作曲入門 (荒井公康著)                                             

 音楽好きの皆さん、自分で曲を作ってみたいと思ったことはありませんか。しかし、実際に曲を作ってみようと思っても、どうしたらよいか分からない人が多いかと思います。たとえ、メロディーが心に浮かんだとしても、それを書き留めるには絶対音感がいりそうで、才能がなければできそうもありません。作曲は才能がなければできないのでしょうか。計算機に音楽情報処理をさせるという音楽関連システムの研究をしてきましたが、計算機には絶対音感も音楽の才能もないにもかかわらず、計算機に音楽の知識を埋め込めば、ある程度の作曲ができることが分かりました。計算機が作曲できるのですから、普通の人でも作曲できないはずありません。ここではジャズの理論をやさしく解説し、誰でも作曲できることを示したいと思います。

   ハ長調の音階ドレミファソラシドを知らない人はいないと思います。ドとレの間は全音、レとミの間は全音、ミとファの間は半音、ファとソの間は全音、ソとラの間は全音、ラとシの間は全音、シとドの間は半音になっています。全全半全全全半となっています。ドとレの間には#ドまたは♭レ、レとミの間には#レまたは♭ミ、ファとソの#ファまたは♭ソ、ソとラの間には#ソまたは♭ラ、ラとシの間には#ラまたは♭シがあることになります。平均律ではこれらの間の音は等しくなります。例えば、#ドと♭レは等しくなります。

   音程の数え方は結構難しいものです。音程とは2音間のへだたりのことです。まず、度数について説明します。これは音程のおおざっぱな尺度です。度数とは2音間に幹音を想定したときに、その2音が幹音何個にわたっているかを示すものです。幹音とは変化記号#、♭がついていない音符のことです。例えば、ドとファはドレミファと4個の幹音にわたっているので4度になります。同様にドーシはレミファソラなので7度になります。幹音を同じくする2音は同音といい、1度と数えます。ドードは1度です。度数の数え方は変化記号がついても変わりません。ドーファ、#ドーファ、ドー#ファはともに4度です。しかし、度数が同じでも、これらの音の間の実際の距離が異なっているのは明らかです。また、既に述べたように音階中で隣接する音の間隔は全音か半音になるので、起点によって、度数が同じでも実際の距離は異なってきます。1度は同じ高さの音であるので相互の関係はどの高さでも変わりませんが、ミとファ、シとドの間隔は全音ではなく半音であるため、2度と3度は、起点によって隔たりが大きいものと小さいものがでてきます。この両者を区別するため、狭い2度や3度を短2度(m2)、短3度(m3)と呼び、他のひろい2度や3度を長2度(M2)、長3度(M3)と呼びます。6度や7度についても同様にミファ、シドの二つの半音を含むものは隔たりが小さく、短6度(m6)、短7度(m7)と呼び、他のものは半音を一つしか含まないので、長6度(M6)、長7度(M7)と呼びます。1オクターブは起点がどこであっても隔たりは同じです。そこで、この音程を完全8度(P8)と呼びます。1度についても同様に完全1度(P1)と呼びます。ここで、全音間の距離を1.0、半音間の距離を0.5とおいてみます。すると次の関係が成り立ちます。下線部は半音の位置です。

    距離  音程                                       距離  音程
ドレ  1.0  M2                2.0  M3
レミ  1.0  M2             ファ  1.5  m3
ミファ 0.5  m2             ファ  1.5  m3
ファソ 1.0  M2             ファ  2.0  M3
ソラ  1.0  M2                2.0  M3
ラシ  1.0  M2                1.5  m3
シド  0.5  m2                1.5  m3


           距離  音程                   距離  音程
ミファ   4.5  M6       ミファソラ  5.5  M7
ミファソラ   4.5  M6       ミファソラ  5.0  m7
ファソラ   4.0  m6       ファソラシド  5.0  m7
ファソラシド   4.5  M6       ファソラシド  5.5  M7
シド    4.5  M6       シドファ  5.0  m7
シドファ   4.0  m6       シドミファ  5.0  m7
ドレミファ   4.0  m6       ミファ  5.0  m7

