グレース・モレッツ  ニック・ロビンソン  エヴァン・ウォーカー  リーヴ・シュレイバー  マリア・ベロ  ロン・リヴィングストン     マギー・シフ  マイカ・モンロー   
(ちょっとネタバレ)
 「ハンガーゲーム」や「メイズランナー」と同様ヤングアダルトもののシリーズ作品です(たぶん)。
 ある日突然、上空に謎の飛行物体が現れる。“アザーズ”と呼ばれた彼らはしばらくして地球への攻撃を始める。第1段階は、電磁パルスで地球上のあらゆる電子機器を停止させる。第2段階では地震・津波という天変地異を起こし、第3段階では毒性の強い鳥インフルエンザウィルスによる感染を蔓延させ、この段階で地球の99%の人類が死に絶える。キャシーは父母と弟と暮らす高校生の女の子。看護師である母をウィルス感染で亡くし、父と弟と避難所へとやってくるが、そこへ軍が現れ、人間の中に潜む異星人を見つけるために子どもたちを基地へと移し始める。アザーズの第4段階の攻撃は人間の中に人間と同じ姿で紛れ込むこと(生き残った人に寄生するのかどうかがはっきりしません)。弟と離れてしまったキャシーは、弟を探してひとり基地へと向かうが・・・。
 冒頭から派手に人類を滅亡に向かわせていたのに、第4段階では生き残った人類に対してひとりひとり殺していくとは・・・。最初は超大作SF映画だと思ったのに、いっきに茶の間のテレビドラマに変わったという感じです。いくら地球をそのまま手に入れたいからといっても、いちいち銃で殺し合うのでは時間がかかりすぎでしょう。
 すっかり話が小さくなってしまった後半の見どころは、登場人物の中の誰が異星人なのかです。誰が仲間で誰が敵かわからない恐怖は「遊星からの物体X」で描かれましたが、今回は「遊星からの物体X」のような恐怖感はありません。よくよく考えれば、絶対この人たち異星人でしょうとわかってしまいますし。怖さでは断然「遊星からの物体X」ですね。
 キャシーを演じるのは、クロエ・プレース・モレッツ。鼻が特徴的で決して美人ではありませんが、幼いときから主役を張っているので、演技力は確かです。「モールス」や「キックアス」から比べると女性らしくなってきました。
 正直のところ、期待が大きかったので、がっかり感も大きいです。続編がどういう展開になるのか、せめてそれを期待したいです。 
Mr.ホームズ 名探偵最後の事件(28.4.25) 
監督  ビル・コンドン 
出演  イアン・マッケラン  ローラ・リニー  マイロ・パーカー  真田広之  ハティ・モラハン  パトリック・ケネディ  ロジャー・アラム 
(ちょっとネタバレ)
 93歳になったシャーロック・ホームズを描く作品です。ホームズはある事件を最後に探偵を辞め、ベーカー街を引き払い、人里離れた田舎で家政婦のマンロー婦人の手を借りながら養蜂を趣味に暮らしていた。
 冒頭シーンは、ホームズが日本から帰ってきたというシーンですが、なぜ日本に行ったかというと、山椒を手に入れるため。わざわざそのために日本に行くのかと思いますし、そもそも日本のシーンは必要だったのかなと思います。戦後間もない日本という設定で町並みが出てきますが、煉瓦造りでどう見ても日本の町並みには見えないし、違和感があります。原爆の落ちた広島の焼け跡の中に山椒の芽が出ているというのも、何だかなあという感じです。
 観るまでは年老いたホームズがマンロー婦人の息子・ロジャーをワトソン役にして解決できなかった最後の事件の謎に挑んで行く話かと思ったのですが、これは結局、事件の結末にホームズとしては後悔があって、記憶の奥底に押し込んで忘れていたものを思い出すという話だったということでしょうか。事件の謎自体はホームズがそのときに見事に明らかにしていますものね。単に年老いて記憶力が衰えたホームズの物語と言ってしまえばそれまでですけど。
 鳥打ち帽もパイプもワトソンの創作ということで、今回、イアン・マッケランのホームズは従来のイメージとは違います。ワトソンもハドソン夫人も死に、年老いて田舎に引き龍もる孤独なホームズの姿が幼い頃ホームズ譚を夢中で読んだ僕にとってはちょっと悲しいです。 
無伴奏(28.5.2) 
監督  矢崎仁司 
出演  成海璃子  池松壮亮  斎藤工  遠藤新菜  松本若菜  酒井波湖  仁村紗和  斉藤とも子  藤田朋子  光石研 
 1969年、70年安保を前にして日本全国が学生運動の波に揺れていた時代。高校3年生の野間響子もまた制服廃止を叫んで制服闘争委員会の委員長として学生運動の中に身を置いていた。ある日、響子は同級生に連れられて入った名曲喫茶「無伴奏」で、大学生の渉と祐之介と祐之介の恋人・エマに出会う。やがて彼らと行動を共にするようになった響子は、渉に心惹かれるようになる・・・。
 映画を観るまでは学生運動が激しかった時代に運動に身を捧げた女子学生の挫折や成長を描いていく作品かなと思っていましたが、学生運動のことは最初だけ。高校時代に学生運動をしていた響子も、いわゆるノンポリの渉らに出会ってからは、学生運動からは距離をとるようになり、初めての恋にのめり込んでいきます。急に恋い焦がれる普通の女の子になってしまいました。小池真理子さんの同名小説の映画化ですが、ストーリーは原作も同じでしょうか。
 響子を演じた成海璃子さんのバストトップは見せないまでも、体当たりの渉とのセックスシーンの熱演はありますが、正直のところちょっと退屈です。また、恋人とのデートなのに、姉と腕を組む渉はまったく理解できませんし、渉と祐之介の某シーンは衝撃的で見たくはなかったなあという感じです。理解しろといっても僕には無理ですねぇ。いったい、この映画は何を描きたかったのか結局わかりませんでした。期待が大きかっただけ残念です。
 ただ、地元出身の監督だったので、作品の舞台となるのは仙台ですが、ロケを地元で行ったところがあるので、見たことがある場所が出てくるたびに「ああ、あそこかぁ」と、楽しむことはできました。 
シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(28.5.6) 
監督  アンソニー・ルッソ  ジョー・ルッソ 
出演  クリス・エヴァンス  ロバート・ダウニー・Jr  スカーレット・ヨハンソン  ジェレミー・レナー  ウィリアム・ハート  ポール・ベタニー
     ドン・チードル  セヴァスチャン・スタン  アンソニー・マッキー  チャドウィック・ボーズマン  エリザベス・オルセン  トム・ホランド
     ポール・ラッド  エミリー・ヴァンキャンプ  フランク・グリロ  ダニエル・ブリュール  マーティン・フリーマン  マリサ・トメイ 
 アベンジャーズの海外での活動で罪のない人が巻き添えになる事件が起きる。世界はアベンジャーズの活動を彼ら自身の意思ではなく、国際的な政府組織の管理下に置くこととするが、アベンジャーズは賛成派のアイアンマンと「自らの行動は自らが責任を持つべきだ」
と考える反対派のキャプテン・アメリカに分かれる。ウィーンでの調印式で会場が爆破され、ワカンダ国の国王らが多数死亡したが、犯人と目されたウインター・ソルジャーをキャプテン・アメリカが庇ったことから、両派の亀裂は深まり、二つに分かれての戦いが始まる・・・。
 「シビル・ウォー」とは内戦のこと。この作品ではアベンジャーズが二派に分かれての戦いが描かれていきます。
 題名に「キャプテン・アメリカ」とついているように、この作品は「キャプテン・アメリカ」シリーズの1作という位置づけのようです。僕自身、「キャプテン・アメリカ」シリーズはこれまで1作も観ていなかったので、「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」
で「キャプテン・アメリカ」シリーズに登場していたヒドラという組織が登場してもどういう組織か理解できなかったのですが、今回も物語の発端はヒドラが関わっています。
 マーベルコミックのヒーローたちが二手に分かれて戦うなんて、ファンとしてはたまらないでしょう。マイティー・ソーや超人ハルクは今回登場しませんが、それぞれが肋っ人として新たなヒーローを登場させます。キャプテン・アメリカ側がアントマン、アイアンマン側がなんとスバイダーマンです。また、父を殺されたことでウインター・ソルジャーに恨みを持つ王子のティ・チャラがブラック・パンサーとして登場します。
 パンフレットにはアントマンのことはわずかながら記載されていますが、スパイダーマンはまったく記載されていません。公開されてびっくりの情報ではなく、以前から登場するとされていたので秘密ではないだろうに、なぜでしょう?
 ちなみに、今回のスパイダーマンを演じるのはトム・ホランドで、アンドリュー・ガーフィールドが演じたちょっと暗めのスパイダーマンより雰囲気としてはトビー・マグワイアが演じたスパイダーマンに近いですね。
 DCコミックスでは先頃スーパーマンにバットマン更にはワンダーウーマンを共演させましたし、アメリカではこうしたヒーロー大集合の作品が好評のようですが、僕自身の好みとしては一人のヒーローをじっくり描いて欲しいです。 
64 ロクヨン前編(28.5.7) 
監督  瀬々敬久 
出演  佐藤浩市  綾野剛  榮倉奈々  夏川結衣  永瀬正敏  三浦友和  瑛太  吉岡秀隆  仲村トオル  奥田瑛二 滝藤賢一
     椎名桔平  窪田正孝  筒井道隆  鶴田真由  坂口健太郎  金井勇太  小澤征悦  赤井英和  烏丸せつ子  菅原大吉
     芳根京子  菅田俊 
 横山秀夫さんの同名小説の映画化です。今回公開された前編と6月公開の後編の2部作となっています。
 原作は「このミス」や週利文春の「ミステリーベスト10」で宮部みゆきさんの「ソロモンの偽証」を押さえて、国内編の第1位を獲得した作品です。横山さんのD県警シリーズの1作で、わずか7日間しかなかった昭和64年に起こった少女誘拐事件の時効が1年後に迫った平成14年、当時県警捜査一課で事件を捜査し、現在は県警広報官となっている三上を主人公に、組織の中で苦悩する三上を描きながら少女誘拐事件の真相に迫っていきます。
 公開を前に、同じD県警の警務部調査宮・二渡を主人公にしたテレビドラマが2週にわたって放映され、そのラストで二渡が人事異動に際し広報官の職に三上の名前を書くというシーンで終わっており、映画をその続編という形にして、うまくテレビドラマの視聴者を映画館に足を運ばせました。珍しく地元の映画館に客が入っていましたから、これはヒットは間違いないですね。
 三上を演じたのは佐藤浩市さん。この作品のような重厚なドラマにはまさにうってつけの俳優さんで、仲村トオルさん演じる冷静な二渡とは対照的な激情派の三上を見事に演じています。撮影時に広報官と対峙する新聞記者を演じる若手の役者たちに対し、「全力でぶつかってこい!」と気合いを入れたそうですから、凄い役者さんです。
 キャリア警察官として県警本部長と警務部長が登場しますが、地元ではなく東京しか向いていない彼らの行動も興味深いです。赤間警務部長を演じる滝藤賢一さん、憎たらしいですねぇ。
 原作を誘んでいるのでストーリーの行方は知っているのですが、購入したパンフレットによると、「原作とは異なる映画ならではのエンディングに、観る者すべてが慟哭する」そうなので、後編が大いに期待できます。 
太陽(28.5.14) 
監督  入江悠 
出演  神木隆之介  門脇麦  古川雄輝  古館寬治  鶴見辰吾  中村優子  高橋和也  村上淳  綾田俊樹  水田航生 
  原因不明のウィルスの蔓延により、人類は、ウィルスに対する抗体があって感染によって心身とも進化を遂げたが、その反面太陽の光の下では生活できなくなった新人類“ノクス”と、感染を恐れながらノクスに管理され貧しく生きる旧人類“キュリオ”とに分かれ暮らしていた。鉄彦と結が住む村は10年前に鉄彦の叔父がノクスの駐在員を殺害し逃亡したため、経済封鎖され電気もない前近代的な生活を送っていたが、今回封鎖が解かれ、キュリオからノクスヘの転換手術も20歳前の希望する男女になされることとなる。鉄彦はノクスになることを望むが・・・。
 元々は劇団イキウメというところの舞台劇だそうですが、先日亡くなられたあの蜷川幸雄さんも2014年に舞台化しているそうですから、脚本は評価が高かったのでしょうね。
 物語は、ノクスとなってもっと多くのことを学びたいと望む鉄彦と、鉄彦の幼馴染みでキュリオのままでいたいと考える結の二人がこの世界の中でどう生きていくのかを描いていきます。
 鉄彦を演じるのか神木隆之介さん。ちょっとエキセントリックな演技を熱演です。一方、結を演じるのは門脇麦さん。相変わらずの儚げな女の子を演じます。どうも彼女はこういう役が多いですねえ。
 結の決断はわからないではないですが、これでは未来を感じさせない決断です。ラストの神木くんが車を運転しているシーンも(ネタバレになるのでどうしてかは伏せますが)、結の決断を考えると明るいものにとることはできません。
殿、利息でござる(28.5.14) 
監督  中村義洋 
出演  阿部サダヲ  瑛大  妻夫木聡  竹内結子  寺脇康文  きたろう  西村雅彦  山崎努  松田龍平  草笛光子  千葉雄大     橋本一郎  中本賢  山本舞香  岩田華怜  重岡大毅  羽生結弦   
 仙台藩の城下の貧しい吉岡宿。ここでは伝馬役という藩の荷物を宿と宿の間を運ぶという荷役が宿に住む人々を苦しめ、夜逃げが増え、人が減るからまた残った者にかかる負担が増えるという悪循環に陥っていた。宿一番の知恵者と自負する茶師の菅原屋篤平治は、藩に金を貸し、その利息で伝馬役を運営すれば宿のみんなが肋かると考えたが、そもそも藩に貸す金がない。それを聞いた造り酒屋の穀田屋十三郎は金を工面しようとするが、藩に貸すとなれば1000両は必要で金策は困難を極める。やがて彼らの計画が口伝で宿中に広まり、出資者が現れてくる。最後に大金を出したのはケチだと評判の十三郎の実家の造り酒屋を継いだ弟の浅野屋陣内だった・・・。
 この話は実話だそうです。士農工商の時代に、貧しい町民が藩に金を貸して利息を取るなどという大それたことを考えたこと自体驚きですが、その利息も自分たちのものにせずに伝馬役に使用するという無私の考えを持った人がいたというのも、これまた二重の驚きです。中には、西村雅彦さん演じる両替屋のような考えの人もいたでしょうけど。`
 伊坂幸太郎作品を映画化してきた中村義洋さんが監督、それに加え、出演は阿部サダヲさんに若手の瑛大さん、妻夫木聡さん、竹内結子さん、更にはベテランの山崎努さん、きたろうさん、西村雅彦さんら豪華キャストで芸達者な皆さんですから、おもしろくないわけがありません。
 大いに笑い、ラストでは十三郎に関するある秘密も明かされるなど感動シーンもあり、飽きることかありませんでした。難しい理屈もありませんし、ストレス解消にはもってこいの作品です。そうそう、少ない登場シーンでしたが、山崎努さんはこの映画になくてはならない役者さんでしたね。
 フィギュアスケートの羽生結弦選手が仙台藩主・伊達重村役で登場します。ここは観客も爽快に感じるシーンですから、素人臭いたどたどしい演技では大事なシーンがダメになるところでしたが、これが素人とは思えない堂々たる演技でした。さすが世界の檜舞台で活躍しているだけのことはあります。お見事! 
