▲2013映画鑑賞の部屋

レ・ミゼラブル(25.1.1)
監督  トム・フーパー
出演  ヒュー・ジャックマン  ラッセル・クロウ  アン・ハサウェイ  アマンダ・セイフライド  エディ・レッドメイン
     ヘレナ・ボナム・カーター  サシャ・バロン・コーエン  サマンサ・バークス  アーロン・トヴェイト
 ヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」といえば、幼い頃「ああ無情」という題で子ども向けにリライトされた小説を読んだことがあります。そこでは、ジャン・バルジャンが貧しさ故に彼に食事と宿を提供してくれた司教の家から銀の食器を盗んだのに、司教は警官にそれはジャン・バルジャンに与えたものだと言い、更に銀の燭台を与えるのです。司教の行為に胸を打たれたジャン・バルジャンが改心するという話ということだけが心に残っていました。今回の映画も当然そこから始まります。
 セリフがすべて歌で構成されるミュージカルで、果たして俳優さんたちの歌の力量はどうだろうと思って観に行きましたが、これが本当に素晴らしいの一語に尽きます。ジャン・バルジャン役のヒュー・ジャックマンは「Xメン」のウルヴァリンの印象が強い俳優さんで、ミュージカルという雰囲気には似合わないなあと思ったのですが、これが予想に反してうまいです。また、フォンテーヌ役のアン・ハサウェイも自分の髪を切っての熱演で、歌声も予告編では聞いていましたが、実際にすべてを聞くと、これほどまでの声量とは思いましませんでした。ジャベール警部役のラッセル・クロウの低音での歌声も素晴らしかったです。
 そんななかでも、特に印象に残ったのは、エポニーヌ役のサマンサ・バークスです。好きなマリウスがコゼットに一目惚れしてしまい、自分を見向きもしてくれないのに、彼を愛する心を歌う「オン・マイ・オウン」やマリウスをかばって撃たれて死にゆく中で歌う「恵みの雨」などは、聞いていて泣けてきてしまいます。実際に舞台でエポニーヌ役を演じていたのを監督が目に留めたのも無理ありません。素晴らしい感動の歌声でした。アマンダ・セイフライド演じるコゼットより、男としてはエポニーヌに魅かれます。
 感涙必至の作品です。おすすめです。帝国劇場で上演する日本版の舞台を観に行きたくなりました。
 それにしても、ジャベールはあまりにかわいそう。決して悪い人物ではなく、単に自分の仕事に忠実だったのに過ぎないのに・・・。
96時間/リベンジ(25.1.11)
監督  オリヴィエ・メガトン  
出演  リーアム・ニーソン  マギー・グレイス  ファムケ・ヤンセン  リーランド・オーサー  ジョン・グライス
     D・B・スウィーニー  ルーク・グライムス  ラデ・シェルベッジア  
 「96時間」で娘を拉致したテロリストを抹殺したブライアン・ミルズ。今作では、殺されたテロリストの父・ムラドが息子の敵を討つためブライアンをつけねらいます。
 再婚相手とうまくいっていない元妻の気分転換のため、娘とともにトルコ旅行を計画したブライアン。妻と二人でイスタンブールのグランドバザールに出掛けたが、彼の動向を追っていたムラドによって、妻共々拉致されてしまう。拉致直前にかけた電話によってテロリストから逃れることができた娘は父の脱出を手助けする。
 いつの間にかアクション俳優になってしまったリーアム・ニーソン主演です。上映時間が92分と短いので、ストーリー展開がスピーディーで飽きることはなかったのですが、妻や娘のためなら情け容赦なく殺すという、ただそれだけの映画だった気がします。結局何人殺したのでしょうか。アクションが好きな人なら、暇なときの時間つぷしにはいいかもしれません。
ルーパー(25.1.12)
監督  ライアン・ジョンソン 
出演  ブルース・ウィルス  ジョセフ・ゴードン=レヴィッド  エミリー・ブラント  ポール・ダノ  ジェフ・ダニエルズ
     ノア・セガン  パイパー・ペラーボ  ギャレット・ディラハント  フランク・ブレナン  トレイシー・トムズ
 タイムマシンが発明された60年後の未来。タイムトラベルは法で禁止されていたが、犯罪組織は違法にタイムマシンを使い、殺したい相手を30年前に送り、ルーパーと呼ばれる殺人請負業者に始末させていた。そんなルーパーの一人、ジョーはある日請け負った仕事で未来から現れたターゲットが、30年後の自分であることに気付き、一瞬の躊躇いから彼を殺すことを失敗してしまう。標的を逃がした場合、自らが始末されることになるため、ジョーは組織から逃げながら未来の自分(オールド・ジョー)を追うが・・・
 ジャンルとしては大好きなタイムマシンものです。現在の自分が未来から来る自分を殺すというとんでもない設定です。これが未来の自分が過去の自分を殺すとなるとタイムパラドックスの問題が生じますが、逆なら大丈夫なのでしょうか。とにかく、こうしたタイムトラベルものは常にタイムパラドックスの問題を避けて通るわけにはいきません。そういう点では、あまり深く考えると映画がつまらなくなってしまいます。パンフレットには、タイムトラベルによる因果の輪の説明が掲載されていますが、これを読んでもよくわかりません。一番よくわからないのは、オールド・ジョーが未来からやってきたときに、殺害した未来と殺害できなかった未来の二通りがあるということ。ここからもう頭がこんがらがってしまいました。やっぱり、深く考えるのはやめましょう。ラストは予想できてしまいました。
 ヤング・ジョーを演じたのは、ジョセフ・ゴードン=レヴィッド。このところ、クリストファー・ノーラン監督の「インセプション」「ダークナイト ライジング」に出演している俳優さんです。主役を張るようなそれほど強烈な印象を持った俳優さんとは思えないのですが、上記作品のほか「50/50」でも主演していました。
 オールド・ジョーは、こちらは誰もが知っているブルース・ウィルスです。ジョセフ・ゴードン=レヴィッドがブルース・ウィルスに似るようにメイクをしたそうですが、似ていますかねえ。
さよならドヴュッシー(25.1.26)
監督  利重剛
出演  橋本愛  清塚信也  ミッキー・カーチス  吉沢悠  柳憂伶  山本剛史  熊谷真美  相楽樹  戸田恵子
     相築あきこ  清水紘治  サエキけんぞう  三ツ矢雄二
 第8回「このミス」大賞を受賞した中山千里さんの同名小説の映画化です。原作は読んでいないのですが、映画化に当たっていろいろ改変はあるようです。
 富豪の孫娘の遥と両親を外国で亡くした従姉妹のルシアは、幼い頃から一緒に育てられていたが、ある日、火事によって祖父とルシアは亡<なってしまう。顔をはじめ、全身に大やけどを負った遙は形成外科医の手により、元の顔を取り戻し、幼い頃からの夢であるピアニストを目指し、ピアニストの岬洋介を講師に練習を重ねる。そんな中、階段や遥の松葉杖に細工が施され、あやうく遥は怪我をしそうになる。
 正直言って、冒頭で話の筋が見えてしまいました。どんでん返しがあるかなと思ったら結局そのままで、ミステリとしてのおもしろさは全くありません。ほとんどの人がすぐに結末がわかってしまうでしょう。
 見所(聞き所)は、岬洋介役の清塚信也さんのピアノでしょうか。さすが本当のピアニストだけあって、指使いはすごいです。遥が弾いた曲は、実際は清塚さんが弾いていたそうです。
 監督は利重剛さん。役者だとばかり思っていましたが、監督もされるのですね。
ストロベリーナイト(25.1.26)
監督  佐藤祐市
出演  竹内結子  西島秀俊  大沢たかお  武田鉄矢  生瀬勝久  小出恵介  宇梶剛士  渡辺いっけい
     津川雅彦  高嶋政宏  遠藤憲一  染谷将太  金子賢  三浦友和  田中要次  柴俊夫  今井雅之
     鶴見辰吾  石橋蓮司   
(ちょっとネタバレ)
 題名は誉田哲也さん原作の姫川令子シリーズ第1作の「ストロベリーナイト」ですが、実際は第4作目の「インビジブルレイン」が原作です。姫川を演じる竹内結子さんをはじめ、テレビドラマの出演者が顔を揃えているので、ドラマのファンには嬉しい作品となっています。逆にドラマを知らないと(あるいは原作を読んでいないと)、最初物語に入りにくいかもしれません。
 ヤクザが被害者となる連続殺人事件が起き、警察は暴力団の内部抗争による犯行だと考える。一方柳井健斗が犯人だというタレコミ電話を受けた姫川は柳井の身元を調べるが、それを知った上層部から捜査にストップがかかる。納得いかない姫川は単独捜査を始めるが・・・
 過去の事件のミスを隠そうとする警察上層部に対し、姫川玲子が真実を追究して対立します。姫川が惹かれる男・牧田が登場し、姫川を守ろうとする菊田と対峙します。牧田を演じる大沢たかおさんと菊田を演じる西島秀俊さんがかっこいいこと。女性ファンが騒ぎそうです。それにしても、シリーズファンとしては、あまりに菊田がかわいそうで仕方ありません。姫川を影ながら支え守り続けているのに、姫川は突然登場した男に惹かれてしまうなんて。そのうえ、映画では姫川と牧田との関係がより進んでしまっていますからねえ。警察官の身で暴力団組長に惹かれては駄目でしょう!あれを見ると、姫川も普通の女性だなあと思ってしまいます。
 全編を通して雨という中で物語は進んでいきますが、ラストが晴れた空というのが印象的です。
アウトロー(25.2.1)
監督  クリストファー・マッカリー
出演  トム・ハンクス  ロザムンド・パイク  リチャード・ジェンキンス  デヴィッド・オイェロウォ  ジェイ・コートニー
     ヴェルナー・ヘルツォーク  ジョセフ・シコラ  マイケル・レイモンド=ジェームズ  ロバート・デュヴァル
 トム・クルーズの新たなシリーズものになるかと期待される作品です。原題は主人公の名前である「ジャック・リーチャー」。「アウトロー」という邦題よりずっといい題名です。
 河畔の公園に6発の銃声が鳴り響き、5人の男女が殺害される。狙撃地点に残された遺留品から元陸軍の狙撃兵・ジェームズ・バーが逮捕されるが、彼はただジャック・リーチャーを呼べとだけメモに書いたあと、護送中に囚人に暴行を受け意識不明となる。バーを軍隊時代に逮捕したことのあるリーチャーは、今度同じことをしたらおまえの前に現れるという約束どおり、彼の前に現れ、事件を洗い直す。
 トム・クルーズ演じるジャック・リーチャーは、元陸軍の憲兵で犯罪捜査にも熟練しているというキャラクターですが、
元憲兵というだけでは、そこらへんにいっぱいいるだろうという感じです。クレジット・カードや免許証、携帯電話など身分を明らかにするものを持たない謎の男とさらっと描かれますが、もう少しキャラに肉付けがあってもよかったのではと思います。
 話としては、単なる戦場帰りの兵隊の狙撃事件と思われた事件の真相を暴いていくところがミステリっぽくて(ミステリではよくあるパターンが使用されていますが。)、なかなかのおもしろさでした。これはシリーズ化されるのでは。
 黒幕であるゼックを演じたヴェルナー・ヘルツォークの悪役ぶりが見事でした。その部下・チャーリーを演じるジェイ・コートニーは、今月公開の「ダイ・ハード ラスト・デイ」でブルース・ウィルス演じるジョン・マクレーンの息子を演じるなど、今、旬の俳優さんですね。
きいろいゾウ(25.2.2)
監督  廣木隆一
出演  宮﨑あおい  向井理  柄本明  松原智恵子  リリー・フランキー  緒川たまき  濱田龍臣  浅見姫香
     本田望結  (声の出演)大杉漣  柄本佑  安藤サクラ  高良健吾
 西加奈子さん原作の同名小説の映画化です。原作は購入してあるのですが、積読状態。夫婦を演じるのは宮﨑あおいさんと向井理さんですから当然心温まる夫婦の物語だと予想したのですが、意外な展開。甘いだけの物語ではありませんでした。
 台所の蛇口をつかむ向井理さん演じるムコの手に、ひたすらコップや茶碗を打ち付ける宮﨑あおいさん演じるツマの表情の怖いことといったらありません。あのシーンは凄かったですねえ。ホラー顔負けです。特に宮崎あおいさんは、ほとんど化粧をしていなかったのではないでしょうか、すごいリアルに感じました。
 そのうえ、宮崎あおいさん演じるツマは、犬や蜘蛛、アリや植物とも会話できるという驚きの設定。夜に庭のソテツに自分の悩みを打ち明けるというファンタジックなシーンと、上記のホラー顔負けのシーンとの落差が大きすぎて、ちょっと物語の中に入っていけませんでした。
 声の出演に意外な人物も。特にソテツの声の大杉漣さんはピッタリという感じです。
脳男(25.2.9)
監督  瀧本智行
出演  生田斗真  松雪泰子  江口洋介  二階堂ふみ  染谷将太  太田莉菜  夏八木勲  石橋蓮司
     光石研  小澤征悦  大和田健介  甲本雅裕
(ネタバレあり)
 2000年に第46回江戸川乱歩賞を受賞した首藤瓜於さん原作の同名小説の映画化です。
 原作は乱歩賞受賞ということで刊行時に読んでいるのですが、もう読んでから13年がたち、「脳男」と呼ばれる男が感情もなく痛みも感じない人間ということは強烈な印象として記憶に残っていたのですが、細部のストーリーはすっかり忘れていました。
 とにかく、この作品の肝は、感情もない、痛みも感じない「脳男」の強烈な人物造型にあります。そんな人間、本当にいるのでしょうか。物語の終盤で、何度も車にはねられる場面では、「痛みは感じなくても、ロボットではないのだから骨折するのはもちろん、死んでしまうだろう!」と余計な心配をしてしまいました。
