▲2012映画鑑賞の部屋

バイオハザードX リトリビューション(24.9.14)
監督  ポール・W・S・アンダーソン
出演  ミラ・ジョヴォヴィッチ  ミシェル・ロドリゲス  シエンナ・ギロリー  ケヴィン・デュランド
     リー・ビンビン  ショーン・ロバーツ  コリン・サーモン  ボリス・コジョー  ヨハン・アープ 
     オデット・フェール  中島美嘉
 バイオハザードシリーズ第5弾です。前作のラストシーン、アンブレラ社に実験台として捕らえられていた人々を解放したアリスらに対し、アンブレラ社が攻撃してくるところから物語は始まります。アンプレラ社側の指揮をとっていたのは、第2作でアリスと一緒に戦ったジル。彼女はアンブレラ社によって洗脳されていたんですね。
 今作では、ジルのほかに第1作でアンブレラ社の特殊部隊の隊員として登場していたワンやミシェル・ロドリゲス演じるレイン、更に第2作、第3作に登場したカルロス、第4作に登場したルーサーが再登場しています。また、ゲームをしたことのない僕は知りませんでしたが、ゲームのキャラクターである中国系の美女エイダ・ウォンや傭兵のレオンなども登場しており、ゲームファンには嬉しい作品になっています。
 とはいえ、ゲームを知らない者としては、ゾンビが軍服を着てジープを運転し機銃を撃ちまくったり、前作にも登場してきた処刑マジニが今作では2体も登場するなど、ばかばかしく感じてしまうシーンも多くなってきました。当初は死んだ者が襲いかかるという恐怖、そして噛まれれば自分もゾンビになってしまう恐怖があったのですが、これではホラーというより、どれだけ敵を倒すのかという戦闘ゲームと同じです。そもそも、ゲームが原作ですから、そういう方向に行くのも無理もないですが・・・。
 ラストシーンを見ると、まだまだ続きが製作されそうです。終わりがあるのでしょうか。
※ジルの服装が前作のラストと異なってしまったのは、ミスですね。細かいところにも気を遣ってほしかったですね。
 ちなみに映画館では3Dしか上映していなかったので、やむを得ず3Dで観ましたが、高いお金を払うほどのものではないなと今回も思ってしまいました。
人生、いろどり(24.9.15)
監督  御法川修
出演  吉行和子  富司純子  中尾ミエ  平岡祐太  藤竜也  村川絵梨  佐々木すみ江
     蛍雪次朗  大杉漣  戸次重幸  栗田麗  キムラ緑子  
 公開初日の初回を観てきました。徳島県勝浦郡上勝町を舞台に、日本料理の“つま”として利用される葉っぱをビジネスとして成り立たせ、町おこしに繋げた実話を元にした作品です。
 入場時に舞台となる徳島県勝浦郡上勝町の“いろどり晩茶”が配布されました。御馳走さま。内容が内容のせいか、観客のほとんどが年配の、それもたぶん60歳以上の方たちでした。彼らからすれば、僕などまだ若造の部類です。
 過疎化が進み、主要産業のミカンも冷害にやられて全滅という状況の中、一人の農協職員が日本料理の“つま”に利用されている葉っぱを売ることを思いつきます。多くの人が呆れる中、二人の女性が協力を申し出て葉っぱビジネスが始まりますが、そうそううまくいくわけがありません。市場では最初はゴミ扱いされたり、料理に使われている葉っぱを見に行った日本料理店では女将に馬鹿にされたりと、映画の中でも葉っぱを売るための苦労が描かれていましたが、軌道に乗る前には実際は映画に描かれる以上の苦労があったことでしょう。
 それまで亭主関白の夫の言うことに逆らうことなく従っていた薫が、葉っぱビジネスを始めるうちに自分の考えを持ち、しだいに夫に対し自分の意見を言うようになります。葉っぱが町おこしだけでな<、人の心も変えていったんですね。妻が葉っぱビジネスに打ち込むことにより、自分のメンツがなくなると反対する夫を見ていると、男の不甲斐なさがよくわかります。
 エンドロールで実際の上勝町のおばあちゃんたちの姿が映されます。パソコンやタブレットを扱っていることも驚きですが、なにより、どの人の顔も生き生きとしています。やはり、ただ漫然と生きていくより、生き甲斐を持つことは必要ですね。
 薫を演じた吉行和子さんの演技の素晴らしさはもちろんですが、花恵を演じた富司純子さんがまたいいです。美人女優で通してきた富司さんが、がに股歩きまでしての熱演ですからね。この当たりさすが女優さんです。
天地明察(24.9.15)
監督  滝田洋二郎
出演  岡田准一  宮アあおい  市川猿之助  佐藤隆太  松本幸四郎  中井貴一  市川染五郎