即ち、音程と距離の関係は次のようになります。

   m2=0.5(半音1個)           M2=1.0(全音1個)
   m3=1.5(全音1個+半音1個)    M3=2.0(全音2個)
   m6=4.0(全音3個+半音2個)    M6=4.5(全音4個+半音1個)
   m7=5.0(全音4個+半音2個)    M7=5.5(全音5個+半音1個)
   P1=0.0
   P8=6.0(全音5個+半音2個)

次に4度と5度について調べてみます。

        距離  音程                   距離  音程
ファ  2.5  P4          ミファ  3.5  P5
ミファ  2.5  P4          ミファラ  3.5  P5
ファ  2.5  P4          ファソラ  3.5  P5
ファソラ  3.0  +4         ファソラ  3.5  P5
   2.5  P4          シド   3.5  P5
シド   2.5  P4          シド   3.5  P5
   2.5  P4          ファ  3.0  −5


即ち、4度と5度の場合に、音程と距離の関係は次のようになります。

   P4=2.5(全音2個+半音1個)     P5=3.5(全音3個+半音1個)
   +4=3.0(全音3個)
   −5=3.0(全音2個+半音2個)

2、3、6、7度のグループと異なる特徴を持っています。ここで、転回という操作を行ってみます。ドレという長2度(M2)の音程をもつ二つの音のうち、低いほうのドを1オクターブ上の高いドに移すと、元のレと移ったドの音程は短7度(m7)になります。同様に長3度(M3)は短6度(m6)に、長6度(M6)は短3度(m3)に、長7度(M7)は短2度(m2)になります。短音程の場合は、短2度(m2)は長7度(M7)に、短3度(m3)は長6度(M6)に、短6度(m6)は長3度(M3)に、短7度(m7)は長2度(M2)に移ります。式で表すと次のようになります。

    M2+m7=P8  M3+m6=P8  M6+m3=P8  M7+m2=P8
    m2+M7=P8  m3+M6=P8  m6+M3=P8  m7+M2=P8

転回という操作によって、長音程は短音程に、短音程は長音程に、2度は7度に、7度は2度に、3度は6度に、6度は3度になります。では、4度と5度の場合はどうなるでしょうか。半音を一つ含む4度は5度に、5度は4度になり、度数が変わるだけで長音程が短音程になるような変化は生じません。同じことは1度と8度についても言えます。式で表すと次のようになります。

    P4+P5=P8  P1+P8=P8  (+4)+(−5)=P8

この半音を一つ含む4度、5度をそれぞれ完全4度(P4)、完全(5度)と呼びます。+4は増4度、−5は減5度と呼ばれますが、これについては後で述べます。以上から、大きく分けると1、4、5、8度の完全系の度数と2、3、6、7度の長短系の度数に分けられます。

  ドーレという長2度の音程から、レに#がついて2音間のへだたりが大きくなったときは、増2度と呼ばれます。更に半音広がると重増2度となります。長3度が更に半音ずつ音程が広くなると、増3度、重増3度などと呼ばれます。同様に長6度、長7度は半音広がるごとに、増6度、重増6度、増7度、重増7度と呼ばれます。長3度(M3)を半音ずつ狭めていくと、短3度(m3)、減3度(−3)、重減3度、となります。逆に、短3度を半音広げると長3度になります。6度、7度についても同様です。

  1度、4度、5度、8度の完全音程の場合は直接、増、重増、減、重減音程になります。

  さて、実際に音程を決定するためには次のようにします。調号又は臨時記号によって、2音のうち一方又は両方に変化記号がついている場合の音程は、まず2音とも幹音にいったん戻して、その音程を正しく知り、変化記号によってその音程がどのように変化したかを調べます。その際、その度数が完全系か長短系かを識別し、以下の図を見ながら決定します。

