セロリ

 

 

アフリカの代表的な魔法生物、キングコング種の好物は、セロリである。

 

あんなに大きくて美しい魔法生物が大好きな味というのはどんな物なのか、興味がわいた。

なので、ホグズミートへの外出時に探してみたけれどみつけられず、マグルのスーパーなら年中売ってる、と教えてくれたリリーに頼んで、セロリを取り寄せてもらった。

食べてみれば意外に美味しかった。

 

 

しゃくしゃくと食べ始めたリーマスにつられて、自分もセロリを齧ってみた。

口の中に強い緑と水の味がする。

小さな悲鳴に驚いて顔を上げると、リーマスの友人である3人組がこちらを見ていた。

ペティグリューには顔色が無い。

「なにやってるのリーマス!」

「授業でキングコング種の好物だっていうから、どんなに美味しいのかと思って」

「しんじらんねぇっ!!」

性格と口が容姿に反比例している美人が喚いている。

「セロリおいしいよ」

恐れ気も無く、リーマスが笑う。

こういうところ、彼は大物だとおもう。

ちょっと噴出したあと、リーマスに相槌を打った。

「うん、葉っぱの匂いで緑色になりそうだよね」

「君までアゲハチョウになるつもりかい?」

相方のハンサムボーイに比べると小柄な黒髪が、いつもの好奇心が溢れそうな顔を私に向けていた。

今回は私が発案したわけではないよ、といってやろうかと思ったけど、ふと頭に浮かんだ連想が刺をへし折った。

「身体がセロリでいっぱいになったらさなぎになって蝶になる、か。それはいいね」

そういったとたん、彼はあ、という顔をした。

眼鏡の奥の目が光ったように見えた。

次にその顔が、宝物を見つけたようなめちゃくちゃ嬉しそうな表情になった。

「リリーっ、セロリを分けてくれるかい?」

「?…いいけど…」

「僕もさなぎになってみたいんだっ!」

…彼はやはりへんな奴だ。

 

 

リリーに頼んで手に入れてもらったセロリ、一抱えは、隠して運ぶには都合の悪い代物だった。

匂いが後をついて回るのだ。

そして何とかセロリを持ちこんだが、秘密の練習部屋に充満した匂いに、シリウスは顔をしかめ、ピーターは悲鳴を上げた。

「で、なんだジェームズこのセロリの山は?」

「ちょっと、幼虫の気持ちになってみようとね」

「…なに考えついたんだ今度は?」

回転が早くて助かるよ。

そう、君が予想している通り、食べるのさ、相棒。

「アニメ―ガスというのは現在の自分の肉体を構成しなおして別の動物になるんだ。

処が実践の段になって僕らは1年も行き詰まってる。良いアドバイザーがいないというのは如何ともしがたいが、詰込めるだけ知識はつめこんだろう?」

「それでも動物の形もとれない」

「そうだ。イメージトレーニングをいくらしてみても、ヒトとケモノの身体は違いすぎて僕らの知識はそれを構築しきれないけど、基本設計は僕らの中にあるんだ」

僕らの力はそれを選択する。

「僕らは一度さなぎになる。

ヒトでもケモノでもないものになってそれからケモノへ変身するんだ。」

「それがセロリか?」

僕は大きく頷いた。

2人の盟友が肩を落として顔を見合わせた。

 

自信満々で頷いて見せたけど、実は破れかぶれに近い思い付きだ、と自分でも考えた。

 

 

しかし、結局は、これが僕らの偉大な成功への足がかりとなったのだ。

 





つぶやき

キングコング種は巨大なゴールデンバックで、ときどき、白い翼の生えた個体が生まれたりします。
知能指数は高いけど、セントールなんかに比べたらずっと平和的。
地元民の山の神様…で、何でセロリってナンデだったろう…(セロリ好き)



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