leaflet 連載 第130回

合唱団 ある 第22回定期演奏会


・〜プレミアムビールの味わい〜
(2008.06.17 up)
  
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  合唱団 ある 第22回定期演奏会   
    日時:2008年6月14日(土) 18時30分開演   
    場所:アステールプラザ 大ホール (広島市中区加古町)
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◆今回は、チラシやパンフレットの表紙にも記述があるとおり、東京混声合唱団指揮者の田中信昭の客演指揮ということで期待して聴きに行きました。   
・いつもの通り、18時の開場前からホール入口はお客様の長蛇の列。 人気のほどが伺えますが、主催者側も慣れたもので、列の最後尾に大きなプラカードを掲げたスタッフを配置して流れを誘導していました。   
◆まずは、現代ノルウェーの合唱曲による第1ステージ。 例によって、客席やステージ袖から団員がバラバラに入場するスタイルです。 今回は、テナーによるグレゴリオ聖歌の先導に続いて 各自バラバラに歌いながらの登場で、しかも皆さん手に青白い冷光を放つ化学発光体を握っていました。 凝っていますが、ステージに並んだ途端にポケットに収めてしまい二度と眼にすることは有りませんでした。 北欧ノルウェーのイメージでしょうか?ちょっと意味不明。   
・指揮は福原さん、1ステという事も有って集中力と調子が出るまでに少々時間が掛かったようで、最初はいつもの”キレ”が足りないような気もしましたが、徐々に乗ってきて終了。   
◆2ステは、”ラプソディー・イン・チカマツ”という作品。 指揮は松前さん。 鳴り物や衣装、パフォーマンスも入って、外国でこの手の演奏をするとバカ受けでしょうが、国内ではなかなか受けが良くないような気がします。 ・・・が、こういう曲をキッチリと演奏・演技し通せるのはさすがに”ある”です。 バッチリと決まっていました。 当然、演奏後には大きな拍手がありました。   
・まあ、敢えて一言言うならば、バラバラに団員が登場するのはいつもの事として、演奏が始まって遅れて出てくる人がいたのはどうしたことでしょうか? それとも、あれも”ある”流のパフォーマンスでしょうか? それと、なぜか指揮者だけが真っ黒い服装で、それが返って浮いていました。   
◆前半2ステージが盛り上がった後の15分間の休憩を挟んで、いよいよ田中信昭先生の登場です。 といっても、私は田中先生の指揮を見るのは初めてです。 周りの前評判が高かったので期待大です。   
・プロフィールによると1956年に芸大卒業ということで、既に75歳くらいでしょうか。 確かに、最初にタクトを握ってステージに登場した時には、歳相応に見えました。   
・しかしながら、一旦演奏に入るとかなりエネルギッシュな指揮ぶりで驚きました。 かなり自由な指揮ですが、ある意味非常に打点がはっきりしていて判り易く歌い易そうに見えました。   
◆第3ステージは、宮沢賢治の”永訣の朝”の詞を使った、西村朗作曲の同声3部合唱とピアノのための作品で、3曲構成になっています。 第1曲目の詩は先週広島中央合唱団で歌ったものと同じです。   
・初めて聴く曲ですが、いかにも難しそうな内容を、的確な指揮の下、歌いきったという印象です。 1ステ、2ステも間違いなく上手だと思いましたが、このステージを聴いてしまうと、かなり差が有ったかなと感じます。   
・合唱団員1人1人が感情を込めると全体が乱れるとかで、音楽表現は指揮者に委ねて合唱団員は感情を抑えて楽譜に忠実に歌うことを心がけるよう田中先生から求められたそうです。   
・練習は、かなり厳しい指導が続いたように漏れ聞いていますが、その甲斐あってか、素晴らしい演奏でした。 ピアノも素晴らしかったです。   
・ただ、私の場合この曲を初めて聴くせいもあって、合唱の凄さ、ピアノの凄さ、指揮の凄さすに眼と耳が行ってしまって、曲を味わうところまで行きませんでした。   
・何かガラスの向こうで繰り広げられる完璧な演技を、ガラス越しに羨望の目で眺めるといった状況でしょうか。 あるいは、ハイビジョンTVの細密な映像を初めて見たときの驚きと言っても良いかもしれません。   
◆そして、最後の第4ステージは、引き続き田中先生の指揮で、武満徹の”うた”より、お馴染みの5曲。 お馴染みといっても、武満徹ですから、生ではもちろんのこと、CDでもなかなかまともな演奏を聴いた覚えがありません。   
・田中先生が"永訣の朝”ではなく、武満徹の”うた”の方を最後のステージに持って来るように指示されたそうですが、今回、演奏会の最後に田中先生の指揮でこの素晴らしい演奏が聴けてよかった。   
・”永訣の朝”で終わっていたら、今までの通りの”すごいけど近寄りたくない”合唱団の印象のままでしたが、最後に武満徹を聴いてからは、”新幹線乗換え口のゲートの向こうとこっち”(もちろん、私が在来線側であるが新幹線側です)みたいにちょっと親近感が感じられて良かったです。 聴き手に演奏の難しさを感じさせない、さらっとした作品に仕上がっていました。   
・それに、ちょっと時代がかったカラフルな女性の服装も懐かしくて曲にピッタリでした。   
・最後に確認ですが、第4ステージも感情を出さずに歌うよう田中先生から指示は無かったですよね。(もちろん常に冷静であることは必要でしょうが・・・。)   
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◆その夜、自宅で発泡酒を飲みながら、田中先生の指揮は、コクとキレのあるプレミアムビールのような味わいだったなあと思いました。 おしまい。

(!斬捨て御免!、!問答無用!)

十手