重減♭♭ ←−→ 減ー  ←−→  完全P(1、4,5、8) ←−→ 増+ ←−→ 重増X

重減♭♭ ←−→ 減ー  ←−→  短音程(2,3,6,7) ←−→ 長音程(2,3,6,7) ←−→ 増+ ←−→ 重増X

音程をいくつか書いておきます。

                     音程             距離
    ドード          完全1度(P1)          0.0
    ドー#ド         増1度(+1)           0.5
    ドー♭レ                 短2度(m2)           0.5
    ドーレ          長2度(M2)           1.0
    ドー#レ         増2度(+2)           1.5
    ドー♭ミ         短3度(m3)           1.5
    ドーミ           長3度(M3)           2.0
    ドー♭ファ               減4度(−4)           2.0
    ドー#ミ         増3度(+3)           2.5
    ドーファ         完全4度(P4)          2.5
    ドー#ファ        増4度(+4)           3.0
    ドー♭ソ         減5度(−5)           3.0
    ドーソ                    完全5度(P5)          3.5
    ドー#ソ         増5度(+5)           4.0
    ドー♭ラ         短6度(m6)           4.0
    ドーラ           長6度(M6)           4.5 
    ドー#ラ         増6度(+6)           5.0
    ドー♭シ         短7度(m7)           5.0
    ドーシ           長7度(M7)           5.5 
    ドー#シ         増7度(+7)           6.0
    ドード           完全8度(P8)          6.0

距離が同じでも音程名が異なることに注意して下さい。ドー#ドが増1度、ドー♭レが短2度になっているのは、前者が完全1度ドードを、後者が長2度ドーレを基準にし、そこからのずれを考えているからです。他の例も同様に考えてみて下さい。今までは単音程、即ち完全8度(1オクターブ)までの音程を考えてきましたが、複音程、即ち完全8度を超える音程もあります。例えば、

    9度  = 1オクターブ+2度
    11度 = 1オクターブ+4度
    13度 = 1オクターブ+6度

となります。以上で、音程の数え方の説明を終えます。



  人間の耳には二つの音が同時に響いた場合、協和に聞こえる音と不協和に聞こえる音があり、それを分類すると次のようになります。

音程 性格
P8 協和
M3、m3、M6、m6 柔らかい協和
M2,m7 穏やかな不協和
m2、M7、m9 鋭い不協和
+4、−5 中立、不安定で常に隣接した協和音程に解決したがっている性格


増4度(+4)または減5度(−5)はトライトーン(三全音)といい、自然なコード進行を作る上で重要な概念になります。
  次にコードについて説明します。一本の弦をはじいた時には、一番低い根音のほかに、倍音が同時に響いており、その響きの大きさは低次の倍音ほど大きく、高次の倍音ほど小さくなります。和音とは、根音を含めた低次倍音を根音と同じ強さで同時に響かせたものに他ならないとされますが、これはよく知られたドミソという和音にしか成り立たず、ド♭ミソなどの和音に対しては成り立ちません。音をいろいろ混ぜた時に、響きにはいろいろなニュアンスが生まれます。ここではそれを和音と呼ぶことにしておきましょう。現在では一般に3度の間隔で音を3つまたは4つ重ねたものをコードと呼んでいます。長調音階と短調音階をダイアトニックスケールと呼びます。ダイアトニックスケールの上に、そのスケールの音を3度音程で積み重ねたコードのことをダイアトニックコードと言います。ジャズの場合は4声のダイアトニックコードを基準に考えます。ハ長調の音階ドレミファソラシドの音階上に音を3度間隔で重ねてみましょう。次の表を見て下さい。

構成音 音程 コード コード名 機能
ドミソシ P1 M3 P5 M7 CM7 C Major 7th T(トニック)
レファラド P1 m3 P5 m7 Dm7 D Minor 7th SD(サブドミナント)
ミソシレ P1 m3 P5 m7 Em7 E Minor 7th T(トニック)
ファラドミ P1 M3 P5 M7 FM7 F Major 7th SD(サブドミナント)
ソシレファ P1 M3 P5 m7 G7 G Dominant 7th D(ドミナント)
ラドミソ P1 m3 P5 m7 Am7 A Minor 7th T(トニック)
シレファラ P1 m3 -5 m7 Bm7-5 B Minor 7th flatted 5 D(ドミナント)

