2012年7月9日(月)マチネ

 



                  
 ミュージカル エリザベート 


         

                                             博多座 1階 I列
                                               



                           当日のキャスト



          エリザベート 瀬奈じゅん  トート マテ・カマラス  フランツ・ヨーゼフ 岡田浩暉
          ルドルフ 古川雄大  エルマー 岸 祐二  少年ルドルフ 山田瑛瑠
          ルキーニ 高嶋政宏   マックス 今井清隆  ゾフィ皇太后 杜けあき
          ルドヴィカ 春風ひとみ  ツェップス 大谷美智浩





         博多座で7月5日〜26日の日程で上演されたミュージカル 「エリザベート」。
         大好きな演目観劇にさっそく行ってまいりました。



         今回のカンパニーでは、トートを山口さん、石丸さん、マテさんの3人で。
         シシィは瀬奈じゅんさんと春野寿美礼さん。 ルドルフが若い俳優さん3人だし
         フランツに初めて岡田さんが入るなど、顔ぶれも少しずつ変わっています。



         5月の東京から始まって、福岡、名古屋、9月の大阪まで、全国縦断で5ケ月。
         毎度のことながら東宝さんの大型ミュージカルはツアー規模が大きいですね〜。



         以下、メモ程度で簡単なんですけど、初マテトートの感想をメインに
         書き記しておきたいと思います。




         第1幕



         序盤の注目点は、初めてご登場の今井さん演じるマックス。
         村井さんはベンチに寝そべったりして家庭教師と熱烈アバンチュールでしたが
         今井さんのマックスはそこまではなかったみたい。
         「アデュー、シシィ」 が高めの優しい声で爽やかなのも新鮮です。 
         村井パパは洒落モノのプレイボーイ、アクが強くて変人よばわりも納得の雰囲気でしたが、
         今井パパは自由人というよりあったかくて真面目で、娘のことを心から愛してる純情お父さんでした。



         瀬奈さんのシシィは、2年前の帝劇以来2回目。
         おてんばでまだ幼さも残る時代から、苦しみや悲しみに耐えつづける晩年まで
         表情豊かに演じて下さっています。
         


         そしてお待ちかね、「愛と死の輪舞」 でじっくり見ることができた
         マテ・カマラスさんのトート。


         数年前に、ウィーン版 「エリザベート」 DVDでトートを見たときの
         暴れん坊ぶりが強く印象に残っていましたが、今回は日本版演出に合わせてか
         トート像をかなり大きくイメチェンしてるように感じました。


         髪はゴージャスなブロンドで長いけど、メイクは他のトートよりシンプルだし、全体にすごくナチュラル。
         黄泉から来たという人外感や幽玄感も薄いです。
         これは衣装が毛皮風な重めの素材が多かったのもあるのかな。
         石丸トートの薄ーいふわふわロング袖は、その点妖しさ満点でしたね〜。


         個人的に受けるマテ・トートの印象は
         変なたとえですが、日本支社に単身赴任してきた外国の若きプリンスが
         現地で恋に落ちたって感じでしょうか。


         これ別に悪い意味じゃなくて、でもなーんとなく浮いてるんです。
         もちろん、マテさんが外国人だという知識 + 日本語がややカタコトというのもあるけど、
         やっぱり存在そのものに異種の雰囲気があるように思いました。



         トートが恋におちる場面、彼はシシィの頬に手を触れながらじっと見つめています。
         この時のはにかむような、微笑むような、キラキラしたまなざしはまさに一目ぼれ☆
         んー死の国の人なのに、生き生きしすぎ?(笑)



         この場面に限らず、全般的にマテトートはあまり暗くないというか
         陽性の甘さと明るさが感じられます。 
         なんともいえない可愛いさというか、初々しさがありますね。
         死の帝王に年齢はないと思うけど、マテトートはたしかに恋する青年。



         懐かしい内野トートも、一目ぼれでどーんと恋に堕ちる衝撃タイプでしたけど、
         そういう自分に戸惑ったり、タブーを犯すことへの葛藤がありましたっけ。


         でも、マテトートは
         「だって、あんな綺麗な子だって知らなかったんだもん。
          好きになっちゃったんだからしょうがないよ」 的な明るいストーカー思考が感じられるというか。 
         ご本人のことは全く知りませんが、結構この方甘えっ子なのかな?



