北の佐川の"音曲捕り物帖"

leaflet 連載 第五十三回

『 ”全日本合唱コンクール全国大会(中学校・高等学校部門)” 改め、”合唱技能競技会全国大会”について! 』


去る10月29・30日の両日、広島で合唱コンクール全国大会(中学校・高等学校部門)が開催され、私は裏方の会場係の一員としてお手伝いしました。  場内整理をしながら聴いた演奏があまりにも” 上手 ”だったのでその事について書くことにしました。
(2005.11.05up)

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  ・去る10月29・30日の両日、広島厚生年金会館ホールで第58回全日本合唱コンクール全国大会(中学校・高等学校部門)が開催されました。  私は裏方の会場係の一員としてお手伝いし、場内整理とバス昇降案内を行いました。
  ・特に場内整理係として、二日間で中高全73校の内の58校を聴き比べることができました。  裏方の仕事の気づきを書こうと思っていましたが、場内整理をしながら聴いた演奏があまりにも” 上手 ”だったのでその事について書くことにしました。

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  ・ソプラノは一様に透明感のある綺麗な声で感心しました。  ビブラートの無いまっすぐな透明感のある若々しい声、我々には決して真似の出来ないすばらしい宝物に接した気がしました。  それに比べるとアルトは個性的で学校によって音色にかなり違いが有りました。
  ・男声は全国大会に出場するレベルになるとさすがに荒さも消えて総じて良好でした。  中学生の男声もしっかりとした声があり驚きました。  最近の子供は成長が早くて変声期も早いのでしょうか?
  ・ただし、成長期の中学生にこんなおとなびた発声をさせて良いのかという問題があるようで、中国大会の審査員の中には中学生の成長を妨げるような大人びた発声をする学校の評価を下げるという事があったように聞いています。

  ・曲も、何でこんな曲を中高生が演奏しなければならないの?と思うような難しそうな曲を頑張って取り上げていました。  不協和音や変拍子を組み合わせた難易度の高いものでないと上位入賞が難しいためでしょうか、何語かわからない歌詞を不協和音で包み込んだような宗教曲っぽい曲や、日本民謡をこねくり回して難しくしたアクロバティックな曲をこぞって演奏していました。
  ・中学校でも上手なところはオルバーンやブストーなどの難曲を取り上げて見事に演奏し、金賞をとっていました。  体操のウルトラCやフィギアスケートの3回転半みたいな高難度の技を組み入れた曲を歌わないと優勝できないのでしょうね。
  ・私が聴いてある程度理解できるような普通の曲を演奏した学校は当然のごとく銅賞又は銀賞でした。
  ・唯一、あのV6の”学校へ行こう”で有名になった宮崎学園高等学校混声合唱団が”そのひとがうたうとき”を自由曲で演奏して金賞をとったのが番狂わせだったくらいです。

  ・動きや表情も完璧です。  出入りも整然としており、曲の間で並び替えがあるところはマスゲームのように見事に移動していました。
  ・足の構えや、体の揺らせ方までそろっているところもありました。 表情も豊かで、自然な微笑です。 NHKコンクールの小学生のように、笑っているのか頬がこわばっているのかわからないようなことはありません。  
  ・でも、なぜ皆、学生服なのでしょうか?正装といえば正装ですが、あれほど細部にこだわるのであれば、曲想に応じた衣装を着ても良いような気がしました。  衣装を許すと華美に走るのを懸念しているのかも知れませんが、揃いの白いスクールシューズを履いて宗教曲を熱演するというのも、頭隠してナントカ・・・。  それともコンクールの規定で、学生服以外は禁止されているのでしょうか??

  ・ということで、何から何までお上手でしたが、どうもコメントが皮肉っぽくなってしまいました。

  ・私の感想を一言で言うと、初日の高校Bの審査結果発表で総評を述べた鈴木茂明氏の”感心はするが感動しない演奏が多かった”というコメントに集約されます。  演奏を聴いていて、テクニックの高さには感心したが、音楽としては感動しなかった、ということです。(私の聴き手としてのレベルが低いのでしょうけどね)。
  ・テクニックが無いと高度な音楽表現はできないというのはわかりますが、あまりにもテクニックに走りすぎていると思いました。
  ・これでは、”合唱コンクール”ではなくて、”合唱技能競技会”です。  もっと言えば、サーカスで”ライオンの火の輪くぐり”や”熊さんの玉乗り”の芸をやらせて採点しているようなものです。
  ・パンフレットに掲載されている各校の自己紹介の欄をみると、多くの学校が 「難しい曲ですが練習を重ねてすばらしさがわかってきました。  多くの皆さんに曲の心をお伝え出来ましように・・・。」みたいなことが書いていますが、私には「血のにじむような練習の結果である演奏技術の高さが、審査員の得点につながりますように・・・。」と祈っているようにしか思えません。
  ・合唱をする中高生はまだ素直ですから、指導者の持って行き方によっては難しく辛い練習でも頑張るでしょうし、更に金賞でも取れば達成感もあり、その時は満足するかもしれません。
  ・しかし、中高生に技巧に走った練習を毎日させてこれが合唱だと勘違いさせているから、大学に進学したり社会人になって冷静に音楽を見つめなおしたときに、コンクールはもういい、合唱ってあんなに大変なものならもうやめた、と思ってしまうのではないでしょうか。  自分が、火の輪くぐりや玉乗りをやっていたと気付いたとき、どう思うでしょうか。
  ・審査結果発表前の総評や閉会式の場で、審査員先生や連盟理事の人が、「中高生の皆さん、10年後も合唱を是非歌い続けてください。」と、繰り返し訴えておられましたが、こんな技術面に偏重したコンクールをやるから、高校を卒業したら合唱をやめてしまうのだと思いますよ。

  ・あんな難しいの初演の外国曲や無理矢理難しくしたような民謡を聴かせて、一般のお客さんにその心が伝わると本気で思っているのでしょうか。  技術としての上手さは十分伝えられると思いまが、聴きに来てくれた自分のおじいちゃんやおばあちゃんを感動させられますか、その歌で。

  ・こんな、”合唱技能競技会”に一生懸命に取り組まさせる指導者が悪い!  審査するのが難しいのはわかりますが、「ずっと合唱を続けて欲しい。」と言いながら、技術的に難しい曲を演奏しないと金賞がとれないような評価をする、コンクール関係者が悪い!
  ・今回、だんだんと力が入ってきて文章が長くなってしまいました。   

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・おまけ
  ・最終二日目の夕方、最後の表彰式の直前に、“いざ立て戦人よ”が歌える男性スタッフ集合”という連絡がまわってきました。  審査結果発表まえの総評の最後にステージに上がって審査員と一緒に歌うというものでした。  このときの総評を担当した審査員の松下耕さんが発案されたそうです。
  ・結果、大いに受けました。  私もステージに上がり後ろの方で歌いました。  総勢100人くらいだったでしょうか。  歌う側も、聴く側も楽しそうでした。
  ・コンクールの自由曲で歌ったら絶対に評価されないと思われるこの曲を審査員、連盟関係者&スタッフが最後に歌って会場が盛り上がったというのも、何か皮肉な思いがしました。  合唱って何なの?コンクールて何なの?

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(!斬捨て御免!、!問答無用!)

十手