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こちらは、リンダ・ハワード「夢の中の騎士」ネタバレOKのお部屋です。


この作品は、これまで紹介してきた2作品とは、根本的に違うところが
あります。
それはまず、時空を越えるタイムトラベル話であること。

こういう設定が苦手な方は、ちょっと受け入れにくいかもしれませんね。
正直言って、私もSFチックなもの(異星人やバンパイアとのラブロマンス)というのはあまり得意ではありませんし。


ただ、この作品に関しては荒唐無稽にならない程度に抑えられているし、
なによりヒーローであるナイルの人物像がとてもよく描かれていると
思います。


騎士団が命がけで守ってきた秘宝を守護する役目を背負いながらも、
自分の運命を皮肉な気持ちでみている冷静な男。

ごく普通の人生の喜びを放棄して、ひとり誓願に縛りつけられていることが、ナイルという男の影の部分を作っています。


その彼の元に遣わされるのが、現代女性のグレース・セントジョン。


しかし、この名前のなんと皮肉なことでしょう。 


ナイルも文中で「グレースという名を口にするのはためらわれる」と語る
その意味は、「セントジョン=聖ヨハネ」 の 「グレース=恩寵」。


ナイルが初めて、夢の中でグレースの顔を見たときの描写が好きです。


「なにか使命でも帯びているような、厳粛で超然とした」「天使のような」その顔を見てナイルの体に寒気が走った。


たんなる美しさではなく、宗教的な啓示にも似た衝撃。
天使のようなその顔に宿るのは悪魔の心なのか?
夢にあらわれる魔女に、心を乱されるナイル。



ところで聖ヨハネといえば当然思い出すのは、「聖ヨハネ騎士団」。
ナイルが属するテンプル騎士団とともに、最古の騎士団のひとつとして有名ですが、この聖ヨハネはイエス・キリストの弟子ではなく、バプテスマのヨハネの方ですね。


余談ですけど、薬草のセントジョンワート(訳すると聖ヨハネの草・日本名はセイヨウオトギリソウ)の名前の元でもあります。


なんでも、この草を枕の下に入れて寝ると、聖ヨハネの夢をみるという言い伝えもあるそうで、ヒロインにこの名前を授けたリンダの気持ちがなんとなく感じられる話ではあります。



で、この作品のもうひとつの特徴が、二人の出会いが夢であること。
最初はあいまいだった夢が、徐々に現実を超えるような厚みをもって
二人に迫り、ついにタイムスリップの方法をナイルが
授けるという流れが自然で、なかなか良かったと思います。



そして、お待ちかねのラブシーン(笑)
場所は財宝の隠し場所に続く、石造りの真っ暗な通路。
守護者ナイルに追いかけられたグレースが、死を覚悟してから
始まるセクシュアルな行為が生々しい〜。


これが終わったら、愛する男に殺されるんだと思いながら
すべてを捧げるグレースと、
ナイルの無言の怒りが体の熱となって発散される様子が
文章の中にあふれています。


は〜もうここだけで、ちょっと呼吸困難(笑)



しかし、考えてみれば14世紀の人物と恋愛するってことは、
日本でいうと室町時代、鎌倉時代の武将とつきあう感じでしょうか。
生活様式はもちろん言葉づかいとか、かなり違っているはず。

訳者さんもそこらあたり、なかなか苦労なさったみたいですね。


グレースが子供を身ごもったことを伝えた時のナイルの言葉


     「やや子か?!」 には大爆笑☆


あはは、いきなりNHK大河ドラマになっちゃいました〜☆





さて、次回ですが、ヒーローの人気投票をすれば彼は
かなりイイ線行くのではないでしょうか?
なんたって、ヒロインのことが大好きで大好きで、単細胞な熱いヤツ(笑)
もちろん私も大好きですわ。

「石の都に眠れ」をご紹介します♪






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