▲2009映画鑑賞の部屋へ

ミラーズ(21.1.9)
監督  アレクサンドル・アジャ
出演  キーファー・サザーランド  ポーラ・パットン  キャメロン・ボイス  エリカ・グラック
     エイミー・スマート  
 今年最初に観た映画です。このところ日本映画や韓国映画のホラー作品がアメリカでリメイクされていますが、これも韓国映画「Mirror 鏡の中」のリメイクだそうです。ハリウッドも安易ですねえ。
 同僚を誤って射殺してしまい、トラウマを抱えてアルコールに溺れ、妻子とも別居状態。生活を立て直すために火事で焼け、廃墟となったままのデパートの夜景の仕事に就く。そこで彼が体験したのは・・・
 人気テレビシリーズ「24」のキーファー・サザーランド主演のホラー・サスペンスです。今回のキーファー・サザーランド演じるベンは、すぐに激情する情緒不安定の男。あんな男なら奥さんが離れるのも無理ないと思わせる男です。そんな男が後半では家族から頼られる男へと変身します。
 ホッとさせておいてワッときたり、突然の大きな音でびっくりさせたりと、観客を驚かせる手法はいつものホラー映画と同じパターン。「ベン!もうやめた方がいいぞ!」と観ている人は誰もが思うのに、結局そのまま続けて恐怖の真っただ中に落ち込んでしまうのもパターンです。単にジャック・バウアーのキーファー・サザーランドで見せる映画かなというのが正直な感想です。終盤になると、これはエクソシストかと思わせるような派手なシーンも登場。かわいそうなのは、ベンに連れてこられたおばあさん。あんなに嫌がっていたのに(このあたりネタばれになるので詳しく書くことはできませんが)。
 予想ができないラストシーンということでしたが、ラストを観て思い出したのは広瀬正さんの某小説。ベンの気持ちもあの小説の主人公と同じだったのでしょうか。
 それにしても何もない廃墟を夜警する必要があるのかとささやかな疑問がずっと心にひっかかりながら観ていました。
007慰めの報酬(21.1.17)
監督  マーク・フォスター
出演  ダニエル・クレイグ  オルガ・キュリレンコ  マチュー・アマルリック  ジュディ・デンチ
     ジェフリー・ライト  ジェマ・アータートン  ジャンカルロ・ジャンニーニ
 ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じる第2作です。設定が前作「カジノ・ロワイヤル」の1時間後から始まる話となっています。
 この作品は、007シリーズとしては初めて続編という形をとっているので、この映画を楽しむためにはできれば前作を観ていった方がいいでしょう。なにせ、今回は前作で愛した女性(水の都ヴェニスで死んでしまったヴェスパのことですよね)の背後にある組織を追う話だったのですが、とにかく展開が速すぎて話についていくことができません。始まったとたん、観ているこちらが何も分からないうちからカーチェイスのシーンから始まります。これがまた派手なカーチェイスで、あんなにぶつけて、銃で穴だらけにされて車が動くのかと思うほどの凄まじさです。それが終わったと思ったら、今度はイタリアの街中での追いかけっこです。街中といっても屋根の上を走ったり、ジャンプしたりとこれまたダニエル・クレイグは大変です。
 そんなシーンを追っているうちに、次は海の上でのボートによるアクションシーンがあり、さらには空の上での飛行機でのアクションシーンありと、結局、地上、海、空とすべての場所でアクションを見せてくれます。
 女性に手が早いのは歴代ボンドとも同じですが、ダニエル・クレイグのボンドはショーン・コネリーやピアーズ・ブロスナンと違って甘い雰囲気を感じさせません。よくいう、触れればスパッと切れるナイフのようです。容赦なく相手を殺します。僕としては、こちらのボンドの方が意外にお気に入りです。
 今回ボンド・ガールを演じたのは「ヒットマン」のオルガ・キュリレンコです。従前ボンド・ガールといえばジェームズ・ボンドとのベッドシーンが必然なんですが、今回はなかったですね。これは珍しいことです。ボンドが手を出したのは、MI6の連絡員フィールズです。
 ところで、彼女の背中に傷跡がありましたが、あれって劇中で述べられた火事による火傷の跡でしょうか。その点については最後まで何も語られなかったと思うのですが。
20世紀少年 第2章 最後の希望(21.1.31)
監督  堤幸彦
出演  豊川悦司  常磐貴子  平愛梨  香川照之  ユースケ・サンタマリア  藤木直人  石塚英彦
     宇梶剛士  小日向文世  森山未来  古田新太  小池栄子  木南晴夏  黒木瞳  石橋蓮司
     中村嘉葎雄  唐沢寿明
 「20世紀少年」3部作の第2弾です。原作の漫画を読んでいるか、第1章を観ていないと楽しむことができませんね。
 今回は血の大晦日から15年後、成長したカンナを中心に物語は進んでいきます。今回、カンナを演じるのは平愛梨さん。目が特徴的で、意志の強さを感じさせます。カンナ役のオーでションの時に“目ヂカラがある”と言われたこともわかります。柴咲コウさんに対抗できる目です。カンナのイメージにもぴったりです。
 そんな平さん以上に漫画のキャラクターにそっくりなのは、カンナの友人、小泉響子役を演じた木南晴夏さんです。この映画は演じる俳優さんがみんな漫画のキャラクターにどことなく似ているのですが、木南さん以上の人はいません。表情も漫画の響子にそっくりです。第2章の中で一番印象的でした。
 映画を観ていると、僕自身主人公のケンジたちと同年代だなあということがよくわかります。缶に大切なものを入れて埋めるなんてことは僕も子どもの頃しました。ケンジたちが乗っていた変速ギアのついた自転車も、そういえば当時買ってもらったっけ。池ではなかったけど、近くの川にザリガニ釣りにも行ったし、学校から帰ると(あるいは学校帰りに)小銭を握りしめて駄菓子屋さんにも行きました。やっぱり、おばあさんが店番をしていたなあ。ランニングシャツを着て友だちと走り回りました。今、ランニングシャツ一枚で歩いている子なんていませんね。本当に僕らの子どもの頃そのままの世界が映画の中にあります。僕らの年代にとっては、そんな昔を振り返るのも楽しい映画です(歳をとった証拠ですよね。)。
 第2章は“ともだち”の復活、防毒マスクをしたセールスマンが世界の各地に出没し、病原菌をふりまくまでを描きます。さて、夏に公開の第3章では、果たして“ともだち”の正体は漫画とは異なるのでしょうか。楽しみです。
ベンジャミン・バトン 数奇な人生(21.2.7)
監督  デビット・フィンチャー
出演  ブラッド・ピット  ケイト・ブランシェット  タラジ・P・ヘンソン  ジュリア・オーモンド  ジェイソン・フレミング
     ティルダ・スウィントン  ジャレッド・ハリス  エル・ファニング  
 しわくちゃの80歳の老人として生まれたベンジャミン。老人ホームの前に捨てられたベンジャミンは心優しいクイーニーの手によって、老人ホームで育てられます。老人たちの間でも違和感がなかったベンジャミンの容貌は、年齢を重ねるにつれしだいに若返ってきます。
 「セブン」「ファイト・クラブ」に続くデビット・フィンチャー監督、ブラッド・ピット主演の作品です。しかし、「セブン」らとはまったく雰囲気の異なるファンタジー作品です。ブラッド・ピットのファンタジー映画といえば「ジョー・ブラックによろしく」がありますが、単にブラビの二枚目を強調するだけだったあちらの作品に比べ、こちらは80代の老人から青年時代までを演じ、その演技力にも磨きがかかったところを見せています。
 ブラビファンにとってはある意味楽しめる映画です。何故って、ブラビの何十年後かの老け顔を見ることができるのですから。CGかメイクなのかはわかりませんが、あの老け顔は見事です。ブラビだけでなく、恋人役を演じたケイト・ブランシェッドのおばあちゃん顔なんて、きっと歳とれば間違いなくこういう顔になるんだろうなあという顔になっています。
 歳をとらない、若返るなんことは、人生の後半に足を踏み入れている僕らからすれば、なんて羨ましいと思うところですが、現実は悲しいものです。愛する人と同じように歳をとっていくことができないのですから。ベンジャミンも自分がどんどん若返っている、それに対して愛するデイジーは年老いていくという現実に直面して、ある決断を下します。これは辛いですよね。ラストはどういう決着をつけるのか楽しみだったのですが、そうきましたか。おかしいだろうという意見はもちろんあると思いますが、あれがベストだったんでしょうね。
 ケイト・ブランシェットはバレーダンサーを演じていますが、踊っている部分は本人なんでしょうか。であるとすれば、あのお歳で頑張りましたね。
 今月下旬に発表されるアカデミー賞には13部門がノミネートされています。前哨戦となるゴールデン・グローブ賞ではふるいませんでしたが、今度こそブラビにアカデミー賞を取らせてあげたいですね。
 ちなみに、幼少期のデイジーを演じたのはダコタ・ファニングの妹のエル・ファニングです。
マンマ・ミーア!(21.2.7)
監督  フィリダ・ロイド
出演  メリル・ストリープ  アマンダ・セイフライド  ピアース・ブロスナン  コリン・ファース
     ステラン・スカルスガルド  ジュリー・ウォルターズ  クリスティーン・バランスキー
 1970年代から80年代にかけて活躍したスウェーデンのグループ「アバ」の作品をモチーフとしたミュージカルの映画化です。日本でも劇団四季が現在も公演していますので、知っている人は多いでしょうね。観に行ったときも、四季のファンらしき中年女性のグループが、映画のダンスに合わせてノリノリでした。
 ストーリーはイタリアの小島でホテルを経営するドナの娘○○が、結婚に当たって自分の父親と思われる3人の男に結婚式の招待状を出したのが始まり。招待を受けた3人の男は島へとやってきて、さあ誰が父親なのかのドタバタ劇が始まります。
