▲2012映画鑑賞の部屋

50/50(24.1.7)
監督  ジョナサン・レヴィン
出演  ジョセフ・ゴードン=レヴィット  セス・ローゲン  アナ・ケンドリック  ブライス・ダラス・ハワード
     アンジェリカ・ヒューストン  マット・フルーワー  フィリップ・ベイカー・ホール
 日本で癌患者をテーマにした映画を作ると、どうしてもお涙頂戴的な作品になってしまうのですが、ハリウッドはシャレた映画を作ります。
 ラジオ局で番組製作に従事するアダムは、ジョギング中も信号は必ず守り、交通事故を起こしては困るからと免許証も取らない真面目な(ある意味変わった)青年。酒もたばこも飲まないエコな生活を送る彼が、ある日突然癌になってしまう。彼を看病すると言った恋人は、やがて看病疲れから浮気をし、彼のもとを去っていく。残るのは下ネタ得意の女好きの友人カイル。彼の病気を肴に女の子をナンパするカイルですが、これがまたパターンどおりのいいやつです。表面ではパカなことばかりしながら、照れくさいのでしょうね。正面切って優しくするのは。
 ひとつ間違えば、あざとい映画になりそうなところをユーモアのあるしゃれた映画に仕上げています。ラストの展開もこういう流れならこうでなくてはという終わり方でひと安心。もちろん、涙もあります。でも、この涙は辛く悲しいから流す涙ではなく、感動からです。
 題名の「50/50」は、彼の病気の5年後の生存率が50%というところからつけられています(でも、癌で50%の生存率は高いのではないでしょうかね。)。
パーフェクト・センス(24.1.7)
監督  デヴィッド・マッケンジー
出演  ユアン・マクレガー  エヴァ・グリーン  ユエン・ブレムナー  コニー・ニールセン
     スティーブン・ディレイン  デニス・ローソン
 人間には嗅覚、味覚、聴覚、視覚、触覚の5感があります(まあ第6感というやつもありますが。)。この作品はこの5感が次第に失われていく世界を描いていきます。
 ある日、突然悲嘆にくれたあとに嗅覚が失われるという病気が世界に蔓延する。そうした状況の中で出会った感染症専門家のスーザンとレストランのシェフのマイケルは愛し合うようになる(こういう状況下の恋は長続きしないと言われていますが)。その後、今度は突然の恐怖感に襲われた後、食欲がわき上がり、手当たり次第にあるものを食べ尽くすという状況が収まると、人々は味覚が失われていることに気付く。さらには、次は怒りがわき上がり、収まると聴覚が失われ、そうして次は・・・
 はっきり言って何が言いたいのかわからない映画でした。嗅覚、味覚が失われたあとに、一時は絶望した人間が、食べるという行為に、匂いや味ではなく、食べているときの音や温度を感じることによって再び食べるということに意義を見いだしていくところは、絶望の中でも希望を見いだす映画かと思ったのですが、聴覚を失い、さらにその先に進むとなれば人類滅亡を待つだけです。
 感覚が失われていく理由は何も語られません。そして感覚が失われる前になぜ悲しみや怒りのような予兆があるのかに対しても何らの回答も出していません。だいたい、視覚を失う前のあの予兆(あえて伏せます。)は、いったい何なのでしようか。あんな予兆があって視覚が失われるとは、どうしろと言うのでしょう。理解に苦しみます。
 このエンディングの先にあるのは、果たして希望なのか絶望なのでしょうか。
フライトナイト(24.1.7)
監督  クレイグ・グレスピー
出演  アントン・イェルチン  コリン・ファレル  トニ・コレット  デヴィッド・テナント  クリス・サランドン
     イモージェン・プーツ  クリストファー・ミンツ=プラッセ  デイブ・フランコ  リード・ユーイング
     ウィル・デントン  サンドラ・ヴェルガラ  エミリー・モンタギュー  
 1985年に公開された「フライトナイト」のリメイクです。オリジナル版も公開当時観たことがありますが、「猿の惑星(チャールトン・ヘストン主演のオリジナル版です。)」でチンパンジー役を演じていたロディー・マクドウォールが今回以上の気弱なヴァンパイアハンター役で出演していたことを覚えています。今回の作品よりはコメディ度が高かったような気がします。
 ストーリーはオリジナルと同じです。隣に引っ越してきた男・ジェリーがヴァンパイアだと知った男の子・チャーリーが、ジェリーから母親やガールフレンドを守るために奮闘します。頼りないオタクの男の子がヴアンパイアと闘う中でしだいに男として成長していく様子を描いた映画ともいえます。
 ジェリーがヴァンパイアだとチャーリーの友人がどうして気付いたのかというあたりはちょっと説明不足という気がしますが、あまり難しいことは考えずに楽しむ映画なのでしょう。
 ヴァンパイアは招待されないと他人の家に勝手に入れないという約束事は、「モーリス」で初めて知りましたが、招待されないジェリーがとった行動にはあ然。あれでは逃げられません。
 ヴァンパイアのジェリーを演じたのは、眉毛の濃いコリン・ファレルですが、オリジナルのクリス・サランドンよリセクシーさでは上です。
 オリジナルでヴァンパイア役を演じていたクリス・サランドンがカメオ出演しています。言われなければわからないほど歳を取っていましたが。
ロボジー(24.1.14)
監督  矢口史靖
出演  五十嵐信次郎  吉高由里子  濱田岳  川合正悟  川島潤哉  田畑智子  和久井映見  小野武彦
     田辺誠一  竹中直人  森下能幸  徳井優  西田尚美  大石吾郎  菅原大吉  田中要次  
 白物家電が主力商品の家電メーカーの社長の思いつきで、二足歩行ロボットの開発を命じられた3人の社員。洗濯機の営業担当の川合、梱包担当の長井、エアコンのIC担当の小林と、3人ともロボット開発にはまったくの素人。そんな3人がようやく製作したロボットが、展示会目前に窓から転落して修理できない状態になってしまう。万事体した3人は、中に人間を入れることを思いつき(普通思いつくか!?)、着ぐるみショーのアルバイト募集と偽って、面接を行う。別居する娘や孫にもかまってもらえず、暇をもてあましていた鈴木重光も面接に行き一度は断られたが、採用された者が金属アレルギーで辞退したため、体のサイズがピッタリな鈴木が採用されてしまう。
 「ウォーターボーイ」や「スウィングガール」の矢口史靖監督作品ということで、さっそく公開日に観に行ってきました。若者が主人公だった上記の作品と違って、今回主役となるのは73歳の老人です。演じるのは五十嵐信次郎さん。知らない名前で素人さんかと思ったら、僕より前の年代ならよく知っている往年のロカビリー歌手のミッキー・カーチスさんだったんですね。これが初主演とは思えないほど、見事にとぼけた味を出しています。演技は素人っぱいところが多々みられたのですが、そこがまたいいのかもしれません。
 最近そこかしこで開発されている二足歩行知ボットの中に実は人間が入っていたらという発想から作られたようですが、最新型のロボットに対して、中に入るのが、体のあちこちにガタのきたおじいちゃんというのが何とも言えないユニークな発想です。ロボットの名前が“ニュー潮風"というのも、家電メーカーらしいネーミングで、笑ってしまいました。
 開発担当の3人の社員のキャラがまたおもしろい。典型的なお笑い三人組です。中でも、伊坂幸太郎さん作品の映画によく出ている濱田岳くんが相変わらずいい味出してます。
 ロボジーにすっかり魅了されてしまった大学のロボット研究会に所属する佐々木葉子を演じる吉高由里子さんが凄いメーキャップで頑張っています。
 この映画を観て笑ってストレス解消に努めましょう。
マイウェイ 12,000キロの真実(24.1.14)
監督  カン・ジェギュ
出演  チャン・ドンゴン  オダギリジョー  ファン・ビンビン  キム・イングォン  夏八木勲  鶴見辰吾  山本太郎
     佐野史郎  浜田学  イ・ヨニ
1928年、日本占領下の朝鮮半島。憲兵隊司令官の祖父の元へとやってきた長谷川辰雄は、そこで使用人の息子キム・ジュンシクと出会い、会ったその日にかけっこの競争をする。その日以来走ることのライパルであった二人だったが、オリンピックの代表を争った大会で大きく運命が動いていく。
 競技の結果はジュンシクが辰雄をゴール直前で追い抜いて勝つが、大会役員はジュンシクを走路妨害で失格とし、辰雄の優勝だと宣言する。会場は騒然とし、ジュンシクを巻き込んでの乱闘騒ぎとなり、その結果、ジュンシクと友人のジョンデらは日本軍に強制徴用され、ソ連と戦う北満へと送られる。
 ソ連との激しい戦いの中、ある日、辰雄が新しい指揮官として着任する。爆弾を抱いて敵戦車への特攻を命令する辰雄に反発し、ジュンシクらは脱走するが、ソ連の奇襲攻撃を知り、陣地へと知らせに戻って戦闘に巻き込まれ、辰雄とともにソ連の捕虜となる。その後、ソ連軍に組み込まれドイツ軍と対峙する前線に送られ、ドイツ軍に捕まったあとは今度は連合軍との戦いに狩り出されるという苛酷な運命を辿る。
 オダギリジョーさんの嫌な男っぷり、見事でしたねぇ。映画を観るまでは日本人と朝鮮人の青年の友情の話だと勝手に思っていたのですが、前半これが大きく裏切られました。確かにラストでは二人は友情を感じるようになるのでしょう。でも中盤までのオダギリジョーさんのジュンシクたちに対する行為は憎たらしいことといったらありません。韓国人監督による作品ですし、日本人が占領下の朝鮮の人々に対し、差別をし、非情な扱いをしていたことは歴史が証明する事実ですから、映画の中で日本人が嫌な人物に描かれるのは仕方がないことでしょうけど。
 主役の一人、ジュンシクを演じたのはチャン・ドンゴンですが、ちょっと年齢的に無理があったかなあというのが、正直な感想です。
 このところ、俳優より原子力発電所の反対運動ですっかり有名になってしまった山本太郎さんが、これまた嫌な日本軍人を演じています。彼も割合こういうアクの強い役が多いですね。
 途中、中国人女性スナイパーとの関わりが描かれましたが、この映画の中の位置づけがちょっとわかりません。男くさい映画の中に華を添えたいということもあったのでしょうか(確かにスナイパーを演じたファン・ビンビンさんは綺麗でしたが。)。
 とにかく、戦争というものの悲惨さがどんなものかを描いている作品といっていいでしょう。なかでも、ソ連の捕虜収容所で自分を守るために友人を見捨てざるを得なかったジョンデの苦しみは、どれほどのものだったでしょう。単純に彼を責めるわけにはいきません。これが戦争なんですね。
 それにしても、日本、ソ連、ドイツの軍服を着て戦ったというのが、実際にいたそうですから、びっくりです。
ALWAYS 三丁目の夕日’64(24.1.21)
監督  山崎貴
出演  吉岡秀隆  堤真一  小雪  薬師丸ひろ子  堀北真希  須賀健太  小清水一輝  もたいまさこ
     森山末來  大森南朋  三浦友和  マギー  温水洋一  染谷将太  高畑淳子  米倉斉加年
 シリーズ第3作目です。この映画も3D化されましたが、今回は2Dでの鑑賞です。
 今回の舞台は前作から5年後、東京オリンピックの開催年である昭和39年です。5年がたちますから、一平と淳之介も高校生になって、すっかり大きくなりましたし、鈴木オートに六子の後輩がいたり、茶川さんの家が二階を増築したりと変わったところはありますが、町のみんなは相変わらずです。
 今回、主として描かれるのは、六子の恋と高校生になった淳之介の将来です。すっかり綺麗になった六子なのに相変わらず東北弁が抜けていないのが何ともおかしい。そんな六子が一目惚れしたのが病院の医師である菊池。この先生が評判が悪いということから起きる騒動が描かれます。お約束の鈴木の髪を逆立てる怒りのシーンもあります。
 一平はエレキギターに夢中となり、淳之介は東大を目指しているが、どうも小説家への夢が捨て切れていないようです。一方、茶川は芥川賞候補で一時は売れたものの、今では少年誌での人気は、新人作家の台頭により押され気味。ヒロミは身重の身で家計を助けるために居酒屋を営んでいます。ヒロミの左手薬指には指輪があるのを見て、幻の指輪が現実になったんだと嬉しくなりました。
 今回じ〜んときたのは、茶川と父親のこと、そして茶川と淳之介のことです。茶川は小説家を目指すことで父に勘当されたのですが、死んだ父の部屋の本棚には、ずらっと茶川の小説が掲載された本が並べられていました。その本の中に残された父親の感想を読むシーンでは、思わず涙がじわ〜とこみ上げてきてしまいました。僕自身、子どもの親ですから、父の気持ちはよ〜くわかります。昔の父親でしたし、ストレートに気持ちを伝えることはできなかったのでしょうね。隣のオヤジさんも泣いていましたよ。
 小説家を目指したい淳之介に対し、父親が自分に対しやったことと同じ態度を取る茶川にも泣かされました。父親たる皆さん、ぜひ観に行ってください。
 東京オリンピックのことは記憶の中にはまったくありませんが、イヤミの“シェー”は僕もよくまねしました。“シェー”をしている写真がアルバムの中に貼ってあります。当時の子どもたちの間で一大ブームでした。それに、映画の中の子どもと同様、ランニングシャツで泥だらけになって遊び回っていました。
 虫取り網を持った姿には、そうそうあんなだったと頷いてしまいます。茶川さんのうちと同様、我が家もその当時はまだまだ白黒テレビを買ったばかりという時代でした。
 普通の昭和の時代の日常を描いただけの映画ですが、笑わせてくれて、感動もさせてくれて、心を温めてくれる素敵な映画です。ノスタルジーといえばそうなんでしょうけどね。
麒麟の翼(24.1.29)
監督  土井裕泰
出演  阿部寛  溝端淳平  新垣結衣  中井貴一  田中麗奈  松坂桃李  三浦貴大  黒木メイサ  山崎努