 そんな脳男を演じたのは生田斗真くん。肉体的能力が凄いという設定のため、撮影に入る前から鍛えただけあって見事な筋肉でしたねえ。今までの役柄と異なって、笑顔も見せない無表情の演技で頑張っていました。 
 爆弾魔が二人組の女の子だったのが、観ていて何となく違和感がありましたが、原作では男だったんですね。これって、かなり作品の雰囲気を変えてしまうのではないでしょうか。原作の犯人の印象がまったく残っていないので、比較のしようがないのですが、主犯の緑川を演じた二階堂ふみさんが眉毛を抜いて凄身を出しているとはいえ、サイコな感じにはいまひとつ。どうしても観ていて幼さを感じてしまいました(ただ、最初は彼女だとは気付きませんでした。そういう意味では成功かな。)。
 二階堂ふみさんもそうですが、松雪泰子さん演じる鷲谷真梨子の患者・志村を演じた染谷将太くんも売れています。この二人、「ヒミズ」以来、コンビで出演していますね。
ダイ・ハード ラスト・デイ(25.2.15)
監督  ジョン・ムーア
出演  ブルース・ウィルス  ジェイ・コートニー  セバスチャン・コッホ  メアリー・エリザベス・ウィンステッド
     ユーリア・スニギル  ラシャ・ブコヴィッチ  コール・ハウザー
 「ダイ・ハード」シリーズ第5作。前作ではマクレーンの娘が登場しましたが、今回は息子が登場します。
 仲違から家を出て行方不明となっていた息子・ジャックが、ロシアでトラブルを起こし、留置されていることを知り、マクレーンはロシアにやってきます。ある裁判の証人としてジャックが出廷する裁判所にやってきたところ、裁判所が爆破され、武装した男たちが裁判所に侵入してきます。ジャックはその裁判の被告人・コマロフとともに脱出を図りますが、ジャックは実はCIAで、コマロフのかつての相棒で今では政府の高官となっているチャガリンを告発する内部文書をコマロフから得るために彼に近づいていたのです・・・。
 今回はアメリカを離れ、ロシアでついていない男・マクレーンが活躍します。冒頭から派手なカーアクションを始め、派手な銃撃シーンが続きます。ただ、今回は単純に運の悪い男が悪者と戦うというだけではなく、ストーリーに一捻り、二捻りがあって、シリーズ2作のようなどんでん返しを楽しむことができます。
 娘も息子も登場したし、これでシリーズも完結でしょうか。
ゼロ・ダーク・サーティ(25.2.22)
監督  キャスリン・ビグロー
出演  ジェシカ・チャスティン  ジェイソン・クラーク  ジョエル・エドガートン  ジェニファー・イーリー  マーク・ストロング
     カイル・チャンドラー  エドガー・ラミレス
 9.11事件後、首謀者であるビンラディンの行方を捜し出して、殺害するまでを関係者への綿密な調査に基づいて描いた作品です。
 主人公はCIAの女性分析官・マヤ。山岳部に隠れているのではという大方の予想を裏切り、パキスタンの都市部の豪邸に隠れていたビンラディンを、他国にも拘わらずヘリで潜入して殺害してしまうというアメリカの荒っぽさには事件当時びっくりしましたが、ここに至るまでの計画の中心にいたのが女性とはさらに驚きです。
 冷酷ということを評価されての抜擢だったようですが、当初は拷問にも目を背けていた彼女が、仲間を自爆テロで失ってから、しだいに拷問も厭わないようになるところに、この女性の芯の強さを感じます。
 上司がこのままここにいては心が壊れるとワシントンヘ転勤したのに、彼女はそのまま残るのですから、たいしたものです。そのうえ、ビンラディン殺害に出発するシールズの隊員に「私のために殺してきて」なんて、普通言えないですよね。長官の前でビンラディンの存在の確率を訪ねられ、男たちが低めに言うのに、IOO%あるいは99%と言うのは格好良すぎます。
 マヤを演じたのは、ジェシカ・チャスティン。彼女は「ツリー・オブ・ライフ」や「ヘルプ」に出演していますが、僕としては「ツリー・オブ・ライフ」で見たはずなのですが、印象に残っていませんでした。今回の映画は、彼女の映画散っていいでしょう。見事にマヤを演じきっているという感じです。
 それにしても、監督のキャスリン・ビグローは、アカデミー賞を受賞した「ハート・ロッカー」もそうですが、女性には
思えない硬派な作品を作り上げますね。
 ※ビンラディン殺害を描いたこの映画、イスラム圈から抗議されないのでしょうか。
世界にひとつのプレイブック(25.2.23)
監督  デヴィッド・O・ラッセル
出演  ブラッドリー・クーパー  ジェニファー・ローレンス  ロバート・デ・ニーロ  ジャッキー・ウィーヴァー
     クリス・タッカー  アヌバム・カー  シェー・ウィガム  ジュリア・スタイルズ  ブレア・ビー 
 妻の浮気を目撃したことから精神に異常をきたし入院していたパット。退院はしたものの、妻は家を売って出て行ってしまい、元妻への接近禁止命令も受けてしまった。しかし、パットは、体を鍛えれば妻は戻ってくると盲目的に思い込み、体を鍛え始める。そんなとき出会ったのが友人の妻の妹・ティファニー。彼女は夫の不慮の死で心に深い傷を負っていた。この映画は、そんな二人のどん底からの再生の物語です。
 「いまだに元妻のことが忘れられないパット、ダンスの練習をするうちに次第にパットに心弾かれていくティファニー、果たして二人の恋の行方は・・・」と、この映画の内容を簡単に言えばこういうことなのでしょう。アカデミー賞ノミネート作品で、期待をして観に行きましたが、とにかく序盤は退屈というか、ついて行けませんでした。元妻に固執するパットの行動があまりに異常。接近禁止令も無理ありません。ラストは予定調和で収まるところに収まるだろうとは思いましたが、パットの未練たらたらの行動になかなか映画の中に入っていくことができませんでした。
 ただ、ここさえ乗り切ればあとはラストのダンス大会の場面まで、二人の関係はきっとこうなるだろうなあとはわかっていても、気になって目が離せなくなります。
 ティガニー役のジエニファー・ローレンスはこの演技でアカデミー賞主演女優賞に輝きましたが、前作の「ハンガー・ゲーム」の、どちらかといえば少女を演じていたときとは大違い、大人の女性を見事に演じていました。
 脇役陣では、パットの父親役を演じたロバート・デ・ニーロは、いうまでもなく渋い演技で見させましたし、意外に印象に残ったのはパットの入院仲間のダニーを演じたクリス・タッカー。なぜか、何度もうまく病院を抜け出してしまうユニークな男を演じています。
フライト(25.3.1)
監督  ロバート・ゼメキス
出演  デンゼル・ワシントン  ドン・チードル  ケリー・ライリー  ジョン・グッドマン  ブルース・グリーンウッド
    メリッサ・レオ  ブライアン・ジェラティ  タマラ・チュニー  ナディーン・ヴェラスケス  ジェームズ・バッジ・デール
 ウィップは、優秀なパイロットであったが、性格破綻者で、アル中でその上薬物も使用し、妻からは愛想を尽かされ離婚されていた。ある日の飛行中、機体が異常を示し、墜落するところを見事に強行着陸を行い、多くの乗客の命が救われるため、一躍彼はヒーローとなる。しかし、その後彼の体内からアルコールと薬物が検出されたことから、一転彼は責任を問われることとなる。
 日本ではパイロットは飛行機に乗る前にアルコール検査をすることが当たり前ですが、アメリカではやらないのでしょうか。そのうえ、眠気覚ましに麻薬も常用しているのですから、ウィップのようなパイロットの飛行機に乗るかと思うと、恐ろしいですよね。しかし、そんな事実も有能な弁護士の手に掛かれば、なかったことになってしまうのですから、これでは有能な弁護士を雇える金持ちだけが得する嫌な世の中です。まあアメリカらしいといえばアメリカらしいのですが。
 デンゼル・ワシントンが、本当に嫌な男・ウィップを演じています。「トレーニング・デイ」での悪徳警官役もそうでしたが、単なる善人だけでなく、悪人も見事に演じることができる名優です。安心して観ていられます。
 ラスト、彼を訪ねてきた息子が彼にある一言を言います。父親として、こんなに嬉しい言葉はありません。同じ父親として、思わず涙が浮かんできてしまいました。
相棒X-DAY(25.4.7)
監督  橋本一
出演  川原和久  田中圭  国仲涼子  別所哲也  木村佳乃  宇津井健  戸次重幸  深水元基  関めぐみ
     矢島健一  田口トモロヲ  鈴木杏樹  片桐竜次  小野了  神保悟志  六角精児  原田龍二  山西惇
     山中崇史  大谷亮介  水谷豊  及川光博
 スピンオフ作品も入れれば、相棒シリーズ4作目の映画化です。
 今回の“相棒”は杉下右京と甲斐享ではなく、強面の捜査一課刑事・伊丹と、サイバー犯罪対策課の岩月刑事です。3月までテレビ朝日で放映していた第11シリーズには、岩月刑事も登場していましたが、映画は、時系列的にはテレビシリーズの前の話のようです。
 銀行員の中山がビルの屋上から転落死します。彼は生前、ネットに何らかの情報を流していたことがわかりますが、銀行側はその情報が何かを隠そうとし、さらには財務省から捜査に圧力が掛かります・・・。
 水谷豊さん演じる杉下警部は休暇でイギリスに行っているという設定ですが、ワンシーン登場しますし、何と言っても、杉下警部の前の相棒であり現在は警察庁長官官房付になっている及川光博さん演じる神戸尊も登場するのがシリーズファンとしては嬉しいところです。特命係に異動したい経理の陣川くんも顔を出しますし、木村佳乃さん演じる政治家の片山雛子も重要な役どころで登場するなど、“相棒”のメンバーが総登場です。
 鈴木杏樹さん演じる月本幸子がおかみの居酒屋で伊丹刑事が飲んでいるのもファンとしては嬉しいシーンです。ぜひ今度は杉下警部と伊丹が二人でしんみりと飲むシーンをやってくれないかなあ。
ジャンゴ 繋がれざる者(25.4.7)
監督  クエンティン・タランティーノ
出演  ジェイミー・フォックス  クリフトフ・ヴァルツ  レオナルド・ディカプリオ  サミュエル・L・ジャクソン
     ケリー・ワシントン  ドン・ジョンソン 
 クエンティン・タランティーノ監督作品。
 奴隷として売り飛ばされた妻を捜して、賞金稼ぎのキング・シュルツとともに旅をするジャンゴ。タランティーノ監督らしく、血が派手に飛び散る撃ち合いのシーン満載です。血を見るのが苦手な人は目を背けたくなるほどの残酷なシーンが描かれます。
 主人公のジャンゴを演じたのはジェイミー・フォックスですが、彼以上にこの映画で目立ってしまった二人がいます。
 一人は、この作品でアカデミー賞助演男優賞を受賞したクリストフ・ヴァルツ。本業が歯科医でありながら手っ取り早く金を稼ぐために賞金稼ぎになったキング・シュルツを演じますが、いい味出しています。奴隷制度を毛嫌いする彼が、最後に思わぬ行動をとってしまいます。
 もう一人は、ジャンゴの妻を買った農園主を演じたレオナルド・ディカプリオです。「タイタニック」のときのように単に二枚目を演じていた若い頃と違い、様々な役に挑戦している彼ですが、この作品では本当に憎たらしい悪役を見事に演じています。もう性格俳優と称してあげてもいいでしょう。今回はアカデミー賞にノミネートもされませんでしたが、そろそろ受賞させてあげてもいいのでは。
 時々挿入される音楽が、純粋なアメリカ西部劇というよりは、マカロニ・ウエスタンを感じさせます。だいたい「ジャンゴ」という題名からしてF続・荒野の用心棒]の主人公の名前ですから、タランティーノがマカロニ・ウエスタンを意識していたのは明らかです。「続・荒野の用心棒」でジャンゴを演じたフランコ・ネロもチョイ役で登場していました。
 クランティーノ監督自身もちょい役で登場。見事な死にっぷりを見せます。
舟を編む(25.4.13)
監督  石井裕也
出演  松田龍平  宮﨑あおい  オダギリジョー  小林薫  加藤剛  伊佐山ひろ子  渡辺美佐子  池脇千鶴       黒木華  鶴見辰吾  麻生久美子  浪岡一喜
 2012年の本屋大賞を受賞した、三浦しをんさん原作、同名小説の映画化です。
 物語は、出版社に勤める一人の青年・馬締が、営業から辞書編集部に異動してから辞書を出版するまでを、彼の恋を交えながら描いていきます。
 用例採取といっては、辞書に掲載する語句を収集し、取捨選択して辞書を作っていく過程がおもしろおかしく描かれていきますが、最終的に出版に至るまでに10数年がかかったことを考えると、実際の作業はとんでもなく大変なものなのでしょう。
 大学で言語学を専攻しながらコミュニケーション能力に乏しい馬締を演じたのは松田龍平くん。日頃、斜に構えた雰囲気が真面目な馬締くんをどう演じるのかと興味津々だったのですが、意外にはまっていました。彼以上に役柄にピッタリだったのは、馬締の同僚の西岡を演じたオダギリジョーさん。ちょっと軽い感じの西岡のキャラがこの作品の中で馬締のキャラ以上に目立っていました。香具矢を演じた宮﨑あおいさんは、相変わらずかわいい(すみません、印象としてはこれだけです。)。それと、猫が名演ですよ。
 地味な作品のためか、寝入っている観客もちらほら。この入りではあっという間に上映打ち切りになってしまいそうです。
リンカーン(25.4.20)
監督  スティーブン・スピルバーグ
