大人の遊び
縛られた手首を見下ろしながらつぶやく。
「これは何かの罰ゲームかい?」
とんでもないと言わんばかりにシリウスが眉を上げてみせる。
「そういうわけではない。
だがたまには創意工夫というモノも必要だろうということさ」
服も脱がないのに手を縛られて、この状態で抱き合うのはそれこそ創意工夫かもしれないが、そもそもこういう事にも創意工夫は必要なのだろうか?
しかし考えたところで、こういう問題について詳しい訳じゃないので、判らない。
畳み掛けるようにシリウスが続ける。
「大丈夫だ、別に問題はない」
そうだろうか?
「・・・そりゃ君は器用だから困らないかもしれないけど・・・」
これではシャツも脱げない。
「だいたいボタンもはずせないよ?」
「お前のは俺が外すし、お前は俺のボタンを外せば良いだろう?」
「・・・・・・っどうやって?!」
「方法はいろいろあるじゃないか。
ボタンを外すのに、手しか使えないわけじゃない」
そういって彼は聖人のように厳かに笑って見せた。
表情だけなら、よからぬ事を考えているようにはとても見えない。
少々情けない気分で手を見る。
少し考えて思いついたはいいが、実行するにはややためらわれる。
「・・・シャツがもったいない・・・」
「大丈夫だ」
「後で怒らないかい?」
「そんなことはない」
あきらめたようにため息をついて、身体を近づける。
両手を腿に乗せて、顔を胸元に寄せる。
縛られた自分の手が邪魔になって、なかなか上手く行かなかったが、どうにか舌でボタンの位置を探り、しっかりと歯で捉えなおす。
シャツが破れないといいのだけど。
頭を、後ろへ引いた。
軽いショックがあった。
ぶちりという音が、異様にはっきり耳に響いてシリウスはぎょっとする。
ふっと、ちいさい息が聞こえて、顔を上げたリーマスの口から白く光る貝ボタンが縛られた手の中に落ちるのが見えた。
再びもう少し上のボタンに顔が寄せられた。
糸の切れる音。
リーマスが顔を上げて、こちらを見る。
「シリウス?」
「・・・予想以上に刺激的だな・・・」
シリウスはどうにかそれだけつぶやいて、リーマスの手の中のボタンを取り出す。
シャツに穴があく前に、正しい口の使い方に戻るべきだ、と内心溜息をつきつつ、怪訝そうに自分を見ている恋人に口付けた。
’08.05.06
つぶやき
黒田はロマンチストで男らしいけど、先生は即物で男らしいひとです(身も蓋も…)。