▲2006映画鑑賞の部屋へ

戦場のアリア(18.7.1)
監督  クリスチャン・カリオン
出演  ダイアン・クルーガー  ギョーム・カネ  ダニエル・ブリュール  ベンノ・フュルマン
     ゲーリー・ルイス  スティーヴン・ロバートソン 
 舞台は1914年、第一次大戦下のフランス北部デルソー。フランス・スコットランド軍とドイツ軍が対峙する最前線で、クリスマス・イブの夜、ドイツ軍陣地から聞こえるオペラ歌手の歌声にスコットランド軍がバグパイプの伴奏で応じたことから、3軍の間にクリスマス休戦がなされます。

 つい先ほどまで殺し合いをしていた兵士たちが、談笑したり、酒を酌み交わし合うなんてことがあるはずがない、おとぎ話だと思ってしまうのですが、これは第一次世界大戦中の実話をもとにした映画だそうです。サッカーの試合をしたりとか、相手方の大砲による射撃が始まる前に自分たちの陣地の方に相手を招き入れるなんてことがあったかはともかく、クリスマスの夜に休戦が行われたことは事実のようですね。

 しかし、歌声を聞いただけで、そんなに簡単に休戦が行われるものなんでしょうか。結局前線の兵士にはそれほど戦争を遂行する目的がなかったのでしょう。戦争を始めるのは、前線の兵士ではなく、安全なところでのんびりしているお偉い人たちなんですね。
 ただ、監督はおとぎ話だけを描いているわけではありません。兄を殺されたジョナサンは、近づいてきたドイツ軍兵士にナイフを持って向かいます。ここに戦争の本当の悲惨さを見ることができます。人間の心に芽生えた憎しみというのは、そんなに簡単に消すことはできないのですね。それに、友好を結んだ兵士たちに待っている過酷な運命。ハッピーエンドで暖かい気持ちで終わるという映画とはなっていません。

 徴兵された兵隊たちを前に、相手の国の人は女、子どもまで殺せと説く神父の姿には、宗教の持つ怖さを感じてしまいました。隣人を愛せというのは同じ宗教を信仰する隣人であって、他の宗教を信じる人は違うのですよね。さらには、この映画に登場するフランス、ドイツ、イギリス(スコットランド)は、宗派は異なるかもしれませんが宗教はキリスト教徒がほとんどでしょうに、それでさえ、相手を悪魔のように言うのです。宗教というものは自分たちに都合のいいように考えるのですね。最後にパーマー司祭が十字架をはずして去っていくシーンが深く心に残りました。

 ソプラノ歌手アナを演じるのは、「トロイ」の美しい王妃役が印象的だったダイアン・クルーガーです。本当に綺麗な人ですね。この作品では歌のシーンが口パクだったのが明らかにわかってしまって、ちょっと残念です。もう少し、どうにかならなかったものでしょうか。
 ドイツ軍の指揮官ホルストマイヤー中尉を演じたのは、「グッバイ、レーニン」や「ベルリン、僕らの革命」で最近活躍中のダニエル・ブリュールです。指揮官役としては若い感じがしないでもありませんでしたが、今回は無精髭を生やして熱演です。
 フランス軍の指揮官オードベール中尉役を演じたのは、ギョーム・カネ。軍の幹部の父親からのプレーシャーや、戦闘に向かう重圧から嘔吐してしまうという、この映画の中で一番現実的な人間を演じていました。

 ミニ・シアター系の映画を東京まで行かずに観られることは幸運でした。映画館の経営者に感謝です。
サイレント・ヒル(18.7.8)
監督  クリストフ・ガンズ
出演  ラダ・ミッチェル  ショーン・ビーン  ローリー・ホールデン  デボラ・カーラ・アンガー
     キム・コーツ  タニヤ・アレン  アリス・クリーグ  ジョデル・フェルランド
 養女に迎えた娘シャロンが夢遊病の中で叫ぶ「サイレント・ヒル」という言葉。その謎を解くために、母親のローズはシャロンを連れてウエストバージニア州に実在する街、サイレント・ヒルに向かう。そこは、30年前の火災から今でも地下火災が続き、有毒ガスが蔓延して封鎖されたゴースト・タウンだった。ふとしたことから女性警官シビルに追われたローズはサイレント・ヒルへの道の封鎖を破り逃げるが、事故を起こし気を失ってしまう。気付いたときにはシャロンの姿が見えず、ローズは娘を捜して雪のような灰が舞うサイレント・ヒルの街に足を踏み入れるが・・・。
 日本のホラー・ゲームを原作にした作品です。パンフレットでは『世界中を震え上がらせた“最も怖い”人気ゲーム、待望の映画化』とあるのですが、正直のところこの映画全然怖くありません。確かに人が引き裂かれたりして血しぶきが飛び散る、いわゆるスプラッター映画のシーンはあるのですが、怖いというのとはちょっと違います。
 ローズの前に登場してくる異形のものたち、これがまた怖いというより、なんだこれは!?とあ然としてしまうものばかり。三角形の頭を持って大きな剣を振り回すレッド・ピラミッドや焼けただれた幼児のような姿をしているグレイ・チャイルド、のっぺらぼうの顔で腕もないアームレス等怖いというより滑稽です。なかでも人間の顔をした巨大ゴキブリみたいな虫やダーク・ナースなんて思わず笑ってしまいました。普通ホラーというと“ほら、そこから出てくるぞ、出てくるぞ”と盛り上げておいて“なんだぁ、ただの影だったのかぁ”とホッとさせたところに振り向くと“ギャァー”となるのですが、今回はそんな場面もなかったです。怖ろしくてスクリーンを直視できないということもありませんでした。音響で怖がらせるこけおどしのホラー映画も多いのですが、この映画はそれもないので、彼女を怖がらせたいと思って連れて行くと、期待はずれに終わるかもしれませんよ。

 闘う母親シャロンを演じるのは、ラダ・ミッチェル。最近ではジョニー・デップの「ネバーランド」でジョニー・デップ演じるジェームズ・バリの妻役を演じていましたね。シャロンの夫役を演じたのは、ショーン・ビーン。この人、この映画でもそうですが、最近「スタンドアップ」などで“いい人”の役を演じるようになりましたが、やっぱりあの顔は悪役向きの顔ですよねえ。

 この映画、やっぱりゲームをしたことがある人が観に行った方が楽しめるのでしょう。僕としては、ゲームの映画化としては「バイオハザード」の方がおもしろかったですね。
パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト(18.7.15)
監督  ゴア・ヴァービンスキー
出演  ジョニー・デップ  オーランド・ブルーム  キーラ・ナイトレイ  ビル・ナイ  
     ステラン・スカルスゲート  ジャック・ダヴェンポート  ナオミ・ハリス  ジョナサン・プライス
 先行ロードショーの、それも第1回目の上映を観てきました。パイレーツ・オブ・カリビアンシリーズ第2弾です。とにかく、掛け値なしにおもしろい。子どもから大人まで、男性、女性問わず楽しめます。家族で行くのも良し、デートで行くのも良し、映画を観たあとにみんなで会話が弾む作品です。手に汗握る場面もあるし、思わず笑ってしまう場面もあるし、親子愛の場面もあるなど全然だれることもなく2時間30分があっという間です。エンターテイメント作品としてはぶっちぎりの今年ナンバー1です。観に行って本当に後悔させられない映画です。今回は、先行ロードショーで、入場料金は割引もなく1800円でしたが、元は十分とったという感じです。

 主人公ジャック・スパロウを演じるジョニー・デップのキャラクターを抜きにしては、この作品の魅力は語れません。悪者なんだけど、どこか憎めない。ウィルなど、ひどいことをされているのに、なぜか最後には許してしまう。隈取りをしたギョロッとした目。今までジョニー・デップが演じた役柄のような神経質で、繊細で、暗くて、真面目という面が見られない三枚目の役柄が、ジョニー・デップの演技の幅を広めましたね。ツボにはまったという感じで、のびのびと演じている感じがします。前作でアカデミー主演男優賞にノミネートされたのも納得できるところです。今回もずるがしこくて、ウィルに嘘をついて窮地におとしめるなど、ウィルを演じるオーランド・ブルームファンには怒られそうです。

 ただ、今回は脇役陣もそれぞれ個性を発揮しておもしろいですよ。前作では、単に「ロード・オブ・ザ・リング」のエルフ族のかっこいい兄ちゃんという印象で見ていたオーランド・ブルームも、前作以降の活躍のせいか、存在感のある男という感じになってきました。それにしても、「エリザベスタウン」に出演してコスチューム劇から脱出しようとしているのに、またコスチュームを着てしまいましたね。