     菅田将暉  山崎賢人  柄本時生  竹富聖花  聖也  劇団ひとり  鶴見辰吾  松重豊  秋山波津子
 日本橋の麒麟像の下でナイフで刺された男が発見され、病院に搬送されるが死亡する。男は刺された場所から交番の前も通り過ぎ、助けも求めずに麒麟像の下へと歩いてきたことがわかる。なぜ、彼はそこまで最後の力を振り絞って歩いてきたのか。一斉配備の結果、挙動不審の青年が見つかったが、警官から逃げる途中でトラックに鞣かれて意識不明となる。たまたま容疑者と目された青年が殺された男が勤める会社で派遣切りにあっていたことから、単純な恨みによる犯行かと思われたが・・・。
 東野圭吾さん原作の刑事・加賀恭―郎を主人公とするシリーズの映画化です。TBSテレビで放映していた「新参者」と同じキャストで、加賀を演じるのは阿部寛さん。テレビで放映される前はイメージが違うかなあと思っていたのですが、今ではもうすっかり加賀=阿部寛のイメージが定着しましたね。加賀の従弟であり本庁捜査一課の松宮刑事を演じるのは溝端淳平さんですが、こちらは相変わらず捜査―課の刑事には見えません。
 今回テーマとなっているのは父と子の関係ですが、中井貴―さん演じる父と松坂桃李くん演じる子の関係に加賀と加賀自身の父との関係を重ね合わせながら描いていくところが東野さんのうまいところです。子供を持つ親として、こうしたテーマで描かれると、弱いんですねえ。自分が中井貴―さんになった気がして、涙腺が刺激され、思わず涙がじわ〜と出てきてしまいます。原作を読んでいて、真相をわかっている人にとっても、十分見応えある作品だと思います。ただ、「新参者」「赤い指」と続いたテレビドラマを見ていないと、田中麗奈さん演じた看護師の金森の登場は唐突に思えてしまうかもしれませんね。
 中井貴―さんは、相変わらずの名演技です。思春期の息子にどうにか向き合おうとする父親役を好演です。主役の阿部寛さんを喰ってしまう演技だと評判です。そのほか、テレビドラマに出ていた黒木メイサさんが、特別出演しています。向井理さんは、写真の中だけの登場でした。
 日本橋警察署のロケが地元の県庁で行われていたので、見たことがある建物が映って、ちょっと身近に感じることができる映画でした。
ペントハウス(24.2.3)
監督  ブレッド・ラトナー
出演  ベン・スティラー  エディ・マーフィ  ケイシー・アフレック  アラン・アルダ  マシュー・ブロデリック
     スティーヴン・ヘンダーソン  ジャド・ハーシュ  ティア・レオーニ  マイケル・ペーニャ  ガボレイ・シディペ
 超高級マンションの最上階ペントハウスに住む大富豪アーサー・ショウが詐欺容疑で逮捕される。管理マネージャーのジョシュは従業員の年金の運用をショウに頼んでいたが、それもだまし取られていたことに気付き、どうにかしてショウから従業員の財産を取り戻そうとする・・・。騙された従業員たちが力を合わせて大富豪が隠している財産を奪い取ろうとする話です。
 久しぶりにエディ・マーフィを見ました。僕にとっては、「ビバリーヒルズ・コップ」でのマシンガントークで強烈な印象が残った俳優さんでしたが、その後はいまひとつ。やっとアカデミー賞にノミネートされた「ドリームガールズ」でそれまでのコメディアンとしての演技とはひと味違う役柄で健在ぶりを見せてくれましたが、今回は役柄としては「ビバリー〜」の流れです。
 一方主役のジョシュを演じるベン・スティラーはコメディ系の役者さんながら、今回はあまり笑いもなく真面目な管理マネージャーを演じていました。コメディアン二人の共演でしたが、笑いばかりに徹していなかったのは好感が持てます。
 あんなものをあんな方法で(ネタ晴れになるので伏せます)現実には盗めるわけがないと思いながらも、手に汗握るハラハラどきどきのシーンでした。こういう映画は、難しいことは考えずに、笑って、ハラハラどきどきして、最後はすっきりというのが一番です。
宇宙人ポール(24.2.4)
監督  グレッグ・モトローラ
出演  サイモン・ペッグ  ニック・フロスト  ジェイソン・ベントマン  クリスティン・ウィグ  ビル・ヘイダー  
     ブライス・ダナー  ジョー・ロー・トルグリオ  ジョン・キャロル・リンチ  ジェーン・リンチ  デヴィッド・ケックナー
     ジェシー・プレモンス  シガニー・ウィーヴァー  セス・ローゲン
 イギリスからコミックの祭典コミコンにやってきたグレアムとクレイドの二人のSFオタク。アメリカに来たついでにUFOマニアの聖地巡りをしようと車を走らせていたところ、彼らを追い抜いた車が事故で大破。様子を見に来た彼らに声をかけたのは、なんと宇宙人のポール。ポールは何十年も前に地球に不時着し、地球人に捕らわれていたが、脱走を図って逃走してきたところだった。二人はポールを乗せて、迎えの宇宙船が来る場所へ向かう。
 映画のあらすじを読んだときは、オバカ映画だと思って、観る気はなかったのですが、様々な映画サイトで意外に評判が良く、なぜか地元の小さな映画館で公開されたので、慌てて観に行ってきました。
 これはもう完全に「E.T.」や「未知との遭遇」などのスピルバーグの映画や他のSF映画へのオマージュです。ポールが電話で相談にのっている相手は何と本物のスピルバーグが声の出演をしているそうです。また、ポールが電話を受けている場所は、「レイダース」のラストで聖櫃が納められた倉庫のようです。
 ラストでB級映画にもかかわらず、宇宙人映画といったら、やっぱりこの人!と名前が出てくる有名俳優が登場します。なかなかの演出です。
 上記の有名俳優以外では二人の主人公のうち、グレアムを演じたサイモン・ペッグは、「ミッション・インポッシブル/ゴーストプロトコル」にもトム・クルーズの仲間で出演していました。
 大いに笑わせてくれましたし、涙がじ一んとこみ上げてくるシーンもあって、拾いものの1作でした。ラストも最高です。
タイム(24.2.18)
監督  アンドリュー・ニコル
出演  ジャスティン・ティンバーレイク  アマンダ・ゼイフライド  オリヴィア・ワイルド  キリアン・マーフィ
     ヴィンセント・カーシーザー  マット・ボマー  アレックス・ペティファー  ジョニー・ガレッキ
 人間の成長は25歳で止まり、25歳になると余命1年のカウントダウンが始まる。それ以上生きるためには、労働などで時間を買わなくてはならない。まさしく、時は金なりの世界を描いた作品です。
 ウィルは、デイトンというスラムゾーンで暮らす貧しい青年。ある日、彼は余命が100年以上ある男から時間を譲られる。男から社会の仕組みを聞いたウィルは、富裕層が住むニューグリニッジという富裕ゾーンへ行き、そこで大金持ちのヴィンセントの娘シルビアと出会い、惹かれ合う。時間管理局から追われたウィルは、シルビアを連れて逃走するが・・・。
 すべてが時間と交換で、富める者は不死を手に入れ、貧しい者は25歳からの余命と常に対面していなければならない世界です。走るのは時間を持たない貧乏人だけ、金持ちはゆっくり歩くという状況にはあ然としてしまいます。また、容姿は25歳のままなので、祖父母も両親も自分も、みんなが25歳の容貌なんて、ちょっと気持ち悪いですね。若さを保ちたいという気持ちはありますが、そんな世の中異様です。
 シルビアを演じたアマンダ・セイフライドの目の大きいことといったら、すごいですね。映画を見終わって一番印象に残ったのは彼女の目かもしれません。印象に残ったシーンといえば、もう一つ。予告編にもありましたが、ウィルと女性が走って駆け寄るシーンです。本編では同じシーンが2回ありますが、対照的なシーンとなっています。最初はあとのシーンを活かすための伏線です。
 25歳の容姿といっても、時間管理局のレイモンドを演じた、キリアン'マーフィはどう見ても25歳には見えませんでしたし、ほかにもこれで25歳の容姿かと思える人も。設定がそうであるなら、出演する俳優も考えるべきですよね。
 設定はおもしろかったのですが、ちょっと説明不足の感があります。ヴィンセントたち大金持ちの背後にいるこの社会を牛耳っている者との戦いとかあるかと思ったのですが、それもなし。時間管理局のレイモンドとの争いは単に同じ階層の者の争いに過ぎません。レイモンドがほのめかしたウィルの父親のことについても、結局詳細が語られず不満が残りました。
アンダーワールド(24.2.24)
監督  モンス・モーリンド&ヴョルン・スタイン
出演  ケイト・ベッキンセール  スティーヴン・レイ  マイケル・イーリー  テオ・ジェームズ  インディア・アイズリー
     サンドリン・ホルト  チャールズ・ダンス
 ヴァンパイア族と狼男族の戦いを描いたシリーズ第4弾です。
 これまでは両種族の間だけの戦いでしたが、今回は彼ら両種族の存在に気付いた人間が彼らの抹殺に乗り出し、両種族は絶滅の危機に陥ります。セリーンも人間に捕らえられ、実験のために冷凍されます。12年後、何者かによって目覚めさせられたセリーンは、捕らわれていたバイオテック企業アンティジェン社から脱出し、自分を助けたと思われる恋人のマイケルを捜します。
 第1作、第2作で主役を務めていたケイト・ベッキンセールが復帰し、華麗なアクションを見せます。黒革の身体にピッタリとフィットした服を着て、ロングコートで歩く姿はかっこよすぎます。また、高所から飛び降りて着地する姿のきまっていることといったら見惚れてしまいます。上映中、何度カッコいい!と口に出しそうになったことか。ケイト・ベッキンセールのシャープな顔立ちがセリーンのイメージにあっています。戦う女性として思い浮かぶのは他に「トゥームレイダー」のアンジェリーナ・ジョリー、「バイオハザード」のミラ・ジョヴォヴィッチですが、僕としてはこの作品のケイト・ベッキンセールが一番好きです。とにかく、ストーリーより彼女を見る映画です。
 今回、セリーンが冷凍中に産まれた娘役でインディア・アイズリーという女優さんが出演していますが、この人は、「ロミオとジュリエット」のジュリエット役を演じたオリヴィア・ハッセーの娘だそうです。
 ラストの様子では、まだ続編がありそうです。
ドラゴン・タトゥーの女(24.2.24)
監督  デヴィッド・フィンチャー
出演  ダニエル・クレイグ  ルーニー・マーラ  クリストファー・プラマー  ステラン・ストラスガルド  ロビン・ライト
     スチーヴン・バーコフ  ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン  ジョエリー・リチャードソン  ゴラン・ヴィシュニック
     ジェラルディン・ジェームズ  ドナルド・サムター  ウルフ・フリバーグ  ジョセフィン・スプランド
     エヴァ・フリトヨフソン  インガ・ランドグレー  マッツ・アンデルソン  エロディー・ユン  エンベス・デイヴィッツ 
 2009年のミステリー界を席巻したミレニアム3部作の第1作「ドラゴン・タトウーの女」のハリウッド・リメイク版です。オリジナルのスウェーデン版はDVDを借りてきて見たのですが、原作を読んでいてストーリーがわかっているということもあったのでしょうが、ちょっと退屈して眠ってしまいました。
 それと比べると、今回のリメイク版は最後まで飽きずに観ることができました。一番の理由はリスベット・サランデル役のルーニー・マーラの熱演のせいでしょうか。彼女はこの演技によりアカデミー賞にノミネートされていますが(残念ながら受賞は逃しました。)、彼女が同じフィンチャー監督作品である「ソーシャル・ネットワーク」の冒頭でマークに愛想を尽かして出ていく女性と同一人物とは、びっくりです。清楚な感じの女性から鼻や口にピアスをし、鶏冠のような髪型という、見ただけで近寄りたくないような女性に変身ですからねえ。強烈な印象を与えます。でも、ラストのリスベットは悲しすぎます。次作もぜひリスベットは、ルーニー・マーラでお願いしたいです。
 一方、ミカエル・ブルムクヴィストを演じるのはダニエル・クレイグです。相変わらずもて男ですが、O07のようにはかっこよくはなく、危ないところをリスベットに助けられたりと今回は普通のおじさんです。
 スウェーデンを舞台としているのに、なぜ登場人物はみんな英語で話すのかという点はともかく、あのどんよりとした天候がこの作品の雰囲気にピッタリです。
ものすごくうるさくてありえないほど近い(24.2.25)
監督  スティーブン・ダルドリー
出演  トム・ハンクス  サンドラ・ブロック  トーマス・ホーン  マックス・フォン・シドー  バイオラ・デイビス
     ジョン・グッドマン  ジェフリー・ライト  ゾーイ・コールドウェル
 9.11事件で父親を亡くし、そこから立ち直れないでいる少年。ある日、父親の部屋で花瓶の中にあった鍵を見つける。彼は、鍵に合う鍵穴を見つけようと、鍵が入っていた封筒に書かれていた「ブラック」という名前を持つ人を訪ね歩く。ある日、向かいのアパートに住む祖母の間借り人と出会った少年は、彼を連れて訪問を続けるが・・・。
 ひとことでいえば、父と息子の物語であり、母と息子の物語であり、そして家族の物語です。
 タンバリンを鳴らしながらでないと外を歩けないオスカーが、鍵穴を見つけるために、多くの知らない人と出会い、話をするということは、本当に苦しかったことでしょう。我慢していたオスカーが間借り人に心の丈をいっきにぶちまけるところにはグッときてしまいました。
 その間借り人を演じたのはマックス・フォン・シドーです。話すことができないため、心の思いを表情で語るのですが、その表情がいいんですよね。アカデミー賞にノミネートされていた助演男優賞は受賞を逃しましたが、本当に素晴らしい演技です。
