ようこそ。 いらっしゃいませ♪
こちらは、リンダ・ハワード 「天使のせせらぎ」 ネタバレOKのお部屋です。



前回の予告から、1年近く過ぎてしまいました。誠に申し訳ありません。 
どうしてこんなに筆が進まなかったのかというと、
うーんやっぱり、私はこの作品に100%の納得がいかないからなのかなぁ。


嫌い、ということはないのですけど、リンダの作品にしてはヒーローの魅力が
立体的でないような気がするんです。
たとえば 「石の都に眠れ」 のベンも、一見単純タイプではありますけど、
彼はああ見えて結構繊細だし、少なくとも強引ではなかったですね。



文中にも 「ルーカスは無情で強引な男だった。」 と描かれるように、
野心のために、銀行家の娘に求婚しようとしていたルーカスの魅力って、
外見を除けば、大牧場主としての経営手腕が主だったんじゃないでしょうか。


でも、考え方を変えれば、そういう彼がディーと出会うことで眠っていた情熱を
呼び覚まされ、愛情の本質をいささか乱暴なやり方で学ぶ物語であるとも
いえるわけですね。
そういう意味では、ディーの挑むような瞳にきらめく知性と我慢強い愛情、
すべてを焼き尽くす炎のような激しさは、彼の師としては
ピッタリかもしれません。



というわけでこのカップル、私にはどうしても猛獣をてなづける
調教師みたいな感じが抜けきれず、ベッドシーンも即物的な印象に
終始してしまいました。



中でも避妊用のスポンジを事後に取り出してみせるなんて、
現代なら、フェミニズム団体から訴えられそうなエピソードですね〜☆

ディーのセリフ
「あなたが、雌牛に突進する雄牛みたいに襲いかかってこなければね」


って、ホントに読者の私も言ってやりたいわ彼に(笑)。




さて土地と愛情問題で、最後までジェットコースターのような展開を
迎える二人とは対照的なのが、オリビアとルイス・フロンテラス。


それなりに時間をかけ、じっくり作り上げていく二人の愛情は、
優しさと穏やかな誠実さに満ちています。
ルイス・フロンテラスの若き日の恋は、別の作品(レディ・ビクトリア)で
読むことができますが、女性というものを常に崇拝し、大切に思いやる
彼の魅力は、激しさを増すディーとルーカスの駆け引き合戦の中では
一服の清涼剤のよう。


大事なひとり娘を心から愛する両親と、その心情を察するルイス。


愛情はなにかを奪うのではなく、必ずいつかは与えるところに還ってくる。
二人のその後のエピソードには、ほっと暖かい気持ちにさせられますね。




そして酒場の女・ティリーと、元は流れ者の牧場主、カイル・ベラミーも
不思議なカップル。
でも、二人だけにわかる愛情と絆が終盤ではっきりしてくるのは、 
単純に 「善人」 か 「悪人」 なんて割り切れることのできない人間らしさが
伝わって良かったと思います。


特にリンダは、このティリーという登場人物にはそれなりの愛情を
注いでいたんじゃないのかなあ。


あだっぽさと色気が売りものの酒場の女という外見とは別に、
生来の育ちの良さを感じさせる、洗練された好みや知性を発揮するティリー。


さげすまれる商売ではあっても、決して心の中まで堕落していない証拠に
いざというときの頼れる言動、ディーに援助を申し出る潔さで
彼女の品位を保ってくれたリンダの描写は、ホントに大好きでした。




こうして考えてみるとこの作品って、3つの違う宝石がついた
アンティーク・ジュエリーみたいだと思いませんか?


瞳や髪の色で当てはめるなら
エメラルド (ディー)、サファイア (オリビア)、ルビー (ティリー)
それぞれの輝きが愛する男性の心をとらえて永遠に離さない、という感じかな。


男女6人の組合せが変われば、絶対にうまくいかないわけで
100%納得がいかないと言いながらも、振り返ってみれば
細やかに人物を描き分けるリンダの才能を、つくづく感じる作品ではありました。





それにしても山に作られた堰を、男顔負けの行動力でディーとティリーが
爆破する場面は痛快でした。


だって同時に、天下一の石頭くんを吹きとばしてくれたんですものね〜(笑)。







さて、次回は現代を舞台にした作品、しかもリンダお得意の“警官もの”を
取り上げたいと思います。


連続殺人がからむサスペンスですが、ハーレクインのヒロインならありえない、
とびきり活きのいい悪態で、ヒーローとの舌戦が愉快な快作。


「Mr.パーフェクト」 をご紹介します♪







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