 ウィルの恋人エリザベス・スワン役を演じるキーラ・ナイトレイも、今回は男装をして大活躍です。あの勝ち気そうな顔が冒険活劇には意外に似合います。物語の中ではウィルに気を揉ませるような行動もあって、今後の行方が気になります。

 それと、前作で三人のために提督の地位を追われたジェームズ・ノリントンも登場します。これが、髪の毛ぼさぼさのうらぶれた男になって登場し、ジャックたちと行動をともにするのですが、ジャックたちとの絡みシーンも多く前作よりもおいしい役どころです。

 そのほかにも、キャプテン・バルボッサの子分だった凹凸コンビの海賊や、サルのジャックも再登場して、第1作目を見た人にはたまらないおもしろさとなっています。

 さて今回の悪役は幽霊船フライング・ダッチ号の船長、デイヴィ・ジョーンズ。蟹のハサミのような手と、タコの触手のような髭を持つ男(?)ジャック・スパロウに契約の履行を求めて、彼を追います。よく考えると、悪いのはジャック・スパロウですよね。契約を履行しないのですから。契約は守らなければなりません(^^)演じるのは、イギリスの俳優ビル・ナイです。このところ、「アンダーワールド」や「ナイロビの蜂」等出演作品を多く見るようになりました。でも、なんといっても印象的なのは売れなくなったかつての人気歌手を演じた「ラブ・アクチュアリー」です。最高でしたね。今回は、メーキャップがすごいので、言われないとビル・ナイとは気づかないほどです。

 今回はラストとなる3作目も一緒に撮影しているので、ラストが完全に続き物となっています。思わぬ人物の登場でびっくりです。公開は来年のようですが、待ちきれません。
M:i:V(18.7.15)
監督  J・J・エイブラハム
出演  トム・クルーズ  フィリップ・シーモア・ホフマン  ヴィング・レイムス  ビリー・クラダップ
     ミシェル・モナハン  ジョナサン・リス=マイヤーズ  ケリー・ラッセル
     マギー・G  ローレンス・フィッシュバーン
 「ミッション・インポッシブル」シリーズ第3弾です。

 ブラックマーケットの商人ディヴィアンの監視任務に当たっていたイーサンが訓練したリンジーがディヴィアンによって拘束されたとの連絡を受け、イーサンは彼女の救出に向かうが、リンジーは脳内に埋め込まれた爆弾によって死亡してしまう。ディヴィアンの取引がヴァチカンで行われることを知ったイーサンとそのチームは、ディヴィアンを捕らえるべくヴァチカンに向かい、彼を捕らえるが何者かの裏切りにあい、彼は追われる身となってしまう。

 このシリーズ、ブライアン・デ・パルマ監督の第1作はサスペンス作品で、ミステリっぽいところもあって大好きだったのですが、ジョン・ウー監督の第2作は一転アクション大作となってしまい、おもしろさが欠けてしまったというのが正直な感想です。果たして今回メガフォンを取る「LOST」のJ・J・エイブラハムがどんな作品にしてくれるのか大いに楽しみでした。

 今回も、もちろんアクションシーンは盛りだくさんです。ただ、今回は単にアクションシーンだけではなく第1作のような謎解きもあって楽しませてくれます。また、スパイ大作戦といえば、仲間が助け合って指令を達成していくところがおもしろいのですが、今回はシリーズ第1作から唯一トム・クルーズ以外に出演しているヴィング・レイムス演じるルーサーのほかに新しいメンバーも加わり、チーム・ワークでの仕事も見せてくれます。評価としては第1作には及ばないけれども、第2作よりずっとおもしろかったというところです。

 主人公イーサンを演じるのは、もちろんトム・クルーズ。アクションシーンも自ら演じるという力の入れようです。ミサイルに吹き飛ばされて車にたたきつけられるシーンなんて痛かったでしょうにね。アクションは相変わらずなのですが、今回はなんと、イーサンは婚約をしてしまうのです。婚約パーティでは何も知らない彼女とその家族、友人たちの前で幸せいっぱいです。まるで私生活を反映したような映画ですね。スパイと結婚とは相容れないと思ってしまうのですが、そんなことはおかまいなく、友人のルーサーの助言も耳に貸しません。イーサンもスパイである前に一人の男であることを今回の映画では強調しているのでしょう。

 悪役ディヴァインを演じるのは、今年「カポーティ」でアカデミー主演男優賞を受賞したフィリップ・シーモア・ホフマンです。まあ憎たらしいほどのふてぶてしさで、イーサンをいたぶります。今まで観た映画では「ツイスター」や「レッド・ドラゴン」にも出演していたようですが、まったく印象に残っていませんでした。今回の役は適役です。見事なまでの存在感でした。

 それに対して、ローレンス・フィッシュバーンがIMFでのイーサンの上官ブラッセルを演じていますが、残念ながらあまりこの映画では存在感がありませんでした。

 イーサンの教え子リンジーを演じるのはケリー・ラッセル。私は知らなかったのですがJ・J・エイブラハムが制作したTVシリーズ「フェリシティの青春」でブレイクした女優さんだそうです。J・J・エイブラハムがよほど気に入っての今回の出演でしょうか、あっという間に出番が終わってしまうのが残念。綺麗な女優さんなので、もう少し見たかったですねえ(^^;

 それにしても、スパイ大作戦といえば「おはよう、フェルプスくん。今回のきみの〜」で始まる指令のテープですが、このシリーズではすでにフェルプスくんがいなくなってしまっているので、この名セリフを聞けないのが寂しいですね。やっぱり、イーサンではいまひとつです。
ユナイテッド93(18.8.13)
監督  ポール・グリーングラス
出演  
 昨日から公開された映画「ユナイテッド93」を観に行ってきました。
 あの5年前の9.11テロ事件の際、世界貿易センターとペンタゴンに激突した3機の飛行機のほかにペンシルベニア州シャンクスヴィルに墜落した飛行機がありました。それが今回の映画の題名となっているユナイテッド航空93便です。この飛行機も最終目的地はホワイトハウスか国会をターゲットにしていたと推測されています。しかし、目的地に着く前に墜落しました。映画は、そんな飛行機の機内で、目的地に行かせまいとテロリスト相手に立ち上がった乗客の姿を描いています。乗客たちが家族にかけた電話で話された事件の様子を映画にしているそうなので、乗客たちが力を合わせて犯人たちに立ち向かったことはフィクションではありません。
 通常こういった映画は、飛行機に乗る前の犯人や乗客たちのそれぞれの背景を描くものですが、この映画は単に犯人たちの出発前をわずかに描くだけで、乗客たちはいったいどういった人々かの説明も加えられません。それぞれを生きる一般の人たちです。したがって、彼らを演じる俳優たちも無名な人たちばかりで、有名俳優が演じて誰かが主役ということもありません。みんなが、テロリストと闘うなかで主役を演じていたのです。
 残念ながら、彼らの勇気にも拘わらず、結果は悲劇的なものとなってしまいました。しかし、彼らが闘わなければ、もっと大きな悲劇が起こったかもしれないのです。
 映画は声高にテロの脅威を描いているわけではありませんし、乗客たちを英雄視しているわけでもありません。ドキュメンタリータッチで淡々と事件の始まりから墜落までを描いていくだけです。私たちは、彼らの姿とともに、あの事件を忘れずにいなければなりません。先日もイギリスで飛行機の爆破テロを図ったイスラム系の犯人たちが逮捕されました。いまだにテロはどこかで起きようとしているのです。
こんなことを言っては。宗教を信じている人には申し訳ないのですが、宗教というのは怖ろしいものだと思ってしまいますね。それはイスラム教に限らずキリスト教でも同じです。宗教というのはそれを信じない者への寛容がなかなかありませんものね。

※この飛行機に久下季哉さんという日本人学生が乗っていたことをこの映画を観て初めて知りました。久下さんのご冥福をお祈りします。 
スーパーマン リターンズ(18.8.19)
監督  ブライアン・シンガー
出演  ブランドン・ラウス  ケイト・ボスワース  ジェイムズ・マーズデン  ケビン・スペイシー
     フランク・ランジェラ  エヴァ・マリー・セイント  パーカー・ポージー  サム・ハンティントン
(ちょっとネタバレあり)