 夫の死後、息子との距離が離れたと感じ悩む母親をサンドラ・ブロックが演じています。彼女といえば、いっきに人気が爆発した「スピード」やゴールデン・グローブ賞にノミネートされた「デンジャラス・ビューティー」など、元気がいい女性という印象が強かったのですが、アカデミー賞を受賞した「しあわせの隠れ場所」といい、今回といい、息子を理解し手助けをする素敵な母親役を演じています。映画の前半は彼女の登場が少ないのですが、ラスト明らかとなる事実にきっと泣けます。
 出番が少ないトム・ファンクスですが、今更あえて言うまでもなく、息子を見守る父親役としていい味出しています。
 主役のオスカー役のトーマス・ホーンくん。映画デビューということですが、父親の死を乗り越えてしだいに成長していく少年を見事に演じています。上述のとおり、彼が間借り人に思いの丈をぶつけるシーンは、見所です。最近の日本の子役が凄いですが、あちらも負けていません。
ヒューゴの不思議な発明(24.3.1)
監督  マーティン・スコセッシ
出演  ベン・キングズレー  エイサ・バターフィールド  サシャ・バロン・コーエン  クロエ・グレース・モレッツ
     ジュード・ロウ  レイ・ウィンストン  エミリー・モーティマー  ヘレン・マックロリー  クリストファー・リー
     マイケル・スタールバーグ  フランシス・デ・ラ・トゥーア  リチャード・ギリフィス
 映画の舞台は1930年代のパリ。父親を火事で亡くしたヒューゴは、時計職人の叔父に引き取られて、駅の構内の時計台の中で暮らしている。叔父が姿を消してからは、駅の時計のネジを巻くのがヒューゴの日課となっていた。ヒューゴは父が死ぬ前に熱中していた博物館の屋根裏で見つけた機械人形の修理を引き継いで、父の残した修理方法を記したノートを元にどうにか動くようにしようとしていた。ある日、構内のオモチャ屋で修繕のための部品を盗もうとしたヒューゴは店主のジョルジュに捕まり、父のノートを取り上げられる。ノートを見たジョルジュはなぜか怒り出す・・・。
 いつもは骨太な男たちのドラマを作るマーティン・スコセッシが、今回はファンタジックな作品に取り組みました。観る前は子ど向けのファンタジー映画かと思っていましたが、そうではありません。残念ながらノミネートされていたアカデミー賞作品賞、監督賞は受賞を逃しましたが、映画への愛を感じることができる素敵な作品となっています。機械人形を“修理”するだけでなく、ある人の心を“修理する”ちょっとほろっとさせる話になっています。
 主人公のヒューゴを演じたのはエイサ・バタフィールドくん。彼が出演している「縞模様のパジャマの少年」が観たくなりました。
 ジョルジュの養女でヒューゴを助けるイザベルを演じたのは、このところ「キック・アス」や「モールス」など、大活躍のクロエ・グレース・モレッツです。撮影時13歳だったそうですが、とても13歳には見えません。今後も期待の女優さんです。
 このところの映画では子役の活躍が顕著ですが、老人も負けていません。本屋の店主を演じたあのドラキュラ俳優(今ではもうそんなイメージもないですね)のクリストファー・プラマーは撮影時89歳の高齢で出演しています。すごいです。ジョルジュを演じたベン・キングズリーが若く思えるほどです。
 同時公開された3D、2Dのうち、時間の都合で2Dを観たのですが、これは3Dではどうなんだろうと気になる映画です。
シャーロック・ホームズ シャドウゲーム(24.3.10)
監督  ガイ・リッチー
出演  ロバート・ダウニー・Jr  ジュード・ロウ  ノオミ・ラパス  ジャレッド・ハリス  レイチェル・マクアダムス
     スティーブン・フライ  エディ・マーサン  ケリーライリー
(ちょっとネタばれ注意)
 ロバート・ダウニー・Jr主演の「シャーロック・ホームズ」の第2弾です。
 今回はホームズの宿敵とされるモリアティー教授との戦いを描きます。前作でアイリーンの雇い主としてチラッと顔を見せずに登場していたモリアティーですが、今回はホームズと正面からの戦いです。この映画、前作の感想でも書きましたが、今まで持っていたホームズのイメージをがらっと変えた作品となっており、今回もミステリーではなく、冒険活劇といった方が適切な作品となっています。
 前作でもそうでしたが、ホームズが敵と格闘する前にその一連の動きを予めイメージするシーンがあります。今回は相手のモリアティーも同じことを行います。シャドウ・ゲームという副題は、二人のそんなイメージの戦いを指して付けられたのでしょうか。
 モリアティー教授との戦いといえば、小説を読んだ人はご存じの、ラストはライヘンバッハの滝での戦いです。映画では小説とは異なって、滝の上に城が造られているという壮観な絵になっています。戦いの結果がどうなったかは見てのお楽しみです。
 今回はホームズの兄のマイクロフトが登場しますが、この人のキャラも小説のイメージとは大違いでした。ホームズ以上に紳士だというイメージが強かったのですが、映画では紳士とは正反対の変わり者といった人物となっているのが愉快です。
 スローモーションでのシーンも見ものです。銃弾や砲弾が木の幹を削り取っていくシーンや砲弾の爆風で人が跳ぶシーンはすごいです。
 重要なキャラであるジプシーの女、シムを演じたのはスウェーデン版「ドラゴン・タトウーの女」でリスベット・サランデルを演じたノオミ・ラパスですが、素顔だと残念ながらあまり印象に残らない女優さんです。
 ラストにワトソンのもとに届けられた、ある“物”は何を示すのか、モリアティーとの戦いで重要な鍵になるものだと息子は言うのですが、さて事実はどうなんでしょうか。そうであれば、見事な伏線の回収となっているのですが。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙(24.3.17)
監督  フィリダ・ロイド
出演  メリル・ストリープ  ジム・ブロードベント  オリヴィア・コールマン  アレキサンドラ・ローチ  ハリー・ロイド
     ニコラス・ファレル  イアン・グレン  リチャード・E・グラント  アンソニー・ヘッド
 ヨーロッパで女性として初めて一国の首相となったサッチャーの娘が書いた本を原作に制作されたものですが、まだ存命中の、それも認知症に悩む姿をこうまで赤裸々に描くとは驚きです。
 サッチャーと言えば、副題にもあるように、“鉄の女”として、アルゼンチンとのフォークランド紛争を始めるなど√決して他に折れることがない首相だったという印象が強く残っています。
 その彼女が認知症に苦しむとは、老いというのは情け容赦のないものですね。老けメイクもすごいですが、メリル・ストリープの演技のすごさでしょうか、彼女がサッチャーそのものに見えてきてしまいました。この映画の成功は、サッチャーという強烈な個性と、それを演じたメリル・ストリープの見事な演技に尽きます。メリル・ストリープが、この演技でアカデミー賞主演女優賞を受賞したのも頷けるところです。
 それにしても、サッチャーの首相在任の末期は、本当に嫌な首相でしたね。腹心に裏切られるのも無理ないと思ってしまいます。政治家の生涯を描いた映画なんて眠くなりそうだと思ったのですが、思わず引き込まれて観てしまいました。おすすめです。
しあわせのパン(24.3.17)
監督  三島有紀子  
出演  原田知世  大泉洋  森カンナ  平岡祐太  光石研  八木優希  中村嘉葎雄  渡辺美佐子  中村靖日
     池谷のぶえ  本多力  霧島れいか  あがた森魚  余貴美子  大橋のぞみ
 洞爺湖畔で宿泊設備を備えたオーベルジュ式のパンカフェ・マーニを営むりえさんと水嶋くんの夫婦と、そこにやってきた人々、そしてマーニの常連さんたちとの心温まる交流を描いた作品です。
 季節ごとの3つのエピソードから構成されています。夏にやってきたのは、沖縄旅行を恋人にドタキャンされ、傷心のカオリ。秋にやってきたのは、母親が家を出て行き、寂しさに耐える小学生の女の子・未久。冬にやってきたのは、死に場所を求めて思い出の地を訪ねてきた史生とアヤの老夫婦。マーニを訪れたときは彼らがそれぞれ心の中に持っていた悲しみが、ここから去るときには癒されていく様子が描かれます。
 マーニの常連は北海道から出ることができない青年トキオ、山高帽をかぶり大きなトランクを下げている阿部さん、郵便配達(といっても、日本郵便の配達人にはとても思えません。)の最後まで名前のわからない青年、地獄耳のガラス作家のヨーコさん、野菜作りをしている子沢山の広川夫婦といういい人ばかり。
 りえさんを演じるのは原田知世さん。周りの時間がものすごくゆったりと流れているという雰囲気を感じさせる不思議な女優さんです。僕と同世代なのに、デビュー作の「時をかける少女」から見た目あんまり変わっていないのは驚きです。
 水嶋くんを演じる大泉洋さんも、いつもの慌ただしいキャラとは180度異なる落ち着いた雰囲気のパン屋の主人を演じています。
 第三者の視点として存在するのが羊です。声を担当するのが、先頃芸能界からの引退を発表した大橋のぞみさん。時に入る羊のことばが効果的です。ちょっと現実感がないファンタジーです。心に安らぎを求めたい人にはおすすめの映画です。
おとなのけんか(24.3.31)
監督  ロマン・ポランスキー
出演  ジョディ・フォスター  ケイト・ウィンスレット  クリヅトフ・ヴァルツ  ジョン・C・ライリー
 子どものけんかに大人が口を出したことから起こる夫婦2組のドタバタを描いた作品です。
 舞台が原作ということで、この映画でも冒頭とラストに公園で遊ぶ子どもたちの場面があるほかは、アパートの部屋の中(それと部屋からエレベーターまでの廊下)だけで映画は進みます。登場人物も2組の夫婦だけ(そのほか夫婦の言い争いにドアから顔を覗かせる人がいますが)。
 この4人が最初は物わかりよく和気藹々と話をしていたが、しだいに相手を批判し、ののしりあうようになるばかりでなく、夫婦間でも日頃のうっぷんが爆発し、言い争いをするようになります。ただ、それだけの映画ですが、これが意外におもしろい。脚本ばかりでなく、2組の夫婦を演じた役者が芸達者ということも理由でしょう。なんといっても、3人がアカデミー賞受賞者ですからね。
 怪我をさせられた側がジョディ・フォスターとジョン・C・ライリー。怪我をさせた側がケイト・ウィンスレッドとクリストフ・ヴァルツ。知的でアフリカの紛争問題の本を執筆中の妻役がジョディ・フォスターにぴったりです。彼女にあんな役をやらせて、ちょっと嫌みだなあと思うくらいジョディ・フォスター自身の印象に合っています。
 一方貞淑な妻だが心の中で仕事一辺倒の夫に腹を立てている妻を演じるケイト・ウィンスレッドも役にぴったりです。それにしても、彼女にゲロを吐かせるとは、監督もやりますねえ。映画だからいいものの舞台ではゲロを吐くシーンはどうしているのか大いに気になります。
 クリストフ・ヴァルツが演じる仕事中毒の弁護士の夫は、話の途中でも関係なく電話に出てみんなをイライラさせますが、誰だって腹が立ちます。この4人の諍いの一因というか大きな原因は彼の電話にあります。まったく、こうして人を怒らせる人ってどこにもいますよね。携帯を花瓶に入れられて、愕然と力を落とす様子は笑えます。
 ラストに流れる映像を見ると、この親たちのバカさぶりが明らかです。それにしても、ジョディ・フォスターが作ったコブラーはまずそうです。
スペック 天(24.4.8)
監督  堤幸彦
出演  戸田恵梨香  加瀬亮  福田沙紀  竜雷太  椎名桔平  神木隆之介  浅野ゆう子  栗山千明
     伊藤淳史  でんでん  岡田浩暉  松澤一之  戴寧龍二  有村架純  麿赤兒  三浦貴大  利重剛
     戸田恵子  山寺宏一
(ネタバレあり)
 TBSで放映していた「スペック」の映画化です。スペックと呼ばれる特殊能力を持った者たちと警視庁公安部公安第5課未詳事件特別対策係に所属する当麻紗綾と瀬文焚流との戦いを描いた作品です。
 監督が堤幸彦さんですし、竜雷太さんも同じ役名で登場しているように、かつてTBSで放映していた「ケイゾク」の流れを組む作品といっていいでしょう。「ケイゾク」や「トリック」でもそうでしたが、堤さんの演出は独特のものがありますが、好きなんですよね。
 正直のところ、テレビシリーズを見ていない人には、なんだかふざけた映画だとしか思えないかもしれません。見ていた人にしかわからないギャグもありますし、そもそもストーリー自体テレビを見ていないと理解できません。ファンとしては、テレビでは死んでしまったスペックの持ち主たちが再登場したり、テレビで謎のままだったことが次第に明らかになっていくのが嬉しいですね。                                  l  沁
 戸田絵里香さん演じる当麻は口は悪いですし、初めて観た人には、「この女性何?」と、びっくりするでしょうね。「ライアーゲーム」のときとはイメージががらりと変わっていますが、こちらの方がいきいきと演じている感じがします。
 瀬文を演じる加瀬亮さんもそれまでは「それでも僕はやっていない」のイメージが強すぎて、口数少ない気弱な若者という印象が強かったのですが、この作品でイメージがガラッと変わりました。
 テレビシリーズが“起”、先日のスペシャルドラマが“翔”、そして今回が“天”となっています。起承転結ではないですが、このあと“けつ”あると思うのは当然のところ。ラストの驚愕のシーンにどう繋がっていくのか期特大です。あれを見ると単なるスペックの持ち主同士の戦いの結果とも思えないのですが(某映画のラスト、海岸から突き出ているアレと同じような衝撃のシーンですね。)。
 また、白ずくめの男も正体不明のまま終わってしまいましたので、“けつ”は、きっと、この男との戦いになるのでしょう。楽しみです。声と顔の下部分で演じている役者さんが誰かはわかるのですが、エンドロールにも名前を出さないという細かいところに気を遣っています。
アーティスト(24.4.8)