     岸部一徳  笹野高史  渡辺大  白井晃  横山裕  
 冲方丁さんの同名小説の映画化です。
 江戸時代、将軍に囲碁を教える名家の息子として生まれた安井算哲、のちの渋川春海が、会津藩主保科正之に暦の作成を命じられ、苦難の末に日本で初めての暦を作るまでを描いていきます。
 2時間21分という上映時間の枠の中で原作で描かれていることをすべて描ききることは無理があるので、どうしてもはしょってしまうのはしょうがないのですが、北極出地にしても、算哲らの苦労がいまひとつ描き切れていなかった感があります。
 逆に映画ということから、派手さを求めてか、原作にはない観測所の襲撃シーンとそれによる仲間の死がありましたが、余計ではなかったのかなという気がします。だいたい、襲撃したのは誰かも描かれない中途半端なものになってしまっています(話の流れから公家たちでしょうけど)。また、公家がなぜ新しい暦を作ることに反対するのか、原作では大きな理由があることに言及しているのですが、映画の中では説明がされていません。それに暦を完成するのに相当の時間が経過しているはずなのに、算哲役の岡田くんもえん役の宮アあおいさんも見た目歳を取っていません。相変わらず若いままで、時間の経過が感じられませんでした。
 とはいえ、原作を読んでいる僕としては、映画で描ききれなかった部分は補うことができたので、十分楽しく観ることができました。「陰日向に咲く」に続く岡田准一くん、宮アあおいさんのコンビもよかったですし(相変わらず、宮アあおいさんはかわいい)、彼らを支える脇役陣が保科正之を演じた松本幸四郎さん、水戸光圀を演じた中井貴一さん、関孝和を演じた市川猿之助さん、伊藤重孝を演じた岸辺一徳さんなど芸達者が揃っており、安心して観ていられます。
鍵泥棒のメソッド(24.9.16)
監督  内田けんじ
出演  堺雅人  香川照之  広末涼子  森口瑶子  荒川良々  小野武彦  木野花    
 売れない貧乏役者の桜井は、銭湯で足を滑らせて昏倒した伝説の殺し屋・コンドウのロッカーのキーを出来心から自分のものとすり替えてしまう。コンドウが記憶を失ったことを知った桜井は、そのままコンドウになりすます。一方、記憶を失い、ロッカーの服から桜井とされたコンドウは、病院から退院するときに、生真面目な婚活中の編集者水嶋香苗と出会う。結婚相手も決まっていないのに結婚の日取りまで決めてしまうという一風変わった香苗は、コンドウに関わるうちにしだいに彼に惹かれていく。
 売れない役者と伝説の殺し屋が入れ替わることから起きる珍騒動、そこに生真面目な婚活中の編集者が加わり、更に事態はややこしくなっていきます。
 「運命じゃない人」「アフタースクール」を作った監督さんですから、今回もなにか仕掛けがあるのではないかと思ったら、意外と素直なストーリー展開です。とはいえ、そこは内田監督、観客を騙すネタもしっかり仕込んでいました。映画の始まってすぐの場面、あれ?と思いながらもスルーしてしまいましたが、そういうことだったんですね(ネタバレになるので、書くことができません。)。
 演技のための本を買っても、買っただけで満足してしまう桜井と(これは僕も同じです。)、―方何事もきちっと極めようとするコンドウという対照的な性格の二人の立場が入れ替わるというおもしろさだけでなく、記憶を失ったコンドウが桜井になったときのギャップが更に笑いを誘います。
 コンドウを演じるのは香川照之さんさんですが、相変わらずうまいですよね。コンドウの凄みと桜井のときの真面目さをうまく演じ分けます。一方の本物の桜井を演じるのが堺雅人さん。自信なげな様子が堺さんの雰囲気にピッタリです。この二人に関わる香苗を演じるのが広末涼子さん。いつも笑顔で元気という印象の強い広末さんですが、この作品では笑顔を封印し、いつもとは異なるキャラを演じています。
 登場人物が役者とか編集者ということも、うまくストーリーの中で生かされています。見事ですよね。胸がキュンとする恋をしてこなかった香苗が胸キュンするラストシーンも素敵です。
ボーン・レガシー(24.9.28)
監督  トニー・ギルロイ
出演  ジェレミー・レナー  レイチェル・ワイズ  エドワード・ノートン  ステイシー・キーチ  オスカー・アイザック
     ジョアン・アレン  アルバート・フィニー  デヴィッド・ストラザーン  スコット・グレン  ドナ・マーフィー