 映画館の招待券をもらったので、涼を求めがてら、「スーパーマン リターンズ」を観に行ってきました。
 
 愛する人に正体を打ち明けられない苦悩から、ある日忽然と姿を消したスーパーマンが5年ぶりに地球に戻ってきた。しかし、5年の間に宿敵レックス・ルーサーは、刑務所から抜け出し、愛するロイス・レインは、デイリー・プラネット社編集長の甥と婚約しており、子どもまで抱えていた。そのうえ、彼女は「スーパーマンは必要か?」という著作でピュリッツァー賞まで受賞していた。
 自分は果たして世界にとって、そして何より彼女にとって必要な存在なのか。そんななか、レックス・ルーサーは、着々と世界征服の計画を進めていた。

 前作の「スーパーマン」が公開されたのは、1978年ですから、すでに30年近くの歳月が経過しました。
 初代スーパーマンを演じたクリストファー・リープは、残念ながら落馬事故が原因で、すでに他界しています(エンドロールでこの映画をクリストファー・リープとその妻に捧げる旨の献辞がありました。)。
 今回スーパーマンを演じたのは、新人のブランドン・ラウス。これがまたクリストファー・リープに雰囲気が似ているんですよね。というより、クラーク・ケントの雰囲気に似た人を配役するので、似るのが当たり前ですかね。
 ロイス・レインを演じたのはケイト・ボスワーズ。映画では印象がないのですが、人気俳優オーランド・ブルームの恋人ということが有名です。
 そのロイス・レインの婚約者リチャード・ホワイトを演じたのは「Xメン」シリーズでサイクロプス役を演じているジェイムズ・マーズデンです。ロイス・レインの心の中にスーパーマンがいることを知りながら、彼女を愛するという辛い役柄、男としてはガンバレと声援したくなる役を熱演しています。
 悪役レックス・ルーサーを演じたのは、ケビン・スペイシーです。もともと髪は薄かったのですが、この作品ではすっかり頭をそり上げて、前作のジーン・ハックマンに負けず劣らずの憎々しい役を見事に演じています。
 監督は「Xメン」のブライアン・シンガーです。この映画を撮るために「Xメン」の方は下りたそうですが、その「Xメン ファイナルディシジョン」は監督をブレット・ラトナーに交代して、9月9日公開です。どちらが観客を動員するか、その点も注目ですね。

 さて、今回は最後にある事実が明らかにされます。う〜ん、スーパーマン、いつの間に!

 本日からの公開でしたが、400人ほどが入る劇場に観客はわずか20人ほど。おかげで真ん中の一番いい席で観ることができました。東京ではこうはいかないだろうなあ。  
グエムル 漢江の怪物(18.9.2)
監督  ボン・ジュノ
出演  ソン・ガンホ  ピョン・ヒボン  パク・ヘイル  ペ・ドゥナ  コ・アソン
 駐留米軍の薬物の不法投棄により変異した怪物が漢江に突如現れ、パク家の孫娘ヒョンソがさらわれる。怪物が有害なウィルスを持っているということでパク一家は隔離されるが、父親のカンドゥの携帯に死んだと思っていたヒョンソから助けを求める電話が入る。誰にも信じてもらえない彼らは、自分たちでヒョンソを助けるために病院を脱出してグエルムを追う。

 怪獣映画といえば、「ゴジラ」「ガメラ」といわれるくらい日本が有名ですが、今回の韓国発の怪獣映画には「ゴジラ」に登場するような地球防衛軍など出てきません。怪獣と闘うのは、そこらへんにいる家族です。闘う道具もミサイルやレーザー銃という近代兵器ではなく、ライフルやアーチェリーに火炎瓶というもの。大丈夫なのと心配してしまいますね。それにしても、韓国の男性がさも当然のようにライフル銃を扱える場面が出てくるのも、徴兵制であることが関係しているのでしょう。

 漢江の河川敷で売店を営む家長のヒボン、頼りのない眠っているばかりの長男のカンドゥ、大卒だが無職でいつも酔っぱらっている二男のナミル、アーチェリーの選手で実力はあるが、いつも肝心なところで失敗してしまう長女のナムジュ。そんな彼らが孫娘のヒョンソを救助するために力を合わせ怪獣に立ち向かいます。
 カンドゥを演じるのは、ソン・ガンホ。「シュリ」「JSK」「大統領の理髪師」「殺人の追憶」など韓国映画には欠かせない俳優です。おばさん方が黄色い声を上げるイケメンではありませんが、韓国映画界での存在感はピか一です。今回はまったく頼りにならない男が娘を助けるために大きく変わっていく姿を熱演します。
 長女ナムジュを演じたのは日本映画「リンダリンダリンダ」にも出演したペ・ドゥナです。最近の美しい韓国女優さんとは違ってちょっと団子っ鼻で美女というわけではありませんが、かわいらしい女優さんです。全編ほとんどジャージ姿で活躍します。ラストは格好良かったですねえ。一番おいしい役ではなかったでしょうか。

 もう一方の主人公というべき怪獣ですが、これがゴジラのように体長何十メートルもあるような巨大な怪獣ではありません。パンフレットの中に説明がありましたが、「100メートルの怪獣には威圧感は感じるものの、恐怖感はあまり感じない、人間が一番恐怖感を感じるのは十数メートル程度の大きさの時だ」そうです。わかるような気がしますね。ライオンより大きい猛獣に襲いかかられることを考えてみれば確かにそうだなあという気がします。この恐竜、通常こういう映画ですとなかなかその正体を明かさないのですが、この映画では違います。もう最初からすべてを見せてくれます。たぶん魚が変異したものでしょうが、突然川から上がってきて漢江の土手を走る姿は笑いを禁じ得ないほどコミカルでした。