 アバをリアルタイムで聞いていた僕たちの年代にとっては、懐かしのナンバーばかりで大いに楽しむことができました。「チキチータ」「マネー・マネー・マネー」等懐かしい歌ばかり。なかでも「ダンシング・クイーン」のときには、僕自身もリズムに合わせて体を動かしたくなってしまいました。最初にミュージカルを作った人は凄いですよね。アバの歌でこれだけのストーリーを紡ぎ上げてしまうのですから。
 ドナを演じたのはメリル・ストリープです。アカデミー賞女優で演技力には定評がありますが、果たしてダンスを踊ったり歌を歌ったりができるのかなという杞憂はものの見事に吹き飛ばし、頑張っていましたよねえ。生年月日を確認するとすでに60歳になるのですが、歳を感じさせません。さすがアカデミー賞女優です。今までメリル・ストリープといえば、お堅い役のイメージが強かったのですが、コメディエンヌとしても素晴らしい。エンディングで踊るダンシング・クイーンのお尻フリフリには笑ってしまいました。
 父親候補の3人を演じるのは、前のジェームズ・ボンド役のピアーズ・ブロスナン、「ブリジット・ジョーンズの日記」「ラブ・アクチュアリー」のコリン・ファース、「グッド・ウィル・ハンティング」のステラン・スカルスガルド。こちらの3人は歌はうまいとはいえませんでしたが、ピアーズ・ブロスナンは熱唱でした。
 とにかく、アバの歌が好きな人にはおすすめ。気分はつらつになる楽しい映画です。
フェイクシティ(21.2.14)
監督  デヴィッド・エアー
出演  キアヌ・リーブズ  フォレスト・ウィテカー  ヒュー・ローリー  クリス・エヴァンス  ジェイ・モア
     セドリック・ジ・エンターテイナー  ナオミ・ハリス  テリー・クルーズ コモン
 つい先頃「地球が静止する日」で無表情な宇宙人役を演じたキアヌ・リーブスが、今回は感情むき出しの荒っぽい刑事、トム・ラドロー役を演じます。犯人逮捕のためには手段を選ばない非常な刑事で、内部調査部からは目をつけられているという設定です。ある日、自分を内部調査部に密告したのはかつての同僚、ワシントンだと言われたトムは、彼を追い店に入ったが、そこに2人組の強盗が押し入り、ワシントンは殺されてしまう。
 ストーリーとしてはありふれた話。ストーリーの行く着く先は映画が始まってすぐに予想がついてしまいます。脚本にジェームズ・エルロイが加わっていることからは、警察の闇の部分が描かれるのだろうと思っていたら、裏切ることなくそのとおりでしたし。ラストもまったく予想を裏切らない展開で、正直のところおもしろくない結末となりました。キアヌ・リーブスファンとしても、これでは物足りなかったでしょうね。危機に陥るところはあったけど、どおってことなく乗り越えてしまいましたしね。あとはラドローがいつ真実に気づいて反撃するかということだけでした。ところで、かつての同僚ワシントンとラドローが今では反目し合っているという理由がいまひとつはっきり描かれていませんでした。結局、編集でその当たり切られてしまったのでしょうか。
 題名の「フェイク・シティ」は邦題です。フェイクは「fake」でしょうから、ごまかし、いかさまの町ということでしょうか。ストーリーから付けた題名ですね。原題は「Street Kings」です。「Kings」が複数になっているのはなぜ?
チェンジリング(21.2.20)
監督  クリント・イーストウッド
出演  アンジェリーナ・ジョリー  ジョン・マルコヴィッチ  ジェフリー・ドノヴァン  コルム・フィオール
     ジェイソン・バトラー・ハーナー  エイミー・ライアン  マイケル・ケリー  ジェフリー・ピアソン
 仕事に行っている間に突然家からいなくなった息子が5か月後に発見され帰ってきた。しかし、帰ってきた息子は別人だったというのが映画の始まりです。
 この映画は真実の物語だそうです。でも、別人を息子だと母親が思うわけないし、無人島で暮らしているわけではないのだから、近所の人や学校の友達も間違えるわけないだろう、SFならともかく、眉唾物だなあと思って見始めたのですが・・・ 。でも、そんなことが起こり得る時代背景の中での事件だったのですね(ネタバレになるので詳しく書くことができません。)。ちょうど禁酒法の時代でしょうか。ギャングが闊歩し、警察は汚職にまみれという時代の話だったのでしょう。
 ただ、別人が帰ってきたのに、母親が違うと言いながらも警察に説得されて、家に連れ帰ってしまうところが、本当なの?とあ然としてしまったのですけど。 そして、息子だと言って登場した子どもにもあ然です。この子ども凄すぎます。
 監督は、クリント・イーストウッドです。相変わらず、重厚な映画を撮りますね。果たして息子は生きているのか、帰ってきた息子は何者なのか、思わぬ事実がしだいに明らかとなってきて事態は急展開し、読者を飽きさせることなく2時間強が過ぎていきます。
 母親役のアンジェリーナ・ジョリーは、僕の中ではアクション女優という印象が強いのですが、今回はもちろんアクションなどありません。ひたすら子どもの無事を信じ、権力に立ち向かう母親役を押さえた演技で熱演しています。ただ、1920年代の母親としては、顔が目立ちすぎ。もちろん、当時の化粧のせいもあるのでしょうが。顔のつくりがそもそも派手すぎますよね。
 彼女を助ける牧師役をジョン・マルコビッチが演じます。いつの時代でも正義を貫く人っているんですね。
 ※それにしても、母親が働く電話会社の中でローラースケートで移動をしているのは何とも不思議。歩いても大して違いがないでしょうに。
7つの贈り物(21.2.21)
監督  ガブリエレ・ムッチーノ
出演  ウィル・スミス  ロザリオ・ドーソン  ウディ・ハレルソン  バリー・ペッパー  マイケル・イーリー
 テレビCMもかなり流れているせいもあってか、地方の映画館には珍しく意外に観客の入りは良く、映画の雰囲気もあってか、カップルも多かったですね。
 CMでもわかるとおり、ストーリーは主人公のウィル・スミス演じるベンが、7人の人に贈り物をするというもの。さて、その贈り物は何か、なぜベンは彼らに贈り物をするのか、というところがミステリ的に描かれていきます。ときどき挿入されるあるシーンによって、ベンが贈り物をしようとする理由がしだいに明らかにされていきます。その贈り物というのは、ひとつは自分の住んでいた海辺の家というのは明らかにされますが、それ以外のものは最後まで隠されます。何かというのは途中でだいたいわかってしまいますけど。
 ベンを自分に置き換えてみて、果たして同じ行動が取れるかと考えると、とてもじゃないですが、ベンの真似はできません。悩みはするけれど、ベンのようにはとてもできないというのが正直なところです。確かに究極の贈り物ですから。
 いつもはエンドロールが始まると、席を立つ人がほとんどでしたが、この映画ではそんな人があまりいませんでした。みんな、エンドロールの最中、ベンの行動を自分に置き換えて考えていたのでしょうか。    
 ベンを演じたのは、ウィル・スミス。来日したときのインタビューの様子を見ても明るい素敵な俳優さんです。「
インデペンデンス・デイ」や「メン・イン・ブラック」をはじめとして、最近の「アイ・アム・レジェンド」「ハンコック」とコミカルな役やアクション・ヒーローの役の印象が強いのですが、今回は悩み苦しむ男を熱演しています。同じ監督の「幸せなちから」もそうですが、コミカルとアクションだけの俳優でないところを証明しましたね。役柄の範囲が一段と広がりました。
 情報が多すぎて、観る前にネタばれになってしまいますが、それでも楽しむことはできます。
フィッシュストーリー(21.3.21)
監督  中村義洋
出演  伊藤淳史  高良健吾  多部未華子  濱田岳  森山未来  大森南朋  石丸謙二郎
     渋川清彦  大川内利充  眞島秀和  江口のりこ  山中崇  浪岡一喜  高橋真唯
 伊坂幸太郎さん原作の短編集「フィッシュストーリー」中の表題作の映画化です。
 50ページの話を2時間弱の話にしているので、原作とは異なった部分や付け加えられている部分があります。ただ、監督が伊坂さんの「アヒルと鴨のコインロッカー」を映画化したこともある中村義洋さんだったせいか、伊坂作品の雰囲気は損なわれていません。十分伊坂ワールドを堪能できると思います。
 原作のハイジャックの話がシージャックに変わつていましたが、それ以上に大きな違いは彗星が地球に衝突する直前という2012年の時代の話が新たに付け加えられているところです。ここのところは、彗星が地球に衝突する前の様々な人々の姿を描いた伊坂さんの連作短編集「終末のフール」を素材として使用しているのでしょうか。結果としては映画「アルマゲドン」みたいでしたけど。
 基本的には、逆鱗という名前のバンドが作った「フィッシュストーリー」という歌が、巡り巡って人々の人生に影響を与えていくというところは同じです。ちょっと気になるのは、やはり追加された彗星の地球衝突の話の部分です。これって、「フィッシュストーリー」という曲が影響したのかなあと疑問。単に他のエビソードと登場人物が同
じだけではないのか・・・。
 濱田岳さんが気弱な大学生を演じていますが、役柄にぴったりですね。「アヒルと鴨のコインロツカー」でもそうでしたが、濱田さんの雰囲気が伊坂作品には似合います。
 一方、重要な役どころ、“正義の味方"を演じたのは森山未来さんです。原作ではマッチョな感じの男性でしたが、森山さん自身はそれとはまったく異なるスレンダーな青年。果たして原作の雰囲気を損ねないかなあと思ったのですが、なかなか様になっていました。原作とは異なるけど、今回の映画の中では一番はまっていたのではないかなあ。格闘シーンも格好いい!
 バンドのリーダーを演じたのは伊藤淳史さん。つい先頃弟が自殺したため、変な意味で有名になってしまいましたが、彼のキャラクターもこの映画にはなくてはならないですよね。実際にベースを弾いているとは驚きです。