出演  ダニエル・デイ=ルイス  サリー・フィールド  デヴィッド・ストラザーン  ジョセフ・ゴードン=レヴィッド
     ジェームズ・スペイダー  トミー・リー・ジョーンズ  ハル・ホルブルック  ジャッキー・アール・ヘイリー
     ジャレッド・ハリス  リー・ペイス  ピーター・マクロビー  ウォルトン・ゴギンズ  グレゴリー・イッツェン
 昨年、リンカーンが実はヴァンパイアハンターだったというティムール・ベクマンベトフ監督による突拍子もない映画(「リンカーン 秘密の書」)が公開されましたが、今回は、スティーヴン・スピルバーグ監督による正統派リンカーン映画です。
 第16代アメリカ大統領リンカーンといえば、頭に思い浮かぷのは、奴隷解放を行った大統領であるということと、南北戦争の激戦地だったゲティスバーグで行った「人民の人民による人民のための政治」という演説だと思います。
 この映画でも、当然ゲティスバーグでの演説がメインになるのかなと思ったら、描かれるのはこの演説直後のことからです。すでにリンカーンは大統領になっており、南北戦争もゲティスバ-グの戦いも終わったところから映画は始まります。この演説が目玉だと思っていたので、拍子抜けでした。
 映画は奴隷解放のための憲法修正13条の可決を目指して、多数派工作を行うリンカーン陣営の様子と、自分も戦場で戦いたいと考える長男との親子関係、そして子どもを戦場に出したくない妻との夫婦関係が描かれていきます。清廉潔白という印象が強いリンカーンが、仲間たちに多数派工作を強いるシーンは意外です。
 リンカーンを演じたダニエル・デイ=ルイスは、この役で今年のアカデミー賞主演男優賞に輝いていますから、何も言うこともないでしょう。妻役はアカデミー賞女優であるサリー・フィールドです。長男を演じていたのは、このところ人気のジョセフ・ゴードン=レヴィットでしたが、最初は全然気付きませんでした。特徴的な、ビシッと決めた髪型が、今回はカツラをかぷっていたのでしょうか、いつもと違いましたからね。
 ダニエル・デイ=ルイスに負けない熱演を見せていたのは、奴隷解放を唱える共和党急進派の議員、タデウス・スティーブンスを演じたトミー・リー・ジョーンズです。「メン・イン・ブラック3」では、どこか元気のなさそうな様子だったので、心配だったのですが、この作品を見ると、それも杞憂でした。助演男優賞をあげてもいいくらいです。
ジャッキー・コーガン(25.4.26)
監督  アンドリュー・ドミニク
出演  ブラッド・ピット  スクート・マクネイリー  ベン・メンデルソーン  ジェームズ・ガンドルフィーニ  レイ・リオッタ
     リチャード・ジェンキンス  ビンセント・カラトーラ  サム・シェパード
 はっきり言って、退屈な作品でした。ただ単にブラッド・ピット演じる殺し屋が、組織の賭博場を襲って金を奪った男たちを殺しまくる映画です。ブラビが製作者のようですが、この作品を製作した理由がわかりません。ブラビのファンしか積極的に見ようとは思わないのでは・・・。暴力的なシーンだけでうんざりです。途中で、ちょっと眠ってしまいました。チケット代がもったいなかった作品。
アイアンマン3(25.4.26)
監督  シェーン・ブラック
出演  ロバート・ダウニーJr  グウィネス・パルトロウ  ドン・チードル  ガイ・ピアース  レベッカ・ホール
     ステファニー・ショスタク  ジェームズ・バッジ・デール  ジョン・ファブロー  ベン・キングズレー
 シリーズ第3弾。今回は、「アベンジャーズ」の戦いから1年後の出来事を描いています。
 アイアンマンの敵役として登場するのは、マンダリンというテロリストと、かつてトニーが冷たい態度をとったが故にトニーに恨みを持つキリアンです。このキリアンとペッパー・ポッツが知り合いのようですが(それも、かつてかなり親しそうだったような雰囲気です。)、どういう関係だったのかが理解できませんでした。見逃してしまったのかなあ。
 今作では、今までの戦いの後遺症なのか、トニーがパニック障害に陥っているというのがおかしい。あの性格のトニーがパニック障害なんてまったく似合いません。それも深刻に描かずにコミカルに描いているので、笑ってしまいました。
 見所は、ラストの戦闘シーン。アイアンマンのパワードスーツが集団で登場するところです。また、ペッパー・ポッツがアイアンマンスーツを着るのも愉快です。グゥイネス・パルトロウも長身なのか、はたまたロバート・ダウニーJrが小さいのか、背もそんなに変わらないので、違和感ありません。
 マンダリンを演じたのはアカデミー賞俳優のペン・キングズレー。やっぱり名優だけあって、思わぬ正体を現すマンダリンをうまく演じます。
 ユーモアも散りばめられているし、そんなに深刻に考えることもなく、楽しめる作品です。ストレス解消にも最適。
図書館戦争(25.4.27)
監督  佐藤信介
出演  岡田准一  榮倉奈々  石坂浩二  栗山千明  田中圭  福士蒼汰  西田尚美  橋本じゅん  鈴木一真
     相島一之  嶋田久作  浪岡一喜  阿部丈二
 有川浩さん原作「図書館戦争」の映画化です。主演はV6の岡田准一くんと榮倉奈々さん。雑誌「ダ・ヴィンチ」紙上で読者による堂上と笠原を演じるとしたら誰という投票で、それぞれ1位を獲った二人が主演ということですから、公開前から期待していました。僕的には、身長差ということからは二人はピッタリですが、堂上はもう少しごつい感じをイメージしていたのですが。岡田くんでは格好良すぎです。ただ、彼は、日頃から格闘技を習っているそうなので、「SP」でもそうでしたが、アクションは見事です。
 栗山千明さんさん演じる柴崎や田中圭くん演じる小牧など、だいたい原作とイメージも同じで、原作ファンとして楽しむことができました。原作と違うのは、稲嶺司令が当初から死んでいる設定だということ。これは、原作者の有川さんが、稲嶺司令は故児玉清さんを想定して書いていたので、他の人には演じて欲しくないとの希望があったためだそうです。児玉清さんは写真での登場となります。代わりに石坂浩二さんが基地司令・仁科を演じます。原作の稲嶺司令同様、車いすということなので、実際は稲嶺司令をイメージした役柄と言えるでしょう。
 図書館に常駐する図書隊という武器を装備した部隊の隊員を描き、戦闘シーンもありますが、有川さんは、言論の自由、表現の自由を守るためには、ただのほほんとしているだけでな<、守るための努力をしなければならないことを、この作品を通して描いているのだと思います。
 戦闘シーンも派手で、原作のファンとしても、かなり楽しめる作品になっています。キャラメルボックスの阿部丈二さん
が週刊「新世相」の記者・折口のアシスタント役で出演していたのもちょっと嬉しい。
藁の楯(25.4.29)
監督  三池崇史
出演  大沢たかお  松嶋菜々子  山崎努  藤原竜也  伊武雅刀  岸谷五朗  永山絢斗  本田博太郎
     余貴美子  高橋和也  
 木内一裕さん原作「藁の楯」の映画化です。時間つぶしに期待せずに見に行ったのですが、意外におもしろく、チケット代の元は取れました。三池監督作品らしく、最初から緊迫感があふれ、最後までスクリーンに目が釘付けでした。
 孫娘を惨殺された財界の大物が、逃走している犯人・清丸を殺害した者に1O億円の賞金を出すという全面広告を新聞に出します。命を狙われた清丸は福岡県警に出頭し、警視庁まで護送されることとなります。護送を担当するのは警視庁捜査一課の刑事、奥村と神箸とSPの銘苅と白岩、そして福岡県警の刑事・関谷の5人。賞金目当てに襲ってくる者から彼らは犯人を守れるのか。残酷な犯行を犯した清丸を守る必要があるのかという銘苅らの心の葛藤を描きながら物語は進んでいきます。
 とにか<、藤原竜也さん演じる清丸が、どうにも憎らしいやつで、殺されても当然という雰囲気をうまく出しています。被害者の身内であれば、殺したいと思いたくなるのもやむを得ない演技です。彼の演技がこの映画を面白くしていると言っても過言ではありません。
 交通刑務所を出てきたばかりの男に身重の妻をひき殺されたという過去を持つ銘苅や小学生の息子を持つシングルマザー の白岩を護衛に付けるというのもミソです。
 私的制裁を許せば、法治国家は成り立たなくなります。この映画のように、金のためなら警察官でさえ、殺人者となりうるのでは、安心して生活していくことができません。私的制裁が許されないため、代わって国家が刑罰という制裁を加えるのでしょうが、最近の刑事裁判では一人殺しただけでは死刑判決はなかなか出ない状況にあり、さらには死刑制度反対の声もある中で、被害者遺族の感情をどう考えるのかという大きな問題があることも、この映画を観ていて想起させられます。
 銘苅を演じた大沢たかおさんは言うまでもなくカッコよかったですが、白岩を演じた松嶋菜々子さんも背が高いのでSP
役がピッタリでした。ショート・ヘアもお似合いです。
L.A.ギャングストーリー(25.5.3)
監督  ルーベン・フライシャー
出演  ジョシュ・ブローリン  ライアン・ゴズリング  ショーン・ペン  ニック・ノルティ  アンソニー・マッキー
     エマ・ストーン  ジョヴァンニ・リビシ  マイケル・ペーニャ  ロバート・パトリック  ミレイユ・イーノス
 1949年のロサンゼルス。当時、ロサンゼルスの裏社会を牛耳っていたギャング、ミッキー・コーエンに戦いを挑んだ警官たちの物語です。
 「L.A.コンフィデンシャル」という今では大物俳優となったラッセル・クロウやケビン・スペイシーが出演した警察内部の腐敗を描いた傑作映画がありましたが、この作品はそれ以前の時代を描いていきます。
 ミッキー・コーエンという巨大な力に対して、警官というバッジを捨てて、挑んでいく6人の男たちがかっこいいです。拳銃の名手、反骨心旺盛なナイフ使い、機械に強い頭脳派、そして拳銃の名手の相棒のメキシコ人と、それぞれのキャラがいいですねぇ。
 でも、だいたい集団で敵に対するパターンの映画は「七人の侍」やそれをリメイクした「荒野の七人」のように7人というのが定番ですが、今回は6人。あと1人加えて7人にしてほしかったですけど。まあ、仲間の人選をしたジョン・オマラ巡査部長の奥さんを入れれば7人ですか。
 ミッキー・コーエンを演じたショーン・ペンが憎たらしいこと。もともと悪人顔のショーン・ペンには、やっぱり、こうした悪役は適役です。それにしても、冒頭の拷問のシーン、手足を両側から車で引っ張ってまっぷたつは凄かったです。
探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点(25.5.11)
監督  橋本一
出演  大泉洋  松田龍平  尾野真千子  ゴリ  渡部篤郎  田口トモロヲ  篠井英介  浪岡一喜  近藤公園
     筒井真理子  矢島健一  松重豊  マギー  池内万作  安藤玉恵  佐藤かよ  徳井優  片桐竜次
 札幌ススキノで探偵を営む“俺”に持ち込まれる事件を描くシリーズ第2弾。今回は東直己さんの描くシリーズ長編第4作「探偵はひとりぼっち」を原作にしています。
 今回“俺”が関わる事件はおかまのマサコちゃん殺し。マサコは素人の手品大会で全国優勝した2日後に死体となって発見されます。バイオリニストの河島弓子は、マサコちゃんが熱心なファンだったとして、“俺”に調査を依頼します。
 バイオリニスト役の尾野真千子さんの関西弁がどうも鼻につきます。正直のところ、尾野さんには深窓の令嬢という雰囲気はないので、似合うと言えば似合っているのですが・・・。やっぱりヒロインは1作目の小雪さんの方が良かったなあ。
 今回も“俺”と高田のコンビは健在(そして高田のボロ車も。あの車は光岡自動車のビュートという車だったんですね)。相変わらず“俺”のピンチの時に遅れてくる高田に大笑いです。ロから先に生まれたような大泉さんとヌーヴォーとした雰囲気の松田龍平くんのコンビが抜群です。このシリーズの成功は、この二人の息のちょっとずれたコンビのおもしろさにある気がします。
 前作でも“俺”に痛い目にあわされた則天道場の佐山が再登場。今回も“俺”を痛い目にあわせようとして返り討にあいます。あの鼻には大笑いです。桐原組の若頭・相田や両刀使いの松尾も再登場し、こちらも大いに笑わせてくれました。
県庁おもてなし課(25.5.17)
監督  三宅喜重
出演  錦戸亮  堀北真希  船越栄一郎  関めぐみ  高良健吾  甲本雅裕  松尾諭  生田智子  大島蓉子
     石井正則  相島一之  小日向文世
 有川浩さんの「県庁おもてなし課」の映画化です。
 原作は、実際に高知県庁にある「おもてなし課」を舞台に、高知県出身の有川さんが、最近どの県でも流行の観光特使を依頼されたことをきっかけにした一連の出来事をモデルに書かれた作品です。
 映画は2時間ほどの上演時間の中に収まるように作られるので、原作すべてを映画で描くことはできず、どうしても描き足りない部分が出てくるのもやむを得ないかもしれません。原作を読んだばかりで、はしょられた部分の経過もわかるので、戸惑いはなかったのですが、原作を読んでいない人には展開が早すぎた気がします。
 特に、主人公の錦戸くん演じる掛水と堀北真希さん演じる臨時職員の多紀ちゃんとの心のつながりはもう少し丁寧に描いてもらいたかったなと思います。あれでは、何だか多紀もすぐに掛水を好きになってしまったみたいです。
