2009年12月13日(日)マチネ

                   オペラ座の怪人 


                   日本通算5000回記念日   

                                      新名古屋ミュージカル劇場 


                      当日のキャスト



  オペラ座の怪人 佐野正幸  クリスティーヌ 笠松はる  ラウル子爵 鈴木涼太
  カルロッタ  種子島美樹    メグ・ジリー 岡田真千代  マダム・ジリー 秋山知子
  ムッシューアンドレ 増田守人   ムッシューフィルマン  青木 朗
  ウバルト・ピアンジ 半場俊一郎  ムッシューレイエ 田代秀隆
  ムッシュールフェーブル 深見正博
   ジョセフ・ブケー  寺田真実

1988年の初演から21年。
日本通算公演5000回を達成した記念公演に行ってきました。


個人的には03年の福岡オペラ座から東京、大阪を経てちょうど80回目の観劇でして
5000回に比べれば微々たる回数ですが、いろんな意味で感慨深いものがあります。


4000回と同じく、今日のファントムは佐野さん。
日本初演からアンサンブル、ラウル、ファントムとして参加しつづけている方ですから、
誰よりも5000回の重みを感じていらっしゃるのではないでしょうか。
初めて拝見する笠松クリスとの組み合わせが楽しみです。


名古屋の四季劇場は初めてですが、入って驚いたのがロビーを埋め尽くす人の列。
ほとんどが物販コーナーの順番待ちだったみたいです。


パンフレットと記念誌は地元劇場で手に入るし、グッズも今回は購入予定がなかったので
私は並ばなかったのですが、あれは大変だったでしょうね〜。
今回は記念グッズの種類が多くて、その点も人気だったんだと思います。


入り口でB5サイズのオペラ座紙袋に入った記念品を頂きました。
ありがたいけど、厚みが結構ある化粧箱で座席に持ち込むと、
ちょっと邪魔になるなあ。これ終演後に配るという方法はなかったのかな。


終演後に開けてみたら、中身は赤いビロードに鎮座したファントムのマスクでした。
ペラっとしたプラスチックではなく、セラミックみたいな重さと質感で
かなりしっかりしたものです。 
普通に売ってもいいぐらいのレベルだとと思いますが、これを無料で
配っちゃうなんて、さーすが名古屋、やることが太っ腹だ☆
ひとつひとつにシリアルナンバーがありまして私が頂いた分は369番。一緒に
入場したお友達は100番以上離れていたので、ランダムに配布していたようです。



第1幕


さて1幕はキャストごとの印象を簡単に。


名古屋開幕以来、ずーっと連投中の笠松クリス。 笠松さんをクリスで拝見するのは
初めてですが、声楽系の歌い方をあまり強調しない方なんですね。
でも、セリフや歌い方がとても丁寧で好感がもてました。
笠松さんは他のクリス女優さんに比べると、大人しそうな女の子。セリフは同じはずなのに
なぜか口数が少ない印象を受けるのは、やや伏目がちな表情のせいなのでしょうか。


増田アンドレもお初です。背が高くて、セリフ声が若々しい素敵な支配人さん。
もう少しいろんなお芝居をしても良いのではという気もしますが、そのへんはこれからの
進歩に期待ってところでしょうか。
バレエに巻き込まれたときのポーズが無しなのがちょっと寂しい。 


メグも初めて見る方ですが、岡田真千代さんはプロフィールを見ると
99年研究所入所とありますから在団歴は長い女優さんみたい。
照明の加減では頬が少しこけ気味に見えることもあり
クリスよりかなりお姉さんの印象です。


見るたびに大人の男性として成熟していく印象を受けるのが鈴木さんのラウル子爵。
2分で戻ってくるから、のところでクリスの手を取り反対の手で
軽く叩いて安心させるようにするなんて、いつのまにそんなテクを(笑)。
「可愛い ロッテ」 に気持ちがこもってて良かったです。


福岡公演で初めて鈴木ラウルを拝見したときは、子爵だからカッコよくしなくちゃ!
しゃきしゃきするぞ!みたいな気負いが前面に出る印象でしたが、
長く演じるうちに自然体に近くなったというか、鈴木さん自身の良さが出るように
なったのかも。(と、えらそうにスミマセン)


もしかしたら、あまりに連投が長いので温存モードなのかもしれませんが
2幕 「泣きを見るのはおまえの方だ!」 を叫ばず、ちょっと抑えた声で
怒りを表現していたのが良かったように思います。


