北の佐川の"音曲捕り物帖"

leaflet 連載 第百回

「 広島中央合唱団 第42回定期演奏会 と今後 」


・北の佐川のサマーファイトシリーズ第3弾。台風4号の過ぎた7月15日、台風一過で晴れた午後にエリザベト音大セシリアホールで同演奏会があり、私もステージに上がりました。
 
(2007.07.19up)

********************************************************************************
  ◆広島中央合唱団 第42回定期演奏会   
   2007年7月15日 16時半開演    
   エリザベト音楽大学セシリアホール   
   指揮:寺沢 希   
   管弦楽:ヒロシマ・バッハ・ソロイスツ   
   独唱:昆野 智佳子、榊原 哲、田尻 健、櫻井 元希、今野 陽次   
     第1ステージ:オラトリオ「キリスト」 (メンデルスゾーン)    
     第2ステージ:木下牧子 アカペラ・コーラスセレクション より(木下牧子)   
     第3ステージ:Lux Aeterna (M.ローリゼン)
********************************************************************************   
  ◆台風4号の通り過ぎた次の日、台風一過で晴れた7/15(日)にエリザベト音楽大学セシリアホールでの、広島中央合唱団定期演奏会に参加しました。   
  ◆1ステはメンデルスゾーンの未完のオラトリオで、管弦楽とエバンゲリストその他のソリスト付きです。テナーのエバンゲリストは”あの”榊原先生で、久しぶりに美しいテノールの響きを聞かせていただきました。   
  ・合唱は、ドイツ語の早い動きのパッセージが続くため、私はついつい力が入ってしまいました。ただし、未完の曲で、最後は男声4部合唱となっており、この部分は気持ちよくピアニシモの男声合唱を歌ってステージを終了することが出来ました。   
  ◆2ステは木下牧子のアカペラセレクションから4曲。日本語の曲は安心して歌えますね。木下牧子の曲は結構ハーモニーが難しいといわれますが、周りの人が正確な音程で歌っていれば、そこに半音ではまるのはそう難しくないわけで、そういう意味で歌いやすかったです。中央さん、上手い!   
  ・途中、男声合唱と女声合唱に分かれて演奏しました。自分が歌っている男声合唱の演奏がどうであったかは分かりませんが、「さびしいカシの木」を歌った女声合唱は上手でした。年齢のわりには(失礼)ヴィブラートが無く粒ぞろいでクリアーなソプラノ系と、力むことなく豊かな大人の女性の声で支えるアルト系とが上手くバランスして音楽を豊かに伝えていたと思います。   
  ◆3ステは現代米国の作曲家ローリゼンのルクス・エテルナ。昨年のコンクールの自由曲で歌ったこの人のアカペラ曲に味をしめて、今回メインステージで取り上げたようです。現代の作曲家らしく、音の重なり合いや半音のぶつかり合いが多く不思議な音がします。これが聴いている人にどの様に受け取られたか少し心配です。   
  ◆全体としても、1ステ&3ステの難しい曲をよくここまで集中力を維持して練習し、短期間の合せにも関わらずオケともピタッと合わせられたものだと感心します。寺沢先生の力でしょうか。   
  ・どのステージも、奇をてらうことのない誠実な演奏でした。   
  ・セシリアホールは、過去何回かステージに立ったことが有りますが、立ち位置によって響きがかなり変わるようです。今回、自分自身は歌いやすかったですが、遠くのソプラノパートの音はあまり聞こえてきませんでした。  
  ・私は、パートリーダーに指示で、どのステージもテナーのはしっこで歌いました。すぐ横に、パートリーダーの定宗さんと前出の田尻さんがいるため、私はこの2人の歌声からはみ出さないように、ピッチや音色を合わせながら目立たないように歌いました。この2人の横で歌っていて自分の声が目立つようだと、自分の歌い方が間違っているということです。
********************************************************************************   
  ◆と、ここで終わると面白くないので、最後に一言。   
  ・上記のように、あまりにもまじめな演奏すぎて、面白みが無い、変化が無い、色気が無いのが気になります。   
  ・1ステから3ステまで、男性はすべて同じ衣装。黒の上下に蝶ネクタイ。女性も最後に黒の上着を羽織っただけ。(私にとっては、特別な衣装を準備する必要がなく楽ですが)   
  ・いろいろ理由もあったようですが、アンコールもなし。(レクイエムなどでは、あえてアンコールなしの場合もあるようですが)   
  ・プログラムもモノクロの淡々したもので、読む気を誘うようなものでは有りません。(団体によっては、プログラムを毎回同じ意匠に固定して個性を出しているところも有りますが)   
  ・どうも、広島中央合唱団は美しく正確な音楽を目指して邁進している、中身がよければそれでよい、という自己中心的な雰囲気が漂っているようです。   
  ・ダメ押しは、定演の1週間前に有った南区さざなみフェスティバル・コーラス発表会(広島市南区の各公民館活動合唱団が集まっておこなう演奏会)にゲスト出演し、トリで歌ったのが定演のメイン曲ローリゼンのルクス・エテルナ。お客さんにはハモッているかどうか分からないラテン語で始まり、最後は消え入るようなディミネントと4小節にも及ぶピアノによる全音符の後奏。客席は静まり返っているというより、どう反応してよいのか分からないといった様子でした。これを聞かせておいて、来週の定演に来てくださいといっても誰も来ないと思いました。どう見てもTPOがずれた選曲です。南区コーラス発表会に聴きにいらしたお客様に本気で聴いてもらおうという視点が抜けていたように思います。南区合唱祭は中央合唱団の定演のリハーサルの場ではない!    
  ◆広島中央合唱団は、毎回オーケストラと共演して大曲を演奏している、広島では数少ない素晴らしい合唱団です。今回の定演も、結果的にはセシリアホールはほぼ満席にして盛況の内に終えることが出来たのですから、”外野?”が要らぬことを言う必要はないかもしれませんが、更にそのよさを知ってもらってファンを増やす為にも、新たな視点を持って演奏活動を進めていく必要が有るのではないかと感じました。

(!斬捨て御免!、!問答無用!)

十手