 娘を助けるために一家を描く感動の映画なんですが、ところどころに笑わざるを得ないシーンが挿入されて、どっぷりと感動に浸らせてくれませんね。監督さんの考えなんでしょうかね。
 ラストはネタバレになるので詳しくは言えませんが、う〜ん、僕が監督だったらやはり違うラストにしただろうなあ。
X−MEN ファイナル・ディシジョン(18.9.9)
監督  ブレット・ラトナー
出演  ヒュー・ジャックマン  ハル・ベリー  イアン・マッケラン  ファムケ・ヤンセン  アンナ・パキン
     レベッカ・ローミン  ジェームズ・マーズデン  パトリック・ステュアート  ショーン・アシュモア
     ケルシー・グラマー  アーロン・スタンフォード  エレン・ペイジ
 X−MENシリーズの最終章です。今回はいつものメンバーに加え、超能力を持ったミュータントが続々登場。X−MEN側とマグニートー側に分かれての戦いを繰り広げます。今までチョイの登場だったあらゆる物体を通り抜けることができる能力を持ったキティ・ブライドや肉体を鋼鉄のような物体に変化させる能力を持ったコロッサスもX−MENの一員として活躍しますが、登場するミュータントがあまりに多すぎて、それぞれを描ききれなかった嫌いがあります。
 特にCMでも目立っていた天使の羽根を持った青年エンジェルは、戦いの中で相当の働きを見せてくれるのだろうなあと思っていたら、これが期待はずれ。登場シーンがあまりありませんでした。
 今回キーになる前作で死んだと思われていたジーンにしても、なんだかいまひとつだったなあというのが正直な感想です。自分の育ての親、チャールズ・エグゼビアより強力な超能力を持ち、それまで押さえられていた二重人格の悪の部分が表面にでてきて、いっきにマグニートー側で悪の限りを尽くすかと思ったのですがね。
 ストーム役のハル・ベリーは相変わらずスタイル抜群でX−MENのスーツが似合います。1ではロングヘアー、2ではセミロング、そして今回はさらに短くと髪型を変えての出演です。今回の髪型が一番似合っていたかなあ。アカデミー賞女優でありながら、こうした娯楽作品にも出演するところがいいですね。
 1から登場していたマグニートーの忠実な部下であるミスティークは、青い肌の特殊メイクで、いったいどんな女優さんが演じているのかと思っていたのですが、この作品では素顔を見せてくれます(ついでに素肌も(^^;)。あんな顔の女優さんだったのですねえ。最後に顔を出せて、ミスティークを演じたレベッカ・ローミンさんはよかったかな(2でも少しだけ出ていましたが)。
 さわった相手の生命力を奪う力を持ったローグは、今回一つの解決方法を見いだしました。ローグのような能力を持った超能力者としてはやむを得ない選択だったのでしょう。
 監督は前作までのブライアン・シンガーからブレット・ラトナーへと交代しています。ブライアン・シンガーは「スーパーマン」の撮影で忙しかったのでしょう。
 X−MENシリーズ最終章ということなので、これで終わりなんでしょうかと思ったら、最後にチェスをするマグニートーの意味深なシーンが。そのうえ、エンドロールが流れ始めるとともに席を立ってしまった多くの観客の人が見逃したのですが、エンドロールのあとにもっと意味深なシーンが流れたんですよ。これは!と思わせるシーンがね。やっぱり、映画は明かりがつくまで席に座っていなければ駄目ですよね。
 「X−MEN ファイナル・ディシジョン」が原題かと思いましたが、これは邦題で原題は「X−MEN THE LAST STAND」です。ファイナル・ディシジョンは「最後の決心(決断)」ということですが、“最後の決心”とはあのことを言っているんでしょうね(ネタバレになるので書くことができませんが)
出口のない海(18.9.16)
監督  佐々部清
出演  市川海老蔵  伊勢谷友介  柏原収史  塩谷瞬  伊崎光則  上野樹里  三浦友和
     古手川祐子  尾高杏奈  香川照之  田中実  黒田勇樹  高橋和也  永島敏行
(ネタバレあり)
 横山秀夫さんの「半落ち」を映画化した佐々部監督が、再び横山作品を映画化しました。
 太平洋戦争中の特攻隊といえば神風特攻隊を思い浮かべますが、海軍にも特攻兵器としての人間魚雷“回天”がありました。この映画は、それぞれ夢を持ちながらも戦争という状況の中で、志半ばで“回天”に搭乗することとなった若者たちを描いた作品です。
 2時間という時間の中での映画化ですので、小説の細部が描かれないのはやむを得ないところでしょうか。
 小説では、全体の3分の1ほどが軍隊に行く前の大学生の頃を描くことに割かれているのですが、映画では大学時代のシーンはわずかです。そのためか、小説では登場人物の中心であるキャッチャー役の剛原が映画ではほとんど登場していません。
 また、小説では軍隊に行っても魔球を完成させるために深夜練習をするのですが、映画ではあっという間に魔球が完成してしまうのです。これでは魔球にかける主人公の気持ちがいまひとつ伝わりません。
 さらに、映画では上野樹里が演じていた美奈子との恋も描ききれなかったかなという感じがします。時間の関係か、もう最初のシーンから二人は恋人同士という設定になっていましたね。
 小説では弟がいましたが、映画では妹だけ。小説ではこの弟が、休暇で戻った兄が軍隊に戻るときに「お国のために立派に死んできてください。」と言うシーンがあります。肉親に死ねと言わせる戦争というものの愚かさ、悲惨さを読者に考えさせるシーンなのですが、映画でこのシーンがなかったのは非常に残念でした。同様に小説で描かれていた軍隊での理不尽な暴力もまったく描かれていません(訓練中にミスをした主人公が一発殴られただけです。)。戦争という状況が人間の嫌な面を露呈することを描くためにも、軍隊での暴力の場面は描くべきではなかったでしょうか。
 魚雷を改造した狭い艇内。とてもじゃないけど、閉所恐怖症になってしまいそうです。その中で、彼らは何を思って出撃していったのでしょう。愛する人を守りたかったと言わせるのはあまりに悲しすぎます。自分が死んでしまっては愛する人を守り続けることはできませんから。
 それにしても、回天に乗り込んで死へ向かうことになったのに、回天の故障で帰還、また次の出撃を待つというのは苦しいことでしょうね。私だったら精神的におかしくなってしまいます。
 主演は映画初出演の市川海老蔵。学生を演じるにはちょっと老けているかなという印象です。野球をやる体型でもなかったですしねえ。
 映画の主題歌を竹内まりやが作詞をし、歌っていますが、これがいい歌です。並木が死ぬ前に手帳に書いた手紙に答える詩となっています。ヒットしそうな予感。
 観客はほとんどが年配の人たち。本当は若い人たちに見てもらって、少しでも戦争の悲惨さ、愚かさを感じてもらえばと思うのですが、残念です。
イルマーレ(18.9.23)
監督  アレハンドロ・アグレスティ
出演  キアヌ・リーブス  サンドラ・ブロック  クリストファー・プラマー  ディラン・ウォルシュ
     ショーレ・アグダシュルー  エボン・モス=バクラック  ヴィレケ・ファン・アメローイ  リン・コリンズ
(ネタバレあり)

 チョン・ジヒョンとイ・ジョンジェ共演の韓国映画をオリジナルに、ハリウッドでリメイクされた作品です。ハリウッド版の主演はキアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックです。「スピード」以来12年ぶりの共演になります。

 メール全盛のこの時代で、2年の時を経て手紙のやりとりをするなかで恋に落ちる男女を描くラブ・ストーリーです。
 サンドラ・ブロック演じるケイトが湖畔に建つ家から引っ越しをする際、次に住む人に自分宛の手紙が来たら転送してくれるよう依頼の手紙を郵便受けに入れます。その手紙がなぜか2年前に湖畔の家に住んでいたキアヌ・リーブス演じるアレックスの元に届きます。手紙をやりとりするうちに、二人の間には2年の時が隔たっていることがわかりますが、次第にお互い惹かれていきます。
 ファンタジックな映画ですので、「なぜあの郵便受けに手紙を入れると、2年の時を隔ててやりとりができるんだ?」「ラストはパラレルワールドの理論か?」などと、余計なことは考えずに観るのが、この映画を楽しむための条件です。とにかく、手紙をやりとりするっていうのがロマンティックでいいですよねえ。今は手紙なんて余程のことがないと書きませんが、若い頃は異性と文通なんてこともしていたので、手紙を書くことにはちょっと思い入れもあります(^^;

 ストーリーはオリジナルの韓国映画と基本的には同じですが、いくつか相違点があります。
 まずは、恋に落ちる二人の年齢設定が違います。オリジナルではイ・ジョンジェが演じたソンヒョンは大学の建築学科の学生で、チョン・ジヒョンが演じたウンジュは声優の卵という若い二人でしたが、今回キアヌが演じたアレックスはもう一人前の建築士ですし、サンドラ演じたケイトも医師という、オリジナルに比べればもう大人の男女という感じです。
 それとともに、オリジナルではウンジュは別れを告げられた恋人に未練を残し、ソンヒョンに別れないようにしてほしいという依頼をしますが、ハリウッド版ではケイトの方が恋人と別れたいと考えています。この点の違いが、オリジナルとハリウッド版の後半の展開を大きく異なるものにしています。
 それから、大きな違いは、ハリウッド版の原題が「レイクハウス」ということからわかるように、家が海岸ではなく湖畔にあるんですよね。オリジナルでは、“イルマーレ”というのはイタリア語で「海」という意味で、そのことから海岸にある家をソンヒョンが“イルマーレ”と名付けたことになっています。ハリウッド版では湖畔にあるのだから“イルマーレ”とは、名付けられないよなあ、では、“イルマーレ”はオリジナルに合わせた単なる邦題に過ぎないのかと思ったら、あるシーンに出てきました。それも映画の中でも重要な場面です。シャレたことをしますよね。
 また、理解しあえない父親との話は同じですが、父親役でクリストファー・プラマーという大物を起用して、オリジナルに比べて父子の関わる場面の比重を大きくしています。
 