シャッフル(21.3.15)
監督  メナン・ヤポ
出演  サンドラ・ブロック  ジュリアン・マクマホン  ニア・ロング  ケイト・ネリガン  アンバーヴァレッタ
 ある日、出張に出かけた夫が交通事故で死亡。ところが翌日目覚めると、何事もなかったように夫がいる。どうも曜日が不規則にやってきているらしい。
 この不思議な現象をラストでどうつじつまを合わせるのかと、期待したのですが・・・。それはないでしょう! 種明かしされたら(種明かしとは言えないなあ)いっきにが<っときてしまいました。肩すかしです。バンフレットの中でも時間概念をテーマにした「メメント」や「バタフライ・エフェクト」が類似映画であげられていましたが、それらと同様と思うと落胆は大きいです。
 主人公のリンダ役を演じたのは、サンドラ・ブロック。「スピード」では、勝ち気な元気娘だった彼女もすっかり中年女性になりました。「デンジャラス・ビューティー」のようなラブコメに出演していることからコケティッシュな女性、コメディエンヌという印象も強いですが、今回はひたすら不思議な現象に悩み、恐怖する女性を演じます。後半はちょっと彼女らしいところも。
 テーマとしては僕好みの作品だったのですが、展開が思わぬ方にいってしまって残念でした。とにかく、一度見てネタバレしたら二度と見る気になれない映画です。
ワルキューレ(21.3.29)
監督  ザック・スナイダー
出演  ジャッキー・アール・ヘイリー  ビリー・クラダップ  マシュー・グート  パトリック・ウィルソン
     マリン・アッカーマン  ジェフリー・ディーン・モーガン
 第二次世界大戦中に実際にあったヒトラー暗殺未遂事件を題材に描いた作品です。歴史上、暗殺は未遂に終わった事実は厳然としてあるので、さて、どこまでこの話で観客を引きつけられるかという点がちょっと気がかりでした。しかし、暗殺に至るまでの過程、そしてその後の反ヒトラー派とヒトラー派との闘いが非常にスリリングな展開を見せるため、観ている人を飽きさせません。やはり、監督が「ユージュアル・サスペクツ」のプライアン・シンガー
というところもあるのでしょう。ブライアン・シンガーらしい緊迫感溢れる演出です。
 トム・クルーズ演じるシュタウフェンベルク大佐は、理想的な上官です。ことに及んで躊躇をすることがありません。こんな上官なら最後までついていこうと思うのでしょうか。捕らえられ銃殺刑に処されるときに、彼をかばって副官が彼の身体の前に身を投げ出したのは、ちょっと感動ですね。
 逆にいざとなると、決断できない人がいるのはどこも同じ。もう少し早く予備軍の隊に出動命令を出していたら、ヒトラーが生き残ったとしても歴史は変わったかもしれません。歴史に“もしも"はありませんけど。また、フロム将軍のように保身を図る人もいるのも世の常ですね。
 出演者が渋い人がそろっています。クーデター成功後の国家元首の予定だったベックを演じたのは、テレンス・スタンプ。落ち着いた首謀者らしい雰囲気を漂わせます。シュタウフェンベルクの上官であるオルブリヒトを演じたのはビル・ナイです。この人、「パイレーツ。オブ・カリビアン」でデイヴィ・ジョーンズを演じていた人です。このときは、そもそも怪物顔のメイクでしたので、素顔はまったくわかりませんでしたけど。僕としては「ラブ・アクチュアリー」の峠を過ぎたロック歌手役の方が印象深いですね。そのほか、ケンス・ブラナーやトム・ウィルキンソンなど豪華出演陣です。
 ドイツを舞台としていますが、登場人物たちが話すのは英語。 ドイツの軍服で英語とは違和感がありますが、アメリカ映画だからやむを得ないか。
ウォッチメン(21.3.29)
監督  ブライアン・シンガー
出演  トム・クルーズ  ケネス・プラナー  ビル・ナイ  トム・ウィルキンソン  トーマス・クレッチマン
     テレンス・スタンプ  エディ・イザード  ケヴィン・R・マクナリー  クリスチャン・ベルケル
     ジェイミー・パーカー  デヴィッド・バンバー
 まったく何が何だかわからない映画です。アメコミの映画化ということですが、従来のスーパーマン等のアメコミヒーローものを考えると大違いです。
 覆面したり、派手なヒーローのような格好をして悪と戦うかと思いきや、市民を容赦なく撃ったり、ケネディ暗殺事件に関わったりする。政治の舞台の裏側に常にそんな彼らの存在があったらしい。この当たり、映画の最初でそんな彼らの存在を説明する部分が流れるのですが、それを観ただけでは彼らの存在というのは何なのかが全然わかりませんでした。 Dr.マンハッタンの活躍でアメリカはベトナム戦争に勝利していますので、今の世界とはまた違ったパラレルワールドでの話だということだけはわかりましたけど。
 映画では、そんな彼らの活動がニクソン政権下で禁止され、引退を余儀なくされた彼らのうちの一人コメディアンが何者かによって殺されるところから始まります。引退を拒否し、いまだに覆面をして活動するロール・シャッハは犯人は彼らの仲間を襲うのではないかとかつての仲間を訪ねます。
 Dr.マンハッタンだけは、事故により特殊な能力を身につけた(というより、特殊な存在になったといった方がいいかもしれません。)ことが描かれるのですが、他の人物たちがどうして普通の人より秀でた能力を持っているのか説明もありませんし、こうした活動をするようになったかの詳細な説明もありません。力は強いし、ジャンプカもある。オジマンディアスなんて、拳銃の弾を掴んでしまうのですから、常人ではありません。もしかしたら、退屈でボォ〜としている間に説明がされたのかなぁ。Dr.マンハッタンなんて、存在自体がよくわかりませんし、火星で何だかわからないもの作っているんですよね。
 これでは、確かにバットマンやスパイダーマンと異なって、映画化するのが難しかつたはずです。映画の流れに取り残されたままの163分の上映時間は長すぎました。
トワイライトー初恋ー(21.4.4)
監督  キャサリン・ハードウィック
出演  クリステン・スチュワート  ロバート・パティンソン  ビリー・バーク  アシュリー・グリーン
     ニッキー・リード  ジャクソン・ラズボーン  ケレン・ラッツ  ピーター・ファンネリ  キャム・ギガンデッド
     テイラー・ロートナー  レイチェル・レフィブレ  アナ・ケンドリック  エリザベス・リーサー
 母親の再婚のため、離れて暮らす父親が住む町へとやってきたベラ。彼女は入学した高校で会ったエドワードに惹かれます。しかし、彼の家族は実はヴァンパイアだったのです。果たして若き二人の禁断の恋はどうなるのか。
 今までのヴアンパイアと違って、高校生ですから学校にも来ます。ただ、設定がうまいのはベラたちが暮らす町が全米―雨が多い地域だということ。晴れの日が少ないんですよね。エドワードは晴れの日には学校を休んだりします。でも、太陽に当たると身体が宝石のように光り輝くだけで、死ぬことはないようです。それと、彼ら一族は獣の血は吸うが人間の血は吸わない。もちろん、吸いたいという気持ちはあるが、自制しているのです。寝るのは棺桶の中というのが従前のヴアンパイアですが、彼らは眠ることがないからベットも要らないという、かなり僕らの思っているヴァンパイアとは異なっています。笑ってしまうのが、彼ら一族が野球好きだということ。雷の鳴る中、一族で野球に興じるというのだから、さすがアメリカのヴアンパイアです。
 二人が惹かれあう理由がよくわからなかったのですが、まあ好きになってしまえば理由はどうでもいいというところは人間同士の恋と同じ。それとも、ベラは単にイケメンに弱かつただけなのかな。
 また、人間の血を吸う真っ当な(?)ヴァンパイアのジェームズがベラをつけ狙うことになる理由もよくわかりません。ベラでなくても、人間なんていっぱいいるのに。それともエドワードに対する嫉妬か? などと深く考えないで観るのが一番ですね。
 永遠の命を持つヴァンパイアと限られた時間を生きる人間の間で愛をどう育んでいくのか、難しいところです。ラストの終わり方からすると続編があるようです。さて、この二人どうなっていくのでしょう。
 ベラを演じたのは、「パニック・ルーム」でジョディ・フォスターの娘役を演じたクリステン・スチュアート。一昨年観た「ゴースト・ハウス」にも出演していました。
 一方エドワードを演じたロバート・パティンソンは、ハリー・ボッターシリーズの「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」でホグワーツ魔法学校の代表を演じていた俳優さんだそうです。印象になかつたですねえ。僕からするとそれほどイケメンとも思えないし。
 それより、僕にとって印象的だったのは、ヴァンパイアのアリスを演じていたアシュリー・グリーンです。小悪魔的な表情がヴァンパイアにピッタリです。
 ストーリー的に若い男女が観るのに適しています。でも、意外におじさんも楽しむことができましたよ。
ジェネラル・ルージュの凱旋(21.4.5)
監督  中村義洋
出演  竹内結子  阿部寛  堺雅人  羽田美智子  山本太郎  尾美としのり  貫地谷しほり
     高嶋政伸  野際陽子  國村隼  正名僕蔵  林泰文  平泉成  佐野史郎  玉山鉄二  
 「チーム・バチスタの栄光」に続く田口、白鳥コンビの映画化第2弾になります。
 小説では、この2つの間に「ナイチンゲールの沈黙」がありましたが、それを飛び越えての映画化です。「ナイチンゲールの沈黙」は、田口の登場があまりありませんので、田口、白鳥コンビの映画化となったら、こちらなんでしょう。
 今回は、倫理委員会委員長の田口の元に将軍(ジェネラル)とあだ名される救命救急センター部長の速水が業者と癒着しているという密告が届き、田口が内部調査を始めることとなります。

