トマトは野菜か果物か

(苅部 浩也 氏写真提供)
私が子供の頃は戦時中の食糧難の時代。トマトは貴重品で 「果物」として、
味わっていた。しかし、戦後20年くらい経って、食料が豊かになると、若い人
たちが、トマトは「野菜」であると言っているのに気づいた。
リンゴもトマトも果
実なのにどうして一方が果物で一方が野菜なのか。そこで、「果物」とは何か
ということで討論が始まる。このことを、朝日新聞の「声」欄(記事1)に載せる
と、多くの読者から、反響が寄せられた(記事2)。私たちの討論から到達した
結論は「果物」とは甘くて生で食べられるもの,という定義。日常使われてい
る「果物」という名称は
植物学的なものではなく、 食べる時の
好みによるもの
というのが、 私の
結論である。 .
アメリカでも論争
「声」欄の記事の後、さらに家庭欄で、東洋食品工業短大の大塚滋教授の解
説が載せられた(記事3)。
それによると、 アメリカでも、「トマトは野菜か果物
か」ということが重大な問題になる事件があった。関係者の間でトマトはどっち
に分類すべきかが論議されたことがあった。植物学者は「果物」といい、農務
省では「野菜」とみなし、裁判所では、「トマトは食事中に食べられ、デザートと
はならない」点を重視(?)やはり野菜だとした、という。 .
最高裁がトマトは野菜と判決
しかし、その後も「トマトは果物である」と主張するグループが、この判決を不
服とし、ついに、最高裁まで上告され、H.
Gray 判事が「トマトは野
菜である」と判決したのである(記事4)。どうして、最高裁までも上告して争わ
れたかというと野菜と果物では、アメリカでは、1883年にできた法律で,輸入
野菜には10%の税が課せられるが果物は無税であるためのようである。
.
フルーツトマト
ところで、最近、品種改良で「フルーツトマト」なるものができてきた。トマトを極端
に水分を控えて成熟させると、糖度が高まって甘味が強くなり、フルーツのよ
うに丸ごと食べられるようになった。初めの私の結論 「果物は甘くて生で食
べられるもの」
という定義によると、「フルーツトマト」は
正しく「果物」である。
「トマトは野菜か果物か」という論争は、まだ当分続きそうである。 .
(2004年9月19日記載)
記事1. 朝日新聞1971年7月1日「声」欄
記事2. 朝日新聞1971年7月8日「声」欄
記事3. 朝日新聞1971年7月31日家庭欄


記事4. 現代化学1994年11月号51ページ