 基本的に原作どおりに描かれていたのですが、原作にはなかったラストのテレビのシーンは余計です。主役のジャニーズの錦戸くんの見せ場を作りたかったのでしょうけど。逆に原作どおりでなく、なるほどと思った演出は、冒頭パンダ誘致論を説く清遠の話を聞きに来た、顔は写さず名前だけ写った人物が、ラストに某人物として登場したところです。あの驚きは、活字では表すことができず、映画ならではのものですね。
 多紀ちゃんを演じた堀北真希さん、かわいいですよねえ。ますます綺麗になった気がします。あと、清遠佐和役の関めぐみさんは気の強さが表情に出ていて、役柄にピッタリでした。
リアル~完全なる首長竜の日~(25.6.2)
監督  黒沢清
出演  佐藤健  綾瀬はるか  中谷美紀  オダギリジョー  染谷将太  堀部圭亮  松重豊  小泉今日子
 「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した乾緑郎さんの同名小説の映画化です。黒沢清監督作品であることと、綾瀬はるかさんが主演ということ(笑)に惹かれて観に行ってきました。
 原作では漫画家の女性と意識不明の弟という設定でしたが、映画では、意識不明なのは綾瀬はるかさん演じる漫画家の女性で、佐藤健くん演じるその恋人が彼女の意識の中に入っていく(映画の中では「センシングする」と言っています。)という設定に変わっています。そのため、恋愛映画という面がかなり強くなっています。
 まあ、原作は読んでいましたが、まったく忘れていたので、映画はまっさらなままで楽しむことができました。でも、「実は・・・」という一番の驚きの設定は、ああいう小説ではよくあるパターンなので、原作を読んでいない人でも、途中で気付いてしまうかもしれません。
 黒沢清監督ですから、彼の演出で原作と異なる部分がかなりあるのではないでしょうか。中谷美紀さんが演じる相原医師が、耳元で意識に囁きかけるなんてシーンあったかなあ・・・全然覚えていません。それに、首長竜が襲いかかるシーンなんて、さすがに映画でなければ描くことができませんよね。
 小泉今日子さんがチョイ役で出ていたのにはびっくりです。
オブリビオン(25.6.2)
監督  ジョセフ・コシンスキー
出演  トム・クルーズ  モーガン・フリーマン  オルガ・キュリレンコ  アンドレア・ライズブロー  メリッサ・レオ
     ニコライ・コスター=ワルドー
 前評判が良かったので、期待して観に行ったのですが、これは期待を裏切らないおもしろさでした。
 地球はスカヴと呼ばれるエイリアンとの戦いで勝利したものの、人類が居住できない環境となり、人類は土星の衛星タイタンヘの居住を計画し、現在、宇宙に浮かぶテットに一時避難をしていた。ジャック・ハーパーは、パートナーのヴィクトリアとともに高度1000メートルに浮かぶスカイタワーを基地にして、地球上に残るスカヴの残党を監視する無人偵察機・ドローンの管理を行っていた。ある日宇宙船が墜落し、現場に向かったジャックが墜落した宇宙船から助け出した女性が、このところ夢の中に出てきた女性であったため、愕然とするが・・・。
 予告編でもパンフレットでも提起されていた、“なぜ、彼は人類のいない地球に残されたのか”という謎が、この映画の一番の大きな謎ですが、それが明らかにされるまで、様々な驚きの事実が出てきて、観ていて飽きません。
 いろいろなSF映画の要素が詰め込まれた作品でもあります。空中戦のシーンは「スターウォーズ」みたいですし、エンパイアステートビルの残骸とか、スーパーボールの競技場跡とかは「猿の惑星」のラストシーンを想起させます。また、最後の戦いの場面はあの映画みたいだなあとか(ネタバレになるので書けませんが)、SF映画好きにとっては、とっても楽しい作品です。ラストもジーンときましたし、これはおすすめです。
エンド・オブ・ホワイトハウス(25.6.8)
監督  アントワーン・フークワ
出演  ジェラルド・バトラー  モーガン・フリーマン  アーロン・エッカート  アンジェラ・バセット  メリッサ・レオ
     ディラン・マクダーモット  アシュレイ・ジャッド  ロバート・フォスター  ラダ・ミッチェル  リック・ユーン
 韓国の首相を招いて会談が行われていたホワイトハウスがアジア系のテロリストによって占拠され、大統領を始め副大統領、国防長官らが人質となる。軍が到着する前に圧倒的な武力によって、ホワイトハウス内のシークレットサービス等は全滅。ただひとり、かつて大統領の護衛を務めていたマイク・バニングだけがホワイトハウス内に潜入する。テロリストの要求は日本海にいる第7艦隊の撤退と、韓国に駐留するアメリカ軍の撤退。しかし、その裏にはさらに大きな狙いが隠されていた。
 以前のアメリカの敵といえばソ連でしたが、今はイスラム原理主義、そして今回のテロリストとなる北朝鮮。確かにロシアというより北朝鮮と言った方が現在の世界情勢を反映していて、絵空事ではない感じです。
 それにしても、9.11事件があった後のことなのに、ホワイトハウスの上空にあんなに簡単に飛行機が進入することができるなんて、実際には考えられないでしょう。韓国も首相の護衛がテロリストだなんて、北朝鮮との緊張状態にある国としては、通常そんなに簡単に政府の中枢に潜り込むなんてできないでしょう。それも1人だけでなく、みんながそうなんてあり得ません。
 そういう点では荒唐無稽ですが、映画としては観ていておもしろいです。バニングは、いわば、「ダイ・ハード」のマクレーン刑事みたいです。隠れながら一人一人敵を倒して行きます。2時間飽きさせません。
グランド・マスター(25.6.11)
監督  ウォン・カーウァイ
出演  トニー・レオン  チャン・ツィイー  チャン・チェン  チャオ・ベンシャン  マックス・チャン  ワン・チンシアン
     シャオ・シェンヤン  ソン・ヘギョ
 実在した3人の中国拳法の達人を描いた作品です。中心に描かれるのは、トニー・レオン演じる葉問(イップ・マン)です。彼は「燃えよドラゴン」のブルース・リーの師匠で知られる人物です。2人目はチャン・ツィイー演じるゴン・ルオメイ。形意拳と八卦掌の達人である父親から八卦掌を教えられた女性。彼女は父親が葉問を認めたことに不満を持ち、彼に試合を挑みます。その試合中に二人の間に心惹かれるものが生まれ、後日、葉問は彼女の故郷に会いに行くことを約束します。トニー・レオンとチャン・ツィイー、美男、美女ですねえ。でも、葉問の奥さんも、チャン・ツィイーの美しさとはまた別の美しさを持った女性です。葉問が羨ましい。
 結局、戦争のため、イップ・マンの財産は日本軍に没収され、彼はルオメイに会いに行くことができなくなります。一方、兄弟子によって父親を殺されたルオメイは、決まっていた婚約を破棄し、復讐を誓います。
 3人目は八極拳の使い手の一線天(カミソリ)。ルオメイによって、日本軍に追われていたところを助けられるという一瞬の出会いはありますが、基本的に葉問やルオメイとはまったく関わりなく、彼の歩みが描かれていきます。どうも、この映画で彼を描く必要があったのかが、いまひとつわかりません。
 カンフーの流れるような格闘シーンは、見ていて美しいと言ってしまうほどです。芸術といってもいいくらいです。美しいと言えば、ほとんど笑わないチャン・ツィイーの美しさには圧倒されます。美しいチャン・ツィイーのカンフーシーンが一番の見所です。
二流小説家(25.6.15)
監督  猪﨑宣昭
出演  上川隆也  武田真治  高橋恵子  片瀬那奈  伊武雅刀  本田博太郎  平山あや  小池里奈
     戸田恵子  黒谷友香  でんでん  賀来千賀子  中村嘉葎雄  佐々木すみ江  今野敏   
 2012年版「このミス」海外部門第1位となったデイヴィッド・ゴードンの「二流小説家」の映画化です。よく日本で映画化権を買うことができたものだと、びっくりです。
 原作は、さすがに第1位を獲得しただけのことはある作品だと納得の1作でした。ということで、犯人は知っているので、謎解きという面の楽しみはないのですが、日本を舞台に移して原作をどのように描いているのかが興味深いところでした。しかし、正直のところ、まったく原作のおもしろさはないと言わざるを得ませんでした。あまりに退屈で、ちょっと、うとうとしてしまったほどです。死刑囚の呉井を演じた武田真治くんのサイコぶりは見るものはありましたが、それ意外はまったく期待はずれ。上川さんは、二枚目ではなく、ちょっとかっこの悪い三枚目という立ち位置でしたが、キャラが立っていません。やっぱりこの作品は、海外で製作された方がよかったのでは。
 「隠蔽捜査」シリーズの作者、今野敏さんが売れっ子作家役でチョイ役で出演していました。
アフター・アース(25.6.22)
監督  M・ナイト・シャマラン
出演  ウィル・スミス  ジェイデン・スミス  ソフィー・オコネドー  ゾーイ・イザベラ・クラヴィッツ
 人類は環境汚染により地球を捨て、新たな星、ノヴァに移住していた。そこには先住の異星人がおり、彼らの送りこんだ人間の恐怖を感じとって攻撃をする「アーサー」という怪物と長い間戦っていた。地球軍の総司令官であるサイファ・レイジは、恐怖をコントロールして「アーサー」と戦うことのできる伝説の兵士。ある日、彼は、宇宙遠征の任務に息子のキタイを連れて出かけたが、途中で事故により、かつて人類が見捨てた地球に墜落する。生き残ったのはサイファと息子のレイジの二人だけ。彼らが助かるためには宇宙船の後部に積まれていた緊急発信機「ビーコン」が必要だったが、後部は100キロ離れたところに落下していた。サイファは骨折をして動けないため、レイジがビーコンを取りに行くこととするが。地球上には危険な生物がうようよし、宇宙船に積み込まれていたアーサーも宇宙船から外に逃げ出していた。果たしてレイジは
無事にビーコンを取りに行くことができるのか・・・。
 ウィル・スミスと奥さんのジェイダ・ピンケット・スミスがプロデューサーに名前を連ねていることからわかるように、この映画は、息子のジェイデン・スミスのために作った映画です。親バカぶりがわかろうというもの。まあ、同じ子を持つ親としてはあまり批判することは止めましょうと思うのですが、一言だけ。異星人と戦うレンジャーになるための試験を受けるまでになっているのに(結局、試験には落ちるにしても)、地球ではやたらヘタレです。ところが、ラストで急に態度が一転、(予定どおり)アーサーを倒してしまうのですが、そんな簡単に人間変わるの?と思ってしまいました。まあいいか・・・。
 監督がM・ナイト・シャマランだったのには、びっくり。このところ名前を聞かなかったのですが、まだ監督をやっていたのですね。それにしても、自分たちの星なのに、勝手に人間に侵入されてしまったノヴァの先住民はかわいそう。アーサーを使って人間を倒そうとするのは無理もありません。侵略者してきた地球人は彼らにとっては大いに迷惑でしょうね。
アンコール!!(25.7.12)
監督  ポール・アンドリュー・ウィリアムズ
出演  テレンス・スタンプ  ヴァネッサ・レッドグレイプ  ジェマ・アタートン  クリストファー・エクルストン  アン・レイド
     エリザベス・カウンセル  ラム・ジョン・ホルダー
 東京へ観劇で行ったついでに地元で公開されない作品を見ようと、ロコミで評判だったこの作品を選びましたが、期待を裏切らない素敵な作品でした。小品ですが、今年観た映画の中でも今のところベスト3にはいる作品です。
 陽気で外向的な妻マリオンと、頑固者の夫アーサー。マリオンは、老人たちで結成する「年金ズ」というコーラスグループの活動を熱心に行っていたが、合唱コンクールの全国大会を目指す最中、癌が再発してしまい、全国大会を前に亡くなってしまう。アーサーは、それまで以上に人嫌いになり、息子のジェームズにも心にもないことを言ってしまう。
 アーサーを演じたテレンス・スタンプが頑固で人付き合いの悪い不器用な役柄の男にピッタリです。マリオンを演じたのはヴァネッサ・レッドグレイブですが、彼女も年とりましたねえ。背中も丸まって、まさしく老人そのものです(そう、演じているかもしれませんが)。
 見所は、アーサーの独唱シーン。さすがにテレンス・スタンプは歌手ではないので、絶賛というわけではありませんが、マリオンのこと、息子のことを思って歌う姿に感動です。歌い出せないアーサーに孫娘が「おじいちゃん、頑張って!」と声援を送るところで、思わず涙がこぼれてきそうになりました。いやぁ~日本の子役もうまいが、あちらの子役も上手です。また、合唱コンクールの予選で、マリオンがアーサーを思って歌うシンディ・ローパーの「True Colors」のシーンも負けず劣らず感動のシーンです。
 邦題は「アンコール!!」ですが、原題の「SONG FOR MARION(マリオンのために歌う)」の方が、この映画をストレートに表しています。
欲望のバージニア(25.7.12)
監督  ジョン・ヒルコート
出演  シャイア・ラブーフ  コム・ハーディ  ジェイソン・クラーク  ジェシカ・チャスティン  ミア・ワシコウスカ  
     ガイ・ピアース  ゲイリー・オールドマン  デイン・デハーン  ノア・テイラー 
 禁酒法の時代、バージニア州で密造酒製造を行っていたボンデュラント三兄弟を描いた作品です。実話に基づく話だそうです。
