第3回TOSS高校授業ライセンス東京 C表ライセンス

報道被害「松本サリン事件」

 小林 将伸 21級 道徳 中学3年 C表

1 授業テーマ メディアリテラシーの授業

 

2 題材 松本サリン事件

 

3 指導目標

(1)   報道被害の罪の大きさを理解する。

(2)   情報を鵜呑みにしない態度を育成する。

 

4 本時の授業

 

(1)「松本サリン事件」の概要を知る。

説明:(新聞の見出しを提示しながら読む)「松本で有毒ガス7人死亡 深夜の住宅街 58人手当て」

発問:「いったい犯人は誰なのでしょう」

説明:(新聞の見出しを提示しながら読む)「会社員宅を捜索 薬品押収」「何の…」

指示:「赤い部分を読みなさい。さんはい。」

生徒:(新聞の見出しを読む)「何のために薬物混合?」「自宅で処理 化学反応」「会社員 関与ほのめかす」

発問:「新聞は誰が犯人だと書いていますか」

生徒:「会社員」

説明:「家宅捜索を受けた会社員はこの人、河野義行さんです。1994年6月27日、この夜、会社から帰宅した義行さんがTVを見ていました。午後10時40分、妻、澄子さん倒れる。河野義行さん、119番通報。河野さん夫婦は入院。それ以来12年、澄子さんは意識不明です。猛毒ガスが「サリン」と判明し、この事件を「松本サリン事件」と呼びます。」

 

(2)報道被害を知る。

説明:「事件発生から報道陣は自宅周囲、入院先の病院に24時間「メディアスクラム」をはります。」

発問:「他にも、河野さんはどんな被害を受けたと思いますか」

指示:「ノートに書きなさい」

生徒:「差別」「いたずら電話」

説明:「市民感情は。『まさかと思ったが、許せない気持ちだ』」「無言電話が深夜まで続きます」「週刊誌は祖祖父母など家計図まで掲載しました」「このような被害を『報道被害』と言います」

指示:「言ってごらんなさい。『報道被害』」

生徒:「報道被害」

説明:「河野さんは、猛毒のため下痢と不眠に悩まされながら、逮捕される不安を抱えていました。」「松本サリン事件から7ヵ月後、ついに河野さんは新聞社を提訴します」「ちょうどこの日の朝…」

指示:(新聞記事を提示)「読みなさい」

生徒:「東京 地下鉄にサリン」

説明:「カルト集団の犯行でした。結果的に河野さんの潔白を証明する事件であった。」「新聞、TVは次々に謝罪をした。」

 

(3)マスコミ情報には「疑惑報道」「誤報」があることを知る。

説明:「『松本で有毒ガス発生』これは事実です」

発問:「『会社員宅を捜索、薬品押収』これを事実です。これは、一面記事に報道すべき内容でしょうか。すべきか、すべきでないか」

生徒:「すべきでない」「すべきでない」

説明:「これを『疑惑報道』言います」

発問:「『何のため 薬物混合』『自宅で科学反応』これは、事実ですか、事実でないと思いますか」

生徒:「事実でない」「事実でない」

発問:「『会社員関与ほのめかす』これは事実ですか、事実ではないと思いますか」

生徒:「事実ではない」「事実ではない」

説明:「事実ではない。これを誤報と言います」

 

(4)情報を鵜呑みにしない態度を自覚する。

発問:「毎日発信されるさまざまな情報。私たちはどのような態度で読み取ればいいのでしょうか」

指示:「次のキーワードを参考にして、ノートに書きなさい」

河野義行さん、松本サリン事件、報道被害、疑惑報道、誤報

 

5 指導計画 4時間扱い

【第1時】報道被害「松本サリン事件」

(本時)

 

【第2時】「マスコミ情報の信頼性」

・マスコミが疑惑報道をした理由を予想させる。

DVD「日本の黒い夏」を見せる。

 映画「日本の黒い夏」(日活)は、松本サリン事件と河野氏を、マスコミの視点から描いた作品である。

 マスコミの情報源は、警察のリークであることを知る。

警察はマスコミにリークし、世論を誘導しながら容疑者に揺さぶりをかける。

マスコミは視聴率アップにつながる特ダネを求め、警察に密着する。

警察とマスコミは、互いの利益のために、癒着している。

報道には誤報もあり情報操作もあることを教え、そのニュースの信憑性を自分で考え判断する姿勢を育てる。

 

【第3校時】「逮捕=(イコール)有罪ではない」

・架空の事件、逮捕そして容疑者の個人情報の報道までのストーリーを提示する。個人情報の報道は仕方がないか考える。

・上記の架空事件で裁判の結果、容疑者は無実と判決される。個人情報の報道は問題がないか考える。

・逮捕の本来の意味を教える。

・過去の冤罪を紹介する。

・現在の逮捕者に関する報道について意見を出し合う。

 ある事件で逮捕者が報道されると、罪人として報道される。

逮捕者は実名、プロフィールなど個人情報が報道される。

逮捕者の人権は無視され、裁判による判決の前に、世論の制裁を受ける。

過去の冤罪を紹介し、逮捕者に対する偏見を持つことが間違えであることを教える。

 「逮捕」とは、「刑法上は、人の行動の自由を拘束すること」である。

この「逮捕」本来の意味を教える。

「容疑者=(イコール)罪人」とする現在の報道姿勢を問題視し、容疑者に対し偏見を持たない人権感覚を持たせる。

 

【第4時】「第二の河野さんを出さないために」

DVD「日本の黒い夏」の一部(15分)を見せる。

・課題「第二の河野さんを出さないために」について生徒の考えを書かせ、意見交換を行う。

 次のような生徒の意見を期待している。

 「ニュースをそのまま信じない」

 「事実かどうか自分で考える」

 「みんながこういう気持ちになれば、河野さんのような経験をする人が少なくなる」

「警察やマスコミに間違ったことをしているとき、相談できるところがあるといい」

 

6 参考文献

・「松本サリン事件報道の罪と罰」河野義行・浅野健一著(新風舎文庫)

・「『疑惑』は晴れようとも」河野義行著(文藝春秋)

・「妻よ!」河野義行(新風舎文庫)

・「日本国憲法の逆襲」佐高 信編(岩波書店)

・信濃毎日新聞平成6年6月合本

・信濃毎日新聞平成6年7月合本

・信濃毎日新聞平成7年3月合本

・信濃毎日新聞平成7年6月合本

DVD「日本の黒い夏」(日活)

・講演記録「『松本サリン事件』からの教訓」講師:河野義行(小林将伸の記録)

・「教育トークライン」「松本サリン事件」椿原正和氏の授業 2002年 月号(東京教育技術研究所)

・「朝日クロニクル週刊20世紀1994」(朝日新聞社)

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