監督  ミシェル・アザナヴィシウス
出演  ジャン・デュジャルダン  ベレニス・ベジョ  ジョン・グッドマン  ジェームズ・クロムウェル  ミッシー・パイル
     ペネロープ・アン・ミラー  アギー(ジャック・ラッセル・テリア)
 本年度アカデミー賞作品賞、主演男優賞など5部門を受賞した作品です。
 何といってもインパクトが強いのは、この作品がモノクロ・サイレントであること。3D華やかなりし今にモノクロ・サイレントですからねえ。ここまで評判を呼んだのはびっくりです。僕自身、初めて劇場で見たモノクロ・サイレント映画です。モノクロということなら、「エレファントマン」を観たことがありましたが、サイレントは初めて。セリフがないので、
スクリーンをじっと見て、役者の表情で状況を推測しなければなりません。だからでしょうか、演じる人たちもいつもの映画に比べると、表情にメリハリがあり豊かな気がします。真剣に表情の動きを追ってしまいました。
 サイレント時代の売れっ子俳優ジョージ・ヴァレンティンはトーキー時代になってもサイレントに固執し、しだいに俳優として忘れ去られる存在となる。一方彼のファンでもあった新人女優のペピーは、トーキーになってから端役から次第にスターの座を駆け上がっていく。そんな二人の恋愛模様を描いたストーリーとしてはありふれた恋愛映画ですが、不思議と飽きさせません。こうした単純なストーリーの映画が最近は少なくなってきました。
 この作品がアカデミー賞まで上り詰めた理由の一つは、カンヌ映画祭でパルムドック賞(?)を受賞したジャック・ラッセル・テリアのアギーの名演技です。ひとつひとつの仕草が本当にかわいらしいい。火事で火に巻かれたヴァレンティンを助けるために警官を呼ぶシーンがその中でも一番の名演技です。
バトルシップ(24.4.13)
監督  ピーター・バーグ
出演  テイラーキッチュ  浅野忠信  リーアム・ニーソン  アレクサンダー・スカルスガルト  ブルックリン・デッカー
     リアーナ  ハーミッシュ・リンクレーター  ピーター・マクニコル  ジョン・ツイ  ジェス・プレモンズ
(ネタバレあり)
 地球に似た環境の星に送った電波によって、エイリアンが地球を来襲。たまたま合同演習を行っていたアメリカと日本の海軍がそれを迎え撃つという話です。とにかく圧倒的な攻撃力の前に地球軍はなすすべもない状況となり、最新鋭のイージス艦も海の藻屑と消えます。
 ゲームが元になった映画ですから、人間描写などという深いものはなく、単純にどうエイリアンを倒すかという話だけですが、それにしても、遙か宇宙のかなたから地球にやってくる科学力がありながら、簡単にやられ過ぎ。
 そのうえ、あんな無理な方向転換をしたら艦はまっぷたつになってしまうだろうとか、あれだけの科学力を持ちながら、宇宙船の窓がたかが銃弾で壊れてしまうのかなどと突っ込みたくなるご都合主義の描写もあります。一番気になったのは、レーダー基地の技術者をなぜエイリアンが見逃してくれたのか、説明がまったくありません。
 なかなか愉快だったのは、戦艦ミズーリーを動かそうとして、誰もそんな古い戦艦の動かし方を知らないというときに軍を退役した老人たちが登場するシーン。その前に、彼らが式典に呼ばれていたと、きちんと伏線を張ってありましたね。
 エイリアンの造形は、地球と似た星から来たということから人間に似た造形だったのでしょうが、あまりインパクトがありません。
 アメリカ人の監督が日本人を描くと、どうもヘンテコな目本人になってしまうのですが、今回の浅野さんの役はきちんと描かれていました。艦長が戦死した船でテイラー・キッチュ演じるホッパーが浅野忠信演じるナガタの能力を認めて、ナガタに艦長の座を譲るというシーンは象徴的です。
キツツキと雨(24.4.14)
監督  沖田修一
出演  役所広司  小栗旬  古館寛治  森下能幸  平田満  高良健吾  黒田大輔  高橋努  伊武雅刀
     臼田あさ美  嶋田久作  神戸浩  山崎努
 息子との関係がうまくいっていない木こりの男と、映画の撮影で村にやってきた自分に自信の持てない映画監督の若者の交流を描いた作品です。
 道ばたでエンストしている映画の撮影隊の道案内をしたことから、エキストラとして出演することとなった木こりの克彦。息子のような年齢の監督の幸一と関わることにより、次第に映画制作の現場に加わるようになります。初めは監督業をなげうって撮影現場から逃げようとした幸一も克彦との関わりの中で次第に自信を取り戻していきます。
 それぞれが相手に息子を見、父親を見たということでしょうか。ストーリーの中心となる話のパターンとしては、よくある話ですが、役所さんと小栗さんのコンビが観る者を引きつけます。何を演じさせても役所広司さんはうまいですよね。役所さんが演じるが故に笑いを醸し出すというシーンもあります。小栗句さんも、なかなか気の弱い男がさまになっています。
 克彦の繋がりで村の人たちもエキストラとして映画に出演するようになり、村中がゾンビだらけになるのは愉快です。大笑いではないがくすっとした笑いを与えてくれる、観ていてほのぼのとする映画でした。

 ※劇中のゾンビ映画については、どう考えてもあれがヒットするとは思えません。村の演芸会の延長戦のような映画です。
テルマエ・ロマエ(24.4.28)
監督  武内英樹
出演  阿部寛  上戸彩  市村正親  北村一輝  宍戸開  勝矢  笹野高史  竹内力  キムラ緑子  松尾諭
     神戸浩  内田春菊  いか八朗  長野克弘  菅登未男  蛭子能収  森下能幸
 マンガ大賞&手塚治虫文化賞短編賞をW受賞したコミック「テルマエ・ロマエ」の映画化です。
 古代ローマの浴場設計技師のルシウスが、なぜか現代の日本の銭湯にタイムスリップ。そこで見たものを取り入れて浴場を設計したところ人気を呼び、ときの皇帝の浴場設計をするまでになる・・・。
 古代ローマ人の思考と現代日本の文化とのギャップが笑いを呼びます。深く考える必要はありません。単純に、見て笑ってストレス発散に最適な映画です。
 ローマ人を演じた役者さんたちが、主役の阿部寛さんはもちろん、皇帝ハドリアヌス役の市村正親、次期皇帝候補ケイオニウス役の北村一輝、アントニヌス役の宍戸開と、ものの見事に濃い顔ばかり。“平たい顔族”(私もそうですが)のお爺さんたちとの対象がおもしろいです。
 あまりタイムスリップの理論とか考えないでください。それを考えたら突っ込みどころ満載になってしまいます(だいたいラスト、どうして風呂ではないところから出現したのか!?)。
HOME 愛しの座敷わらし(24.4.28)
監督  和泉聖治
出演  水谷豊  安田成美  橋本愛  濱田龍臣  草笛光子  飯島直子  草村礼子  沢木ルカ  菅原大吉
     長嶋一茂  高島礼子  ベンガル  梅沢富美男  石橋蓮司  段田安則  宇津井健
 テレビドラマ「相棒」のスタッフが水谷豊さんを主演に据えて製作したホームドラマです。
 父親の転勤で東京から岩手の田今町に引っ越してきた高橋一家。新しく住むことになった家は、築200年以上の藁葺き屋根の家。東京の本社から左遷された父親の晃一、慣れない田舎暮らしに戸惑う母親の史子、東京でいじめに遭っていた娘の梓美、ぜんそく持ちの息子の智也、そして認知症が心配な祖母の澄代の5人家族が、その家に住む座敷わらしの騒ぎをきっかけに家族としての絆を取り戻していく様子を描きます。
 とても素敵な映画だったのですが、東京の学校で娘がいじめに遭っていることを知らなかったにしても、認知症が出てきた義母に対しても適切に対応する史子がいるのに、家族がすれ違いという前提が理解できません。あんな奥さんなら、家族をしっかり守っていくのではないのかなあと思ってしまいました。とにかく、史子さんが最高で、それを演じた安田成美さんがまた、役柄にぴったりで最高です。主演の水谷豊さんが「ぜひに」と請うて妻役に迎えたのが大成功です。
 荻原浩さん原作の小説では、もっと深刻な家族関係だったと思うのですが、この映画では夫も妻もできすぎという感があります。本社に戻されると聞いた晃一が部長を前にした演説はカッコよすぎです。でも、こういうホームドラマを観ていると心がほっとしますね。
わが母の記(24.5.3)
監督  原田眞人
出演  役所広司  樹木希林  宮崎あおい  ミムラ  キムラ緑子  南果歩  菊池亜希子  真野恵里菜
     三浦貴大  赤間麻里子  三國連太郎  小宮孝泰
 井上靖さん原作「わが母の記〜花の下・月の光・雪の面」の映画化です。自伝的小説ということで、主人公は自身をモデルにした人気作家の伊上洪作。彼には幼い頃、曾祖父の愛人だった女性の元に預けられたことがあり、そのことを母親に捨てられたと思っていた。父親が亡くなり、しだいに母親に認知症の兆候が出てくるが・・・。
 もう何といっても母親役を演じた樹木希林さんの演技が凄すぎます。監督のインタビューによると、樹木さんは「メイクアップも特殊メイクもいや。・・・入れ歯を取ったり、身体を丸めたりすれば年寄りのように見えます。」と言ったそうですが、見事に認知症の老人役を演じています。もう今年の主演(助演)女優賞は決まりではないでしょうか。
 樹木さんの演技にばかり目がいってしまうのですが、主人公の作家伊上を演じた役所さんは、これはもう何を演じさせてもうまいとしかいいようがない演技ですし、伊上の三女役を演じた宮崎あおいさんも、あの歳にしてセーラー服も違和感なく(おじさんの感想です(笑))、樹木さんや役所さんに対峙しても負けない演技を見せてくれます。伊上の妹を演じるキムラ緑子さんと南果歩さんも脇役として忘れてはいけません。
 終盤、母親が大切に持っていたものを伊上が知ったとき、自分が捨てられたとばかり思っていた母の行動の本当の想いを知ったときのシーンは、思わず涙が浮かんできてしまいました。おすすめです。
 親の心子知らずといいますが、自分が親となって年齢を重ねて初めて「そういえば、あのときは」と、親の心がわかってくるものですね。
 それにしても、人気作家というのは裕福な暮らしができるものですねえ。うらやましい。
宇宙兄弟(24.5.12)
監督  森義隆
出演  小栗旬  岡田将生  麻生久美子  井上芳雄  濱田岳  新井浩文  塩見三省  堤真一  益岡徹
     森下愛子  吹越満  堀内敬子  中野澪  中島凱斗  バズ・オルドリン
 現在上映申の「テルマエ・ロマエ」同様、漫画が原作の映画化です。
 幼い頃、夜空に飛ぶ宇宙船らしきものを目撃したムッタとヒビトの兄弟。それを見た弟は宇宙飛行士になって月に行くと宣言し、弟に将来を聞かれた兄は、“兄たる者、弟の前を行かなくてはならない”との考えで宇宙飛行士になって火星に行くと宣言する。時が過ぎ、弟は夢を叶え、月面に降りる最初の日本人として宇宙に飛び立つこととなる。一方、兄は弟の悪口を言った上司に頭突きを食らわせ会社を首になってしまう。しかし、弟が勝手に応募した宇宙飛行士募集の書類選考に通ってしまい、JAXAで行われる宇宙飛行士を目指した最終試験に臨むこととなる。
 子どもの頃の夢を叶えたできのいい弟と、常に弟の後塵を拝してしまう兄。しかし、そんな兄が弟との幼い日の約束を守るために、がんばる姿に思わず声援を送りたくなります。
 イケメンの小栗句さんが、人のいい弟思いの天然パーマ頭の長男を演じます。原作の漫画を読んでいないので、果たして小栗さんの長男が原作のイメージに合っているのかどうかはわかりませんが、映画としては、できのいい弟役を演じた岡田将生さんとの兄弟役がなかなか様になっていたと思います。兄弟のいなかった僕としてはうらやましい限り。我が家の兄弟は、この映画をどう見るのでしょうか、気になるところです。
 それにしても、閉鎖環境での選考の中でムッタに出された、チームで制作していた工作の破壊、そして破壊したことを黙っていることという指令は、何のため、宇宙飛行士としてのどんな適性を見るものだったのでしょう?
 先頃観た「アーティスト」同様、犬が(こちらはパグですが)なかなかの演技(?)を見せてくれます。
裏切りのサーカス(24.5.19)
監督  トーマス・アルフレッドソン
出演  ゲイリー・オールドマン  コリン・ファース  キャシー・パーク  ベネディクト・カンバーバッチ  ジョン・ハート
     デヴィッド・デンシック  スティーヴン・グレアム  トム・ハーディ  キアラン・ハインズ  トビー・ジョーンズ
     スヴェトラーナ・コドテェンコワ  サイモン・マクバーニー  マーク・ストロング
 スパイ小説の大御所、ジョン・ル・カレ原作「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」の映画化です。
 舞台は東西冷戦時代の頃の英国。サーカスと呼ばれる英国情報部の中に潜むソ連の二重スパイ・もぐらを暴き出すために、一度は情報部を追われた老スパイ・スマイリーに指令が下る。怪しい人物は情報部の幹部、コードネームがティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマンの4人。果たして4人の中、二重スパイは誰なのか。
 「1度目、あなたを欺く。2度目、真実が見える。」を謳い文句に、リピーター割引を実施しているだけあって、なかなか1度目で細かい部分まで理解して楽しむのは難しいです。二重スパイの情報を得るためにハンガリーに潜入し殺されたはずのスパイ、ソ連通商部の使節団の女性に恋してしまったスパイなどが登場し、事態をいっそう複雑にしていきます。
 ラスト、二重スパイの正体が明らかにされますが、この人が二重スパイではある意味当たり前すぎると、ちょっと残念。それに二重スパイが暴かれた後のあの結果はどういうことなのでしょう。なぜ、あの男がここでライフルを持って登場したのか?