 二人のダンスシーンがあります。パンフレットによるとキアヌもサンドラも一番好きなシーンと言っていますが、あの場面ではケイトはまだアレックスのことを知らなかったはず。そんな二人があんなシーンを演じるのかなあとちょっと疑問。
 ラストは僕としてはオリジナルの方が好きですね。やっぱり、ソンヒョンのあのセリフをキアヌにも言ってほしかった気がします。
 とにかく、ときには好きな人にメールではなく自筆の手紙を送るのもいいかなと思わせる映画でした。
もしも昨日が選べたら(18.9.30)
監督  フランク・コラチ
出演  アダム・サンドラー  ケイト・ベッキンセール  クリストファー・ウォーケン  ヘンリー・ウィンクラー
     ジュリー・カブナー  デヴィッド・ハッセルホフ  ショーン・アスティン
 アダム・サンドラー主演のハートウォーミング・ストーリーです。
 アダム・サンドラーは、アメリカでは大人気の俳優のようですが、日本では人気はいまひとつ。これは、たぶんアダム・サンドラーがコメディー俳優ということが原因ではないでしょうか。コメディーではセリフのおもしろさということが(たとえばダジャレとか)あるのでしょうが、それを字幕で性格に表現することは無理がありますよね。ダジャレにしてどうしても英語のセリフとは違うものにならざるをえません。この映画を観たときには観客はほとんどいなかったのですが、外国人のカップルが来ていて、こちらは笑えないのに笑っているんですよねえ。コメディー映画がヒットするのはやっぱり難しいかなと感じてしまいました。字幕なしで映画を観ることができるほど英語力があったらなあと思ってしまいます。
 もしも何でも操作できる万能リモコンがあったら・・・。テレビでも何でも操作ができる万能リモコンを探して出かけた主人公マイケルが手に入れたのは、自分の人生でさえ操作できるリモコンだった。彼はそのリモコンによって、人生を一時停止したり早送りしたりするようになる。しかし、家族との団欒も早送り、妻とのセックスも早送りとリモコンの使用に夢中になるマイケルに対し、その万能リモコンはマイケルも思いもしなかった形で彼の人生をコントロールするようになる・・・。
 こんなリモコンがあったらどうしようと考えてみたのですが、人生が素晴らしく変えることができるわけでもなく、単に早送りや一時停止、消音等ができるだけですから、それほど役に立つわけでもないですよね。それに早送り期間中は、自分が体験しているのではないのですから、無駄に時間を消費していることになってしまう気がします。過去は見たい気がしますがね。いやいや、それも自分が過去だと思っているのは美化した過去だということがわかってしまうようで、それもチョット怖いかな。
 アダム・サンドラー演じるマイケルの妻ドナを演じたのは、ケイト・ベッキンセール。今回はバンパイアではない普通の家庭の奥さんを演じます。老け役も演じましたが、綺麗でしたね。マイケルにリモコンを渡すモーティを演じたのはクリストファー・ウォーケンです。クリスファー・ウォーケンといえば、アカデミー賞助演男優賞を受賞した「ディア・ハンター」のニック役で強烈な印象を残していますが、今回はちょっとコミカルな役どころで存在感を示します。
 本当の幸せとは何かということを教えてくれるストーリーはありきたりですが、笑いの中に感動を与えてくれる作品で、意外と拾いものの一作でした。ラストは・・・やっぱり、そうきましたね。
 それにしても「もしも昨日が選べたら」という邦題はいまひとつ。この万能リモコンでも過去の人生は見ることはできても変えることはできないですしね。原題の「クリック」の方がいいと思いますが、それだとインパクトがなくてお客を呼ぶことができないかな。
レディ・イン・ザ・ウォーター(18.10.1)
監督  M・ナイト・シャマラン
出演  ポール・ジアマッティ  ブライス・ダラス・ハワード  ジェフリー・ライト  ボブ・バラバン
     サリータ・チョウダリー  シンディー・チャン  M・ナイト・シャマラン  フレディー・ロドリゲス
     ビル・アーウィン  メアリー・ベス・ハート  ノア・グレイ・ギャビー  
 M・ナイト・シャマラン監督の最新作です。シャマラン監督といえば「シックス・センス」です。 これを観たときには、「やられた!」と思いましたね。大好きな作品の一つとなったのですが、期待をして観たそれ以降の作品は残念ながら期待はずれのものばかり。
 特に、「サイン」のときなど、呆れて苦笑してしまいました。思わず金返せ!と言いたくなるほど。そうはいっても、「シックス・センス」を作った監督ということで、今回こそはと思って観に行ったのですが、やっぱり正直なところ評価はいまひとつ。おとぎ話と思って観ればいいのでしょうが、う〜ん、好き嫌いのはっきりする映画でしょうね。

 物語の舞台はフィラデルフィアのアパート。ここには、妻子を亡くして管理人になった中年男、韓国人女子大生とその母、スランプに陥っている作家とその妹、夫の私生活をネタにするおしゃべりな妻、クロスワードパズルに熱中している父と息子、動物好きな老婦人、右半身だけ鍛えている若者、自室に引きこもりTVばかり見ている男、禁煙のアパート内で性懲りもなくタバコを吸い不毛な話をしている男たち、スペイン系の父と5人の姉妹、とさまざまな個性的な住人が住んでいる。そのアパートのプールに現れたストーリーという名の女性。彼女はこの人間世界を救済するためにある人に出会うために現れたが、その彼女を亡き者にしようと魔物が襲いかかる。そして、彼女は“記号論者”“守護者”“職人”“治癒者”という協力者によって魔物から逃れ、ブルー・ワールドへ帰っていくということで、管理人は彼女を無事に故郷に帰すべく、アパートに住んでいるらしい協力者をみつけようとする。