         と、そんなことを考えているうちに、シシィもお見合いから結婚式へ。



         岡田さんは今回フランツ初挑戦。
         この役はなにを演じても達者な石川さんがずっと演じていらっしゃるので、
         比べられて大変かと思いますが、皇太子時代はとっても良かったです。
         皇后の役割の重さがよくわかってないシシィとゾフィの間に
         挟まれて苦悩する表情、シシィとの溝が徐々に埋まらなくなっていく
         寂しさの演技など、見ごたえがありました。


         ただ、中年以降の場面になると、やや貫禄不足というか
         歩き方や声の出し方などで無理が目立っちゃったかな。
         改めて見ると、一人の人物の年代を追って演じるのってホントに難しいんですね。



         次はトートの大ナンバー 「最後のダンス」。


         「私を燃やす愛」 のようなストーテンポの曲だと日本語の処理が難しそうでしたが
         こちらは歌にシャウトが入ったりして、とても良かったです。
         きびきびしてリズミカルな歌の方が乗りやすいんでしょうねきっと。
         マテさんならではのアレンジも入って、まさにロックなトートでした。



         ただ、歌が野性的なわりにあんがい動きが少ないなー。
         ウィーン版の暴れん坊ロック青年のイメージとはかなり違います。
         この曲は、トートの執着の激しさを最大限に表現するナンバーだから
         正直、日本人ができないような西欧風スキンシップで、もっとガツガツやって欲しかったなあ。


         キスはもちろん最後まで取っておかないといけないでしょうけど
         寸止めはOKなんだし、ここは石丸トートの暗さと冷たさ、山口トートの大らかな動作とは
         また違う、熱め濃いめのアプローチで行けたんじゃないでしょうか。



         それと、マテトートはあまりカッコつけようとしてないというか、
         曲に合わせて 「決めポーズ」 みたいな考え方があまりないのかなとも思いました。
         でも、こういう細かいニュアンスは、外国語で歌いながら踊る場面では
         かなり難しいかもしれませんね。





         第2幕




         あれこれをすっ飛ばして、青年ルドルフ登場のシーン。


         古川さんは顔立ちの繊細さ美しさが、とくに印象に残る俳優さん。
         私は初めて拝見しましたが、ミュージカル 「テニスの王子様」 「ファントム」 等で
         すでに何度か舞台に立っていらっしゃるそうで。
         すらりと背が高いだけでなく、顔が小さくて憂いの表情もとっても綺麗。


         少年トートの山田君も小ちゃくて髪型がよく似てるし、ひ弱だと言われたあの皇太子が
         大きくなったら、こうなるんだねと素直に感じられるビジュアルです。
         歌はちょっと声量不足というか、声が細い印象だったけど
         それもまたルドルフらしいといえば言えないこともないかな。



         後日、平方ルドルフでも観劇したのですけど、若手の登竜門的なこの役、
         井上芳雄さんデビュー時の衝撃って相当凄かったんだろうなあと
         改めて思いました。
         井上さんは当時、エンタメ界的にはまったく無名の大学生だったんですものね〜。


         でも、ルドルフを演じたことで古川さんはもちろん
         平方さん、大野さんもミュージカルファンの知名度はぐっと上がったでしょうし、
         今後のご活躍が楽しみではあります。



         シシィの人生も2幕に入ると、苦しみや悲しみを歌うナンバーが増えますが
         ひそかに楽しみな体操室。
         ここも演出変わりましたよね?
         以前よりトートがシシィを追っかけまわさなくなったような
         気がするんですけど、どうでしょう。 2010年の時はすでにこうだったっけ?



