連載 第170回
 広島県立広島観音高等学校音楽部OB合唱団 祈念コンサート(東京公演)
   『レクイエム碑(いしぶみ)』

     [第11回広島公演] 7月29日  広島県民文化センターホール
     [東京公演]      8月5日  津田ホール


  レクイエム「碑」の演奏を主目的として、毎年ヒロシマ原爆の日の前に広島で開催している演奏会です。 私は第2回からの参加で今回で10回目の出演です。
今年は、11年目にして初めての試みで、東京での演奏会が開催されました。 ここでは、その東京公演を中心にお話します。
        (2012.08.14 up)
   
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   ◆昨年の演奏会後に、指揮者の益田遙先生からの「思い切って広島を飛び出して東京での演奏会を開催したい」旨の連絡に端を発してにわかに盛り上がり、在京団員を中心にあちこちのホールを見て回る中、幸運なことにちょうど広島原爆の日の前日の日曜日(8月5日)にこの津田ホールが空いており会場を押さえることが出来ました。   
   ・津田ホールは津田塾大学の付属施設で、中央線千駄ヶ谷駅前に位置し、席数500弱でリサイタル等でよく使われるホールだそうです。 益田先生の言葉によると「ホールの響きにごまかされることの無い、正確な演奏を要求される良い会場」とのこと。   
   ・実際、ステージで歌ってみるとテナー側からはソプラノの音が聞こえにくく少々苦労しましたが、、客席の奥まで見通せて演奏の気持ちを伝えやすいちょうど良い大きさのホールだと感じました。
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   ◆初めての東京での演奏会ということでどのくらいのお客様が聴きに来て下さるか予想が立たず、当初は心配したようですが、在京メンバーの多大なる努力によって結果的にはチケット完売となり、本番の客席もほぼ満席に近い状態となりました。   
   ◆本番のステージ構成   
     第1ステージは、まず旧制広島第二中学校&現在の観音高校の校歌斉唱(一部合唱)でスタートして、アベマリアや武満徹の合唱曲など。   
     第2ステージは観音高校OBの蒔田尚昊先生に作曲を委嘱した組曲「碑のねがい」全5曲等のオリジナル曲。 作詩はすべて合唱団団員の半田氏によるものです。    
     第3ステージは旧制広島二中1年生の被ばく体験をモチーフにした”混声合唱のためのレクイエム「碑」”、全曲演奏。 作詩者の薄田純一郎、作曲者の森脇憲三、共に広島二中の卒業生です。   
   ということで、校歌で始まって後半2つのステージが原爆関連の曲という、かなり硬く重たい演奏会でした。   
   ◆今回のアンケート等はまだ読んでいませんが、話に聞くと、改めて平和の大切さを改めて思い知らされる感動的な演奏会であった、というコメントが多かったようです。 私も10年間、毎回この「碑」を歌わせてもらっていますが、何回演奏してもこみあげてくるものが絶えることは有りません。   
   ・しかしながら、広島の原爆投下に強く特化した内容の平和祈念の演奏会のため、人によっては内容が重すぎて再度聴きに行く気になれない、という話も聞いたことがあります。   
   ・また、特に今回の東京での演奏会は、満席とは言いながら観客は団員関係者や観音高校卒業生が中心で、一般の方に注目されて席が埋まったというわけではないと思われます。 今回は初めての東京公演ということで、在京のメンバーを中心に皆が最大限頑張った結果だと思います。 もし、また東京で演奏会を行った場合、どのくらいの方に聴きに来ていただけるか心配です。   
   ◆最後に、今回わざわざ東京まで一緒に聴きに来てくれた(本当は、この演奏会をダシにして東京に遊びに来た?)私の家族のコメント。   
      ・今回はピアノの伴奏がとても印象的だった。小曲で良いから、途中又はアンコールで奈良さんのピアノ独奏が聴いてみたかった。   
       (佐川注釈 : 碑の伴奏をした奈良康佑氏は東京で活躍中のピアニスト。 観音高校音楽部のOBで今回はじめての共演。)   
      ・せっかくの東京での初演奏会なので、指揮者の益田先生の思いを生の言葉で聞いてみたかった。   
       (佐川注釈 : 益田先生の思いはすべてその指揮の中で表現されているから、あえて言葉にする必要は無いかと・・・?)   
      ・アンコールの最後に演奏した「世界に一つだけの花」が妙に浮いていて、それまでの祈念演奏の雰囲気を壊していたように感じた。   
       (佐川注釈 : 前回まではアンコールに、『碑』終曲の後半部分「広島を思う人あれば 広島は永遠にあり・・・」を歌って終わっていました。)    
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   ◆おまけ   
   ・前日練習が新宿近くの大久保駅のそばでありました。 大久保といえば、私が学生だった時に良く昼飯を食べに「めとき」というラーメン屋に通っていたことを思いだしました。 インターネットで検索してみたらまだやっているようなので、30数年ぶりに行ってみました。 当時、若い店主が黙々とラーメンを作っていたのが印象的でしたが、この日行ってみると昔と同じ狭い店で30年分の歳を取った同じ店主が同じように1人で黙ってラーメンを作っていました。 ラーメンの味もほぼ昔のままです。 懐かしく思いましたが、黙ってラーメンを作り続ける店主とそんな会話をすることもなくラーメンを食べ終わり、外で行列を作って待っている次のお客さんに席を譲りました。   
   ・・・広島二中の後輩である我々も絶やすことなく「碑」を歌い続けなければならないな・・・。 ラーメンのスープをすすりながら、そんなことを思いました。
  
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(!斬捨て御免!、!問答無用!)

十手