 ストーリーが会う人とは誰なのか、“記号論者”“守護者”“職人”“治癒者”とはアパートの中の誰なのかを探すおもしろさはあるのですが、このシャマラン監督の世界にのめり込むことはできませんでした。だいたい救済って結局どういうことだったんでしょうか。
 アパートの管理人を演じたのは、「サイドウェイ」や「シンデレラマン」での演技が印象的なポール・ジアマッティ。ストーリーを演じたのは、ロン・ハワード監督の娘で、シャマラン監督の前作「ヴィレッジ」にも出演したブライス・ダラス・ハワードです。男物のシャツを着ただけの彼女はチョット色っぽいですが、どこといって特徴がありません。
 また、いつもチョイ役で顔を出すシャマラン監督が、今回は重要な役どころで登場しています。
ワールド・トレード・センター(18.10.7)
監督  オリバー・ストーン
出演  ニコラス・ケイジ  マイケル・ペーニャ  マギー・ギレンホール  マリア・ベロ
     スティーブン・ドーフ  ジェイ・ヘルナンデス  マイケル・シャノン
 9.11テロ事件から5年が過ぎました。しかし、ワールド・トレード・センターに旅客機が突っ込んで、ビルが倒壊した状況は、今でも強く目に焼き付いており、忘れることはできません。
 今年は事件を題材にした作品が、この作品と「ユナイテッド93」の2作が公開されました。先に公開された「ユナイテッド93」は、乗っ取られた旅客機の中で力を合わせてテロリストに立ち向かった乗客を描いた映画で、直接にテロ事件に題材を取っていましたが、こちらの作品は事件を題材にはしていますが、描かれているのは、そのときにビルにいた人を避難させるためビルに乗り込んで生き埋めとなった警察官とその安否を気遣う家族の姿です。テロ事件そのものを描いているのではなく家族愛に焦点が置かれています。
 実話を題材にしたこの映画を監督したのは、オリバー・ストーン。アカデミー監督賞ほかを受賞した「プラトーン」や「7月4日に生まれて」など社会派映画には強い監督ですので、どんな社会的メッセージを織り込んだ作品になるのだろうかと思ったら、意外にも感動の家族ドラマを紡ぎ上げます。
 瓦礫の下で動けなくなった2人の警察官を演じるのはニコラス・ケイジとアカデミー作品賞受賞作「クラッシュ」での演技が印象に残るマイケル・ペーニャです。二人とも映画のほとんどの部分を瓦礫に埋まっている設定ですので、その間は動くこともできず顔だけの演技です。これまた大変なことでしょうね。
 神に導かれて事件現場に来て、救助活動を始めてしまうという元海兵隊員もすごいですねえ(いろいろな意味で)。また、二人の警官を助けに瓦礫の山の中に潜り込んでいく救助隊の人もすごいです。死を覚悟していくのですからね。これが決して映画の中だけのものではなく、現実に事件現場であったことだそうですから。同じ状況下でいったい自分が何ができるのかと思うと、彼らの姿には頭が下がる思いがします。
地下鉄に乗って(18.10.21)
監督  篠原哲雄
出演  堤真一  岡本綾  大沢たかお  常盤貴子  吉行和子  笹野高史  田中泯
 浅田次郎さん原作の同名小説の映画化です。
 主人公長谷部真次は大企業の社長の息子でありながら、父親に反発して家を出、今では小さな衣料問屋の営業マンとして働いている。ある日、地下鉄の駅で、亡くなったはずの兄の姿を見て追いかけて地下鉄の出口を出たところ、そこは東京オリンピックを間近に控えた時代だった・・・。
 父との確執で家を出た主人公が、父親の本当の気持ちを知り、理解していくというストーリーはよくある話ですが、大好きなタイムトラベル(タイムスリップ)ものなので、何はともあれと映画館に足を運びました。
 この映画、SFという観点で見ると気になるところがあります。どうしてタイムトラベルできたのかという点が最後まではっきりしませんでした(そのきっかけは、父が倒れたということと、最初タイムトラベルした日が兄の命日だったということにあるのでしょうが)。題名が「地下鉄に乗って」ですし、最初のタイムトラベルのシーンからして、地下鉄の出口がタイムスリップの入り口かと思ったら、眠っていても過去に行ったりします。これでは、あまり地下鉄というのが出てくる必然性がないと感じてしまいます。最初と最後にかつての学校の先生が出てくるのもよくわかりませんでしたし。また、タイムトラベルといったら、タイムパラドックスが問題になりますが、それを語るときによく例に出されるある出来事が、この物語では重要なシーンとして描かれています。え〜、そうなったら、あれがこうなるから、それはできないのではないかなあ(ネタバレになるので書くことができません。)と、声を大にして言いたくなってしまいます。自己を犠牲にまでして相手への愛を貫くというこの映画のテーマでもあり、感動のシーンではあるのですが、素直に感動することができませんでした。横では洟をすすっている女性もいましたが・・・。結局この映画は、ファンタジーとしてあまり細かな点にこだわりなく観ることが楽しむコツですね。
 主人公の長谷部真次を演じるのは、昨年度の日本アカデミー賞最優秀男優賞に選ばれた堤真一です。このところ、乗りに乗っています。彼と不倫関係にある会社のデザイナーを演じるのは、岡本綾です。最近実生活でも、ある妻子ある役者との深夜デートが報じらましたが、何ともタイミングがいい役柄です。父親役を演じたのは大沢たかおさんですが、老け役はもう少しどうにかならなかったですかねえ。老け役メイクをしているのですが、全然歳とっているように見えず、違和感がありました。
 とにかく、タイムトラベルはあまり気にせずに、親子の愛、男女の愛に感動しましょう。
ブラック・ダリア(18.10.22)
監督  ブライアン・デ・パルマ
出演  ジョシュ・ハートネット  アーロン・エッカート  スカーレット・ヨハンソン  ヒラリー・スワンク
     ミア・カーシュナー  マイク・スター  フィオナ・ショウ  ジョン・カバナー
事件を題材に小説にしたものですが、迷宮入りした実際の事件に対し、一つの解決を与えています。
 前半はちょっとダレ気味。二人の刑事バッキー・ブライカートとリー・ブランチャード、そしてリーの恋人ケイ・レイクとの三角関係(?)が描かれるだけで、観た日の前夜遅かったためもあってか少し眠ってしまいました。後半からは謎解きもあってどうにか眠気を追いやることができましたが・・・。
 バッキーを演じるのは「パール・ハーバー」のジョシュ・ハートネット、リーを演じるのは「ザ・コア」のアーロン・エッカートですが、どうも二人ともあまり印象的ではなかったですね。
 マデリン・リンスコット役を演じたヒラリー・スワンクは、正直のところ美人とはいえないし、ブラック・ダリアと呼ばれた猟奇殺人事件の被害者エリザベス・ショートと似ているという設定でしたが、全然似ていませんね。さすが2度のアカデミー賞女優だけあって、悪女の役柄は見事に演じていましたが、金持ちの華やかな娘という役柄はちょっと似合わない気がします。一方、もう一人のヒロイン、ケイ・レイクを演じるスカーレット・ヨハンソンはあの肉感的な体は全然不幸な女に見えないし、女優陣はミスキャストではないかと思ってしまいます。
 監督は「キャリー」、「殺しのドレス」、「アンタッチャブル」「ミッション・インポッシブル」のブライアン・デ・パルマ。リーが何者かに襲われるシーンは、緊迫感溢れた映像で、ブライアン・デ・パルマらしいと思わせる映像でしたね。
 僕の好みとしては作品的にいまひとつ。同じジェイムス・エルロイ作品の映画としては「L.A.コンフィデンシャル」の方がはるかにおもしろかったといえます。
トンマッコルへようこそ(18.10.28)
監督  パク・クァンヒョン
出演  シン・ハギョン  チョン・ジェヨン  カン・ヘジョン  イム・ハリョン  スティーブ・テシュラー
     ソ・ジェギョン  リュ・ドックァン  チョン・ジェジン  チョ・ドッキョン
 舞台は、朝鮮戦争の時代。争いごととは無縁の村に迷い込んだ兵士たちが、村人たちの心の温かさに触れて次第に気持ちを通じ合っていく姿を描いたファンタジードラマです。韓国軍兵士と北朝鮮軍兵士が心を通い合うようになるという話は、「JSA」でも描かれましたが、今回はそこにアメリカ軍人も加わります。 笑いあり、涙ありの物語です。
 山深い里、トンマッコルの村で、隊を脱走した韓国軍兵士、韓国軍に追われて逃げる北朝鮮軍兵士、そして操縦していた飛行機が墜落したアメリカ軍兵士が出会います。対峙する兵士同士の緊張感の中、村人たちは畑を荒らすイノシシをどうするかということの方がはるかに重要と、銃と手榴弾で睨み合う兵士たちにおかまいなく話し合います。その様子が妙におかしくて観ていて笑いが込み上げてきてしまいます。村人たちはそれぞれ家に戻り、それでも睨み合っている兵士たちはどこか滑稽です。
 とにかく、外界を知らない村人たちと兵士たちとのギャップがおもしろくて、何度も吹き出してしまいます。また、外界を知らない村人の中に唯一外界を知る先生がいるのも、笑いを誘います。銃など知らない村人が銃を向けられても何のことやらという顔をしている中で、先生一人が慌てて手を挙げたり、先生が本(辞書か?)を片手にアメリカ人のスミスに「How are you?」と言って「Fine,and you?」と返ってこないのはおかしいと頭をひねるところなどユーモア満載です。
 特に、3者が仲良くなるきっかけとなる、スローモーションで描かれるイノシシ襲撃のシーンは最高です。劇場内も大爆笑。その夜に肉を食べる習慣のない村人たちが埋めたイノシシの肉を食べようと、三者が真夜中起き出してきて鉢合わせする演出も見事です。
 そんな笑いの中、ラストに村人たちのためにある決意をする兵士たちの姿には思わず涙が込み上げてきてしまいました。
 6人の兵士たちの中で韓国軍の少尉ピョ・ヒョンチョルを演じたのはシン・ハギョン。「JSA」で純朴な北朝鮮兵士役を演じた人だそうです。まったく気づきませんでした。村の少女ヨイルを演じたのはカン・ヘジョン。あのカンヌ映画祭グランプリ作品の「オールド・ボーイ」のヒロイン、ミド役を演じた女優さんです。美人女優という感じではないですが、可憐なヨイル役には適任でしたね。
 映像も素敵です。なかでも、手榴弾によって蔵が爆発した際、中に貯蔵してあったトウモロコシがポップコーンとなって降り注ぐシーンには目を奪われました。
 音楽は、ジブリ作品でも有名な久石譲さんが担当しています。映画にあった心に染み入るメロディーでした。
 こういう映画は、決して日本では考えつかないでしょうね。やはり同じ民族でありながら北朝鮮と別れて国がある韓国ならではの作品なんでしょう。テレビCMでおすぎさんが絶賛していましたが、本当におすすめの作品です。今年の僕の観た映画のベスト3に入るといっても過言ではありません。良い映画を観てきました。
父親たちの星条旗(18.11.3)
監督  クリント・イーストウッド
出演  ライアン・フィリップ  ジェシー・ブラッドフォード  アダム・ビーチ  バリー・ペッパー
     ジョン・ベンジャミン・ヒッキー  ジョン・スラッテリー  ジェイミー・ベル  ポール・ウォーカー
太平洋戦争末期、日本への爆撃基地とするため、硫黄島を占領するための戦いは、5日で終わると目論んでいたアメリカの予想をはるかに裏切る36日間の激しい戦いが繰り広げられた。クリント・イーストウッドは、この太平洋の激戦地硫黄島の戦いをアメリカ側から描いた「父親たちの星条旗」と日本側から描いた「硫黄島からの手紙」の2部作を完成させました。今回先陣を切るのは「父親たちの星条旗」です。
 長引く戦争に国民が背を向けようとしたとき、新聞に掲載された1枚の写真、硫黄島の擂鉢山頂上に星条旗を掲げた兵士たちの写真がアメリカ国民の感動を呼びます。それに目をつけた政府が、彼らを英雄として呼び戻し、戦時国債購入を呼びかけるキャンペーンに利用します。写真に写った6人のうち3人は戦死し、残っているのは3人。英雄の名を素直に受け入れ利用しようとするレイニー、英雄になることを拒みながら、自らの意思に反して英雄として扱われることに苦しむアイラ、寡黙に英雄としての役をこなす衛生下士官ドク。物語は、のちにピュリツァー賞を受賞することになる一枚の写真が、彼ら3人の人生に大きな影響を及ぼすことになる様子を描いていきます。戦時国債キャンペーン・ツアーに参加する彼らの様子とフラッシュバックのように挿入される戦場のシーンが目まぐるしく場面転換するので、登場人物が誰が誰だかわからずに、話について行くのに苦労したのですが、しばらくするとすっかり引き込まれてしまいました。
 英雄と言われることをひたすら拒み、英雄と持ち上げながら、一方でインディアンであることで差別されるアイラの姿があまりに哀しい。戦後、英雄ともてはやされた彼らの辿る運命はあまりに厳しいものがあります。アイラが小銭をもらって一緒に写真に写るシーンはたまりません。
 戦争にプロパガンダはつきものです。あのナチスドイツが後に宣伝相となるゲッペルスの類い希なるプロパガンダの才能によって民衆の支持を得ていったように、それはアメリカも変わらないのでしょう。戦争遂行への国民の支持を得るためには、何でも利用するのは当然なのでしょう。ただ、そんな国に翻弄される国民はたまったものではありませんね。
 戦闘シーンは、あまりに悲惨です。そこには個人の尊厳など関係ありません。爆撃により首がもげ、はらわたが飛び出し、手足がちぎれ飛ぶ。そして、倒れた味方の体の上を車両が押しつぶし、味方の射撃により吹き飛ばされる。そんなシーンが次々と出てきます。戦争反対を声高に叫ぶより、ずっと胸に重くのしかかります。
サンキュー・スモーキング(18.11.11)
監督  ジェイソン・ライトマン
出演  アーロン・エッカート  マリア・ベロ  キャメロン・ブライト  アダム・ブロディ  サム・エリオット
     ケイト・ホームズ  ロブ・ロウ  ウィリアム・H・メイシー  ロバート・デュヴァル
 喫煙者が肩身が狭い思いをしている昨今、“サンキュー・スモーキング”とは、なんて皮肉の効いた題名でしょうか。“喫煙ありがとう”ですからねえ。アメリカでは肥満とともに喫煙をする人は一般社会人としての評価が低いとされているようです。要するに自己コントロールができない人間と思われてしまうのでしょうね。
 主人公ニックは、タバコ業界を代表する敏腕のPRマン。彼の仕事は、得意の話術でタバコ業界への手厳しいバッシングをかわすこと。その巧みな論理のすり替えテクニックから「情報操作の王」と異名をとる彼の評判はすこぶる悪いが、一人息子のジョーイだけはそんな父親を尊敬していた。訴訟を未然に防ぎ、反タバコ法案を掲げる上院議員をやり込め、順風満帆のニックだったが、思わぬ落とし穴が待っていた・・・。
 この映画はタバコ業界を描いたものではなく、ニックの話術を描いたものです。論理のすり替え、詭弁と思われることが至る所に現れて、なかなかおもしろいです。英語ができないので、せっせと字幕を読んでいたのですが、字幕ですから、本来のおもしろさがそのまま表されていないかもしれません。英語ができる人ならもっと楽しむことができたのではないかと思います。
 ニックがアルコール業界のポリー、銃製造業界のボビーと死の商人(Merchant Of Death)仲間3人でモッズ特捜隊を結成しているのですが、このときの好き勝手にしゃべる彼らの会話は愉快。ブラック・ユーモアたっぷり。ボビーがタバコやアルコールに比較すると、銃による年間死亡者数が少ないため、3人の間では肩身の狭い思いをしていることには笑ってしまいました。
 僕は気づかなかったのですが、パンフレットによると、この映画は喫煙シーンをひとつも盛り込まずに作られているそうです。タバコ業界を舞台としながら、喫煙シーンを出さないとは見事としかいいようがないですね。
 ニックを演じたのは、アーロン・エッカート。このところ「ブラック・ダリア」にも出演するなど、活躍が目立ちます。ニックの子、ジョーイを演じたのはキャメロン・ブライト。「X−MEN ファイナル・ディシジョン」で相手の超能力を無力化する能力を有する少年を演じていました。そのほか、ニックがどん底に陥るきっかけを作る女性記者ヘザーにトム・クルーズの奥さん、ケイト・ホームズ、反タバコ法案を通過させようとする上院議員フィニスターにウィリアム・H・メイシー、タバコ業界の最後の大物、ザ・キャプテンにロバート・デュヴァル、ニックに協力してSF映画を企画するハリウッド・エージェント、ジェフにロブ・ロウと、意外に有名俳優が出ています。
 ちなみに監督のジェイソン・ライトマンは、「ゴースト・バスターズ」のアイヴァン・ライトマンの息子さんだそうです。