     マイケル・チャーナス  コリー・ストール  ニール・ブルックス・カニンガム  ジェリコ・イヴァネク
 題名が「ボーン・レガシー」と、“ボーン”がついていたので、てっきりジェイソン・ボーンを今までのマット・デイモンに代わって、ジェレミー・レナーが演じる新シリーズかと映画が始まるまで思っていました。ところが、これが大間違い。ジェイソン・ボーンはこの作品では登場せずに、ボーンが追われる事件の裏側で起こっていたことが描かれていきます。シリーズを観ていた僕でさえわかりにくかったのに、シリーズを観ていない人には、ストーリーが理解しにくいでしょうね。 主人公はアーロン・クロス。ジェイソン・ボーンを作ったトレッドストーン計画の後継の計画であるアウトカム計画によって作り出された戦う兵士です。ところが、ボーンによってトレッドストーン計画とそのアップグレード版であるブラックブライアー計画が白日の下に晒されたことから、後継計画も秘密裏になかったことにされ、実験の対象となった人物たちが抹殺されていきます。アーロンは難を逃れ、自分の体に投与されていた薬を得るために研究所の担当医・シェアリング博士を訪ねるが‥・。
 アーロンの身体能力は薬によって向上されたもので、それから考えるとアーロンよりも何もしていないジェイソン・ボーンの凄さの方が際立ちます。それはともかく、話としては彼を殺そうとする政府側と超人的な力で逃走を図るアーロンという姿は、これまでのジェイソン・ボーンシリーズと同じです。ラストからすると、続編が考えられますが、何か“売り”がないと、ジェイソン・ボーンの二番煎じということから抜け出せない気がします。
 ジェレミー・レナー演じるアーロンと一緒に逃げるシェアリングを演じたのはレイチェル・ワイズです。この女優さん、品がありそうで、反面コケティッシュな面も持っていて、以前からお気に入りの女優さんです。
 アーロンの暗殺計画を指揮する国家調査研究所のリック・バイヤーを演じるエドワード・ノートンの冷徹さが、ぴったりです。
ハンガー・ゲーム(24.9.28)
監督  ケイリー・ロス
出演  ジェニファー・ローレンス  ジョシュ・ハッチャーソン  リアム・ヘイズワース  ウディ・ハレルソン
     エリザベス・バンクス  レニー・クラヴィッツ  スタンリー・トゥッチ  ドナルド・サザーランド  ウェス・ベントリー
     トビー・ジョーンズ  アレクサンダー・ルドウィグ  イザベル・ファーマン  アマンドラ・スターンバーグ
 「トワイライト」と同じく、アメリカの若者たちの熱狂的な支持を受けている小説の映画化です。
 独裁国家バネムでは、かつて反乱を起こした12の地区への見せしめのため、それぞれの地区の12歳から18歳までの男女から1名ずつを選び、合計24名による、最後の1名になるまでの殺し合いのゲーム、名付けでハンガー・ゲーム”を毎年行っていた。今年、第12地区から選ぱれたのはカットニス・エバディーンの妹だったが、カットニスは妹に代わり参加を申し出る。男子で選ばれたパン屋の息子ピーター・メラークとともに首都・キャピトルに行き、そこでゲームに臨むため、コーチ役のヘイミッチのもとサバイバル訓練を重ねる。果たして、カットニスは最後まで生き残ることができるのか。
 少年・少女たちが殺し合うのを、娯楽として首都の支配者層が楽しむという、なんともはや呆れた世界です。少年・少女の殺し合いというと、かつて、上映されて批判の声が上がった日本の「バトル・ロワイアル」みたいです。だいたい、24人の男女が殺し合いに臨むのに、嫌がるのかと思ったら、殺人を躊躇しないばかりでなく、中には殺しを楽しむ者がいるというのですから、お堅い教育者が観たら怒り心頭の作品です。
 カットニスを助け少女が殺されたときに彼女の地区が政府への批判から暴動を起こしたときは、これ以降カットニスが政府転覆の先頭に立って、新しい社会が構築されるのかと恩ったら、その後の展開は腰砕け。カットニシが主人公ですから当然、彼女が生き抜くのですが、ただ故郷の第12地区に盛大な歓声で迎えられるだけですからねえ。
 続編が製作されるそうですが、カットニスが主人公なのか、それとも新たな主人公を迎えて、またハンガー・ゲームが行われるだけなのか(単にゲームを主人公が勝ち抜ける様子だけを描くのか)。カットニスと彼女を愛するピーター、そしてカットニスの恋人ゲイルとのその後の関係も気になります。
ツナグ(24.10.7)
監督  平川雄一朗