 今回も前作同様、原作とは異なる部分(田口が女性ということ以外に)があります。大きな違いは、原作では速水の業者との癒着の問題が主となっており、それを調査する中で病院内の様々な問題があぶり出されていく話で、前作のような殺人事件が起きるわけではないのですが、映画では癒着しているとされた業者の飛び降り事件が起きます。この当たり、ミステリとしての要素が原作より大きいですね。残念だったのが、ラスト近くの委員会での議論の応酬の場面が映画ではあっさりとしていたことです。原作ではこの場面が一番おもしろかったのですが。

 経営合理化を追られる病院の問題や救命救急現場でのドクターヘリ導入問題など現在の医療現場が直面する様々な難しい問題を描いているのは、さすが現役のお医者さんが原作者らしいところです。

 今回のメインキャラクターとなる速水を演じたのは堺雅人さん。原作を読んでいる者としては、速水はもっと年上の人を想定していたのですが。とはいえ、堺さんのどこか人を喰ったような表情はいいですねえ。原作を読んでいない妻が「いい男!」と感想を述べていたので、それだけで成功だったといえるのではないでしょうか。
 高嶋政伸さんが、いつもの役柄とは異なる敵役として登場しています。いつもは一所懸命のキャラを演じることが多い高嶋さんのあまり表情を変えない演技が新鮮です。

 原作に登場した姫宮を誰が演じるかと期待したのですがヾ映画では登場しませんでした。姫宮のキャラも白鳥に負けず劣らず強烈なだけに登場しなかったのは原作のファンとしては残念です。
 監督は中村義洋さん。現在上映中の伊坂幸太郎さん原作の「フィッシュストーリー」の監督でもあります。乗っていますねえ。
レッドクリフ PartU(21.4.11)
監督  ジョン・ウー
出演  トニー・レオン  金城武  チャン・フォン・イー  チャン・チェン  ヴィッキー・チャオ  中村獅童
     リン・チーリン  ユウ・ヨン  ホウ・ヨン  バーサンジャブ  ザン・ジンシェン  チャン・サン
 赤壁で睨み合う曹操軍と孫権、劉備の連合軍。慣れぬ風土と遠征の疲れで曹操軍には疫病が蔓延します。曹操は疫病にかかって死んだ兵士を対岸の連合軍側に流します。そのため、連合軍内にも疫病が発生。劉備は「戦いは他人に任せる」と兵を引きます。おいおい劉備ってヒーローではなかったの。義に背く行為をする男だったのかとがっくり。孔明だけが「約束したことは、最後まで違えません」と、一人残ります。さすが孔明。しかし、ただでさえ、18万人対5万人という多勢に無勢だったのに、それが18万人対3万人と、軍勢の差は歴然。果たして、戦いの結果は?

パート1では三国志のヒーローたちそれぞれの見せ場がありましたが、今回は個々の見せ場というのはあまりありません。赤壁の戦いのメインが集団戦で描かれているからでしょう。そんな集団戦を描くために中国映画の人員動員力はすごいですね。人民解放軍が協力しているようですから、CGではなく、ある程度は本物の人が投入されているんでしょう。もちろん、CGもすごいです。舳先に炎をつけた船が曹操軍の水軍の中に突入して爆発するするシーンなど、今回は派手に火を使ったスペクタクルシーンが多かったですが、見ごたえありました。特に決戦が夜に始まっていますから、炎のシーンは最高です。

 Part1では脇役だった劉備や孫権までも先頭に立って戦いますが、孔明だけは戦いの外にいます。軍師だから知恵だけ出せばいいのでしょうけど、せっかく全員が戦っているのだから、孔明も戦いの中に入っていけばいいのに。金城さんのアクションシーンがないのは残念ですね。
 女性たちも男たちに負けずに戦います。孫権の妹・尚香は敵陣に潜入して相手の様子を探ります。演じたヴィッキー・チャオが眼力のある女優さんなので、勝ち気な役がぴったりです。周喩の妻小喬も単身曹操のもとに出向きます。曹操が自分に気のあることを利用して風向きの変わるまで曹操を留めます。この戦いは曹操が周瑜の妻・小喬を手に入れたくて始めたと描かれます。真実はともかく、あれだけの権力を持てば、好きな女性を手に入れるために戦いも厭わないという気持ちも男としてはわからぬでもありません。僕も曹操だったらやっちゃうかな。でも女性は怖いですよ。騙されてはいけません。あ〜馬鹿な曹操!! でも、リン・チーリンさんのような綺麗な人なら騙されたい(笑) 結局、この戦いは孔明の英知による作戦が功を奏したこともありますが、その成功の裏にはこの2人の女性たちの力が大きかったですね。

 今回かわいそうだったのは、せっかく曹操の部下となり、水軍を率いて手柄を立てようとしたのに、周喩の謀のために訳もわからず処刑されてしまった蔡瑁と張允。そして、幼い頃から周喩に編され続け、今回も嘘の情報を掴まされて曹操の怒りをかった蒋幹。幼なじみをあんな目に遭わせるなんて、周喩もひどい奴です。
 周瑜が孫子の兵法に則った剣舞をするシーンがありましたが、孫子の兵法といえば武田信玄。字幕では「林のように〜」というようになっていましたが、ここは「疾きこと風の如く、徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如く」というように字幕を付けてもらいたかったですね。字幕は戸田奈津子さんが担当していましたが、知らなかったのでしょうか。ちょうど映画を観た日は信玄公祭りの日でした。なお、パンフレットによると、現在読むことのできる「孫子の兵法」は、曹操が注釈を付けてまとめたものだそうです。知らなかった。