海よりもまだ深く(28.5.21) 
監督  是枝裕和 
出演  阿部寛  樹木希林  真木よう子  小林聡美  リリー・フランキー  池松壮亮  中村ゆり  高橋和也  小澤征悦  吉澤太陽     古館寬治  ミッキー・カーチス   
 主人公の篠田良多は、15年前に鳥尾敏雄賞という一般にはあまり知られていない文学賞を受賞したことのある売れない小説家。しかし、小説家では食べることができず、今では、小説のネタ探しのためだと見栄を張って興信所に勤めているが、調査結果をねじ曲げたり、調査相手を強請ったりして小遣い稼ぎをしているどうしようもない男。更には父親が亡くなって団地で一人暮らしをしている母親の部屋に勝手に上がり込んで、金目の父親の遺品や母親の預金通帳を探すというダメ男の典型です。愛想を尽かされて別れた妻には今でも末練たっぶりで、彼女に恋人ができた様子を監視してガッカリする始末。映画は、そんなダメ男が元妻と息子と、そして母親が台風の一夜を母親の団地の部屋で過ごす様子を描いていきます。
 主人公・良多を演じるのが阿部寛さん。ホント、うまいですよねえ。見栄っ張りなどうしようもない男の役柄がぴったりです。元妻の響子を演じるのは真木よう子さん。気の強い女性がお似合いです。そして、存在感抜群なのが良多の母親を演じた樹木希林さん。うまいという言葉は当たり前すぎですね。阿部さんとの二人のやりとりには笑わせられました。良多の姉役の小林聡美さんもいい味出しています。
 元家族の4人が集まった台風の一夜がどういう結果をもたらすのかについては想像していたこととは異なりましたが、やっぱり、あれが現実なのでしょう。パンフレットに掲載された是枝監督のことばによると、脚本の最初に書かれたのが「みんながなりたかった大人になれるわけじゃない」で、これがモチーフになっているそうです。誰もが「自分は大人になったらこうなりたい!」という夢を子どもの頃には持っていますが、その夢が叶う人は多くないのが現実です。そんな現実を「こんなはずじゃなかった]という思いとどう折り合いをつけて生きていくのかが多くの人の人生ですね。ちょっとコミカルに描かれる良多の人生に「こんなはずじゃなかった」と思う自分自身を重ねながら見入ってしまいました。
 映画の中では気になるセリフが出てきました。樹木希林さん演じる母親が言う「なんで男は今を愛せないのかね」とか、「幸せってのはね、何かを諦めないと手にできないもんなのよ」、そして、リリー・フランキーさん演じる興信所の所長が言う「誰かの過去になる勇気を持つのが大人の男」も印象的です。
 ※題名はテレサ・テンさんの「別れの予感」の一節から取られています。YouTubeで改めて聞きましたが、テレサ・テンさん上手ですねえ。 
ヒメアノール(28.5.28) 
監督  吉田恵輔 
出演  森田剛  濱田岳  ムロツヨシ  佐津川愛美  駒木根隆介  山田真歩  大竹まこと 
 清掃会社でアルバイトをする岡田は、先輩の安藤からカフェの店員・ユカに片想いしていると打ち明けられる。安藤に連れられ、店に行った岡田は、そこで高校時代のクラスメート・森田に出会う。安藤によると、森田はユカをいつも嫌らしい目で見ているという。安藤からユカとのキューピッド役を頼まれる森田だったが、ある日ユカから突然愛の告白をされる・・・。
 高校時代に岡田と森田との間にはある過去があったのに(ネタバレになるので伏せます)、カフェで気軽に声をかけるのはおかしいです。後にユカにその過去を話したときに、岡田はそのことをトラウマに感じていることが描かれているのですから。普通は、いえ岡田のキャラからすればなおさら森田に声はかけられないでしょう。ここはこの映画で一番疑問があったところです。
 脱力感のある岡田と安藤の二人の青春物語風のストーリーから後半は過激な殺戮シーン満載のサスペンスへ。この内容の転換点に題名や主演者の名前が入るという心憎い演出となっています。演出といえば、岡田とユカのセックスシーンと森田の殺害シーンを重ねるのも何とも言えない演出です。これじゃあ、R+15も無理ないです。
 サイコパス・森田を演じるのはV6の森田剛くんですが、ジャニーズ事務所がよくこの役を許したものだと感心しています。まあ、もともと岡田准一くんや二宮和也くんのように甘いマスクではないので、ラブストーリー的な作品での主演は難しいでしょうけど、それにしても殺人鬼とはねえ。でも、主婦を殺し、遺体の横で平気で、たぶんカレーだと思いますが、ご飯を食べ、帰宅した夫を殺してからまたカレーを食べ出すという異常さ、自分が殺した死体の横でオナニーをするという強烈な描写は森田剛くんの表情を出さない顔にお似合いですね。ただ、役柄的には倒れている人の頭の上を平気で車のタイヤで轢く森田が、犬を避けようとして事故を起こしてしまうのは、ちょっといただけません。犬が高校時代のいい思い出に繋がっているにしても、サイコパスならサイコパスで徹底して欲しかった気もします。
 岡田を演じるのは濱田岳さん、安藤を演じたのはムロツヨシさんですが、岡田にしろ、安藤にしろ、脱力感のある、めんどくさい男を二人ともうまく演じています。ぴったりの役柄です。
 一方、岡田をリードするユカを演じた佐津川愛美さんは、小柄で、どことなく有村架純さんに感じが似ています。あんな大胆なシーンに挑戦して大丈夫なのかなあといらぬ心配をしてしまいます。
 原作は漫画で「ヒミズ」の原作者でもある古谷実さんの同名コミックです。題名の“ヒメアノール”とは造語で、“アノール”とはイグアナ科アノール属に含まれるトカゲの総称で、ヒメアノール=ヒメトカゲとなるが、猛禽類の餌にもなる小型爬虫類、つまり、“ヒメアノール”とは強者の餌となる弱者を意味するそうです。 
獣は月夜に夢を見る(28.5.29) 
監督  ヨナス・アレクサンダー・アーンビー 
出演  ソニア・スール  ラース・ミケルセン  ソニア・リクター  ヤーコブ・オクテグロ 
(大いにネタバレあり)

 小さな漁村の魚加工工場で働くマリーは、父親と病気の母の三人暮らし。母は車椅子生活で意思疎通も図れない状態であったが、父は母の病気について一切口を開かない。村人はなぜかマリー一家によそよそしく、一家は孤立していた。そんなある日、マリーは身体に体毛が伸びてくるなど奇妙な変化が生じているのに気づく。不安にかられたマリーは母の病気と関連があるのではと調べ始めるが・・・。
 母親の家系にどうも狼人間の血が流れていたようです。それがマリーにも遺伝し、やがて狼少女となって、自分の身を守るために彼女を虐めていた者たちを殺していきます。そこに愛し合った男との悲恋の物語を絡めたストーリーとなっているのですが、ラストはなんの解決にもならず、これからどうするの?という終わり方で観ている方からすると消化不良です。
 母親がどうして車椅子生活なのか、意思の疎通ができないのはなぜなのかもはっきりわからず(どうもロシア人に襲われたようですが)、更には浴槽で死んでいた原因もわからずじまいです。たぶん村人によって殺されたのでしょうが、そうであるとすると、突然狼女となる母がなぜ簡単に殺されたのかも(狼になって犯人を返り討ちにすればいいのではないか!)、まったくわかりません。説明不足なのは否めません。
 背中に毛が生えてくるシーンを見ていたら、這か昔、水谷豊さんが狼少年に扮したドラマがありましたが、あのときの変身シーンを思い出してしまいました。 
サウスポー(28.6.4) 
監督  アントワーン・フークワ 
出演  ジェイク・ギレンホール  レイチェル・マクアダムス  フォレスト・ウィテカー  ウーナ・ローレンス  カーティス“50セント”ジャクソン
     スカイラン・ブルックス  ナオミ・ハリス  ヴィクター・オルティス  ボー・ナップ  ミゲル・ゴメス  ドミニク・コロン ホセ・カラバイヨ 
  ビリー・ホープは、ボクシング世界ライトフライ級のチャンピオン。ある日、チャリティーイベントに出席したビリーは、ライバルの挑発に怒りを爆発させて殴り合いとなり、騒ぎの渦中で妻のモーリーンが拳銃で撃たれ、死亡してしまう。幼い頃から児童福祉施設で一緒に育った愛する妻を失ったビリーは、自暴自棄となり生活も乱れ、試合にも敗れてチャンピオンからも転がり落ちる。挙げ句の果ては車を暴走させ木に激突して怪我を負ってしまう。裁判所はビリーから娘の養育権を剥奪し、彼が更生するまで娘は養護施設に行くこととなる。生活を立て直さなくては娘に会えないと、ビリーはかつて自分を敗戦直前にまで追い込んだ選手のトレーナー・ティックに助けを求める・・・。
 愛する人も金もすべてを失って、いったんどん底までに落ち込んだ男が這い上がってくるまでを描く、ストーリーとしてはよくある話です。結末はこうなるだろうなと予想も付くのですが、それでも見入ってしまうのは、主演のジェイク・ギレンホールの演技のせいです。というか、世界チャンピオンのボクサーという役柄上、その鍛え上げられた身体の凄さです。腹筋が割れています。昔、ロバート・デ・二ーロがやっぱり役柄によって体型変えていましたけど、俳優さんというのは凄いですよねえ。
 ジェイク・ギレンホールはこのところ「ナイトクローラー」でのパバラッチとか濃いキャラの男を演じていますが、今後も注目です。
 ビリーは右利きなのに、なぜ題名が「サウスポー」なのかは観てのお楽しみです。わかっていても、ラストは熱くなります。
マネーモンスター(28.6.10) 
監督  ジョディ・フォスター 
出演  ジョージ・クルーニー  ジュリア・ロバーツ  ジャック・オコンネル ドミニク・ウエスト カトリーナ・バルフ ジャンカルロ・エスポジート 
  リー・ゲイツは、テレビの人気財テク番組「マネーモンスター」のキャスター。ある日の生放送で、リーが以前番組中で推薦したアイビス社の株が大暴落をした理由をアイビス社の幹部から説明を求めていたところ、拳銃を持った男・カイルがスタジオに乱入し、リーに爆薬のついたベストを着せ、人質にとる。カイルは銀行に預けるより安全というリーの言葉を信じて、アイビス社の株に全財産を投入したが、今回の大暴落により、莫大な損失を被っており、リーを人質にアイビス社に説明を求めようとするが‥・。
 大暴落の裏には実は・・・というストーリーですが、その話自体には新鮮味はあまりありません。それより、この作品の注目は、監督がジョデイ・フォスターであり、アカデミー賞受賞俳優であるジョージ・クルーニーとジュリア・ロパーツの共演であるということです。この3人のネーム・バリューだけで、観に行きたいと思わせます。それに対して、犯人役がジャック・オコンネルでは、まだまだ駆け出しという感じで、ちょっとバランスが取れていなかったかなという気がします。
 警察がカイルの恋人を説得に連れてきますが、この恋人が、財産を株につぎ込んで大損したカイルを罵倒し、まったく説得になりません。カイルはおろおろするばかり。普通だったら、恋人は犯人に対してお腹の赤ちゃんのためにも自首してと説得するシーンになりそうなものですが、このだらしない男の演出は、ジョデイ・フォスターならではではないでしょうか。
 映画全体としては可もなく、不可もなくです。ジョージ・クルーニーとジュリア・ロパーツのファンならどうぞ。