出演  松坂桃李  樹木希林  遠藤憲一  八千草薫  橋本愛  大野いと  佐藤隆太  桐谷美玲  仲代達矢
     浅田美代子  本上まなみ  別所哲也
 辻村深月さんの同名小説の映画化です。たった一人と一度だけ、死者との再会を仲介してくれる人“ツナグ”。原作では4つの再会と最後に“ツナグ”自身のことを描いた5編からなる連作短編集でしたが、映画ではその中から3つの再会と“ツナグ”の物語を描いていきます。
 小説ではそれぞれの再会は別々に描かれていましたが、映画では3つの再会は同時並行で描かれていきます。使者と再会することで、心に区切りをつけることがある場合と逆にその後の人生に重荷を背負う場合があることが描かれますが、この辺り、単にお涙ちょうだいのストーリーではないところがいいですね。こういう“幽霊もの”は大好きです。
 母との再会を望んだ息子の場合と行方不明となった婚約者との再会を望んだ男性の場合はわかりやすいストーリーだったのですが、同級生との再会を望んだ女子高校生のエピソードは、原作を読んでいないとちょっと理解しにくい部分もあったのではないでしょうか。小説の中で描かれる微妙な部分が映画では描き切れていなかったので。僕自身、帰ってからもう一度そのエピソードを読み返してしまいました。
 “ツナグ”の渋谷歩美の祖母を演じた樹木希林さんは、相変わらずうまいですが、ただ、どの役も話し方が同じで、みんな同じような感じに見えてしまいます。
 友人との再会を望んだ女子高校生を演じたのは橋本愛さんですが、今年僕が観た映画だけでも「HOME 愛しの座敷わらし」、「スープ〜生まれ変わりの物語」、「アナザー」、「桐島、部活やめるってよ」とこれで5本。すごい活躍ですよね。でも、あの顔つきだと気の強い女性しか演じられない感じですが、果たしてそれから脱することができるかが、今後飛躍できるかにかかってきそうです。
 松坂桃李くんは、なかなか歩美役が似合っていました。
推理作家ポー最後の5日間(24.10.12)
監督  ジェームズ・マクティーグ
出演  ジョン・キューザック  ルーク・エヴァンス  アリス・イヴ  ブレンダン・グリーソン  ケヴィン・マクナリー
     オリヴァー・ジャクソン=コーエン  ジミー・ユイル  サム・ヘイゼルダイン  パム・フェリス  ブレンダン・コイル
 エドガー・アラン・ボーが死の直前に「レイノルズ」という言葉を残して死んだ謎を描いた作品です。
 猟奇的な殺人事件が続き、その犯行の手口がポーーの作品に書かれているものと同じだったことから、ポーに疑いがかかります。ボーの疑いは晴れるのですが、彼の恋人のエミリーが舞踏会の最中に仮面をかぷった男にさらわれたことから、ボーはフィールズ刑事とともに彼女の行方を追います。
 原題の「THE RAVEN」は「大鴉」のこと。ボーの詩の―つです。ポートいえば、ミステリーの先駆けとなる「モルグ街の殺人」が一番有名ですが、この作品でさえ、子ども向けにリライトされたものを読んだだけなので、ボーの作品に書かれた手口と同じだといわれても、楽しむことはできませんでした。
 そのうえ、殺人の仕方がグロすぎです。女の子を暖炉の煙突の中に逆さ吊りしたりとか、振り子のように揺れる刃で体をまっぷたつとか、凄いです。それゆえ、“猟奇”殺人になるのでしょうけど。
 登場人物がそんなに多くないので、犯人はこいつだなと予想できてしまいます。でも、その動機はよく理解できませんでした(途中でウトウトしてしまったせいでもありますが)。ラストもどうして犯人と警部が対峙できたのか、時間的に疑問です。
 前評判がよかったので、見に行ったのですが、個人的には残念ながら期待はずれでした。
アイアン・スカイ(24.10.20)
監督  ティモ・ヴオレンソラ
出演  ユリア・ディーツェ  ゲッツ・オットー  クリストファー・カービー  ティロ・ブリュックナー  ベータ・サージェント
     ウド・キア  ステファニー・ポール
(ネタバレです)
 月からナチが地球征服にやってくるというトンデモ映画です。
 1945年、第二次世界大戦で敗れたナチの残党が月に逃れて基地を建設し、地球征服を企てていたというのですから、荒唐無稽以外のなにものでもありません。1945年に月にそんな大勢を連れて行き、巨大な基地を造る今でもできないような科学技術をナチは持っていたのか!とか、突っ込みどころ満載ですが、そこはトンデモ映画ということで目をつむることが必要です。