 禁酒法時代のギャングといえば、シカゴのアル・カポネが有名ですが、こちらバージニアという田舎町での話です。密造酒製造を商売とするボンデュラント三兄弟と、特別取締官・レイクスとの戦いを中心に描かれていきます。政府の特別取締官といってもアル・カポネに対峙した財務省のエリオット・ネスとは異なって、品行方正というわけではなく、ボンデュラントらに袖の下を要求、それを蹴ったことから争いが始まるのですが、これが凄惨な戦いとなっていきます。
 三兄弟の末弟をシャイア・ラブーフが演じていますが、この末弟がどうしようもないお馬鹿さん。背伸びをして、一人前のロをきき、勝手に行動しては兄たちを危機に陥れます。見ていて腹が立ってきます。それに対し、兄弟をまとめ、沈着な行動を見せる二男のフォレストがかっこいい。最初は、彼が長男かと思ってしまいました。喉を切られたり、銃弾を体に何発も撃ち込まれたりしながら、死にません。喉を切られた場面では、あんなに血が出たのに死なないのはおかしいだろう!と思ってしまいますけど。演じるのは、トム・ハーディです。「ダークナイト・ライジング」のときとはまったく違う端正な顔立ちを見せてくれます。
 一方、特別取締官レイクスを演じたのが、「L.A.コンフィデンシャル」「メメント」のガイ・ピアース。見事に冷淡で異常な男を演じています。女優陣は、「ゼロ・ダーク・サーティ」のジェシカ・チャスティンに「アリス・イン・ワンダーランド」のミア・ワシコウスカ。そして少ない出番でしたがゲイリー・オールドマンも出演するといった豪華出演陣でした。
 G15ということで、残酷な殺しのシーンもあるので、血を見るのが嫌な人はご用心。
ベルリンファイル(25.7.27)
監督  リュ・スンワン
出演  ハ・ジョンウ  ハン・ソッキュ  チョン・ジヒョン  リュ・スンボム  イ・ギョンヨン
 「シュリ」のハン・ソッキュ、「チェイサー」、「哀しき野獣」のハ・ジョンウ、そして「猟奇的な彼女」、「僕の彼女を紹介します」のチョン・ジヒョン共演のスパイ・アクション映画です。
 韓国映画ですが、舞台はドイツのベルリンです。最初は話を理解するのが難しいです。映画は、ロシア人ブローカー、アラブの組織、北朝鮮の情報機関員との間の武器売買の交渉の席から始まりますが、なぜかその場面を韓国の情報機関が隠しカメラで見ており、さらには途中でイスラエルの情報機関モサドが乱入してくるという、何が何だかわからない冒頭場面でした。年配のおじさん、おばさんの観客がほとんどだったのですが、上映終了後「いったいどういうことなのか、わからなかった」との声が聞かれました。物語は、キム・ジョンウン体制になった以降の北朝鮮の権力闘争が根底にあるのですが、確かに、北朝鮮や韓国の情報機関はともかく、CIAやモサド、さらにはアラブの組織まで登場してきては、ややこしいですよね。
 相変わらず、韓国映画のアクションは日本映画以上のものがあります。見ていて迫力あります。それにしてもハン・ソッキュも年とりました。「シュリ」のときは格好良かったのですがねえ。今ではすっかりおじさんです。
 この映画を見ようと思った理由の一つが、ハン・ソッキュの妻役でチョン・ジヒョンが出演しているからでした。「猟奇的な彼女」や「僕の彼女を紹介します」の頃は、かわいらしい感じの女優さんでしたが、あれからIO年ほどが過ぎ、年齢を重ね、かわいい可憐なだけの女優さんではなくなりました。今回、最後まで可憐な笑顔は見ることができませんでした。残念。
31年目の夫婦げんか(25.7.27)
監督  デヴィッド・フランケル
出演  メリル・ストリープ  トミー・リー・ジョーンズ  スティーヴ・カレル
 メルリ・ストリープ、トミー・リー・ジョーンズ共演の31年目の結婚生活を迎えた夫婦の話です。
 子どもたちは既に家を出て独立し、夫婦二人だけの生活の中で、会話もほとんどなく、毎日が同じことの繰り返し。そんな夫婦生活に疑問を感じたメルリ・ストリープ演じる妻のケイは夫婦二人でのカップル集中カウンセリングに申し込みます。嫌々ながらトミー・リー・ジョーンズ演じるアーノルドも同行しますが・・・。
 映画の内容から、観客は年配の人ばかり。特に夫婦で見に来ている方も多かったです。内容は倦怠期になった夫婦生活をどう若かったときのように戻すことができるのかを描きますが、スティーヴ・カレル演じるフェルド医師が赤裸々に夫婦のセックスのこととかを聞きますので、夫婦で見に来ている方はちょっと気恥ずかしいかもしれません。
 入場前のロビーで見たポスター(?)の中に、決して真似しないようにとの警句がありましたが、あんなこと日本の映画館で行ったら警察に捕まってしまいます。メルリ・ストリープのような大女優がよくあんなことやりましたねえ。ある意味、さすが大女優というべきでしょうか。
 アーノルドを演じたトミー・リー・ジョーンズですが、「メン・イン・ブラックⅢ」のときは、元気のない感じで心配したのですが、最近の「リンカーン」、「終戦のエンペラー」で、元気なところを見せてくれています。この作品でも頑迷な夫を見事に演じています。
 さてさて、二人のアカデミー賞俳優が共演しているとはいえ、この映画、日本の老年夫婦に受け入れられるでしょうか、気になるところです。
ペーパーボーイ 真夏の引力(25.7.27)
監督  リー・ダニエルズ
出演  ザック・エフロン  ニコール・キッドマン  マシュー・マコノヒー  ジョン・キューザック  メイシー・グレイ
     スコット・グレン  デヴィッド・オイェロウォ  ニーラ・ゴードン  ネッド・ベラミー
 舞台は1969年のフロリダ。ジャックは問題を起こして大学を中退し、今は父親が発行する地元新聞の配達を行っていた。そんなある日、嫌われ者の保安官の刺殺事件の犯人として逮捕された男が冤罪ではないかとの声が上がり、取材のため、新聞記者の兄が戻ってくる。ジャックは兄の取材の手伝いをすることとなるが、やがて犯人の恋人であるシャーロットに心奪われていく・・・。
 公開初日に観に行ってきました。映画サイトでの前評判がよかったせいでしょうか、ほぼ満席状態の人気でした。しかし、見終わった感想といえば、物足りなかったというのが正直なところです。内容は簡単に言ってしまえば、ザック・エフロン演じるジャックが兄の仕事の手伝いをする中で、犯人の恋人であるニコール・キッドマン演じる年上の女性に恋し、苦い体験をするという、ただそれだけの話です(ただそれだけといっても、悲惨な結果になってしまうのですが)。
 ミステリーと謳われていたので、期待したのですが、結局謎解きの話はほとんどありませんでした。最後もあっさりと終わりすぎです。
 犯人を演じるのは、ジョン・キューザックです。この人、どうも変な役が多いですね。童顔ですがサイコな役柄がピッタリです。
 60年代といえば、まだ黒人差別があった時代ですし、その上、舞台が南部のフロリダですから、なお一層その傾向は強かったと思いますが、映画の中でもそれを表すシーンが登場します。このあたり、「プレシャス」の監督らしいところでしょうか。
ローン・レンジャー(25.8.2)
監督  ゴア・ヴァービンスキー
出演  ジョニー・デップ  アーミー・ハマー  トム・ウィルキンソン  ヘレナ・ボナム=カーター  バリー・ペッパー
     ヲリアム・フィクトナー  ジェームズ・バッジ・デール  ルース・ウィルソン
 「ローン・レンジャー」といえば、昔のテレビドラマを見ていた記憶はないのですが、思い浮かぶのは、「ウィリアム・テル序曲」のメロディーです。なぜか、「ハイヨー!シルバー」の掛け声とともに馬で走るローン・レンジャーのバックに流れるこの音楽が今でも記憶に残っています。テレビ放映されていたときはまだ物心つく前だったはずなのに、どこで見ていたのか不思議です。今回の映画でも「ハイョー!シルバー」の掛け声とともに、やっぱり流れましたよ。聞いていると不思議と心が高揚します。
 かつて自分が子どもだった頃、目の前の懐中時計に心奪われて、銀のあり場所を二人組の男に話してしまったが故に、ロ封じで部族皆殺しにされてしまったトント。レンジャーの兄を無惨に殺されてしまった検事のジョン・リード。兄とともに殺されるところを、トントによって蘇ったジョンは、ロ-ン・レンジャーとして、兄とそしてトントの敵であるブッチ・キャヴェンディッシュを追います。
 単なるヒーローものでな<、ユーモアも満載で、大いに笑わせてくれます。映画評で笑いがわからない部分もあるようなことが書かれていたのですが、そんなことはありません。十分楽しませてくれます。
 ジョニー・デップがローン・レンジャーではな<、トントを演じるところがミソです。派手な顔塗りと頭にカラスの死骸という突飛なメイクが、いかにもジョニー・デップらしいです。相変わらず独特なキャラを演じますねえ。一方ローン・レンジャーを演じるのは端整な顔立ちのアーミー・ハマー。ジョニー・デップとのコンビも抜群、続編が期待できそうです。
パシフィック・リム(25.8.9)
監督  ギレルモ・デル・トロ
出演  チャーリー・ハナム  イドリス・エルバ  菊池凛子  チャーリー・デイ  ロブ・カジンスキー  ロン・パールマン     マックス・マティーニ  クリフトン・コリンズJr.  バーン・ゴーマン
 海底で異次元と繋がった通路から“かいじゅう”が出現して世界各地の都市を襲います。世界は力を合わせ、“かいじゅう”に対抗するため、人間が操縦するロボット(イェーガー)を開発し、 “かいじゅう”に戦いを挑みます。
 もうこれは完全に「ゴジラ」をはじめとする日本の怪獣映画と、日本のロボットアニメヘのオマージュとしか言いようがありません。だいたい、出てくる巨大生物は、“かいじゅう”と呼ばれていますし、付ける名前も、「オニババ」、「ライジュウ」、「オオタチ」なんて笑ってしまうような日本名もありますからね。人間が操縦するロボットも、古くはマジンガーZやエヴァンゲリオンをモデルにしたといってもいいでしょう。監督は相当日本の特撮やアニメが好きなようです。
 この作品は、イェーガーのパイロット役で出演する菊池凛子さんの子どもの頃を芦田愛菜ちゃんが演じることでも話題になりましたが、実際の出演シーンはほんのわずか、それも泣き叫んでいるシーンがほとんどです。相変わらず泣く演技はうまいですが、それほど見るべきものがあるといったものでもありません。
 イェーガーの操縦士を決めるために棒術での格闘シーンがあります。なぜにロボットの操縦に棒術と思ってしまいます。このあたり、監督が好き放題やっていますね。
 お決まりの自己犠牲の泣けるシーンもあり、ストレス発散としては最適な映画です。有名俳優は出演していませんが、中ではロン・パールマンが怪演。きちっと最後まで席を立たずに見てください。
ワールド・ウォーZ(25.8.10)
監督  マーク・フォスター
出演  ブラッド・ピット  ミレイユ・イーノス  ジェームズ・バッジ・テール  ダニエラ・ケルテス  マシュー・フォックス
     デヴィッド・モース  ファナ・モコエナ  アビゲイル・ハーグローヴ  スターリング・ジェリンズ  ルディ・ボーケン
     ファブリツィオ・ザッカリー・グイド
 ブラッド・ピット主演のゾンビ映画です。
 世界中でウィルスが原因らしいゾンビ化現象が蔓延。感染している人に噛まれると、わずか12秒でゾンビ化するという恐ろしい事態になる。ブラビ演じるジェリー・レインは元国連の調査員。かつて世界の紛争地域等で調査を行っていたヴェテラン調査員だったが、今は家族との生活のため、調査員を辞めていた。アメリカ大統領も死亡するという状況の中、家
族の安全と引き替えに感染源をつきとめるためにウィルス学者に同行することになったが・・・。
 最近のゾンビは、昔みたいにのんびりとふらふら歩くゾンビではなくなりましたが、この映画のゾンビはその中でも最速です。これでは到底逃げ切ることができません。普段は休眠状態で、いわゆる旧来のゾンビの動きですが、音に反応するや、いっきに休眠状態から覚醒、人を襲い始めるというのですから、これは怖いです。予告編では、人の体を踏み台に壁を次々とよじ登っていく衝撃的な映像がありましたが、ストーリーがわかる前はいったい何だろうと思っていたのですが、あれはゾンビだったんですね。
 ブラビは解決策を求めて、韓国からイスラエル、さらにはイギリスヘと渡りますが、どんな危機にも死にません(主人公だから当たり前ですが。)。ゾンビ映画ですが、他と違って、内臓が飛び散るとか、ゾンビが人肉を食べるとかといったグロテスクな描写はありません。ブラビファンの女性が見ても大丈夫です。もちろん、顔は怖いですし、襲いかかってくるシーンはのけぞってしまいますけど。でも、ゾンビ映画としては楽しめます。
スタートレック イントゥ・ダークネス(25.8.16)
監督  J.J.エイブラムス
出演  クリス・パイン  ベネディクト・カンバーバッチ  ザッカリー・クイント  ゾーイ・サルダナ ブルース・グリーンウッド
     ジョン・チョウ  アリス・イヴ  カール・アーバン  アントン・イェルチン  サイモン・ペッグ  ピーター・ウェラー 
 J.J.エイブラムス監督による新スター・トレックシリーズ第2弾です。
 冒頭は完全にレイダースヘのオマージュですね。原住民の宝を盗んで(レイダースと違って、こちらは理由があるのですが)、原住民に追われるところから始まります。レイダースのインディ・ジョーンズは水上飛行機で逃げますが、こちらは海の中に潜んでいたエンタープライズ号での脱出です。
