ファントム(オペラ座の怪人)
容姿の美醜はともかく(いえ、あの今の俳優さんがという意味では・・☆)当然ながら、音楽の天才、音楽の天使としての歌唱力が問われる役です。劇団四季では歴代ファントム俳優さんがほどなく退団してしまわれることが多かったみたいで、卒業証書ってわけでもないのでしょうが、この役をやっちゃうと、次に挑戦すべき高い目標が少なくなるのかなと感じるほど、難易度の高い、そして役者冥利につきる役だと思います。現在のキャストは声楽畑からの起用が多いのもうなずけます。
類まれなる天才なのに、宿命の重い鎖に繋がれている男のプライドと苦悩。愛する女性への一途な想いが、狂気へと堕ちていく。1幕目のカッコよさと2幕目で追い詰められていく姿のギャップが演技の要でしょうか。
舞台全体を通じての登場時間は短いのですが、ラストシーンの彼の歌声が愛憎の全てを集約します。観客の心に何を残すのかが、ここにかかっていると思います。
・村 俊英さん 


私にとってはファーストファントムなので、なにかと思い入れのある俳優さん。

以前から観劇されている方々にはさんざん「丸い」と言われてますが、
確かに丸いです(笑)
でも丸顔なだけで決して太ってはいませんよ。テールコートを着ても、「キャッツ」の
タイツ姿でもお腹は出てません。でも丸いかな。仕方ないですね。
私は2003年の8月からですけど、以前から観劇しているかたに言わせると、かなりお痩せに
なったんじゃないかとのことです。

とにかく声が良い。どちらかというと悪人声だけど、地の底から響くような歌声は
女性ホルモンに働きかける(爆)と思います。

独特のカッコつけポーズがキザったらしくて好き。ちょっと女性的でこまやかな動作も。
倒れたクリスにマントをかけて、必ず10センチくらい折り返してあげるところが面白い。
最近は折り返したあと、左手でそっと肩口をなでるような動作をするのが、いとしげに
優しくて良いと思います。


ラスト近く、クリスにベールをかぶせて、こちらを向かせたとき、真剣にベールの落ち着き具合を
直してあげるのも村さんの特徴(歌いながらなのに)。
こういうのはファントムとしての演技というよりご本人の性分なんでしょうね。
村さんに限らず、なんかちょっとしたところで生活感というか、「ああ日常生活でもきっと、
こうなんだろうなあ」と感じられることがたまにあるのが、面白いですね。


とにかく表現としては「悲哀」「哀愁」の強いファントムで、「怒り」とか「狂気」は少ない。
ただでさえ非凡な男が、初めて激しい恋に落ちて、さらに常軌を逸した行動に出るという話
なのだから、正直言ってもう少し「狂気」めいたものがあっても良いような。
ただ、まだまだ若々しさの残る高井ファントムに比べると、中年期の男の恋の実感はあるような
気がします。
個人的には、舞台の上で時折目がきらきら光って見えるのが美しくて好きです。
角度が関係あるみたいで、毎回とはいかないのですが。


8年以上の長きにわたってファントム役をこなす村さん。
今日はファントム、明日は「キャッツ」でグロールタイガーみたいな、すごいキャスティングが
時々ありますが、とにかくお元気で、今後も素晴らしい美声を聞かせて頂きたいです。



★オマケ★ ごめんなさい。ファントムだけしか正確に記録してないのですが。

 村ファントムの福岡公演の登場回数


公演期間・・2003年8月10日〜2004年3月28日 

     初日〜8月24日、9月17日〜25日、11月12日〜30日、3月3日〜14日
  
     全214公演中、56公演にご出演。 登場率26.2%。 






・高井 治さん


2002年の京都公演でファンの数がすごく増えたらしいですね。
熱狂的なファンが多いという話を聞きます。
ファントムとしては8代目。四季に入団してからほどなくファントムに抜擢されたという実力は
10年に一度といわれる声と歌唱力が証明してくれます。