 とにかく、風刺やジョークがあちこちに散りばめられていて笑ってしまいます。ナチを揶揄する映画のはずのチャップリンの「独裁者」が、ナチの月世界では短編に編集されてナチを礼賛する映画になっていたり、アメリカ大統領のキャッチフレーズがオバマ大統領の言葉をもじった「Yes,She can」だったり、ナチのUFOをどこの国のものだと首脳会議の席上で問題になったときに、北朝鮮が自分の国が作ったと言って、他の国々から(そんな国力があるはずないと)失笑をかったり、武器に転用しないはずの人工衛星が、なぜか各国とも宇宙戦艦に変身してしまったり等々。日本の人工衛星も変身しましたね。
 ナチのマッドサイエンティストは、アインシュタインをパロッていましたし、アメリカ大統領は完全にサラ・ペイリンのことを意識していますよね。
 ただ、トンデモ映画といいながらも、非常に厳しい描写があります。テロリストには屈しないとして、宇宙戦艦(この名前がジョージ・プッシュ号というのも何とも言えないおかしさがあります。)の女性艦長が、月のナチの基地に対して、部下が女、子どももいると言ったのにも拘わらず、核攻撃を命じてミサイルを撃ち込んでしまいます。このあたりは笑えなかったですね。生き残った子どもたちが、いつ帰れるんですかと問うたときに、教師はすぐに帰れると答えます。この映画の続編が製作されることが決定しているそうですが、果たしてどんなストーリーになるのでしょう。ラストに映った地球は大変なこと.になっているようですし・・・。
 女性のヒールは踏まれると痛いが、それ以上の武器になってしまうというのがよくわかりました。
のぼうの城(24.11.3)
監督  犬童一心  樋口真嗣
出演  野村萬斉  佐藤浩市  市村正親  榮倉奈々  成宮寛貴  山口智充  上地雄輔  山田孝之  平岳大    平泉成  夏八木勲  西村雅彦  中原丈雄  鈴木保奈美  前田吟  中尾明慶  尾野真千子  芦田愛菜
 和田竜さん原作の「のぽうの城」の映画化です。昨年公開の予定でしたが、水攻めのシーンが東日本大震災の津波を想起させることから公開が延期になっていました。確かに、津波に遭われた方にとっては、あのシーンは津波の恐ろしさを思い起こさせるかもしれません。
 話は、北条征伐にきた石田三成率いる豊臣方の軍勢2万にたった500人で戦った忍城の攻防を描きます。小田原城に入城した城主に代わって城を守るのは城代の息子、“でくのぼう”の“のぽう”と呼ばれる成田長親。彼は無抵抗で城を開城しろという城主の命令にも拘わらず、使者の態度に腹を立て(それとも姫を秀吉の側室に差し出せということに腹を立てたのか)、戦うことを決めてしまいます。
 のぼうの人望で城に集まった農民たちとともに、知恵もない馬鹿者と思われていた男が、総大将となり、石田三成率いる2万の軍勢に立ち向かいます。大きな敵に小さなものが向かっていくところが、日本人が好きなパターンです。
 狂言師の野村萬斎さんが長親を演じているため、小舟の上での“のぼう”の踊りは萬斎さんが自ら振り付けたようです。原作では大柄な男として描かれていましたが、野村萬斎さんの“のぼう”も悪くないです。さすが狂言役者ですから惚けた様子もお手のものです。
 石田三成役は上地雄輔さんでしたが、熱演なんでしょうけど、ちょっと演技が周りから浮いている感じがしてしまいました。
黄金を抱いて翔べ(24.11.3)
監督  井筒和幸
出演  妻夫木聡  浅野忠信  桐谷健太  溝端淳平  チャンミン  西田敏行  青木崇高  田口トモロヲ
     鶴見辰吾  中村ゆり
 高村薫さん原作の「黄金を抱いて翔べ」の映画化です。原作は、新潮ミステリー大賞を受賞した作品で、発売当時読んだのですが、内容はすっかり忘れていたので、あんな話だったかなあという印象でした。
 映画は、銀行の地下金庫にある金の延べ棒を盗み出そうとする男たちを描いていきますが、その男たちの人となりが映画では詳しく説明されていません。パンフレットを読んで初めて彼らがどういう人物か、どういう関係なのかがはっきりわかりました。原作の内容をすっかり忘れていた僕はもちろん、原作を読んだことのない人は、彼らの人間関係を把握するのに苦労したのではないでしょうか。特に妻夫木さん演じる幸田と東方神起のチャンミンが演じた元北朝鮮工作員との関わりは最初理解しにくいのではないでしょうか。
