今年のベスト3は宮部みゆきさんの「ソロモンの偽証」、横山秀夫さんの「64(ロクヨン)」、原田マハさんの「楽園のカンヴァス」で決まりです。この3作以外は横並びということで。
久しぶりの宮部さんの現代劇書き下ろし「ソロモンの偽証」は、全3巻、2000ページ以上の大作でしたが、いっき読みでした。中学生が中学生らしくないとか、2巻までの盛り上がりに対して肝心の裁判シーンを描いた3巻が盛り上がりが欠けたということはありますが、それらを補ってあまりある宮部さんのリーダビリティに脱帽です。
7年間の沈黙を破って、ようやく出版された「64」ですが、期待にたがわぬおもしろさでした。横山さんの警察小説を久しぶりに堪能しました。
原田マハさんの「楽園のカンヴァス」は直木賞にノミネートされ、惜しくも受賞は逃しましたが、僕としては受賞作の辻村深月さんの「鍵のない夢を見る」を遙かに凌ぐ作品だと思いました。
原田マハさんの「旅屋おかえり」は、「楽園のカンヴァス」とはまったく異なる雰囲気のいわゆるお仕事小説です。主人公の“おかえり”に声援を送りたくなる作品です。
池井戸潤さんは、今年「ルーズヴェルト・ゲーム」「ロスジェネの逆襲」「七つの会議」と新作が刊行されましたが、サラリーマンの立場からみると、どれも甲乙付け難いおもしろさでした。無理やりこの中から1作を選ぶとすれば「ロスジェネの逆襲」でしょうか。
道尾秀介さんの作品からは、小学生の視点で彼らの冒険が描かれた「光」を。やはり、道尾さんに子どもたちを描かせるとうまいです。
伊坂さんの今年の新作は、「PK」「夜の国のクーパー」「残り全部バケーション」とありますが、中では国家や権力について猫が語る「夜の国のクーパー」を。でも、伊坂ファンとしては「残り全部バケーション」のラストのドキドキもよかったので、この2作を選出です。
久しぶりの井上夢人さんの新作は「ラバーソウル」。異形の男のストーカー行為から起こる事件かと思っていたら、あまりに悲しい方向へ。ビートルズの曲からとった各章が歌詞に沿った内容となっているという、ビートルズファンには嬉しい構成です(僕にはわかりませんでしたが。)。
誉田哲也さんの作品からは「ブルーマーダー」を。姫川玲子シリーズですが、姫川班が解散となり池袋署に異動になった姫川の活躍が描かれます。姫川の周囲の状況も変わり、ファンとしては残念な事実も明らかにされます。
「禁断の魔術」は、ガリレオシリーズ第8弾の短編集です。収録作中の「猛射つ」だけは中編といっていい長さであり、東野さんはこの作品のために他の作品を書いて作品集として刊行したというだけあって、力が入った作品になっています。ガリレオの短編集の場合は、科学的なトリック等に目が行ってしまうのですが、この作品では禁断の魔術に手を染めようとしている人物に対し、自分なりの責任を取ろうとする湯川の姿が描かれます。 そのほか、猫好きにはたまらない小路幸也さんの「旅猫リポート」、同じく小路さんの東京バンドワゴンシリーズの新作「レディ・マドンナ」も相変わらず心和む作品で楽しませてもらいました。
三谷幸喜さんの「清須会議」も笑わせてくれます。織田信長亡き後、その後継者を決定すべく柴田勝家、羽柴秀吉、丹羽長秀、池田恒興らが尾張の清洲城で行った会議の様子を描きます。来年映画化されるそうなので、期待したいですね。
今年読んだ本は134冊、仕事が忙しかった割には読んだなあという感じです。来年も100冊以上を目指して頑張るぞ!
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