探偵ミタライの事件簿 星籠の海(28.6.10) 
監督  和泉聖治 
出演  玉木宏  広瀬アリス  石田ひかり  要潤  吉田栄作  小倉久寬  谷村美月  寺脇康文  神尾佑  品川徹  片桐竜次 
 島田荘司さんの御手洗潔シリーズの1作「星龍の海」の映画化です。
 原作ではホームズ役の御手洗潔とワトソン役の作家・石岡というコンビで事件の謎を解くのですが、映画では石岡は登場せず、映画独自のキャラである編集者の小川みゆきが石岡に代わってワトソン役を務めています。
 新しい御手洗潔シリーズの作品を書いて貰うために、みゆきが御手洗に提示した全国の不思議な事件のうちから御手洗が選んだのは、死体が流れ着く島の事件。さっそく、御手洗とみゆきは現場となった島に向かう。そこで、死体は瀬戸内海独特の海流に乗って広島県福山市から流れ着いたことを突き止めた御手洗とみゆきは福山市へと向かうが、そんな御手洗たちが遭遇したのは、アパートでの外国人女性の変死事件、滝壷に立てられた木に縛られた口を縫われた女と目を縫われた男と赤ん坊の死体、伝説の水龍の目撃情報、女性歴史学者の襲撃事件。これらの一見何の関係もないように思えた事件が、御手洗の推理でひとつに繋がっていることが明らかになってくる・・・。
 御手洗潔シリーズが映画化されるのは今回が初めてです。映画化が初めての原因が、島田さんが納得する御手洗潔を演じる役者がいなかったことにあるそうですが、今回の玉木宏さんは原作者の島田荘司さんも認めた人。御手洗潔って、あんなイメージなんですかね。
 みゆき役を演じたのは広瀬アリスさん。妹の広瀬すずさんより大柄で顔も派手な作りですが、美人姉妹ですねえ。ただ、広瀬さんが悪いわけではないのですが、ファンとしてはやっぱり御手洗潔の相棒は石岡であってほしかったです。
 水龍の正体についてもなんだかなあという印象ですし、口を縫われた女と目を縫われた男は、横溝正史のようなおどろおどろしさを感じさせながら、ふたを開ければ、そんなことする必要があったの?という感じでした。ちょっと拍子抜けです。
 御手洗潔シリーズ初めての映画化としては、僕としては初期の「暗闇坂の人喰いの木」や「アトポス」などの松崎レオナ登場作を映画化して欲しかったです。
 大学の准教授・滝沢加奈子を演じたのは石田ひかりさん。僕にとっては「ふたり」のどこかふわっとした印象が強いのですが、お姉さんの石田ゆり子さんと比べるとかなりふっくらしてしまって、やっぱり年齢を感じさせます。 
64ーロクヨンー後編(28.6.11) 
監督  瀬々敬久   
出演  佐藤浩市  綾野剛  榮倉奈々  夏川結衣  緒形直人  永瀬正敏  三浦友和  瑛太  吉岡秀隆  仲村トオル  柄本佑      奥田瑛二  滝藤賢一  椎名桔平  窪田正孝  筒井道隆  鶴田真由  坂口健太郎  金井勇太  小澤征悦  赤井英和       烏丸せつ子  菅原大吉  芳根京子  菅田俊 
(ネタバレあり 映画を観ていない人は注意)
 スポーツ用品店を経営する目崎のもとに娘を誘拐したという電話が入り、犯人は2000万円の身代金を要求する。事件は14年前の「ロクョン」事件をなぞるように進んでいくが・ ・ ・。
 先月公開された前編では、たった7日間しかなかった昭和の最後の年、昭和64年に起こった“ロクヨン”と呼ばれる誘拐事件に関わった人々のその後を描くとともに、警察の情報公開を巡って上層部とマスコミとの間で板挟みとなる広報官・三上の姿を描いていきましたが、後編は新たに発生した誘拐事件を巡って14年前の“ロクヨン”に思いを残す人々が描かれていきます。
 前編のパンフレットにあったように、物語は原作とは異なる進み方をしていきます。誘拐されたと思われていた娘が保護された後も、“ロクヨン”の解決のために身代金を運ぶ父親にそのことを伝えずにいる松岡捜査一課長に対し、親の気持ちがわからないのかと詰め寄る三上ですが、後半で描かれる、その三上の原作とは異なる行動には、僕自身は批判的です。
 なぜ、電話口の三上を犯人だと誤解している誘拐された娘の父親に対し、誤解を解かず、罠をかけるようなことをしたのか。松岡捜査一課長の行動を批判し三上の行動とは矛盾するのではないか。また、警察官として、ギリギリ許される行為だとしても、父親が誘拐殺人犯だということが判明する現場に娘を連れて行く必要があるのか。自分の娘の気持ちがわからず、失踪した娘を心配するにしては、犯人の娘のことを何ら理解できていないのではないかと文句を言いたくなります。“ロクヨン”が解決して、被害者の父や元警官の幸田、そして引き籠もり生活をしていた日吉は区切りがついたでしょうけど、犯人の娘は殺された女の子に次ぐ二番目の被害者と言わざるを得ません。三上自身だって、あれだけのことをして、警察にとどまれるとは思えません。私的制裁が許されないから警察があり、裁判があるのですから。
 その年のミステリベスト1に輝いた原作とは異なるラストにしたのは、勇気ある事でしたが、残念ながらやっぱり映画は原作を上回ることはできませんでした。 
ボーダーライン(28.6.11) 
監督  ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演  エミリー・ブラント  ベニチオ・デル・ロト  ジョシュ・ブローリン  ヴィクター・ガーバー  ダニエル・カルーヤ  ジェフリー・ドノヴァン
     ジョン・バーンサル 
 FBIの誘拐即応班のリーダーを務めているケイト。彼女は国務省のマット・クレイバーによって麻薬カルテルを殲滅するための特別チームにスカウトされる。チームは軍出身者など荒くれ者ぞろいで、その中にコロンビア人のアレハンドロが含まれていた。それまでの彼女の経験とはかけ離れた作戦にケイトは反発するが、マットは耳を貸そうとしない・・・。
 現在行われているアメリカ大統領予備選で、共和党の大統領候補となったトランプはメキシコとの国境に壁を築いて不法移民をさせないと壮大な嘘を吐いていますが、そこからもアメリカとメキシコの国境は様々な問題を孕んでいることがわかります。この映画を観ると、メキシコから麻薬が持ち込まれるのは間違いのない現実です。持ち込まれるアメリカ側がある程度の強硬姿勢を見せるのも仕方のないところではあります。とはいえ、壁とはねえ。万里の長城か(話がズレました)。
 邦題の「ボーダーライン」は「国境」とか「善と悪の境」を表しているようですが、原題は「SICARIO」で、これはスペイン語で「暗殺者」ということらしいです。確かに「ボーダーライン」という題名は内容的にはぴったりですが、原題の意図とは離れています。原題が意味するところは観てのお楽しみです。
 エミリー・ブラントが「オール・ユー・ニード・イズ・キル」と同様、あのスレンダーな身体でアクションに臨みます。美人でスタイルがいいし、格好いいですね。アレハンドロを演じるベネチオ・デル・ロトは以前から強烈な個性のある役柄が多いですが、今回も例外ではありません。彼の目的が最後に明らかになりますが、まさか、あそこまで非情にやるとは・・・。唖然としてしまいました。 
10クローバーフィールド・レーン(28.6.18) 
監督  ダン・トラクテンバーグ 
出演  メアリー・エリザベス・ウィンステッド  ジョン・グッドマン  ジョン・ギャラガー・Jr 
 同じJ・J・エイブラムスが製作、2008年公開の「クローバーフィールド HAKAISYA」という映画がありましたが、今回の作品がそれとどんな繋がりがあるのか、その続編なのかが公開前に一番気になるところでしたが、それは観てのお楽しみ。とりあえず、今回は前作のような手持ちカメラでの撮影ではなかったので、観ていて酔わなくて助かりました(笑)。
 車を運転中に事故に遭い、気づいたときには部屋の中に手錠で拘束されていたミシェル。部屋に入ってきた男は、事故を起こしたミシェルを救助し、地下のシェルターに運び込んだが、外は何者かによって攻撃を受け、放射能等が充満し、出ることはできないと言う。地下シェルターにはその男・ハワードのほか、シェルターに逃げてきたエメットという男がいた。 3人の地下室での生活が始まるが、やがてミシェルはハワードの嘘に気づく・・・。                  `’
 果たして、外の世界はどうなっているのか。ハワードが言うような世界が広がっているのか。外に出てからがドキドキのシーンになるはずなのが、これが予告編でネタバレしすぎです。ふたを開けたらびっくりの場面なのに、すでに予告編でわかってしまっていたので、驚くこともできません。これは失敗ですよね。
 ハワードを演じたジョン・グッドマンは笑顔の素敵な人のいい役柄が多いという印象の役者さんですが、今回はそんなイメージを一新。急に怒りを爆発させるなど、謎めいた人物を演じます。
 ミシェルが外に出てからの場面より、地下シェルターという閉鎖空間での場面の方が恐かったです。 
クリーピー 偽りの隣人(28.6.19) 
監督  黒沢清 
出演  西島秀俊  竹内結子  香川照之  東出昌大  川口春奈  藤野涼子  馬場徹  笹野高史  戸田昌宏 
 (ネタバレあり)
 高倉は元警視庁捜査一課の刑事だったが、取調中に逃げた犯人によって一般人が殺害された上、自分も刺されてしまうという失態を犯し、責任を取って刑事を辞め、大学の犯罪心理学教授となる。それを契機に引っ越しをするが、隣の西野家の夫は非常に感じの悪い男だった・・・。
 前川裕さん原作小説の映画化です。ただ、原作とはかなり異なっています。西野という隣人の不気味さを描いていくところは同じですが、かなり監督の黒沢さんの色が濃く出ている作品になっています。
 2時間という映画の枠内に収めるのにはちょっと説明不足の部分があった気がします。東出昌大さんが演じた野上刑事の死の理由については借金があったからということで、警察が事件を終結するとしたら警察は無能としかいいようがありません。それに西野家のあの部屋はいったい何なんでしょう。普通の家にあんな部屋があるはずはありません。更に、西野が他人を操るために打っていた注射は何でしょう。どこから手に入れるのでしょう。この辺りも説明不足ですね。原作では賢い妻であった高倉の妻がどうしてあんなに愚かなのかとも思ってしまいます。その反対に原作とは異なって淡々と西野の言うことに従って死体を片付ける藤野涼子さんが演じた娘役が怖すぎます。
 だいたい、高倉にしろ、野上にしろ、捜査一課長にしろ、刑事とは思えない行動をとるのも納得いきません。西島が殺人犯だと疑っているのだからもう少し慎重な行動をとりそうなものです。「おいおい、それじゃダメだろ!」と言いたくなります。
 「MOZU」に続く西島秀俊さん、香川照之さんのコンビですが、今回は何といっても西野を演じた香川さんの演技に注目です。本当にサイコバスという雰囲気がにじみ出ています。やっぱり芸達者なので、何をやらせてもうまいですよねえ。
 ラスト、このまま嫌な気持ちで終わるのかと思ったらどんでん返し。でも、ここも説明不足です。なぜ、高倉はああいう行動をとることができたのか。薬を打たれていたのではないのか。それに、なぜ西野は自分で犬が撃てないのか。人は簡単に撃ち殺していたのに。西野の行動に説得力がありません。誰か説明して欲しい!