 確かに1度ではわからないことが多すぎますが、2度観るよりも原作のラストだけ立ち読みしようかと思っています。
 主人公スマイリーを演じたのはゲイリー・オールドマンです。「レオン」に見られるようにあくの強い演技が印象的ですが、今回は地味で笑顔も見せない今までと正反対の印象を与えます。残念ながらアカデミー賞主演男優賞はノミネートに留まりましたが、彼の新境地と言えるでしょう。
ポテチ(24.5.19)
監督  中村義洋  
出演  濱田岳  木村文乃  大森南朋  石田えり  中村大樹  松岡茉優  桜金造  阿部亮平  中村義洋
 伊坂幸太郎さん原作の「フィッシュストーリー」の中に収録されている「ポテチ」の映画化です。
 主演は、伊坂作品にはこの人を忘れてはいけません、濱田岳くんです。小柄な濱田くんを主役ともいうべき今村役に配したところがこの映画のミソです。
 監督は先に「アヒルと鴨のコインロッカー」「フィッシュストーリー」「ゴールデンスランバー」と伊坂作品を手がけている中村義洋さんです。中村監督、監督に飽き足らず、中村親分(専務?)まで演じています。そのうえ、エンドロールが流れる中、挿入されたシーンにまで登場してしまっています。原作にはありませんが、これまた、なかなかのシーンです。うまいなあ。
上映時間、わずか68分という短さ。原作が110ページほどの中編ですから、それを考えると妥当なところでしょうか。入場料もさすがに1800円では高いと思ったのでしょう、1300円でした。
 ストーリーは野球選手と、彼が試合中に彼の部屋に空き巣に入った今村と大西若葉のカップルの話です。それに伊坂作品では人気のある登場人物、黒澤が絡んで思わぬ感動的なストーリーとなっています。
 コンソメ味のポテトチップスを頼んだのに間違って今村が買ってきた塩味を食べた若葉が『コンソメ食べたい気分だったんだけど、塩は塩で食べてみるといいもんだね。間違えてもらって、かえって良かったかも』というシーンに、原作を読んだことのある人はジ〜ンときてしまうでしょうね。あのシーンで笑っている人がいましたが、確かに知らないで観ると濱田くんの泣く様子に笑ってしまうでしょう。実はすごく奥深いことが隠されてるなんて最後にならないとわかりませんものね。
 黒澤を演じていたのは大森南朋さん。「ラッシュライフ」の映画化の際は堺雅人さんが演じていましたが、雰囲気としては大森さんの方が合っているかも。
 大西若葉役を演じていたのは、木村文乃さん。NTTドコモのCMに出演していたときに、ちょっと気になる女優さんでしたが、今回勝気な若葉にピッタリ。『ぶっとばすぞ!』というセリフが見事に合っています。今後、注目ですよ。
 そういえば、女優の竹内結子さんがちょっと顔を出しているとのことだったのですが、結局わかりませんでした。まあ、エキストラの一員ですからしょうがないですが。そういえば、「ゴールデンスランバー」では主人公を堺雅人さん、その元恋人を竹内結子さん、そしてその夫を大森南朋さんが演じていましたね。
 短い映画でしたが、本当に素敵な映画でした。
ダーク・シャドウ(24.5.20)
監督  ティム・バートン
出演  ジョニー・デップ  ミシェル・ファイファー  ヘレナ・ボナム=カーター  エヴァ・グリーン  ジョニー・リー・ミラー
     クロエ・グレース・モレッツ  ジャッキー・アール・ヘイリー  ベラ・ヒースコート  ガリー・マクグラス
 ティム・バートン、ジョニー・デップのコンビの最新作です。
 200年前に自分を愛する魔女によって吸血鬼にされ、地中に埋められていたバーナバス・コリンズが、工事で掘り起こされて復活。すっかり没落してしまったコリンズ家の再興を目指します。一方、彼を吸血鬼にした魔女は今では町を牛耳る水産会社の女社長として君臨。さて、この2人の因縁はどうなるのか・・・
 ジョニー・デップが日傘とサングラスをすれば日中も外を歩ける吸血鬼という、またまたアクの強いキャラを演じます。対する魔女役はエヴァ・グリーン。今年初めに観た「パーフェクト・センス」にも出演していたきれいな女優さんですが、今回は髪を金髪にしてこれまた派手なキャラを演じます。いいのかなあ、こんなキャラを演じてしまって。
 バーナバスの子孫の女の子を演じたのはクロエ・グレース・モレッツ。現実にはまだ14歳という年齢ながら色っぽいことこの上ない。彼女もラストは思わぬ姿を見せてくれますが、これでは正統派美女から外れる役ばかりきそうですね。
 コリンズ家の現在の主人エリザベスを演じていたのは、ミシェル・ファイファー。いやあ〜年取りましたねえ。「恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」の色っぽいお姉さんが、すっかりおばさんになってしまいました。時の流れって恐ろしいですね。
 ティム・バートンの奥さんのヘレナ・ボナム・カーターも相変わらず出演しています。この人、せっかく「英国王のスピーチ」とかで高い評価を得ているのに、旦那さんの作品で変な役ばかりやってしまっていいんですかねえ。
 エンターテイメントに徹した映画です。紬かいこと気にせずに楽しむのが一番。舞台が1970年代なので、カーペンターズの懐かしい歌が流れるのも嬉しいですね。
ミッドナイトFM(24.5.26)
監督  キム・サンマン
出演  スエ  ユ・ジテ  マ・ドンソク  チョン・マンシク  キム・サンマン
(ちょっとネタバレ)
 娘の失語症を治療するためにアメリカに行くこととしたラジオ・パーソナリティのソニョン。担当する深夜番組の最後の放送を始めたとたん、ソニョンの自宅に押し入り妹たちを人質にしたドンスから、自分のリクエストどおり放送しろとの電話が入る。
 美しいラジオ・パーソナリティの女性とサイコ男との闘いを描いた韓国映画です。最初は放送スタジオとマンションの部屋との間での主人公とサイコ男との駆け引きを描くかと思いましたが、後半はカーチェイスありのアクション映画となります。
 韓国のサスペンス映画というのは、「オールド・ボーイ]や最近の「悪魔を見た」まで、とにかく強烈なキャラが出てきますが、この作品にも「オールド・ボーイ]でも悪役だったユ・ジテがドンス役としてサイコ男を演じます。ユ・ジテはこの作品では頭を丸め、ズボンは派手な赤色に毛皮みたいなジャケットを羽織るという、観ただけで近寄りたくない印象を与えます。でも、「オールド・ボーイ」の悪役に比べるといまひとつ。やはり彼はダンディな格好の方が怖さを感じます。
 ソニョンの娘役で出ていた子役の演技がうまいですねえ。韓国の芦田愛菜ちゃんです。主役のソニョン役のスエが食われています。ソニョンのファンで、ほとんどストーカーの男が登場しますが、あれだけソニョンに尽くしてもまったく見返りがないようで、かわいそうです。
 可もなく不可もない映画ですが、展開が早いので、眠ることなく観ることはできます。
ファミリー・ツリー(24.6.1)
監督  アレクサンダー・ペイン
出演  ジョージ・クルーニー  シャイリーン・ウッドリー  アマラ・ミラー  ボー・ブリッジス  ジュディ・グリア
     ニック・クラウス  ロバート・フォスター  マシュー・リラード
 妻がパワーボートの事故により意識不明の昏睡状態となったマット・キン。仕事一筋で家庭のことを顧みなかったマットは、病院のベッドで眠る妻に代わり、難しい年頃の高校生と小学生の娘の面倒を見ることとなるが彼女らにどう対峙したらいいか途方に暮れるマット。そんなマットに対し、長女の口から話されたのは妻が浮気をしていたという事実。妻はマットと離婚して浮気相手との結婚を望んでいたと聞いたマットは相手の男を捜し始める。一方、マットはハワイのカメハメハ大王の末裔であり、信託を受けて管理していた土地をレジャー産業に売り渡すかどうか一族の意見を聞きながら難しい決断を迫られていた。
 仕事に夢中の夫に不満で夫婦のベッドにまで浮気相手を連れ込む妻や、不労所得の相続財産は貯金し手をつけない婿に対し、事故にあったのはボートを買ってあげなかったからだと非難する義父に、観ていて腹が立ってしまったのは僕だけではないでしょう。離婚して浮気相手と結婚したいと思っていたのに、相手にはそんな気がなかったというのは、奥さんかわいそうでしたが。
 マットを演じたのはジョージ・クルーニー。今までのような格好いい役ではなく、中年のおじさん役を見事に演じています。娘から浮気の事実を聞いて、妻の友人宅に走っていくところなんて、まったくの中年おじさんの走り方です。前に進みたいという気持ちに足が追いつかないでバタバタ走るという感じが最高。自分のことを棚に上げて、中年のおじさんだなあと笑ってしまいました。いつまでもハンサムな格好いい役ばかりやっていられないとジョージ・クルーニーも考えたのでしょう。アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたのも当然と思える演技でした。
 ラストは家族の絆を再確認し、一族の絆も大事にしていきたいと考えての決断が下されます。
 長女の彼氏が、最初は馬鹿丸出しの男と思ったのですが、その脳天気なところが父娘のクッションの役目を果たして、なかなかの役どころでした。
メン・イン・ブラック3(24.6.1)
監督  バリー・ソネンフェルド
出演  ウィル・スミス  トミー・リー・ジョーンズ  ジョシュ・ブローリン  ジェマイン・クレメント  エマ・トンプソン
     マイケル・スタールバーグ  ニコール・シャージンガー  マイケル・チャーナス  アリス・イヴ  ビル・ヘイダー
 10年ぶりのシリーズ第3弾。理屈抜きに大画面のスクリーンで楽しんでくださいという映画です。
 月にある重罪犯エイリアンを収容する刑務所を脱獄したボリスが自分の腕を奪ったKへ復讐するため地球にやってくる。ボリスはタイムマシンで過去に行きKを殺そうとする。ある朝出勤してきたJはKの姿が見えないことに気づき、新任の上司Oに尋ねるが、OからはKは20年前に殉職したと聞かされる。Kを助けるためにJは1969年にタイムトラベルする。タイムパラドックスなどという難しいことは考えずに素直に楽しんでください。これは、そういう映画です。
 今回、Kを演じるトミー・リー・ジョーンズの出番はあまりありません。代わって1969年に生きるK役でジョシュ・ブローリンが出演しますが、これがなかなかトミー・リー・ジョーンズに似ています。いかにも若い頃はこんな顔だったろうなあと違和感かおりません。出番の少なかったトミー・リー・ジョーンズですが、老けましたねえ。顔に生気が感じられません。あれでは派手なアクションは無理でしょうね。
 ストーリーは、見事にボリスをやっつけて、めでたしめでたしとなりますが、ラストにきてKとJの思わぬ因縁が明らかにされます。うまい脚本です。このシリーズもこれでおしまいでしょうか。
外事警察(24.6.14)
監督  堀切園健太郎
出演  渡部篤郎  真木よう子  キム・ガンウ  尾野真千子  田中泯  石橋凌  遠藤憲一  余貴美子
     北見敏之  滝藤賢一  渋川清彦  山本浩司  イム・ヒョンジュン   
 警視庁公安部外事課、通称「外事警察」の暗躍を描いた作品です。
 NHKテレビで放映されていたときは見ていなかったのですが、“国営放送”であるNHKにしては思い切った作品を作りましたね。よく日本はスパイ天国だ、各国のスパイが自由自在に活動していると言われていますが、こんな外事警察があったらそんなに自由自在にというわけにはいかないと思うのですが。
 「公安の魔物」と言われた住本を演じる渡部篤郎さんですが、もともと切れると何かしそうという印象を与える役者さんですが、今回も最初は口調は丁寧、しかし、しだいに相手の弱みにつけ込んで自分の要求を受け入れさせる、国家のためなら個人はどうでもいいという恐ろしい男を演じています。
 住本によって夫をスパイするという役目を負わされた果織を真木よう子さんが演じています。顔に似合わないハスキーボイスが気の強い女の役どころにピッタリです。
 韓国の俳優さんが何人か出演していますが、その中でもアンミンチョルを演じたキム・ガンウさんが格好いいことといっ
たら、出演者の中でピカイチです。こういうフィルムノワール的な作品は韓国の方が日本より数段上ですからねえ。俳優さんもうまいですよ。
 在日2世の科学者を演じた田中泯さんは、存在感抜群です。元々は舞踏家ですが、「隠し剣」や「メゾン・ド・ヒミコ」など映画出演も多いです。演ずるということでは舞踏家も映画俳優も同じということですね、渋い演技が光ります。
 ラストシーンは、あれっ?と思いましたが、よく考えてみると、そうだったんだあと住本の怖さが改めてわかりました。
スノーホワイト(24.6.16)
監督  ルパート・サンダース
出演  クリステン・スチュワート  シャーリーズ・セロン  クリス・ヘムズワース  サム・クラフリン  サム・スプルエル
     イアン・マクシェーン  ボブ・ホスキンス  レイ・ウィンストン  ニック・フロスト  エディ・マーサン
     トビー・ジョーンズ  ジョニー・ハリス  ブライアン・グリーソン
 いわゆる『白雪姫』の映画化です。ところが、この映画の白雪姫は7人の小人とのんびり歌って踊っているだけのお姫様ではありません。魔法使いの女王に奪われた国を奪い返すために戦う女です。
 国に進入してきた謎の部隊を確り、助けた捕虜のラヴェンナの美しさに心を奪われた王様は彼女と結婚します。ところが、ラヴェンナは王を殺害し、王国を乗っ取ってしまいます。以後塔に幽閉されていた白雪姫は、ある日、隙をついて脱走し、黒の森へ逃げ込みます。死んだ妻を蘇らせるという条件で白雪姫を追ったハンターのエリックでしたが、女王に騙されたことを知り、白雪姫を連れて逃げます。
 逃げる途中で小人たちと出会うのですが、いくら数えても8人。7人ではないのか?と突っ込みましたが、そこは最終的には童話どおりに。妖精の森が出てきますが、あれって完全にジブリのまね(もののけ姫)ではないでしょうか。日本人ならみんなきっとそう思いますよ。
 この作品の白雪姫は、戦うお姫様ですが、演じたクリステン・スチュワートは気の強さが顔に出ているので、ピッタリです。甲冑姿もお似合いですし。ただ、今回鏡は嘘をつきましたよね。女王様が「世界で一番美しいのは誰?」と聞いて、「白雪姫が女王を追い越す」と答えるのですが、確かにクリステンには若さがありますが、女王を演じたシャーリーズ・セロンの方が綺麗ですよね。美しい顔から皺だらけのふけメイクまでやって女王を演じましたが、白雪姫より彼女の存在感の方がずっと大きかったですね。僕としてはクリステンの尖った顎の顔立ちも好きですが、大人の美しさという点ではシャーリーズ・セロンに軍配が上がります。
 忘れてはいけないリンゴも登場します。最後に毒リンゴで倒れたお姫様に王子様がやってきてキスをしたら目を開けたという単純なパターンにはなりませんでしたが。
サニー 永遠の仲間たち(24.6.16)
監督  カン・ヒョンチョル
出演  ユ・ホジョン  シム・ウンギョン  ジン・ヒギョン  カン・ソラ  コ・スヒ  キム・ミニョン  ホン・ジニ
     パク・チンジュ  イ・ヨンギョン  ナム・ボラ  キム・ソンギョン  キム・ボミ  ユン・ジョン  ミン・ヒョリン
(ネタバレあり)