 ある未開の星の火山活動を抑えるための作戦で、カークは司令部の命令に背いたため、エンタープライズ号の艦長から副官に降格され、副官のスポックも他の艦へ異動になってしまう。そんなとき、宇宙艦隊資料保管庫が爆弾によって破壊され、犯人と目された元艦隊士官ジョン・ハリソンについて協議をしている最中、会議室がジョン・ハリソンによって銃撃を受け、エンタープライズの艦長となったパイク提督が死亡、再びカークは艦長として、スポックは副官としてジョン・ハリソン逮捕に、彼の逃げた惑星連邦と敵対するクリンゴン帝国の母星クロノスに向かう。
 今回、注目されているのが、悪役のジョン・ハリソン(カーン)を演じているのが、テレビシリーズの名探偵ホームズの
ホームズ役のベネディクト・カンバーバッチということ。僕自身はそんな二枚目とも思えないのですが、人気あるようです
ね。とにかく、カンバーバッチのキャラが凄いですね。冷静な顔をして人を殺したり、逆にもの凄い表情になったりと、目を離せません。彼のキャラで引っ張った作品といっても過言ではありません。
 テレビシリーズのカークと違って、こちらのカークはまだ若いせいか、感情をコントロールできず、捕まえたジョン・ハリソンを殴りつけたりします。さらにジョン・ハリソンとの戦いの中で、いつも冷静沈着なスポックが感情を乱したりもするので、ちょっと見物です。
 パンフレットにありましたが、この映画にはテレビシリーズへのオマージュや色々な伏線、前作絡みのギャグが数多く含まれており、特にファンには楽しい1作になっているようです。
ホワイトハウス・ダウン(25.8.17)
監督  ローランド・エメリッヒ  
出演  チャニング・テイタム  ジェイミー・フォックス  マギー・ギレンホール  ジェイソン・クラーク  ジョーイ・キング
     リチャード・ジェンキンス  ジェームズ・ウッズ  ニコラス・ライト
 先頃上映された「エンド・オブ・ホワイトハウス」で、北朝鮮のテロリストによってホワイトハウスが乗っ取られましたが、今年はホワイトハウスにとっては災難の年のようで、この映画でも、ある策略によりホワイトハウスが乗っ取られます。閉じこめられた大統領を助けるのは、たまたまホワイトハウスにシークレット・サービスの採用面接に来ていた議長の護衛艦のジョン・ケイル。採用面接で不合格となり、政治大好きの娘とともにホワイトハウス見学をしていたときに騒動に巻き込まれます。ホワイトハウスの護衛が次々と倒される中、大統領とともに、脱出を試みます。
 「エンド・オブ・ホワイトハウス」の二番煎じかと思いましたが、これが意外とおもしろいです。この映画をおもしろくしたのは、ジョンの娘・エミリーの存在です。政治オタクでジェームズ・ソイヤー大統領の大ファン。元妻と暮らしている娘とうまく関わりたいと思っているジョンですが、なかなかうまくいきません。この辺りは、よくある父と娘のパターンですね。
 そんな彼女が犯人たちをスマホで撮影してブログにアップしたりして、犯人たちの正体判明に一役買います。大統領にあることをさせるため、犯人が彼女に銃を突きつけたとき、大統領が彼女に言った言葉を健気にも理解する姿は感動ものです。更に、ラスト、ホワイトハウスを爆撃しようとする戦闘機に向かって彼女が取った行動は、感涙ものです。映画でなければ「いいぞぉ!」とでも叫んでしまうところです。主演のジョン・ケイル役のチャニング・テイタムが霞んでしまう活躍です。
 ジョンが助ける大統領は、オバマ大統領を意識したのでしょうか、黒人大統領で、ジェイミー・フォックスが演じます。ホワイトハウスの見学者の案内役の青年ドニーも、最後頑張りました。
 最後に今回の騒動の黒幕が明らかにされますが、自慢するわけではありませんが、最初からこういう展開になるだろうなとは読めてしまっていました(ほとんどの人がわかるでしょうけど)。それはそれとして、おもしろい。おススメです。
マン・オブ・スティール(25.8.22)
監督  ザック・スナイダー
出演  ヘンリー・カヴィル  エイミー・アダムス  ケヴィン・コスナー  ダイアン・レイン  ローレンス・フィッシュバーン
     ラッセル・クロウ  マイケル・シャノン  アンチュ・トラウェ  アイェレット・ゾラー  クリストファー・メローニ    
 クリプトン星が資源採掘による環境破壊によって滅亡の危機に立たされていた。ジョー=エルは、自然分娩で生まれた自分の息子に希望を託し、地球へと送る。地球に辿り着いた赤ん坊は、ジョナサンとマーサの夫婦に拾われ、クラーク・ケントと名付けられて育てられる。次第に普通の人間とは違う能力が目覚めたクラークは、自分が他の人間と違うことに悩み、自分の使命を探す旅を続けていた。そんなある日、クリプトン星の生き残りのゾッド将軍が、ジョー=エルがクラークに託したある物を追って、地球にやってくる・・・。
 『「スーパーマン」って、こんな話だったっけ?』と思うほど、これまでのスーパーマンとはひと味違った作品でした。今までの「スーパーマン」の中で一番好きな作品になりました。全体的に暗い雰囲気なのは、プロデューサーがクリストファー・ノーランというせいもあるのでしょうか。「バットマン」と同じように自分が普通の人間とは違うと苦悩する人間ドラマでもあります。
 新スーパーマンは、赤いパンツではありません。スーツも見た感じが強そうです。クリプトン星人との戦いのシーンはものすごい迫力で、まったく目が離せません。これで終わりかと思えば、更なる危機といった具合に、これでもかといったように危機が続きます。いやぁ~、のんびり休む間もありません。143分とちょっと長めの上映時間ですが、あっという間でした。2Dで観ましたが、3Dだったらなお一層の迫力になるのではと思います。
 クリプトン星人の副官の女性が美人で、きりっとした顔立ちで好みです(笑)。敵役にピッタリな雰囲気でしたね。
 出演陣が豪華です。スーパーマンの実の父親を演じたのはラッセル・クロウですし、育ての親を演じたのはケヴィン・コスナーとダイアン・レインです。二人とも年とりましたねぇ。特に、ダイアン・レインは、役柄上のせいもあるのでしょうか、化粧もしていないので老けた様子がよくわかります。一方、ケヴィン・コスナーは相変わらず格好いい。理想の父親という感じがよく出ています。
 今までのスーパーマンといえば、正体は内緒、背広の下にスーパーマンのスーツを着て、回転ドアや電話ボックスで変身という印象が強いのですが、今回は最初からデイリー・プラネットの記者であるロイス・レインに正体がばれてしまっています。あの終わり方では続編を作ることができそうですが、どうなるのでしょう?
サイド・エフェクト(25.9.6)
監督  スティーヴン・ソダーバーグ
出演  ジュード・ロウ  ルーニー・マーラ  キャサリン・ゼタ=ジョーンズ  チャニング・テイタム  ヴィネッサ・ショウ
 「サイド・エフェクト」とは、副作用のこと。物語は、精神科医のバンクスがクスリを処方していたエミリーが夫を殺害した事件を契機に、彼が破滅していく様子を描いていきます。
 精神科医のバンクスは、車で駐車場の壁に激突した女性・エミリーの治療にあたったことから、精神的に不安定な彼女の主治医となる。ある日、エミリーの夫が刺殺されたが、彼女がバンクスの処方した新薬で夢遊病となり、その間に夫を刺殺したとの疑いが持ち上がり、バンクスは苦しい立場に追いやられる。
 精神科医のバンクスを演じるのはジュード・ロウ。精神科医が逆に精神的に追いつめられていく様子を熱演します。彼が治療する女性・エミリーを演じているのは、「ドラゴン・タトゥーの女」でリスベット・サランデル役を演じたルーニー・マーラ。「ドラゴン・タトゥーの女」でも激しいベッドシーンを見せていましたが、今回も惜しげなくその体を晒します。 
 エミリーの前の主治医を演じるのはキャサリン・ゼタ=ジョーンズです。まあ可もなく不可もなくといったところですが、相変わらず妖艶です。
 エミリーの夫役でチャニング・テイタムが出演していますが、現在上映している「ホワイトハウス・ダウン」の主人公役と違って、まったく存在感がありません。すぐ退場してしまいましたし。
 監督はスティーヴン・ソダーバーグ。日本では先頃、宮崎駿監督が引退を表明しましたが、スティーヴン・ソダーバーグもこの作品を持って劇場映画から手を引<と公言しているそうです。本当であれば、ある意味記念すべき作品となりますが、サスペンスとしてはいまひとつです。
許されざる者(25.9.14)
監督  李相日
出演  渡辺謙  佐藤浩市  柄本明  柳楽優弥  忽那汐里  小池栄子  近藤芳生  國村隼  遠藤賢一
     小澤征悦  三浦貴大  
 クリント・イーストウッド監督・主演でアカデミー賞作品賞受賞作のハリウッド映画のリメイクです。舞台をアメリカから北海道へ変えての作品です。
 ときは江戸から明治への移行の時代。北海道まで執拗に官軍に追われた幕府軍の兵士、「人斬り十兵衛」こと釜田十兵衛は、追っ手を倒し、北海道の地に隠れます。時が経ち、農民として隠れ住んでいる十兵衛の元に、かつての仲間の馬場金吾が、女郎の顔を切り刻んだことにより、女郎たちが賞金をかけた二人の男を倒す手助けを求めて、訪ねてきます。亡き妻と二度と人殺しはしないと約束した十兵衛でしたが、極寒の地で作物も収穫できず、二人の子どものために賞金目当てに金吾の誘いに応じます。
 「七人の侍」や「用心棒」が西部劇にリメイクされましたが、今回は逆。パンフレットに書かれていることによると、イーストウッドと主役の十兵衛を演じた渡辺謙さんとの信頼関係がイーストウッドの許可を得る大きな理由だったようです。オリジナルは観ていないのですが、、イーストウッド役を渡辺謙さんが演じるのはピッタリな感じです。ラストの斬り合いは鬼気迫るものがあります。
 一方、敵役の大石一蔵を演じているのは、佐藤浩市さん。彼がまたうまいです。渡辺謙さんのどちらかというと抑えた演技に対して、アクの強い演技で強烈な印象を残します。女郎を演じた小池栄子さんもなかなか印象に残る役でした。
エリジウム(25.9.20)
監督  ニール・ブロムカンプ
出演  マット・デイモン  ジョディ・フォスター  シャールト・コプリー   ワグネル・モウラ  ウィリアム・フィクトナー
     アリス・ブラガ  ディエゴ・ルナ
 2154年。地球は人口増加と環境汚染により、スラム化し、超富裕層は地球から400キロ離れた上空に浮かぶスペースコロニー・エリジウムに移り住んでいた。そこではどんな病気も治療できる医療ポッドがどの家庭にもあり、平均寿命が100歳以上で快適な生活が約束されていた。地上で病気を抱える人はどうにかエリジウムに行きたいと宇宙船で不法に侵入を試みるが、エリジウムの防衛長官・デラコートの命令によって、冷酷にも撃ち落とされていた。ロボットの製造工場で働くマックスは、工場での事故で余命5日の宣告を受け、エリジウムに行くことを決意する。
 評判を呼んだ「第九地区」の監督、ニール・ブロムカンプの作品です。スラム化した乾いた砂漠のような地球の雰囲気が「第九地区」に似ています。設定としてもどこかで聞いたことのある話です。あまり新鮮さは感じられません。
 しかし、「第九地区」では無名の俳優ばかりでしたが、今回は、主役のマックス役にはマット・デイモン、デラコートにはジョディ・フォスターといった大物俳優が出演しています。特に、ジョディ・フォスターが悪役を演じるのは珍しいです。でも、役柄より目についたのは、ジョディ・フォスターの足の向こうずねの裏の筋肉です(笑)。相当鍛えていそうです。マット・デイモンもこの作品ではスキン・ヘッドにして、これまでと異なるイメージに挑戦しています。また、「第九地区」の主人公役だったシャールト・コプリーが今回は悪役を演じています。「第九地区」のときは、細身な頼りなさそうな印象だったのですが、今回は髭ぽうぽうのしっかり悪役面をしています。
 ラストは予想がつく終わり方で、インパクトとしてはいまひとつでした。
あの頃、君を追いかけた(25.9.21)
監督  ギデンズ・コー
出演  クー・チェンドン  ミシェル・チェン  スティーブン・ハオ  イエン・シュンユー  ジュアン・ハオチュエン
     ツァイ・チャンシエン  フー・チアウェイ
 落ちこぽれの男の子と優等生の女の子の恋を描くという、ストーリー自体はありふれたものですが、これが意外に惹きつけられます。
 コートンは高校生の男の子。仲のいい5人組でいつもお馬鹿なことをするのが楽しい青春まっただ中。今日も女性教師を妄想の対象にオナニーをして、叱責される。教師は優等生のチアイーに対し、コートンの面倒を見るようにと言って、コートンをチアイーの前の席にする。
 冒頭から下ネタで若いカップルで観るにはちょっと恥ずかしいですが、これが明るくてイヤらしさが感じられません。僕らのようなおじさんたちには観ていて、若かったあの頃を思い起こさせてくれる作品です。観客も若者よりも年配の人が多かったところをみると、僕のように青春時代を思い起こしたくて見に来ている人も多かったのでしょう。欧米映画と違って、台湾の高校にも日本の高校のように制服があるということも自分に置き換えて観ることができた原因でしょうか。
 後ろの席からコートンを振り向かせるためにチアイーが青いペンでつついたあとが残るワイシャツが、またいいんですよねえ。
