今年読了した本は144冊。通勤経路に図書館があったせいでしょうか、昨年より30冊増えました。ただ、図書館から借りた本を優先的に読んでいたため、本当に読みたい本として購入した本が積読ままに来年に何冊も持ちこしてしまいました。 やはり伊坂幸太郎ファンとして挙げておきたいのが「首折り男のための協奏曲」と「アイネクライネナハトムジーク」です。伊坂ファンとして無条件にベスト10に挙げてしまうのは申し訳ないですが、でもやはりあのリズム感のある文章と伏線が見事に回収されるストーリーに引きつけられてしまいます。特に“首折り男”という普通ではない男が登場する前者と異なり、後者は本当に普通の人々が紡いでいくストーリーでしたがページを繰る手が止まりませんでした。
機龍警察シリーズ第4弾「機龍警察 未亡旅団」で、今回、特捜部が立ち向かう相手は、ロシアのイスラム武装勢力への攻撃を容認した日本をテロの標的とし、日本に潜入したチェチェンの女性メンバーのみで組織された「黒い未亡人」です。刊行当時冬季オリンピックの会場にこの組織が侵入したらしいというニュースが流れて、非常に現実味を帯びた話となりました。
米澤穂信さんの「満願」は、「このミス」、「週刊文春」など、今年のミステリベスト10で上位を獲得している短編集です。“古典部シリーズ”や“小市民シリーズ”とは趣がまったく異なる6編が収録されています。ラストに謎が解き明かされても、明るくはならず読後の気持ちは重いままで、確かにおもしろかったのですが、正直のところ1位を獲得するまでの作品かと思ってしまいました。
特捜部Qシリーズ第5弾「特捜部Q 知りすぎたマルコ」は、カール。アサド。ローラのいつものキャラより、題名にもなっている“マルコ”という少年が非常に魅力的な作品となっています。ラストのマルコの逃亡劇にハラハラドキドキの作品です。
リンカーン・ライムシリーズ第10弾の「ゴースト・スナイパー」は、国家機関の雇うスナイパーとリンカーン・ライムたちとの戦いを描きます。ジェフリー・ディーヴァーらしいどんでん返しに次ぐどんでん返しで700ページをいっき読みです。
東野圭吾さんの作品からは「虚ろな十字架」。テーマは、死刑制度。果たして、犯人の死刑によって被害者家族は救われるのか。死刑は国による殺人ではないのかなど、テーマとしてはよく取り上げられるものですが、正解というものは出せない難しい問題に東野さんがチャレンジします。
「貘の檻」はこのところ少年を主人公にした、ミステリーというよりは純文学の雰囲気を持った作品が多かった道尾さんによる、久しぶりの本格ミステリーです。ミステリーでも初期の「背の眼」や「骸の爪」の真備庄介シリーズのような感じ、さらに言えば横溝テイストのいっぱい詰まった作品となっています。
第60回江戸川乱歩賞を受賞した下村敦史さんの「闇に香る嘘」は、主人公の探偵役が盲目ということをうまく生かした作品と言っていいでしょう。
薬丸岳さんの「神の子」も上下2巻900ページ以上の大作。薬丸作品の中で一、二を争う作品になるのではないでしょうか。サスペンスですが、別の面から見れば、その生い立ちから人を信じるということができず、闇社会で孤独に生きてきた青年が、やがて友人を得て社会の中で生きていく姿を描いていく、ひとつの青春物語として読むこともできます。
西加奈子さんの「サラバ!」も上下2巻合計700ページを超える大作です。とにかく主人公以上に彼の姉のキャラが強烈です。彼女の生きざまだけ読んでも引き付けられる作品です。
ちょっとジュブナイル的なものから1作を。森絵都さんの「クラスメイツ 上・下」です。中学校のあるクラスの24人をそれぞれ主人公にして描いた24の物語からなります。森さんの手によっていまどきの24人の中学生たちの恋や悩みが描かれていきます。
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