 それぞれ脛に傷を持つ男たちだから、計画もすっきりとはいきません。北朝鮮の元工作員は常に北朝鮮の工作員に命を狙われているし、新左翼と関係のあった幸田も目をつけられているし、リーダーの北川の弟は暴力団から追われているというのですから、どう考えても無理な計画ですけどねぇ。
 結局金塊強奪は成功したということなんでしょうか。ラストの場面を見れば、絶対逃げられないと思うのですが。そんなに日本の警察は甘くないでしょうに。
リンカーン 秘密の書(24.11.1)
監督  ティムール・ベクマンベトフ
出演  ベンジャミン・ウォーカー  ドミニク・クーパー  アンソニー・マッキー  メアリー・エリザベス・ウィンステッド
     ルーファス・シーウェル  マートン・ソーカス  ジミ・シンプソン  ジョセフ・マウル  ロビン・マクリーヴィー
 3Dもありましたが2Dで鑑賞。
 奴隷解放をしたことで有名な第16代アメリカ大統領エイブラハム・リンカーンが実はヴァンパイア・ハンターであったというとんでもない設定の話です。
 幼い頃、母を地元の名士ジャック・バーツに殺されたリンカーンは、成長してバーツに復讐しようとしますが、逆に殺されそうになったところをヘンリー・スタージスに助けられます。ヘンリーからバーツがヴァンパイアであり、この世界には多くのヴァンパイア族が存在していることを教えられたリンカーンは、ヴァンパイア・ハンターになることを決意します。 ヴァンパイアを倒すためにリンカーンは使い慣れた斧を武器に選びます。リンカーンが斧使いの名人だというのは、史実のとおりだそうですが、それがヴァンパイアを倒すものだったとは、なかなか脚本家さん、うまいですよね。
 リンカーンが大統領になる経過はこの映画では詳しくは描かれません。そのあたりは、これから公開されるスピルバーグ製作の「リンカーン」という映画があるので、それを観るといいのでしょう。それにしても、奴隷解放が、ヴァンパイアの食料(奴隷の血)を絶つためだったとは驚きのストーリーです。
 リンカーンは刃先を銀でコーティングした斧で戦うし、銀の弾丸でヴァンパイアを撃ちます。銀の弾丸を用いるのは狼男を退治するときではなかったかと思ったのですが、ヴァンパイアにも効果的だったんですね。
アルゴ(24.11.1)
監督  ベン・アフレック
出演  ベン・アフレック  アラン・アーキン  ジョン・グッドマン  ブライアン・クラストン  スクート・マクネイリー
     クレア・デュバル  クリス・デナム  デイト・トノバン  タイタス・ウェリバー  マイケル・パークス
 実際に起こった事件を描いた作品です。イラン革命によりパーレピ国王が海外に逃れ、イスラム教シーア派のホメイニ師により統治されていた1979年のイランが舞台です。
 パーレビ国王を癌の治療のために受け入れたアメリカに対し、イランが激怒、在イラン米国大使館に過激派がなだれ込んで占拠する。難を逃れた6人の大使館員はカナダ大使の私邸に匿われる。アメリカは6人をイランから脱出させようと策を練るが、CIA局員のトニー・メンデスが―つの案を提案する。それはイランでの映画の撮影を企画し、大使館員をスタッフに仕立てあげて脱出させるという作戦。
 トニーが偽の映画製作への助力を求めたのが、ジョン・チェンバース。なんとあの「猿の惑星」で猿のメーキャップでアカデミー賞に輝いた人です。驚きですねえ。こんな有名な映画人が、CIAの脱出計画に荷担していたなんて。
 敵を欺くにはまずは味方と、俳優たちを雇い、ハリウッドで大々的に映画製作を打ち上げます。偽造パスポートを作って、数日前に入国していたスタッフたちが帰国するという設定で、大使館員たちを連れ出そうとします。イランの文化省の役人は騙せるのか、カナダ大使の家で働く家政婦に気付かれないのかと、いつ、ばれてしまうのではないかという緊迫感で観ているこちらもドキドキです。
 まるで映画のようだと思いますが、これが真実だったのですから、凄いです。最後の最後で彼らを見捨てろという命令が出されたにも拘わらず、それに背いて計画を推し進めたトニーは、かっこよすぎです。
 それにしても、大使館員たちがシュレッダーをかけた大使館員たちの写真を、大勢の子供たちを使って、切れはしから復元するという気の遠くなるようなことをやっていたとは驚きです。
悪の教典(24.11.10)
監督  三池崇史
出演  伊藤英明  二階堂ふみ  染谷将太  林遣都  浅香航大  水野絵梨奈  KENTA  山田孝之  平岳大
     吹越満  岩松了  篠井英介  小島聖  滝藤賢一  矢島健一
