役柄の見所&キャスト別感想 オペラ座の怪人編

クリスティーヌ・ダーエ

・村田恵理子さん


福岡公演では初日、千秋楽とも村田クリスでした。
登場回数も一番多くて、メインクリスともいえる女優さんですね。


私は2003年8月に初めて出会ったのが村田さんのクリスだったので、どうしても
クリスのイメージはこの方から出発してしまいます。透明感のあるソプラノが綺麗で、
さすがファントムに見こまれる歌姫の感じ。
ファントムのマスクをはがそうとする時の、いたずらっ子みたいな表情も可愛い。
村ファントムとの相性は良さそうですが、なんとなく高井ファントムとの組合せのときは
表情が冷たく見えるような気がするのは私だけでしょうか。


余談ですけど「キャッツ」観にいったとき、村ガスと村田グリドル、寄り添って
仲良くしているところが、どうしても年老いたファントムとクリスみたいに見えて泣けました。
(追記・・残念ながら、2004年3月の福岡公演を最後に退団されました。)




・五東由衣さん


こちらもベテランの域に入ったクリスティーヌでしょうか。村田さんよりは若干歌声が
低いのですが、おしゃべりの地声はちょっと舌足らずで愛らしい方ですね。


最初に拝見したときは、背が高いしクリスにしてはお姉さんすぎるかなと思いましたが、
回を重ねるうちに情感が細やかで良いなあと思うようになりました。
村田さんと反対に、この方は高井ファントムとの相性が良いような気がします。
というより高井さんのほうが、五東クリス相手だとノリが良くなる(笑)


ちょっと泣き顔メイクなんですけど目の表情が豊かで、特にラストの地下の
シーンでは「母にも嫌いぬかれて」と語るファントムに背を向けてはいますが、
いまにも涙がこぼれそう。
ファントムへのキスも慈愛に満ちた印象です。
指が細くて綺麗なので、キスの時にファントムの顔に添える手がほっそりして絵になる。
見るたびに好きになったクリスでした。
こちらも、福岡公演を最後にほとんどクリスでの登場がなくて残念。。




・沼尾みゆきさん


福岡公演は最初の頃、とにかくクリスのキャスト交代が激しくて、1ヶ月でクリスは
4人登場しました。 沼尾さんも最初の頃だけの登場・・かと思ったら2004年2月にも
クリス役で再登板されました。


歌声はなかなか良いけど、演技とか表情がきつくて、気が強そうなじゃじゃ馬クリス。
ファントムを「マンハッタンの怪人」に転向させるのはこのクリスでしょうか(笑)。
ご本人がまだお若いからなのでしょうか、ちょっと情感に乏しい印象なのが残念。
クリスという役柄ではなく、もっときっぱりした元気のよい女の子の役なら良さを
発揮できるのかもしれません。


足音がばたばたするのも評判悪かったなあ。特にラスト、指輪を返して去るときに
ドタドタ子供みたいな走り方をするのはやめて〜って感じでした。
相性としては内海ラウルが一番良かったかも。つまりファントムのことは
あまり好きじゃないクリスだったんですね☆


追記・・・これはあくまで福岡公演での印象です。 その後東京公演で再会した
時には、ファントムにも優しくなってて母は嬉しかったよ(笑)。
沼尾さんはその後 「李香蘭」 や 「ウィキッド」 主役に抜擢され、今や
ベテランクリス女優さんとしての風格も備わってこられたようです。




・大前さおりさん


この方も福岡公演では2003年9月の初め、1週間くらいの登板だったでしょうか。
アンサンブルとしてはかなり長くオペラ座の舞台に立っていらっしゃいましたので、
顔はよくわかるんですけど、クリスとしては、ごめんなさい、声がなかなか綺麗だった
という以外、あまり印象に残っていません。


私が見たのは9月7日の一回だけですが、とにかくこの日、高井ファントムの
アンマスクシーンでの怒りっぷりがとにかく凄まじくて、心底たまげてたもんで☆
彼の逆鱗にふれるようなことが何かあったのか?ということだけです、覚えてるのは。


アンサンブルの中ではフィルマン夫人としてボックス席で、立ち上がったラウルを
ちょっと横目で見てる表情が好きでした。
もう一度、クリスでお会いしてみたい女優さんです。
(大前さんも残念ながら、時期は不明ですが退団されたようです)



