どうして、東洋では「東西南北」と言うのに

西洋では「北南東西」と言うのか

 

「千年樹」より転載:

2003 13::35-40

南北・なんぽく・北南

どうして、日本では「東西南北」西洋では「北南東西」か

 

 

朝鮮半島を含め、「南北問題」が、地球上の多くの地域で政治問題となっている。しかし、英語では「南北問題」の「南北」は、South and Northではなく、North and South である。つまり「北南問題」である。さらに、「東西南北」は、North, South, East, and Westである。つまり「北南東西」である。英語だけでなく、ドイツ語などのヨーロッパの言葉でも同様である。どうしてなのか。

 

麻雀の「東南西北」で述べたように、古代の人は、太陽の運行を見ながら、方位を定めたように考えられる。日本人も、中国人も、太陽は東から昇り、やや南天に達し、西に沈む、そして、その後、やや北に向かった太陽は再び東から昇る、と信じている。つまり、太陽は先ず東→西の方向が優先し、これに南→北の方向が副次的に加わると信じている。従って「東西南北」となる。

 

しかし、これは、日本や中国では正しいように考えられるが、太陽は、必ずしも、東→西の方向に昇って行くとは考えられない所があるのである。日本や中国の古代文化の中心であった所は、東京(北緯36度)、京都(北緯35度)、北京(39度)、南京(31度)のように、いずれも、北緯30度台の所に位置している。北緯45度より大きく南に偏しているのである。札幌(43度)でさえ、北緯45度より、かなり南である。(手許にある小さな地球儀で見ているので、末位の数字は少し誤差があります。)

 

ところで、イギリスのロンドン(北緯51度)は、北緯45度より、大きく北に偏しているのである。その他、ドイツのベルリン(北緯52度)、フランスのパリ(49度)、ロシアのモスクワ(56度)、スウェーデンのストックホルム(59度)など、ヨーロッパの主要国は、同様に、大きく北に偏している。

 

下の図は、太陽の昇って行く方向を示したものである。春分、夏至、秋分、冬至などで、太陽の昇る位置が違ってくるが、その方向は、地域によって一定である。(北半球では)その地域の緯度の分だけ、南に傾いている。赤道では、東→西に正確に進む。京都などの、(北緯45度より)明らかに南にある地域では、それより少し南に傾いて進むが、ほとんど東→西に進む。つまり、東→西方向が主で、その後の南→北の方向は従である。「東西南北」である。

 

これに対し、ロンドンなどの、(北緯45度より)明らかに北にある地域では、太陽の昇る方向は大きく南に傾く。つまり、太陽は(東→西の方向でなく)北→南の方向に昇って行くと考えられる。つまり、北南が主で、東西が従となる。「北南東西」となる。さらに、北極圏や、北欧の白夜の季節では、太陽は、ほとんど正確に、北から昇り南に進む。

 

   (西)        (西)      (西)        (西)   

 

 

 


北  東  南    北 東  南    北  東  南    北  東  南

  赤道       京都       ロンドン      北極圏  

 

つまり、東洋文明の主要地域では、太陽の昇って行く方向から、「東西南北」の方位が導かれたものと考えられる。これに対し、西欧文明の主要地域でも、(太陽の昇る所ではなく、その後の)太陽の昇って行く方向から、「北南東西」の方位が導かれたものと考えられる。

 

 

追記:

 以上のことを、もう少し詳しく説明してみる。

 太陽の(昇る場所でなく、昇った後の)進行方向を、東→西(または西→東)と南→北(または北→南)の2つの方向に分析して観察すると、次のようになる。

 

東→西(西→東)方向では、太陽は、朝、昇ってから、夕に沈むまで、東→西の向きに進行する。夕に沈んだ太陽は、朝、再び昇り始める前まで、地球の裏側を、西→東に進行する。

 

一方、南→北(北→南)方向では、真昼に、南天に達するまで、北→南の向きに昇って行く。そこから転じて、南→北の向きに落ちて行く。さらに、地球の裏側を真夜中まで、南→北の向きに落ちて行く。そこから、また、転じて、北→南の向きに、上行し始め、朝、地平線から出て来る。そして、昼、南天に達するまで、北→南の向きを保つ。

 

つまり、東→西(西→東)方向 [下図で上段] と、南→北(北→南)方向 [下図で下段] の2つに分けて観ると、太陽の進行は、昼の南天(下図で・で表す)を境として、次のように表すことが出来る。( )内は夜間、( )の無いものは昼間を表す。

  

(西東)東西・東西(西東)

(北南)北南・南北(南北)

 

これら2つの方向を合わせて、(日中の)太陽の進行方向を表すと、日本、中国などの(北緯45度より明らかに)南に偏している所では、上段の東西(西東)方向の要素が大きく、下段の南北(北南)方向の要素は小さい。従って、先ず、東西、次いで、(南天を境として)南北となる。つまり「東西南北」である。 

 

これに対し、イギリス、北欧などの(北緯45度より明らかに)北に偏している所では、下段の北南(南北)方向の要素が大きく、上段の東西(西東)方向の要素は小さい。従って、先ず、北南、次いで、(南天を境として)東西となる。つまり、「北南東西」となる。