 貴志祐介さん原作「悪の教典」の映画化です。あの分厚い原作を2時間強の上映時間の中に詰め込みましたので、原作を読んでいない人に対しては、いろいろ説明不足のところがあった気がします。例えば、釣井の自宅が映されたときに、立てかけてあった血らしきものがついた釘抜きはいったい何なのか、その後、映画の中ではまったく説明がされていません。また、この映画のメインとなるクラス皆殺しを彼が考えた理由もあれではわかりません(単に偽装自殺を見られたことからというだけでは、あまりに短絡的)。更にアメリカで殺人を繰り返してきたのが発覚したのに、なぜ日本に戻っているのかも映画だけを観た人にはわからなかったでしょう。上映時間の制約からの限界ですね。
 主人公の教師・蓮実を演じたのは伊藤英明さん。伊藤さんといえば、見たとおり、イケメンですし、これまで演じてきたのも、「海猿」の主人公・仙崎のような爽やかな二枚目の役どころばかり。ところが、今回は、その爽やかな笑顔の裏にサイコ・キラーの顔を持っているという、がらっと違う役どころを演じます。これが、なかなか似合っています。伊藤さんにとっては冒険だったかもしれませんが、演じる役柄の幅がこれで広がりましたね。
 「ヒミズ」の染谷将太くんと二階堂ふみさんがそろって出演しています。ダルビッシュの弟も不良少年役で出演です。
 それにしても、暴力描写には定評のある三池崇史監督らしい、読んでいるだけではわからない、大量殺人の様子が描かれて、あれではR15指定もやむを得ないかという残虐描写でした。
北のカナリアたち(24.11.17)
監督  阪本順治
出演  吉永小百合  柴田恭兵  仲村トオル  里見浩太朗  森山未來  満島ひかり  勝地涼  宮アあおい
     小池栄子  松田龍平  石橋蓮司  高橋かおり  塩見三省
 湊かなえさんの「往復書簡」に収録された「二十年後の宿題」が原作だということでしたが、かなり話は違っています。
 原作では、年老いた元教師が、教師になった教え子に、自分が若い頃の教え子たちがその後どうしているのか調べてほしいと頼み、彼が一人一人訪ねていく様子が書簡形式で描かれます。そしてラストである驚きの事実が明かされます。しかし、映画では、吉永小百合さん演じる元教師の川島はるが、かつて離島の小学校で教えていた6人の教え子のうちの一人が殺人の容疑で警察に追われる事件が起こったことを契機に、残りの5人を訪ねるという話になっています。
 原作と同じところは、喧嘩をした子どもたちを仲直りさせるために、夫の協力で休日に遊びに行った先で、子どもがおぼれ(原作では川ですが、映画では海です)、助けようとした夫が死んでしまうという事件が起こるところだけです。教え子が殺人事件を起こしたこともなく、仲村トオルさんが演じた警官など登場しません。
 特に、仲村トオルさんの警官は、この映画のストーリーの中で大きな役目を担っている存在です。彼の存在がなくては、この映画のストーリーが成り立ちません。そこだけとっても、原作と映画は全く違う作品と考えた方がいいでしょう。
 結局、吉永小百合さんの映画です。もう70歳近いのに、とてもそんな年齢には見えませんし、日頃水泳をしているだけあって、映画の中でも少しだけその片鱗を見せてくれます。僕より上の年齢のサユリストさんたちには嬉しい映画ではないでしょうか。
人生の特等席(24.11.23)
監督  ロバート・ロレンツ  
出演  クリント・イーストウッド  エイミー・アダムス  ジャスティン・ティンバーレイク  ジョン・グッドマン
     ロバート・パトリック  マシュー・リラード  ジョー・マッシンギル
 今年82歳のクリント・イーストウッドが演じるのは、伝説の大リーグのスカウト・ガスです。
 老齢となり目もかすんできたガスを心配した友人のピートは、娘である弁護士のミッキーにしぱらくの間彼に付き添ってほしいと依頼する。大事な裁判を前にして、少しだけと父に付き添うことにしたミッキーだったが・・・。
 誤解からお互いの気持ちがわからなかった父娘が、誤解を解き理解し合うようになるまでをメインストーリーとして、娘と恋仲になる、かつて自分がスカウトし、今は故障で引退してスカウトをしているジョニーとの関係や、ガスを引退に追い込もうとしている経営陣の一人マシューとの確執の結果を描いていきます。
 父娘の話ですから当然ラストはハッピーエンドとなり、ストーリーとしては予定調和的です。自分を引退させようとしたマシューにスカウトとしての能力を見せつけ、痛烈なしっぺ返しをする場面は爽快です。
