音楽好きの皆さん、自分で曲を作ってみたいと思ったことはありませんか。しかし、実際に曲を作ってみようと思っても、どうしたらよいか分からない人が多いかと思います。たとえ、メロディーが心に浮かんだとしても、それを書き留めるには絶対音感がいりそうで、才能がなければできそうもありません。作曲は才能がなければできないのでしょうか。計算機に音楽情報処理をさせるという音楽関連システムの研究をしてきましたが、計算機には絶対音感も音楽の才能もないにもかかわらず、計算機に音楽の知識を埋め込めば、ある程度の作曲ができることが分かりました。計算機が作曲できるのですから、普通の人でも作曲できないはずありません。ここではジャズの理論をやさしく解説し、誰でも作曲できることを示したいと思います。 ハ長調の音階ドレミファソラシドを知らない人はいないと思います。ドとレの間は全音、レとミの間は全音、ミとファの間は半音、ファとソの間は全音、ソとラの間は全音、ラとシの間は全音、シとドの間は半音になっています。全全半全全全半となっています。ドとレの間には#ドまたは♭レ、レとミの間には#レまたは♭ミ、ファとソの#ファまたは♭ソ、ソとラの間には#ソまたは♭ラ、ラとシの間には#ラまたは♭シがあることになります。平均律ではこれらの間の音は等しくなります。例えば、#ドと♭レは等しくなります。 音程の数え方は結構難しいものです。音程とは2音間のへだたりのことです。まず、度数について説明します。これは音程のおおざっぱな尺度です。度数とは2音間に幹音を想定したときに、その2音が幹音何個にわたっているかを示すものです。幹音とは変化記号#、♭がついていない音符のことです。例えば、ドとファはドレミファと4個の幹音にわたっているので4度になります。同様にドーシはドレミファソラシなので7度になります。幹音を同じくする2音は同音といい、1度と数えます。ドードは1度です。度数の数え方は変化記号がついても変わりません。ドーファ、#ドーファ、ドー#ファはともに4度です。しかし、度数が同じでも、これらの音の間の実際の距離が異なっているのは明らかです。また、既に述べたように音階中で隣接する音の間隔は全音か半音になるので、起点によって、度数が同じでも実際の距離は異なってきます。1度は同じ高さの音であるので相互の関係はどの高さでも変わりませんが、ミとファ、シとドの間隔は全音ではなく半音であるため、2度と3度は、起点によって隔たりが大きいものと小さいものがでてきます。この両者を区別するため、狭い2度や3度を短2度(m2)、短3度(m3)と呼び、他のひろい2度や3度を長2度(M2)、長3度(M3)と呼びます。6度や7度についても同様にミファ、シドの二つの半音を含むものは隔たりが小さく、短6度(m6)、短7度(m7)と呼び、他のものは半音を一つしか含まないので、長6度(M6)、長7度(M7)と呼びます。1オクターブは起点がどこであっても隔たりは同じです。そこで、この音程を完全8度(P8)と呼びます。1度についても同様に完全1度(P1)と呼びます。ここで、全音間の距離を1.0、半音間の距離を0.5とおいてみます。すると次の関係が成り立ちます。下線部は半音の位置です。 距離 音程 距離 音程 ドレ 1.0 M2 ドレミ 2.0 M3 レミ 1.0 M2 レミファ 1.5 m3 ミファ 0.5 m2 ミファソ 1.5 m3 ファソ 1.0 M2 ファソラ 2.0 M3 ソラ 1.0 M2 ソラシ 2.0 M3 ラシ 1.0 M2 ラシド 1.5 m3 シド 0.5 m2 シドレ 1.5 m3 距離 音程 距離 音程 ドレミファソラ 4.5 M6 ドレミファソラシ 5.5 M7 レミファソラシ 4.5 M6 レミファソラシド 5.0 m7 ミファソラシド 4.0 m6 ミファソラシドレ 5.0 m7 ファソラシドレ 4.5 M6 ファソラシドレミ 5.5 M7 ソラシドレミ 4.5 M6 ソラシドレミファ 5.0 m7 ラシドレミファ 4.0 m6 ラシドレミファソ 5.0 m7 シドレミファソ 4.0 m6 シドレミファソラ 5.0 m7 即ち、音程と距離の関係は次のようになります。 m2=0.5(半音1個) M2=1.0(全音1個) m3=1.5(全音1個+半音1個) M3=2.0(全音2個) m6=4.0(全音3個+半音2個) M6=4.5(全音4個+半音1個) m7=5.0(全音4個+半音2個) M7=5.5(全音5個+半音1個) P1=0.0 P8=6.0(全音5個+半音2個) 次に4度と5度について調べてみます。 距離 音程 距離 音程 ドレミファ 2.5 P4 ドレミファソ 3.5 P5 レミファソ 2.5 P4 レミファソラ 3.5 P5 ミファソラ 2.5 P4 ミファソラシ 3.5 P5 ファソラシ 3.0 +4 ファソラシド 3.5 P5 ソラシド 2.5 P4 ソラシドレ 3.5 P5 ラシドレ 2.5 P4 レシドレミ 3.5 P5 シドレミ 2.5 P4 シドレミファ 3.0 -5