 母が入院している病院で高校時代の友人・チュナに出会ったナミ。癌で余命2ケ月と宣告されていたチュナは、死ぬ前に高校時代の仲良しグループ“サニー”の仲間たちに会いたいと、ナミに友人たちの消息を探してくれるよう頼みます。
 彼女たちの高校時代と現在とを交互に描きながら物語は進んでいきます。年齢を重ねると過去を振り返ることが多くなります。特に輝いていた青春時代を。友情や喧嘩、淡い恋やその結果としての失恋、振り返れば楽しいことばっかりだったとはいえないかもしれません。でも、何にでも一所懸命だった気がします。この物語でもナミらの若さで輝いていた高校時代の友情や恋が描かれていきます。
 あんなに堅く友情を誓い合った仲間がどうして高校卒業後にみんな音信不通となってしまったのかとか、乱闘事件の後始末はどうしたのかとか、突っ込みどころはありますが、この映画を見ていると、ふとノスタルジックな気持ちになってしまい、自分自身の高校時代のことを振り返ってしまいました。映画は女性たちが主人公ですが、男性であっても、この映画を観た人は誰もがあの時代に思いを馳せるのではないでしょうか。
 二重まぶたの整形をしたかった少女、作家になりたかった少女、ミス韓国になりたかった少女、月日が彼女らの夢を奪い、彼女らの前には現実という壁が立ちはだかっています。この物語ではチュナの遺産のおかげでみんながハッピーエンドで終わって、それはそれでよかったぁと思いましたが、ただ、現実は厳しい。
 高校時代を演じる女の子と40代の現在を演じる女性たちがよく似ています。特にチュナを演じる二人なんて、大きくなったらきっとこんな女性になるんだろうなあというくらい雰囲気が似ています。そのため、現在と高校時代が行き来をしてもまったく違和感がありません。
 バックに流れる洋楽のヒットナンバーも懐かしいです。ラストで“サニー”に合わせてナミたちが踊るシーンに、そしてそのあとのラストシーンにグッときます。

※病室の人たちがドラマを見ていて、実は兄妹だったとか、不治の病ですという設定に呆れて怒るシーンがありますが、韓国ドラマの定番の設定にやっぱり韓国の人も「またか」と思っているんだと知って、笑ってしまいました。
フェイシズ(24.6.23)
監督  ジュリアン・マニャ
出演  ミラ・ジョヴォヴィッチ  ジュリアン・マクマホン  セバスチャン・ロバーツ  デヴィッド・アトラクチ
     サラ・ウェイン・キャリーズ  マイケル・シャンクス
 殺人事件の現場を目撃してしまったアンナは、犯人に追われて橋から落ち、一命を取り留めたが、頭を打ったため、人の顔の見分けがつかない相貌失認という症状を発してしまう。恋人の顔さえ見分けがつかない中、彼女に近づく男のうち果たして犯人は誰なのか。
 唯一の目撃者が顔の見分けがつかないという設定はおもしろかったのですが、ほとんどこの人が犯人だなと思われる人がすぐ分かってしまい、ミステリーという点ではいまひとつの作品でした。愛する男と犯人とが同じに見えてしまうというシーンがありましたが、顔は見分けがつかなくても、声で見分けがつくでしょうにと、突っ込みを入れたくなりました。
 アンナを演じるのは、ミラ・ジョヴォヴィッチ。「バイオハザード」などで“戦う女”のイメージが強いミラ・ジョヴォヴィッチですが、今回は相貌失認に怯える弱い女を演じます。ラスト、少しだけ戦う女の片鱗を見せてくれましたが、やはり、ミラ・ジョヴォヴィッチに弱い女は似合いません。
アメイジング・スパイダーマン(24.6.23)
監督  マーク・ウェブ
出演  アンドリュー・ガーフィールド  エマ・ストーン  リース・イーヴァンズ  デニス・リアリー  キャンベル・スコット
     イルファン・カーン  マーティン・シーン  サリー・フィールド
 トビー・マグワイア主演で3作製作されたスパイダーマンの再映画化です。
 今回ピーター・パーカーことスパイダーマンを演じるのは「ソーシャル・ネットワーク」に出演していたアンドリュー・ガーフィールドです。どこか人の良さそうな表情が印象的だったトビー・マグワイアとは違い、こちらはキリッとしたハンサムです。
 恋人は前シリーズのメリー・ジェーンではなく、グウェイン・ステイシーとなっており、演じる俳優もキリステン・ダンストからエマ・ストーンへ代わっています(グウェイン・ステイシーは、前シリーズの第3作では、ブライス・ダラス・ハワードが演じていましたが、スパイダーマンとキスしたのを、メリー・ジェーンが嫉妬するシーンがありましたね。)。はっきり言って、キリステン・ダンストに比べると、エマ・ストーンの方がかわいいです。
 幼い頃から伯父夫婦に育てられたという設定は前シリーズと同じです。今回、スパイダーマンが戦うのは彼の父親の同僚だったコナーズ博士です。彼が自分自身を人体実験に用い、結果、トカゲの化け物になってしまうというもの。でも、この人は人々を救いたいために研究をしていたという、元々は善人です。
 前シリーズではスパイダーマンの正体はメリー・ジェーンにはなかなか明かされなかったのですが、今回はすぐにグウェインに正体がわかってしまいます。いいのかなあ。だいたいこういうマスクマンの正体は恋人が知らないというのが定番で、正体を隠さなければいけないと悩む主人公というのがパターンだと思うのですが・・・。
 ピーターの両親の失踪(本当に死んでいるのか?)には、謎があるようです。ラスト、その辺が仄めかされて終わっていましたから、続編は当然あるのでしょう。エンドロールはきちんと最後まで見ましょう。
臨場(24.6.30)
監督  橋本一
出演  内野聖陽  松下由樹  渡辺大  平山浩行  高嶋政伸  若村麻由美  長塚京三  段田安則  柄本佑
     平田満  益岡徹  菅原大吉  デビット伊東  市毛良枝  伊藤裕子
 テレビシリーズにもなった横山秀夫さんの検視官を主人公にした「臨場」の映画化です。
 冒頭、先日大阪で起こった無差別通り魔事件を彷彿させるようなシーンが出てきます。バスの乗客と広場にいた人を次々と刺し、4人を死に追いやった波多野は、精神鑑定の結果、心神喪失状態での犯行として無罪が言い渡され、医療刑務所へと送られる。それから2年がたち、事件の弁護士と精神鑑定を担当した医者が相次いで殺されるという事件が発生する。果たして、事件は遺族の犯行なのか・・・。
 刑法39条では「心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」とされています。しかし、犯人が無罪を言い渡されたとき、遺族は誰に対し、その悲しみや憎しみをぶつければいいのでしょうか。素直に納得できる遺族はいないと思います。こういう映画を観ると、つい、もし自分が同じ立場に置かれたらどうだろうと考えてしまうのですが、やはり決して犯人を許すことはできないと思います。大学で刑法を学び、第39条はもちろん知っていますが、理論で遺族の心を癒すことはとてもできません。映画のテーマとしては、非常に難しい問題をはらんだ作品になっています。
 また、刑法39条の問題だけではなく、この作品では冤罪についても描かれます。無実の罪で逮捕され、厳しい取り調べに犯行を自供し、心神耗弱とされて首をつって自殺した息子と、その息子を助けてやれなかった刑事の父親。壁に書かれた「父さん、助けて」ということばに涙せずにはいられません。
 物語は遺族の一人、娘を殺された女性と、息子が冤罪で自殺した警察官を容疑者として描いていきますが、検視官・倉石の辿り着いた真相は・・・


(ここからネタバレあり)


 波多野は実は詐病だったということがわかるのですが、とすれば、なぜ彼はあのような事件を起こしたのか、そのことがまったく触れられなかったのは片手落ちという気もします。
 冒頭の大雨の中のシーンと、その後に描かれたことからは、あること(あまりのネタばれなので伏せます)を考えるのですが、果たしてどうなのでしょうか。
スープ〜生まれ変わりの物語〜(24.7.7)
監督  大塚祐吉
出演  生瀬勝久  小西真奈美  刈谷友衣子  野村周平  広瀬アリス  橋本愛  大後寿々花  松方弘樹
     古田新太  伊藤歩  山口紗弥加  堀内敬子  谷村美月  池田鉄洋  堀部圭亮  凛華せら 入江雅人
 死後の世界とか生まれ変わりということをテーマにすると、なんだか新興宗教のプロパガンダ映画かと思ってしまいます。それとか丹波哲郎さんの映画を思い起こします。でも、この映画での死後の世界や生まれ変わりは付属的なもので、本当のテーマは父と娘の関係なので安心して観てください。
 渋谷健一は2年前に妻と離婚し、高校生の娘との二人暮らしの50歳の男。妻との離婚後、娘との関係もギクシャクし、仕事場でも“ゾンビ”とあだ名されるように、やる気を感じさせない人生を送っていた。娘の誕生日の日、プレゼントでバ
ラの花を買っていた渋谷の元に娘が万引きしたとの連絡が入り、かけつけた渋谷は娘のことばに思わず手をあげてしまう。後悔したまま出張に出かけた渋谷は、出張先で上司の綾瀬由美と共に雷に打たれて死亡、気づいたときには死後の世界にいた。
 スープを飲めば前世の記憶は失って生まれ変わることができるとされるが、スープを飲まないと生まれ変われないのか、誰もわからない。娘の記憶を失いたくない渋谷は、どうにかして前世の記憶を失わずに生まれ変わることを模索する。そしてある男からその方法を関くが・・・
 後半は生まれ変わってからの物語となります。気がついたときには50歳の男の意識を持った男子高校生となっているのですから、これがまたややこしい。当然、娘はあれから10数年後の成長した女性になっており、父と名乗り出ることはできません。いやあ〜辛いですよね。記憶を持って生まれ変わるというのは、生きていく上ではかなり辛いことかもしれません。スープを飲んで生まれ変わることを選択した由美の方が正解かもしれません。果たして、渋谷は娘を前にどうするのか。「ストーカーと間違えられるぞ、いい加減割り切れ!」と、心の中で叫びたくなりますが、僕が同じ立場ならいったいどうしたでしょう・・・。
 実は彼以外にも記憶を持ったまま生まれ変わった人物がクラスメートの中にいて、前世と現世のあまりのギャップの違いに大笑い。その人の顔の後ろに前世の人物の顔が浮かんでしまって、笑いがこらえ切れません。
 主人公、渋谷を演じるのは、生瀬勝久さん。彼の単独初主演映画です。いつもの脇役の時のようなおちゃらけた雰囲気はまったくありません。ひたすら娘への思いのために記憶を持ったまま生まれ変わろうとするうだつの上がらぬ中年男性を演じます。
 脇役陣も由美を演じる小西真奈美さんのほか、松方弘樹さんや古田新太さんと、なかなかすごいです。ほんのちょっとした役で意外な人物が出演しています。
 エンドロール後におまけのワン・シーンがあります。見逃すことのないように。いつもと違う生瀬さんの演技と、父娘の関係を描いているということで、つい涙ぐんでしまったことに対し、★ひとつ。
崖っぷちの男(24.7.8)
監督  アスガー・レス
出演  サム・ワーシントン  エリザベス・バンクス  ジェイミー・ベル  アンソニー・マッキー  エド・バーンズ
     エド・ハリス  タイタス・ウェリヴァー  ジェネシス・ロドリゲス  キーラ・セジウィック
(ちょっとネタばれ)
 「崖っぷちの男」とは何ともセンスのない題名ですが、そもそも原題を直訳すれば「出っ張り(棚)の男]となるわけですが、飛び降り自殺者を指して使われる警察用語だそうです。
 警官の傍らアルバイトで富豪のイングランダーのダイヤの運搬を引き受けたニックは、運搬中にダイヤを奪われたうえ、彼自身が犯人だとされて逮捕される。刑務所を脱獄したニックは、その後偽名でホテルにチェックインし、突然窓の外側の縁に立ち飛び降りる様子を見せる。彼の目的はいったい何なのか・・・。
 ミステリーというわけではないので書いてしまうと、飛び降り騒ぎは実は狂言。本当の意図は、この騒ぎで注意を引きつけ、ホテルの向かいのビルで行う計画を容易にしようとするところにあったのです。この計画というのは、ニックが盗んだとされているダイヤが実はイングランダーのビルの金庫の中に隠されているのではないかと考え、ニックが注意を引きつけているうちに弟のジョーイがビルに侵入し、金庫からダイヤをいただいてしまおうというもの。この弟とコンビを組む恋人のアンジーとの掛け合いがおもしろいです。「ミッション・インポッシブル」みたいなシーンもありました。
 緊迫感を与えるのは、もちろんビルの縁に立っているという設定に、限られた時間の中で防犯装置で守られた金庫をどう破るのかというもあるのですが、もうひとつは、同僚の警官の中に怪しげな人物がいてニックの企みを阻止しようとしていること。果たして、ダイヤは盗み出すことができるのか。ニックを罠にかけたのは誰なのか。意外に最後まで飽きずに観ることができました。
 ある人物が最後に正体を明かしますが、これにはやられましたねえ。
ミッドナイト・イン・パリ(24.7.14)
監督  ウディ・アレン
出演  オーウェン・ウィルソン  レイチェル・アクアダムス  マリオン・コティヤール  キャシー・ベイツ  カート・フラー
     エイドリアン・ブロディ  カラ・ブルーニ  マイケル・シーン  ニーナ・アリアンダ  トム・ヒドルストン
     ミミ・ケネディ  アリソン・ピル  レア・セドゥー  コリー・ストール    
 なんてしゃれた映画でしょうか。婚約者のイネズの父親の出張に便乗し、パリにやってきたギル。友人たちと遊び回るイネズに嫌気がさして、一人でパリの街を歩いていたギルは、道に迷ってしまう。夜のパリの街をさまよったギルが、横に止まったクラシックカーに誘われて乗り込んで行った先は1920年代のパリの街。作家のフィッツジェラルドやヘミングウェイ、画家のピカソやダリと出会い、彼らと語り合い酒を飲む。作家志望のギルにとっては最高の時間を過ごします。
 この作品は、売れっ子脚本家だが、作家として成功することを夢見るギルが、過去の世界での文化人たちとの出会いの中で、自分の生きる道を見つめ直し、重大な選択をする話です。
 監督のウディ・アレンには、映画スターがスクリーンの中から現実世界へと飛び出してくる「カイロの紫のバラ」というファンタジックな映画がありますが(彼の映画はこれしか観ていません)、この作品も過去にタイムスリップするというファンタジックな作品です。ただ、タイムマシンのような仰々しい機械を使用するわけでもなく、どうしてタイムスリップしたのかという野暮なことはギルは全く考えませんし、ウディ・アレンもそんなことを描くのに時間を費やしません。なぜか彼は過去に行き、そして元の世界にもいつの間にか帰ってきます。
 1920年代にタイムスリップしたギルは、そこで心惹かれたピカソの愛人・アドリアナと共に、今度は1890年代にタイムスリップしてロートレックやドガ、ゴーギャンと出会います。ギルは1920年代に憧れ、1920年代の人は1890年代に憧れ、1890年代の人はルネッサンス期に憧れるという、誰もが自分の生きる時代に満足せず、過去はよかったというところはちょっと耳が痛い。ウディ・アレン監督の痛烈な皮肉です。