一番下の音(根音)から上の各音への音程も同時に示しています。根音と第二音の間隔が長三度のコードはメージャーコード、短三度のコードはマイナーコードです。G7はメージャー系ですが、根音ソと第四音ファとの間隔が短七度、第二音シと第四音ファの間の音程は減五度(トライトーン)になっています。次にこれらのコードを分類します。三つの音が共通のものは同じグループに入ると考えます。CM7,Em7,Am7はトニックの機能を持ち、トニックコードになります。Dm7,FM7はサブドミナントの機能を持ち、サブドミナントコードになります。G7,Bm7-5はドミナントの機能を持ち、ドミナントコードになります。以上からコードは三つのグループ(トニック、サブドミナント、ドミナント)に分類されることがわかります。グループごとの響きの特徴を述べてみましょう。トニックは調性を代表する中心的存在であり、開始・終止に用いられることが多く、そのことによって、その性格が強調され、安定感と満足感が感じられる状態です。サブドミナントは、その調性の中で最も開放的で、優美な明るい感じを与え、女性的な性格を持った響きです。ドミナントはトライトーンを含み、不安定でトニックへの解決を暗示する響きを持っています。なお、メージャーコードは明るく、マイナーコードは悲しく暗い感じがするだろうと考えがちですが、そういうことはありません。あるコードが何調で使われているかによって、そのコードの機能は異なってきます。Dm7はマイナーコードですが、ハ長調ではサブドミナントの機能を持ち、ハ長調で使われると明るい響きに感じられます。CM7の機能はハ長調のトニック、イ短調のトニックマイナー、ト短調のサブドミナント、ロ長調のサブドミナントマイナー、ホ長調のサブドミナントマイナー、ニ長調のサブドミナント、ロ短調のサブドミナントマイナー、ト長調のサブドミナント、ホ短調のサブドミナントマイナーと多彩です。コードの機能は調という文脈によって変化します。
  次にコードのつながりについて考えてみましょう。ケーデンス(カデンツ)とは不安定なコード(ドミナント、サブドミナント)が、安定したコード(トニック)に解決することです。ほとんどの曲はケーデンスを連結することによって成り立っています。ケーデンスの種類には三種類ありますが、ここでは便宜上二つのケーデンスを取り上げます。

(1)ドミナント・ケーデンス D−T
  ドミナントの機能を持つコードからトニックの機能を持つコードへ進行するケーデンスで、最も基本的で強い解決感のあるケーデンスです。これはトライトーン(減五度、増四度)が協和音程に解決するためです。

          D       T
          V7      IM7
          G7      CM7
        ソファ   ドミソシ

G7のシファのトライトーンがCM7のドミ(M3)の協和音程に解決します。この時に、G7の根音ソとCM7の根音ドとの音程が完全四度になっていることを覚えておきましょう。

          D       T
        VIIm7-5     IM7
        Bm7-5     CM7
       ファラ    ドミソシ
この場合もトライトーンがM3の協和音程に解決しています。

(2)サブドミナント・ケーデンス SD−T
  サブドミナントの機能を持つコードから、トニックの機能を持つコードへ進行するケーデンスです。

          SD      T              SD     T
          IVM7     IM7             IIm7     IM7
          FM7     CM7            Dm7     CM7
        ファラドミ   ドソシ          レファラド  ドソシ

トライトーンがないので解決感は弱いのですが、ファの音がミの音に進行するので、ある程度の解決感が得られます。この解決は賛美歌などに使われるので、アーメン終止とも言われています。

(3)SD−D−T
  サブドミナント、ドミナント、トニックと進むケーデンスです。

      T   SD   D   T           T   SD   D   T
      IM7  IVM7 V7  IM7          IM7  IIm7  V7   IM7
      CM7 FM7  G7  CM7         CM7  Dm7  G7   CM7

(4)D−SD−T(逆進行)
  ドミナント、サブドミナント、トニックと進むケーデンスですが、ドミナントの解決が一時的に保留されるので特殊な形になりあまり使われません。

このほかにサブドミナント・マイナーというのもありますが、ここでは述べません。
以上のケーデンスをまとめると次のようになります。
 1.D−T
 2.SD−T
 3.SD−D−T
 4.D−SD−T(逆進行)
更に一般化してしまうと、下記のような状態遷移図にまとめられます。

   T ⇔ SD → D ⇔ T

この図から、逆に次のようなケーデンスを無限に作り出すことができます。
   
   T−SD−T−SD−D−T−T−D−T−SD・・・・・・・・・・・・

このように、トニック、サブドミナント、ドミナント、(サブドミナント・マイナー)の間を遷移することによって、音楽的鳴り響きが生まれます。
  ドミナント・ケーデンスのところで述べたことから判るのですが、ドミナントコードのトライトーンは根音が完全四度(P4)上のコードの協和音程に解決するので、トライトーンの解決を繰り返していくと、結局次ぎのようなことが成り立ちます。