 また、コートンたち台湾の若者がスラムダンク等の日本の漫画やAVに夢中になる様子が描かれますが、日本の文化ってすごいことが改めて認識させられます。日本のAVを見てオナニーするシーンには爆笑です。
 シェン・チアイーを演じたミシェル・チェンは、あとでパンフレットを見たら、なんと年齢が台湾での公開時には既に30歳近く。とてもそんな年齢には思えませんでした。びっくりです。笑顔がかつてアイドルで今は女優の三浦理恵子さんに似ています(彼女をちょっとふっくらさせた感じです。)。
 単なるベ夕な恋愛ものにならなかったのは、ラストの思いがけない終わり方によるところが大きいです。最高のラストです。
江ノ島プリズム(25.9.21)
監督  吉田康弘
出演  福士蒼汰  野村周平  本田翼  未来穂香  吉田羊  赤間麻里子  西田尚美  
 修太、朔、ミチルの三人は幼い頃からいつも一緒だったが、心臓に欠陥を抱えていた朔は2年前、高校2年生のときに心臓疾患で亡くなっていた。朔の3回忌で朔の家に行った修太は、そのままになっている彼の部屋で「君もタイムトラベラー」という本を見つけ、持ち帰る。疑いながらも、本の付録の時計を腕にはめ、過去に戻ることを念じると、そこは2年前だった。
 修太と朔に黙ってイギリスに留学していくミチルを駅に追いかけていった際に、持病の心臓疾患で亡くなった朔を助けようと、修太は何度もタイムトラベルを試みるが・・・
 NHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」ですっかり人気者になった福士蒼汰くんが主人公の修太を演じます。なぜ、おもちゃのような腕時計によってタイムトラベルができるのか、なぜそれが朔の部屋にあったのかということはまったく説明がされていません。あまり、難しいことは考えずに、大切な親友のために自分のことを犠牲にして行動する修太の姿に感動する青春映画と思えばいいでしょう。
 二人の男の子に一人の女の子となれば、その女の子が恋するのは誰かというのがよくあるストーリーですが、この映画もその辺りは従来の映画を踏襲しています。男って馬鹿ですねえ。
 「時をかける少女」以上に切ないラストでした。
 収容人員約60名というミニシアターで観てきました。福士くんファンの女子高校生たちが、まるでディズニーランドのアトラクションみたいだねというくらいの、かわいい映画館でした。
クロニクル(25.9.27)
監督  ジョシュ・トランク  
出演  デイン・デハーン  アレックス・ラッセル  マイケル・B・ジョーダン  マイケル・ケリー  アシュリー・ヒンショー
 主人公の少年のビデオカメラ、町中の監視カメラ、マスコミのカメラ等々カメラを通した映像で構成された映画。「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」みたいです。無名の監督の無名の俳優を使っての映画でありながらヒットを飛ばしたことから、東京でも2週間限定の公開のようです。残念ながらパンフレットさえ作られていません。
 物語は、アンドリュー、マット、スティーブの大学生3人が森の中の穴の中にあった物体に触れたことから、心で念じるだけで物を動かすことができる特別の力を持つようになることから始まります。最初はその力で他愛もない遊びをしていた3人でしたが、アンドリューがその力で他人を傷つけてしまいます。マットは力を使うルールを作ろうとしますが、アンドリューは自分が食物連鎖の最上位であると考え、しだいに力の使い方がエスカレートしていくことに・・・。
 家では父親から暴力をふるわれ、学校でもいじめの対象になっているアンドリューとすれば、力を使いたくなる気持ちもわからないでもありません。ただ、はっきり言って、学校に行ってもカメラでずっと撮影を続けているアンドリューに対し(カメラのレンズを通さなければ人と対することができない彼に対し)、周りの人たちが嫌悪の気持ちを持つのも無理ないという気がします。今なら「きもい」と言われてしまいますね。
 様々な鬱屈した気持ちが、アンドリューの心のブレーキを外させてしまってからが、低予算映画にしては頑張っています。
謝罪の王様(25.9.28)
監督  水田伸生
出演  阿部サダヲ  井上真央  岡田将生  尾野真千子  高橋克実  松雪泰子  竹之内豊  荒川良々
     濱田岳  松本利夫  中野英雄  六角精児  松尾諭  深水三章  真飛聖  井上琳水  濱田マリ
     嶋田久作  白井晃  小野武彦  岩松了  中村靖日  津嘉山正種  野間口徹  
 「舞妓Haaaan!!!」、「なくもんか」に続く、脚本・宮藤官九郎、主演・阿部サダヲ、監督・水田伸生のトリオによる作品です。
 「謝罪師」(もちろん、こんな職業あるわけありません。)である東京謝罪センター所長の黒島が、やくざへの謝罪から政府間のいざこざでの謝罪まで、謝ることによって様々な難題を解決していく物語です。いくつかのエピソードから成り立っていますが、実はこのエピソード同士がどっかで繋がっているという、絶妙の構成になっています。これは見事ですよ。
 冒頭のエピソードでは、暴力団組長の車に追突してしまった帰国子女の倉持典子に代わって謝罪をする様子が描かれますが、これは導入部。謝罪師黒島の紹介と、あとでこの物語の大きなカギとなる典子が黒島の助手になるところを語る部分です。その後は、セクハラで訴えられた若手社員、息子が傷害事件を起こしたことによる謝罪会見を開くこととなった俳優夫婦(元夫婦)、娘が幼い頃、ふざけていたのを叩いてしまったことを後悔している弁護士、そして最後はマンタン王国の皇太子をそれと知らずに映画のエキストラとして出演させ、肖像権を侵してしまった映画会社の社員の謝罪を、黒島がコーディネートしていく様子を描きます。
 主演の阿部サダヲさんはもちろん、芸達者な役者さんが多数出演。脚本が宮藤官九郎さんに、あれだけの役者さんだ出演していれば面白くないわけがありません。なかでも、岡田将生さんがいいですよ。いつもの真面目な青年の印象を一変させ、セクハラ男で弾けていました。
 土下座の向こう側にある究極の謝罪がアレとは、大いに笑わせてくれました。家に帰ってから、ついつい真似してしまい、家族に呆れられました。ストレス解消に持ってこいの映画です。何も考えずに大いに笑いましょう。
レッドドーン(25.10.5)
監督  ダン・ブラッドリー
出演  クリス・ヘムズワース  ジョシュ・ペック  ジョシュ・ハッチャーソン  イザベル・ルーカス  コナー・クルーズ
     エイドリアンヌ・パリッキ  エドウィン・ホッジ  ブレット・カレン  アリッサ・ディアス  ジュリアン・アルカラス
 1984年に公開された「若き勇者たち」のリメイクです。
 ある朝、砲撃音で目覚めたマットとたまたま休暇で家に帰っていた海兵隊員の兄・ジェドは、空を飛ぶ飛行機と降下してくる落下傘を見る。侵攻してきたのは北朝鮮軍。二人は、山の中に逃げ、一緒に逃げた仲間とともに町に侵攻してきた北朝鮮軍と戦うことを決意する・・・。
 世界一の軍事力を持つアメリカの防衛網がいとも簡単に破られてしまうわけないだろうとの疑問には、新兵器によってアメリカ軍の電子装置が機能マヒに陥ってしまい、その間隙をついて侵攻があったという理由。ありえないだろう!とは思いながらも、今の世の中、すべてが電子機器によって動いていますから、そうでないとは言い切れません。それに、そうでないと話が進みませんし(笑)
 オリジナル版では侵攻してきたのはソ連、キューバ、ニカラグアの共産圏連合軍でしたが、今回はなんと北朝鮮軍(あとで、北朝鮮に手を貸した国が明らかにされます。さすがに北朝鮮だけでアメリカ全土の侵攻なんて無理でしょうね。)。初夏に観た「エンド・オブ・ホワイトハウス」でも北朝鮮がホワイトハウスを乗っ取りましたが、今では西側諸国の敵は北朝鮮のようです。
 戦争ですから愛する者が死んだり、仲間を危険にさらさないために友人や愛する人を犠牲にしたりというようなグッとくるシーンもあります。また、敵側に寝返る者ももちろん出てきます。でも、基本的に、若者たちが銃を取り、侵略者から国を取り戻すために戦う愛国心高揚の映画ですね。
SPEC~結~漸ノ篇(25.11.1)
監督  堤幸彦
出演  戸田恵梨香  加瀬亮  竜雷太  向井理  大島優子  北村一輝  栗山千明  香椎由宇  神木隆之介
     遠藤憲一  三浦貴大  有村架純  城田優  福田沙紀
 テレビ、映画と続いてきたこのシリーズも、ついに最終章となります。最終章「結」は、この「漸の篇」と11月下旬からの「爻ノ篇」の2作に分けての公開です。まとめて1本で公開すればいいのに、商売上手ですねえ。シリーズファンとしては両方観ないわけにはいかないですからね。
 前作のラストで国会議事堂が砂の中に埋もれていたのはどうしてなのかが、この作品と後編の「爻ノ篇」で描かれていくのでしょう。たぶん。そして、前作ラストに登場した白づくめの男 (前作ではクレジットもされませんでしたが、向井理さんが演じます。)が何者なのかも。今作は前半部分だけなので、話の筋がよくわかりません。とりあえず、スペックホルダーを破滅させるシンプル・プランを巡っての戦いが繰り広げられます。北村一輝さんが演じた、死んだはずの吉川が生き返って再登場し、その部下とともに、大いに笑わせてくれます。
 今回、某人物が壮絶な死を迎えるのですが、吉川も生き返ったのだから、今回死んだ(はずの)某人物も後編では実は生きていたということになるかも。また、能のお面をかぶった正体不明の人物が登場しますが、声からすると、あの人ではないかと思うのですが、果たして・・・。何にせよ、後編「爻ノ篇」が待ち切れません。
キャリー(25.11.8)
監督  キンバリー・ピアース
出演  クロエ・グレース・モレッツ  ジュリアン・ムーア  ジュディ・グリア  ポーシャ・ダブルデイ アレックス・ラッセル     ガブリエラ・ワイルド  アンセル・エルゴート
 1976年に公開されたブライアン・デ・パルマ監督の同名作品のリメイクです。
 キリスト教原理主義者の母親により、厳格に育てられてきたキャリー。変わり者といわれ、学校ではいじめの対象となっていた。いじめを見ていただけで何もできなかったスーは、罪滅ぼしに自分のボーイフレンドにキャリーをプロムの夜のパーティーに誘うよう依頼する。今まで男性に誘われたことがなかったキャリーは、心ときめかせ自分で縫ったドレスを着てパーティーに参加するが・・・。
 キャリーを演じるのは、クロエ・グレース・モリッツですが、ちょっと見た感じが幼い感じがします。少しぽっちゃりしていますし、まだまだ女性というより女の子の体型です。まあ彼女の実際の年齢が16歳ですから、無理からぬところがありますが。そういう点では、オリジナルのキャリー役のシシー・スペイセクの方が線が細くて、キャリーのイメージに合っていたのではないでしょうか。それに、クロエ・グレース・モリッツの癖なんでしょうか、大きな鼻の穴をぴくぴくさせるシーンが多すぎて、目がそちらにいってしまいます。鼻が上を向いているのでなおさら目立ちます。
 それにしても、クロエはいろいろな役にチャレンジしますね。今回の超能力者に「モールス」でのヴァンパイア、そして近々公開される「キックアス2」では殺人少女と、普通の女性(女の子)を演じることの方が少ない印象です。
 一方、母親役を演じたのは、ジュリアン・ムーア。あんな結果になったのは、もうこれは完全に母親の責任です。キャリーを押さえつけて育ててきたことが彼女に特殊能力を目覚めさせたのでしょう。自分で頭を壁にぶつけたり、裁縫道具を太ももに突き剌したりと、怖かったですねえ。さすが、ジュリアン・ムーアという演技でした。
グランド・イリュージョン(25.11.9)
監督  ルイ・レテリエ
出演  ジェシー・アイゼンバーグ  マーク・ラファロ  ウディ・ハレルソン  メラニー・ロラン  アイラ・フィッシャー
     デイヴ・フランコ  マイケル・ケイン  モーガン・フリーマン  コモン
 クロースアップ・マジックのアトラス、メンタリストのマッキニー、脱出アーティストのヘンリー、ピックポケットのジャックの4人のマジシャンが何者かの誘いで一堂に会するところから物語は始まる。1年後、「フォー・フォースメン」と名乗り、ラスベガスのステージでマジックを披露する彼らは、観客の1人の取引銀行から金を盗むと宣言し、パリの銀行の金庫から金を盗み観客の頭上にばらまく。逮捕されたものの証拠不十分で釈放された彼らだったが、その後もショーの会場で大金持ちの口座から観客の口座に金を移すというマジックを見せる。彼らの目的はいったい何なのか・・・。
 様々なマジック(「マジック」というより題名にあるように「イリュージョン」と言った方がいいのでしょうか。)を駆使して世間をあっと言わせる彼らに対し、FBI捜査官のディランはインターポールから派遣されたアルマとともに彼らを追います。また、イルージョニストたちの種明かしを商売とするサディアスも同様に彼らを追います。
 映画の中でイリュージョニストたちは観客や警察の目を欺きますが、映画を観ている僕ら観客も見事に騙します。彼らのトリックはどうなっているのか、彼らが犯罪に手を染める目的は何か、そして、映画の最初にフォースメンが集まるときに姿を見せていた人物は何者なのか。さまざまな“なぜ?”“何?”が最後まで興味を失わせずに観客を引っ張ります。