         以前、一路さんがこの場面のことを 「内野さんがすごい勢いで
         長椅子に飛び乗ってくるので、本気で必死に逃げている」 とインタビューで
         答えていらっしゃいましたが、今期のシシィはそんなに逃げ回らなくても大丈夫そう。



         ここでもきっぱり拒絶され、黙って去るマテトートですが
         石丸トートのように笑みを浮かべるでもなく、堂々と歩いていきます。
         胸板が厚くて姿勢がいいせいか、マテさんは意気揚々といった感じで
         歩くのがクセみたい。



         さてさて、ルドルフとトートの見せ場 「マイヤーリンク」。
         古川さんはダンスが得意だそうで、さすがこの場面の動きは
         しなやかで綺麗でした。


         死の接吻は、動作も雰囲気も結構変わってます。
         先にピストルを渡し、マテトートが正面から両手をルドルフの頬に添えて普通にキスしてました。
         抱きしめこそしないけど、動きが優しくて自然な感じ。 
         トートはキスが終わるとくるりと背を向けて歩き出し、ルドルフは手にしたピストルを
         改めて頭にあてて引き金を引くので、ここ以前に比べると結構時間がかかる印象。


         うーん、キスと自殺の間にあんなに時間があくと、初めての方には
         死の接吻の意味がわかりにくくならないかなあ。



         トートがルドルフの背後に立って、互いに体をひねるようにキスしながらピストルを渡すというのは
         ドラマティックな演出ではありますが、今季のルドルフは3人とも背が高そうだし、
         もしかするとそのへんを考慮して演技が変更になったのでしょうか。
         個人的には断然、前の演出が好きだったな〜。


         死の接吻を受けている間に、ピストルを渡された意味もよく理解しないまま
         ルドルフが引き金を引いてしまったというのが
         有名なマイヤーリンクの真相なんだよ、というこのミュージカルの解釈は
         すごくユニークだと思います。
 
         それに、シシィを求めるトートの画策がマイヤーリンクに至る道で
         街頭でも、カフェでも行われていたという流れがあるからこそ
         冒頭の裁判で  「黒幕は誰だ!」  「トート閣下ひとり」 と答えるルキーニのセリフが
         生きてくるような。



         ルドルフの死以降、終盤は 「夜のボート」、「悪夢」、「暗殺」 と一気に進んでいきます。
         岡田フランツは悲壮感ただよう皇帝でした。 
         石川さんのフランツは最後までシシィへの愛が前面に出ていましたが、岡田さんだと
         自身の人生への悔恨や寂しさが強く感じられます。


         それに対して、マテトートは「悪夢」で指揮をする仕草も、ますます元気いっぱい☆


         ラスト、シシィへのキスの後、余裕しゃくしゃくのお姫さま抱っこには
         おーさすが!と、感激でした。 
         「オペラ座の怪人」でも、海外ファントムは倒れたクリスティーヌを抱き上げますし
         こういう動作が楽にできるのは、欧米の方の基礎体力というか筋肉量のおかげなんでしょうね。


         もし万一、日本のトートがこれをやったら、平均年齢が高いだけに
         「腰は大丈夫かー?!」 って、ツイッターが滝のように流れそう(笑)。



         カーテンコールは華やかに。
         最後はマテさんと瀬奈さんが笑顔でお手振り。
         舞台が明るくなるとさらによくわかる、人懐っこそうなマテさんの瞳がとっても印象的でした。



         というわけで、2年ぶりの「エリザベート」観劇は
         マテさんのトート像に興味が尽きないものとなりました。
         せっかく本場ウィーンで数百回演じてきた元祖トート閣下だし、ドイツ語で歌うナンバーを
         一曲ぐらい入れても良かった気もしますが、やっぱりコンサート形式でないと無理かな?



         次回、東宝さんがこの演目を上演するのは早くても2、3年後になると思いますが
         マテさんのトートが再登場するかどうかはわかりませんし、
         とにかく彼の生の舞台を見ることができたことに、大満足です。



         キャスト、スタッフの皆さん、
         素敵な舞台をありがとうございました☆










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