重減♭♭ ←-→ 減ー ←-→ 完全P(1、4,5、8) ←-→ 増+ ←-→ 重増X 重減♭♭ ←-→ 減ー ←-→ 短音程(2,3,6,7) ←-→ 長音程(2,3,6,7) ←-→ 増+ ←-→ 重増X 音程をいくつか書いておきます。
|
音程 | 性格 |
P8 | 協和 |
M3、m3、M6、m6 | 柔らかい協和 |
M2,m7 | 穏やかな不協和 |
m2、M7、m9 | 鋭い不協和 |
+4、-5 | 中立、不安定で常に隣接した協和音程に解決したがっている性格 |
|
構成音 | 音程 | コード | コード名 | 機能 |
ドミソシ | P1 M3 P5 M7 | CM7 | C Major 7th | T(トニック) |
レファラド | P1 m3 P5 m7 | Dm7 | D Minor 7th | SD(サブドミナント) |
ミソシレ | P1 m3 P5 m7 | Em7 | E Minor 7th | T(トニック) |
ファラドミ | P1 M3 P5 M7 | FM7 | F Major 7th | SD(サブドミナント) |
ソシレファ | P1 M3 P5 m7 | G7 | G Dominant 7th | D(ドミナント) |
ラドミソ | P1 m3 P5 m7 | Am7 | A Minor 7th | T(トニック) |
シレファラ | P1 m3 -5 m7 | Bm7-5 | B Minor 7th flatted 5 | D(ドミナント) |
一番下の音(根音)から上の各音への音程も同時に示しています。根音と第二音の間隔が長三度のコードはメージャーコード、短三度のコードはマイナーコードです。G7はメージャー系ですが、根音ソと第四音ファとの間隔が短七度、第二音シと第四音ファの間の音程は減五度(トライトーン)になっています。次にこれらのコードを分類します。三つの音が共通のものは同じグループに入ると考えます。CM7,Em7,Am7はトニックの機能を持ち、トニックコードになります。Dm7,FM7はサブドミナントの機能を持ち、サブドミナントコードになります。G7,Bm7-5はドミナントの機能を持ち、ドミナントコードになります。以上からコードは三つのグループ(トニック、サブドミナント、ドミナント)に分類されることがわかります。グループごとの響きの特徴を述べてみましょう。トニックは調性を代表する中心的存在であり、開始・終止に用いられることが多く、そのことによって、その性格が強調され、安定感と満足感が感じられる状態です。サブドミナントは、その調性の中で最も開放的で、優美な明るい感じを与え、女性的な性格を持った響きです。ドミナントはトライトーンを含み、不安定でトニックへの解決を暗示する響きを持っています。なお、メージャーコードは明るく、マイナーコードは悲しく暗い感じがするだろうと考えがちですが、そういうことはありません。あるコードが何調で使われているかによって、そのコードの機能は異なってきます。Dm7はマイナーコードですが、ハ長調ではサブドミナントの機能を持ち、ハ長調で使われると明るい響きに感じられます。CM7の機能はハ長調のトニック、イ短調のトニックマイナー、ト短調のサブドミナント、ロ長調のサブドミナントマイナー、ホ長調のサブドミナントマイナー、ニ長調のサブドミナント、ロ短調のサブドミナントマイナー、ト長調のサブドミナント、ホ短調のサブドミナントマイナーと多彩です。コードの機能は調という文脈によって変化します。 |
コード | コードスケール | スケール名 |
CM7 | ドレミ(ファ)ソラシド | Cイオニアン |
Dm7 | レミファソラ(シ)ドレ | Dドリアン |
Em7 | ミ(ファ)ソラシドレミ | Eフリギアン |
FM7 | ファソラシドレミファ | Fリディアン |
G7 | ソラシドレミファソ | Gミクソリディアン |
Am7 | ラシドレミ(ファ)ソラ | Aエオリアン |
Bm7-5 | シドレミファソラシ | Bロクリアン |
|