村さんとは別な意味で、素晴らしく良い声。村さんは重みのあるからみつくような声だと
すれば、高井さんは天上からふりそそぐような声というんでしょうか。
私にはとっても男性的な声のように感じられます。色にたとえれば白。真っ白い羽が風に
そよいでいるような、
表情がクールですが、手の美しい動きは必見!
特に最初の地下のシーンは官能的です。

それから「ドンファンの勝利」でカーテンを閉めてから、オーケストラの指揮者みたいな、
独特の予備動作をなさるのが毎回楽しみ。全体にソフトタッチなファントムですが、時折、
叫ぶというより怒鳴っているような激しい演技が見られます。

たしか2003年9月7日だったかな、クリスティーヌは大前さおりさんでしたが、
アンマスクシーンのものすごい怒鳴りようにビックリ。 
これが噂にきいた「ぶっちぎれファントム」?
「地獄へいけ!!」「呪われろ!!」のあまりの怒りように
「高井さん、やりすぎー。ぜったい大前さんに対してなんかあったでしょー?」
って思っちゃいました(笑)。


全体に紳士的な物腰なのに、ラストで一転
「行ってくれ、お願いだー!」の絶叫に、乙女心をワシ掴みされた女性は数知れず(爆)
さらに「I love you」の優しさとせつなさに、つきあっている彼氏との別れを決意した女性は
・・・いてもおかしくないと思いますよ〜

時折マスコミに登場される素顔が、舞台のファントムとものすごいギャップがあるのも
有名な話ですね(笑)。でもあくまで俳優さんなのだから、それも当然。



とにかく、クールさの陰に熱い情念を感じさせるファントム。
村ファントムは悲しみという自分の感情を表に出しますが、
このファントムは感情がどんどん内にこもって行きます。

たぶんなにも言わず、黙って狂っていくタイプ。
そういう暗さ、得体のしれない怖さを持っていると思います。

福岡公演の後半は、ちょっと激しさがトーンダウンしている感もありましたが、
これからも新しいファントム像を作り出していってほしいと切に願っております。



★オマケ★

高井ファントムの福岡公演の登場回数


公演期間・・2003年8月10日〜2004年3月28日 

     8月26日〜9月15日、9月26日〜11月9日、12月3日〜2月29日、
     3月17日〜千秋楽
  
     全214公演中、158公演にご出演。 登場率73.8%。 



↓ここから先は、2011年東京公演中に追加しました。





・佐野正幸さん


このページにアップするのが遅くなりましたが、佐野さんの
9代目ファントムデビューは前回の東京公演中の2006年8月8日です。
高井さんデビューから約5年ぶり。
ちなみに2011年10月12日に大山大輔さんがデビューなさいましたから
ファントムは5年に1回の新登場サイクルって感じでしょうか。


佐野さんは初演からこの演目に携わり、10数年にわたってラウルを
演じてこられました。市村さんから始まる先輩ファントムの全員と
共演の経験がありますし、佐野さんのファントム像は色んな意味で
原点のエッセンスを内包しているのではと想像しております。


佐野さんの特徴は、まず感情表現が豊かなこと。
あの大きな瞳で熱っぽく焦げ付きそうな勢いでクリスを見つめ、
ときに悔しさに歯がみし、ベールに頬ずりしながら大泣きする。
見ているこちらも感情移入して、どんどん引き込まれてしまいます。


加えて佐野さんご自身の性格なのか、妙に几帳面で
親切なのも面白いんですよね〜。
気絶したクリスにマントをかけたら、足がはみ出たので
ひざまずいて布をひきのばしてかけてあげたり、
「ポイントオブ〜」で小柄なクリス女優さんがフードをはがしやすいように
姿勢を低くしてかがんであげたり(笑)。


それにしてもラウルではあんなに爽やかな青年だったのに
ファントムになると狂気をまとった粘着質な面が出てくるのが凄いです。
軽く身体をくねらせるようにして振り返るところとか
1幕の地下で自分の身体を下の方から撫であげる仕草が
セクシーというよりいやらしくて、もうたまりません☆(ほめてます)。


村さん高井さんとはまた違う魅力で、なんというか
独特の中毒性があるファントムだと思います。


というわけなので、お嬢さん、
もし悪いクスリが欲しくなったら、佐野ファントムが効きますよ(笑)。





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