 ストーリーは完結しましたが、観ているこちらは消化不良です。
ダーク・プレイス(28.7.9) 
監督  ジル・パケ=ブランネール 
出演  シャーリーズ・セロン  ニコラス・ホルト  クロエ=グレース・モレッツ クリスティナ・ヘンドリックス コリー・ストール タイ・シェリダン 
 28年前にカンザス州で起こった長男による一家惨殺事件。一人生き残った三女のリビーは、一般からの寄付により働かずに生きてきたが、今では口座にはわずかな金が残るばかり。実際に起きた事件の真相を探る「殺人クラブ」というミステリマニアのクラブに出席すれば謝礼金を払うといわれたリビーは、クラブに出かけるが・・・。
 リビーの証言で長男が逮捕され、長男である兄も罪を認めて28年間服役している事件の隠された真相がリビーが過去を探っていくうちに浮かび上がってくるというストーリーです。原作は「ゴーン・ガール」を書いたギリアン・フリンですが、「ゴーン・ガール」ほどの衝撃はありません。
 成長したリビーを演じたのは、シャーリーズ・セロンです。今回もそうですが、どうも彼女の役柄の印象はいつも人生に疲れ切った女性という感じです。
 そんなシャーリーズ・セロンより強い印象を与えたのは、長男の恋人校を演じるクロエ=グレース・モレッツです。彼女は本当に特徴的な顔をしていますねえ。特に、顔の真ん中に座った鼻が印象的です。決して美人な女優さんではないですが、インパクトは強いです。
 ラストで真相が明らかになりますが、一家惨殺事件が実際はあんな様相を呈していたとは思いませんでした。途中で、ある程度想像できるシーンがあったのですが、更にひとひねりがありましたね。 
インデペンデンス・デイ リサージェンス(28.7.9)
監督  ローランド・エメリッヒ
出演  リアム・ヘムズワース  ジェフ・ゴールドブラム  ビル・プルマン  マイカ・モンロー  ジェシー・アッシャー  ウィリアム・フィクナー     トラヴィス・トープ  シャーロット・ゲンズブール  ジャド・ハーシュ  ブレント・スパイナー  セラ・ワード  アンジェラベイビー
 ウィル・スミス主演で1996年に公開された「インデペンデンス・デイ」の20年ぶりの続編です。ヒラー大佐役のウィル・スミスは出演しませんが(すでに亡くなっているという設定で、写真の中だけの登場です。)、相棒だったデイビッド・レヴィンソン役のジェフ・ゴールドブラムやその父親役のジャド・ハーシュ、更には大統領役だったビル・プルマン、そして科学者役だったブレント・スパイナーは再登場です。
 ストーリーは単純明快。20年前に撃退した宇宙人が、再度更に巨大な宇宙船で地球に攻めてくるという話です。それを迎え撃つのがヒラー大佐の息子たち若者と、元大統領ら20年前の宇宙人と戦った者たちです。暑い夏のストレス発散にはもってこいの作品です。
 この作品にも中国系の資本が投入されているのでしょうか。避難する人の中で中国人がクローズアップされたり、宇宙人と戦うパイロットの一員として中国人女性が登場したりします。この女性、目力のあるショートカットの綺麗な女性で、個人的に惹かれます。惹かれるといえば、元大統領の娘役を演じたマイカ・モンローという女優さんも綺麗な女性で、この二人は甲乙つけがたいです(笑)。男性陣より強い印象を残します。
 “女王”だとされる巨大な宇宙人が登場しますが、どこかアメリカ版「ゴジラ」に登場したムートーに似ています。これは宇宙人というより怪獣というイメージですね。
 前作では大続領でありながら自ら戦闘機に乗り込んで戦ったビル・プルマン演じるホイットモア元大統領でしたが、今回も相変わらずのおいしい役でした。
 レヴィンソンの恋人役でシャーロット・ゲンズブールが出演しているのを見るのは久しぶりです。
シン・ゴジラ(28.7.31) 
監督  庵野秀明 
出演  長谷川博己  竹野内豊  石原さとみ  高良健吾  大杉漣  柄本明  余貴美子  市川実日子  高橋一生  津田寬治 
     國村隼  平泉成  松尾諭  渡辺哲  中村育二  矢島健一  塚本晋也  光石研  古田新太  松尾スズキ  鶴見辰吾
     ピエール瀧  片桐はいり  小出恵介  斎藤工  前田敦子  浜田晃  手塚とおる  野間口徹  黒田大輔  吉田ウーロン太
     橋本じゅん  小林隆  諏訪太朗  藤木孝  嶋田久作  神尾佑  三浦貴大  モロ師岡  犬童一心  KREVA  石垣佑磨
  
 「エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督が総監督を務めたゴジラがフルCGの作品です。
 長谷川博己さんが演じる内閣官房副長官の矢口蘭堂を主人公に、ゴジラが東京に上陸した場合に日本政府がどう対応するのかをメインに描いた作品です。何度も会議を開かなくては物事が決まらないとか、会議の名称がやたら長いとか、大臣の発言に後ろに控えた事務官がメモを差し出すとか、アメリカの要請を日本は断れないとか、縦割り行政でなかなか物事が進まないとか等々どこかで見たことのあるシーンが続きます。これらの部分に限れば、ある意味、非常に現実味のある映画だとも言えます。そのせいもあって、「ゴジラ」映画だといっても、子どもたちには楽しめなかったかもしれません。
 また、映像的には進化する前のゴジラがまるでできそこないのぬいぐるみの芋虫のような外観だったり、東京の町並みのミニチュアがどこか安っぽかったりするのは、今までのゴジラ作品へのオマージュということもあったのでしょうけど、日頃見事なCGを見慣れているので、どうなのかなあという感じです。これって狙いなんでしょうかねえ。
 肝心のゴジラですが、今回のゴジラは、上に述べたように芋虫のような外観だったり、ゴジラが熱線を吐くシーンでは下あごが二つに割れてしまうという、これまでにない造形です。アゴが二つに割れるというのは、どこかで見たような造形です。尻尾や背中のひれからも熱線が出るし、何だかイメージが違います。
 ただ、ゴジラ映画らしいと感じられたのは、昭和28年公開の「ゴジラ」の伊福部昭さんの音楽が使用されたということ。陸上自衛隊が登場するシーンはやっぱり、「タタタン、タタタン、タタタタタタタン」というあの音楽でなくてはね。
 一緒に観に行った息子の話では、会議のシーンなどに「エヴァンゲリオン」の音楽が使用されていたとのこと。ここは、庵野秀明監督がエヴァンゲリオンファンに配慮したのかな。
 様々な俳優さんがちょい役で顔を見せていました。僕は気づかなかったのですが、冒頭では元AKBの前田敦子さんも出ていたようですね。ゴジラ上陸シーンでは消防士役で小出恵介さん、陸上自衛隊の戦車隊長として斎藤工さんやKREVAさん等々、メインの登場人物ではないところに大勢の知っている役者さんの顔を発見しました。主要登場人物の中ではアメリカ大統領の特使を演じた石原さとみさんは、この映画ではちょっと浮いてしまっていた印象が強いです。 
秘密(28.8.6) 
監督  大友啓史 
出演  生田斗真  岡田将生  松坂桃李  吉川晃司  栗山千明  織田梨沙  大森南朋  椎名桔平  大倉孝二  木南晴夏
     リリー・フランキー  平山祐介  小市慢太郎   
 (ネタバレあり)
 死んだ人の脳に残った記憶を映像化することにより、犯罪捜査を行う科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」。室長は28人を殺した殺人鬼・貝沼の脳をスキャンした捜査官の中で唯一狂うこともなく生き残った男・薪剛。そんな「第九」に異動となった青木は、家族惨殺事件で死刑となった男の記憶を映像化し、事件後行方不明となっている娘・絹子の死体発見を目指すが、そこに映し出されたのは、殺されたと思っていた絹子が家族を殺害する場面だった・・・。
 最近、コミックの映画化が増えていますが、これもまた清水玲子さんのコミックが原作となった作品です。
 上映時間149分と、割と長めの上映時間でしたが、その割には説明不足の感が否めません。そもそも、最初から気になっていた薪が常にクートルネックだった理由も明らかになりませんし(首に傷でもあって、それがこの映画の肝になるのかと疑っていたのですが)、新人捜査官・青木の家族の殺害事件も、青木がそういう過去を持っているというだけで、事件は未解決のまま(実は事件は青木自身が起こしたものだったという結論になるのかと予想していました)。貝沼と絹子の関係もいまひとつはっきりわかりません。警官の真鍋が現場にジャガーで行くのも普通じゃないでしょう。また、刑務所に身元がはっきりしない貝沼がセラピーをしに行くというのもあり得ません。刑務所って、ボランティアだったとしてもそんなに簡単に誰でも行けるところではないはずです。更には、ラスト近くで絹子が訪れた場所に、骸骨がごろごろ転がっていましたが、あれはいったい何だったのでしょう。といった具合に、とにかく、疑問点がありすぎる作品で、伏線が回収されずに残されたまま終わってしまった感があります。              ゛
 薪を演じた生田斗真くんも、室長というには役不足という感じです。絹子という重要な役柄を演じた織田梨沙さんでしたが、正直のところ演技はへた。美人ではないし、残念ながら演技があれでは男性は誰でも籠絡されるというイメージには説得力がありません。だいたい、岡田将生くん演じる青木が簡単にキスに応じてしまうなんて、警察官失格ですね。
X-MEN アポカリプス(28.8.11) 
監督  ブライアン・シンガー 
出演  ジェームズ・マカヴォイ  マイケル・ファスベンダー  ジェニファー・ローレンス オスカー・アイザック ニコラス・ホルト ローズ・バーン
     エヴァン・ピーターズ  タイ・シェリダン  ソフィー・ターナー  オリヴィア・マン  コティ・スミット=マクフィー  アレクサンドラ・シップ     ルーカス・ティル  ジョシュ・ヘルマン  ベン・ハーディ  ラナ・コンドール 
 「X一MEN」の前日譚を描いた「X-MEN ファースト・ジェネレーション」、「X-MEN フューチャー&パスト」に続く第3弾です。今回は、太古からミュータントとして神の名の下に世界を支配していたアポカリプスとX-MENたちとの戦いを描いていきます。
 数千年の眠りから目を覚ましたアポカリプスは人類の文明が誤った方向に進んだと考え、新たな秩序をもたらすため、人間によって妻子を殺されたマグニートーらを従えて、世界の破滅を目論む。それを知ったX-MENはプロフェッサーXとともにアポカリプスに戦い
を挑むが・・・。
 今回一番の注目はマグニートーでしょう。自分の能力を隠し、妻子とともに静かに暮らしていたのに、人を助けたことから正体がバレ、悲劇に襲われてしまいます。アポカリプスの仲間になるのも仕方ないかなという状況ですね。ラストも格好いいですね。
 一方、プロフェッサーXですが、「ファースト・ジェネレーション」で車椅子生活になる理由が描かれましたが、この作品では禿頭になる理由が明らかにされます。歳をとったからではなかったんですねえ。
 ミステイークが今回も重要な役どころで登場しますが、演じるのがジェニファー・ローレンス。アカデミー賞女優となったのに、変わらずにこういう色ものの役どころを演じてくれるのは嬉しいですね。相変わらすのスタイルの良さに目を奪われます。
 そのほか、「X-MEN」の前日譚らしく、若い頃のサイクロップスやジーン・グレイ、更にはストームも登場します。「X-MEN」では指導的立場にいたストームが、実はこういう過去があったというところにはびっくりです。シリーズファンとしては、嬉しいストーリー展開となっています。
 今回、ある人物が演じるミュータントが特別出演しています。パンフレットのキャストにも掲載されていないし、ストーリーの中にも登場していないので、サプライズ出演ですね。
 パンフレットによると、このX一MENの世界は「フューチャー&パスト」の1973年を境にオリジナルタイムラインとニュータイムラインの並行世界に別れているようです。
 エンドロールが終わった後にも、今後のシリーズの展開を予想できる一場面がありますので、最後まで観るのが肝要です。 
超高速!参勤交代 リターンズ(28.9.10) 
監督  本木克英 
出演  佐々木蔵之介  深田恭子  西村雅彦  陣内孝則  寺脇康文  柄本時生  六角精児  上地雄輔  吉田新太  石橋蓮司
     市川猿之助  伊原剛志  富田靖子  知念侑李  宍戸開  渡辺裕之  中尾明慶  田口浩正  橋本じゅん  近藤公園 
