ようこそ、いらっしゃいませ。
ここは、リンダ・ハワード 「ダンカンの花嫁」 ネタバレOKのお部屋です。



リンダの作品は愛情深くて賢く、しかも辛抱強いヒロインが多いですが
この 「ダンカンの花嫁」 は、ヒロインの魅力が作品を
終始引っぱっている代表作品のひとつではないでしょうか。


個人的には、「一見大したとりえもない女の子」 が王子様に見そめられて・・
という印象のストーリーよりも、それなりに努力して魅力もある大人の女性が
ヒーローをメロメロにしつつ、さらに花開いていくような物語が好みなので、
その点でマデリンは読んでて楽しいヒロインでした。




好きな場面は色々ありますが、
まずはマデリンがリースの家にやってきた夜、
前庭でブランコに揺られていると、リースもポーチに出てくる描写です。


晩春の夜に聞こえるブランコの規則的なきしみ。
網戸の開閉する音。 
ライターの火が一瞬きらめき、たばこの端に火をつける音がすると
支柱に肩をもたれさせて立つ大きな黒い影が見えてくる・・。


まるで映画の一場面のようで、独特の雰囲気がありましたっけ。



で、実はこの本で一番お気に入りなのが、前半の食事シーン。
結婚生活第1日目、マデリンが不慣れなキッチンに立ちながらも
くるくると頭を働かせながら、タイミング良くパンケーキやベーコン、
飲物を用意するあたりですね。


夕食に手早くビスケットを焼いたり、機転をきかせてチョコレートケーキと
桃の缶詰でデザートを用意するところなんて、まあ何度読み返したことか(笑)。


自分でもどうしてこの場面にこんなに惹きつけられるのか
よくわかりません。
でもたぶん、マデリンの柔軟性とか適応力がよくわかるというか、
料理や掃除に限らず、自分がやるべきことに
前向きかつ独創的に取り組む女性だと思えたから。
それに、他のロマンス小説ではあまり見かけない爽快感があるからかな。


しかしこれほど有能な女性だからこそ、リースの石頭ぶりが
頭にくるってのもあるよね(笑)。
なにしろ、せっかく結婚生活を始めた2人なのに、当初はどうしても
内面的な結びつきが深くなりません。
それもそのはず、前の結婚に懲りているリースが妻に心を奪われないように
努力してるからってんですからホントにもう☆



そんな状況下でリースの抑圧された情熱を解放してみたい、マデリンの願いが
叶えられるのが、牧草地に停めたトラックの荷台でのラブシーン。


日差しは暑いし荷台は固いし、リースはブーツを履いたままだし(笑)
ホットで濃密なシーンではありますが、この2人は
これに限らず、ケンカした直後にベッドシーンに移ることが
多いんですよね〜。 


読者の私としては、どうも2人の感情変化についていけないというか
ラブシーンがエネルギー発散場になっちゃったような気もしました。


なので、ラブシーンそのものではなく、
リースのそばを通る時に、マデリンが彼の腕や胸に触れたり
髪をくしゃくしゃにしたり、耳をひっぱったり、顎にすばやくキスをしたりと
「必ずどこかに触れていった」 というくだりの方が、
さりげなくてリアルな愛情表現があって良かったです。



それから、特筆すべきはマデリンが勤める店の女主人(?)、フローリスの
強烈なキャラクターでしょうか。
マデリンがつけた 「地獄のウエイトレス」 というニックネームに
リースが涙をこぼして笑い転げるというシーンがありますが
後半マデリンを助けて “ばか亭主” にお灸をすえるのを手伝う彼女は
リースにとってまさに、地獄からの使者(笑)。


でも、毒舌家でその実、ハートがあったかそうなフローリスは
なかなか魅力的な脇役ではありました。



後半はマデリンが家を離れた真意がわからず、悶々とするリースですが
大きく気持ちが転換していくのは、前妻エイプリルの訃報にふれてから。


ずっと悪妻だと責めていたけれど、エイプリルの真情を知ることによって
自分だけの視点に凝り固まっていたことに気づくリース。
前妻からすれば、リース自身も決して良い夫ではなかったのですね。


唐突にマデリンへの愛に目覚めるのではなく、こういう風に
心情の変化をもたらす展開のうまさは、さすがリンダだと感心してしまいます。



それにしても、マデリンはホントによく頑張りましたね〜。
「天使のせせらぎ」 の石頭ルーカス君ほどではないにしろ
偏屈な先入観のために、大事なものが見えなくなっている
リースを愛し育ててくれた彼女には、感謝状を贈りたいくらいだわホント(笑)。









さて次回は、ふたたび時代を遡ってウエスタン三部作から。


19世紀のアメリカを舞台に、若いけれど優秀な女医と、
逃亡中のアウトローが旅の中で愛を深める
「ふたりだけの荒野」 をピックアップしたいと思います。


現代とは違う風俗描写もさることながら、不思議な能力を持つヒロインは
リンダ本に時おり登場するドラマティックな設定で、なかなか楽しめますよ♪







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