  C7−F7−♭B7−♭E7−♭A7−♭D7−♭G7(#F7)−B7−E7−A7−D7−G7−C7

この順番でコードを鳴らすと自然な感じがします。ギターでは弦が下からミ、ラ、レ、ソの順番で張られるので、ギターを弾く人にとっては覚え易いのですが、そうでない人にとっては、なかなか覚えにくいかもしれません。しかし、これを覚えておくと、音楽の理論が非常に判り易くなるので、是非徹底して覚えておくといいと思います。なお、これはP4進行と呼ばれます。同時にドミナントコードは根音が半音下のコードにも解決します。

        G7      ♭G
      レファ   ♭ソ♭シ♭レ

これから半音進行が得られます。

半音進行(下行)

  C7−B7−♭B7−A7−♭A−G7−♭G7−F7−E7−♭E−D7−♭D7−C7

P4進行と半音進行はしっかり記憶しましょう。

  さて、だいぶ前置きが長くなりましたが、いよいよ簡単な曲を作っていきましょう。まずケーデンスを決定し、コードを当てはめ、コード構成音だけでメロディーを作ってみます。

      T         T         T
  (CM7 ドミソ) (CM7 ドミソ) (CM7 ド)

リズムを適当につけてピアノかなにかで弾いてみて下さい。トニックだけなので少し単調ですね。サブドミナントをいれてみましょう。

      T         SD        T
  (CM7 ドミド) (Dm7 レファレ) (CM7 ド)

少し変化したでしょう。ドミナントをいれてみましょう。

      T         SD         D        T
  (CM7 ドミド) (Dm7 レファレ) (G7 シレシ) (CM7 ド)
だいぶ曲らしくなりました。もっと長いものを作ってみましょう。

      T          SD         T         SD         D        T
  (CM7 ドミド) (Dm7 レファレ) (CM7 ドミド) (Dm7 レファレ) (G7 シレシ) (CM7 ド)

このようにどんどん長くしていくことができます。Dm7にドミナントモーションするコードA7を導入してみましょう。A7のようなコードをセカンダリー・ドミナントといいます。

      T       SecD       SD         D        T
  (CM7 ドミド) (A7 ミソミ) (Dm7 レファラ) (G7 シレシ) (CM7 ド)

これは循環コードとしてよく知られているものです。もう少し長いものを作ってみます。

      T      SecD      SD        D        T       SecD        SD
  (CM7 ミソシ) (A7 ラ) (Dm7 ファラド) (G7 シ) (CM7 ミソシ) (A7 ラソラ) (Dm7 レファラ)
      D        T
  (G7 ソファソ) (CM7 ミ)

三拍子で弾いて見て下さい。なかなかしゃれているでしょう。循環コードを使うと、いくらでも長いものができます。

  コードの構成音だけでもよいのですが、非コード音を使うことによりさらにいろいろなメロディーができます。では、コード構成音と修飾音でメロディーを構成する方法を述べます。修飾音はメロディーに現れる非コード音とします。その種類は次の通りです。前から一つの音を修飾するイ音とアプローチノート、後ろから一つの音を修飾する逸音、異なる二つの音をつなぐ経過音、同じ高さの二つの音をつなぐ補助音と刺繍音、二つのコード間に一つのコードの構成音がまたがる掛留音、先行音などがあります。例を挙げます。

   (CM7 ミミ)            補助音
   (CM7 ミファレミ)          刺繍音
   (CM7 ♭ミファミ)        イ音、アプローチノート
   (CM7 ドミ)            経過音
   (G7 シレ)(CM7 ソシ)   逸音
   (CM7 )(G7 ファ)      掛留音
   (CM7 ミソ#ド)(A7 #ドミ)  先行音

それではメロディーを作っていきましょう。まず経過音を使ってみましょう。

       T         SD         T
   (CM7 ミド) (Dm7 ファレ) (CM7 ド)

       T         SD          D        T
   (CM7 ミド) (Dm7 ファレ) (G7 レシ) (CM7 ド)

       T         SecD        SD         D        T
   (CM7 ミド) (A7 ソファミ) (Dm7 ファレ) (G7 レシ) (CM7 ド)

次にイ音またはアプローチノートを使ってみましょう。

   (CM7 シドミソ) (A7 ラソラ) (Dm7 ファ) (G7 シファソ) (CM7 ミ)

次に刺繍音を使ってみましょう。

   (CM7 ドレシド) (A7 ミファレミ) (Dm7 ファファ) (G7 ソラファソ) (CM7 ミ)