 とにかく、アジア映画だってこれだけやれるんだぞというジョン・ウー監督の意気込みが感じられる作品で(製作費の足りない分を私財を投じたそうです。)、パート1ともども楽しむことができました。おすすめです。
スラムドック$ミリオネア(21.4.18)
監督  ダニー・ボイル
出演  デーヴ・パテル  アニル・カプール  イルファーン・カーン  マドゥル・ミッタル  フリーダ・ピント
(ちょっとネタバレあり)
 今年2月のアカデミー賞で作品賞を含め8部門を受賞した作品です。
 「クイズ$ミリオネア」といえば、みのもんたさん司会の「ファイナルアンサー?」で知られるクイズ番組ですが、これはそもそも日本のクイズ番組ではなく、イギリスの製作会社からライセンスを買って制作しているものなんですね。全世界で80カ国以上で放送されているそうです。この映画の舞台となるインドも同じ。国民の間に相当な人気を得ているようです。
 映画は、教育も受けていないスラム街出身の青年が、ラスト1問まで正解してこれたのは何故か。不正を行っているのではないかと警察に引き渡されます。拷間を受けながらも、正解の回答をした理由が彼の口から、その過酷な人生とともに語られていきます。
 これは掛け値なしに素晴らしい映画です。アカデミー賞作品賞を受賞したのも当然です。「教育も受けていない青年にわかるわけないだろう」というクイズの回答が、これまでの青年の生きてきた人生の中にあるという構成が見事ですね。それも普通の人生ではなく、母親を殺され兄弟二人で生き抜いてきたあまりに過酷な人生の中で得てきたものの中にあるのです。あり得ない話だと思いながらも、あるかもしれないと思わせる脚本の妙に脱帽です。最後の問題も伏線が張られていたんですね。そうきたか!と唸ってしまいます。
 そもそもこのクイズ番組に出るきっかけは、行方の知れない好きな女性が、この番組が好きだからというため。自分が出ているのを見れば連絡してくれるだろうと思って出場したのです。幼い頃からずっと思い続けてきたのですから、その一途な思いはすごいです。この映画、一途な男の恋物語なんですね。
 久しぶりにまた観たいという映画に出会いました。おすすめです。
 でも、インド人の俳優を使いながら登場人物たちが大きくなったら日常で英語を話すようになるのはちよつと違和感がありました。逆にイギリス映画といっても、登場人物はインド人ばかりなんだから、やっぱり踊りがなければと思ったら、エンドロールで主人公たちが踊ります。
鴨川ホルモー(21.4.19)
監督  本木克英
出演  山田孝之  栗山千明  濱田岳  石田卓也  芦名星  斉藤祥太  斉藤慶太  荒川良々  石橋蓮司
 万城目学さんの同名小説の映画化です。あの小説を映画化するのですから、当然CGが活躍です。原作を読んだときに想像していた“鬼"“式神"たちの姿が明らかになりました。ちょっと想像していたものより、かわいすぎるというのが正直な印象です。僕自身のイメージとしては、顔の体裁などなさない、真ん中に絞りがあるだけの存在と想像していたのですが、楠木ふみの鬼など本人同様眼鏡かけてますものねえ。
 ストーリーは小説とだいたい同じです。ただ、2時間の中で描くため、駆け足になってしまった感がするのは仕方ないですね。でも、理屈なく笑わせてくれます。一番愉快だったのは、鬼語を話すときの身振り手振りです。「ゲロンチョリー」というときの身振りのユニークさといったら、思わず笑ってしまいました。
 主人公の安部明を演じたのは山田孝之くん。このところ、「クローズゼロU」に出演したりで売れっ子です。以前は真面目な二枚目の役どころが多かったのですが、「クローズ〜」では不良、この作品でも三枚目の匂いがぶんぶんした役柄です。イメ−ジ変わってきましたね。
 帰国子女の高村を演じたのは濱田岳さん。この人のどこかのんびりとしたキャラは、捨てがたいですねえ。楠木ふみ役の栗山千明さんは、小説のイメージとはかなり違うかなという感じです。大木凡人に似ているから凡ちゃんというあだ名ですからね。栗山さんでは細すぎです。もう少し丸顔のふっくらした女優さんがよかったかも。いい味出していたのは、菅原を演じた荒川良々さん。不思議な役者さんです。
グラン・トリノ(21.4.25)
監督  クリント・イーストウッド
出演  クリント・イーストウッド  ビー・バン  アーニー・ハー  クリストファー・カーリー
 最近では高齢者の免許更新のときに簡単な質問をして認知症でないかどうかを調べるそうです。質問の中には今日は何日ですかという質問があるようですが、僕自身も間かれても、え〜と・・。と即答できないときがあるこの頃です。中年だと思っているうちに老年に足を踏み入れているのかもしれません(笑) そんなことを考えているときに上映が始まったのがこの映画です。
 妻を亡くし、息子たちとも別居している偏屈な老人が主人公です。そんな老人を演じるのは、さきに「チェンジリング」でアカデミ−賞監督賞にノミネートされたクリント・イーストウッド。最近は監督業が多いのですが、この男の役が自分にびったりだと監督だけでなく出演を決めたそうです。老人が主人公というせいもあるのか、観に来ていた観客に割と高齢の人が目立ちました。その中に、長髪革ジャンの老人や白髪の長髪をポニーテールにしたどこかかっこのいい老人の姿も見られました。若き頃のイーストウッドに憧れていたファンでしょうか。
 物語はそんな偏屈な老人ウォルト・コワルスキーと隣に住むアジア系のモン族の姉弟との交流を描いた映画です。朝鮮戦争で人を殺したことに対する罪悪感を持ち、偏屈で人種差別的な発言もするけど彼はプレていません。気にくわない者に対しては、たとえ孫であってもつばを吐くし、黒人であっても白人であっても態度に変わることはありません。そうであるからこそ、逆に嫌われてしまうのでしょうが、ある意味見習わなければいけないところですね。
 頼りない弟を、一人前の男にしようとする中で、ちんびらとの諍いが起こります。それに対し、ウォルトがとった行動は・・・。いやぁ〜あまりに格好良すぎですね。ときに指を拳銃の形にして「バン!」というところなど、若き頃のダーティハリーを彷彿させます。
 地味な映画ですが、僕たち中高年の心に響く映画です。 生き方を考えさせられます。アカデミー賞にノミネートされなかったのが不思議なくらいです。おすすめです。
バーン・アフター・リーディング(21.4.26)
監督  ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン
出演  ジョージ・クルーニー  フランシス・マクドーマンド  ブラッド・ピット  ジョン・マルコビッチ
     ティルダ・スウィントン  リチャード・ジェンキンス  エリザベス・マーベル  J・K・シモンズ
 監督が「ノーカントリー」でアカデミー賞を受賞したコーエン兄弟、出演者が男優陣はプラッド・ビット、ジョージ・クルーニーの二枚目俳優にジョン・マルコビッチという癖のある俳優。そして女優陣はコーエン兄の妻であるフランシス・マクドーマンドにティルダ・スウィントンという豪華俳優陣となれば、観に行きたくなるのも無理ないところですが・・・。正直期待はずれです。別にブラビがいつもの二枚目役とは異なり、ipod申毒のお馬鹿男を演じていたからではありません(お馬鹿男を演じても、かっこはいいです。)。ジョージ・クルーニーが下半身だけの男というからでもありません。そもそも、こうしたドタバタクライムコメディは性に合いません。
 物語はアル中でCIAを首になった男が書いた自伝が入ったCDを拾ったスポ−ツ・インストラクターの男と全身美容のために金が欲しいと考えている同僚の女が、CDの内容を国家機密と勘違いしてアル中男を恐喝しようとしたことから始まります。そこにアル中男の妻とその妻と浮気をしている財務省の保安官、さらには同僚の女に思いを寄せるスポーツジムの支配人が絡んでドタバタ劇が始まります。
 それぞれの勘違いがラストでは思わぬ大事になるというお話でした。いつもと違うプラビを観たいという人はどうぞ。ipodの音楽にノリノリのプラビは笑わせますよ。
チェイサー(21.5.9)
監督  ナ・ホンジン
出演  キム・ユンソク  ハ・ジョンウ  ヨ・ヨンヒ  チョン・インギ  チェ・ジョンウ  ミン・ギョンジン
(ネタバレあり)
 このところ、一時のプームが去って、韓国映画の公開件数がめっきり減りました。そんななか、韓国で大ヒットを飛ばし、レオナルド・ディカプリオがハリウッドでのリメイク権を獲得したという評判の作品です。
 TBSテレビ「王様のプランチ」の映画コーナーでも紹介され、インターネット上の映画サイトでも評判がよかったので、東京に行ったついでに観てきました。
 映画の雰囲気としてはラブ・ストーリー的な“韓流"とは異なる「オールド・ボーイ」や「殺人の追憶」の系譜に連なる映画といったらいいでしょうか。韓国で実際に起こった連続殺人事件に題材を取った作品です。

 元刑事ジュンホが経営するデリヘルから店の女の子が相次いで行方不明になる。ジュンホは、女の子が手付け金を持ち逃げしたのではないかと、その行方を探す。店にかかってきた携帯電話の番号から不審な番号を割り出したジュンホは、ちょうどその番号から呼び出されたミジンに対し、男の家に着いたらメールするよう命じるが、その後、ミジンからの連絡が途絶える。ミジンの行方を捜すうち、ヨンミンという男に遭遇するが・・・。

 「オールド・ボーイ」のように、ラストで衝撃的な事実が浮かび上がるものではありません。「チェイサー」という題名からジュンホとヨンミンとの激しい逃走劇を想像したのですが、たいした逃走劇が繰り広げられるわけでもな<、ヨンミンは映画が始まって間もなく逮捕されてしまいます。 あれあれ?っていう感じですね。ミステリのようにトリックがあるわけでなし、二人の智恵の絞り合いがあるというわけでもありません。
 しかし、衝撃度という点から見れば、かなりのものです。圧倒的なまでの暴カシーンです。血を見るのが嫌いな人は避けた方がいいでしょう。頭にノミをたたき込んだり、カナヅチで殴り殺すという残酷さには目を背けたくなります。
 こうした凄惨な事件のモデルとなった事件を起こした男は、殺人の動機を「何となく」と言ったそうです。この映画の中では、性的不能を指摘されて激昂する場面が出てきますが、ストレートにはヨンミンの殺人の動機は描いてはいません。ヨンミンの生い立ちも描かれることもなく、また、彼を追う側のジュンホが警察を辞め、今ではデリヘルの経営者となったいきさつも詳し<は語られていません。彼ら二人の裏側にある事情はまったく語られずに凄惨な事件の表面だけが語られていきます。
 「オールド,ボーイ」や「殺人の追憶」を凌ぐかといえば、それほどではなかったと言わぎるを得ません。ただ、あ
まりに救いようのないラストに唖然とするばかりです。映画館を出ても気分はすっきりしません。
 
