今年読了して感想を書いた本は170冊。過去最高の読書量でした。昨年同様せっせと図書館に予約をして、本当に手元に置いておきたい本だけ購入するようになったので、本の購入はかなり減りました。ただ、図書館の返却期限に間に合うよう、図書館から借りた本を優先的に読んでいたので、「このミス」で国内編第1位を獲得した米澤穂信さんの「王とサーカス」(東京創元社)、海外編第1位を獲得したジェフリー・ディーヴァーの「スキン・コレクター」(文藝春秋)とも購入したまま結局今年中に読むことができませんでした。 今年は、ランク付けなしに上記の12冊を選定しました。 大ファンの伊坂幸太郎さんの作品からは、阿部和重さんとの共作という形をとった「キャプテン・サンダーボルト」にするか、久しぶりのシリーズ第3弾「陽気なギャングは三つ数えろ」にするか迷いましたが、「ゴールデンスランバー」、「モダンタイムス」の系列に位置する巨大な国家の元でのストーリーである「火星に住むつもりかい?」を。 同じくファンの道尾秀介さんの作品は今年唯一刊行された「透明カメレオン」を。やはり、直木賞を受賞した「月と蟹」のような純文学的な傾向が強い作品よりも、こうしたエンターテイメント系の作品が好きです。 森見登美彦さんの「有頂天家族 二代目の帰朝」は前作から7年以上がたっての待ちに待っての続編です。京都を舞台にした不思議な世界の物語にどっぷりと浸かることができました。 昨年出版された中島京子さんの「かたづの!」をようやく今年図書館で借りることができました。歴史ファンタジーですが読ませましたねえ。今年出版された「長いお別れ」は、認知症を患ってから最後を迎えるまでの間、男とその妻、3人の娘、そして孫たちの生活を描いていく連作短編集ですが、最後に“長いお別れ”の題名の理由がわかる素敵な余韻を残すラストでした。 別れということでは、妻の突然の事故死という状況に置かれた夫を描いた西川美和さんの「永い言い訳」も感動のラストでした。この作品は来年西川さん自身の手で映画化されるそうですから、是非観に行きたいですね。 今年注目の作家は「屋上のウインドノーツ」で第22回松本清張賞を受賞、「ヒトリコ」で第16回小学館文庫小説賞を受賞した額賀澪さんです。両作品ともオススメですが、ここでは自分から周囲の人と関わらない“ヒトリコ”でいることを選択した少女を描いた「ヒトリコ」を。 もう一人、女性作家に注目です。それは「革命前夜」を刊行した須賀しのぶさん。廃部となる社会人野球チームに所属する男の再生を描いた「ゲームセットにはまだ早い」もオススメですが、ベルリンの壁崩壊の直前の東ベルリンに留学した音大生が時代の潮流に巻き込まれる様子を描く「革命前夜」はそれとはまったく毛色の異なる重厚な作品となっています。 時代小説からは澤田瞳子さんの「若冲」を。今年は伊藤若冲の生誕300年ということで、展覧会も開催され、その絵を実際に私も観に行きましたし、京都に行った際には若冲の墓がある石峰寺にも行ってきたので、彼の人生が描かれた「若冲」は、非常に興味深く読むことができました。来年も東京都美術館で「若冲展」が開催されるので、是非観に行きたいですね。 ミステリからは「このミス」国内編第2位に入った深緑野分さんの「戦場のコックたち」を。題名は「戦場のコック」ですが、料理の場面はそれほど出てくるわけではありません。ストーリーはノルマンディー上陸からドイツの降伏までの間で戦場という特殊な場所で起きる“日常の謎”を描いていきます。ただ、単なる謎解きだけでなく、そこには戦場であるが故の過酷な現実が描かれていきます。 ホラーからは第22回日本ホラー小説大賞受賞作の澤村伊智さんの「ぼぎわんが、来る」を。第1章のラストで思わぬ人の死がもたらされてからテンポよくぐいぐい読者をストーリーの中に引っ張っていきます。いやぁ〜怖かったです。 怖いということでは柚木麻子さんの第28回山本周五郎賞受賞作の「ナイルバーチの女子会」も怖かったですねえ。霊やゾンビは出てきませんが、それらに負けないくらいの怖ろしいものが登場します。「ランチのアッコちゃん」の柚木さんがこんな作品を書くのかという驚きがあるほどこれまでと違う雰囲気の作品でした。 最後にテレビドラマでも高視聴率を獲得した池井戸潤さんの「下町ロケット」の続編「下町ロケット2 ガウディ計画」です。今回、佃製作所が取り組むのは心臓の人工弁の開発です。前作どおりの佃に敵対する人物が登場し、読者をイライラさせます。勧善懲悪だとわかっていながら、この先どうなるのだろうと、わくわくドキドキで、ページを繰る手が止まりませんでした。相変わらず、池井戸さんうまいです。
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