 ユーモアも散りばめられています。それぞれ有名人には似ていたのでしょうが、何といってもエイドリアン・ブロディが演じたダリが最高です。僕が頭に描いていたダリの雰囲気にピッタリでした。劇場内からも笑いがおきていました。ギルの後をつけた探偵がなぜかルイ王朝の時代に来てしまったのにも大笑い。1920年代に行くときはプジョーの車だったが、1890年代に行くときは馬車と、細かいところまで気配りされているのも愉快です。
 ロダン美術館の説明員の女優さん、どこかで見たことあるなあと思ったら、先頃のフランス大統領選挙で、オランドに敗れた前大統領サルコジの夫人、カーラ・ブルーニさんでした。ギブが最後の選択を手助けする重要な役どころです。ちょい役でしたが、存在感がありました。
ワン・デイ 23年のラブストーリー(24.7.14)
監督  ロネ・シェルフィグ
出演  アン・ハサウェイ  ジム・スタージェス  パトリシア・クラークソン  ケン・ストット  ロモーラ・ガライ
     レイフ・スポール  トム・マイソン  ジョディ・ウィテカー  ジョージア・キング
 エマとデクスターの23年間にわたる愛の行方を、毎年の7月15日を切り取って描いたラブ・ストーリーです。
 エマとデクスターの二人は大学の同級生。卒業式で初めて会話を交わした二人はいい感じになる。しかし、二人は恋人ではなく友達の関係でいることを選ぶが、その後も二人の微妙な関係は続いていく。他の女性と遊び歩くデクスターに対し、エマは彼のことを想いながらも結局違う男と同棲をするが、うまくいかず別れる。一方、デクスターはエマとは違う女性と結婚するが・・・。
 毎年の7月15日という“ワン・デイ”を切り取って描いていくので、どうもそれぞれの話が単なるエピソードで、ひとつのストーリーとしてうまく繋がっていない気がします。“ワン・デイ”を描くという設定がおもしろそうで、期待して観に行ったのですが、ちょっと期待外れでした。
 だいたい、デクスターについては、男からみても、非常に虫のいい男だと言わざるを得ません。さんざん違う女性と遊び歩いても、何か傷つくことがあるとエマを頼ってしまう。彼女に癒してもらいたいとやってくるのですから。エマに、デクスターのことなど忘れろと言ってあげたくなります。
 なかなか二人を結びつけず、ようやく二人がうまくいったと思ったら、この結末はいったい何なのでしょう。これはないでしょうと脚本家に声を大にして言いたいですね。だらだらと駄目な男の生き方を見させられ、どうにかこうにかようやくスタート地点に立ったかと思ったら、あんなことになるとは・・・。あのシーンには思わず声を上げてしまいましたよ(ネタバレになるので、「あの」とか「あんな」ですみません。)。
 エマを演じたのは、アン・ハサウェイ。「プラダを着た悪魔」で一躍有名になった女優さんですが、今は「ダークナイト・ライジング」のキャット・ウーマンです。この作品のような地味な女性より、あちらの役の方がお似合いです。
ダークナイト・ライジング(24.7.27)
監督  クリストファー・ノーラン
出演  クリスチャン・ベール  マイケル・ケイン  ゲイリー・オールドマン  アン・ハサウェイ  マリオン・コティヤール
     トム・ハーディー  ジョゼフ・ゴードン=レヴィッド  モーガン・フリーマン
 バットマン・ダークナイトシリーズ完結編です。物語の舞台は前作のジョーカーとの戦いから8年後。トゥー・フェイスと化したハービー・デントを倒したバットマンだったが、デントを悪と戦った英雄とするため、自らデント殺しの汚名を着たバットマンことブルース・ウェインは、人前に姿を見せず、屋敷の中に引きこもっていた。そんな彼の前に現れたのは、ベイン。ゴッサム・シティを中性子爆弾によって破壊しようとするベインに対してバットマンは立ち上がるが、ベインの力は強大で、バットマンは捕らえられ、井戸の底へと幽閉されてしまう。
 シリーズの最終作ということで、ストーリーが第1作目にも関係しているので、できれば前2作をおさらいしてから見た方がよかったかもしれません。7年前の第1作の紬かいところなんて、すっかり忘れてしまっていましたから。
 相変わらずのバッド・ポッドや、空飛ぶバッドモービルなど、メカがかっこいいです。特にバッド・ポッドをキャット・
ウーマンが運転しますから、見物ですよ。でも、なぜ最後はメカでの戦いではなく、白兵戦の殴り合いになるのでしょうか。殴り合いでは、いくら鍛えているとはいえ、バットマンよりベインの方が断然強そうです。
 引き籠もっていたウェインが外に出るきっかけとなるのがキャット・ウーマンの登場です。演じたのはアン・ハサウェイ。全身黒ずくめがきまってます。できれば、あの黒いスーツ姿の全身像をもっとじっくり見せてもらいたかったです(笑)
 バットマンと共に戦う警官・ジョン・ブレイクを演じたのはクリストファー・ノーラン監督の「インセプション」にも出演していたジョゼフ・ゴードン=レヴィッドです。最近では「50/50」でゴールデン・グローブ賞にノミネートされるなど実力派として活躍を見せている俳優です。彼がラスト、どうなるのかはバットマンファンとしてはニヤッとしてしまいます。
 ベインを演じたのは、やはり「インセプション」に出演していたトム・ハーディ。でも、最初から最後までマスクをしていたので、顔が全然わかりませんでした。
 アカデミー賞女優のマリオン・コティヤールも重要な役どころで出演しています。彼女は割とスレンダーという印象が僕の中では強かったのですが、意外にふくよかでしたね。
 映画を見終わったときに友人だちと議論ができるのが、マイケル・ケイン演じるアルフレッドがラストで見る光景ですが、果たしてあれは現実に見たものなのか、それとも彼が見た幻影なのか。息子はあれは当然現実だと言うのですが・・・。ラストのジョン・ブレイクのことからすれば、やはりあの光景は現実とみた方がいいのでしょう。
 ストーリーもよく考えられています。ベインの過去と、バットマンとの因縁、そして観客をあっと言わせるどんでん返しと、2時間40分以上の上映時間ですが、飽きさせません。
アナザー(24.8.4)
監督  古澤健
出演  山崎賢人  橋本愛  加藤あい  袴田吉彦  正名僕蔵  銀粉蝶  佐藤寛子  つみきみほ
 2009年の「このミス」で第3位となった綾辻行人さん原作の同名小説の映画化です。叙述トリックがあるため、映像化は難しいのではないかと思っていたのですが、映画化以前にアニメ化もされていたようですね(知りませんでした。)。
 教室の中で存在していないこととされている女生徒・見崎鳴に気付いた転校生の榊原恒一は、その理由を知ろうとするが、そんな彼の行動を批判した生徒の事故死に始まり、次々とクラスに関わりのある人物が死んでいきます。これは、以前そのクラス3年3組で、死んだ生徒をまだ生きているようにクラスの皆が振る舞ったことから、いつの間にかクラスの中に死んだ人間の亡霊が紛れこみ、クラスの関係者に悲劇を起こすという事態が続いたため、その呪いが現れないようにするためだったのです。つまり、生きている生徒をいないように振る舞って亡霊の代わりにして、亡霊の入る余地をなくそうとするものだったのです(ややこしい)。そんな姑息な手段は効力を発揮しなかったことがあとで明らかになるのですが・・・。
 ホラー系の作品で、スプラッター映画のような残酷描写もあります。ただ、ミステリー作家である綾辻さんの作品らし<、果たしてクラスに紛れ込んでいる亡霊は誰だろうかという謎解きもあり、原作を未読の人は楽しめるかもしれません。
 でも、冒頭、なぜ鳴は恒一が診療を受けている病院にいたのか、まった<説明がありませんし、いろいろ細かいところでは突っ込みどころは満載です。残念ながら小説のおもしろさが描き切れていなかった感があります。
トータル・リコール(24.8.10)
監督  レン・ワイズマン
出演  コリン・ファレル  ケイト・ベッキンセール  ジェシカ・ビール  ブライアン・クランストン  ボキーム・ウッドパイン
     ジョン・チョウ  ビル・ナイ
 1990年にアーノルド・シュワルツェネガー主演で公開された同名映画のリメイクです。
 前回は火星での話でしたが、今回は戦争で住むところが限られた未来で、貧困層が住むたぷんオーストラリアにあるコロニーと富裕層が住むヨーロッパにあるブリテン連邦が舞台となります。貧富の差は激しく、貧困層は労働者として地球の殼を通って行き来する巨大エレベーター“フォール”に乗って富裕層の住むブリテン連邦に働きに行くという世界になっていた。
 ダグラスが実は記憶を改ざんされており、愛する妻は実はダグラスを見張るために妻を騙る連邦代表のコーヘイゲンの部下だったという基本的な設定はオリジナル版とほぼ同じです。
 ただ、シャロン・ストーンが演じていたオリジナル版の妻役は正体を知られてあっさりとダグラスにやられてしまったと思ったのですが、今回ケイト・ベッキンセールが演じる奥さんは強いですよ。ヴァンパイアを演じた“アンダーワールド”シリーズでアクションには慣れているせいか、シャロン・ストーンのぎこちない動きとは雲泥の差があります。監督のレン・ワイズマンの奥さんなのに悪役を演じたのが何とも言えませんが、出番は多いし、悪役とはいえかっこいいです。
 主人公・ダグラス(カール・ハウザー)を演じたのは相変わらず濃い眉毛が特徴のコリン・ファレル。でも、アーノルド・シュワルツェネガーの存在感には負けます。
 オリジナル版を観たことがある人にとっては、火星に進入するときにおぱさんに扮したのがばれるシーンが、今回はブリテン連邦に侵入する際に違う人物の顔になっていたのがばれるという同じようなシーンもあって楽しかったのですが、残念なのが、オリジナルにあったレジスタンスの親玉が実は・・・という驚きが今回はなかったこと。今回の作品の方が全体にスマートな雰囲気がありました。
 貧困層が住むコロニーの世界は漢字の看板も多く、どことなくブレードランナーの世界を思い起こさせます。でも、あの独特な雰囲気を出すまでには至らず。
プロメテウス(24.8.18)
監督  リドリー・スコット
出演  ノオミ・ラパス  マイケル・ファスベンダー  シャーリーズ・セロン  イドリス・エルバ  ガイ・ピアース
     ローガン・マーシャル=グリーン  ショーン・ハリス  レイフ・スポール  エミュ・エリオット ベネディクト・ウォン
     ケイト・ディッキー
(大いにネタバレあり。観ていない人は読まないでください)

 世界各地の遺跡から巨人がどこかの星を指し示す壁画が発見され、考古学者のエリザベス・ショウは、これは異星人からの招待状だと考える。ウェイランド社の宇宙船によって目的の星に辿り着いたエリザベスらは、そこで人間と同じDNAを持つ異星人の死体を発見する。
 「エイリアン」では、アンドロイドが搭乗者の中にいることは明らかにされていませんでしたが、今回は最初からアンドロイドの存在を明らかにしています。となれば、彼の行おうとしていることは予想がつきます。アンドロイドの首がちぎれて白い液体が出てくるのは「エイリアン」へのオマージュですね。
 この作品が製作されるときは、「エイリアン」の前日譚ということだったので、期待して観に行ったのですが、どうなのでしょう、とにかくわからないことだらけでした。以下、感想というより疑問の羅列です。
 当初登場する“エイリアン”はイカの化け物のような造形でした。でも、それがラストでは・・・。でも、よくよく考えると、惑星に残された異星人の死体には腹が破れたものがあったわけだから、当然すでに同じ形態のエイリアンが生まれていていいわけですよね。異星人たちを滅ぼしたエイリアンはどうなってしまったのでしょう。だいたい、なぜ一人の異星人だけ睡眠装置の中で生き残ることができたのかということも疑問。
 さらに、チャーリーはイカ型のエイリアンになったわけではないのに、チャーリーと性行為をしたエリザベスは、どうしてイカ型のエイリアンを妊娠しなければならないのか。だいたい、チャーリーがデヴィッドによって飲まされたもの(デヴィッドが密かに持ってきたカプセルに入っていたものですが)は、いったい何なのでしょう。冒頭のシーンで、異星人がカプセルに入ったものを飲むシーンがあるのですが、あれと同じものでしょうか。だとしたら、同じものを飲まされたデヴィッドも同じ状態になるのでは・・・。
 地球の生命を作った異星人がなぜ今度は地球を滅ぼそうとするのか、そのあたりもよく理解できませんでした。
 シャーリーズ・セロンが演じたメレディスは、実はウェイランドの娘ということでしたが、ウェイランドの年齢であの娘は年齢が離れすぎです。もしかしたらアンドロイドかもと思わせる伏線かな。
 エリザベスを演じたのはスウェーデン版「ミレニアム」シリーズでリスベット・サランデルを演じたノオミ・ラパスです。でも、この人、地味ですねえ。エイリアンの子どもを妊娠して、おなかを切ったりと熱演していますが、女性出演者でもシャーリーズ・セロンの存在感があまりに凄すぎました。                1  ゛
 ※船長と、あまり目立だなかった2人の操縦士がラストかっこよかったですね。
アベンジャーズ(24.8.19)
監督  ジョス・ウェドン
出演  ロバート・ダウニー・Jr  クリス・エヴァンス  マーク・ラファロ  クリス・ヘムズワース  ジェレミー・レナー
     スカーレット・ヨハンソン  トム・ヒドルストン  クラーク・グレッグ  コビー・スマルダーズ
     ステラン・スカルスガルド  サミュエル・L・ジャクソン  
 マーベル・コミックのヒーローたちが力を合わせて地球の敵に立ち向かう話です。
 こうした集団ヒーロ−ものの定番ストーリーどおり、まずはそれぞれのヒーローを集めるところから始まり、個性が強いために一致団結ということにはならず危機を迎える。しかし、あることをきっかけにみんながまとまり、最後は敵を打ち破るというパターンです。
 日本では、なかなかコミック・ヒーローものが当たらないと言われていますが、僕自身も観たのは「アイアンマン」シリーズと「ハルク」で、「マイティ・ソー」と「キャプテン・アメリカ」は観ていません。
 ただ、観ていなくても今回はそれぞれの生い立ち等が細か<描かれるのではなく、異次元から来た敵と戦うことが中心の話なので、個別にキャラがわからず話がつまらないということはありません。
 ヒーローたちの中では普通の人間であるホーク・アイとブラック・ウィドウも頑張っています。ヒーローではありませんが、ニック・フューリーの部下のマリア・ヒルが、キリッとした顔立ち、休にピッタリフィットしたレザースーツもお似合いで、個人的にちょっとお気に入りです。
 集団ヒーローものですが、定番と違うのはヒーローは誰も死なないこと。普通は戦い終わったあとに何人かが倒れているところですが、ここで死んでしまうと単独での話が成り立たなくなってしまいますからねえ。そういうわけにはいかないのでしょう。
 エンドロールが終わるまで席を立たないでください。最後にちょっとしたおまけがあります。笑ってしまいますよ。
 アイアンマンの秘書兼恋人役でシリーズにも登場しているグウィネス・パルトロウがほんの少しの登場シーンにも関わらず出演しているのは嬉しいところです。
 続編が来年夏公開です。さて、今度参加するヒーローは誰でしょう。
遊星からの物体X ファーストコンタクト(24.8.29)
監督  マティス・ヴァン・ヘイニンゲン・Jr.