 余談ですが、日につくのは韓国警察の捜査能力の低さです。ヨンミンに振り回される姿には見ていて歯がゆくなってしまいます。これでは実際の事件では20人以上が殺されるまで逮捕されなかったのも無理ないかなと思わせる体たらくです。
天使と悪魔(21.5.16)
監督  ロン・ハワード
出演  トム・ハンクス  ユアン・マクレガー  アイェレット・ゾラー  ステラン・スカルスガルド
     ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ  ニコライ・リー・コス  アーミン・ミューラ=スタール  
 ダ・ヴィンチシリーズ(というよりロバート・ラングトン教授シリーズといった方が適切でしょう。)第2弾です。小説としては第1目ですが、映画化された順番は逆になっています。前作から3年後、今回の舞台は世界一小さな国、ヴァチカン市国です。
 ローマ教皇が亡くなり、新たなローマ教皇を選出する手続・コンクラーベが始まる中、有力候補の4人の枢機卿が誘拐され、それとともにスイスの欧州原子核研究機構から盗まれた恐るべき破壊力を有する反物質がヴァチカン内に
仕掛けられる。誘拐犯はかつて教会に弾圧されたガリレオらの科学者を中心として作られた“イルミナティ"と呼ばれ
る組織を名乗り、1時間ごとに枢機卿を殺すと宣言する。ヴァチカン警察はイルミナティに詳しいロバート・ラングトンに協力を求める。
 前回は原作を読んでからの鑑賞だったのですが、今回は原作を読まずに全くの先入観なしに見ました。しかし、ひととおり、登場人物たちが登場した段階で、話の流れがだいたいわかってしまいました。当たり前すぎる展開で、きっとこの人がああなって、こうなってと予想がついてしまいました。僕の考えを裏切ってくれぇ〜と期待したのですが、結局予想どおり。これって、配役のせいもあるかもしれません。いかにも疑わしそうな人をこの人犯人だろうなんて、今どきの観客は簡単には信じませんよ。最近の観客は裏を読むのです。
 ミステリ的には前作の「ダ・ヴィンチ・コード」の方がずっとおもしろかったですね。なかなか犯人が読めませんでしたもの。
 枢機卿たちが「土・空気・火・水」に関わりのある殺し方で殺害されていくのですが、いつもラングトンたちが駆けつけるのが今一歩というところが何とも言えません。映画だからと思いながらも、いいかげん、もう少し早く謎を解けよ!と言いたくなります。
 ラングトンを演じたトム・ハンクスは、実力派俳優らしいそれなりの演技。それより、登場人物の中で印象的だったのは、枢機卿殺害の実行犯を演じたニコライ・イー・コスです。冷徹で次々と殺人を犯しながらも、丸腰だったラングトンは見逃すというしゃれたところもある殺人者を演じました。
 役柄的にはアイェレット・ゾラーが演じたヴィットリア・ヴェトラという女性、はっきり言って嫌いです。反物質などという危険なものを上司に秘密に作り、挙げ句の果てに奪われてしまったのに、反省のかけらも見られません。そもそもこんなことになった一因は自分にあるということを理解していないじゃないか!と、これまた映画でありながらも腹を立ててしまいました。
 今回はローマ市内の様々な観光地を見たり、スイス人が教皇の護衛をしているなんて驚きの事実を知ったことで良しとしましょう。
スター・トレック(21.5.30)
監督  J.J.エイブラハム
出演  クリス・パイン  ザッカリー・クイント  レナード・ニモイ  エリック・バナ  ブルース・グリーンウッド
     カール・アーバン  ゾーイ・サルダナ  サイモン・ベッグ  ジョン・チョウ  ベン・クロス  ウィノナ・ライダー
 カーク船長等エンタープライズ号乗組員の若き頃を舞台にした物語です。
 宇宙空間に突然現れたネロ船長率いる宇宙船ナラーダに攻撃され、自己の命をかけて、生まれて<る息子や800人の乗員を救ったカークの父。成長したカークは父の友人パイクの勧めで父と同じ道を歩み始める。
 テレビシリーズも観たことはなく(たぶん、地方では放映されていなかったのでしょう。)、映画化されたものを観
ただけで、“トレッキー"と呼ばれるような熱狂的なファンとはそもそも違います。僕らの世代は“スター・ウォーズ
"の世代といっていいでしょう。かつて映画化されたものを観ましたが、すでに内容はすっかり忘れてしまっているくらいです。
 ただ、ミスター・スポックの容貌だけは印象深くて心に残っていました。今回、スポック役を演じたレナード・ニモイが年取ったスポック役で出演しているのはファンとしては嬉しいところでしょうね。若き頃のスポック役のザッカリー・クイントもメーキャップのせいか全然違和感ありません。また、スポックだけでなく、テレビシリーズに登場していた乗務員たちの若き頃の姿も描かれますので、シリーズを観ていたファンとしてはたまらないでしょうね。でも、シリーズを観ていなかった人でも十分楽しめる作品にはなっていますよ。

 ネロがスポックを襲う理由としていた“復讐"については、ちょっと説明不足だった気がします。それゆえ、ネロの怒りが理不尽に感じられてしまったのですが、もう少し、そこのところを丁寧に描いた方がネロの悲しみが理解できたんじゃないのかなあと思ってしまいます。決して悪人というわけではないでしょうに。かわいそうに。