 彼らの目的については、気をつけて観ていると、たぶんあれが根底にあるのだろうなあということが、想像できます。でも、ラストである人物が種明かしをしたときには、「やられた!」と思いました。よくよく考えれば、顔を見せなかった人物の正体はあの人しかいなかったはずなのに・・・。おすすめです。
トランス(25.11.9)
監督  ダニー・ボイル
出演  ジェームズ・マカヴォイ  ヴァンサン・カッセル  ロザリオ・ドーソン  ダニー・スパーニ  マット・クロス
 ゴヤの「魔女たちの飛翔」のオークション会場に強盗が侵入。実は、競売人のサイモンとギャングのフランクが仕組んだものだったが、なぜかサイモンはフランクに反撃し、逆にフランクに殴られ、記憶を失って、絵の隠し場所を忘れてしまう。フランクはサイモンを催眠療法士のエリザベスの治療を受けさせ、記憶を取り戻させようとするが・・・。
 2008年の「スラムドッグ$ミリオネラ」でアカデミー賞作品、監督賞らを受賞したダニー・ボイル監督作品。題名の 「トランス」とは、催眠状態やヒステリーの場合にみられる、意識が通常とは異なった状態のこと。映画の中ではサイモンがエリザベスにより催眠治療を受けるわけですが、これがそもそも大きな謎を産み出していきます。
 正直なところ、ミステリとしての驚きの展開はいまひとつ。観ているうちに、謎が明らかになる前にストーリーの予想がついてしまいます。同日に観た「グランド・イリュージョン」の“やられた!”感が強かったせいか、評判ほどのおもしろさは感じませんでした。出演俳優もフランク役のヴァンサン・カッセルの強烈な印象に比べ、サイモン役のジェームズ・マカヴォイはあまり印象に残りません。エリザベス役のロザリオ・ドーソンのダイナマイト・ボディはすごかったですけど(ゴヤの「裸のマハ」とエリザベスのヌードがあんな話になるとは!)。
 ちなみに映画の中でフェルメールの「合奏」など、現在行方不明になっている絵画の話が出ましたが、問題のゴヤの「魔女たちの飛翔」は現在スペインのプラド美術館で所蔵しており、平成11年の国立西洋美術館で開催されたゴヤ展で来日し、僕自身も実際にこの目で見たことがあります。
清須会議(25.11.14)
監督  三谷幸喜
出演  役所広司  大泉洋  小日向文世  佐藤浩市  妻夫木聡  坂東巳之助  鈴木京香  伊勢谷友介
     中谷美紀  剛力彩芽  浅野忠信  寺島進  でんでん  松山ケンイチ  篠井英介  浅野和之  梶原善
     染谷将太  近藤芳生  戸田恵子  瀬戸カトリーヌ  阿南健治  中村勘九郎  天海祐希  西田敏行
 織田信長が本能寺の変で明智光秀に討たれた後、織田家の跡目を決めるために、清須城で重臣らによって行われた会議の様子を描いた三谷幸喜監督作品です。
 学校で習った日本史では「清須会議」のことは習わなかったので、三谷さんの書いた小説を読んで初めて知りました。史実なので、結論がどうなったのかは明らかですが、その結論に至るまでの経過が、三谷さんですからおもしろおかしく描かれていきます。歴史上では豊臣秀吉が重臣の柴田勝家を押しのけて、天下取りに向けて進んでいくきっかけとなった重要な会議ですが、映画では深刻さはまるでなく、笑いにあふれた作品となっています。監督が三谷さんですから当たり前ですけど。
 柴田勝家役は役所広司さん。戦場では剛毅なのに、信長の娘・お市の方にすっかりのぼせてしまい、重要な会議中でありながらアホな振る舞いをみせる勝家を見事に演じています。一方、勝家の友人で彼を盛り立てようとする丹羽長秀役は小日向文世さん。腕の勝家に対し、頭の長秀と対照的な二人のコンビですが、勝家のあまりのアホさに次第に長秀がついていけなくなるのもわかります。豊臣秀吉を演じたのは大泉洋さんですが、コミカルな役をさせると大泉さんはうまいですね。耳を強調した顔には笑ってしまいます。重要な役であった信長の長男・織田信忠の正室であり、武田信玄の娘である松姫は剛力彩芽さんが演じていましたが、これはちょっと・・・。周りが芸達者であるだけにヘタが目立ちます。逆にうつけ者の織田信雄を演じた妻夫木さんはうまいですね。大いに笑わせてもらいましたよ。
 そのほか、ちょい役でいろいろな役者さんが出演しています。松山ケンイチさんや天海祐希さんなんて、ほんとに短い出演シーンでした。天海さんなんて、最初は全然わかりませんでした。また、「ステキな金縛り」の西田敏行さん演じる更科六兵衛が登場したのは、サービスですね。それにしても、お市を演じた鈴木京香さんや松姫を演じた剛力彩芽さんの眉がなくてお歯黒の顔には怖ろしさを感じてしまいます。
 ストレス解消に、難しいこと考えずに芸達者な役者さんの演技を見て、大いに笑って楽しむことができる映画です。
悪の法則(25.11.16)
監督  リドリー・スコット
出演  マイケル・ファスベンダー  ブラッド・ピッド  キャメロン・ディアス  ハビエル・バルデム  ペネロペ・クルス  
 マイケル・ファスベンダー、ブラッド・ピッド、キャメロン・ディアス、ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルスといった豪華出演陣に、期待して観に行ったのですが、予告編にあった道路に張られた金属の線とそこに猛スピードで走ってくるオートバイのシーンにくるまで上映開始から1時間弱。それまでの前半は思わず眠気を催してしまうほど。
 マイケル・ファスベンダー演じる弁護士が悪事に手を出す理由も、ハビエル・バルデムの演じたライナー、ブラッド・ピッドが演じたウェストリーの役柄もよくわかりません。そもそも、麻薬を巡って、いったいどういう事件が起き、それぞれがどういう立場だったのかがよくわかりませんでした。話がよくわからないのに、肝心の誰が一番の悪者かは、最初から想像ついてしまうという、なんともつまらない状況。その上、登場人物たちはみんな哲学的なセリフを長々と話すし、聞いていても退屈してしまいました。普通、そんな持って回った話はしないだろうと突っ込みたくもなります。
 出演者それぞれのファンが、好きなスターの顔を見に行くだけの映画です。チケット代がもったいなかったと思わされる作品です。
すべては君に逢えたから(25.11.22)
監督  本木勝英
出演  木村文乃  東出昌大  玉木宏  高梨臨  本田翼  倍賞千恵子  時任三郎  大塚寧々  小林稔侍
     市川実和子
 建設会社で被災地での復興に携わっている拓実との遠距離恋愛をしているデザイナーの卵、雪奈。好きなサークルの先輩に片思い中のケーキ屋さんでアルバイトをしている大学生の菜摘。若い頃駆け落ちの約束を恋人にすっぽかされて以来、独身を通しているケーキ屋の女主人・琴子。癌で余命幾ばくもないのために新幹線の運転手を辞めることになった正行とその妻・沙織、長男の幸治の家族。女優になることを夢見て劇団で頑張っていたが、芽が出ず辞めて故郷に帰ることを決心した玲子。そんな玲子が最後に贅沢をしようと入ったレストランで出会ったウェブ・デザイン会社の社長の和樹。玲子が最後に公演する児童養護施設で働く千春と、その施設で母親に捨てられながらもいつか迎えに来てくれることを待っている茜。クリスマスを前に、彼らの恋や家族の愛を描いた群像劇です。
 クリスマスの時期の出来事を描いた群像劇の「ラヴ・アクチュアリー」が大好きで、今回同様な設定に期待して観に行ったのですが、う~ん・・・「ラヴ・アクチュアリー」と比較したのが間違いでした。「ラヴ・アクチュアリー」を観たあとの胸にジ~ンとくる感動は残念ながらありませんでした。可もなく不可もなしといったところでしょうか。
 それぞれのエピソードは、正行が琴子のケーキ屋の常連客であったり、正行の妻・沙織と和樹が姉弟であったり、千春が玲子が最後の上演先の児童福祉施設の職員であったりと、繋がりがあります。
 唯一独立したエピソードになっているのが、この作品の中心ストーリーといっていい拓実と雪奈の遠距離恋愛です。拓実を演じるのは、今大人気の東出昌大くんですが、僕にはどうもぎこちない演技だなあという印象しか持てません(ファンの方、すみません。)。恋人の雪奈役の木村文乃さんもキャラが立つという感じの女優さんではないですしね。ストーリーもありきたりで、二人のエピソードが心に響くものでなかったのは残念です。
 エピソードの中で、僕として一番おもしろかったのは玲子と和樹のストーリーです。最初の出会いが最悪な出会いになってしまったのに、まさかその裏側にあんな秘密があったとは。これはやられました。
SPEC~結~爻ノ篇(25.11.29)
監督  堤幸彦  
出演  戸田恵梨香  加瀬亮  向井理  大島優子  竜雷太  北村一輝  栗山千明  香椎由宇  遠藤憲一
     北大路欣也  神木隆之介  福田沙紀  城田優  田中哲司  安田顕  真野恵里菜  浅野ゆう子
     三浦貴大  佐野元春  石田えり  有村架純  渡辺いっけい  宅間孝行  堀北真希
 「漸ノ篇」を観たとき、前半部分なのでまだ話がよくわからないと書きましたが、後編の「爻ノ篇」を観てもやっぱりよくわかりません。なんだか、話が哲学的になってしまったよう。向井理くんの“セカイ”と大島優子さん演じる“潤”の白づくめの正体も先人類の末裔(?)も、結局何のことやらです。卑弥呼と呼ばれる能面をかぶった人物の正体もよくわかりませんし(誰が演じていたのかは、「漸ノ篇」に登場したときに、すでにその特徴的な声でわかりましたが)。
 シリーズラストとあってか、警視庁の屋上で行われたセカイと当麻との戦いには、死んだはずのスペックホルダーたちが勢揃いして(といっても、伊藤淳史くんは忙しいのか出演していません)お祭り気分を盛り上げます。やっぱり、一(にのまえ)との戦いのところで終了しておけばよかったのにと思うのは僕だけでしょうか・・・。
 友人と観に行った娘が言うには、ラストで男女が話している中に、「ケイゾク」の登場人物の名前が出ていたそうですが、まったく気がつかず。
キャプテン・フィリップス(25.11.29)
監督  ポール・グリーングラス
出演  トム・ハンクス  キャサリン・キーナー  バーカッド・アブディ  バーカッド・アブディラマン  ファイサル・アメッド
     マハト・M・アリ  マイケル・チャーナス  コーリイ・ジョンソン  マックス・マーティーニ  クリス・マルケイ
 「アフリカの角」とは、エジプト、ジブチ、ソマリアから構成され、インド洋と紅海に接するアフリカ大陸東部の地域をいいます。干ばつなどもあって、貧困な地域のため、ソマリアでは漁師も海賊となって、沖合を通る船舶を武力で襲う、いわゆる海賊行為が横行しています。日本の船舶も襲われたこともあり、自衛隊が護衛するということにもなりました。
 この作品は、アフリカの角の海域でソマリアの海賊に襲われ、人質として取られたアメリカ船籍の貨物船の船長が救出されるまでの実話を描いています。船長を演じるのは、2度のアカデミー賞主演男優賞受賞を誇る名優、トム・ハンクス。船員を守って一人人質となる男の中の男にはピッタリです。相変わらず、観ていて安心できます。
 そんなトム・ハンクスに負けず劣らずの熱演を見せていたのはソマリア人海賊のリーダー、ムセを演じたバーカッド・アブディです。実際にソマリア生まれでアメリカに渡ってきた人のようですが、演技はほとんど素人とも言っていい経験なのに、トム・ハンクスを喰う熱演を見せます。                   
 最終的には海軍の特殊部隊シールズが登場してくるのですが、彼らの体つきの凄いことといったら、びっくりです。これを見ただけでやせ細ったソマリア人が勝てるわけがないと思ってしまいます。上映時間2時間14分、緊迫感の中で眠<なることはありません。
ゼロ・グラビティ(25.12.13)
監督  アルフォンソ・キュアロン
出演  サンドラ・ブロック  ジョージ・クルーニー
(ネタバレあり)
 スペースシャトルで船外作業中、破壊されたロシアの宇宙船の破片がスペースシャトルを襲い、作業中の1人が死亡、ライアン・ストーン博士は宇宙空間へと投げ出される。ベテラン宇宙飛行士のマット・コワルスキーは、彼女を助け、2人でシャトルに戻るが、シャトルは破壊され、二人以外の船員は死亡していた。使い物にならなくなったシャトルを捨て、近<の軌道を回る国際宇宙ステーションに向かうが・・・
 題名の「ゼロ・グラビティ」とは“無重力”のこと。実質、登場人物はライアンを演じるサンドラ・ブロックとマットを演じるジョージ・クルーニーの二人だけ。宇宙という音のない空間での二人の会話だけが主体の映画です。それでありながら、緊迫感に退屈さを感じることはありませんでした。
 宇宙空間に取り残されたライアンがどのように勇気を奮い起こして地球に戻るのかを描いていきます。子どもを亡くして孤独な生活を送るライアンが宇宙の中で孤独になるという演出もなかなか考えていますね。巷ではアカデミー賞最有力候補と取りざだされていますが、リアリティ溢れる宇宙空間の映像も凄いですが、これはやはりサンドラ・ブロックの演技によるところが大きいでしょうね。ジョージ・クルーニーはすぐにいなくなってしまいますし。彼女としては今まで見たことのないほどのショートカットの髪に、年には見えない引き締まった体で孤独な宇宙空間での演技を見事にこなします。
 さて、アカデミー賞を受賞できるか、年明けのノミネートが楽しみです。