2014年に公開された「超高速!参勤交代」の続編です。
前作では老中の奸計によって、参勤交代を終わったばかりの福島の湯長谷藩が再び5日間で参勤しなければならなくなった中、江戸までの道中のドタバタ騒ぎを描いていましたが、今回は、参勤が終わり、湯長谷まで“交代”で帰る途上に、国元で百姓一揆が起きるニとがら始まります。幕府の目付が到着するまでに湯長谷に戻ろうとしますが、残された時間はわずか2日。藩主の内藤政醇らは慌てて国元に戻りますが、すでに幕府から百姓一揆が起こった責任を問われて湯長谷藩は改易、代わりに尾張柳生の領地となります。これは、将軍の日光社参による恩赦で蟄居を許された老中・松平信祝が政醇憎しのもとに尾張柳生を使って百姓一揆のふりをしてなされたもの。再び湯長谷藩と老中・松平信祝の戦いが始まります。
 お金がなく、大名行列の体裁をなす数の人を雇えないため、人形で数を誤魔化したり、関所を通り抜けるために死体に化けたりと、相変わらず笑わせてくれます。ラストでは1000人の老中軍に対し、わずか7人で立ち向かうという、あり得ない状況になりますが、勧善懲悪なので、観ていても安心。難しいことを考えずにストレス解消にはもってこいの作品です。今回も家老役の西村雅彦さんと悪役に徹した派手な化粧の信祝役の陣内孝則さんのキャラが最高です。 
グランド・イリュージョン 見破られたトリック(28.9.1) 
監督  ジョン・M・チュウ 
出演  ジェシー・アイゼンバーグ  マーク・ラファロ  ウディ・ハレルソン  デイヴ・フランコ  ダニエル・ラドクリフ  モーガン・フリーマン
     リジー・キャプラン  ジェイ・チョウ  マイケル・ケイン  サナ・レイサン  ツァイ・チン  ヘンリー・ロイド=ヒューズ   
 2013年公開の「グランド・イリュージョン」の続編です。
 “フォー・ホースメン”のうち、女性メンバーの交代かありましたが、そのほかは同じ登場人物です。ストーリーが前作と繋がっているので、こちらを先に観てしまうと、ネタバレになってしまい、前作のラストの驚きがなくなってしまうので注意が必要です。
(以下、前作を観ていない人にはネタバレがあります。)
 冒頭、IT企業・オクタ社の新製品の裏には個人情報を不正に取得し、それを売買する計画があること知った“フォー・ホースメン”は、ニューヨークでの新製品発表会場で企業のCEOに催眠術をかけ、自ら計画を暴露させようとする。計画はうまくいったかに思われたが、何者かによっで“フォー・ホースメン”は逆に罠にかけられ、FBI捜査官であるディランが“フォー・ホースメン”の仲間であることが公衆の面前で明らかにされてしまう。“フォー・ホースメン”は脱出用のシューターに入って逃亡しようとするが、出た先はなんとマカオの料理店の厨房。そこに現れた男は“フォー・ホースメン”のメンバーの一人、メリットの双子の弟であり、彼は“フォー・ホースメン”をウォルター・メイブリーという男の前に連れて行く。彼は、“フォー・ホースメン”に、助かりたければ、オクタ社から世界のあらゆるシステムにアクセスが可能になるというチップを盗み出すよう脅迫する・・・。
 今回もニューヨークにいたのに、シューターから出た先はマカオだったというイリュージョンや、雨粒が空中で静止し、空に向かって逆に流れるイリュージョン等々様々なイリュージョンで楽しませてくれます。チップを仕込んだトランプのカードを大勢の眼のある中でメンバーで渡し合うシーンは見ものです。
 ラストでは前作同様、あっと驚く種明かしがされますが、前作ほどの驚きではありません。というより、前作で見事に騙されてしまったので、今回は疑い深く観ていたため、ちょっと想像がついてしまいました。
 ウォルター・メイブリー役でダニエル・ラドクリフが登場しますが、髭面も悪役もちょっと似合いませんね。 
スーサイド・スクワッド(28.9.10) 
監督  デヴィッド・エアー 
出演  ウィル・スミス  ジャレッド・レト  マーゴット・ロビー  ジョエル・キナマン  ヴィオラ・デイビス  ジェイ・コートニー  福原かれん
     ジェイ・ヘルナンデス  アドウェール・アキノエ=アグバエ  アイク・バリンホルツ  スコット・イーストウッド  カーラ・デルヴィーニュ 
 DCコミックの映画化です。スーパーマン亡き後、政府は悪に対処するため、刑務所にいる服夜中の悪党たちによる“スーサイド・スクワッド”を組織する。メンバーは、百発百中の腕を持つ最高のスナイパーであるデッドショット、ジョーカーの恋人であるハーレイ・クイン、火を操ることができるディアブロ、ブーメラン・ナイフの使い手であるブーメラン、地下に住むワニのような皮膚と強靱なパワーを持つキラークロックら。隊長である軍人のリックは逃げればクビに埋め込んだ小型爆弾を爆発させると彼らを脅しながら、テロの現場へと向かう・・・。
 マーベルコミックもDCコミックも、それぞれ単独のヒーローではなく、ヒーローがチームを組んで活躍する作品の映画化が続いていますが、この作品が他と異なるのは、ヒーローといってもいわゆる悪人、ダークヒーローたちです。
 それぞれ印象的なキャラの持主ですが、中でもハーレイ・クインが一番です。小悪魔的でスタイルのいいかわいい女性でありながら、笑顔でバットを振り回して頭をぶち割るし、マグナムをぶっ放すという何ともいえない派手さが強烈なインパクトを与えます。その上、ジョーカーに恋する前は美しい精神科医だったというのですから、その存在感は抜群です。役者のギャラ的には、本当はウィル・スミスが演じるデッドショットが一番目立たなくてはいけないのでしょうけど、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインに完全に喰われてしまっています。
 リックを護衛する日本刀の使い手の女性・カタナ(何とも安易な名前ですけど)を演じるのは日本女性の福原かれんさん。本作で映画デビューを飾ったそうですが、頑張ってもらいたいですね。顔の上半分を隠す変なお面をかぶっていて、顔全体が見られないのは残念。
 そんな悪党たちが悪に徹しないで、ラストは本当のヒーローになってしまうところが不満だと思う人もいるかもしれません。悪党なら徹底的に悪に拘れと。でも、こういうストーリーの方が爽快です。
 ラストはエンドロールが終わるまで立ち上がることなかれです。ある人物が登場し、今後のDCコミック関連の映画の行方が示唆されます。 
怒り(28.9.21) 
監督  李相日 
出演  渡辺謙  宮﨑あおい  松山ケンイチ  妻夫木聡  綾野剛 広瀬すず 森山未來 ピエール瀧 三浦貴大 高畑充希 佐久本宝 
 吉田修一さん原作の同名小説の映画化です。吉田修一作品で監督が李相日さんとなると、2010年公開で、その年の日本アカデミー賞で主演助演の男優賞・女優賞を総ナメした「悪人」のコンビ再びです。
 八王子の閑静な住宅街で夫婦二人が惨殺される事件が起きる。犯人は、壁に血で書いた“怒”という文字を残し逃走する。犯人の身元はすぐに身元が判明するが、逃走中に整形をして1年が過ぎた今でも逮捕されていなかった・・・。そんなとき、千葉の港町で働く槙洋平とその娘・愛子、東京でサラリーマンをするゲイの○藤田優馬、沖縄に引っ越してきた女子高校生の小宮山泉、それぞれ彼・彼女らの前に男が現れる・・・。
 映画は、槙親娘の前に現れた田代、藤田の前に現れた大西直人、泉の前に現れた田中という経歴不詳の3人の男のうちの誰が殺人犯なのかという謎を抱えながら、彼ら3人と関わり合う者たちの姿を描いていきます。
 田代を演じる松山ケンイチさん、直人を演じる綾野剛さん、田中を演じる森山未來さんが、実際は似ていないのに、指名手配写真が見方によってこの3人の誰にも見えるというところが演出のうまいところですね。原作を読んでいない人は、あれでだいぶミスリードされるかもしれません。
 槙役を演じた渡辺謙さんを始め、宮﨑あおいさん、妻夫木聡さん、綾野剛さん、森山未來さんといったそうそうたる役者さんたちが勢揃いです。更に若手で活躍中の広瀬すずさんや、現在NHKの朝ドラに出演中の高畑充希さんもちょい役ですが出演するなど、豪華な配役となっています。
 芸達者な人たちばかりなので、物語の中にグイグイ引き込まれます。槙愛子役の宮﨑あおいさんは原作ではぽっちゃりした女性である愛子を、体重を7キロも増やしての熱演です。ゲイ役の妻夫木さんと綾野さんの絡みも凄かったですね。ちょっと正視できませんでした。広瀬すずさんも、米兵にレイプされるシーンを演じるなど、今までのかわいい女の子だけとは違う役に挑戦しています。
 原作では犯人を追う刑事の思いも描かれていましたが、2時間の中で、そこはカット。しかし、原作以上に物語の中に引き込まれました。おすすめです。 
闇金ウシジマくん Part3(28.9.23) 
監督  山口雅俊 
出演  山田孝之  綾野剛  本多奏多  白石麻衣  筧美和子  藤森慎吾  浜野謙太  やべきょうすけ  崎本大海  最上もが
     高橋メアリージュン  マキタスポーツ  大杉漣  山下容莉枝  前野朋哉  山田裕貴  岸井ゆきの  矢野聖人  さくらゆら 
 シリーズ第3弾です。今回ウシジマくんの闇金にお世話になるのは、フリーターの沢村真司とサラリーマンの加茂。
 フリーターの真司は派遣の日雇いの仕事で食いつないでいたが、ネットで秒速1億円を稼ぐという天正翔の姿を目にし、半信半疑で無料セミナーに参加する。一発逆転を狙って、そのセミナーで紹介された高額の宣材を買うために親に金を無心し、やがて天正の口車に乗って泥沼へと足を踏み込んでいく。一方、加茂はキャバクラ嬢との遊びに金をつぎ込み、これまた泥沼へ。どちらも自業自得で、泥沼にはまり込むのも仕方ない二人の転落が描かれていきます。
 ウシジマは全然いい人ではありません。女手ひとつで頑張って子どもを育てている女性に対してもしっかり取り立てをします。同情して利息をまけるということはありません。悪い人物だけど、実は陰ではいいことをするということは、ウシジマくんに限ってはありません。その点、闇金に徹しています。まったくぶれません。
 ただ、今回の天正のような男がいい思いをしたまま映画が終わってしまっては観客もすっきりしないので、ラストでは痛い思いをするのですが、それもウシジマくんが正義感でどうこうするわけではありません。彼としては儲かるかどうかだけの価値観での行動です。
 来月にはシリーズ最終作が公開となりますが、テレビシリーズ3の最終回で名前が出た兄弟が登場してくるのでしょうか。そして、高橋メアリージュンが演じているライノーローンの犀原茜との決着はどうなるのかも楽しみなところです。 
ハドソン川の奇跡(28.9.24)
監督  クリント・イーストウッド
出演  トム・ハンクス  アーロン・エッカート  ローラ・リニー  
 ニューヨーク・ラガーディア空港を離陸したUSエアウェイズ1549便は離陸直後、バードストライクによるエンジントラブルを起こす。空港への着陸を指示する管制官に対し、着陸する余裕がないと判断した機長のサレンバーガーは、ハドソン川に着水を試みる。奇跡的に着水が成功し、乗客・乗員155人全員が無事に生還、サレンバーガーは一躍ヒーローとなったが、一方国家運輸安全委員会の調査官は着水しなくても空港に戻れたはずだとサレンバーガーの判断ミスを糾弾する。                       
 2009年に実際に起こった事件を、クリント・イーストウッド監督がトム・ハンクスを主演に据えて描いていきます。96分という最近の映画にしては短い上映時間ですが、テンポ良く事故とその後の調査に臨むサレンバーガーと副操縦士のジェフの姿が描かれ、無駄のない非常に濃密なストーリー展開となっています。
 事件はニュースで知っていましたが、その事件の裏では、機長の判断に誤りがあったのではないかという調査がされていたとは知りませんでした。死亡者をひとりも出さずに着水したことで、機長はヒーローでしたからね。空港に戻ってくることができれば、莫大な損害を逃れることができたでしょうから、航空会社(というより、保険会社でしょうか)は機長の判断ミスをできれば主張したいのでしょう。
 トム・ハンクスはこういう悩みを抱えるヒーロー役にはぴったりです。ぴったりすぎて当たり前の配役過ぎるという感もなきにしもあらず。とはいえ、クリント・イーストウッドとトム・ハンクスだからこそ、派手さはないものの、重厚な人間ドラマとなっているのでしょう。