そして、ずいぶんお久しぶりの佐野ファントム。
個人的に約2年ぶりですが、一言で言うとこってり濃い目のファントムでした。
1幕の地下での髪撫でつけシーン 佐野さんはあいかわらず身体の真ん中、しかもかなり下の
方から撫であげてくるので、妙にドキドキ。
と、同時になぜか安心します、あー佐野さんだー(笑)。 


「君は私のもの」 鉄格子を背に立つ場面は、すらりとした手足が映えてさすが、美しい。
佐野ファントムはちょっと身体をくねらせるように振り返ったり、爬虫類っぽい動きが
なまめかしいというかいやらしい感じがたまりません☆ 
なんだか捕まったら食べられちゃいそうだ。
原作に近いファントム、異常者と紙一重でキモ格好いいって感じ?(笑)。


あ、そうそう。名古屋ならではの演出もいくつかありました。 
まずキャンドルブラ。 袖から横滑りで出てくるのを初めて見ました。
そして、なんといっても楽しみにしていたペガサス像。
「百聞は一見にしかず」 と言いますが、なるほど想像してたものとはずいぶん違いました。


まずちゃんと彫刻を載せる台座があって、そのうえにチューリップみたいに中央が
カップ状になってるんですね。
メリーゴーランドみたいに、ファントムが背中にまたがれるような馬じゃないんだ〜。
でも、暗いせいもあって、最初はどこが頭でどう向いているのかもわからず。
オペラグラスでじっくり見てなーるほど、斜め上を見上げて羽を羽ばたかせるようにしてる
姿がやっとわかりました。


これエンジェル像よりも低いしファントムの姿も見えやすくてお客様には優しいよね。
ほっそりした佐野ファントムが淵に軽くよりかかるように立ったり、ちょっと身を
よじったり耳をふさいだりするのはなかなか趣があって良いです。


屋上でクリスの手にキスする場面も、しっとり優しい甘いムードが
出て鈴木ラウルよかったなあ。
ここは、クリスの幸せそうな笑顔が見られる数少ない場面ですから
個人的にぜひ目いっぱいクリスを甘やかしてあげてほしいんです。

 
事前に、かなり厳しいと聞いていた音響ですが、客席のほぼ中央という座席の加減か
私自身はあまり気にならなかったです。
それよりも冷房の風がまともに顔に当たって、目が乾く方がつらかったな〜。


目をあけないと当然舞台は見えないし、じっと見てるとだんだん目があけられなくなるし
途中は片目ずつ開けたり閉じたりしてました。 
聞けば夏場はこれでもかというくらい冷房が効いてるそうで、こういう環境整備は
お客様が受ける感動の質と量に影響しますから、ぜひ善処して欲しいものです。



第2幕

もろもろを飛ばして、ポイントオブノーリターン。

アミンタとクリスとはまったく違う女なんだなあと、笠松クリスをみて初めて感じました。
あくまで劇中劇だから当然なんですけど、ほかのクリス女優さんだと
あまりアミンタとの差を感じられないもので。
アミンタだからこそ、大胆に男の指に指をからめるわけで、大人しくて
しとやかな笠松クリスが、素では(というかシラフでは?)あんなこと
とてもできないという感じがリアルでした。


ファントムが手を捕まえて中央に引きずってくる直前、がっちりつかまえて
クリスがはっと黒フードの顔を見て足を止める(つまり、ファントムだと確信した)
瞬間があって、これは面白いなあと思いました。
他のクリス女優さんだともっと前、後ろから頬ずりした時に異変に気づいて逃げだそうと
するんですけど、笠松クリスはちょっと違う演技プランなのでしょうか。


で、この後ファントムが
フードを取られていったん向こうを向くとき、仮面の顔を片手でおおうようにしたり
彼なりの動揺をしてます。
ややあって気を取り直し、「どんなときも」という
熱い告白に変わるわけで、そのへんをちゃんと表現している佐野さんは
やっぱりうまいなあと思いました。


しかし佐野さんてばクリスに顔が近すぎ(笑)。 彼女よりはるかに背が高いのに、
下からファントムが見上げるような体制になるって、どんだけ近いんでしょ(笑)。



オペラ座の地下

「あわれみはいらぬ!」とか歌というよりセリフ的になっているところが
何カ所かあったように思います。


椅子に座るとき、肘掛に片ひじをつき、手をぶるぶる震わせていたりして
嫉妬と怒りに身悶えする佐野ファントム。 
「素晴らしい夜になりそうだ」の素晴らしいの部分だけ囁いたり、
相変わらず演技が細かいです。


