クマが人を襲うのは 気圧変動曲線のピーク時か

気圧と血圧の関係より導いた理論式より考察

2008年2月記載

木下眞二
.


.

クマが人を襲うのは(○印) 気圧変動曲線のピーク時

日本ツキノワグマ研究所ホームページのデータより

 

 最近、毎日新聞東京新聞に掲載された、日本ツキノワグマ研究所理事長・米田一彦さんの調査によると、低気圧がやって来る、かなり前の日で、むしろ気圧が比較的高く、天気がそれ程崩れていないときに、クマが人を襲うことが多いことが分かりました。

 36年前に、私が報告した、次の気圧と血圧の関係が、調査の引き金になったとのことでした。
.

血圧は低気圧が来る前に上がる

 先に述べたように(「血圧は低気圧が来る前に上がる」)、血圧と気圧の変化とは密接が関係が見られます。しかし、低気圧がやって来て、天気がくずれる時でなく、すでにその前の日に、血圧は上がっているようです。

さらに、脳の中の細小動脈圧が上がるのは、それより、かなり前の日になると思われます。

 従って、気圧変動が周期的にやって来る時期では、低気圧の底より、ずっと前の日に、むしろ気圧が高いピークの時期に、脳に大きなストレスが及んでいる可能性が考えられます。

これによって、クマなどの野生動物は、低気圧で天気が崩れる日の、何日か前の日に、その気配を察することができ、餌を確保したり、安全なところに避難したりする行動を取る可能性が考えられます。

 次の図は(木下眞二、高橋香織: 最新医学 27:1530−1535、1972 より)、気圧変動と血圧の変動との関係を示しています。上のグラフは、気圧の谷が周期的にやって来る状態をあらわしています。

血圧の変化を示すグラフは、その下の方に示しています。気圧が最も低い谷になる前の時期に、血圧がすでにかなり高くなっています。

下の破線で示したように、気圧変動曲線を上下逆にして示すと、血圧の変動曲線は、Ts の時間だけ、前にずれています。 気圧の変動より 血圧の変動の方が、Tsの時間だけ先にやってくるのです。
..



周期的気圧変動の血圧および脳出血発作に及ぼす影響
.

脳細小動脈圧は血圧がピークになる前に高まる

 さらに、脳細小動脈圧上昇は、血圧が上昇しつつあるときに、起こりやすいことが知られています。

血圧の高さそのものよりも、血圧上昇の勾配と、強く関係しているようです。

血圧と脳細小動脈圧の変動との間に、上の図に示すように、Tc の時間だけ、ずれがあるようです。

 従って、気圧変動と脳細小動脈圧の変動曲線との間には、TsTc の2つの期間を加えた、かなり大きな期間のずれが生じています。

これは、まだ、気圧がそれほど低くなく、天気もそれほど悪くないうちに、脳細小動脈圧が高まることを示していると思われます。

さらに、TsTcとの和が、上の図に示したものより、もっと大きく、気圧のピークの時期に近い可能性が考えられます
.

日本ツキノワグマ研究所ホームページのデータより

 次の図は、日本ツキノワグマ研究所のホームページのデータより、ツキノワグマによる人身事故のあった日(○印)前後の気圧変動を示したものです。

岩手県宮古の例(2001年8月、9月)の調査です。



 この調査の期間に、4度、人身事故がありましたが、いずれも、気圧の変動曲線のピークに近いところで、起こっていることが分かりました。

気圧の谷で、低気圧が来て天気が崩れる日より、かなり前の日に、人身事故が起こっているのです。
.

 以上のことを総合すると、次のように推測することができます。

先ず、(耳管などを介して)血圧(p)が上昇するのは、気圧の絶対値(a)ではなく、下がり行く気圧の勾配の大きさに相応する。

数学的に言うと、気圧変動曲線を微分したもののに、−1を掛けたもの  (p = - da/dt)に相応する。

そして、脳細小動脈圧(P)は、さらに、血圧変動曲線を微分したもの(P = dp/dt); つまり、気圧変動曲線を2度微分したもの(加速度に相応)に、−1を掛けたもの(P = - d2a/dt2)に相応する。

 結局、気圧変動曲線のピークの時期に、(つまり、気圧の絶対値はまだ高いが、気圧の上昇度が急速に落ちつつある時期に、)脳細小動脈圧上昇を介して、クマなどの野生動物に、(人間にとっての)異常行動を来たす可能性が高いものと思われます。

 

もどる