 原題はサレンバーガーの愛称である“サリー”です。「ハドソン川の奇蹟」は格好良すぎです。
 クリント・イーストウッド監督にトム・ハンクスとなれば、アカデミー賞にノミネートされるのではと予想されますが、イーストウッド監督の前作「アメリカン・スナイパー」ほどのインパクトは残念ながらありません。
ジェイソン・ボーン(28.10.7) 
監督  ポール・グリーングラス 
出演  マット・デイモン  トミー・リー・ジョーンズ  アリシア・ヴィキャンデル  ヴァンサン・カッセル  ジュリア・スタイルズ リズ・アーメッド     アトー・エッサンドー  スコット・シェパード  ビル・キャンプ   
(ちょっとネタバレあり)
 スピンオフ作品であるジェレミー・レナー主演の「ボーン・レガシー」を除けば、マット・デイモン演じるジェイソン・ボーンが登場するシリーズ第4弾です。ジェイソン・ボーンはCIAの追及から逃れ、ストリート・ファイトをしながらヨーロッパを彷徨っていた。そこに、彼の協力者である元CIA局員のニッキーからボーンに連絡が入り、騒乱のギリシャで会う約束をする。しかし、ギリシャで会ったボーンとニッキーにCIAの追っ手が迫り、ニッキーはCIAの作戦員により殺されてしまう。ボーンは一人でニッキーがCIAのサーバーをハッキングして手に入れた情報の秘密を追うが、そこからはかつてボーンが携わったトレッドストーン計画に隠されたある事実が浮かび上がってくる・・・。
 今回のホーンの敵はCIA長官のロバート・デューイと情報局のヘザー・リー。デューイを演じるのは日本では缶コーヒーのCMでお馴染みのトミー・リー・ジョーンズ。これまでのシリーズの中でも一番の大物俳優ですね。やっぱり、存在感が違います。
 また、ヘザー・リーを演じたのは「リリーのすべて」でアカデミー助演女優賞を獲得したアリシア・ヴィキャンデル。非常に理知的な顔立ちの綺麗な人です。最初はデューイの考えに反発してボーンに好意的なのかと思いましたが、とんでもありません。野心を秘めた非情な女性です。前作までジョアン・アレンが演じたパメラ・ランディより怖いです。
 CIA作戦員を演じたのはフランス人俳優のヴァンサン・カッセルです。久しぶりに出演作を観ましたが、相変わらず渋いですねえ。
 まだまだ続編を製作しようと思えばできるラストでしたが、今度はヘザー・リーがCIAの指揮者としてボーンの前に立ちふさがるのでしょうか。 
グッドモーニングショー(28.10.13) 
監督  君塚良一  
出演  中井貴一  長澤まさみ  時任三郎  志田未来  吉田羊  池内博之  松重豊  濱田岳  林遣都  木南晴夏  大東駿介
     梶原善  小木茂光 
 カフェに猟銃を持った男が立て籠もる事件が発生。犯人は朝のワイドショーのメインキャスターである澄田真吾を現場に連れてくるよう要求する。澄田は以前は夜の報道番組のキャスターを務めていたが、災害現場でのある行動が批判され、朝のワイドショーに異動させられた過去があった。
 中井貴一さん演じるキャスターに大いに笑わせてもらいました。中井貴一さんはどんな役を演じてもうまいですねえ。今回のへタレの三枚目キャスター役もぴったりです。澄田の優しさを自分にだけと思い違いをしている長澤まさみさん演じるサブキャスターの小川圭子に、番組中で二人の仲を発表すると言われて慌てる姿には大笑いです。それにしても、長澤まさみさんは、NHK大河ドラマ「真田丸」でもそうですが、最近こういう元気な女性を演じることが多くなりましたね。
 犯人役は濱田岳くん。こんなことで恨まれてはキャスターもやってられないと思うような理由で澄田を恨みます。濱田くんのキャラからして最後は反省してと思ったのですが・・・。
 澄田の奥さん役は、またこの人かぁと思ってしまうほどの最近売れっ子の吉田羊さん。元女子アナで、ちょっとやそっとでは動揺しないキャラが吉田さんにぴったりです。
 番組のプロデューサー、石山を演じたのは時任三郎さん。中井貴一さんに時任三郎さんとくれば、僕らの年代はどうしても山田太一さんの名作ドラマ「ふぞろいの林檎たち」を思い出してしまいます。
 難しいことを考えずに大いに笑うことができて、ストレス発散するにはもってこいの作品です。 
何者(28.10.15) 
監督  三浦大輔 
出演  佐藤健  有村架純  二階堂ふみ  菅田将暉  岡田将生  山田孝之
 直木賞を受賞した朝井リョウさんの同名小説の映画化です。原作の感想はこちら。
 就活に翻弄される中で、自分が“何者”なのかを考える5人の大学生を描いていきます。
 彼らの生活に大きな場所を占めるのがツイッターなどのSNSです。友人たちと話をしていても、その合間にツイッターでつぶやくというのですから、とても年寄りにはマネのできない器用さです。人と話しているときにツイッターするのはどうなのかなあと思ってしまうのは、やっぱり時代に取り残された年寄り故でしょうか。
 原作を読んでいるので、青春物語かと思われていたストーリーが、ラストで大きな転換を見せる部分の驚きを感じることができなかったのは残念です。ある予告編ではこの辺りがネタバレになっていたので、小説を読んでいない人は注意が必要です。
 監督が舞台をやっている人だそうなので、現実世界を舞台の上での出来事のように描いている部分があり、おもしろいなと思いました。「これは何だ?]と思う人もいたでしょうけど。
 主人公というべき拓人を演じたのは佐藤健くん。あんなに人を分析してばかりの男とは友だちになりたくないなあと思う人が多いのでは。佐藤くん自身はツイッターとかやっていないそうですが、逆に若い人がしていないと聞くと、「珍しい!」と思ってしまいます。
 拓人のルームメイトである光太郎を演じたのは菅田将暉くん。バンドをやっている設定なので、作品中で歌声を披露していましたが、意外と上手。拓人が密かに想う光太郎の元恋人の瑞月役は有村架純さん。原作ではもう少し元気な女の子という印象を持っていたのですが、映画では控え目な女の子。留学帰りの理香を演じたのは二階堂ふみさん。某番組に出演しているときに外国の人と英語で話していました。役柄だけでなく実際にも英語が話せるんですねえ。凄い!何だかいちいち話すことが鼻につく隆良を演じるのは岡田将生くん。嫌なやつにしか思えないけど、小説ではもう少しまともだった気がします。
 ドアを開けて明るい空の下にでるシーンのラストは、未来に希望を感じさせてくれるという理解でいいのでしょうか。
永い言い訳(28.10.15) 
監督  西川美和 
出演  本木雅弘  竹原ピストル  深津絵里  黒木華  池松壮亮  山田真歩  堀内敬子  藤田健心  白鳥玉季  
 西川美和監督自身が昨年発表した同名小説の映画化です。原作の感想はこちら。
 作家の衣笠幸夫は女性編集者・福永と浮気をしていたその日に、友だちと旅行に行った妻・夏子の乗っていたバスが湖に転落し、夏子は帰らぬ人となってしまう。バス会社の事故説明会の会場で、幸夫は夏子の死に涙も出ない自分と違い、妻の死をストレートに悲しみ、怒りをぶつける夏子の友人の夫・大宮陽一と出会う。やがて、トラック運転手で子どもの面倒を見られない陽一に代わって、幸夫は彼らのアパートを訪ね、子どもたちの面倒を見るようになる・・・。
 幸夫を演じるのは本木雅弘さん。原作者自身が配役したのですから、監督が考える最高の人物ということでしょう。確かに、小説のイメージと違和感ありません。妻の死に対する罪悪感を女性編集者とのセックスで忘れようとするなんて、女性から見れば、本当に嫌な人物でしょうね。陽一に交際相手ができて、自分の居場所がなくなると思い、子どもの前で嫌な言葉を吐くなんて、あまりに子どもです。まあ、寂しかったのでしょうけど。
 本木さん以上に強く印象に残ったのは陽一役の竹原ピストルさんです。名前もそうですが、それ以上にそのキャラが凄いです。知らなかったのですが、パンフレットによると、役者だけでなく歌手でもあるそうです。先日、初めてラジオから流れてくる彼の歌声を聞きました。とにかく、演技の間が何とも言えません。あの風貌で、話す前にちょっとした微妙な間を開け、てっきり怒鳴り出すのかと思ったら、一転笑顔になるのですから、観ているこちらは、力が入っていたのにいっきに力が抜けます。あの間に拍手です。侮れません。
 陽一の子ども役の二人の子役が上手すぎます。特に年下の女の子は、自然でとても演技しているように思えません。  
スタートレック BEYOND(28.10.21) 
監督  ジャスティン・リン 
出演  クリス・パイン  ザカリー・クイント  ゾーイ・サルダナ  ジョン・チョー  サイモン・ペッグ  カール・アーバン  アントン・イェルチン
     ソフィア・ブテラ  イドリス・エルバ  
 スタートレック新シリーズ第3弾です。
 連邦の基地に助けを求めてきた異星人女性のために、カークたちエンタープライズ号は救出に向けて未知の星雲を目指す。しかし、そこで待ち受けていた敵によって、エンタープライズ号は攻撃を受け、惑星に墜落し脱出した多くの乗組員も敵の囚われの身になってしま
う。カークらは惑星で出会った異星人のジェイラの助けを借りて仲間を救いに向かう・・・。
 今回の作品では、カークやスポックを始め、主要メンバーがエンタープライズ号の外でそれぞれ行動するので、各自のキャラが今まで以上に目立って楽しむことができました。特にジェイラと出会ったサイモン・ペック演じる機関主任のスコットのキャラが際立っています。医療主任のマッコイとスポックとのコンビもなかなか愉快でした。
 注目は、今年6月に事故で急逝したチェコフ役のアントン・イェルチンです。今作ではかなり活躍を見せますが、次はあの童顔の顔が見られないとは残念です。
 もう一人の注目はジェイラ役のソフィア・ブテラです。元々はダンサーだそうなので、身のこなしが軽やかで、格闘シーンも見事です。ちょっと素っ気ない感じがまたたまりません。次作にも登場しそうなので期待したいです。
 シリーズファンには文句なく楽しめますが、シリーズを見ていないと理解できない部分があるかもしれま廿ん。    ゛
 ストーリー的に気になったのは、ジェイラが隠していた昔の連邦の宇宙船の存在。敵の正体があれ(ネタバレになるので伏せます)では、宇宙船の存在がわかっているはずだと思うのですが・・・。 
バースデーカード(28.10.22)
監督  吉田康弘
出演  橋本愛  宮﨑あおい  ユースケ・サンタマリア  須賀健太  中村蒼  木村多江  谷原章介  安藤玉恵  洞口依子
 亡き母から届くバースデーカードに励まされながら成長していく少女の姿を描く一作です。
 紀子はクラスの中でも消極的な、どちらかといえば虐められキャラの女の子。クイズ大会のクラス代表に選ばれながら、嫌がらせを受けて回答できなかった紀子を「あなたには未来がある。何にだってなれるの。いっぱいいっぱい希望があるの」と励ます母に、紀子は「ママはどうなの?希望通りの人生送れてる?満足できてる?」ときつく問いかけるが、母はその問いに答えないまま、紀子が10歳のときに病気で亡くなってしまう。母は亡くなる前に紀子と弟に成人になるまで誕生日にバースデーカードを送ると約束しており、それから毎年誕生日に母からのバースデーカードが父から渡される・・・。
 物語は、母が紀子の成長に合わせて書いたバースデーカードをきっかけにしたエピソードが描かれていきます。14歳のときにはキスの仕方まで伝授していて、母親ならではだなぁと思ってしまいました。やっぱり、父親だと女の子の心の中に入って行けない部分もあり
ますものね。
 宮﨑あおいさんが若くして病死する母親を、橋本愛さんが紀子を演じます。宮﨑あおいさんは「怒り」の時のように感情を露わにする役柄よりも、今回の娘を優しく見守る母親役の方がイメージに合います。一方、橋本愛さんですが、昨年の「残穢」に続いて出演作を見ますが、どうも幼い頃のかわいい女の子というイメージが強くて、大きくなったなあという印象がまず心に浮かんでしまいます。
闇金ウシジマくん ザ・ファイナル(28.10.22) 
監督  山口雅俊  
出演  山田孝之  やべきょうすけ  崎本大海  綾野剛  高橋メアリージュン  マキタスポーツ  永山絢斗  安藤政信  玉城ティナ      間宮祥太朗  YOUNG DAIS  真飛聖  八嶋智人  最上もが  モロ師岡  真野恵里菜  太賀  平栗あつみ  六角精児
     狩野見恭兵  江口祐貴 
 先月公開のシリーズ第3弾に引き続くシリーズ第4弾。題名からもわかるように、これがシリーズ最後の作品です。