 バルカン人と地球人との間に生まれたスポックの地球人の母親役でウィノナ・ライダーが出演しています。実生活では様々な問題を起こした彼女ですが、いつの間にか歳を取りましたねえ。相変わらず綺麗ですが。
ラスト・ブラッド(21.5.30)
監督  クリス・ナオン
出演  チョン・ジヒョン  小雪  アリソン・ミラー  リーアム・カニンガム  倉田保昭  コリン・サーモン
     JJフェイルド
 チョン・ジヒョンと小雪さんが出演しているので観に行ったのですが、正直のところ期待はずれ。
 チョン・ジヒョンが演じたのはオニと人間のハーフの女の子・サキ。彼女の使命は、オニの頂点に君臨する父の敵であるオニゲンを倒すこと。このオニゲンを演じるのが小雪さん。せっかく、この二人が共演したのに、もう少しどうにかならなかったのでしょうかねえ。
 チョン・ジヒョンも「猟奇的な彼女」や「僕の彼女を紹介します」のちょっとコミカルな気の強い女の子というイメージを払拭したかったのでしょうが、こんなB級映画としかいいようのない作品|こ出演したのではかえってマイナスという気がします。
 だいたい、“オニ”というけど、僕らが“オニ”から想像するものとは大違いです。翼はあるし、原題からいっても、これはヴァンパイア・吸血鬼ですよね。また、原作のアニメーションがそうだったからしょうがないでしょうが、アメリカ軍基地の学校に入るのにセーラー服はないよなあと思うのは僕だけではないでしょう。まったく必然性がないですからね。まあチョン・ジヒョンは童顔ですから、そういう点ではセーラー服でも違和感はありませんけど。
 外国人監督が日本を描<ときのような、例えばタランティーノの「キル・ビル」のような変な時代錯誤のような描き方をしないだろうなあと気がかりだったのですが、やっぱりやってしまいました。オニが忍者の格好で襲ってくるんですから、唖然としてしまいます。これは忍者映画だったのか!!! 日本といえば忍者というイメージが強いのでしょうけど、それはないでしょう。
 また、オニゲン(なんだこの名称は!)を演じた小雪さんも、最初は洋服姿で登場したのに、いつの間にか着物姿になってしまったけど、日本女性となると着物というのはあまりに短絡的。外国人には受けがいいんでしょうが・・・。ところで、小雪さん、綺麗だけど、オニの本性を垣間見せた一瞬の表情は怖かったなあ。
ターミネーター4(21.6.6)
監督  マックG
出演  クリスチャン・ベイル  サム・ワーシントン  アントン・イェルチン  ムーン・ブラッド・グッド
     ブライス・ダラス・ハワード  ヘレナ・ボナム・カーター  コモン  ジェーン・アレキサンダー
 “ターミネーター"シリーズ第4弾です。今回は舞台が2018年の未来です。
 核戦争による“審判の日"の後、生き残ったわずかな人々が抵抗軍を組織し、スカイネットとの戦いの日々を送っている様子を描きます。
 ジョン・コナー役はクリスチャン・ベール。前作のジョン・コナー役のニック・スタールは、どうみても抵抗軍を指揮する指導者としては(見た感じで判断しては悪いのですが)、明らかに役不足。それに対して、バットマンを演じたクリスチャン・ベールならば、精憚な二枚目ですし、憂いを含んだ表情もお得意。ジョン・コナー役として適任です。「バットマン」では、せっかく主役を演じながら、ジョーカーを演じたヒース・レジャーにすっかり喰われてしまった感がありました。今回こそはと意欲もあったのでしようが、不運にも今回も彼の前に立ち塞がった男がいました。
 それは、マーカスを演じたサム・ワーシントンです。無名の俳優でしたが、監督のマック・Gに見いだされてマーカス役に大抜擢。この役はおいしい役ですよ。殺人罪で死刑判決を受け、サイバーダイン社の実験に献体をすることになり、気がついたときは2018年の世界。なんと身体はロボット化されていたというわけ。主人公はジョン・コナーですが、観ているとマーカスの方が主人公かと思えるほど。機械の身体になり、人間なのかと苦しむマーカスが描かれていきます。ラストからしても、やっばり主人公はマーカスだ!と言えますよね。クリスチャン・ベールもかわいそうに。
 ジョン・コナーの父親となるカイル・リースを演じたのはアントン・イェルチン・この人は今年「スタートレック」に出演するなどノッていますねえ。あちらでは英語が下手な頼りなさそうな一番若い乗組員を演じていましたが、
こちらでは抵抗軍に入ることを望み、孤児のスターを守りながら一人戦う若きカイルを演じています。
 ところで、“ターミネーター”といえば、アーノルド・シュワルツェネガーですが、彼は3の後カリフォルニア州知事となってしまいました。さて、今回は出演するのだろうかと興味津々。Tー800は出ないなあ。あれ!?もうラストの戦いが始まったけど。・・やっばり今回は出ないのかなあ・・・えっ!?
 もう一つ、“ターミネーター”といえば、シュワちゃんが言う「I'll be back!」ですが、今回このセリフを言うのはシュワちゃんに代わってある人が言います。
 ターミネーターが上半身だけになっても襲いかかってきたりするところは、1作目を思い起こさせますが、映画全体の雰囲気も1作目のようです。3作目ががっかりだっただけに、今回はどうなるだろうと思ったのですが、おもしろい! おすすめです。
ザ・スピリット(21.6.7)
監督  フランク・ミラー
出演  ガブリエル・マクト  エヴァ・メンデス  サラ・ポールソン  ダン・ローリア  バス・ベガ
     スカーレット・ヨハンソン  サミュエル・L・ジャクソン  スタナ・カティック  ルイス・ロンバルディ
 「シン・シティ」「300<スリーハンドレッド>」の原作者フランク・ミラーが監督に挑戦した作品です。やはり、アメコミを原作とする作品です。映像としては、「シン・シティ」と同様な感じで、どこか独特です。しかし、内容はといえば、僕自身にはつまらない作品でした。観ているうちに何度もウトウトしてしまいました。今年観た作品の中でワースト1、2を争う作品と言っていいかもしれません。
 主人公、ザ・スピリッドにはそれほど有名でない俳優を使っていますが、敵役オクトパスにはサミュエル・L・ジャクソンですし、その部下シルケン・フロスにはスカーレット・ヨハンソンを起用するなど、それなりに有名な俳優を使っているのに引きつけるものがまったくありません。無駄な2時間でした。
ウルトラミラクルラブストーリー(21.6.12)
監督  横浜聡子
出演  松山ケンイチ  麻生久美子  ノゾエ征爾  ARATA  渡辺美佐子  原田芳雄  藤田弓子
 青森で農業をしながら暮らす青年陽人が東京から来た保育士の町子先生に恋してしまったことから起こるドタバタ劇です。
 題名はラブストーリーですし、普通は田舎の純朴な青年と東京で心傷つき田舎へとやってきた女性とのアットホームな恋物語かと誰でも予想するでしょう?僕も観る前は当然そういう話だと思って観にいったのですが、いやぁ〜そんな予想は大きく裏切られました。思いもしない事態、というよりとんでもないストーリー展開にしばし呆然。この映画はいったい何なんだ!と声に出してしまいそうになりました。まあ、だからこそ題名が「ウルトラミラクル・・・」なんでしょうけどねえ。ラストも“すごい”ですよ。普通、あんなもの持ち歩くか!それにそれで遊ぶか!? ある意味、衝撃的な作品でした。
 主人公陽人のキャラクターも理解不能。陽人の描かれ方を見ると、知的障害があるように見えるし、そうではないようにも見えます。最後までキャラがつかみきれませんでした。その陽人を演じたのは松山ケンイチさん。最近さまざまな映画に出演し、大活躍です。津軽弁も見事(なのか僕には評価できないのですが)に自分のものにしていたようです。
 陽人が恋する町子先生を演じたのは、麻生久美子さん。麻生さんといえば、僕としてはテレビの「時効警察」のコミカルな役が印象的だったのですが、パンフレットの紹介文を読むと、ブルーリボン賞主演女優賞とか数々の賞を受賞している女優さんだったのですね。知らなかったぁ。翌日見た映画の予告編でも麻生さん主演作が紹介されていました(「インスタント沼」という映画です。)。
 町子先生の亡くなった恋人役でARATAさんという顔も知らない役者さんが登場しているのですが(名前がアルファベットとは珍しい)、この人の登場シーンにも驚きですよ。よく出演したなあという感じです。
 舞台は青森県、セリフは全編津軽弁。冒頭でラジカセから流れてくる陽人の祖父の話す津軽弁なんてほとんどわかりません。同じ日本人でありながら、方言てこんなに違うんですねえ。これでは、僕の話すこの地方の方言も他の地方の人からすれば聞き取れなくて当然と納得。
重力ピエロ(21.6.13)
監督  森淳一
出演  加瀬亮  岡田将生  小日向文世  鈴木京香  吉高由美子  岡田義徳  渡部篤郎
(ネタバレあり)