出演  メアリー・エリザベス・ウィンステッド  ジョエル・エドガートン  アドウェール・アキノエ=アグバエ
     ウルリク・トムセン  エリック・クリスチャン・オルセン  トロンド・エスペン・セイム
 ジョン・W・キャンベルJrの小説「影が行く」の、これが3回目の映画化です。
 1951年制作の1作目は観ていませんが、1982年にジョン・カーペンターが監督した第2作目は、いわゆるB級作品ですが、SFホラー映画の秀作として評価が高い作品です。人間に変態することができる異星物体という設定がミソで、南極基地という閉ざされた空間の中で、果たして誰が異星物体が変異した者なのかという緊迫感がたまりませんでした。
 今回の作品は、単なるリメイクではなく、前作の冒頭に繋がる、南極のノルウェー基地が全滅するに至った経緯を描いていますが、ストーリーの中心にあるのは前作同様、異星物体が変異しているのは誰かという恐怖です。
 誰が異星物体が変異したものなのかを調べるために、前作ではそれぞれ採取した血液に異星物体が恐れる火を近づけるという方法でしたが、今回は異星物体は人工の物を複製できないため、口の中の詰め物があるかどうかを調べるという方法でした。虫歯に詰め物があれば人間、そうでなければ異星物体が変態したものということでしたが、虫歯がなかったり、セラミックだったらわからないということで、効果なし。腰砕けです。やはり、血液に火を近づけるときの緊迫感の方が数段上です。
 前作も俳優としてはカート・ラッセル以外無名の俳優でしたが、今回も無名の俳優ばかりで、監督もこれが初監督というまさしくB級作品です。ただ、今回は先頭に立って活躍するのは考古生物学者の女性です。
桐島、部活やめるってよ(24.8.29)
監督  吉田大八
出演  神木隆之介  橋本愛  大後寿々花  東出昌大  落合モトキ  浅香航大  前野朋哉  清水くるみ
     山本美月  松岡茉優  藤井武美  鈴木伸之  太賀
 バレー部のスーパースターである桐島が突然部を辞めるといったことから学校内に起きる波紋を描いた作品です。原作は朝井リョウさんの同名小説で第22回小説すばる新人賞を受賞しています。小説では、桐島の周辺の生徒がそれぞれ主人公となった連作短編集のかたちをとっているのですが、映画では同じ場面をそれぞれの登場人物の視点によって描くという手法を取っています。
 映画の中で中心に描かれるのは、野球部の幽霊部員で桐島の親友である菊池宏樹、菊池に恋人がいることを知りながらも密かに恋する吹奏楽部の沢島亜矢、クラスの中心にいながらも、客観的に物事を見ているバトミントン部の東原かすみ、いわゆるオタクと揶揄される映画部でかすみのことが気になる前田涼也の4人です。
 青春時代というとかっこいいけど、心の中にまだ形になっていない想いや将来のことなど、もやもやとしたものを抱える高校生たちの姿が鮮やかに描かれています。これも執筆当時は大学生でまだ高校卒業からそれほど時間がたっていない作者の年齢のせいもあるのでしょう。
 クラスで目立たない涼也が映画製作になるといきいきとしており、イケメンでスポーツもできてモテ男の宏樹が彼を羨むシーンがいいですね。そんな宏樹の足の先から顔までカメラのレンズを通して見た涼也が「かっこいい」と言うのも涼也の素直な気持ちが出ていて、またいいですよ。
最強のふたり(24.9.1)
監督  エリック・トレダノ  オリヴィエ・ナカシュ
出演  フランソワ・クリュゼ  オマール・シー  アンヌ・ル・ニ  オドレイ・フルーロ  クロティルド・モレ
 これは本当に素敵な映画でした。ここまで観た2012年ベスト10の1,2位を争う映画です。
 パラグライダーの事故で首から下が麻嫌してしまった富豪のフィリップの介護人募集に応募してきたドリス。採用面接で、「不採用でいい、失業手当受給のため面接に来たということを証明する文書にサインをほしい」と言うドリスを見て、フィリップは、障害者だということで全く遠慮しない態度を気に入って彼を介護人に採用します。ここに大富豪とスラム街出身の黒人という生まれも育ちも全く対照的な二人のコンビが誕生します。
 全身不随の人の介護は、本当に大変なことでしょう。排便の世話もさらりと描いており、作品からはその大変さは窺い知れませんが、暗くなりがちなテーマにもかかわらず、ユーモアあふれた作品となっています。障害者の性ということについても、避けずに描いています。
 ブラックユーモアもあり、二人の会話のやりとりを聞いているだけでおもしろいです。これは二人が対等の立場だからでしょう。上下関係の中ではなかなかユーモアは出てきません。
 また、ドリスが車いすのフィリップを、荷物と同じように荷台に載せることを拒否し、助手席に座らせることをとっても、ドリスがフィリップを一人の人間として尊重していることがわかります(ドリスにはそんなことは当たり前で、尊重なんてことはこれっぽっちも思っていないでしょうけど)。
 粋なラストに心は温かな気持ちになって、映画館を出ることができます。おすすめです。
踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望(24.9.7)
監督  本広克行
出演  織田裕二  柳葉敏郎  深津絵里  ユースケ・サンタマリア  伊藤淳史  内田有紀  北村総一郎
     小野武彦  斉藤暁  小栗旬  小泉孝太郎  香取慎吾  真矢みき  筧利夫  大杉漣  水野美紀
 ついに「踊る大捜査線」も最後となりました。テレビドラマが始まったのが1997年ですから、15年がたちました。途中、和久役のいかりや長介さんが亡くなったり、雪乃役の水野美紀さんが事務所移籍トラブルで出演できなくなったりしましたが(今回は無事に出演しています)、そのほかの人は退職したり昇進したりしながらも相変わらず出演しています。 湾岸署の署長が前作のラストでユースケ・サンタマリアさん演じる真下に変わってしまったので、スリーアミーゴスがどうなるかと気を揉んでいましたが、先日のテレビドラマで、なんと元署長と元次長はかつて和久さんがやっていたように指導員で登場していました。嬉しいですよね。このシリーズには、ああいうとぽけた味も欠かすことはできません。
 最後とあって過去の出演者も登場しています。前作に登場した小栗旬さん演じる鳥飼や映画シリーズ2作目から登場した小泉孝太郎さん演じる小池をはじめ、室井さんのライバルであり、かつては青島を目の敵にしていた筧利夫さん演じる新城や、映画の第2作で真矢みきさんが演じたキャリア警察官の沖田など、懐かしい顔が登場します。
 今回の事件は、署長の真下の息子が誘拐されるというもの。犯人役がスマップの香取くんです。テレビCMでは香取くんが拳銃を撃ち、青島が倒れるというシーンがありましたので、どういう展開になるのかと思いましたが、そこは観てのお楽しみです。ただ、事件としては犯人たちがそこまでやるのが復讐のためなのか、それとももうひとつ大きな目的のためなのかがはっきりしません。香取くん演じる久瀬の場合は復讐なのでしょうが・・・。
 そんなことあり得ない!という突っ込みどころも満載で(特にラスト近くで香取くん演じる久瀬と青島刑事が対峙したときの思わぬものが飛び込んでくるシーン)、賛否両論あるでしょうけど、それもこのシリーズらしいところでしょう。
 上司と部下の関係、警察組織という官僚機構の汚さを描いてきたこのシリーズも、これで終わりとなると寂しいですね。結局、潜水艦事件のことも描かれなくて残念です。
夢売るふたり(24.9.8)
監督  西川美和
出演  松たか子  阿部サダヲ  田中麗奈  鈴木砂羽  安藤玉恵  江原由夏  木村多江  伊勢谷友介
     笑福亭鶴瓶  香川照之  倉科カナ  やべきょうすけ  大堀こういち  古館寛治  小林勝也  中村靖日
(ちょっとネタバレ)
 二人で切り盛りしていた居酒屋を火事で焼失してしまった貫也と里子の夫婦。貫也がたまたま出会った店の客だった玲子と一夜を共にしてしまった際、貫也から事情を聞いた玲子が不倫相手からの手切れ金を貫也にあげたことから、里子は結婚詐欺をして店の再建資金を貯めることを思いつく。
 詐欺の相手を狙い定めるのが里子の役目ですが、とにかく、松たか子さん演じる里子が怖いです。すべてを失っても前向きで明るかった里子なのに、結婚詐欺を思いつくお風呂場のシーンの恐ろしいことといったらありません。風呂桶の縁に腰掛け、浮気をした貫也を追いつめていきます。それと、電車の中で詐欺の相手といる貫也を向かいの席からスポーツ新聞越しに見つめる目も怖かったですねえ。
 自分が結婚詐欺を考えたのにもかかわらず、しだいに心の中に嫉妬心を芽生えさせていく里子。逆に詐欺の相手とのひとときに心が安まるようになる貫也。二人の心はだんだんとすれ違いをみせていきます。
 松たか子さんが、自慰シーンや生理用品を扱うシーンなど、これまでのイメージとは違う演技をみせてくれます。貫也を演じる阿部サダヲさんは、ものの見事にはまり役です。間違っても二枚目ではありませんが、ああいうキャラは意外に女性にもてるのでしょうね。
 里子の恐ろしさにばかり目が向けられますが、前向きにバイトで生活を支える里子に文句を言い、詐欺をするのは里子の腹いせのためだと冷たい言葉を返し、自分は温かな家庭生活に惹かれるという貫也は、ちょっと勝手すぎて里子がかわいそうです。
 ラストのカモメのシーンには、いろいろな解釈があるようですが、僕自身はまったく考えもしませんでした(笑)
リンカーン弁護士(24.9.9)
監督  ブラッド・ファーマン
出演  マシュー・マコノヒー  ライアン・フィリップ  マリサ・トメイ  ウィリアム・H・メイシー  ジョシュ・ルーカス
     ジョン・レグイザモ  マイケル・ペーニャ  ボブ・ガントン  フランシス・フィッシャー  ブライアン・クランストン
 ハリー・ボッシュシリーズでお馴染み、マイクル・コナリー原作の同名小説の映画化です。
 主人公は弁護士のミック・ハラー。題名の「リンカーン弁護士」とは、彼がリンカーンの後部座席を事務所代わりにしていることによるものです。ミックは決して“きれいな”弁護士というわけではありません。金のためならある程度のことをやるのも厭わないという弁護士です。冒頭に怖そうなバイクの集団が登場しますが、彼らが顧客というのが後半のちょっとした伏線になっています。
 今回、彼が弁護を担当したのは、女性に対する殺人未遂容疑で訴えられた青年ルイス・ルーレ。ミックは事件を調べるうちに、女性への暴行の特微から彼が以前担当した殺人事件の真犯人だったのではないかと気付きます。しかし、彼はルイスの弁護士であり、「秘匿特権」によって、ルイスの罪を暴くことができない状況になっています。さらにはミックの家から盗まれた銃によって彼と一緒に事件を調べていた探偵のフランクが殺されます。家族の身の危険を仄めかすルイスに対し、「秘匿特権」を犯さずに、ミックがどう対処するのかが見所です。
 最初の方は冗長な感じがして眠気を催しましたが、ルイスが次第にその仮面を脱ぎ始めるところからは引き込まれました。ラスト、思わぬ真実が明らかになります。派手な展開はありませんが、久しぶりのリーガル・サスペンスの佳作です。