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埼玉県桶川市のストーカー殺人事件で、県警が捜査を放置したために猪野詩織さんは殺害されたとして、両親が県に約1億1000万円の損害賠償を求めた訴訟で、さいたま地裁は平成15年2月26日、県に慰謝料として550万円の支払いを命じました。
裁判所は、「詩織さんが名誉棄損の被害を受ける恐れが客観的に認められたのに、警察が適正な捜査をするという期待を、捜査を怠って侵害した」と、県警の「捜査の怠慢」を「違法行為」と認めたのですが、「県警の捜査と詩織さん殺害との因果関係はない」として、詩織さんの死亡損害(死亡逸失利益や死亡慰謝料など)の賠償を認めなかったのです。
犯人たちの刑事裁判では、「迅速な捜査を行っていれば、おそらくは詩織殺害という事態は起こらなかったと思われる」とされていたのですが、民事裁判では因果関係が認められませんでした。
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これは国家賠償訴訟ですが、違法行為に基づく損害賠償が認められるためには、その違法行為と被害の発生との間に因果関係が必要です。
因果関係があると認められるためには、その行為(捜査の懈怠)がなければその被害(詩織殺害)は発生しなかったであろうという関係が必要ですが(条件関係)、この条件関係については「高度の蓋然性」があることを、原告側(詩織さんのご両親)が証明しなければなりません。
ところが、その間に第三者(本件の場合は犯人)の自由な意思行為(特に故意)が介入し、それが結果の発生(詩織さんの死亡)を決定的なものとした場合には、因果関係が「中断」されるという、有力な考え方があるのです。特に、本件の場合、(判決によれば)詩織さん殺害を主導したのはストーカー行為をした元交際相手自身ではなく、その兄ということになっているので、余計問題が複雑化しています。
裁判所は、県警側において、兄らによる詩織さん殺害を予見することができたとは認められない、とも言っています。
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しかし、この裁判所の判断に納得できない人は多いのではないでしょうか。理論的に、精密に考えていくうちに、いつしか一般常識とかけ離れた結論にたどり着く……そのような判決は、やはりおかしいと思います。
因果関係の中断の有無や、予見可能性の有無だって、その内容をどれだけ具体的に考えるかによって結論は異なってきます。本件も、因果関係を肯定することは十分に可能だったように思われます。
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実は、私も「精密司法」(実は非常識司法)の壁に阻まれて、一般常識とはかけ離れた非常識な判決を下され、依頼者ともども苦汁を飲まされた経験があるので、決して他人事とは思えません。
一般人の正義感を裏切らない判決であってほしいものです。そうでないと、国民の司法に対する信頼が失われていきますから。
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