「こいつを選ぶか」といってるところで、「命は惜しくない」と言い返す
ラウルを見て思わずつかみかかりそうになったり、かなり攻撃的。


「絶望に生きた」のクリスは、人によってはただ憐れんでいるようにも見えますが
笠松さんだと純粋に優しい気持ちを感じます。


キスされたファントムは、驚きに目を見開いていました。
クリスの腕から逃れても、あえぐような息遣いで
よろけながら歩く佐野ファントム。
キス1個で全世界が吹き飛ばされたような衝撃を受けるって
よく考えると純情というか超ウブですよね。


「行け、行ってくれ」は叫び、「お願いだーーー」は歌っているようでしたが、
そのあとしゃくりあげるようになり、オルゴールがなり始めるまでの無音の間がありました。
「マスカレード・・」がかすれ声で、こちらもぐっときますね。


それまでが激しかっただけに、「アイラブユー」がすごく清純な感じがします。
高井ファントムの優しい「アイラブユー」もきれいですが、佐野ファントムのこの場面も
本質的な優しさが戻ってきたようで好きです。
もし普通に生まれ育っていれば、彼は素敵な男性になれたのかも。


ぼろぼろ泣きながら、指輪に唇を寄せ、ベールを拾いあげる前にベールを見つめていました。
愛しげに見つめる時間的な「タメ」があって、クリスの面影を見てるんだなあと
わかるところが佐野さんらしいな〜。。



カーテンコール

通常通りのカテコのあと、
幕の間からメグ、ピアンジj、マダム、アンドレ、フィルマン、カーラ、ラウル、
クリス、ファントムの順に登場。手をつないでお辞儀。


そのあといったん暗くなって、「コン! 落札!」の声が。
「またまた四季のお客様、ごひいきありがとうございます」
いつもは666番のシャンデリアで終わりになるオークションですが
今回は番号が続きまして、深見オークショナーが、667番ファントムの仮面をご紹介。
「品物はこれでございます」 とか、
本家によるパロディに客席から笑いが起こっていました。


ちょっと仮面をつければ(客席で笑い声)、
皆さまもオペラ座の怪人のとりこになることでありましょう!


オーバチュアと共に白い幕が上がって
場面はオペラ座屋上の夜景。下手から白いドレスのままクリスが出てきて
「オール・アイ・アスク・オブ・ユー」 ラウルはちゃんと正装姿に戻って歌います。
「お願いだから」で去っていきました。 


曲調が変わって、上手から一人で佐野ファントム
「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」は 「きらめく」からだったかな。
いつもは催眠状態のクリスに歌いかけるシーンですが、客席に
手をさしのべるようにして「聞いてみたまえ 優しい音楽を」のしぐさが
とっても綺麗で良かった。 


官能的な手の美しさといえば、一番に高井さんが浮かびますが
佐野さんの仕草にはまた別の雰囲気があるように思います。
そういえば4000回のときも一人で歌った佐野さんの仕草が
色っぽくてすごく心に残りましたっけ。


最後は佐野さんが向こうを向き、幕をあげる仕草。
スモークが足元に流れる向こう側に、全員がそろって
全員でマスカレード。佐野さんはもちろん昔取ったラウルの杵柄ですよ(笑)。
中央でしっかり踊ります。
曲の盛り上がりに5000回達成と書かれたプレートが上から降りてきました。
最後に華やかな銀色のテープが客席に飛んで、客席から歓声が。




あとは全員で手をつないだり、3人が幕のすきまから
出てきたりのカテコが交互に繰り返し。
なんやかんやで10回以上あったんじゃないでしょうか。
途中、手を振りながらはけるときに佐野さんが笠松さんの手を離さず、
二人で手をつないだままはけていったのは
ほほえましくて客席からも笑い声があがっていました。


佐野さんが最後は幕の隙間から一人で出てきて、
胸に手をあて丁寧なお辞儀でご挨拶。
佐野さんは21年間の重みを誰よりも知るキャストのお一人なんだなあと思うと、 
その姿に胸が熱くなりました。



鈴木さんから伝えられた、5000回達成の報告と御礼のご挨拶の中で
一番印象に残った言葉があります。




「愛され続ける 『オペラ座の怪人』 にとって、5000回は通過点にすぎません。」



ホントにそうですね。

私たちファンにとっても演じる俳優さんにとっても、たぶんいくら回数を重ねても
魅力が色あせない永遠の演目だと思います。



でも、まずは5000回おめでとうございました。


人生の中で、素晴らしい作品に出会えた幸せにも感謝しつつ。






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