これらを組み合わせてみましょう。

   (CM7 ミドシ) (A7 ミファレミ) (Dm7 ファレ) (G7 シラドシ) (CM7 ド)
      経過音        刺繍音     アプローチノート     刺繍音

単純な例ばかりでしたが、いろいろ工夫すれば、もっと多様なメロディーを作ることができると思います。

  次に少し高級になるのですが、あるコードに対してどのような音が使用可能なのか考えてみます。ハ長調においてDm7に対して経過音をいれていくと次のようになります。

    レファラ(シ)ド

太字のミとソはテンション・ノートと呼ばれます。ここでは、Dm7にシの音を入れるとトライトーンができて、コードの機能が変わってしまうので、テンション・ノートではありませんが、使用は可能です。テンション・ノートはコードと同時に使用しても不自然でないばかりか、ジャズ的な響きが生まれる要素になります。上のスケールはDドリアンといいます。ハ長調の他のコードに対しても同様のことが成り立ちます。

コード コードスケール スケール名
CM7 ミ(ファ)ソシド Cイオニアン
Dm7 ファラ(シ)ドレ Dドリアン
Em7 ミ(ファ)ソレミ Eフリギアン
FM7 ファミファ Fリディアン
G7 シドレファソ Gミクソリディアン
Am7 ミ(ファ)ソラ Aエオリアン
Bm7−5 シドレファラシ Bロクリアン


太字の音がテンションノートです。括弧内はアヴォイドノートでコードの機能を阻害する音です。一般にはコード構成音の半音上の音がアヴォイドノートです。これは、1オクターブ上では、短9度の不協和な響きができるためです。但し、ドミナントコードなどのトライトーンを持つコードでは、短9度ができても構わないことになっています。こうして得られるコードスケールは中世の教会旋法に一致します。ニ長調について同様のことを行うと、Em7の機能はサブドミナント、対応するコードスケールはEドリアンとなります。ハ長調との違いに注意して下さい。

  ドミナント7thコードは、トライトーンを含み、不安定なコードであるためこの他にもいろいろな旋法(スケール)が使えます。詳細な説明は省きますが、次のメロディーの作成例で感じをつかんで下さい。ionはイオニアン、dorはドリアン、Hmp5↓、altもドミナント7thコードに使われる特殊なコードスケールの名前です。

コード進行
     T       SecD        SD      D      T
  (CM7 ion) (A7 Hmp5↓) (Dm7 dor) (G7 alt) (CM7 ion)

                スケール
  (CM7 ion)     ドレミファソラシド
  (A7 Hmp5↓)   ラ♭シ#ドレミファソラ
  (Dm7 dor)     レミファソラシドレ
  (G7 alt)      ソ♭ラ♭シシ♭レ♭ミファソ
  (CM7 ion)    ドレミファソラシド

次に簡単なメロディーを作ってみます。

  (CM7 ミファシラ) (A7 ♭シソファミ) (Dm7 ソファレミ) (G7 ♭シ♭ラソファ) (CM7 ミ)

  (CM7 シレシ) (A7 ♭シ#ド♭シ) (Dm7 ラドラ) (G7 ♭ラシ♭ラ)
  (CM7 シレシ) (A7 ♭シ#ド♭シ) (Dm7 ラドラ) (G7 ♭ラシ♭ラ) (CM7 ラ)

ジャズには聴くとすぐにそれと判る独特の響きがあります。これは、テンション・ノートを含む和音が使われるためです。コードがCM7でもドミソシと弾くとは限りません。ミ(ソ)ラレと押さえたりします。太字のところがテンション・ノートです。また、根音を省略をすることが多いために一見何のコードか判りません。ジャズの楽譜のコードの記号を見たことがあるかもしれませんが、数字が添えて書かれていることがあります。7より大きい数字はテンション・ノートを示しており、根音からの音程を表しています。

  ここで重要なことを述べておきましょう。コードの三度と七度の音をガイドトーンと言います。このガイドトーンとテンションノートは旋律の重要な要素で、これらの音をランダムに並べるだけでメロディーができてしまいます。この上にいろいろ工夫して私の自動作曲システムが作られています。参考にして下さい。



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各調の機能とコード(和音) 音楽関連システム  コードスケールの構成音と性格

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