 何を演じさせてもイーストウッドはうまいですが、なかでも今回のような頑固な老人役をやらせたら天―品ですね。まだまだ活躍できそうです。
 娘の恋人役を演じたのはジャスティン・ティンバーレイクです。グラミー賞を受賞したこともある歌手ですが、このところ「TIME」の主役を演じるなど、映画界での活躍が目立ちます。
カラスの親指(24.11.23)
監督  伊藤匡史
出演  阿部寛  村上ショージ  石原さとみ  能年玲奈  小柳友  ベンガル  戸次重幸  上田耕一  なだぎ武
     ユースケ・サンタマリア  鶴見辰吾  古坂大魔王
(ちょっとネタバレ)
 道尾秀介さん原作の同名小説の映画化です。タケこと武沢竹夫は、普通のサラリーマンだったが、同僚の保証人になったことからヤミ金融の借金を背負ってしまう。厳しい取立から逃れるため、彼らの手足となって代わりに取り立てを行っていた際、客の主婦に自殺されてしまい、それを悔いた彼は、業者の極秘書類を盗んで警察に駆け込む。業者は逮捕されたが、報復に自宅に火をつけられ、娘が焼死、彼自身は業者から逃れるために、名前も捨て、今ではテツを相棒に詐欺師の日々を送っていた。そんなある日、スリを働いた女の子を助けたことから、彼らの家に3人の男女が転がり込んでくる。
 5人が共通の敵であるヤミ金業者に仕返しをするという話です。いわゆるコンゲームです。騙されるのは業者だけではありません。最後に蓋を開けてみれば、主人公自身も映画の観客も騙されていたことが明らかになります。でも、すっきりと気持ちよく映画館を出て行くことができる騙され方です。これは道尾さんの原作のおもしろさに因るのですが。
 主人公の武沢を演じたのは阿部寛さん。阿部寛さんというと、どうしても三枚目という目で見てしまうのですが、今回も悲惨な過去を持ちながらも、ショージさんとの詐欺師コンビのやりとりはいつもの三枚目でした。
 転がり込んだ3人の男女の中で、ぐだぐだとした姉を演じているのが石原さとみさん。最初は彼女とは気付きませんでした。いつもと異なった役柄で、新たな一面を出していたのではないでしょうか。
 一方、テツ役のショージ村上さんは、はっきり言ってミスキャストです。お笑い芸人で演技は素人。演技だけでなくセリフも一本調子でスムーズではないところもありました。あまりに芸達者な役者さんを配すると、ネタバレになるおそれがあるということもわかりますが、それにしても、もうちょっとどうにかならなかったかなあ。
 残念ながら原作を読んでいる者としては、小説ほどのおもしろさは感じられませんでした(まあ、原作を読んでラストのびっくりを知っていたせいでもありますが。)。
007 スカイフォール(24.12.1)
監督  サム・メンデス
出演  ダニエル・クレイグ  ハビエル・バルデム  レイフ・ファインズ  ナオミ・ハリス  ベレニス・マーロウ
     ジュディ・ディンチ  アルバート・フィニー  ベン・ウィショー  オラ・ラパス
 007シリーズ生誕50周年記念作品です。ジェームズ・ボンド役がダニエル・クレイグに代わって3作目の作品です。
 冒頭からいっきにエンジン全開。オートバイでの追跡アクションや電車の上での格闘などあっという間に観客を映画の中に引き込みます。、
 初代ジェームズ・ボンドを演じたショーン・コネリーを始め、ロジャー・ムーア、ピアース・ブロスナンなどジェームズ・ボンドといえば女好きのイメージで、ボンドガールとのベッドシーンがお決まりでしたが、そんな先輩たちと比較するとダニエル・クレイグのボンドはおとなしめです。今回も2人のボンドガールが登場しますが、お色気シーンはあまりありません。
 ストーリーは世界各地のテロ組織に潜入しているスパイの名簿を盗んだ元諜報員のシルヴァとボンドの戦いを描きます。今作ではジェームズ・ボンドの幼き頃が語られ、両親の名前も明らかにされるなど、ちょっといつもの雰囲気とは異なります。さらには、シルヴァとの戦いの結果は、ボンドにとっても大きな代償を払うことになり、新たな転機ともなります。  ダニエル・クレイグに代わってから登場していなかった秘書のマネーペニーが意外なかたちで現れたり、以前のQとは大違いの若いQや、ジェームズ・ボンドといったらこの車という年代物のアストン・マーチンも登場するなど、シリーズファンには嬉しい作品になっています。
 僕自身はダニエル・クレイグのボンド作品の中で一番おもしろかったと思っています。おすすめです。