日記2

 

 

 

(夏:ジェームズ)

 

オークの根元で、樹が歌うのを聞いた。

彼女はたぶん、このことを知らない。

 

 

DADA、古代ルーン語、ラテン語、変身術に飛行術。

期末試験で、リリーに勝った科目を確認すると、成績表を丸めて小さなひばりに変える。

それを森へ向けて放り投げる様に放した。

ゆっくりオークの丘の方へ歩いていく。

昼下がり、6月の陽光で暖められた風が身体を通り過ぎていく。

 

 

 

古いオークの樹の下に、靴と靴下が放り出されていた。

ぐるっと見回しても、樹上に持ち主の姿は見えなかったけど、オークの樹がうれしそうに歌っているので、リリーが樹のどこかで眠っているんだと解った。

 

地面に腰を下ろして、樹によりかかる。

 

樹が歌う。

枝が広がる。新しい葉が枝を覆う。

大地からの力を吸い上げて、枝が、広がる。

足元が軽く宙に浮かび上がりそうだった。

鏡の破片のように光が僕の回りに振ってくる。

樹が喜びの歌を歌っている。

緑色の空気が風にのって城へ流れていく。

 

期末試験は彼女に負けたけど、

6月の昼下がり、僕はオークの根元でのんびり樹の歌を聞いた。

 

 

つぶやき

メガネは羊皮紙の切れっぱしに。ほとんどメモ(そしてメモは反転)。




06.09.02



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