※反タバコ法案の公聴会で彼が話す「自分で責任を持って決める」という結論はちょっと当たり前すぎましたけど。
ソウV(18.11.18)
監督  ダーレン・リン・バウズマン
出演  トビン・ベル  ショウニー・スミス  アンガス・マクファデン  バジャール・スーメキ  ダイナ・メイヤー
 シリーズ第1作は、その年のマイベスト映画の第6位にランクインさせてしまったほど、あまりに衝撃的な作品でした。それは僕だけではなく、多くの人が衝撃を受けたようで、それ以降“ソリッド・シチュエーション・スリラー”というのがブームになったほどです。
 ところが、どうもシリーズ化し、U、Vと進むと“ソリッド・シチュエーション”ということよりも、残虐な殺し方に力点が置かれてきたような気がしてなりません。ジグソウのゲームの目的は、そもそも“命を粗末にしている人間に、その大切さを教えること”ではなかったのでしょうか。U、Vに進むに連れて、その点が曖昧になってきました。そんな理由に関係なく、おどろおどろしい器具を用い、残虐な方法によって殺人が犯されます。自主規制が入るのも無理からぬと思われるような方法によってです。観ているだけでこちらが痛みを感じてしまうようで、思わず目を背けてしまったシーンもありました。カップルで観に来ていた人もいましたが、恋する二人で観る映画ではないですねぇ。
 今回の作品にはジグソウとともに、T、Uに出演していた女刑事ケリーが顔を出すほか(この人の退場シーンには納得できません。)、ジグソウの手足となって働くアマンダもさらに重要な役どころで登場します。また、Uでジグソウからゲームを仕掛けられたエリック刑事のその後も描かれるなど、Tからのすべての謎が明らかにされて、シリーズファンにはたまらないところです(逆に、前作を観ていないとまったく楽しむことができないので、あらかじめT、UをDVDで観たほうがいいでしょう。
 もちろん、残虐な殺し方とは別にT、Uと同じようにラスト十数分で明かされる事実は十分衝撃的です。これで、終わってしまうのか〜、気になるよぉ〜と思わせる終わり方です。パンフレットを見ると「ソウ4」もあるようにみえますが、ただ、今回のラストで続編を制作できるのでしょうか。
トゥモロー・ワールド(18.11.24)
監督  アルフォンソ・キュアロン
出演  クライヴ・オーウェン  ジュリアン・ムーア  マイケル・ケイン  キウェテル・イジョフォー
     チャーリー・ハナム  クレア=ホープ・アシティ
 物語の舞台は2027年のイギリス。地球では子供が誕生しなくなって18年の歳月がたち、人類滅亡のときが刻一刻と迫ってきていた。希望を失った世界は無秩序の状態となり、その中でイギリスだけは国境を封鎖し不法入国者の徹底した取締りで辛うじて治安を維持していた。主人公セオは政府の役人。ある日セオの元妻ジュリアンをリーダーとする反政府組織“フィッシュ”に拉致されたセオは、不法移民の少女キーを“ヒューマン・プロジェクト”という組織に引き渡すために必要な“通行証”を手に入れることを依頼される。キーこそ人類の未来を左右する少女だった・・・。
 現在の少子化時代のさらに先の時代を予感させるような映画です。今でも少子化は年金問題や経済の活性化に大きな影を落とす要因になっており、一番重要な政策課題といわれていますが、効果的な解決手段は見いだせていません。映画では、人類から単に生殖能力がなくなったという事実だけで、原因についてまでは言及していませんでした。
 しかし、生活の中から子どもたちの声がなくなっていくというのは、きっと寂しいものに違いありません。活気だってなくなっていくでしょうね。エンドロールで子供たちの声が流れたのは象徴的でした。
 月日がたつにつれて、一人死に、また死に、だんだん人類が減ってきてしまって、とうとう最後に残った人はどうなるのでしょう。そんなことをふと思ってしまいました。
 セオを演じるのは、「シン・シティ」や「インサイド・マン」のクライヴ・オーエン。これらの作品と違って、今回は見た目はあまり格好良くはない、ヨレヨレの中年男。しかし、人類の未来に希望をもたらす少女を助けるために頑張る姿はヨレヨレの中年男でもやはり格好いい。
 セオの元妻ジュリアンを演じるのは、ジュリアン・ムーア。重要な役どころと思ったのですが、あっという間に退場してしまいました。あまりにあっけない退場でしたね。作品的に散々こき下ろされた「フォーガットン」といい、どうもこのところ役に恵まれていない気がします。
 監督は、アルフォンソ・キュアロンです。あの「ハリーポッターとアズガバンの囚人」の監督ですね。
 原作者は、びっくりしたことに「女には向かない職業」や「策謀と欲望」で知られるイギリス・ミステリーの女王と呼ばれるP.D.ジェイムズです。ミステリー作家がこんなSF小説を書いていたんですね。
※ラストで戦闘が一時中断する場面があります。ちょっと感動ですね。
007 カジノ・ロワイヤル(18.12.1)
監督  マーティン・キャンベル
出演  ダニエル・クレイグ  エヴァ・グリーン  マッツ・ミケルセン  ジュディ・ディンチ  ジェフリー・ライト
     ジャンカルロ・ジャンニーニ  カテリーノ・ムリーノ  サイモン・アブカリアン  セバスチャン・フォーカン
ボンドシリーズ第21作目。今回からジェームズ・ボンド役がピアーズ・ブロズナンからダニエル・クレイグに交代しました。第6代目ジェームズ・ボンドの誕生です。
 ダニエル・クレイグといえば、最近の映画ではスティーブン・スピルバーグ監督の「ミュンヘン」に出演していたことが記憶に新しいですね。イメージとしては今までのボンド役の役者と異なって野性的な面構えで、イギリス紳士という雰囲気とはほど遠く、ボンドにはどうかなあといくぶんの危惧を抱えながら観に行きました。
 出だしから手に汗握るアクションシーンの連続でいっきに引き込まれました。ダニエル・クレイグはともかく、彼に追いかけられて逃げたセバンチャン・フォーカンのアクションはすごかったですねえ。生身の人間がやっているとは思えないほどでした。この部分だけでも一見の価値ありです。
 ダニエル・クレイグのボンド役ですが、今回のようなアクションの連続には似合う俳優さんです。あの野性的な雰囲気が予想に反してよかったですね(でも、テレビに生出演した姿を見たら、意外に紳士でした。)。
 一方、今回ボンド・ガール、ヴェスパ役に選ばれたのは、エヴァ・グリーンという知的な雰囲気の女優さんです。そういったイメージとも無関係ではないのでしょうが、今回のボンド・ガールはビキニ・スタイルのグラマー女性という今までのボンド・ガールとは一線を引いています。それほどセクシーな衣装は着ませんし、ボンドとのベッドシーンも、エッそれだけ!?と思うくらいです。今作ではボンドのイメージとともにボンド・ガールのイメージも変えようとしているのでしょうか。個人的にはこういうボンド・ガールの方が好きですけど。
 共演はMにジュディ・ディンチ。もうMが女性であることの違和感を感じさせないくらいの存在感になってきました。ル・シッフル役は「キング・アーサー」のマッツ・ミケルセン。見ただけで悪党という面構えです。
 冒頭ダブルオーとなるボンド誕生シーンが描かれますが、白黒画像で洒落ていますねえ。そこから、いつものようにオープニング・タイトルと今作の主題歌へと。これはボンド役が変わっても変わりませんね。楽しませてくれます。
 ストーリーとしてはミステリ的な要素もあって、2時間24分の上映時間を十分楽しむことができました。これは脚色に、あの「クラッシュ」や「ミリオンダラー・ベイビー」、「父親たちの星条旗」と、今乗りに乗っているポール・ハギスが加わっているせいでもあるでしょう。このところのシリーズ作品の中でも一番の出来映えだと思います。
 ラストのセリフ「ボンド、ジェームズ・ボンド」というセリフはいつ聞いてもかっこいいですね。

