薄荷茶
乾いた皮膚は水分と弾力を取り戻し、削げ落ちていたような肉が骨の周りで形と力を取り戻す。
暗くよどむような目をしていた時間がどんどん短くなった。
古い友人は、少しづつ、かつて纏っていた輝かしい気配も取り戻し始めた。
初夏の午後、リーマスが散歩から帰ったパッドフットをじっと眺めた後で、とびきりの笑顔になった。
落ちつかなくなった彼は人に戻って訊ねる。
「何を見てる?」
「君だよ」
「…それはわかるんだが…質問を変えよう。
なんでそんなにじっと見てるんだ?」
「うん、君がずいぶんきれいになったなあ、と、うれしくて」
夜の暗がりで世界中を締め出して蹲ることも無くなったし、なにより温度の無い眼で自分を観察するような表情をしなくなった、とリーマスは心の中でつぶやく。
「はあ?何を言ってるんだ?」
「骨と皮ばっかりだったのがずいぶん手触りが良くなったよ」
ああ、パッドフットのことか、とシリウスは納得する。
しかし少々むっととしていたので御返しを言う。
「…そういうお前だってずいぶんきれいになった」
言いながらシリウスはリーマスの頬に手を伸ばす。
「朝も起き上がれるようになったし、血の気の無い顔で家をうろつく事も無くなった。
ほら、ずっと柔らかくなって気持ち良い。前だって好きだったけど、今の手の方がずっといい」
それに、とこっそり肺のなかでシリウスは続ける。植物の様にひやりと冷たかった指が温かくなった。
指先にキスを落とすと、彼の友人は呆れたような顔をした。
「シリウス、君はアズカバンで筋肉と一緒に脳みそまで削ぎ落としたらしいな」
「とんでもない。どちらかといえば磨かれたと思っているさ」
記憶の中よりも遥かに強く刺激が新しい情報として蓄積されていく。
全てなくしたものをもう一度身体に納めていく感じだ。
そういうと珍しく友人が困ったような顔をした。
「匂いも、色も感触も新しく学びなおすように新鮮に感じる」
困らせたいとは思わないから、シリウスはなんでもない事のようにきれいだと思うものを挙げ連ねて笑顔を向ける。
リーマスは黙ってそれを聞き、それから少し笑って、午後のお茶はミントを入れるかい?と聞いてきた
つぶやき
もちろんその前に犬はシャワー室へ放りこまれます。
大型犬を室内飼いするのは大変です。
そして季節をうかつに入れると後で大変困る…ことに今気がつくな…
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