 今回、ウシジマの敵となるのは、ウシジマが中学生時代にウシジマと争った顎戸三兄弟と、違法金利の利息の払い過ぎ分を回収する弁護士の都陰です。
 物語は、騙されても人を信じる底抜けのお人好しの同級生・竹本がウシジマに金を借りに来るところから始まります。断られた竹本が声をかけられたのが顎戸三兄弟がやっている建設会社、というより社員を働かせるだけ働かして上前をはねる、いわゆる貧困ビジネスの最たるもの。かつてウシジマに痛い目にあっている顎戸三兄弟は、竹本がウシジマの同級生だと知って、ウシジマに復讐しようと考える・・・。
 ウシジマの中学生時代が描かれよすが、ウシジマと戌亥の中学生時代を演じた子たちが、雰囲気がそっくりそのままウシジマと戌亥を小さくした感じです。ウシジマの歩き方なんて笑ってしまうほど似ていました。演じた狩野見恭兵くん、なかなかのものですよ。イケメンですし、人気が出そうです。やべきょうすけさん演じる柄崎や高橋メアリージュンさん演じる犀原の中学生時代も描かれていますが、こちらはちょっと今とは容貌が似ていません。でも、特に犀原の性格は同じで、あんなかわいい顔をして中学生の頃からやることが怖すぎます。
 ウシジマから金を借りる美容業界のカリスマ社長役で出演しているのが、元宝塚の真飛聖さん。下着姿にまでなります。元宝塚でここまでしたのは、他にいないのでは。思い切りましたね。
 ラストシーンで、ウシジマがどう決断するのか興味津々でしたが、ぶれませんでしたねぇ。やっぱり、ウシジマはこうでなくては。
 娯楽作品ですが、闇金の世界を通して、貧困ビジネスとか過払い金請求とか非常に今日的な社会的問題を扱っています。 
ザ・ギフト(28.10.28) 
監督  ジョエル・エドガートン 
出演  ジョエル・エドガートン  ジェイソン・ベイトマン  レベッカ・ホール   
 流産により精神的に不調となった妻のために、シカゴから夫の地元へ引っ越してきたサイモンとロビンの夫婦。買い物の途中、サイモンの高校時代の同級生ゴートから声をかけられ、最初は相手が誰なのかわからなかったサイモンだったが、名前を聞いて再会を喜ぶ。その日以降、ゴードからの贈り物が届き、サイモンの留守にゴードが家を訪れるようにもなる。サイモンはゴードのそうした行勤を嫌い、彼にもう来るなと言い渡すが・・・。
 監督でもあるジョエル・エドガートンが演じるゴードの表情が何とも不気味な雰囲気を醸し出します。ストーリーとしては、サイモン夫妻に拒否されたゴードが、しだいにサイコな性格を表に出して、夫妻を追い詰めていく話だろうと思っていたのですが、そう単純ではありません。事実とされてきた出来事が、二転、三転し、観客を翻弄します。
 大きな音や、突然目の前に何かが現れるといったホラーとしてありがちな観客を驚かすシーンが多用されて、これは一般的なホラー映画と同じバターンだなあと最初は思っていたのですが、さにあらず。実は「サ・ギフト」という題名に大きな意味があったんですねえ。その意味が明らかになったときは、視覚的にではなく、心理的に恐ろしさを感じました。この後、夫妻はどうなるのでしょうか。そして“ギフト”は、本当に“ギフト”なんでしょうか。観客の心にモヤモヤしたものを残して映画は終わります。 
インフェルノ(28.10.29)
監督  ロン・ハワード
出演  トム・ハンクス  フェリシティ・ジョーンズ  イルファン・カーン  オマール・シー  ベン・フォスター  シセ・バベット・クヌッセン
 「ダ・ヴィンチ・コード」「天使と悪魔」に続くラングドン教授シリーズ第3弾です。
 冒頭、何者かに追われた男が、追い詰められて塔から身を投げる場面から始まる。一方、ラングドンが悪夢から目を覚ませば、なぜか頭に怪我をして病院にいるのに気づく。ラングドンは一時的な記憶喪失になっており、なぜか彼を殺そうとする女性警官からわけもわからないまま女医のシエナの助けで逃れるが・・・。
 冒頭からのスピード感溢れる展開に、観客は何か何だかわからないままに物語の中に引き込まれます。記憶を回復していく中で、ラングドンは生物学者のゾブリストが人口増加問題の解決策として、新たな伝染病を世界に蔓延しようと計画していることを知り、計画を阻止しようとして奔走します。
 公開を記念してテレビで旧作が放映されましたが、ロバート・ラングドン役のトム・ハンクスは老けましたねえ。「ダ・ヴィンチ・コード」からは10年が経ちますから無理もないですけど。
 今回謎解きのキーとなるのはダンテですが、相変わらず歴史の中のエピソードで楽しませてくれます。また、シリーズ3作の中では一番どんでん返しのおもしろさがあった作品です。
 女医のシエナ投はフェリシテイ・ジョーンズ。12月に公開されるスター・ウォーズのスピンオフ作品「ローグ・ワン」で主役を務める女優さんです。トム・ハンクスと共演のあとはスター・ウォーズシリーズの主役に抜擢ですから、超売れっ子ですね。今作では、ストーリーの重要な役どころとしての登場です。
 それにしても、人口増加の解決策が人為による人口削減とは。短絡的といえば短絡的ですが、手っ取り早い方法と考える為政者が出てくると恐ろしい。
ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期(28.10.29)
監督  シャロン・マグワイア
出演  レニー・ゼルウィガー  コリン・ファース  パトリック・デンプシー  ジム・ブロードベント  ジェマ・ジョーンズ  エマ・トンプソン
 「ブリジット・ジョーンズの日記」「ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月」に続くシリーズ11年ぶりの第3弾です。冒頭で流れるのは、「All By Myself」。いやぁ~懐かしい。第1作でテレビから流れるこの歌に合わせてブリジットが当てぶりをするシーンはインパクトがありました。
 ブリジット・ジョーンズもすでに43歳。テレビ局のプロデューサーとして活躍していたが、私生活では未だ独身のまま。43歳の誕生日の夜も寂しく一人で過ごす羽目に。そんなとき、ブリジットは飛行機の墜落で行方不明となり死亡したとされたダュエルの葬式
で、矢しぶりにマークと出会うが、彼は既に他の女性と結婚していた。そんな寂しい日を送る中、ブリジットは友人と出かけた野外ロックフェスティバルでIT企業の社長のジャックと出会い、一夜を共にしてしまう・・・。
 43歳になって皺が増えましたが、ちょっと体重がオーバー気味の体型で、ドジだけど立ち直りが早く、美人ではないけれど愛すべきキャラのブリジットはアラフォーになっても健在です。プロデューサーになっても、そのドジぶりはハンパありません。
 原題は「ブリジット・ジョーンズの赤ちゃん」というわけで、何と今回ブリジットに赤ちゃんが誕生します。ただ、マークとジャックと夜を一緒に過ごした日が近いので、父親がどちらなのかがわからないことからドタバタ騒ぎが始まります。ラストシーンで誰の子どもかがわかりますが、何はともあれ、ブリジットの幸せにホッとした観客も多いのでは。これでブリジットともお別れと思うとちょっと寂しいですね。
 ブリジットがつける日記もノートにではなくタブレットに変わっているのも時代を感じさせます。
 マークがブリジットをお姫様だっこをしたときに流れた曲は、映画「愛と青春の旅立ち」のラストシーンで工場で働く恋人をリチャード・ギア演じる白い軍服姿の主人公がお姫様だっこをして連れ出すシーンに流れた曲です。あのシーンは僕らの年代では当時多くの男女が憧れました。今回、マークもジャックもブリジットをお姫様だっこをするのに苦労していたのには笑ってしまいましたけど。
 ヒュー・プラント演じるダニエルは今回はお葬式の祭壇に飾られた写真だけの登場です。でも、これが思わぬオチがあって、これまた笑ってしまいました。
続・深夜食堂(28.11.5) 
監督  松岡錠司 
出演  小林薫  河井青葉  佐藤浩市  池松壮亮  キムラ緑子  小島聖  渡辺美佐子  井川比佐志  多部未華子  余貴美子
     オダギリジョー  不破万作  綾田俊樹  山中崇  安藤玉恵  宇野祥平  金子清文  中山祐一朗  須藤理彩  小林麻子
     吉本菜穂子  平田薫  谷村美月  篠原ゆき子  片岡礼子  松重豊  光石研 
 夜の12時から朝7時まで営業している“めしや”。メニューは豚汁定食だけだが、材料さえあれば注文されたものは何でも作るというお店にやってくる人々を描くシリーズ第2弾です。「焼き肉定食」、「焼きうどん」、「豚汁定食」の3つのエピソードが描かれます。
 自分が育てたと思っていた新人作家から嫌われ、担当替えを言い出された女性編集者の範子。ストレスが溜まると喪服を着て気分転換するという彼女が、作家の葬式で出会った元編集者だという石田に惹かれるが・・・「焼き肉定食」。
 ひとり息子に15歳も年上の女性と結婚したいと言い出された蕎麦屋を経営する聖子。“めしや”で出会った気の合ったさおりに愚痴をこぼすが・・・「焼きうどん」。
 息子からの金が必要だとの電話で、200万円を持って九州から上京した夕起子。結局詐欺で金を騙し取られたことがわかるが・・・「豚汁定食」。
 マスターがあまり立ち入ることかく、ちょうど良い加減で相手をしてくれるので、心が疲れた人には憩いの場所になりそうですが、狭い店の中、常連さんがいるので、一見さんにはちょっと敷居が高そうです。
 今回も常連さんが顔を揃え、話に賑やかさを加えます。お茶漬けシスターズにヤクザとその子分、刑事とその部下の女性刑事、近所に住んでいるらしいオヤジにストリッパーなど個性豊かな人々が集まります。その中でも、オダギリジョーさん演じる警官の小暮は良い味出していますねえ。警官というと堅いイメージを持ち主すが、力が披けたようなとらえどころのないほわっとした小暮のキャラが映画の雰囲気にぴったりです。
 エピソードの登場人物として、「焼き肉定食」には佐藤浩市さんが出演していますが、これがいつもの佐藤さんのイメージとは異なる役で、笑わせてくれます。「焼きうどん」に登場する池松壮亮さんは、いつもどおりのぼそぼそとした話し方。「豚汁定食」には前作のエピソードにも登場した多部未華子さんが出演します。相変わらず、目力は強いですが、かわいいですね。
デス・ノート Light up the NEW world(28.11.5) 
監督  佐藤信介 
出演  東出昌大  池松壮亮  菅田将暉  戸田恵梨香  船越英一郎  藤井美菜  青山草太  竹井亮介  大迫一平  金田明夫 
 「デス・ノート」の続編。キラによる大量殺人に味を占めた死神によって再度地上に落とされた6冊の“デス・ノート”を巡り、キラの崇拝者である紫苑、ICPOから派遣されたLの後継者である竜崎、“デス・ノート”による大量殺人を防ごうとする警視庁デス・ノート対策本部の三島刑事の三つどもえの闘いが繰り広げられます。
 前作に登場したリュークほか2人(?)の死神が登場しますが、中でも女性(?)の死神・アーマが印象的で、ストーリーの中で重要な役割を果たします。
 実はキラには子どもがいたとか、当時事件の担当者だった検事が山の中で死体となって発見されるいうエピソードもあって、キラの後継者は誰なのかというミステリー的要素も大きい作品となっています。
 前作にも登場していた弥海砂役の戸田恵梨香さんも再登場。前作の時はまだまだ若くて新人女優という感じでしたが、今回は役の雰囲気が大きく変わっていましたね。
 どんでん返しもあって、個人的には楽しむことができましたが、ラストからすると、興行成績次第では続編があるのかも。 
ジャック・リーチャー(28.11.11) 
監督  エドワード・ズウィック 
出演  トム・クルーズ  コビー・スマルダーズ  オルディス・ホッジ  ダニカ・ヤロシュ  パトリック・ヒューシンガー  ロバート・ネッパー     ホルト・マッキャラニー 
 元アメリカ陸軍のエリート捜査官であったジャック・リーチャーの活躍を描いた「アウトロー]の続編です。
 今回は、軍を舞台にしたある不正をスーザン・ターナー少佐とともに暴くストーリーとなっています。リーチャーを父親と主張する女の子も登場して、親子の情愛らしきものも見せたりします。ストーリー展開が早いので冒頭から飽きさせません。
 「MI」シリーズ同様トム・クルーズのヒーローぶりを描く作品ですが、「MI」シリーズほどの派手なアクションはありません。とはいえ、50代とは思えない鍛え方で、トム・クルーズファンなら惚れてしまう作品です。