 大好きな伊坂幸太郎さん原作小説の映画化です。今年に入ってから伊坂作品で映画化されたのは「フィッシュストーリー」「ラッシュライフ」とこれで3作ですから、その人気の高さがわかります。
 英語で同じ“スプリング”と名付けられた兄弟の兄の泉水を加瀬亮さん、弟の春を岡田将生さんが演じます。泉水は原作と異なって会社員ではなく遺伝子を研究する学生となっていますが、何であっても泉水の雰囲気に加瀬さんはぴったりです。一方春の岡田さんもきりりとした二枚目で原作の雰囲気を損なっていません。
 彼らの両親役を演じたのは小日向文生さんと鈴木京香さんです。小日向さんはかつらをかぶって父親の若き頃を演じていますが、ちょっと無理あるかも。お父さんの雰囲気としては最高なんですけどね。鈴木京香さんも綺麗ですが、すっかり子どもたちの母親役が板に付く年齢になってしまいましたね。
 伊坂ファンとしては、どうしても原作との違いが目に付いてしまいます。
 ひとつは原作では重要な役どころであった夏子さんが、映画ではそれほどの重要な役柄ではなかったということです。高校時代の夏子さんはあれではホラーですよ。それに原作の“ヘップバーン似”というには吉高さんの容貌としゃべり方はあまりに合っていません。
 もうひとつ原作との大きな違いは、黒澤が登場していない点です。やっぱり、伊坂作品においては黒澤というキャラクターは重要な位置を占めます。確かにあの黒澤を登場させてしまうと、兄弟たちの印象が薄くなってしまうかもしれません。2時間の映画の中では登場させるのは無理だったかなとは思いますが、やっぱり残念。
 葛城役が渡部篤郎さんというのは予想外の配役でした。TVドラマ「ケイゾク」で見せたようにあくの強い演技をする役者さんですが、あんな嫌な悪人役は合わないですよねえ。
 いろいろ不満を書き連ねてしまいました。伊坂さんの作品はそれぞれの登場人物たちのキャラやセリフが印象的で、伊坂ファンとしてはそれぞれのシーンやセリフを大切に思っているので、やはり、カットされるとつい不満がこぼれてしまいます。
 約2時間という時間の制約のある映画では、原作のすべてを表現するのは難しいのでしょうね。ただ、原作を読んでいる人には話の流れはわかるのですが、読んでいない人には泉水が考えていた行動などが分かりにくかったかもしれません。
ラッシュライフ(21.6.13)
監督  真利子哲也  遠山智子  野原位  西野真伊
出演  堺雅人  寺島しのぶ  柄本佑  板尾創路  団時朗  MINJI  深水元基  永井努  筒井真理子
     塩見三省  塩谷瞬  佐藤江梨子
 公開初日に「ラッシュライフ」を観に行ってきました。伊坂幸太郎さん原作小説の映画化です。
 商業映画ではなく、東京芸術大学の学生らが製作したものですが、堺雅人さん、寺島しのぶさんら有名俳優も出演しています。今回、新宿の映画館「新宿バルト9」が協力しての公開となりましたが、伊坂ファンで初日の当日券は売り切れという盛況となりました。
 伊坂さんの原作は、群像劇である上に、それぞれの登場人物たちが交錯し、さらにそれぞれのエピソードの時間軸がズレているので、映画化は非常に難しいと思ったのですが・・・。残念ながら、やっぱり、伊坂作品のおもしろさを損なわずに映画化するのは難しいと思う結果となりました。
 今回は4人の監督が4つのエピソードを描くという形をとったので、原作のような、それぞれの登場人物の交錯がうまく描かれていない嫌いがあります。4つの独立した話のようになってしまっています。原作を読んでいないとわかりにくいのでは?と思える部分も目につきます。
 思わずウトウトしかかった中で、おもしろく観ることができたのは、伊坂作品ではお馴染みの黒澤が登場するエピソードです。黒澤を演じた堺雅人さんの雰囲気がいいんですよねえ。ちょっと醒めたような表情といっていいんでしょうか。それとも斜に構えたような態度というのかな。とにかく、堺さんのキャラでかなり助かっていますね。
 僕が観たのは「新宿バルト9」の中で一番小さなスクリーン。予約してあったので、席は確保できましたが、前から2列目の席で、見上げていたら首が疲れてしまいました。
トランスフォーマー リベンジ(21.6.19)
監督  マイケル・ベイ
出演  シャイア・ラブーフ  ミーガン・フォックス  ジョシュ・デュアメル  タイリース・ギブソン  ジョン・タトゥーロ
     ケヴィン・ダン  ジュリー・ホワイト
 シリーズ第2弾です。前作ラストで地球に残ることを決意したオートボットは、ディセプティコンの残党との戦いを行っていた。一方サムは家を離れ、大学生としての生活を始めようとしていた。
 今回は前作で海の奥底に沈められたメガトロンが復活するばかりでなく、メガトロンの親分のディセプティコンが登場し(あれ!?メガトロンがディセプティコンのボスではなかったの?)、地球消滅を謀ります。映画が始まった最初から手に汗握る展開。巨大な車輪を持つディセプティコンが、道路上を爆走するシーンは迫力満点です。いっきに映画の中に引き込まれます。
 オートボットにしろ、ディセプティコンにしろ新たな仲間が登場し、前作以上に追力ある戦いとなっています。なかでもサムが大学校内で遭遇するディセプティコンにはビックリです。今まで彼らが変身するのは飛行機や車だったのに、あんなものにトランスフォームするとは。あれではターミネーターみたいです。げに恐ろしきは何とやらですかね。
 それと印象的だったのは遙か昔に地球に来ていたというディセプティコン。遙か昔から地球にいるだけあって、見た感じが歳とったお爺さんという風貌。そのうえ、いたのがスミソニアン博物館というのもユニークでした。
 前作で登場したアメリカ軍のレノックスとエップスは今回も健在。オートボットとともに戦うNESTの一員として今回も活躍します。あの憎たらしいセクター7のシモンズも登場します。ただ、セクター7はすでに廃止されてしまい、今では一般人となっていますが、前作と異なりかなりいい奴として大活躍です。相変わらずユニークなのはサムの両親。特におかあさんのハチャメチャぶりには大笑いです。
 いろいろ考えずに楽しめる映画です。トランスフォームするところのCGは見事。前作以上です。2時間半があっという間ですよ。
MW(21.7.10)
監督  岩本仁志
出演  玉木宏  山田孝之  石田ゆり子  石橋凌  山本裕典  山下リオ  風間トオル  中村育二
     林泰文  品川徹  半海一晃
 手塚治原作の漫画「MW」の映画化です。手塚治虫の異色の漫画だそうですが、僕自身は読んだことがないので、先入観なしでの鑑賞です。ただ、テレビで映画の公開に併せて、アナザーストーリーが放映されました。この当た
り、最近映画とテレビ局とのコラボが多いですねえ。観客動員を狙ってのことでしょうが、これはこれで大いに楽しむことができます。かくいう僕もこれで映画を観に行こうかなあと思った一人です。
 ストーリーは16年前にある事件がきっかけとなって島民が惨殺された島から脱出した少年の復讐譚です。成長した二人は一人は銀行員に、一人は神父となりますが、銀行員となった結城は隠蔽された事件の首謀者たちへの復讐を図ります。一方、神父となった賀来は、結城の意図を知りながら、悩みながらも命の恩人である結城に手を貸します。
 玉木宏さんが演じた結城が非情な男なんですよね。女性であろうと躊躇うことな<撃ち殺すし、子どもだって平気で人質にします。山田孝之さんが演じた幼なじみの賀来のことでさえ、争って海に落ちたときに、おもちゃをなくしたという言い草ですから。悪魔の心を持った人間です。刑事の惨殺シーンなど、すごいですよ。それにある女優が演じた役が結城のせいで無惨に殺されてしまいます。普通、この女優さんはあんな死に顔演技しないでしょうに。
 前半はこうした結城の非情さを描いてテンポよく進んだのですが、後半の作りがあまりに雑です。2時間の映画の枠の中で作るのは難しかったのでしようか。アメリカ軍基地でのシーンはあまりにはしょりすぎ。ここで、かなり評判を落とすのではないかと思います。玉木宏さんのいつにない非情な男の演技を観るだけの映画だったかな。 
ノウイング(21.7.10)
監督  アレックス・プロヤス
出演  ニコラス・ケイジ  ローズ・バーン  チャンドラー・カンタベリー  ララ・ロビンソン
     ナディア・タウンゼント  ベン・メンデルスゾーン  ダニエル・カーター
(ネタバレあり)

 ある小学校で子どもたちの絵などを入れて校庭に埋められたタイムカプセルが50年後の現在掘り出されます。タイムカプセルの中からジョンの息子はある少女が描いた数字だらけの紙を受け取ります。ふとしたことから、ジョンは、その数字が地球上で起こった災害や事件の日時、そして死亡者数を表しているものだと気づきます。その頃、ジョンの息子は、耳に囁く声を聞くようになります。
 この映画を観て思い出しました。30年以上前にNHKで少年ドラマシリーズという番組を放映していたことがあります。その当時の中・高校生に大人気の番組でした。そのなかで、「赤外音楽」という作品がありました。たぶん、中学生の少年が主人公だったと思うのですが、その少年は、ある日、突然耳に変な音楽が聞こえるようになります。その音楽は一部の人にしか聴き取ることができず、家族にも聞こえません。実は、それは宇宙人が地球滅亡に際し、音楽が聞こえるかどうかによって、宇宙へと連れて行く地球人を選別していたのです。果たして、少年は家族を置いて宇宙へと旅立つのか・・・。
 この映画とまったく同じですよねえ。原作は誰だったのか憶えていませんが。このテレビでは、少年は家族とともに地球に残ることを選択します。家族に「この音楽が聞こえるだろう!?」と悲痛な思いで尋ねるシーンにはグッときましたね。映画では父親であるジョンが、地球に残ると言う息子を諭します。親だったら、やはりそうするでしょうね。
 キリスト教の国であるアメリカらしい映画です。結局、神って宇宙人だったのかなあと思わせます。あの子ども二人はアダムとイプですか? 途中で宇宙人らしき人物たちが登場してきたときには、「サイン」みたいなお笑い映画にならないようにと願ったのですが、さすがにそこまではいきませんでした。
 予告編でもやっていた旅客機が墜落するシーンはすごいです。墜落してからも爆発炎上、人が火だるまで飛び出してくるシーン等迫力があります。一番の見応えは、やつばり太陽のフレアによる地球炎上シーンですねえ。CGがすごいですよ。圧倒されます。
 それにしても、テレビの予告編は大いにネタバレですね。あれでは主人公のジョンが死亡するのがわかってしまいます。
愛を読む人(21.7.10)
監督  スティーヴン・ダルドリー
出演  ケイト・ウィンスレット  レイフ・ファインズ  デヴィッド・クロス  レナ・オリン  ブルーノ・ガンツ
     アレクサンドラ・マリア・ララ
 ベストセラーとなったベルハルト・シュリンクの「朗読者」(新潮文庫)の映画化です。文庫化された際に購入しましたが、積ん読状態で内容を知らないまま映画を観に行ってきました。
 路上で急病で苦しんでいるところを助けてくれた年上の女性ハンナに惹かれた少年ミヒャエル。彼女がどんな気持ちで親子ほど年齢の離れたミヒャエルと身体の関係を持ったのかは定かではありません。少年の方はわかりますよね。若いですからねえ。いつだってセックスしたいという気持ちは理解できますよ。とにかく、前半は年上女性とのセックスに溺れる少年が描かれていきます。
 ある日、彼女から本を読んで欲しいと言われ、本を読んで彼女に聴かせることになるのですが、このことが後半の展開の大きな鍵となります。ハンナが突然ミヒャエルの前から姿を消した数年後、法学部のゼミ生として傍聴した裁判の被告席にいたのがハンナ。ナチの戦犯として裁かれていたのですが、裁判の中で彼女がとった行動は、日本ではああいうこと(ネタバレになるので言えません)はあまり考えられないので、理解できないというのが本当のところですね。それによって、自分の罪を認めることになってしまうのですから。僕だったら、簡単な気持ちで事実を告白してしまうでしょうね。彼女なりの自尊心ということだったのでしょうか。
 ただ、映画を観ただけでは、刑務所に入っているときにあれほどミヒャエルからの手紙を待ち望んだハンナが、出所直前になぜああいう行動を取ったのかがいまひとつすっきりわかりません。本を読んで再度考えてみます。
 ケイト・ウィンストレットが全裸になっての熱演です(別に全裸だから熱演というわけではないのですが・・・)。老け顔での演技も見事です。今回見事にアカデミー賞主演女優賞を受賞したのもうなずけます。