 
↓ここからは大阪公演中に追加しました



・佐渡寧子さん


2005年1月、東京公演の開幕と同時にデビューした新クリスティーヌ。
四季入団前には東宝「レ・ミゼラブル」でコゼット役の経験もあるという実力派で、
「異国の丘」、「アイーダ」でも重要な役を演じていらっしゃいます。
すらりとしてメイクも映える美人クリスですが、初対面の印象はちょっと強気のお姉さん?
歌の時に凄く気合いが入ってしまうので、なんとなくラウルもファントムも置いてきぼりに
なっちゃう印象がありました。


夢見がちな少女というよりは、世間知らずのまま育って頑なさを残した女性という
感じでしょうか。 石丸ラウルや佐野ラウルのように女性慣れした子爵さまとの
組合せは良かったけど、内海ラウルや鈴木ラウルのような若手子爵さまになると
気の強さが立ってちょっとラウルくんの手にはあまる感じかな。


その後、東京公演後半で拝見したときは、儚さも出てきて
とても良かったのですが、開幕した当初の佐渡クリス、
高井ファントムとの距離感ときたらセーヌの岸辺のごとくでしたね〜☆ 

音楽の天使への思慕というよりは、ラウルのために犠牲的精神を発揮したような
勢いのついたキスで、ファントムが一歩後ずさったのを見たのは初めてです(笑)。


でも、なんだかんだ言って個人的には佐渡クリス好きなので、また見たいなあ。




・坂本泰子さん


東京公演2005年6月にクリスデビューしたものの、残念ながらその後しばらくして
退団されたようなので、クリスティーヌとしてはたぶん20公演ぐらいの出演数に
終わったのではないでしょうか。
以前は 「キャッツ」 でグリザベラ役も演じていらしたそうです。 


坂本さんもどちらかといえば、少女というより佐渡さんや五東さん同様
お姉さん系クリス。 すらっとして目元の涼やかな坂本さん、演技の
しっとり具合が五東さんと似てるせいか高井ファントムのノリも良かったような(笑)。


年齢的にはもう少し早くクリスに挑戦させてあげたかった気もしますが、
何とも言えない清潔感と細やかな情感、それに安定した歌声が
魅力のクリスだったと思います。 
観劇したとき、休憩時間に近くのお客様が坂本クリスを評して
「愛を初めて知った若奥様って感じだねー」 と仰ってたのが印象的でした。




・高木美果さん


東京公演2005年7月14日、劇団創立記念日にデビューを果たした、
クリスのキャストとしては初の韓国人女優さん。
私はたまたまこのデビュー公演を観たのですが、
佐野さんがすごーく丁寧にご指導なさったんじゃないのかな。
屋上でキスした後、マイクに入らない声で 「おいで」 って呼ばれ
嬉しそうに佐野ラウルに抱きついてクルクルしていた笑顔が忘れられません。


この頃、20代半ばのクリス女優さんは久しぶりだったのではないでしょうか、
お肌が綺麗で、可憐なビジュアルはなかなかのもの。
あまり笑わないせいか薄幸なクリスティーヌ像が感じられました。


高木さんデビュー日のファントムは村さんで、この組合せは
とっても良かったと思います。 (詳細はよかったら観劇日記をご覧下さいまし)
クリスを大事に守り愛おしみながら、運命に踏みにじられる悲哀が
村ファントムの持ち味ですが、高木クリスだとそれがいっそう明確になるような。


もろもろの出来事で神経衰弱気味のクリスが、佐野ラウルの放つ光に
引き寄せられていくのも、さもありなんという感じでしたし
高木さんは原作イメージに近いクリスなのかもしれません。


2006年2月のクリス登板後、高木さんは劇団四季を離れ、残念だなあと
思っていましたが、その後 「ジーザス」 マリア役等を経て、2008年7月の
大阪公演でクリスティーヌ役に復帰されています。 









       
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ファントムにもラウル子爵にも愛されるヒロイン。
最愛の亡き父が生前、天から「音楽の天使」を遣わすと約束したこと。彼女がそれを
忘れられないでいるというエピソードが、この物語の始まりを支えています。
歌の才能はあっても、それを伸ばす術を持たなかった孤独な歌姫。
ファントムの導きで才能を開花させ、現プリマ・ドンナをしのぐほど歌えるように
なったという設定なので、まず何よりも歌唱力が問われる役ですね。
全体を通してソロが多く、演技的にも単なるカワイイ女の子ではない心情的な表現が
必要とされる難しい役柄だと思います。特に後半からラストにかけて、ファントムとラウルの
間で揺れながらも、それぞれに別の意味での愛情を抱いているという微妙さが
表現されないと、ラストのキスの意味が変わってしまいますね。
ほどよく強く、ほどよく弱い女性像。 二人の男性が命がけで愛するだけの魅力が
感じられないと、女性の観客には支持されないでしょうし、うーん厳しいわ〜(笑)