 共演のターナー少佐役のコピー・スマルダーズと敵の暗殺者であるパトリック・ヒューシンガーの印象が強いです。コビー・スマルダーズは「アベンジャーズ」のマリア・ヒル役で印象に残っていた女優さんですが、今回もなかなか凛々しい女性を演じています。身体もかなり鍛えていてカッコいいですよ。
 暗殺者を演じたパトリック・ヒューシンガーはちょっといい男です。リーチャーとターナー少佐の二人がかりでも倒せなかったのだから、本当はリーチャーに負けないはずだと思うのですが・・・。 
ミュージアム(28.11.12) 
監督  大友啓史 
出演  小栗旬  妻夫木聡  尾野真千子  野村周平  松重豊  市川実日子  伊武雅刀  丸山智己  田畑智子  大森南朋   
 若い女性が鎖で拘束されたまま犬に食い殺される事件が発生し、警視庁捜査一課の沢村らが事件の捜査に当たる。犬の口から出てきた紙には「ドックフードの刑」の文字が。続いて、引き籠もりの男が肉を切り取られて殺される。現場には「母の痛みを知りましょうの刑」の文字が書かれた紙が残されていた。両方の被害者が以前起こった「幼女樹脂詰め殺人事件」の裁判員だったことがわかり、沢村は愕然とする。彼の妻も裁判員の一人であり、2週間前に仕事漬けの沢村を嫌い、息子を連れて家を出ていって連絡が取れなくなっていた。その後も裁判員が殺される事件が続き、沢村は単独捜査を始めるが、妻と息子は頼った友人の住居から犯人によって拉致されてしまう。沢村は、情報を得るために後輩刑事の西野を呼び出したが、そこにカエルのマスクをかぶった犯人が現れ、沢村を挑発する。沢村と西野はカエル男の後を追うが・・・。
 巴亮介さん原作の同名マンガの映画化です。猟奇殺人を描くので、冒頭から目を背けたくなるシーンが出てきます。グロい描写が嫌いな人は注意が必要です。どうして年齢制限がかからなかったのか疑問です。
 沢村刑事を演じたのは小栗旬さん。妻子を救うために暴走しますが、あれだけの怪我をして大丈夫なのかと思ってしまうほど、ちょっとスーパーマン的です。
 カエル男を演じたのが妻夫木聡さん。妻夫木さんといえば、爽やかで気の優しい青年とか、どちらかといえば気の弱い男を演じるのが多いのですが、今回のカエル男はそれらとはまったく違います。ある理由から(ネタバレになるので伏せますが)頭はスキンヘッドで、メイクで怪異な雰囲気が醸し出されています。原作を読んだことがないので、原作のイメージとどうなのかわかりませんが、主役の小栗さんを明らかに食ってしまっています。 
ガール・オン・ザ・トレイン(28.11.25) 
監督  デイト・テイラー 
出演  エミリー・ブラント  ヘイリー・ベネット  レベッカ・ファーガソン  ジャスティン・セロー  ルーク・エヴァンス  ローラ・プリポン
     アリソン・ジャネイ  リサ・クドロー 
 夫と離婚したレイチェルは出勤途中の電車から見える、かつて自分が夫と住んでいた家の二軒隣の家に住む仲睦まじい若い夫婦の姿に心を慰めていたが、ある日、レイチェルは理想の夫婦であるはずの妻が別の男と抱き合っている姿を目撃してしまう。電車を降り、夫婦の家に向かったはずのレイチェルだったが、気がつくと、頭に傷を負い、居候をしている友だちの家で倒れていた。まもなく、その妻が失踪したと警察がレイチェルを訪ねてくる。
 ストーリーとしては若妻はどうなったのか、レイチェルが殺したのか、それとも別に犯人がいるのかというサスペンスです。公開時のネットでの評判がよかったので、観に行ったのですが、期待外れ。途中で襲ってきた眠気をどうにかこらえるのが大変でした。
 ストーリー展開よりは登場する三人の女優さんに注目です。このところ「オール・ユー・ニード・イズ・キル」や「ボーダーライン」で強い女性という印象の強いレイチェル役のエミリー・ブラントですが、今回はかなり精神的に弱いアル中の女性を演じています。
 「ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション」で一躍スターダムに登ったアナ役のレベッカ・ファーガソンですが、今作ではアクション・シーンはまったくありません。レイチェルから夫を奪った女性を演じます。昨日観た「マダム・フローレンス!」にも出演していましたし、今注目の女優さんですね。三人の中では顔立ちが個人的には一番好きです。
 三人の女性の中では一番無名のメガン役のヘイリー・ベネットですが、スタイル抜群で男が惹かれそうな表情をしています。来年公開の「マグニフィセント・セブン」にも出演しているそうですが、今後期待の女優さんです。 
マダム・フローレンス! 夢見るふたり(28.12.1) 
監督  スティーヴン・フリアーズ 
出演  メリル・ストリープ  ヒュー・グラント  サイモン・ヘルバーグ  レベッカ・ファーガソン  ニナ・アリアンダ 
音痴の社交界トップの夫人が音楽の殿堂、カーネギーホールでオペラ歌手として公演をしてしまう実話に基づく作品です。
 見どころは、マダム・フローレンスを演じるアカデミー賞3回、ノミネート19回を誇る名女優メリル・ストリープの歌う音痴な歌です。実際にフローレンス本人が歌った歌もエンドロールで流されるのですが、これがそっくり。下手な歌がそっくりというのもおかしいですが、本当に本人が歌っているかのようです。もちろん、「マンマ・ミーア」でも歌のうまさを披露しているメリル・ストリープですから、実際は歌は上手なのでしょうけど、それを下手
が下手に歌うのは逆に大変だったでしょう。演技のうまさはもう言うまでもありません。
 マダム・フローレンスを支える夫・シンクレアを演じるのはイギリスの俳優のヒュー・グラントです。「ラヴ・アクチュアリー」や「ノッティングヒルの恋人」、更には「ブリジット・ジョーンズの日記」など、二枚目でありながらもコミカルな部分もある役柄を演じる俳優さんですが、今作品でももちろんコミカルな部分は見せながらも、フローレンスを献身的に支える夫を演じています。
 どうして彼女の歌が戦場の兵士に人気が出たのか、そうでありながらなぜ兵士を招いて行った公演で大笑いをされたのかが、ちょっと理解できませんでした。大笑いする観衆にそれまでフローレンスの音痴を笑っていたアグネスたちが、それを諌める姿には感動してしまいましたけど。
 シンクレアの恋人役で出演しているのはレベッカ・ファーガソンです。やっぱり綺麗です。 
ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(28.12.1) 
監督  デイビット・イエーツ 
出演  エディ・レッドメイン  キャサリン・ウォーターストン  ダン・フォグラー  アリソン・スドル  エズラ・ミラー  サマンサ・モートン
     ジョン・ボイド  カーメン・イジョゴ  コリン・ファレル 
 不可解な現象がニューヨークの街を襲う中、世界各地を巡って絶滅寸前の魔法動物を保護する旅をするニュート・スキャマンダーがニューヨークヘとやってくる。ところが途中で出会ったジェイコブ・コワルスキーとカバンを取り違えてしまう。ニュートのカバンには世界各地で保護した魔法動物が入っていたからさあ大変。魔法動物たちがカバンから外界へ逃げ出してしまう。ニュートは逃げ出した動物からを捕まえようと奔走するが、このところの人間界で起こる騒ぎの原因が魔法動物のせいだとして、魔法議会によりニュートは逮捕され、死刑判決を受けてしまう・・・。
 ハリー・ポッターシリーズより数十年前の時代を描く新シリーズです。主人公はハリー・ポッターたちがホグワーツで使用する教科書の1冊「幻の動物とその生息地」を著したニュート・スキャマンダーです。ハリー・ポッターシリーズではシリーズ通しての敵役としてヴォルデモートがいましたが、このシリーズで敵役として登場するのはヨーロッパで暴れていて姿を消した魔法使いのグリンデルバルト。ラストで顔を見せますが、なんと彼を演じているのが超大物俳優。思わず「おぉ!!」と声を出してしまいました。出演は秘密のようで、パンフレットにもまったく名前が掲載されていません。次回はニュートと彼との更なる戦いを描いて行くのでしょうか。
 イギリスではマグル、アメリカではノー・マージと呼ばれる人間の中で、パン屋を夢見るジェイコブ・コワルスキーのキャラが印象的です。当然、次作にも登場するのでしょうね。ぜひ、登場させて欲しいです。 
ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー(28.12.16) 
監督  ギャレス・エドワーズ 
出演  フェリシティ・ジョーンズ  ディエゴ・ルナ  ベン・メンデルソーン  ドニー・イェン マッツ・ミケルセン チアン・ウェン リズ・アーメッド
     ヴァレン・ケイン  フォレスト・ウィテカー  ジェームズ・アール・ジョーンズ  アラン・デュディック 
 エピソードIVからVIまではルーク・スカイウォーカーの成長物語であり、ルークと父親との物語でした。ルークがジェダイの騎士になっていく過程と帝国軍への反乱が描かれているため、どちらかというと冒険活劇というイメージが強いエピソードでした。また、エピソードIからⅢまでは、ルークの父親がいかにして暗黒面に落ちていくかという物語で、パドメ・アミダラ姫との恋愛があるもののストーリー的には暗い雰囲気に覆われたエピソードでした。
 これに対して、エピソードⅢとIVとの間をつなぐストーリーである「ローグ・ワン」は感動の物語です。“デス・スター”の驚異的な破壊力を前にして、降伏をしようとする反乱軍に対し、“デス・スター”の設計図を手に入れるために帝国軍の基地に乗り込むフェリシティ・ジョーンズ演じるジンと仲間たちを描いて行きます。暗殺者やスパイとして日の当たらないところで反乱軍のために働いていた者たちが、ジンの元に集まるシーンにはグッときてしまいます。
 反乱軍の中ではフォースの力を信じる盲目の戦士・チアルートとその相棒であるベイズがいいですねぇ。ラストの戦いのシーンでの彼らの姿に胸打たれます。帝国軍を裏切ってジンの父親のメッセージを伝えに来たパイロットのボーディーもキャラとしてはあまり目立ちませんが、重要な役どころです。そして、人間ではありませんが、ロボットのK-2SOが今回一番のキャラです。何かというと確率を計算するロボットそのものなのに、ラストでの戦闘シーンの戦いぶりには涙が零れそうです。
 最初は場面の転換に話がわかりにくいところもあって、いまひとつだなぁと思ったのですが、ジンたちが立ち上がってからは圧倒されるおもしろさでした。
 ピーター・カッシングやキャリー・フイッシャーが登場したのにはびっくりしましたが、あれはもちろんCGでしょうね。ダース・ベイダーの登場にはシリーズファンとしては嬉しい限りです。やっぱり、スター・ウォーズにはダース・ベイダーが出なくては!
 いやぁ~予想外におもしろかったです。これはもう一度じっくり観たいです。 
バイオハザード ザ・ファイナル(28.12.23) 
監督  ポール・W・S・アンダーソン 
出演  ミラ・ジョヴォヴィッチ  アリ・ラーター  ウィリアム・レヴィ  イアン・グレン  ショーン・ロバーツ  ルビー・ローズ  イ・ジュンギ
     オーエン・マッケン  ローラ 
  シリーズ第6弾にして最終作です。前作ではホワイトハウスにいるアリスたちの周囲をゾンビたちが隙間もないほど取り囲んでいるシーンで終わりましたが、今作ではホフイトハウスも崩壊し、瓦礫の中からアリスが登湯するところから始まります。
 今作には日本からローラさんが出演するということで上映前から話題になっていましたが、セリフはひと言だけで、それもあっという間に退場します。これでは別にローラさんでなくても良かったのでは?と思いたくなるような結果。興収のいい日本へのサービスに過ぎないという感じです。それよりも同じアジアでも韓国人俳優の出番の方がずっと長かったし、アリスとの一対一の格闘シーンもあり、おいしい役どころでした。
 第1作が公開されたときの衝撃に比べ、シリーズが進むにつれ面白さがなくなってきましたが、今回の最終作はまあまあといったところです。シリーズが続くことを前提にストーリーを組み立てていたわけではないと思うので、多少のおかしなところは目をつぶって観ないと楽しむことはできません。
 第1作から15年間、アリスを演じ続けていたミラ・ジョヴォヴィッチに拍手です。夫が監督、レッドクイーンを演じていたのが娘、そして主役が自分自身ですから、この映画はミラ一家のための映画でしたね。