※ボンドが全裸にされて受ける拷問はすごかったですねぇ。女性には決してわからないでしょうが、観ていた男性客はぞっとしたはずです。あんな拷問受けたら、いや受ける前からすべて白状しちゃいますよ、絶対!
硫黄島からの手紙(18.12.17)
監督  クリント・イーストウッド
出演  渡辺謙  二宮和也  伊原剛志  加瀬亮  中村獅童  裕木奈江
 家族で「硫黄島からの手紙」を観に行ってきました。クリント・イーストウッド監督の「父親たちの星条旗」に続く「硫黄島」2部作の第2弾です。アメリカ映画でありながら出演するのは渡辺謙を始めとしてほとんどが日本の俳優で、セリフもほとんどが日本語の映画です。硫黄島の戦いをアメリカ側から描いた「父親たちの星条旗」がなかなかよかったので、日本側から描いた今回の作品を大いに期待して観に行きました。期待を裏切りませんでしたねえ。というより期待以上の映画でした。クリント・イーストウッドというアメリカ人が作った映画でありながら、日本映画と言われても違和感のない日本人の描き方です。どうしてもアメリカ人が映画で描く日本人となると、コミカルな、日本人から観ると「こんな日本人いないよ!」と言いたくなってしまう変な日本人が登場するのが常なのですが、この映画ではそんなことがなかったですね。軍隊のことに詳しい人からすれば、戦地に赴任するのに軍服に勲章をチャラチャラつけては行かないなどと批判もあるのでしょうが、まあその程度は許してやってくださいというところです。日本人である私自身でさえ、そんなこと知らないのですから。
 司令官栗林中将を演じたのは、日本人俳優の中ではアメリカ人に知名度の高い渡辺謙です。アメリカに留学していたことから、アメリカとの戦いに反対しながらも軍人としても使命を全うする栗林を見事な存在感で演じています。そんな渡辺謙以上に熱演していたのはジャニーズの“嵐”の一員二宮和也くんです。妻と子を持つパン職人という役柄的にはちょっと若すぎる嫌いがないではないですが、全編を通しての登場で、渡辺謙以上の熱演を見せています。二宮くんファンの若い女性は、彼のまた違う面での魅力に参ってしまうでしょうか(笑)
 それから印象的だったのは、伊原剛志が演じたバロン西こと西中佐です。10数年前に彼のことを書いたノンフィクション小説を読んだことがあります。ロサンゼルスオリンピックの馬術競技で金メダルを取り、ロサンゼルス市の名誉市民だった西は、栗林以上に親米だったでしょう。そんな西がアメリカ軍の彼に対する投降の呼びかけ(映画では描かれませんでしたが)に応じなかった気持ちというのはどうだったのでしょう。聞いてみたい気がします。
 子どもたちが愛す犬を殺せという上官の命令に反して憲兵隊を除隊させられ、前線の硫黄島へと送られてきた清水。バリバリのエリート兵士であった彼が、捕虜になるより自決が当然という考えから生きるという気持ちへと変わっていくところは、アメリカ映画らしいところでしょうか。演じたのは加瀬亮。また、当時の典型的な軍人伊藤中尉を演じたのは、プライベートで最近お騒がせな中村獅童です。この二人の結末が・・・あまりにむなしいというか何というか。結局戦争なんてこんなものです。
 とにかく、戦争というものをありのままに描いた映画です。別に渡辺謙演じる栗林をヒーローとして描いている映画ではありませんし、声高に戦争反対を叫んでいる映画でもありません。しかし、114分の上映時間の間に、観ている人が自分なりに戦争というものを考えさせられます。多くの人が戦争というものを現実に体験したことがない現在、ぜひそういう人に観てもらいたいですね。
※「父親たちの星条旗」で描かれた場面が日本側から描いている場面があります。前作を観た人には「ああ、そうだったのか」とわかる楽しみがあります。ただ、シーン的には楽しいものではないですが。

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