北の佐川の"音曲捕り物帖"

連載 第六十六回

『  ”お茶漬け”vs”お粥”? 
(ヒロシマ・バッハ・ソロイスツ 第18回定期演奏会) 』


4/23(日)、ヒロシマ・バッハ・ソロイスツの演奏会を聴きに行きました。 ”お茶漬け”vs”お粥”?
(2006.04.28up)
leaflet

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     2006年4月23日(日)18:30開演 
     ヒロシマ・バッハ・ソロイスツ 第18回定期演奏会
     カトリック幟町教会 世界平和記念聖堂

     H.パーセル : シャコンヌ ト短調 Z.730
     J.S.バッハ : カンタータ第125番“平安と歓喜もて われはいく” BWV125
     W.A.モーツアルト : レクイエム KV.629

     ソプラノ 金原久美子, アルト 青木洋也, テノール 榊原 哲(客演), バス 今田陽次
     指 揮 寺沢 希,  管弦楽・合唱 ヒロシマ・バッハ・ソロイスツ
     入場料 1500円(前売り1200円)
 

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  ヒロシマ・バッハ・ソロイスツの定期演奏会を聴きに行きました。
この演奏会があることを知らなかったのですが、1週間前に案内を頂き、聴きに行くことにしました。
ポイントは、モーツアルトのレクイエムと、テノールの客演ソリスト榊原 哲さんの歌声です。

  18時半開演の10分ほど前に会場の世界平和記念聖堂に入ってみたら、なんと満員! せっかく座布団を持参したのに、礼拝用の椅子はいっぱいでした。 仕方なく後ろの補助席に座りましたが、そこは たまたま背もたれ付きの普通の椅子で、お陰で2時間の間 楽な姿勢でゆったりと聴くことができました。
  しかし、後ろのため、オケも指揮もほとんど見えません。
  合唱総勢たったの22人。 管弦楽総勢25人。(実際には席が後ろでオケも指揮もほとんど見えないので、プログラムの出演者名簿による)

  さて、演奏。
  最初のパーセルのシャコンヌは弦楽合奏。 私は知りませんでしたが、TVでもメロディーが流れる有名な曲のようです。
  2曲目は、アルト、テナー、バスのソロの入ったバッハのカンタータ。 この曲も私は知らなかったため、盛り上がり箇所が良くわからないまま終わってしまいました。 演奏は良かったです。

  休憩を挟んで、モーツアルトのレクイエムです。
  我々がよく耳にする”ジェスマイヤー版”ではなく、後半グレゴリオ聖歌が何曲か挟んである”ロビンス・ランドン版”という楽譜でした。
  合唱は各パート6人以下。 大丈夫かなと心配しながら聴き始めました。 前半の入祭唱やキリエのTutti部分はさすがにオケに埋もれてしまっているような印象を受けました。 ビブラートの無い正確な歌声のため管弦楽と溶け合ってしまったのも一因かもしれません。 でも響きは良かったです。
  Lacrimosaなどはすっきりとした美しい演奏でした。
  逆に、グレゴリオ聖歌というとちょっと暗めで素朴な旋律という印象がありますが、この後半のグレゴリオ聖歌の部分は妙に張りのある声楽的なグレゴリオ聖歌に聞こえました。

  寺沢さんの指揮は終始速めのテンポを維持していました。 会場が響きすぎるので、ゆっくり演奏して全体が重くなりすぎるのを避けたのかもしれません。 また、合唱団の人数が少ないため、テンポを落すとさすがに苦しくなると思います。 逆に、速めのテンポでもまったく焦った感じがしなかったのは、さすが専門家の集まりだと感心しました。
  最後の方は、本場ヨーロッパの教会で聴くコンサートもこんな雰囲気なのかなと想像しながら、心地よく聴かせていただきました。

  最後に、ソリストについて。
  客演の榊原さん(T)や、金原さん(S)、今田さん(B)も安定してよかったですが、なんと言ってもアルトの青木さんの歌が素晴らしかったです。 男声アルトというのを始めて聞きましたが、音程・声量ともしっかりとしていて、上から下まで質の整った美しい声で、感心しました。

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  演奏が終わって、会場の外に出てみると、知った方が何人かいらっしゃいました。 その内の一人が、”このモツレクは、お茶漬けのような演奏でしたね。”とおっしゃいました。 最初何のことか良くわかりませんでしたが、お茶漬けのように、さっぱりとした演奏であったということのようです。
  今回の演奏を”お茶漬け”に例えると、控えめな量の美味しいご飯(合唱)に、特上の具(ソリスト)をのせて、たっぷりの香り豊かなお茶(管弦楽)で満たした美味しいお茶漬けでした。 しかも、(重文に指定された世界平和記念聖堂という)素晴らしい器に注いであるわけです。
  粘った”お粥”になってしまわないよう、さらっとした”お茶漬け”に仕上げたところが、シェフ寺沢の腕の見せどころでした。

  今回、この演奏会のご案内を頂いたNさん、有難うございました。 この次もまた美味しい”お茶漬け”が食べたいです。

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(!斬捨て御免!、!問答無用!)

十手